2021年10月2日土曜日

ロシアのミサイル技術が何百億ドルもする米空母を時代遅れにした

 

「ロシアが極超音速ミサイルを試射」と題した英文記事が722日に発表され、概略次のような内容を報じていた。ロシア国防省の声明によると、白海においてフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」から発射されたミサイルが音速の7倍で飛行し、350キロ以上離れたバレンツ海沿岸の陸上の目標に命中した。同省は「この試射によってジルコンミサイルの戦術的ならびに技術的な特性が確認された」と述べた。ロシアは、近い将来、これらのミサイルを潜水艦や戦艦に配備する計画だ。米国の最新式のイージス艦の対応速度は遅すぎて、これらの極超音速ミサイルを迎撃することはできない。専門家の推測によると、「ジェラルド・フォードといった最新式の空母に対してさえも撃沈するのには数発のミサイルで十分だ」と言う。地政学的な競争意識は高まるばかりで、極超音速ミサイルやその他の致死兵器システムの開発が進められている。米国、ロシア、中国は何れもこれらの技術を追い求めており、すでに軍拡競争の観を呈している。(原典:Russia Tests Hypersonic Zircon Missile” by Rajeswari Pillai Rajagopalan, THE DIPLOMAT, July 22, 2021

ジルコンミサイルは艦艇や陸上の目標物を破壊するためのものである。イージス艦に搭載されている最新式のミサイル防衛システムによってさえも迎撃することが出来ないと言われているこれらの新型極超音速ミサイルの出現は、好むと好まざるとにかかわらず、従来の戦争観を一変させてしまう。太平洋戦争におけるミッドウェー海戦ではレーダーを搭載してはいなかった日本の空母群はレーダーを駆使して索敵活動を行っていた米海軍に大敗を喫したが、あの状況を髣髴とさせる。新たに現れた技術格差がそれまでの標準的な戦術をすっかり時代遅れにしてしまうことが多い。

ここに、「ロシアのミサイル技術が何百億ドルもする米空母を時代遅れにした」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

***

時代がすっかり変わり、米国はイラクで行ったように武力を行使することはもはやできなくなった。当時のような時代は過ぎ去ったのだ。

本記事の初出はわれわれ(Russia Insider = RI)のサイトでの20184月の掲載であった。(訳注:逆説的に言えば、3年半後の現在にあってもこの記事は読むに値するということだ。)

著者のオルロフはロシアに関してだけではなく、その他のジャンルにおいてももっとも人気のある書き手の一人である。彼は子供の頃家族と共に米国へ移住し、ボストン地域で育った。彼は広く知られている思索家のひとりである。週刊誌の「ニューヨーカー」は2009年の卓越した人物においてジェームズ・ハワード・カンストラーやRI(アーカイブ)に現れる他の寄稿者らと共に彼を「反ユートピア論者」と称した。これらの理論家が信じるところによると、われわれの現代社会は不快で、多くの痛みが伴う崩壊へと向かっていると言う。

オルロフは2011年に米国の崩壊をソ連のそれと比較した本を出版したことでもっともよく知られている(彼は米国の崩壊はソ連以上に性質が悪いであろうと推測している)。彼は広い分野をテーマとする多作家であって、アマゾンで彼を検索すると彼の作品を垣間見ることが可能だ。

彼はウェブサイトに数多くの読者を持っており、パトレオンにおいてもそうなので、パトレオンではわれわれ(RI)がしているように彼を支援していただきたい

彼が現在取り組んでいるプロジェクトは居住が可能で、金銭的にも手が届きそうなハウスボートを建造することである。彼は今ボート上に住んでいる。

もしも彼の作品を見つけ出すことができなかったならば、RIのアーカイブにて彼の記事を探していただきたい。彼の記事はまさに宝物であり、米国とロシアに関する貴重な洞察や両国がお互いにどのように関係し合っているのかに関する知見が満載されている。


過去の500年間、ヨーロッパの国々、つまり、ポルトガル、オランダ、スペイン、英国、フランス、ならびに、短期間ながらもドイツは自国の海軍力を海外に投影して、地球上の多くの地域を略奪することに成功した。世界人口の多くは海岸地域に住んでおり、多くは海上で取引を行うことから、何処からともなく突然姿を現す武装艦隊は地域の住民を自分たちの思いのままにすることが可能であった。

Photo-1:ついに崩壊に向かう軍事的恐竜

大艦隊は略奪を行い、朝貢を課し、反抗する者を罰した。そして、略奪品や朝貢はさらに多くの新しい船を建造するために活用され、海軍帝国が影響を与える海域はさらに広がっていった。これこそが天然資源には恵まれず、居住者が少なかった比較的狭い地域にあるこれらの国々は、極端な頑固さや感染症がそれを可能としてくれたこと以上に、地球上のほぼ全域を500年間にもわたって支配することを可能にしたのである。

この海軍力による帝国主義的体制を継承したのが米国であって、さらには空軍力や巨大な空母攻撃軍、地球上に散りばめられた数多くの軍事基地網を加えて、米国は地球上に「パックス・アメリカーナ」を課すことがおそらく可能であった。たとえば、ソ連邦が崩壊した後、中ロが対艦ミサイルや対空防衛技術を開発し、新たに大国として台頭するまでの短い期間にはそうすることが出来たのではないか。しかしながら、今や、この帝国主義的アプローチは終焉を迎えた。

ソ連邦が崩壊する前、米軍部はソ連の影響圏にある国家には直接の脅威を与えるようなことはしなかった。とは言え、原油輸送のためのシーレーンを支配するために海軍力を用いることによって、さらには、原油の売買には米ドルを使うようにと強いることによって、ドル建ての借金証書を発行し、米国の借金を買い込むようにと各国に強要し、米国は自国の手段が到達し得る先にまでもその権勢を広げて行った。米国は借金を使って欲しいものは何でも輸入し、その一方でインフレを輸出し、世界中で人々の預金を取り上げた。このプロセスを通じて米国はまさに驚異的なレベルの借金を積み増し、絶対額においても相対的に見てもそのような前例は何処にも見当たらない。この借金と言う爆弾が爆発する時、それは米国国境を越して遥か遠方にまでも経済上の荒廃をもたらすことであろう。米国の海軍や空軍の優位性によって世界中でその使用が強要されていたオイルダラーという富を汲みあげるポンプがもはや作動しなくなった暁にそれは爆発することであろう。

最新のミサイル技術は海軍帝国を安っぽく見せて、敗退させた。それ以前は、他国の海軍と戦うには速度や火力の面で敵国の能力を凌ぐような海軍力を持たなければならなかった。スペインの無敵艦隊はイギリス艦隊によって沈められた。もっと最近の世界においてこれが意味するところは米国の産業力に匹敵する力を持つ国々だけが軍事的に米国に対抗することができるということだ。ところが、状況は今やすっかり変貌してしまった。ロシアの新型ミサイルは何千キロも離れた地点から目標に向けて発射することが可能であり、これを迎撃することは不可能だ。駆逐艦を沈めるには1発の対艦ミサイルで十分であり、空母はたったの2発で十分だ。今や一艘残らず米国艦隊を沈めてしまうことさえもが可能だ。米ロ両国の経済規模や軍事予算の大きさの相対的な違いはもはや無関係となってしまった。つまり、米国がもっと多くの空母を建造したとしても、ロシアはもっと多くのミサイルを速やかに、かつ、安価に生産することができるのである。 

上記と同様に重要な点はロシアが新型の対空防衛システムを開発したことにある。S-300 およびS-400システムは基本的に一国の空域を封鎖することができる。これらの防空システムが何処に配備されようとも、たとえば、それがシリアであっても、米軍は今やそうした防空システムが支配する空域には入り込めない。米国の海軍や空軍の優位性が急速に失われて行く中で、米国が当てにすることができる唯一の手法は大規模な遠征軍を使うことだ。しかしながら、この選択肢は政治的には吞み込むことができない。それはイラクやアフガニスタンで有効性がないことが実証されているからだ。また、核兵器の使用と言う選択肢もある。核兵器の廃絶は近い将来には実現される見込みはなさそうだが、核兵器は抑止力として有効なだけである。核兵器が持っている特別な価値は戦争があるレベルから先へ進展することを防ぐことにあるが、その境界線は彼らの地球規模の海軍や空軍の優位性を排除することよりもさらに先方に位置している。核兵器は核装備をした敵国に対して自分たちの攻撃的な姿勢をさらに強めてくれることから、単に無用であるというだけではなく、実に性質が悪い。それはいつも自殺行為的な動きとなるからだ。米国が今直面するのは本質的には返済が不可能な借金にまつわる財政問題であり、富を汲み上げるポンプが作動不良を起こすことであって、この状況は驚く程明快である。世界の何処かで核兵器を爆発させたとしても、破綻しつつある一帝国の問題を解決してくれることには繋がらない。

とてつもなく巨大で、画期的な変化を予兆させるような出来事といえども、それを単独に取り出して見るとそれは極めて小さく見える。ジュリアス・シーザーがルビコン川を渡ったことは単に川を渡っただけに過ぎないし、米ソ両軍がエルベ河畔で顔を合わせて、友好を感じ合ったことはレニングラードの包囲やスターリングラードの戦い、あるいは、ベルリンの陥落が持っている極めて大きなスケールとは比べ物にはならず、相対的に小さな出来事であった。しかしながら、歴史的風景の中に置くとそれらの出来事は地殻変動を思わせるような動きを予兆させるのである。おそらく、シリアの東グータで最近起こった小さな戦闘でわれわれはまさにこれに似たような状況を目撃したのだと言えよう。東グータでは、米国は見せかけの化学兵器攻撃を行い、これを使ってシリアの空港や建物に対する攻撃を開始するための言いわけとした。米国の対外政策に関与する高官らは米国は依然として重要な地位を占めており、何かを演じる役割を持っていることを内外に示したかったのであろうが、実際に何が起こったかと言うと、米国の海軍や空軍は完全に的外れの存在であることが実証されたのである。

もちろん、米軍や対外政策に関与する要人たちや米軍の下請け企業が活動している州や米軍基地を擁している州から選出されている議員らにとってはこれらはどれを取っても恐ろしいニュースである。明らかに、国防関連の下請け企業や軍事基地の従業員、その他の数多くの者たちにとってもこれは悪いニュースである。また、国防関連分野における出費は米政府が政治的に実行することができる唯一の景気刺激策であるという事実からも、単純に言って、これは米経済にとっては恐ろしいニュースである。オバマが唱えた「ショベル・レディ・ジョブ」プログラムは、もしもご記憶であるならば、労働市場参加率に劇的な変化を予兆させるようなことは何ももたらさなかった。労働市場参加率とは実際の失業率を逆に言う遠回しの表現に過ぎなかった。また、エロン・マスクの「スペースX」に多額の金を注ぎ込む素晴らしい計画がある(基本的にもっとも重要であるロケットエンジンはロシアから購入し続けている。その一方で、米国がさらなる経済制裁を課したことに対する報復としてロシア側はロケットの輸出を中断することを検討している)。手短かに言うと、国防関連の景気刺激策を引っこめると、米国経済は弾けるような大きな音を発することであろう。それに続いてはシューという音がして、次第に衰えていく。

言うまでもないが、これらに関与している連中は誰もが米国の外交や国防の運営は今やすっかり無力化されてしまったという事実をできるだけ長く否定し続け、隠ぺいしたままにしておきたいのであろう。私の推測では米国の海軍や空軍力に依存する帝国は軍事的に負けたから、あるいは、それらが無用の長物であるというニュースが定着したことによって解体されるといった形で消えて行くわけではない。むしろ、資金の不足によって米軍の展開は控えざるを得なくなって、消滅していくことであろう。帝国がすっかり諦めてしまう前に大きな「バン」という音を何回かたてるかも知れない。しかしながら、我々が聞くことになる音はほとんどがすすり泣きの音であろう。そのような状況が実際にソ連の崩壊時に起こった。これから、米国の崩壊時にも起こるであろう。

***

これで全文の仮訳が終了した。

この引用記事は3年半前に執筆されたものだ。この3年半の間にどんなことが起こったのだろうか?私が理解している範囲内で言うと、次のような具合だ。

米国が何故に極超音速ミサイルの開発でロシアや中国に対して遅れをとったかというと、彼らの開発計画は2000年代初期からあったにもかかわらず、開発費に制約があって、タイミングよく供給できなかったことにあるらしい(原典:米議会調査局の資料、Hypersonic Weapons: Background and Issues for Congress, Aug/25/2021)。この背景は、奇しくも、著者オルロフが引用記事の中で指摘しているように、米国政府が見舞われている財政問題に直接関係していたことを示している。

しかしながら、プーチン大統領がロシアは極超音速ミサイルを開発し、実戦配備すると20183月に公言したことによって、ペンタゴンの尻尾に火が付いた。

事実、冒頭に記しているように、ロシアはジルコンミサイルの発射実験でマッハ7という速度を実現して当初の成功を収め、自信を強めている様子が伺える。

それに加えて、今年の625日の報道によると、 ロシアは極超音速のキンザールミサイルを搭載したMiG-31K戦闘機を初めてシリアへ配備した。このミサイルはマッハ10で飛行し、約2000キロの射程を有するという。(原典:Russia sends fighter jets capable of firing hypersonic Kinzhal missile to Syria for first time as part of Mediterranean training, Jun/25/2021

米国では、最近の927日、極超音速ミサイルの初実験が成功したと報じられた。米国防総省の秘密研究開発部門DARPA)はロッキ―ドマーチン社の試作機が昨年飛行実験に失敗した後を受けて、レイセオン社が別途開発した極超音速ミサイルの試作機がついに成功したと発表した。飛行速度はマッハ5を越した。「これで米軍に次世代技術を配備することに一歩近づくことができた。この試験結果によって極超音速巡行ミサイルはわれわれの軍にとって威力が極めて高い武器となるであろう」とDARPA の開発プログラムの責任者であるアンドリュー・ネドラーが述べている。(原典:DARPA touts historic free flight test of Raytheon’s hypersonic missile prototype as US struggles to catch up with Russia, Sep/28/2021

こうして、核弾頭を搭載することを視野に入れた極超音速ミサイルを巡っては軍拡競争がすでに始まっている。米中ロ各国にとって重要な次のプロジェクトは自国へ侵入してくる極超音速ミサイルを探知し、迎撃する対空防衛システムの開発である。

ロシアではS-500対空防衛システムの生産が始まっていると言う。つまり、実戦への配備は今や時間の問題だけとなった。S-500対空防衛システムは弾道弾や巡航ミサイルを迎撃するという従来の機能だけではなく、低軌道を周回する衛星や航空機から発射される極超音速ミサイルを迎撃するという最新の機能も備えられている。射程距離は約600キロ、到達高度は約200キロ。つまり、世界で初の極超音速ミサイルを迎撃することができる対空防衛システムである。(出典:Serial production of missiles for S-500 Prometey begins,  Aug/12/2021

また、中国との関係に関して言えば、大雑把に言うと米国の状況はロシアに対するそれと大なり小なり同様である。最近の技術革新によって中国は米軍に対する「接近阻止、領域拒否」能力を急速に高めているところから、米国は中国の介入阻止能力を懸念し始めている。

さて、どうなることやら・・・

戦争という人間社会の歴史の中ではもっとも悲惨な状況を徹底して回避しようとするのではなく、戦争を礼賛し喧伝する輩がいる。最近の日本の世情を観察すると、世論をリードする立場にある政治家やメディアから始まって、一般庶民に至るまで決して少なくはないのだ。これは人類の存続を否定することにつながり、非常に嘆かわしいことだ。

参照:

1Russian Missile Tech has Made Americas Trillion Dollar Navy Obsolete: By Dmitry Orlov, Sep/27/2021 

 



10 件のコメント:

  1. 登録読者のИ.Симомураです.大変ためになる記事の,わかりやすい翻訳に感謝もうしあげます.アメリカ帝国主義の根本を理解させる記事でした.キンザールはロシア語でкинжалと書きキンジャールと発音し”両刃の短剣のこと.ジルコンは”ジルコン,風信子(この漢字はヒヤシンスと読みます)鉱”という鉱物でцирконと綴りツィルコンと読みます.ロシア製の兵器は優れていますね.兵器ではりませんが,二十歳になったとき有害海獣であるトドの駆除に携わる目的で,狩猟免許をとり,ソ連製の自動式ライフル銃を購入しました.倍率2倍のコリメーター式の望遠スコープ付きでも,日本の豊和ライフルの半額でした.五十八歳で退職するまで,羆猟に使っておりました.トドは大謀網(ダイボウアミと読みます.回遊クロマグロ捕獲のための紀州伝来の大仕掛けの網のこと)の網を食い破るのです.漁網は高額なのです.露文の解説書にはテレスコープ無しで撃つ要領が書いてありました.環状照門枠(〇)内に見える-↑-について,もしも-↑-の隙間に熊の横顔が入るならば,目標までの距離は約80メートルと解説しているのです.トドの横顔と羆の横顔の大きさはほぼ等しい.陸に揚げた発動機船の船長部屋の丸窓から,沖合約80メートルのトド岩上の大将の雄と副官らしい雄を確認し,裸眼で狙撃しました.初弾というものは必中なのです.しかし二の矢は外しました.トド肉は魚臭が強く,当時盛んだった養殖ミンクの餌としかなりませんでしたね.

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    1. シモムラさま
      コメントをお寄せいただき、有難うございます。
      羆猟用のソ連製ライフルの話、興味深いですね。私のような素人にはカラシニコフAK-47位しか思い浮かびません。アフガン戦争の頃、アフガニスタンやパキスタンではAK-47の修理や整備が至る所で行われ、地元では最も人気の高い武器だと聞きました。 耐久性や使いやすさが群を抜いていたとのこと。
      何時ものことながら、米ロ間の関係や国際政治の裏話は非常に興味深いものがありますよね。真相がバレるまで長い時間を必要とするものもあれば、比較的速やかに暴露されてしまうこともあり、そういった記事を読みますと、当初はなかなか分からなかった前後関係が突然明快になって来ます。特に、米英が画策する対ロ、対中の陰謀の背景は多くの場合まさに小説よりも奇なりです。中には極めて馬鹿げた筋書きもあります。スクリッパル父娘毒殺未遂事件やナバルニー毒殺未遂事件、ロシアゲート、911同時多発テロ事件、JFK暗殺事件、等、たくさんの事例が挙げられます。しかしながら、これらは氷山の一角であって、私たち一般大衆が知らないことがらは他にもたくさん存在することでしょう。われわれは今そんな世界に住んでいることを自覚せざるを得ません。

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  2.  もうそろそろシモムラ・イサオ氏の著書が出る頃だと思います。楽しみにしております。
     さて,今回の翻訳は軍需産業が地元米議員と大いに関係していることを示唆するもので大変勉強になりました。ということはトランプ大統領からのF34bなどを爆買いした安部首相への圧力がそうとうであったことが想像できます。洞爺湖サミットでアメリカの要求を蹴った福田赳雄首相は立派だったと言えましょうが,その後直ちに福田降ろしの流れが始まったことを思い浮かべます。アメリカ・ファーストというのはそういう意味だったのですね。
     ところが2018年3月1日の記者会見でプーチン大統領は原子力推進のミサイルを開発したことを発表しました(その映像を覚えています)。Mach5から8の速さで飛ぶと言われていました。核弾頭を装填していなくてもそれ自体が核ミサイルだと思ったものでした。原子力推進とジルコン利用のミサイルの違いが分かりません。それとも小生の聞き違いなのでしょうか。
     今年の7月ぐらいだったと思いますが,そのミサイルの速さは実験でマッハ28に達したと報道されました。平均すれば最低でもマッハ20ぐらいはでるものと推測しております。
     アメリカの後を追うように日本も宇宙防衛局みたいな部隊を去年から今年にかけて設置したと思います(スプートニク日本語版)。しかしマッハ28には勝てないと思います。そうすると空母打撃群Q.エリザベス号が日本近海にやってきましたがミサイル2発で終わりですから,遠路はるばるご苦労様ということになります。しかし一般国民は知りませんので,危機感はありません。最近,デモクラシー・タイムスというブログの登録者数が10万人に達したのですが,軍事解説者の半田滋様もこれを取り上げたことはありません。軍事解説はいやに詳しいので人気があるらしく分かり易いとの評判です。しかし基本的に「知らしめず」なのですね。
     

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    1. 箒側兵庫助様
      コメントをお寄せいただき、有難うございます。
      かってアイゼンハワー元米大統領が軍産共同体は米国の国政を危ぶませるとして懸念を示しました。あれは1961年の退任演説のこと。あれから60年の月日が経っています。もう大分前から米国の対外政策の多くは国務省が決めるのではなく、米国の大企業を支配するウオールストリートが政策を決めているとのこと。日本がイージス艦を建造し、陸上配備型イージスシステムの導入もすべては米軍需産業が外交政策を書き上げ、今や無用の長物となった米国産軍需品を日本や韓国に買わせているのです。新型ステルス戦闘機のF35もロシアの最新対空ミサイル防衛網は索敵することができると言われています。それでも、日本は大量に買わされています。こういった状況はまさに「アメリカファースト」そのものですよね。
      ロシアが開発した極超音速ミサイルはすでに配備されています。一方、アラスカ上空を経由するのではなく、南極や南米の上空を経由して米国へ飛来することが可能な核エネルギーエンジン搭載の巡航ミサイルの開発についてはあまり報道されてはいませんね。これが実現すると、これは米国にとっては対空防衛網が設置されてはいない南側から侵入して来ます。このプロジェクトは再開されたとの報道もあります。恐らくは、技術上の問題がありそうですね。

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  3. お返事ありがとうございます.1994年に元同僚でシベリア先住民族の狩猟民俗の専門家のエルモーロフ氏に再会し,同氏の提案で,陸軍幼年学校付属地下200メートル射撃場で,ドラグーノフ自動式狙撃ライフル,カラシニコフ機関ピストル,レボルバー拳銃と小型自動拳銃の射撃を体験しました.教官はアゼルバイジャン人.狙撃銃射撃以外は散々の結果でした.ドラグーノフでの狙撃の結果では「相当に裸眼射撃をしているね」と褒められました.友人宅ではヘラジカ料理の夕食を御馳走になりました.どちらからともなくJFK暗殺の話になりました.「ケネディの頭部を粉砕した弾丸の発砲者は,2倍くらいの低倍率のスコープで彼の頭部を視野におき,一の矢としてそれを放ったのだ,距離は80メートルであり,ロシア製ライフルに添付された照尺照準方法によれば,大統領頭部が-|-の|の左右隙間にすっぽり納まる.スコープで狙った初弾が外れたならば,裸眼照準で|の左右隙間に頭部を捉え直し,二の矢を撃つ.元海兵隊員ならたやすい技だ.」そのような内容の話だったと思います.私も38年間、トド,羆,エゾシカを撃ってきたものの経験測からして,初弾必中は普通の技なのです.致命傷とならない,最初にケネディの背から右胸に抜けた弾丸を放った狙撃者はオズワルドのいたとされる80メートルの建物六階にいたのではなく,200メートルほど離れた別の場所にいたのではなかろうか.200メートルという距離は急に弾道が下がり始める距離だ.ウェッブにはこうある:車は時速約18kmで走行、被弾時の距離はビルの窓から約55mと約81mで、3発の発砲時間は5.6秒程度とされている。距離は遠くないが、4倍率で18mm径の小さなスコープを覗きながら、ボルトアクションの動作を素早く連続で行うことは容易ではない(ガンズリサーチ).ライフルスコープで4倍率はターゲットが視野を瞬時に抜けるので,固定目標を狙う以外はあまり使われることはないだろう.先のドラグーノフ搭載の眼鏡がそうだった.前の便で羆の頭星環の隙間に捉えると書きましたが,狙撃点が頭部であるという意味ではありません.そう見える距離が80メートルであって,照尺の目盛りを80メートルに設定すべき,という意味なのです.羆の頭はスモールターゲットであり,その上獰猛な獣です.初弾が命中しなかった場合の反撃は恐ろしいものです.それで初弾は頭部の斜め下に位置する,頭部背骨連結部と前脚の付け根を狙います.獣猟用の弾頭は鉛が剝き出ており,射入した部分でマッシュルーム状に変形し,それまで維持してきた力積を瞬時に内臓に伝達します.太い血管が破断した場合,血管内を衝撃波が心臓に達して,心停止を引きおこします.ヘラジカは実は羆よりも狂暴な獣です.エルモーロフ氏は12番径ロシア製上下二連散弾銃で,弾頭先端がすっぱり切り落とされたサボット弾を撃っておりました.30メートルの近射であの巨体がどすんと崩れるそうです.同氏は結局研究を棄て,カナダへ移住しタクシー運転手となったそうです.奥様のナジェージダさんはエヴェンキ民族の研究者でロシアに留まり,数年前急逝されました.ソ連崩壊はごく普通の人々に不幸を齎しましたね.

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  4. シモムラ様
    コメントをお寄せいただき、有難うございます。
    ロシア人の友人との間でJFKの暗殺が話題になったという件、実に興味深い内容で、楽しく読ませていただきました。狙撃距離が200メートルになると弾丸が下がり始めるという件、それは実際に狙撃ライフルを握っていないとなかなか言えない言葉ですよね。もう大分前の話になりますが、ボスニア・ヘルツエゴヴィナでの内戦をテーマにした映画で、2-3キロも離れた山の上から見下ろして、民家の庭先へ出て来た人物を狙撃するシーンがありました。見事に初発で命中したのですが、余りにも遠い距離なので「本当か?」と思いながら映画を観ていました。それを今思い出している次第です。
    JFK暗殺事件に戻りますが、数秒間という短時間の間に3発を発射することについては、その実現性はかなり低いんだと理解するに至りました。つまり、ここで単独犯説は破綻し始めることになります。
    今朝のブカレストの最低気温は6度Cとなりました。向寒の折、ご自愛ください。

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  5. JFK暗殺事件気になって色々調べました.あの凄惨な頭部への受傷の動画,心が痛みます.夫人は後部トランクに飛散した頭蓋片を回収しようと身を乗り出しています.明らかに狙撃は進行方向前方から実行されたのです.前方説を否定する事実として,同場面の8mmフイルムのコマには,顔面前方に血飛沫が放出されていることを強調する主張があるのですが,前方からの銃撃でも血飛沫や骨片の放出は起こるのです.亜音速で射入した弾頭は頭蓋内で瞬時に減速し,運動エネルギーを頭蓋内に放出するので,脳漿は圧力の出口を求め斜入孔から外部に飛び出るからです.狩猟者は狙った獲物のどこに弾丸が当たったかを調べるのが習慣です.トド岩上の獲物を回収するため岩場に上がり,頭部の傷を調べます.頭部に受傷すると眼球が飛び出た悲惨なものとなり,射入孔側の岩場にも,射出孔の岩場にも血液と脳漿が確認されます.よく観察すると射出孔の岩場には,擂鉢状の窪みがあり貫通した弾頭が命中した箇所だとわかります.JFKにかかる致命傷を与えた狙撃者は,車前方のかなり低めの高みからスコープを除きながら銃撃したのでしょう.その位置はビル六階の高い位置からだと水平方向の貫通痕は生じないでしょう.その上このような浅い角度からの銃撃の際には,風防ガラス,運転助手,コナリー知事が邪魔となります.狙撃に向く高い建物が前方にはなかったのでしょうかね.証言にある銃声の小ささも奇妙です.カルカノライフルの実包は火薬量も多く,100m以内の人間ならばオートバイの逆火や爆竹の破裂音などと間違えることはない.かような銃声に聞こえる銃は,22口径の高速弾を撃つ銃だ.回収された弾頭は写真にあり,殆ど変形していない(証拠物件399).弾丸表面の線状痕はオズワルドのライフルの線状痕と同じとされたものだろうが,同じ線状痕をもつ別の弾丸を作り,それを別の銃で撃つことは可能だ.まず弾頭を薬莢から抜き取り,弾頭のみをオズワルドのライフル銃の薬室のテーパー部分に滑り込ませ,弾底を銃身清掃用の棒でゆっくりと前方に押す.この時力を抜くと,停止した位置で停止痕が生ずる.火薬の爆発で一気に銃口から飛び出た弾丸に偽装するには,力を抜かないことだ.この弾丸を410番などの小口径散弾銃(ライフリングの無い滑腔銃身)の実包に詰め,狙撃するならば,遺体から回収される弾頭はオズワルド所有の銃身からのものと判定されるはずだ.弾頭が長いと飛翔中に横転し,命中率が下がるが、同弾頭に半分割した薄いプラスチック製ケース(サボット)を被せ,より大きい口径のライフル銃から撃ちだす方法がある.これだと使用銃のライフリングはこのサボットには擦り傷と残るが,この二つのプラスチック片は弾丸が銃口から飛び出した途端,空気抵抗で剥がれ落ちる.身軽になった弾丸はライフリングのお陰で横転もせず、120m以内ならば,裸眼照準で狙った点に命中させることができます.米国製ハーリントン&リチャードソンなどはこれにうってつけです.もちろん大物獣猟用としてです.ながながと書きました.米国は怖い国ですね.

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    1. シモムラさま
      コメントをお寄せいただき、有難うございます。
      米国では銃に関することならばどんな偽装でも出来てしまう感じですよね。オズワルドは「はめられた」と言っていたそうですから、オズワルドの単独犯説はそうでないと都合が悪い状況があったということになります。
      「ケネディはCIAに暗殺されたのか」という記事(2021/01/01、
      PRESIDENT Online、名越 健郎拓殖大学教授)によりますと、次のことが記されています。
      ジョンソン大統領やウォーレン委員会は、キューバ関与説が高まれば、国民がデマで扇動され、ソ連を刺激して新たな核戦争の危機を招きかねないことを憂慮し、オズワルド単独犯行説をとったとされる。
      未だに公開が延期されている文書が約300点程あるそう。これらが公開された暁にははJFKの暗殺者が判明するのか、それとも、依然として謎に包まれたままで残るのか・・・
      バイデン大統領はJFK同様に自分自身もアイルランド系であることからも、JFK暗殺の真相は公開したいのではないかとの推測が出回っているようです。

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  6. 連投お赦しください.ついでに怖いお話を.私の縁者にロシア人学者に嫁いだものがあり,夫妻は1938年あたりにНКВДにより銃殺されておるのです.そのような経緯もあり,よくНКВД物の軍事探偵映画を視ます.旧ソ連での銃殺は一般受刑者の場合は予告なし不意打ちで後頭部への銃撃で行われます.これは軍隊でも同様のようです(『ソ連軍の素顔』 吉本晋一郎訳、原書房、1984年).銃撃の直前執行者は顔を背けるのに気がつきました.友人の民族学者に「やはり躊躇があるのか」と問うたところ,「あの銃撃距離だと頭部からの頭蓋片と脳漿の打撃を受けるので危険なのだ,特に骨片は目に刺さることがある」と丁寧な解説をしてくれました.彼は「神風特攻」研究のロシアでの権威です.

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    1. シモムラさま
      コメントをお寄せいただき、有難うございます。
      НКВДとは内務人民委員部のことですね。当時、この部門は刑事警察、秘密警察、国境警察、諜報機関を統括してとのこと。
      銃殺にまつわる細かい事柄がたくさん伝えられていることに驚愕を覚えます。しかしながら、それを生業としていた人たちが実際にたくさん居たわけですから、怖い話ですが当然と言えば当然ですね。

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