2023年8月6日日曜日

米専門家らはウクライナが勝利を収めることはできないことをしぶしぶ認め、膠着状態になることを望んでいる

 

ロシア・ウクライナ戦争については米ロが共に長期化することを望んでいるようだ。その理由は、驚いたことに、相手国を疲弊させることにあり、米ロ両国に共通している。両国は同一の思惑を抱えながら、ウクライナ戦争を今まで続けて来たのである。

そして、その結果は?

現時点で観察される状況としては、ウクライナの疲弊は、言うまでもなく、目に余るほどである。そして、ウクライナを支援してきたNATO諸国はウクライナに対する軍事的な支援ではほぼ限界に達したようだ。戦車や弾薬はこれ以上は供給できないと言う。米国も例外ではない。弾薬の供給に関しては、ブルガリアや韓国、日本からの支援を求めているとのことだ。

この夏、アゾフ海に沿ってロシア側からクリミア半島に向かって西方へ延びるロシアの回廊を断ち切るとして喧伝されてきたウクライナ軍による大攻勢が行われてきた。だが、その成果はいまひとつ明確ではないのが現状だ。

たとえば、「Ukrainian Soldiers Tell Of High Losses For Little Gains: By Moon of Alabama, Jul/31/2023」と題された記事にはウクライナ軍の苦境が報じられている。その一部をご紹介しておこう:

脳震盪を引き起こして、医療ポストで前線からの避難を待っている兵士は、最近、ロシア軍の大砲と戦車による砲撃を受けた時に彼の大隊がどのように間引きされたかについて説明してくれた。彼が所属する第23旅団は9個の新設された部隊のひとつで、大反撃のために西側の訓練を受け、準備を整え、十分な装備を施した。しかし、この旅団は砲兵からの十分な支援もなしに前線に投入され、ロシアの火力から身を守ることはできなかったと彼は言う。

彼の部隊が参加したある戦闘では、ウクライナ軍兵士は10台の米国製「MaxxPro」装甲車両に乗って出撃したが、戻ってきたのは1台だけだった。彼は損傷した車両の写真を見せ、引き裂かれて、燃え尽き、あるいは、修理基地に運ばれたと彼は言った。この兵士は自分の上司とのトラブルに巻き込まれることを恐れて、自分の名前を名乗ることは拒んだ。
・・・

兵士は前日の砲撃で22歳の友人であるスタスを失ったと言い、わずか1か月余りで彼の大隊は非常に多くの死者と負傷者を出したため、最前線に残ったのは10人だけだったと付け加えた。

以前は、その大隊には約400500人もの男たちがいた。

ここに、「米専門家らはウクライナが勝利を収めることはできないことをしぶしぶ認め、膠着状態になることを望んでいる」と題された最新の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

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Photo-1© 写真:スクリーン画像 / ロシア国防相の動画

ウクライナ軍はロシアの防衛線に人員と装備の波を次々と投入してきたが、まだ大きな成果を上げてはいない。これはこの紛争に関する西側のストーリーに変化を引き起こしたようである。

米国のマスコミはギアを入れ換え始め、ウクライナ紛争はかつては欧米指導部がもてはやしていた勝利にはならない可能性が高いことを示し始めており、ある報道機関はウクライナが戦場でロシアを打ち負かすことはできそうにないこと、ロシアは特別軍事作戦後にウクライナを征服したり、さらに西方に移動したりする積りはないこと、等を公然と認める専門家の見解を引用している。

米空軍退役軍人で、国務省の元顧問でもあるスティーブン・マイヤーズはロシアの戦術は「征服とは完全に矛盾したものだ」と主流メディアに語り、ロシアが特殊作戦後に他のヨーロッパ諸国を攻撃するといった西側メディアや政府のストーリーに対して反論した。マイヤーズは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の唯一の目標はウクライナをNATOから遠ざけることだと付け加えている。

「戦略的には、この戦争は始まる前に双方によってすでに失われていた。この戦争は膠着状態で終わり、それは、今や、最初からプーチンの意図だったと思う」とマイヤーズは述べている。

また、マイヤーズはNATOや米国、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が彼らの戦術がいったい何を達成できるかのについて非現実的な期待を設定したことを指摘した。ゼレンスキーはウクライナを2014年以前の国境に戻すことを一貫して約束してきたが、そんなことはほぼ不可能であることを現場の状況が示している。

「バイデン大統領やNATO、ゼレンスキーは自分たちが作ったキャッチ22(訳注:「ジレンマ」とか「落し穴」の意)に閉じ込められており、自分たちが作成した非現実的な期待に応えることはできない」とマイヤーズは言った。

Photo-2:関連記事:ウクライナ軍の大攻勢によって突破口が開かれることを西側が期待(原題:West's Hopes for Breakthrough in Ukraine's Counteroffensive DashedJul/23/203, 12:27 GMT

マイヤーズは、この2月に紛争を終わらせるための調停を求め、ウクライナにとって「状況は絶望的」であり、「この悲劇を終わらせる」時が来たと書いたことに注意する必要がある。

しかしながら、同主流メデイアは国防大学やジョージタウン大学の国際関係学部の戦略に関する教授であり、悪名高い程に好戦的なシンクタンク「大西洋評議会」の上級研究員でもあるショーン・マクフェイトとも話をした。

しかしながら、マクフェイトでさえもがウクライナは以前の領土からロシア軍を追い出すことはできないだろうと予測し、ウクライナの反撃は「挫折している」ことを認め、「NATOはドナーとして疲労しており、ゼレンスキーの大言壮語には失望している」と認めた。これは元コメディアンから大統領に転向した彼が「ウクライナの主要な資産」と呼んだNATO同盟国からの信頼を失う原因となった彼の偉業である。

マクフェイトによると、例の大言壮語がゼレンスキーを「箱に入れてしまった。彼は勝てないが、負けるわけにもいかない。」マクフェイトは、ウクライナにさらに大量の武器を提供し、彼らが勝つことを期待することはまさに「狂気を定義する」ような行為であると付け加えている。

欧米のストーリーは、これまでのところ、ウクライナがこの紛争に勝利し、ロシア軍は崩壊の危機に瀕しており、ウクライナの突破口が間近に迫っているというものであった。しかし、この主張の数ヶ月後、特に、大々的に喧伝されていたウクライナ軍の大攻勢が西側の恩人が待っていた利益をもたらさないことが明らかになった今、西側のストーリーは大幅に変化しているように見える。

関連記事:US Military Planners to Blame for 'Stupid' Ukraine Counter-Offensive: Jul/25/2023, 17:50 GMT

しかし、米国当局は、ウクライナの失敗にもかかわらず、勇敢な顔を装っている。国家安全保障会議のスポークスマンを務めるジョン・カービーは、以前、前線は膠着状態に陥ってはいないと主張し、ウクライナ軍は「進軍している」と述べた。しかし、その彼でさえもがウクライナ軍は「彼らが望んでいたほど遠くまでは到達しておらず、望んでいたほど速く進軍してもいない」ことを認めている。

火曜日(725日)に、ウクライナ軍の大攻勢の「主な作戦」が開始され、数千人の予備軍が最前線に派遣されたと報じられた。しかし、ロシア戦線での大きな突破口は報告されてはおらず、推定によると、ウクライナ軍はザポリージャ地域のラボティン集落近くの地域でさらにいくつかの西側から提供された戦車を失い、多数の兵力と装備を失い続けている。

この地域ではドイツのレオパルト2A6戦車と共に何台もの米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車両が現場で破壊された。その後、同地域は「ブラッドリー・スクエア」として知られるようになった。

ウクライナ軍が今週初めにこの地域での攻撃を強化し始めて以来、さらに多くの破壊されたM2ブラッドレー戦闘車両が積み重なっている。

国防総省のある上級補佐官はニューヨークを拠点とする新聞に直近の攻勢はウクライナにとって「重要なテスト」になるだろうと語った。日曜日(723日)、プーチンはこの大反撃が始まって以来26,000人以上のウクライナ軍兵士が殺害されたと報告した。

***

これで全文の仮訳が終了した。

ウクライナ軍による大反撃はうまく運ばなかった。具体的な要因はいくつもあるだろう。専門家たちの解説を待ちたいと思う。

大局的に見れば、この武力紛争は軍事的には紛争がほぼ終わったけれども、政治的な口論は果てしなく続いている。西側の指導者たちも現実を認めざるを得なくなってきた。お祭り騒ぎはほぼ終わり、このお祭り騒ぎを引き起こした指導者たちにとっては自分たちが蒔いた種が苦い実を結んだことを認めざるを得ない時がやってきたのである。米国では来年11月の大統領選に対する準備が進められており、バイデン大統領にとってはウクライナにおける勝利、あるいは、勝利が無理であるならば、せめて膠着状態に追い込みたいのだ。それが自分が選挙で勝利するための必須条件なのだ。ウクライナ軍による大攻勢の失敗はウクライナ軍の大失敗だけには終わらない。それはNATO軍の大失敗であった。そして、最終的には、米ペンタゴンの大失敗である。

84日の記事(注2)はこのことを明確に指摘している。この最新記事から一部を抜粋しておこう:

ロシア領となっているクリミアを侵略することを目的としたウクライナ軍による南部への大攻撃は血なまぐさい大失敗に変わった。独立系の調査報道ジャーナリストであるクリストファー・ヘラリは、この紛争を通じてロシアを弱体化させようと企んだ米国の政治家は、今や、平和を求めるべきだと述べている。

ウクライナの夏の大攻勢における失敗はペンタゴンが軍事作戦を組織化することができないことを暴露した、と同ジャーナリストは言う。

ウクライナ軍に対するNATOの訓練(ほとんどの場合、わずか数週間で終わる)と、ドイツのレオパルト2戦車や米国のM2ブラッドレー歩兵戦闘車などの誇大宣伝された兵器システムは、戦場においては失敗であったことが実証されているとジャーナリストは指摘。2か月間の戦闘の後、再組織されたウクライナ軍はわずか数マイル前進しただけで、43,000人以上の死傷者を出し、1,800台以上の装甲車両を失った。

前々から喧伝されていたウクライナ軍の大攻勢が失敗に終わったことによって、ウクライナ戦争は軍事的には決着がついたと言えるのではないか。冷静に分析してみると、NATOや米国にはウクライナが勝利を収め、ロシア経済を疲弊させ、プーチンを失脚させるという台本は見事に紙屑になったのである。しかしながら、素人である私が見ても、最初からウクライナには勝ち目はなかったのだから、2014年に和平案が出た時にウクライナはロシアと和平するべきであった。だが、ゼレンスキーはなぜか強硬派に豹変した。恐らく、西側から何らかの動機付けが与えられたのであろう。

参照:

1US Experts Slowly Admitting Ukraine Can’t Win, Hope for Stalemate: By Ian DeMartino, Sputnik, Jul/28/2023

2Ukraine Counter-Offensive Shows Failure of US Military Planning: By James Tweedie, Sputnik, Aug/04/2023

 


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