2018年11月25日日曜日

対ロ戦争ではNATOの勝ち目はない


しばらく前の投稿(2018年9月15日の「米国の崩壊を見ている思いがする」)では以下のようなことを書いた:

「米国だけが軍事大国であると信じる中、無頓着な米国人が見い出す安全保障の姿はどう見ても無知そのものでしかない。クラリティ・プレスから出版されたアンドレイ・マルティアノフの新刊書は米国はせいぜい二流の軍事大国でしかなく、あの間抜けなNATO加盟諸国と共に、ロシアには意のままに、かつ、徹底的に破壊されてしまうだろうと述べている。NATOの加盟国は個々には軍事的に不能である。ロシアが馬鹿馬鹿しい非難や馬鹿馬鹿しい脅かし、あるいは、自分自身の傲慢さに酔いしれて完全に劣等な軍事力を宣伝する馬鹿馬鹿しさ、等に嫌気をさした暁には、現在の軍事力の相関関係において言えば、たとえ西側世界の1インチ平方の土地を救おうとしても西側は何もすることができないであろう。」

これは米国の著名な論者、ポール・クレイグ・ロバーツの言葉だ。彼は米国の一般大衆が如何に完璧に洗脳されているかを指摘し、現実の理解については非常に無頓着である現状を嘆いている。

米軍が有する軍事力は世界でもダントツであるとされている。少なくとも大手メディアが報じるニュースの端々に現れる米軍を描写する際に使われる形容詞を見る限り、われわれ一般大衆は「その通りだ」と思ってしまう。何故かと言えば、その主張を覆すような見解や意見が報道の檜舞台にはほとんど現れて来ないからだ。

そして、そういった独自の見解(つまり、企業メディアの顧客の利益を忖度することのない見解)は多くの場合代替メディアでしか入手できない。代替メディアで特定の記事を入手するには、読者自身が情報を検索し、選択しなければならないという過程がついてまわる。われわれ一般大衆にとってはこれが大きな障害物になる。

しかしながら、ここに凝り固まった頭をほぐすのにうってつけの記事がある [注1]。

この際、歯に衣を着せずに論じる専門家の見解をおさらいしておこう。より客観的な理解ができるようにわれわれ自身を少しでも多く、そして、少しでも正確に啓蒙することができるのではないか・・・と思う次第だ。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>

このテーマは元々は2015年7月にアンズ・レビュー(Unz Review)にて出版されたものだ。しかし、ここで、もう一度この記事を流そうと思う。過去2週間というもの、ロシアとNATOとの間では酷く困難な状況が表面化しているからだ。何と言っても、「セイカー」はこの種のテーマにおいてはダントツである。[訳注: この記事が流されたのは今年の3月26日である。その3週間余り前の3月1日、プーチン大統領はロシア連邦議会で演説を行い、その際にロシアが開発した最先端ミサイルに言及した。これは対空防衛システムでは対応できない極超音速で飛行するミサイルであって、他国は何処も所有してはいない新兵器であると言明した。言わば、2018年3月は東西の軍事バランスが大きく変貌した時期である。このことを念頭に置いて、本投稿を読み進めていただきたいと思う。]

この記事を書いてからというもの、ロシア軍の能力は強化されるばかりである。最新鋭の武器システム、高揚した戦意、シリアでの実戦経験、等がそうさせているのだ。




Photo-1: ロシア軍空挺部隊 - モスクワ緊急展開部隊

最近のアンズ・レビューの記事で私は「想定可能なあらゆる状況においてロシアは国家としての米国を30分で壊滅させることができる(もちろん、米国もロシアに対してまったく同様の状況をもたらすことができる)。米国の戦争計画者は誰もがロシアに対する軍事的行為は急速に拡大する可能性があることを配慮しなければならないだろう」と書いた。

しかし、両国の何れもが、戦術用核兵器を含めて、核兵器を使用する気はないと想定するならば、この想定はロシアは軍事的には依然として米国に挑戦することができるのではないかという新たな論点をもたらす。何らかのマジックによって、すべての核兵器が消えてなくなったとしよう。その場合、ロシアと米国との間の軍事バランスはいったいどのような状況になるのだろうか? 


数字いじりは何の意味も成さない。それはどうしてか: 

この種の疑問に対する典型的な答えは米国の戦争計画者は「数字いじり」と呼ばれる手法に頼ることになる。典型的には、ジャーナリストは毎年発刊される「IISS軍事バランス」または「グローバル戦力」ならびに両国が公表する兵士、主力戦車、装甲型兵員輸送車、歩兵部隊用戦闘車両、戦闘機、重砲、爆撃機、ミサイル、艦船、潜水艦、等の一覧表を頼りにする。

しかし、現実には、そういった数字いじりはまったく何の用も成さない。単純な事例を取り上げてみよう。中国とロシアとの間で戦争が始まったと仮定してみよう。中国は雲南省に1000台の戦車を有しているとする。これらの戦車はこの戦争には何の意味ももたらさない。何故かと言うと、余りにも遠距離に位置しているからだ。この警告を米ロ間の通常兵器による軍事バランスに当てはめた場合、われわれは直ぐにも下記に示すふたつの基本的な論点に到達することだろう: 

a) 全世界に散らばっている米軍の中ではいったいどの部隊が米国の対ロ戦指揮官に直ぐに入手可能となるのか?

b) この部隊はどれだけの量の補強を必要とするのか?補強の人員や物資はどれだけ迅速に戦場に配備することが可能か?

戦車や爆撃機、兵員、重砲は単独では戦えないことを念頭に置いておこう。つまり、これらは理論的には皆が一緒になって「連合部隊」戦と呼ばれる形で戦う。たとえ米国がXの数量の兵員を地点Aに配することができるとしても、戦闘で彼らを支援してくれる他の連合部隊の構成部門が到着しない限り、彼らは敵の餌食となるだけである。

更には、如何なる戦闘部隊も大規模な兵站・補給の取り組みを必要とする。航空機Xを無事に地点Aに配したとしても、ミサイルやメンテナンス機器、メンテナンス要員が現地にいなければ、その航空機は役に立たない。装甲車両部隊は大量の燃料、オイル、潤滑剤を消耗することで良く知られた存在だ。ある試算によると、1991年、米装甲車両部隊はたった5日間持ちこたえただけであった。 その後は、大規模な補給作戦が必要となった。

最終的に、米国がある戦力を地点Aから地点Bへ移動した場合、その戦力は地点 Aで割り当てられていた通常任務を遂行することができなくなる。「地点A」は中東あるいは極東アジアであるかも知れない。そのことを念頭に置くと、この問題は米指揮官にとっては頗る困難な意思決定となるであろうことはあなたにも容易にお分りいただけるだろう。


「重装備の」戦争行為: 

米国には「砂漠の盾作戦」をどのように戦ったかという好例がある。この大規模作戦ではイラクを攻撃するために必要な兵力を集約するために米国にとっては6か月もの前代未聞の兵站の取り組みが必要となった。

さらには、サウジアラビアは(いわゆるカーター・ドクトリンに準拠するために)そのような大規模部隊を受け入れるための準備を何十年間もかけて行っていた。さらには、米国の取り組みについてはサダム・フセインからの反撃はまったく無かった。ここで、下記の問い掛けをしていただきたい: 

a) ロシアとの戦争の場合、ロシアの周辺国にはサウジアラビアのようにインフラを整え、事前にさまざまな装備を集積し、広大な基地や滑走路、深い港湾、等を有する国がいったいあるだろうか?(答:無い) 

b) ロシアが何の対処もせずに米国に6か月もの戦争準備期間を与えてくれるだろうか?(答:そんなことはあり得ない) 

戦争はすべてが砂漠の嵐作戦のように「重装備の」シナリオで展開するという考えには誰かが反論することだろう。米国が米国自身とNATOの緊急展開部隊だけを使って、非常に「軽装備の」軍事介入を行う場合、その展開は果たしてどうなるであろうか?


軽装備の(または、緊急展開による)戦争行為: 

ここで、私は昨年の12月に書いたことを繰り返しておこうと思う。

ロシア人はNATOが誇示する軍事的な脅かしには何の恐怖感も持たない。最近のNATOの動き(中央ヨーロッパにおける新たな基地や兵力、多額の費用の投入、等)に対して見せる彼らの反応としては、これらの行為を挑発的であるとして非難するが、ロシア政府の要人は誰もがロシアはこの種の軍事的脅威に対応することができると言う。

ロシアのある議員はこう述べている。「五つの緊急展開揺動作戦グループが行動を起こしたとしても、われわれは一発のミサイルで解決することが可能だ。」 非常に単純化されてはいるが、本質的には正しい数式だ。 

前にも私が言ったように、ロシア空軍を倍に拡大し、エリート軍団である第45特殊空挺部隊を旅団サイズに拡張するという決断はすでに実行されている。ロシアは自国の移動可能な(空挺)部隊を36,000人から72,000人に拡張することによって、NATOが10,000人強の部隊を作ることに対して先手を打ったとも言える。

まさにこれは典型的なプーチンの対応だ。NATOがファンファーレを鳴らし、花火を打ち上げて特殊緊急展開部隊の創設を発表する間に、プーチンは静かにロシアの空挺部隊を72,000人に倍増する。 

私が言うことを信じて貰いたいのだが、戦闘慣れしたロシア空挺部隊は、快楽主義的で、戦意が低く、多国籍軍(28ヵ国)で構成される5,000人のユーロ軍団に比べると、その戦闘能力は遥かに高い。ユーロ軍団についてはNATOがひとつの部隊にしようとして懸命に注力している最中だ。 米司令官らはこのことを良く承知している。

言葉を代えて言えば、「軽装備」または「緊急展開」による戦争行為ではロシア軍が秀でており、米軍やNATO軍が優位性を実現できるるような場ではない。それに加えて、もしも「軽装備の戦争行為」が計画よりも長期化し、「重装備」の戦争に切り換えざるを得なくなったとしたら、米国またはロシアのいったいどちらが自分たちの重装備部隊をより近くに持っているのだろうか?


衝撃と畏怖:

もちろん、米国の指揮官には他にも可能な戦争モデルがある。つまり、「衝撃と畏怖」作戦だ。これは爆撃機による爆撃で支援されたクルーズミサイル攻撃である。この手法については、私は苦も無く反論を述べることができる。ロシアに対する爆撃はイラクの爆撃とは比べ物にはならない。ロシアの対空防衛能力は地球上でもっとも有能であるからだ。

あるいは、私としてはこうも言える。米国は民間人を爆撃する際には素晴らしい成功の記録を有しているが、コソボにおけるセルビア軍の場合のような軍隊に対する攻撃では惨憺たる失敗に終わっている。

[補足: 米国・NATOが78日間にわたって行った連続攻撃では1,000機を超す航空機が参画し、38,000回以上もの出撃が行われたが、あれはいったい何を達成しようとしたのだろうか? 10機かそこらのセルビア軍の航空機が破壊された(それらのほとんどは地上にあったものだ)。20何台かの装甲型人員輸送車やタンクが破壊され、1,000人超のセルビア兵が殺害され、負傷を負った。

これらは13万人のセルビア兵、80機を超す航空機、1,400台の重砲、1,270台のタンク、825台の装甲型人員輸送車(ウィキペディアから収録)に対する数値だ。第3セルビア軍団はこの大規模な爆撃からはまったく無傷のままで残った。これは空軍の大失敗として歴史に名を残すであろう!]

しかし、たとえ米軍がどうにかこうにか「遠隔地での」戦争行為に成功したと見なしたとしても、その作戦がロシア軍に深刻な影響を与え、ロシア国民の戦意を喪失させることになるとでもお思いだろうか? レニングラードの市民は78日どころか、無限に続きそうな最悪の包囲や爆撃の下で900日間も生きながらえ、降伏なんて考えもしなかった!

現実には、通常兵器による戦争を考えるだけでも、防衛の側に居ること自体がロシアに対米戦略上では極めて大きな利点をもたらす。ウクライナまたはバルト諸国で紛争が起こった場合、地理的に近いことが米国・NATO側からの如何なる攻撃に関してもロシア側に決定的に有利である。米国の指揮官は、たとえまったく違った振る舞いや発言をしていたとしても、誰もがこのことを十分に理解している。

逆に、米国やNATOに対するロシアの攻撃は、端的に言って、まったく同じ理由からあり得ないのだ。ロシアは国境から遠く離れた場所に軍事力を投影することはできない。

事実、ロシア軍の組織や構造、訓練をつぶさに眺めてみると、ロシア軍はロシアの国境で、あるいは、国境から1000キロ以内で敵軍を敗退させるように設計されていることに直ぐに気付くことだろう。

確かに、ロシアの爆撃機や艦船、潜水艦はそれよりも遥かに遠方にまで出撃している様子が観察されようが、これは典型的な「国旗を見せる」行為であって、実戦における軍事的シナリオのための戦闘訓練ではない。

米軍の唯ひとつの真の目的は自衛能力がほとんどないような何処かの小国を叩きのめし、資源を略奪し、世界の覇者たる米国に逆らう政府を転覆させることにある。あるいは、そういった前例を作ることにある。

米軍は軍事的能力が高い敵国に対して大規模な戦争を遂行するように設計されてはいない。ただし、米国の戦略核の戦力だけは他の核大国(ロシアまたは中国)から米国を防護する、あるいは、大戦争を実際に実行する任務を与えられている。

ロシア軍について言えば、ロシア軍は純粋に自衛のために設計されている。ロシア軍にはヨーロッパの如何なる国家に対しても脅威を与えるような能力はなく、ましてや、米国に対してはその可能性はさらに小さくなる。

もちろん、西側の企業メディアは米軍とロシア軍に関しては「数字いじり」を継続することだろう。しかしながら、それは一般大衆に緊急事態の意識を植え付け、恐怖を生じさせるためのものに過ぎない。近い将来に観察される現実としては、通常兵器だけを用いた紛争の場合、米国もロシアも相手を成功裏に攻撃することが可能な手段を持ってはいないのだ。

実際には、残された唯一の危険性は何の準備もなく、如何なる予期もされてはいなかった紛争であろう。それは当事国の何れもが望んでもいないし準備もしてはいないような軍事衝突へと発展する。二つの好例がある。2006年のレバノンに対するイスラエルの攻撃または2008年のロシアの平和維持軍に対するジョージアの攻撃だ。これらは、時には、愚かな政治家が突拍子もないような愚かな決断を下すことがあることを思い起こさせる。

私はプーチンと彼が率いるチームはそのような愚かな決断をすることはないと自信を持って言うことができるが、現在米国の大統領選に出馬しようとしている政治家を見ると、私はどうしようもない恐怖感を覚えてしまう。

あなたはどうお思いだろうか?

<引用終了>


これで、全文の仮訳が終了した。

非常に専門的な解説だ。それだけに、政治の世界における情報操作の妙が見事に浮き彫りされていると私は感じる。われわれが住んでいる西側世界は虚構の上にたった疑似的現実そのものであることを改めて実感させられる。[注:「疑似的現実」という言葉については、今年の1月9日に掲載した「戦場の特派員からの新年のメッセージならびに警告 - アンドレ・ヴルチェク」と題した投稿をご参照ください。]

通常兵器による戦争は当事国やその国民にとっては大きな不幸である。核大国間の核戦争は人類全体の消滅を意味することから、その不幸たるや究極のレベルとなり、もはや比べようもない。

著者の結びの言葉は現代の政治を端的に描写したものである。「現在米国の大統領選に出馬しようとしている政治家を見ると、私はどうしようもない恐怖感を覚えてしまう」と述べている。これは米国の軍産複合体の対外戦略を拒否し、新冷戦を中断するような画期的な政治力を持った候補者が見い出せない政治の現状を憂いたものであって、このまま行くと世界規模の核戦争になってしまうという危機感の表明である。

私はこのブログを通じて何回となく核戦争の回避に関する投稿をして来た。本日の投稿でご紹介した記事には共感する部分が非常に多い。当然のことながらも、核兵器の脅威は通常兵器のそれとは雲泥の差がある。引用記事の著者の言葉を借りれば、一人の愚かな政治家の判断次第でわれわれが住む世界は30分で壊滅してしまう可能性があるのだ。人類にとっての最終的な政治課題は核兵器の廃棄であると言わざるを得ない。



参照:

注1: In a War With Russia NATO Doesn’t Stand a Chance: By The Saker, Mar/26/2018








2018年11月19日月曜日

カショーギの殺害およびイエメンにおけるサウジの戦争犯罪は米国が手助けしたものだ


2001年の911テロ事件によって、米国を中心とした西側諸国は世界規模の対テロ戦争に入った。その最たる戦場はイラクを代表とする中東のイスラム国家である。この戦争の背景には宗教の存在が色濃く反映されている。

イエメンでは内戦が続いている。この内戦はイランを中心とするイスラム教シーア派に対するサウジアラビアが主導するスンニ派の抗争である。この内戦で漁夫の利を占めるのはイスラエルであろう。イスラエル周辺のイスラム諸国が宗派間で内紛を起こし、戦争を継続し、経済的に疲弊すればするほど、イスラエル自身の安全保障は相対的に強化されるのだ。イスラエルにとってはこういった隣国での内戦が長く続いてくれればそれほどいいことはない。イスラエルはイラク戦争においてもイラク内部が分断されることを期待していた。そして、ほぼ希望通りの結果となった。

中東における戦争にはイスラム教の影が濃厚である。政治闘争に宗教的派閥に根ざして国内の団結を促すことによって、戦争と宗教とは切っても切れない関係となっている。換言すると、宗教が戦争のために使われているのである。

日本でも、日清戦争や日露戦争では従軍僧が戦場に派遣された。仏教界はこれらの海外での戦争を布教の機会として捉えた。しかしながら、太平洋戦争での敗戦と共に、仏教の海外における拡大は中断され、従軍僧は帰国した。

ここに日本人として記憶に留めておきたい事実がある。日中戦争の当時、ある住職が「戦争は罪悪である」と発言した。これが理由で、この住職は陸軍の刑法に基づいて有罪と判決された。流言飛語罪で4か月の禁固刑となった。これは真宗大谷派住職の竹中彰元(岐阜県明泉寺)のことだ。法要の際の席に着く順序、つまり、彼の僧侶としての身分は最下位に降格された。結局、彼は「戦争は罪悪である」と言ったことで、国家からも、教団からも制裁を受けたのである。しかしながら、教団側は70年振りに竹中彰元の名誉回復を行ったそうだ。2008年のことだ。こうした反戦僧侶は何人もいる。

私はまったく知らなかったことではあるが、宗教各派ではかっての戦争協力に対する反省が今進められているという。宗教とは何かを問おうとする時、日本の宗教界が具体的にはどのような反省を行おうとしているのか、非常に興味深い。

話を元に戻そう。

イエメンでは飢餓が進行している。サウジの執拗な戦争行為によって、イエメンでは180万人の子供たちが飢餓に曝されている。国連の報道によると、緊急援助活動で持ち込まれる食料品に頼っている民間人の数は8百万人にもなっており、この数は近い内に14百万人に膨れ上がりそうだという。この惨状を伝える記事がニューヨークタイムズに掲載された。すっかり痩せ細った少女の写真は余りにも痛々しく、数多くの読者の心を揺さぶった。この子は7歳で亡くなった [1]


Photo-1: アマル・フサインは7歳で亡くなった。「悲しくてどうしようもない」と彼女の母親は言う。写真提供: ニューヨークタイムズのタイラー・ヒックス


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先月のことであるが、サウジアラビア人の著名なジャーナリストであって、米国に亡命し、米国での永久居住権を持つジャマル・カショーギは、102日、イスタンブールにあるサウジアラビアの領事館を訪れた。彼は再婚するために必要な書類を入手する目的があったという。しかし、その後彼の姿を見た者は誰もいない。明らかに、これは事件である。

この事件は広く報道されていることから、多くの方々はよくご存じだと思う。しかしながら、その背景や黒幕は誰かといったことになると、情報が錯綜し、極端に少ない。

ここに、「カショーギの殺害およびイエメンにおけるサウジの戦争犯罪は米国が手助けしたものだ」と題された記事がある [2]。現段階ではどこまでが真実で、何処からが推測となるのかについての判断が重要であるが、この記事はこの事件の深層を理解し、真実に迫る上では非常に有用であると思う。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。


<引用開始>




Photo-2


ジャマル・カショーギはイスタンブールのサウジアラビア大使館で拷問され、殺害された。死体はバラバラにされたと言われている。この事件は米国内では激怒を引き起こし、世界中に波紋が広がった。しかしながら、カショーギの殺害事件では大騒ぎをしていることとは対照的に、多くのメディアや著名人はサウジアラビアが米国の支援を受けてイエメンで犯している戦争犯罪について苦言を呈することは実に少ない。

ワシントンポスト紙のコラムニストを務めていたカショーギは以前サウジアラビア政府やモハメド・ビン・サルマン王子について批判的な記事を書いたことがある。ワシントンポストはモハメド王子が最近カショーギをおびき出して、サウジアラビアへ呼び戻そうとしていたと報告している。これは一個人がある国から連れ出され、尋問のために他の国へ強制的に移送されるもので、司法管轄外の「他国への引き渡し」に等しい。米国はサウジがカショーギを取り押さえるであろうことを予知していた、とブルームバーグが報じている。この計画を話し合っていることを米諜報機関が傍受していたのである。トルコの情報源によると、カショーギの殺害と死体をバラバラにしたのはサウジの工作員であるという。

カショーギが姿を消した時から6日後、ニューヨークタイムズのコラムニストであるトーマス・L・フリードマンは次のような驚くべき主張をした。 

「もしもジャマルがサウジ政府の工作員によって拉致され、殺害されたとするならば、これは人類に求められる節度の規範を脅かすものであって、イエメンにおける戦争に比べると、数の上ではなく、その本質において非常に悪質だ。」 

妥協をしないニュース: 

イエメンではすでに3年間も続いている戦争の結果、民間人の被害者数が6000人にもなった。この大量殺戮の非道さ、ならびに、世界でも最悪の人道的危機が表面化して来た。この現状を過小評価しようとするフリードマンの試みはめったに見られないというわけではない。CIAの弁護士で、米海軍アカデミーで講師を務めたヴィッキ・ディヴォルは2009年にニューヨーカー誌のジェーン・メイヤーに次のように語っている。

「一般市民にとっては喉を掻き切って相手を殺すことよりもドローン機で数多くの市民を殺害することの方が遥かに受け入れやすいと感じられる。」 

サウジはイエメンで戦争犯罪を犯し、米政府は実際に彼らを支援し、教唆さえしている。 

イエメンで野放しとなっているサウジ・米の戦争犯罪: 

イエメン政府からの抑圧に抵抗するフーシ派の反政府武装勢力を駆逐するために、サウジ主導のアラブ連合軍はイエメンを爆撃している。この内戦は政府に対して長い間抱き続けてきた怒りがその頂点に達した結果である。アラブの春がこの地域を席捲した頃、イエメン政府は弱体化した。イエメンはアデン湾と紅海を結ぶ狭い水路に面しており、戦略的な場所に位置している。

この8月、アラブ連合軍はサアダ県のダヒヤンの町の市場へレーザー誘導型MK82爆弾(重量225キロ)を投下し、40人の児童を含めて、51人の民間人を殺害した。この爆弾は米国の防衛産業においては主導的な地位にあるロッキード・マーチン社が製造したものだ。この爆弾の提供は昨年米国・サウジ間で締結された武器取引の一部であった。

米国製の爆弾を用いて行われた8月の爆撃はこの出来事だけで、他にはないというわけではない。2016年にはアラブ連合軍は同様の爆弾を使って、サナーアで葬式のために集まっていた155人もの民間人を殺害した。

米国の指導者らはイエメンでの戦争犯罪を支援し、教唆: 

最近の1013日、ホデイダに対する攻撃から避難して来た民間人のバスの一団がサウジ主導の空爆に曝されて、少なくとも19人が死亡し、30人が負傷した。アラブ同盟軍は2018年だけでも民間人の車両に対して50回以上の空爆を行っている。

民間人を攻撃することは第4ジュネーブ条約の下では戦争犯罪:

戦争犯罪を犯すことに使用されることを知っていながらも爆弾を提供したことによって、米国の指導者らは慣例法による国際法の下で戦争犯罪を支援し、教唆したとして裁きを受けることになるかも知れない。彼らは20188月のバス攻撃に使用された爆弾を供給した。彼らは2016年の葬式に対する空爆で同様の爆弾が使用されたことを知っていた。

トランプ政権は民間人の被害を最小限に抑制することについて議会で嘘をついた: 

9月12日、マイク・ポンぺオ国務長官は議会に対して次のことを保証した。

「サウジアラビア政府とアラブ首長国連合政府は、(イエメンにおける)両政府の軍事行動によって民間人や民間のインフラに被害が生じるリスクを最小限に抑えるために、誰が見ても明白な行動をとっている。」 

しかしながら、ニューヨーク大学教授のモハマド・バッズィは「ネイション」誌で次のように指摘している:

「国連の専門家グループやいくつかの人権擁護団体がサウジ連合は戦争犯罪に問われるかもしれないと報告した。これらの最近の調査を含めて、トランプ政権の保証は実質的に他のすべての独立した戦争監視団の報告とは矛盾するものだ。」

8月28日、国連の人権委員会によって指名された国際的に、あるいは、この地域で著名な専門家で構成されたグループがイエメンにおける戦争当事者によって引き起こされたと思われる戦争犯罪についてひとつの文書を纏めた。この専門家グループの結論によると、民間人の直接的な被害はその大部分がアラブ同盟軍の空爆によって引き起こされている。居住地域が爆撃され、結婚式や葬式、市場、拘置施設、医療施設、ならびに、民間船舶が攻撃された。

アラブ連合側が民間人の被害を最小限に抑えることに関しては、トランプ政権は議会に対して嘘をついている。「民間人の被害を最小限に抑えることについては進歩が見らない」ことから何人もの軍事専門家や国務省の地域専門家の間には反論があった。それにもかかわらず、ポンぺオはサウジと首長国連邦は被害の低減化に準拠することを保証した、とウオールストリートジャーナルは極秘メモを引用して伝えている。

新しい法律が制定され、米政権は6か月毎に議会に対してサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の両国が民間人の被害を最小化することに取り組んでいることを保証しなければならない。もしも最小化を遂行していなければ、米国はイエメン戦争における給油作戦を中断する。極秘メモによれば、ポンぺオが述べた保証は近い将来のサウジとUAEに対する20億ドルの武器の売買をご破算にしたくはないという動機があったからに他ならない。

情報開示要求によってロイター通信社が入手した情報によると、米国の指導者らはイエメンにおける戦争犯罪を支援し、教唆したことの責任を問われる可能性を心に留めている。

サウジアラビアに対する米国の支援について議会がこれを押し戻そうとする動き:

この3月、給油活動や攻撃目標の特定作業を含めて、イエメンにおけるサウジの軍事行動に対する米国の支援活動を中断するという超党派の決議案が提出された。しかし、これは上院で5544の投票結果によって否決された。これと同様の決議案が下院でも否決された。これらの決議案は戦争権限法を思い起こさせた。大統領がこの法律に基づいて敵地へ米軍を送り込むことができるのは議会が宣戦布告をした時、または、「米国に対する攻撃によって、つまり、その領土や所有物、または、その戦力に対する攻撃によって非常事態が発生した時」、あるいは、軍事力の使用が認証されるといった「具体的な法定上の認証が存在する時」だけに限られる。

上院法案の共同提案者であるバーニー・サンダース上院議員(無所属、バーモント州選出)は「今日、議会では、われわれは実際には敵対行動には関与してはいない、われわれ自身が交戦しているわけではないと議論する者がいる。このことをイエメンの人たちに伝えてみたらどうだ。米国製と明記された武器によってイエメンの民間人は住居を破壊され、命を落とし、米軍が再給油を行った爆撃機からの爆弾が投下され、米軍の支援に基づいて選定された目標が爆撃を受けているのである」と述べている。

その一方で、ドナルド・トランプはカショーギの死に関してサウジを責めることを回避するべく二段階の対応をとろうとしている。

しかし、議会はこれを押し戻している。

10月10日、22名の上院議員から成るグループがトランプに書簡を送り、これがグローバル・マグニツキー人権責任法の引き金を引いた。同法は大統領に「ある外国人が表現の自由を行使する個人に関して国際的に認められている人権を著しく侵害し、拷問を加え、超法規的な殺害行為を行ったかどうかを裁定し、120日以内にその裁定を議会に報告し、当該外国人に関して制裁を課すかどうかを決定する」よう求めている。

この書簡はカショーギは「国際的に認められている人権の侵害を被った犠牲者であると言えよう。これには拷問、凶悪で人らしからぬ、品位を落とすような扱いや罰、告訴や裁判も無く長期間に及ぶ拘束、人の拉致、秘密裡に行う人の拘束、人の生命や自由、または、安全を著しく損なうその他の行為が含まれる。」 

これはトランプ大統領に制裁を課すよう求めている。つまり、「カショーギ氏に対する暴力に責任を有する外国人」に対して制裁を課すことであって、この外国人には「サウジアラビアの最高位の高官も含まれる。」 

このスキャンダルは下院の民主党議員にとっては微妙なタイミングである。もしもサウジアラビアがカショーギの殺害に関与している場合には、米国は積極果敢な策をとるよう与党側の何人かの議員が求めているのだ。しかし、116日の中間選挙が3週間弱に迫っている今、彼らがトランプからの距離を大きくするならば、多くの議員は投票者からの跳ね返りに直面する可能性がある。

*

著作権: Truthoutからの許可の下で転載。

著者のプロフィール: マージョリー・コーンはトーマス・ジェファーソン法科大学院の名誉教授で、元全米法律家協会理事長、国際民主法律家協会副事務局長、「平和のための帰還兵」の顧問を務めた。「米国と拷問 - 法的、倫理的、および、地政学的な課題」の編集長や寄稿者でもある。コーンはブッシュ政権の尋問政策について議会で証言を行った。彼女はグローバルリサーチに頻繁に投稿をしている。

Copyright © Prof. Marjorie Cohn, Global Research, 2018

<引用終了>



これで記事[2]全文の仮訳が終了した。

ニューヨークタイムズの1116日の報道 [3] によると、米CIAはカショーギの殺害にはサウジ皇太子のモハメド・ビン・サルマンが命令を下したとの結論に至ったという。目下、トランプ大統領はCIAからの詳細な報告を待っている。

このCIAの判断が正しいとしてトランプ大統領がCIAの報告内容を受け入れた場合、サウジアラビアに対して何らかの制裁を課さざるを得なくなるであろう。その場合、サウジに対する軍事的な支援も影響を被るに違いない。米政府が何とか守ろうとしている大量の武器の売却がご破算となるのかも・・・。

しかしながら、米国の政治を眺めていると、事実に基づいて行動するよりも、政局を乗り切るためには真実を捨てて、事実を歪曲することが驚く程多い。今後、どのような展開になるのか、眼を離せなくなってきたことは確かだ。さらに二転三転する可能性が十分にある。



参照:

1Another Proud Day For Western Civilization - Yemen Girl Who Turned World’s Eyes to Famine Is Dead: By Declan Walsh, The 21st Century, Nov/03/2018

2Khashoggi’s Murder and Saudi War Crimes in Yemen Were Facilitated by US: By Prof. Marjorie Cohn, Global Research, Oct/22/2018

3: CIA Concludes That Saudi Crown Prince Ordered Khashoggi Killed: By Julian E. Barnes, The New York Times, Nov/16/2018














2018年11月11日日曜日

米国の民主主義を破壊しているのはロシアではなく、金だ

本日お届けしようとする記事は非常に衝撃的だ [注1]。なぜ衝撃的なのかと言うと、本当のことをさらりと言い切っているからだ。

その表題は「米国の民主主義を破壊しているのはロシアではなく、金だ」と断じている。世界中で数多くの政治家や政治評論家、あるいは、ジャーナリストがさまざまな形で論戦を張り、言いくるめようとして来た内容をこの記事は一刀両断し、実に明快な結論を示してくれた。

11月6日の米国の中間選挙の結果、下院では民主党が優勢となった。これを受けて、2年前の大統領選以来米国の世論を分断してきた「ロシア介入説」は、事実はどうであったのかとは無関係に、民主党が推進するトランプ大統領の罷免に繋がって行くのかもしれない、と一部のメディアがすでに論じ初めている。米国社会にとってだけではなく全世界にとって不幸なことには、米国の政治の混迷は晴れそうにはない。皮肉を込めて言えば、これは米国の政治が何時もの調子に戻ったということだ。

さっそく、この記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>



Photo-1: 政治家の背後を金が追いかけて来るのではなく、政治家が金を追いかけるのだ © REUTERS/Brian Snyder


米国の中間選挙には52憶ドル以上が費やされたと推算されている。その内の何億ドルもの額は超富裕者らによって寄付されたものであることは何の秘密でもない。しかしながら、このようなシステムは民主主義とは相容れない。

先週のガーディアン紙の記事でチャック・コリンズは米国の三大富豪、つまり、ウォールマートを経営するウォルトン家、チョコレート製品や食品のマース家、コック兄弟は合計で3487憶ドルもの富を所有する。この金額は米国の平均的な一般庶民の家庭の4百万倍にも相当する。

ノースウェスターン大学の研究者が最近行った調査によると、いわゆる「博愛主義的」で自由主義的な富豪であるビル・ゲイツのスタイルが人気を博している一方で、これらの超富豪の政治的姿勢は「頑固な程に保守的」である。彼らは富裕者に対する減税や遺産税の廃止の正当性を信じている。銀行業や環境関連の規制には反対であって、何百万人もの米国人が頼りにしている社会福祉プログラムには何ほどの関心も示さない。




Photo-2: 共和党に寄付をする超富豪のデイビッド・コック © REUTERS/Carlo Allegri

これらの課題に関して誇り高く発言をする代わりに、彼らは研究者らが名付けるところの「ステルス政治」に徹する。換言すると、彼らは政治に関して公けに発言することは非常に稀で、ロビー活動をする政治家に対して密かに大量の金をばら撒く。これは保守派の超富豪寄付者は悪玉で、自由主義派の超富豪寄付者は善玉であると言おうとしているわけではない。そのような見方は自由主義系の大手メディアが善良さの典型としてジョージ・ソロスのような人物を推進し、コック兄弟の影響については文句を言いたい時にわれわれ一般庶民に信じて貰おうとして使う対比的な言い回しでしかない。事実、米国の超富豪は驚くほど保守的である。さらに言えば、平均的な米国の労働者のためになるより公正で、より良い社会を作ることに彼らが興味を示すことはまったく稀だ。



Photo-3: ジョージ・ソロス © REUTERS/Charles Platiau

しかし、お金を施しものとして分け与える連中の政治とは無関係に、このシステムは合法的な自由を享受するには余りにも腐りきったシステムであり、真の民主主義とは相容れない。いったいどうしてこんなことがあり得るのか?政治家たちは一般民衆に対しては恩義を感じないが、富裕な寄付者や特別利益団体には恩義を感じるのである。私の言うことを鵜呑みにはしないで欲しい。元議員で現在はホワイトハウスの行政管理予算局局長を務めるマイク・マルベイニーは4月に行ったスピーチで本件に関しては下記のように述べた。驚くほど率直であった。

「議会における私のオフィスには序列があった。あなたがロビイストであって、お金を銭さえも私に持って来ないならば、あんたとは話をしない。もしもあんたが私にたくさんのお金を持ってくるロビイストであるならば、私はあんたとじっくりと話をするだろう。」

富裕な寄付者やロビイストは政治家が議会において彼らの利益団体のために奉仕するだろうことをわきまえており、大量の金を政治活動のために費やす。たとえば、保守的な億万長者であるシェルドン・エイデルソンは1憶ドル超を2018年の中間選挙に寄付した。何億ドルもの財産を貯め込んでいるエイデルソンともあろう者がいったいどうしてこうも選挙にかまけているのだろうかと皆さんは不審に思うかも知れないが、その答は卑劣な程の拝金主義にある。コリンズがガーディアン紙に書いているように、彼らは自分たちのために何億ドルもの金を貯めこむためには何百万ドルかを費やすのだ。普通の米国人は、たとえ政治活動家であるとしても、国政にはほとんど何の影響力も持ち得ない。



Photo-4: 現ナマの大波 - 記録的な選挙費用が2018年の中間選挙を「かってない程金のかかる選挙」にした

しかしながら、ほとんどの米国人にとっては政治から金を追放し、自分たちの民主主義を取り戻すことはそれ程大きな関心事ではないようだ。それに代わって、超富裕なエリートらは大手メディアに支えられて、都合よく組み立てられた物語を駆使して、国民の関心をよそに向けることにまんまと成功している。

民主党員にとっては、いわゆるロシアによる「共謀」や「干渉」はドナルド・トランプが大統領に選出されてからというもの、国民の関心を逸らす戦術としては大成功であった。共和党員やトランプ自身にとっては、移民について度を越して恐怖を煽ることはその根本的な原因(多くの場合、米国の対外政策を不安定なものにする)を無視することにはなるが、国民の関心を逸らす戦術としては見事なものだ。

関連記事: #ICYMI: How to spot Russian interference in the US midterm elections (VIDEO)

ロシア人や移民の波がやって来ると言って米国人は際限なく議論していながらも、彼らは現在稼働している政治システムは芯まで腐っており、象牙の塔に住む一握りの超富裕者のために仕えているという事実に焦点を当てることはすっかり忘れてしまっている。女優のマーシャ・ウオーフィールドが先週ツイッターでこのことをうまく総括してくれた:

「より良い生活を求めている移民についてあんた方はどうして頭に来てしまったの?一握りの守銭奴らが世界中の資源を漁っている中で、私たちは自分たちの間で小銭を得ようとして戦いあっていることについてはどうして頭に来ないのかしら?」

2016年には約65億ドルが大統領選や議会選挙のために費やされた。これだけの金があれば、すべての教師に一人当たり2千ドルの昇給をしてやることが可能だ。こういった金はさまざまな形でもっといい使い道があることは明らかであるが、そのことは別にしても、政治の分野へ入って行こうとするとお金がかかり、これが大きな障害になっているという事実が存在する。資金を入手できなければ、選挙運動を行うことさえもできない。そして、(富裕者からの寄付によって)何とか資金を入手したとしても、彼らに対して後々恩義を感じざるを得ないのだ。候補者が大口の寄付や企業からの支援を得ずに草の根的な選挙運動に何とか成功することは非常に稀である。民主党は、多くの場合、政治から金の関与を排除することに賛成するが、現実には彼らは金を寄付しようとする者からは誰からであっても寄付金を受け取る共和党とまったく同じである。



Photo-5: 人種差別的な電話での録音メッセージやソロスからの資金が原因?フロリダ知事選が急速に汚い選挙に変化 

中間選挙に影響を与えようとして、外部団体(選挙運動には関係なく、連携もない団体)が10億ドル以上もの金を費やした。約1億2千8百万ドルは寄付者が誰であるかを公表しない、いわゆる「黒い金」である。ここで、次のことを考えて欲しい。米国人のたった0.42パーセントが今年の選挙のために200ドル以上の寄付を行った。この数値は些細なものに見えるが、これらの寄付者は選挙に対する寄付総額の66パーセント以上を占めているのである。

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これでは民主主義が実施されているとは言えない。民主党と共和党のどちらかを選ぶという行為は顔をピシャリと殴られるか、鼻面にパンチを食らうかのどちらかを選ぶようなものである。このことを米国人が自覚するまでは、何も変わることはないだろう。11月6日に投票結果が集計され、民主党と共和党のどちらかが勝利を収めたとしても、全権力を保持しているのは一握りのエリートたちである。

注: この記事に示されている声明や見解、あるいは、意見はあくまでも著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。

<引用終了>


これで引用記事の全文の仮訳が終了した。

ロシアによる米大統領選への干渉は作り話だと私はかねてから考えていた。私にとってはこの記事が言わんとしていることには十分に正当性があると思う。

「民主党と共和党のどちらかを選ぶという行為は顔をピシャリと殴られるか、鼻面にパンチを食らうかのどちらかを選ぶようなものである。このことを米国人が自覚するまでは、何も変わることはないだろう」という見方は実に秀逸だ。

私は個人的にはトランプ大統領が選出されて良かったと思っている。そう思っていた。もしも好戦的なヒラリー・クリントンが大統領になっていたとしたら、われわれは誰もがすでに核大国同士の核戦争の中で蒸発してしまっていたのではないだろうか。そう考えると、トランプの方が遥かにましだ。私はそんな風に考えていた。

しかしながら、ヒラリー・クリントンもドナルド・トランプも所詮は背後に控えている超富豪エリートに操られているに過ぎないとしたら、トランプの方がましだとする上記の議論はまったく意味を成さなくなる。「民主主義」とか「選挙」という言葉が超富豪のために都合の良い真実を隠すための煙幕として定期的に用いられ、われわれ一般庶民はそれらの言葉が織りなす疑似的現実の中で酔いしれているのだ。そのような現実を考えると、大きな無力感に襲われる。



参照:

注1:It’s not Russia that’s damaging American democracy – it’s money: By Danielle Ryan, RT OP-ED, Nov/04/2018, https://on.rt.com/9hw0









2018年11月7日水曜日

ウクライナとジョージアをNATOの一員とすれば、ロシアを戦争に引っ張り出すことになってしまうかも


米国の大統領が4年あるいは8年毎に入れ替わっても、軍産複合体の目標は変わらない。宿敵であったソ連邦が崩壊し、ワルシャワ条約機構軍が解消され、冷戦の基本的構造が姿を消してから今や27年となる。しかしながら、この27年間を振り返ってみると、西側の精神構造はまったく変わってはいない。冷戦の構造を支えてきたNATOの存在は縮小されるどころか、拡大するばかりだ。

米国の政治は誰が大統領になっても、米国の覇権構造を裏から支えようとするエリートらの行動目標は変わってはいないのだ。

極端な場合、大統領の意向に背いてでもペンタゴンやCIAは密かに、時には、公然と自分たちの行動を継続しようとする。かってアイゼンハワー大統領が軍産複合体の巨大化を心配して、警告を発した。半世紀以上も前の話である。彼らの行動は、今や、最高軍司令官である筈の大統領の対外政策や意向を無視するところまで来た。シリアにおける米軍の存在がその好例である。国内においては2016年の大統領選でロシアが介入したと断定した諜報部門の報告書(January 2017 Intelligence Community Assessment)がそのいい例だ。ロバート・ミュラー特別検察官が率いる調査委員会による長期間の調査にもかかわらず、ロシアが介入したという証拠を見い出せないままである。

軍産複合体の周辺では大手メディアがプロパガンダ役を引き受ける。あの手この手でフェークニュースを作り出すし、一般大衆を洗脳する。高額の返礼を手にしたい評論家には事欠かないのだ。

軍産複合体の半世紀以上にわたる最大の目標は巨大な軍需産業を維持し、発展させることにある。そのためには巨大な軍事組織(ペンタゴン、諜報機関、NATO、ならびに、軍需産業)が必要であると国民が信じてくれるような手強い仮想敵が存在しなければならない。こうして、ソ連を相手にした冷戦が半世紀も継続され、今や中国も新冷戦の相手となった。その結果、超核大国間同士の米ロ間の関係は前の冷戦時のそれよりも遥かに険悪になっていると評されている。

このような現状に関して、米国の識者が書いた啓蒙記事がここにある。「ウクライナとジョージアをNATOの一員とすれば、ロシアを戦争に引っ張り出すことになってしまうかも」と題されている [1]。これは大手メディアが歪曲して一般大衆を洗脳しようとする報道の内容を現実に起こっている出来事に基づいて本当の姿を伝えようとするものである。換言すると、日頃この種の報道を読まない一般大衆にとっては必見の記事である。

著者の論点を熟知している方々も多いと思うが、そういう人はこの投稿を飛ばして、他の関連記事へ進んでいただきたい。この著者の論点に興味を覚える方はこの記事を丁寧に読み進めていただきたいと思う。現実の世界がまったく新しい姿で現れて来ることだろう。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。


<引用開始>



Photo-1: ノルウェー沖でのNATO主導の「Trident Juncture 18」合同演習、
© Global Look Press / US Navy


西側の指導者らは東欧諸国を軍事的に強化し、ロシアとの国境沿いにNATOを配備することはモスクワとの平和を維持するためには不可欠だと主張する。事実とはまったく異なる論理であって、これ程の歪曲はない。 

今世紀の初頭以降、地政学の分野には間違えようもない新たな傾向が生まれている。その傾向の中で、今はウクライナとジョージアが次の段階に差し迫っており、人類の将来にとっては、不幸にも、壊滅の兆候を示している。確かに、これは究極的な破壊へと繋がりかねない。私は、軍備を抑制する条約が次々と破棄される中で、絶え間なくロシアとの国境に迫ろうとしているNATOに関して喋っているのだ。

そのようなシナリオは決して起こらないという約束をしたにもかかわらず、そして、誰が米国の大統領になろうともそれには関係なく、NATOの東方への絶え間のない進出は「ああだ」、「こうだ」といった言分けの下で何年間も継続されて来た。




Photo-2: 「結果としては、ノルウェーの安全を弱めるかも」: NATOの演習には5万人もの将兵が参画し、数十年で最大の規模であ(VIDEOS)  [訳注: NATOのこの巨大な軍事演習は「Trident Juncture 2018」と称され、ノルウェーで進行中である。何千何万もの将兵や車両が投入されている。この演習によって加盟国は自国の安全を感じるだろうとは思うが、中にはこの演習によってノルウェーは攻撃目標になってしまったと危ぶむ声もある。]

欺瞞の歴史: 

1991年のソ連邦の崩壊時にはやや高揚するような、前向きな雰囲気が感じられたけれども、チェコ、ハンガリー、ポーランドが1999年に西側の軍事同盟へ新たに加盟したことによって西側とロシアとの関係は大きく歪んでしまった。ワルシャワ条約機構軍はその10年ほども前に解消されていたことから、数多くの観測筋はNATOのこの出来事を言語道断であると見たのである。

しかしながら、2001年の後半にジョージ・W・ブッシュ大統領が米国は弾道弾仰撃ミサイル制限(ABM)条約から脱退すると宣言した時、実際には、「世界の安定」と名付けられた重要な車両の車輪が外れ始めたのである。「相互確証破壊」という自殺行為を示唆する理論的根拠に基づいて、核兵器制限条約は30年間にわたって核大国間の平和を維持して来たのであった。プーチンはこのABM条約からの米国の脱退は「誤った決断だ」と評している。

この廃止となった条約をここで言及する目的は、あの時点以降、NATOの隠された動機に関する懸念に油を大量に注ぐことになったという点にある。ABM条約という足枷を外されて、米国はミサイル防衛システムを東欧に配備する動きを開始することが可能となった。ブッシュ政権による断続的な動きがあったにもかかわらず、ミサイル防衛システムに関してはモスクワ政府と協力するというオバマ政権の保証は実現されず、そうした協力関係は世間に周知されるレベルには進まなかった。

2016年の5月、NATOはルーマニアに配備されたミサイル防衛システムがフル稼働の体制に入ったと発表した。 

さて、モスクワ政府が手を出そうともせず、協力の要請に関してはNATOが何れは賛成してくれるだろうといった希望を抱いて、何もしないでいたならば、ロシアの国境沿いにおけるこのミサイル防衛システムの配備は事態をまさに一変させていたことであろう。しかし、周知の如く、ロシアは手を出さず、何もしないでいるような選択肢を選ばなかった。実際には、ロシアは信じ難いことをやり遂げていたのである。この3月、ウラジミール・プーチン大統領はロシアが驚くべき迅速さで最新鋭の兵器の開発に成功したことを公表した。これには核エネルギーを動力源とし、無限に近い射程距離を有する巡航ミサイルさえもが含まれる。この最新兵器はロシアの核抑止力を一掃しようとするNATOの努力を単独で無効にしてしまう威力を秘めている。

不幸なことには、ロシアの地政学的な裏庭で煙を吐いている米国のミサイル防衛システムだけがモスクワの心配事という訳ではない。西側のメディアによるプロパガンダやシンクタンクがもたらす山のような虚偽情報、「ロシアの侵攻」という根も葉もない情報を作り出す機関、等の前衛部隊の背後で、NATO軍は加盟国の国内で、主として、ロシアの近傍に位置する国々で、あるいは、ロシアと国境を接している国々でかなりの侵攻をすることが出来た。

たとえば、ポーランドは、国内にNATO軍の一部として順繰りに駐留する米軍の存在がすでにあるにもかかわらず、恒久的な米軍の配備を求めており、実現のためには20億ドルもの支出を喜んで行う用意がある程だ。9月には、ポーランドのアンドレイ・ドウダ大統領と会合を持つ前に、ドナルド・トランプ大統領はこの提案を「真剣に」配慮すると述べた。


その一方で、ポーランド、ラトヴィア、リトアニア、エストニアで行われた「Saber Strike 18」と称する米国主導の大規模軍事演習の後で、NATOは、今、「Trident Juncture 18」と名付けられた演習(1025日から117日まで)を行っている最中である。この演習には31か国から45千名の兵士が参加している。これは「外国の交戦国」からの侵略行為に備えるべく意図されたものであって、最近の西側の恐怖戦術は、むしろ、その仮想敵が誰であるかをあからさまにしてしまっている。

ウクライナとジョージアに狙いを定める: 
米国主導のNATOは、急速に拡大しているこの集団が29か国もが参加国を擁していることにさぞや満足しているだろうと信じて疑わない人たちは、多分、一連の政治的な出来事を追跡しては来なかったのではないか。
疑いもなく、最近のNATOとロシアとの関係において最悪の事態のひとつは20142月にやって来た。EUとの連携協定から身を引くと決断したキエフ政府によって触発され、一連の暴力沙汰を伴った反政府運動はヴィクトル・ヤヌコヴィッチウクライナ大統領を政権から追い出し、キエフ政府を転覆させるに至った。故ジョン・マケインやヴィクトリア・ヌーランドを含め、数多くの米国人(ロシア人ではないことに注意)の政治家や外交官がこの騒乱の真っ只中にキエフの街頭に現れ、反政府感情を煽るだけではなく、この国を率いるのは誰かを決めることに関してさえも文字通り支援を惜しまなかった。しかしながら、西側のメディアにおいては今日まで「ウクライナへの侵攻」を責めたてる相手は依然としてロシアなのである。
この作り話の多くはクリミアで実施された民主的な住民投票に根ざしている。この住民投票は右翼の武力勢力がウクライナ全土に脅威を与え、敵意が最高潮に達した頃に行われ、投票者の97パーセントがロシア連邦に加わることに賛成した。あの歴史的な投票から1年後、西側のメディアはロシアに対する好意的な感情はまったく変わってはいないことを認めざるを得なかった。
ところが、今日でさえも、数多くの西側の一般大衆はロシアが軍事力を使って、クリミアを掴み取ったのだと信じ込んでいる。たとえば、英国のタブロイド紙に寄せられたコメントは「2014年に、ロシア軍は、クリミア地域を速やかにロシア連邦に組み入れ、ウクライナのクリミア地域を併合した」と述べている。面白いことには、まったく見当外れのこれらの17単語の中には住民投票については一言も含まれてはいないのだ。


西側世界がロシアのことを世界で最悪の「お荷物」であるとして(作為的に)描写することになったもうひとつの出来事はロシアとジョージアとの間で5日間続いた紛争であった。ここでも、西側のメディアは、通常、この出来事を「南オセチアの親ロ派住民に対する攻勢に関してジョージアを批判し、ロシアは2008年に陸・海・空の大規模な侵攻をした」と説明している。上記の説明は馬の前に荷馬車を繋いだような代物であることから、一体誰が侵攻したのかは極めて明白である。実際には、南オセチアに駐留していたロシアから派遣されていた平和維持部隊を攻撃し、殺害したのはジョージア軍であった。その結果、ロシアが反応したのであった。

西側のシナリオに忠実なメディアの巧妙な報道のせいで、西側の一般大衆は著しく真の情報に欠けている。これは、主として、上記のふたつの出来事に由来する。ウクライナとジョージアをNATOに加えるためにますます頻繁な議論が行われている。

言うまでもなく、このようなシナリオは西側とロシアとの関係を石器時代に戻してしまうかも知れない。
このような現状はまず最初に誰もが想定する事態よりもはるかに厳しいものであろうと思う。何故ならば、われわれは今地域的な核兵器の使用がより容易になる可能性に対処しなければならないのだ。これはドナルド・トランプ米大統領が何十年にもわたって功を奏してきた中距離核戦力制限(INF)条約から脱退する意図を公表したからである。


分析専門家らはこのような動きは核戦争の勃発を促しかねないと言う。

ロシア外務省の欧州協力局のディレクターであるアンドレイ・ケリンは、米国がもうひとつの軍縮条約からも撤退することを検討している最中でもあり、ジョージアがNATOに加盟することのリスクはロシアに「ソチ近辺の防衛網」を用いてこれに対応することを強いるであろうと述べている。




Photo-3: NATO軍の大規模な演習の外側で実弾によるミサイル発射演習を行うロシア軍

「仮想敵国によって引き起こされるかも知れない行動を阻止するには、われわれは膨大な資源を充当しなければならない。これはもう避けようがない」と、ケリンは「ヴァルダイ討論グループ」の出席者に向かって述べた。この討論会は毎年ロシアで開催されている。ウクライナの軍事同盟への加盟は、これと同様に、深刻な検討を促しており、「ロシアに国防の焦点を南部に移動するよう強いることであろう。」 

換言すると、誰か賢明な人が西側で発言し、ロシアは西側の利益に対しては何の脅威にもならないとはっきりと指摘しない限り、将来の大惨事の可能性はある程度の倍率で増大することであろう。

ケリンはウクライナとジョージアのNATO加盟は当面は「あり得そうもない」としている。しかしながら、たった5年前、ほとんどの人たちは米ロ関係がたった何か月かの間に底を打つまで劣化することなんて「あり得そうもない」と考えていた。われわれはこのことを新たに記憶に留めて置かなければならないだろう。

今日何か確実なことがひとつだけ存在するとすれば、それは地政学の世界における不安定性のレベルのことであろう。われわれの誰にとってもそれはべらぼうに大きな懸念であるに違いない。@Robert_Bridge


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注: この記事で述べられている声明や見解、意見はあくまでも著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。

<引用終了>



これで全文の仮訳が終了した。

著者のプロフィールをここに付け足しておこう。著者のロバート・ブリッジは米国の作家でジャーナリストである。「モスコーニュース」の編集長を務めた。彼の2013年の著作: Midnight in the American Empire。

私自身もこの「作り出された新冷戦」に関連するさまざまなエピソードについては何回か投稿して来た。多分、いくつかある私の投稿の中では、2014年のウクライナ革命に関する投稿がもっとも重要ではないかと思う。興味がある方は2014423日の投稿、「ウクライナのキエフで死者を出した発砲事件には反政府派が関与 - ドイツの公共テレビ放送」をご一覧ください。

米国が仕組んだウクライナ革命の大騒乱は今やほとんどが解明されている。しかしながら、全世界の一般大衆にとって不幸なことには、西側の大手メディアがそう認めるかどうかは現実にはまったく別問題だ。因みに、911事件の本当の姿を米国政府が公表するのかどうかを考えて見れば明白だ。米国政府はしたたかに真相を隠蔽したままである。米ロ新冷戦は米国の政治指導者にとっては、911事件と比較すると、何十倍、何百倍もの重要さを秘めている。端的に言えば、911事件は単なる戦術のひとつであった。ところが、米ロ新冷戦は戦略そのものである。戦略の舞台裏の事情はそう簡単には公表することはできないのだ。



参照:

1NATO membership for Ukraine and Georgia would bring out the bear in RussiaBy Robert Bridge, RT, Nov/02/2018, https://on.rt.com/9hsz