2018年11月11日日曜日

米国の民主主義を破壊しているのはロシアではなく、金だ

本日お届けしようとする記事は非常に衝撃的だ [注1]。なぜ衝撃的なのかと言うと、本当のことをさらりと言い切っているからだ。

その表題は「米国の民主主義を破壊しているのはロシアではなく、金だ」と断じている。世界中で数多くの政治家や政治評論家、あるいは、ジャーナリストがさまざまな形で論戦を張り、言いくるめようとして来た内容をこの記事は一刀両断し、実に明快な結論を示してくれた。

11月6日の米国の中間選挙の結果、下院では民主党が優勢となった。これを受けて、2年前の大統領選以来米国の世論を分断してきた「ロシア介入説」は、事実はどうであったのかとは無関係に、民主党が推進するトランプ大統領の罷免に繋がって行くのかもしれない、と一部のメディアがすでに論じ初めている。米国社会にとってだけではなく全世界にとって不幸なことには、米国の政治の混迷は晴れそうにはない。皮肉を込めて言えば、これは米国の政治が何時もの調子に戻ったということだ。

さっそく、この記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>



Photo-1: 政治家の背後を金が追いかけて来るのではなく、政治家が金を追いかけるのだ © REUTERS/Brian Snyder


米国の中間選挙には52憶ドル以上が費やされたと推算されている。その内の何億ドルもの額は超富裕者らによって寄付されたものであることは何の秘密でもない。しかしながら、このようなシステムは民主主義とは相容れない。

先週のガーディアン紙の記事でチャック・コリンズは米国の三大富豪、つまり、ウォールマートを経営するウォルトン家、チョコレート製品や食品のマース家、コック兄弟は合計で3487憶ドルもの富を所有する。この金額は米国の平均的な一般庶民の家庭の4百万倍にも相当する。

ノースウェスターン大学の研究者が最近行った調査によると、いわゆる「博愛主義的」で自由主義的な富豪であるビル・ゲイツのスタイルが人気を博している一方で、これらの超富豪の政治的姿勢は「頑固な程に保守的」である。彼らは富裕者に対する減税や遺産税の廃止の正当性を信じている。銀行業や環境関連の規制には反対であって、何百万人もの米国人が頼りにしている社会福祉プログラムには何ほどの関心も示さない。




Photo-2: 共和党に寄付をする超富豪のデイビッド・コック © REUTERS/Carlo Allegri

これらの課題に関して誇り高く発言をする代わりに、彼らは研究者らが名付けるところの「ステルス政治」に徹する。換言すると、彼らは政治に関して公けに発言することは非常に稀で、ロビー活動をする政治家に対して密かに大量の金をばら撒く。これは保守派の超富豪寄付者は悪玉で、自由主義派の超富豪寄付者は善玉であると言おうとしているわけではない。そのような見方は自由主義系の大手メディアが善良さの典型としてジョージ・ソロスのような人物を推進し、コック兄弟の影響については文句を言いたい時にわれわれ一般庶民に信じて貰おうとして使う対比的な言い回しでしかない。事実、米国の超富豪は驚くほど保守的である。さらに言えば、平均的な米国の労働者のためになるより公正で、より良い社会を作ることに彼らが興味を示すことはまったく稀だ。



Photo-3: ジョージ・ソロス © REUTERS/Charles Platiau

しかし、お金を施しものとして分け与える連中の政治とは無関係に、このシステムは合法的な自由を享受するには余りにも腐りきったシステムであり、真の民主主義とは相容れない。いったいどうしてこんなことがあり得るのか?政治家たちは一般民衆に対しては恩義を感じないが、富裕な寄付者や特別利益団体には恩義を感じるのである。私の言うことを鵜呑みにはしないで欲しい。元議員で現在はホワイトハウスの行政管理予算局局長を務めるマイク・マルベイニーは4月に行ったスピーチで本件に関しては下記のように述べた。驚くほど率直であった。

「議会における私のオフィスには序列があった。あなたがロビイストであって、お金を銭さえも私に持って来ないならば、あんたとは話をしない。もしもあんたが私にたくさんのお金を持ってくるロビイストであるならば、私はあんたとじっくりと話をするだろう。」

富裕な寄付者やロビイストは政治家が議会において彼らの利益団体のために奉仕するだろうことをわきまえており、大量の金を政治活動のために費やす。たとえば、保守的な億万長者であるシェルドン・エイデルソンは1憶ドル超を2018年の中間選挙に寄付した。何億ドルもの財産を貯め込んでいるエイデルソンともあろう者がいったいどうしてこうも選挙にかまけているのだろうかと皆さんは不審に思うかも知れないが、その答は卑劣な程の拝金主義にある。コリンズがガーディアン紙に書いているように、彼らは自分たちのために何億ドルもの金を貯めこむためには何百万ドルかを費やすのだ。普通の米国人は、たとえ政治活動家であるとしても、国政にはほとんど何の影響力も持ち得ない。



Photo-4: 現ナマの大波 - 記録的な選挙費用が2018年の中間選挙を「かってない程金のかかる選挙」にした

しかしながら、ほとんどの米国人にとっては政治から金を追放し、自分たちの民主主義を取り戻すことはそれ程大きな関心事ではないようだ。それに代わって、超富裕なエリートらは大手メディアに支えられて、都合よく組み立てられた物語を駆使して、国民の関心をよそに向けることにまんまと成功している。

民主党員にとっては、いわゆるロシアによる「共謀」や「干渉」はドナルド・トランプが大統領に選出されてからというもの、国民の関心を逸らす戦術としては大成功であった。共和党員やトランプ自身にとっては、移民について度を越して恐怖を煽ることはその根本的な原因(多くの場合、米国の対外政策を不安定なものにする)を無視することにはなるが、国民の関心を逸らす戦術としては見事なものだ。

関連記事: #ICYMI: How to spot Russian interference in the US midterm elections (VIDEO)

ロシア人や移民の波がやって来ると言って米国人は際限なく議論していながらも、彼らは現在稼働している政治システムは芯まで腐っており、象牙の塔に住む一握りの超富裕者のために仕えているという事実に焦点を当てることはすっかり忘れてしまっている。女優のマーシャ・ウオーフィールドが先週ツイッターでこのことをうまく総括してくれた:

「より良い生活を求めている移民についてあんた方はどうして頭に来てしまったの?一握りの守銭奴らが世界中の資源を漁っている中で、私たちは自分たちの間で小銭を得ようとして戦いあっていることについてはどうして頭に来ないのかしら?」

2016年には約65億ドルが大統領選や議会選挙のために費やされた。これだけの金があれば、すべての教師に一人当たり2千ドルの昇給をしてやることが可能だ。こういった金はさまざまな形でもっといい使い道があることは明らかであるが、そのことは別にしても、政治の分野へ入って行こうとするとお金がかかり、これが大きな障害になっているという事実が存在する。資金を入手できなければ、選挙運動を行うことさえもできない。そして、(富裕者からの寄付によって)何とか資金を入手したとしても、彼らに対して後々恩義を感じざるを得ないのだ。候補者が大口の寄付や企業からの支援を得ずに草の根的な選挙運動に何とか成功することは非常に稀である。民主党は、多くの場合、政治から金の関与を排除することに賛成するが、現実には彼らは金を寄付しようとする者からは誰からであっても寄付金を受け取る共和党とまったく同じである。



Photo-5: 人種差別的な電話での録音メッセージやソロスからの資金が原因?フロリダ知事選が急速に汚い選挙に変化 

中間選挙に影響を与えようとして、外部団体(選挙運動には関係なく、連携もない団体)が10億ドル以上もの金を費やした。約1億2千8百万ドルは寄付者が誰であるかを公表しない、いわゆる「黒い金」である。ここで、次のことを考えて欲しい。米国人のたった0.42パーセントが今年の選挙のために200ドル以上の寄付を行った。この数値は些細なものに見えるが、これらの寄付者は選挙に対する寄付総額の66パーセント以上を占めているのである。

関連記事: From dumpster fires to deportation buses: The midterms’ craziest campaign ads

これでは民主主義が実施されているとは言えない。民主党と共和党のどちらかを選ぶという行為は顔をピシャリと殴られるか、鼻面にパンチを食らうかのどちらかを選ぶようなものである。このことを米国人が自覚するまでは、何も変わることはないだろう。11月6日に投票結果が集計され、民主党と共和党のどちらかが勝利を収めたとしても、全権力を保持しているのは一握りのエリートたちである。

注: この記事に示されている声明や見解、あるいは、意見はあくまでも著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。

<引用終了>


これで引用記事の全文の仮訳が終了した。

ロシアによる米大統領選への干渉は作り話だと私はかねてから考えていた。私にとってはこの記事が言わんとしていることには十分に正当性があると思う。

「民主党と共和党のどちらかを選ぶという行為は顔をピシャリと殴られるか、鼻面にパンチを食らうかのどちらかを選ぶようなものである。このことを米国人が自覚するまでは、何も変わることはないだろう」という見方は実に秀逸だ。

私は個人的にはトランプ大統領が選出されて良かったと思っている。そう思っていた。もしも好戦的なヒラリー・クリントンが大統領になっていたとしたら、われわれは誰もがすでに核大国同士の核戦争の中で蒸発してしまっていたのではないだろうか。そう考えると、トランプの方が遥かにましだ。私はそんな風に考えていた。

しかしながら、ヒラリー・クリントンもドナルド・トランプも所詮は背後に控えている超富豪エリートに操られているに過ぎないとしたら、トランプの方がましだとする上記の議論はまったく意味を成さなくなる。「民主主義」とか「選挙」という言葉が超富豪のために都合の良い真実を隠すための煙幕として定期的に用いられ、われわれ一般庶民はそれらの言葉が織りなす疑似的現実の中で酔いしれているのだ。そのような現実を考えると、大きな無力感に襲われる。



参照:

注1:It’s not Russia that’s damaging American democracy – it’s money: By Danielle Ryan, RT OP-ED, Nov/04/2018, https://on.rt.com/9hw0









2018年11月7日水曜日

ウクライナとジョージアをNATOの一員とすれば、ロシアを戦争に引っ張り出すことになってしまうかも


米国の大統領が4年あるいは8年毎に入れ替わっても、軍産複合体の目標は変わらない。宿敵であったソ連邦が崩壊し、ワルシャワ条約機構軍が解消され、冷戦の基本的構造が姿を消してから今や27年となる。しかしながら、この27年間を振り返ってみると、西側の精神構造はまったく変わってはいない。冷戦の構造を支えてきたNATOの存在は縮小されるどころか、拡大するばかりだ。

米国の政治は誰が大統領になっても、米国の覇権構造を裏から支えようとするエリートらの行動目標は変わってはいないのだ。

極端な場合、大統領の意向に背いてでもペンタゴンやCIAは密かに、時には、公然と自分たちの行動を継続しようとする。かってアイゼンハワー大統領が軍産複合体の巨大化を心配して、警告を発した。半世紀以上も前の話である。彼らの行動は、今や、最高軍司令官である筈の大統領の対外政策や意向を無視するところまで来た。シリアにおける米軍の存在がその好例である。国内においては2016年の大統領選でロシアが介入したと断定した諜報部門の報告書(January 2017 Intelligence Community Assessment)がそのいい例だ。ロバート・ミュラー特別検察官が率いる調査委員会による長期間の調査にもかかわらず、ロシアが介入したという証拠を見い出せないままである。

軍産複合体の周辺では大手メディアがプロパガンダ役を引き受ける。あの手この手でフェークニュースを作り出すし、一般大衆を洗脳する。高額の返礼を手にしたい評論家には事欠かないのだ。

軍産複合体の半世紀以上にわたる最大の目標は巨大な軍需産業を維持し、発展させることにある。そのためには巨大な軍事組織(ペンタゴン、諜報機関、NATO、ならびに、軍需産業)が必要であると国民が信じてくれるような手強い仮想敵が存在しなければならない。こうして、ソ連を相手にした冷戦が半世紀も継続され、今や中国も新冷戦の相手となった。その結果、超核大国間同士の米ロ間の関係は前の冷戦時のそれよりも遥かに険悪になっていると評されている。

このような現状に関して、米国の識者が書いた啓蒙記事がここにある。「ウクライナとジョージアをNATOの一員とすれば、ロシアを戦争に引っ張り出すことになってしまうかも」と題されている [1]。これは大手メディアが歪曲して一般大衆を洗脳しようとする報道の内容を現実に起こっている出来事に基づいて本当の姿を伝えようとするものである。換言すると、日頃この種の報道を読まない一般大衆にとっては必見の記事である。

著者の論点を熟知している方々も多いと思うが、そういう人はこの投稿を飛ばして、他の関連記事へ進んでいただきたい。この著者の論点に興味を覚える方はこの記事を丁寧に読み進めていただきたいと思う。現実の世界がまったく新しい姿で現れて来ることだろう。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。


<引用開始>



Photo-1: ノルウェー沖でのNATO主導の「Trident Juncture 18」合同演習、
© Global Look Press / US Navy


西側の指導者らは東欧諸国を軍事的に強化し、ロシアとの国境沿いにNATOを配備することはモスクワとの平和を維持するためには不可欠だと主張する。事実とはまったく異なる論理であって、これ程の歪曲はない。 

今世紀の初頭以降、地政学の分野には間違えようもない新たな傾向が生まれている。その傾向の中で、今はウクライナとジョージアが次の段階に差し迫っており、人類の将来にとっては、不幸にも、壊滅の兆候を示している。確かに、これは究極的な破壊へと繋がりかねない。私は、軍備を抑制する条約が次々と破棄される中で、絶え間なくロシアとの国境に迫ろうとしているNATOに関して喋っているのだ。

そのようなシナリオは決して起こらないという約束をしたにもかかわらず、そして、誰が米国の大統領になろうともそれには関係なく、NATOの東方への絶え間のない進出は「ああだ」、「こうだ」といった言分けの下で何年間も継続されて来た。




Photo-2: 「結果としては、ノルウェーの安全を弱めるかも」: NATOの演習には5万人もの将兵が参画し、数十年で最大の規模であ(VIDEOS)  [訳注: NATOのこの巨大な軍事演習は「Trident Juncture 2018」と称され、ノルウェーで進行中である。何千何万もの将兵や車両が投入されている。この演習によって加盟国は自国の安全を感じるだろうとは思うが、中にはこの演習によってノルウェーは攻撃目標になってしまったと危ぶむ声もある。]

欺瞞の歴史: 

1991年のソ連邦の崩壊時にはやや高揚するような、前向きな雰囲気が感じられたけれども、チェコ、ハンガリー、ポーランドが1999年に西側の軍事同盟へ新たに加盟したことによって西側とロシアとの関係は大きく歪んでしまった。ワルシャワ条約機構軍はその10年ほども前に解消されていたことから、数多くの観測筋はNATOのこの出来事を言語道断であると見たのである。

しかしながら、2001年の後半にジョージ・W・ブッシュ大統領が米国は弾道弾仰撃ミサイル制限(ABM)条約から脱退すると宣言した時、実際には、「世界の安定」と名付けられた重要な車両の車輪が外れ始めたのである。「相互確証破壊」という自殺行為を示唆する理論的根拠に基づいて、核兵器制限条約は30年間にわたって核大国間の平和を維持して来たのであった。プーチンはこのABM条約からの米国の脱退は「誤った決断だ」と評している。

この廃止となった条約をここで言及する目的は、あの時点以降、NATOの隠された動機に関する懸念に油を大量に注ぐことになったという点にある。ABM条約という足枷を外されて、米国はミサイル防衛システムを東欧に配備する動きを開始することが可能となった。ブッシュ政権による断続的な動きがあったにもかかわらず、ミサイル防衛システムに関してはモスクワ政府と協力するというオバマ政権の保証は実現されず、そうした協力関係は世間に周知されるレベルには進まなかった。

2016年の5月、NATOはルーマニアに配備されたミサイル防衛システムがフル稼働の体制に入ったと発表した。 

さて、モスクワ政府が手を出そうともせず、協力の要請に関してはNATOが何れは賛成してくれるだろうといった希望を抱いて、何もしないでいたならば、ロシアの国境沿いにおけるこのミサイル防衛システムの配備は事態をまさに一変させていたことであろう。しかし、周知の如く、ロシアは手を出さず、何もしないでいるような選択肢を選ばなかった。実際には、ロシアは信じ難いことをやり遂げていたのである。この3月、ウラジミール・プーチン大統領はロシアが驚くべき迅速さで最新鋭の兵器の開発に成功したことを公表した。これには核エネルギーを動力源とし、無限に近い射程距離を有する巡航ミサイルさえもが含まれる。この最新兵器はロシアの核抑止力を一掃しようとするNATOの努力を単独で無効にしてしまう威力を秘めている。

不幸なことには、ロシアの地政学的な裏庭で煙を吐いている米国のミサイル防衛システムだけがモスクワの心配事という訳ではない。西側のメディアによるプロパガンダやシンクタンクがもたらす山のような虚偽情報、「ロシアの侵攻」という根も葉もない情報を作り出す機関、等の前衛部隊の背後で、NATO軍は加盟国の国内で、主として、ロシアの近傍に位置する国々で、あるいは、ロシアと国境を接している国々でかなりの侵攻をすることが出来た。

たとえば、ポーランドは、国内にNATO軍の一部として順繰りに駐留する米軍の存在がすでにあるにもかかわらず、恒久的な米軍の配備を求めており、実現のためには20億ドルもの支出を喜んで行う用意がある程だ。9月には、ポーランドのアンドレイ・ドウダ大統領と会合を持つ前に、ドナルド・トランプ大統領はこの提案を「真剣に」配慮すると述べた。


その一方で、ポーランド、ラトヴィア、リトアニア、エストニアで行われた「Saber Strike 18」と称する米国主導の大規模軍事演習の後で、NATOは、今、「Trident Juncture 18」と名付けられた演習(1025日から117日まで)を行っている最中である。この演習には31か国から45千名の兵士が参加している。これは「外国の交戦国」からの侵略行為に備えるべく意図されたものであって、最近の西側の恐怖戦術は、むしろ、その仮想敵が誰であるかをあからさまにしてしまっている。

ウクライナとジョージアに狙いを定める: 
米国主導のNATOは、急速に拡大しているこの集団が29か国もが参加国を擁していることにさぞや満足しているだろうと信じて疑わない人たちは、多分、一連の政治的な出来事を追跡しては来なかったのではないか。
疑いもなく、最近のNATOとロシアとの関係において最悪の事態のひとつは20142月にやって来た。EUとの連携協定から身を引くと決断したキエフ政府によって触発され、一連の暴力沙汰を伴った反政府運動はヴィクトル・ヤヌコヴィッチウクライナ大統領を政権から追い出し、キエフ政府を転覆させるに至った。故ジョン・マケインやヴィクトリア・ヌーランドを含め、数多くの米国人(ロシア人ではないことに注意)の政治家や外交官がこの騒乱の真っ只中にキエフの街頭に現れ、反政府感情を煽るだけではなく、この国を率いるのは誰かを決めることに関してさえも文字通り支援を惜しまなかった。しかしながら、西側のメディアにおいては今日まで「ウクライナへの侵攻」を責めたてる相手は依然としてロシアなのである。
この作り話の多くはクリミアで実施された民主的な住民投票に根ざしている。この住民投票は右翼の武力勢力がウクライナ全土に脅威を与え、敵意が最高潮に達した頃に行われ、投票者の97パーセントがロシア連邦に加わることに賛成した。あの歴史的な投票から1年後、西側のメディアはロシアに対する好意的な感情はまったく変わってはいないことを認めざるを得なかった。
ところが、今日でさえも、数多くの西側の一般大衆はロシアが軍事力を使って、クリミアを掴み取ったのだと信じ込んでいる。たとえば、英国のタブロイド紙に寄せられたコメントは「2014年に、ロシア軍は、クリミア地域を速やかにロシア連邦に組み入れ、ウクライナのクリミア地域を併合した」と述べている。面白いことには、まったく見当外れのこれらの17単語の中には住民投票については一言も含まれてはいないのだ。


西側世界がロシアのことを世界で最悪の「お荷物」であるとして(作為的に)描写することになったもうひとつの出来事はロシアとジョージアとの間で5日間続いた紛争であった。ここでも、西側のメディアは、通常、この出来事を「南オセチアの親ロ派住民に対する攻勢に関してジョージアを批判し、ロシアは2008年に陸・海・空の大規模な侵攻をした」と説明している。上記の説明は馬の前に荷馬車を繋いだような代物であることから、一体誰が侵攻したのかは極めて明白である。実際には、南オセチアに駐留していたロシアから派遣されていた平和維持部隊を攻撃し、殺害したのはジョージア軍であった。その結果、ロシアが反応したのであった。

西側のシナリオに忠実なメディアの巧妙な報道のせいで、西側の一般大衆は著しく真の情報に欠けている。これは、主として、上記のふたつの出来事に由来する。ウクライナとジョージアをNATOに加えるためにますます頻繁な議論が行われている。

言うまでもなく、このようなシナリオは西側とロシアとの関係を石器時代に戻してしまうかも知れない。
このような現状はまず最初に誰もが想定する事態よりもはるかに厳しいものであろうと思う。何故ならば、われわれは今地域的な核兵器の使用がより容易になる可能性に対処しなければならないのだ。これはドナルド・トランプ米大統領が何十年にもわたって功を奏してきた中距離核戦力制限(INF)条約から脱退する意図を公表したからである。


分析専門家らはこのような動きは核戦争の勃発を促しかねないと言う。

ロシア外務省の欧州協力局のディレクターであるアンドレイ・ケリンは、米国がもうひとつの軍縮条約からも撤退することを検討している最中でもあり、ジョージアがNATOに加盟することのリスクはロシアに「ソチ近辺の防衛網」を用いてこれに対応することを強いるであろうと述べている。




Photo-3: NATO軍の大規模な演習の外側で実弾によるミサイル発射演習を行うロシア軍

「仮想敵国によって引き起こされるかも知れない行動を阻止するには、われわれは膨大な資源を充当しなければならない。これはもう避けようがない」と、ケリンは「ヴァルダイ討論グループ」の出席者に向かって述べた。この討論会は毎年ロシアで開催されている。ウクライナの軍事同盟への加盟は、これと同様に、深刻な検討を促しており、「ロシアに国防の焦点を南部に移動するよう強いることであろう。」 

換言すると、誰か賢明な人が西側で発言し、ロシアは西側の利益に対しては何の脅威にもならないとはっきりと指摘しない限り、将来の大惨事の可能性はある程度の倍率で増大することであろう。

ケリンはウクライナとジョージアのNATO加盟は当面は「あり得そうもない」としている。しかしながら、たった5年前、ほとんどの人たちは米ロ関係がたった何か月かの間に底を打つまで劣化することなんて「あり得そうもない」と考えていた。われわれはこのことを新たに記憶に留めて置かなければならないだろう。

今日何か確実なことがひとつだけ存在するとすれば、それは地政学の世界における不安定性のレベルのことであろう。われわれの誰にとってもそれはべらぼうに大きな懸念であるに違いない。@Robert_Bridge


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注: この記事で述べられている声明や見解、意見はあくまでも著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。

<引用終了>



これで全文の仮訳が終了した。

著者のプロフィールをここに付け足しておこう。著者のロバート・ブリッジは米国の作家でジャーナリストである。「モスコーニュース」の編集長を務めた。彼の2013年の著作: Midnight in the American Empire。

私自身もこの「作り出された新冷戦」に関連するさまざまなエピソードについては何回か投稿して来た。多分、いくつかある私の投稿の中では、2014年のウクライナ革命に関する投稿がもっとも重要ではないかと思う。興味がある方は2014423日の投稿、「ウクライナのキエフで死者を出した発砲事件には反政府派が関与 - ドイツの公共テレビ放送」をご一覧ください。

米国が仕組んだウクライナ革命の大騒乱は今やほとんどが解明されている。しかしながら、全世界の一般大衆にとって不幸なことには、西側の大手メディアがそう認めるかどうかは現実にはまったく別問題だ。因みに、911事件の本当の姿を米国政府が公表するのかどうかを考えて見れば明白だ。米国政府はしたたかに真相を隠蔽したままである。米ロ新冷戦は米国の政治指導者にとっては、911事件と比較すると、何十倍、何百倍もの重要さを秘めている。端的に言えば、911事件は単なる戦術のひとつであった。ところが、米ロ新冷戦は戦略そのものである。戦略の舞台裏の事情はそう簡単には公表することはできないのだ。



参照:

1NATO membership for Ukraine and Georgia would bring out the bear in RussiaBy Robert Bridge, RT, Nov/02/2018, https://on.rt.com/9hsz