2019年8月29日木曜日

米国の資本主義は略奪で成り立っている


私は1983年から2000年までカリフォルニアの片田舎にある子会社で勤務をしていた。この時初めて米国の事をあれこれと具体的に理解するようになった。個人的な見方ではあるが、最初に感銘を受けたことは社会がオープンであるという点であった。実例を挙げると、たまたまカリフォルニア大学サンディエゴ校の図書館へ文献を漁りに行った。カリフォルニア大学の学生でもなく、カリフォルニアあるいはサンディエゴの住民でもない私(当時はまだグリーンカードを持ってはいなかった)でさえも簡単に図書館へ入ることが可能で、書籍を物色することができた。あれこれと文献を探し、コピーをとって帰ってきた。当時、日本では大学の図書館は閉架式が少なくはなかったから、この時の体験は今でも鮮明に記憶に残っている。

数々の発見があって、まさに「ワーオ!」の連続であった。

あの当時以降かなりの年数を経てから、米国社会の本当の姿が見え始めた。それは数多くの代替メディアがインターネットに現れ、大手メディアが報じる内容とは違った見解、つまり、より真実に近い情報を流してくれるようになったことが大きい。その種の情報を得ようとするとそれ以前は書籍が中心であったから、情報を漁ること自体が結構大きな負担となり、素人にとってはハードルが極めて高い作業であった。

それまではまったくの「ノンポリ」であった私が政治に目覚めるきっかけとなったのは「イルミナツィ」の歴史を詳述した本であった。英語の本であったので結構な時間をかけて読んだ。戦争に絡んで、当事国の政府へ財政支援を行うロスチャイルド家を始めとした政商たちの暗躍が歴史を動かし、形成していった。彼らのビジネスは戦争によって膨張した。

そして、最近10年間の私の興味の対象に関して言えば、RTのシュワルナゼ記者がシリアのアサド大統領にインタビューし、その一部始終を報じた記事に遭遇したことが大きなき切っ掛けであった。その記事は「Assad is completely demonized by the press」と題されていた。私はその記事の全文を仮訳し、1年以上前から開始していた「芳ちゃんのブログ」へ「徹底的に悪者扱いされているアサド大統領 — RTによるインタビュー」と題して掲載した(20121112日)。

このインタビュー記事を契機に、私はシリア紛争を継続的に注視し始めた。今やシリア紛争の主役は米国であったと誰でもが気付いているであろうが、当初は、米国は表には現れず、実際の戦闘部隊は「イスラム国」あるいは「ヌスラ・フロント」と称される反政府派の武装勢力であった。特に、大手メディアはこれは「内戦」であると報じていたことから、本当の姿は見えにくかった。つまり、米国の地政学的な意図は巧妙に隠蔽されていたのである。

シリア紛争以前から戦禍が続いていたアフガニスタンやイラクに加えて、シリア紛争は2011年に始まり、2014年にはウクライナでクーデターが起こり、選挙で選出されたウクライナ政府が転覆し、クリミアでは住民投票を通じて圧倒的多数の賛成でウクライナからの分離ならびにロシアへの復帰が決定され、その年の7月にはマレーシア航空MH17便撃墜事件、ウクライナ東部における内戦は膠着状態になり、2016年の米大統領選以降2年余り続いた「ロシアゲート」により米政界は大混乱、2018年には英国ソルズベリーでスクリッパル父娘殺害未遂事件起こり、米国がイラン核合意から脱退し、さらには、中距離ミサイル全廃(INF)条約を破棄、等々。国際政治の舞台ではいくつもの難問が目白押しである。目下、状況の改善は見られず、この新冷戦は悪化の一途を辿っている。

世界の覇権国家であると自他共に認める米国はいったい何を考えているのだろうか?

ここに「米国の資本主義は略奪で成り立っている」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
好むと好まざるとにかかわらず、国際政治は覇権国である米国によって政治的に、経済的に、そして、軍事的に牛耳られている。その現実を少しでも多く学んでおきたいと思う。


<引用開始>

その略奪は悪化するばかりである。

米国の資本主義は略奪で成り立っている。北米大陸の略奪が完了すると、米国の資本主義者は、イルツィン政権下で実際に行ったように、ロシアの富を略奪するためにはロシアの自由主義者や進歩派からの支持を得ることを目的に「大西洋統合主義」を標榜するロシア人を略奪品の中へ注意深く収めて、ロシアを略奪することによって自国を繁栄させようとした。ハーヴァード大学によるロシア中央銀行や経済学会の洗脳によってもたらされた新自由主義経済学を通じてその意図は今でも続いているけれども、プーチンは事実上米国・イスラエルによるロシアに対する強姦を押し止めた。ワシントン政府がロシアのような強力な国家を相手に経済制裁を用いて罰することができる主な理由は洗脳されたロシア人の経済専門家が存在することにある。 

ベネズエラ市民によって支えられている政府をワシントン政府が倒そうとする理由は米国の資本主義が略奪に依存しているからである。シャベス前大統領はベネズエラに改革を標榜する政府を確立し、その路線は後継者のマドーロに引き継がれている。改革派政府はベネズエラの原油資源を国有化した。米国の石油会社に利益をごっそり持ち去られる代わりに、その利益はベネズエラ国内に留保され、識字率を向上させ、貧困率を低減させた。米国の資本主義は収益を自分たちの手に取り戻したいのである。こうして、ワシントン政府は今ベネズエラ政府を攻撃している。

イランについても同様だ。米帝国主義の軛を投げ捨てたのはイラン人であって、しかもそれは徹底していた。彼らは1979年に米国の傀儡であるシャー政権を倒し、米国の軍・安全保障複合体から武器を購入する代わりに原油からの収益はイランの開発のために使った。イランに関するプロパガンダのすべてはイラン原油のコントロールを再度手中に収め、イスラエルによる南レバノンの占領を阻止して来た民警のヒズボラーを支援するイランを崩壊させるための取り組みに他ならない。

ロシアと中国も目標にされている。両国の政府は騙されやすく、米国の手中に陥りやすい。両政府は米国が支援するNGOが自国内で活動することを許し、これらのNGOは公然と両国政府を阻害する売国奴的な活動を行っている。香港における街頭での反政府デモはワシントン政府が支援した動きであって、その目標は中国政府の名声や安定性を阻害することにある。中国政府はどうしてワシントン政府の攻撃目標でいることに甘んじているのだろうかと誰もが不思議に思うに違いない。 

プーチン政権は米国が財政支援を行っている国賊に対しては不思議な程に寛大で、これが最近の暴動や抗議行動をもたらした。ロシアの警察はこれらに対処するしかなかった。ロシア政府は抗議行動の参加者や彼らに資金を提供した米国人を捜査するのではなく、何と公衆の秩序を守るためのロシア警察を捜査した!ロシア政府に対して組織だった攻撃を仕掛ける米国を何とか鎮めたいロシア政府の眼にはロシア警察は「余りにも容赦がない」と映ったのだ。これ程までに混乱した政府の生存率は低いだろう。ロシア国内の事情は、多分、米国のメディアによって報じられているものとは違うのかも知れないが、米国で描写されているその姿はそのまま世界中で受け取られている。これはロシアにとっては決して利点とはならない。

ワシントン政府がプーチンや中国の指導者を弄ぶことができると見ていることには何の驚きもない。

恐らく、ロシアと中国は外国人が暴動を指揮することを許容することによって両国が如何に民主的であるかを何としてでも西側に認めて貰いたいのであろう。米国の国旗を振っている香港の若者たちは米国はほんの一握りの、中国よりもさらに性質の悪い億万長者によって牛耳られていることなんてまったく気が付いてはいないに違いない。

米国政府に何らかの影響を与えることに専念するNGOに対する資金提供については、イスラエルを除けば、米国はいかなる国にも許してはいない。私は米国内で活動を許されているロシア、中国、イラン、あるいは、ベネズエラのNGOなんて見たことがない。パレスチナのNGOがイスラエル国内で活動し、街頭デモや暴動を演出することをイスラエル政府が許容する・・・ こんなことはいったい誰が想像し得るであろうか。米国では、大統領がロシアとの関係を改善しようとしたが、彼は米国をロシアに売り渡す陰謀に関与した「プーチンの回し者」だとして、厳しく批判された。

ロシアには経済を良く理解している経済学者がいる。彼の名前はセルゲイ・グラジエフ。グラジエフはロシアではもっとも有能な経済学者であって、ロシアの経済開発は外国からの借金や資本に依存しなくてもいいことをよく理解している。単純に言って、西側からの借金は、ギリシャで起こったように、ロシアを外国の債権者の手中に陥れるだけであろう。最近の報告によると、グラジエフはプーチンの顧問役から排除された。親米派である大西洋統合主義者がロシアを低迷させ、結局、ロシアはワシントン政府による救済を求めなければならなくなるのではないかとさえ思える。(訳注: モスクワ政府は必ずしも全閣僚が親プーチンで固められている訳ではないと言われている。閣僚の中には親米派の大西洋統合主義者が混じっていると言われ、彼らは親プーチン派ではない。ハーヴァード大学によるロシア中央銀行や経済学会の洗脳によってもたらされた新自由主義経済学が今も続いていると言われる所以である。) 

ロシア、イラン、ベネズエラ、中国を搾取するを機会を待って、当面は、米資本主義は公的な土地に残されている富を略奪しようとしている。それは米国内の国有林であり、国立公園であり、国定記念物であり、野生生物保護地でもある。詳細については下記の資料を読んでいただきたい。

トランプ政権は民間の森林伐採業者の略奪のために国立公園を開放

(原典: Trump Regime Opens US National Forests to Plunder by Private Timber Companies


連邦政府所有地に関する使用規則の変更が提案され、この提案が認められると、アディソン県に入る9万エーカーのグリーン・マウンテン国有林には今まで以上に多くの商業伐採や道路建設、公益事業用地が姿を現すであろう。しかも、環境影響に関する評価や一般大衆からの意見の公募も行われないまま・・・。 

「基本的に、意見の公募は公有地の管理規則からは排除されるだろう」と、バーモント天然資源評議会(VNRC)の森林・野生生物プログラムのディレクターを務めるジェイミー・フィデルは言う。 

問題となっているのは米国森林局(USFS)からの提案で、その提案は国家環境政策法(NEPA)の改正を求めている。この法律は米国の環境政策の基礎となるものだ。USFSが提言する行動については、本法律はUSFSにそれらを最終決断する前に環境影響を評価するよう求めている。

「全面的除外」として分類されるプロジェクトの数やタイプを拡大させることによって、USFSの提案は同法の要件を大きく変えることになる。この分類に入るプロジェクトは環境影響の評価を行うこともなしに承認されるのだ。 

USFSが「全面的除外」として分類するプロジェクトには下記の項目が含まれる:
一回の伐採で最大4,200エーカーの面積における商業伐採。皆伐を含む。

一回の建設で最長5マイルの新たな森林道路の建設。
一回当たり10マイルまでの古い森林道路の補修。
森林中にパイプラインおよびその他の公益施設のために最長で4マイルをブルドーザーで整地する。
レクリエーションを目的とした道路や未舗装道路を閉鎖する。

非合法的に作られた道路や未舗装道路を公式にUSFSの道路システムに加える。

この新規則はほとんどすべてのプロジェクトの決定に際してUSFSが意見の公募を省くことを許すであろう。森林や環境に関連する数多くの団体から入手した推測によると、USFSのプロジェクトの90パーセント以上が意見の公募や環境影響評価を省いてしまうであろう。

USFSはこうすることが必要だと言う。なぜならば、他の事柄も含めて、USFSは未処理の「特別使用許可または更新」の案件をたくさん抱えているからだ。「環境影響の評価や最終決定を待っている案件が数多くあって、それらは7,000の企業と12万人の雇用に影響を及ぼす。」 [注: もしも政府が言うように失業率が3.5パーセントで、完全就業状態であるならば、雇用は必要ではない。] (訳注: 著者は前々から米政府発表の失業率はいかさまであって、真の失業率は20パーセントを超し、そんな低率ではないと主張している。このことを考慮すると、著者の注釈は皮肉を込めた発言である。)

加えるに、最近増加している森林火災への対応はUSFSの財政資源や人的資源をますます浪費する。 [注: 換言すると、地球の温暖化が森林火災に取り組むためのUSFSの予算を使い切ってしまう。]

しかしながら、USFSは何ら言及しようとはしない点がある。議会調査部によると、トランプ政権は2020年の会計年度では、森林火災対応費用での65440満ドルの削減を含めて、USFSの予算を約10億ドル削減することを提示した。

「このNEPAの変更提案はUSFSがそれ自身の予算を削減する中で提言されており、自分たちが行っていることを評価する資源さえにも事欠いている」と、ニューヨークタイムズでサム・エヴァンスが書いている。

エヴァンスは南アパラチアの国有林で仕事をしており、彼はUSFSの提案は「公有地という概念そのものに対する攻撃だ」と主張している。

「もしもUSFSがこれらの変更内容を行使するとすれば、伐採トラックが山道の始点に姿を現し、風光明媚な地点で天然ガスパイプラインのための用地の開発が始まるまでは、国有林へやって来る人たちはいったい何が起こっているのかを知る術はない。」

USFSはこれらの変更は「NEPAの精神と意図によく合致する」と言うが、批判者は最近の提案をもっと大きな流れの中で捉えようとする。

昨年の12月、ジョージ・ワシントンおよびモノンガヒーラ国有林の一部、ならびに、アパラチアン・トレイルを通過して建設される予定であったアトランチック・コースト・パイプラインの認可を無効にした後、第四米国控訴裁判所は国有林管理法とNEPAの両法律を侵害するような許可を与えたUSFSを厳しく非難した。

3人の裁判官で構成されるパネルはUSFSが「国有林の資源を保全する責任を放棄してしまった」との結論を下した。特筆すべき点は「USFSの環境に関わる懸念は、突如、そして、摩訶不思議なことに、民間のパイプライン会社の許可期限に合わせて規則が緩和されたことだ。」 

グリーン・マウンテンにて

ヴァーモント州ではグリーン・マウンテン国有林(GMNF)におけるUSFSのプロジェクトがVNRCを含む数多くの環境防護団体に懸念を与えている。

「かっては、USNFGMNFで大きなプロジェクトに取り掛かる際には(NEPAの規定にしたがって)意見の公募や一般大衆の関与を促すのに十分な余裕や機会があった」と、VNRCの当事者が33日のブログで書いている。「VNRCはこれらの機会に参画し、われわれはGMNFとの協力関係を多いに謳歌して来た。」

しかしながら、2018年の後半から、USFSはプロジェクトに関する意見の公募に制限を加え始めた。その一例は同国有林の南側半分にある15,000エーカーでの同齢林伐採プロジェクトで、もうひとつは9,630エーカーの伐採を行うには新たに何十マイルもの道路の施設が必要となるプロジェクトである。
全てを一緒にすると、VNRCによれば、「USFS84マイルの道路(今後15年間に57マイルの新規ならびに仮設の道路を建設し、26.7マイルの道路を補修する)を建設するが、これらのプロジェクトが与える環境影響に関する意見の公募は行われない。」 

グリーン・マウンテン・ナショナル・フォレストはニューイングランド地域にあるふたつの国有林のひとつである。同国有林は過剰な伐採や森林火災、洪水を防止するために1932年に設立された。GMNF2011年現在821,040エーカーを占め、その半分近くは連邦政府の所有である。
アデイソン県の18パーセント以上がこの国有林圏内にある。

インデペンデント紙(訳注: これは英国のインデペンデント紙ではなく、バーモント州アディソン県にある週に2回発行する地方紙のアディソン・インデペンデントである。念のため)はこの記事に間に合うようにGMNFからのコメントを得ることはできなかった。


意見の公募や環境影響の評価を支援する側はこのNEPAの変更はトランプ政権がUSFSの最近の行動を法文化しようとするものだとして見ている。

そして、彼らの多くは反論している。

ナショナル・オーデュボーン・ソサイエティ―から始まってシエラ・クラブ、ナショナル・パークス・コンサベーション・アソシエーションに至るまで様々な団体が関心を抱く市民に対してこの規則変更の提案についてパブリックコメントを提出するよう求めている。
コメントの提出期限は826日。


「コメントはご自分の懸念を具体的に示すものとし、あなたのコメントをグリーン・マウンテン・ナショナル・フォレストといった特定の国有林に関連付けてください」と725日にVNRCの当事者が書いている。「USFSは同類のコメントをひとまとめにして、ひとつのコメントとして扱うので、ご自分のコメントは出来るだけ特徴のあるものにしてください。」 

USFSのウェブサイトによると、コメントは下記へ提出する: 
オンラインでは 
https://www.regulations.gov/comment?D=FS-2019-0010-0001 (注: この情報はこの記事のプリント・バージョンに基づいて更新した。)
郵便の場合の宛先: c/o Amy Barker, USDA Forest Service, 125 South State St., Ste. 1705, Salt Lake City, UT 84138.
電子メールの宛先: nepa-procedures-revision@fs.fed.us. (注: この情報はこの記事のプリント・バージョンに基づいて更新した。)
Christopher Ross
宛ての電子メールは: christopherr@addisonindependent.com.

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

著者のポール・クレイグ・ロバーツは次のように述べている:

恐らく、ロシアと中国は外国人が暴動を指揮することを許容することによって両国が如何に民主的であるかを何としてでも西側に認めて貰いたいのであろう。米国の国旗を振っている香港の若者たちは米国はほんの一握りの、中国よりもさらに性質の悪い億万長者によって牛耳られていることなんてまったく気が付いてはいないに違いない。

米国政府に何らかの影響を与えることに専念するNGOに対する資金提供については、イスラエルを除けば、米国はいかなる国にも許してはいない。私は米国内で活動を許されているロシア、中国、イラン、あるいは、ベネズエラのNGOなんて見たことがない。パレスチナのNGOがイスラエル国内で活動し、街頭デモや暴動を演出することをイスラエル政府が許容する・・・ こんなことはいったい誰が想像し得るであろうか。米国では、大統領がロシアとの関係を改善しようとしたが、彼は米国をロシアに売り渡す陰謀に関与した「プーチンの回し者」だとして、厳しく批判された。

非常に深い洞察であると私は思う。この辺りがこの著者の素晴らしさのひとつではないかと考える次第だ。

もちろん、彼の指摘はこの種の議論では始めてだということではない。歴史を紐解けば、同種の指摘や解説は幾つも見つかることであろう。

ロシアにおけるNGOの現状を調べてみた。ロシアでは、NGO2015年に制定された法律によって制約を受ける。「不適切」と判断されたNGOについては、検察当局はそのNGOの活動に制約をかけることができるし、停止させることもできる。NGOの規則を破って、有罪であると判断された場合、被告は罰金を喰らうか、最高で6年の刑務所暮らしが待っている。

たとえば、モスクワ・タイムズの201971日付けの「Russia Slaps U.S. Think Tank With‘Undesirable’Label After Post-Putin Report」と題された記事によると、米国を基盤とする或るNGOが、最近、ロシア当局によって「不適切」であるとの評価が下された。その理由はプーチン大統領のロシアにおける生活を報じたことであった。このNGO団体はワシントンに本拠を置く「フリー・ロシア・ファウンデーション」と称する組織である。

もちろん、ここに報じられている理由が唯一の理由であったのかどうかについてはこの記事からは判断できない。また、これだけの情報で「不適切」だと判断してしまうのかと息をまくのも余りにもナイーブである。日本でもよく起こることではあるが、当局側には別件逮捕という手法があることを考えると、本人やその団体が関与した今までの歴史を十分に吟味する必要がある。むしろ、表向きの理由よりも本質的に重要な理由が見つかるかも知れない。

フリー・ロシア・ファウンデーションのフェースブックを見ると、彼らの基本目標は政治的、経済的な理由で最近ロシアを離れた人たちに注目し、「プーチン後のロシア」、「プーチン主義のないロシア」のために戦略を開発することにあると述べている。このシンクタンクはプーチンが引退した後のロシアをどう料理するべきかをあれこれと研究しているのである。図らずもロシアゲートでわれわれ素人が学ぶことになった米諜報界や大手メディアならびに民主党左派の連中が喧伝して来た「反ロ思想」や「ロシア嫌い」そのものと非常に近く、同根であることは明らかだ。フリー・ロシア・ファウンデーションはCIAの活動家として相手国へ潜入し、カラー革命を起こすためにさまざまな活動をする工作員を要請し、相手国へ送り込む。上述したように、彼らの理念はこういった工作員が口にしそうな言葉ばかりである。

最近の20年間を見ると、米CIA主導のカラー革命はユーゴスラビア、ジョージア、キルギス、ウクライナと続き、カラー革命の手法を用いた反政府行動は広がるばかりである。もっとも最近の例はベネズエラだ。そして、決まったように、それらの資金源は米国である。外国からのNGOに対するロシアや中国の寛容さは何時の日にか両国に大問題を引き起こすのかも知れないとして著者のポール・クレイグ・ロバーツは懸念を示している。

もしもあなたがロシア国内の治安に責任のあるポストにあって、このような目標を掲げたNGOがロシア国内で活動をしていることを発見したら、当然、そのNGOはロシアにとっては「不適切」であると断定するに違いない。香港で反政府デモを行う若者たちも米国から活動資金を受け、さまざまな訓練を受け、扇動されていることは複数の報道によって報じられている。

NGO活動についてはこのブログでも取り上げたことがある。その詳細については、2014310日に掲載した「ウクライナでのNGO活動 - 芳ちゃんのブログ」と題した投稿をご一覧ください。

言論の自由や表現の自由と国家の安全や治安の維持との間には、洋の東西を問わず、綱引きが起こり、さまざまな形で力比べが行われる。ロシアや中国では何処でバランスを保つのかが今まで以上に難しくなりそうだ。



参照:

1American Capitalism Is Based On PlunderBy Paul Craig Roberts, Aug/19/2019




2019年8月22日木曜日

タルシ・ギャバードの主張は正しい


米国の2020年大統領選挙を目指して、民主党や共和党の大統領候補としての指名を受けるために熾烈な競争がすでに始まっている。たとえば、民主党では、73031日、自動車産業の中心地であるデトロイトで20人の候補者が集まって、第2回目の討論会が開催された。二日間をかけて討論された論点には医療保険制度、刑事司法制度、トランプ政権の追加関税、TPPへの再加盟、等が含まれている。

20人の内で6人は女性である。これらの女性候補者は夫や父親の七光りではなく、自分の専門領域で頭角を現して来た者ばかりであって、その点が特筆に値する。2016年の大統領選では民主党指名のヒラリー・クリントン候補は、良いにつけ悪いにつけ、大統領を務めた夫の存在が見え隠れしていた。しかしながら、2020年の大統領選のために民主党から出馬したこれら6人の女性候補者は皆が、従来とは違って、自分自身の力で現在の地位を確立している。

6人の女性候補者の中にはハワイ州選出の下院議員、タルシ・ギャバードがいる。彼女は独自の政治的見解を持っていることから、今、さまざまな方面から注目を浴びている。

ここに「タルシ・ギャバードの主張は正しい」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。タルシ・ギャバードは上述の民主党候補者による第2回討論会では勝ち組の筆頭であると評されている。そこで、彼女の政治的見解を少しでも学んでおきたいと思う次第だ。


<引用開始>

731日に行われた大統領選の民主党予備選での候補者による討論会の後、ハワイ選出のタルシ・ギャバード下院議員は全候補者の中でもっとも多くのグーグル検索を受け、 彼女の討論会における目立った活躍(カリフォルニア選出のカマラ・ハリス上院議員を犯罪歴に関する討論で勝利したことを含む)が数多くの視聴者の関心を集めたことを示した。と同時に、この急激な関心の高まりは否定的な反応ももたらした。たとえば、ハリスは「アサドの擁護者」(シリアのアサド大統領を指している)と言って、ギャバード一言で片付けた 大手メディアからは、典型的にはCNNのクリス・クオモによって、ギャバードはハワイ出身の国家警備隊の少佐であって、中東で二回の従軍経験を有するが、シリア市民に対して化学兵器を用いたとして責任を問われているアサド大統領については米諜報関係者や国連調査官の見解よりもむしろアサド側についているとして報じられた。

「あなたの引用は私が表明したことについて懐疑的な見方をしており、皮肉そのものである。われわれに対して嘘をつき、米国市民に対して嘘をつき、下院や上院の議員がそれを信じて戦争に賛成票を投じることになった偽りの証拠を示した連中がもたらした戦争に私は従軍した。その戦争の結果、私の兄弟姉妹とも言うべき将兵がこの戦争で4,000人もが命を落とすことになった」と述べて、ギャバードはクオモに反論した。「我が国の軍隊は次の点が確実ではない限り、派兵をするべきではない。つまり、a)米国市民のために最善の策であり、b)その派兵行為が実際に好影響をもたらす。これらの事柄を確実にすることこそがわれわれ議員や指導者の責任である。私が投げかけた疑問点は自分自身が体験したことに基づいている。」 

2003年に遂行されたイラクへの侵攻と占領の前にイラクの大量破壊兵器に関する米政府の捉え方に関して挑戦した当事者として、アサド政権は2017年のカーン・シェイク―ンや2018年のドウマの町を攻撃するために化学兵器を用いたとする主張に関してギャバードが抱いた懐疑心は十分に信頼できるものであると私は考える。

自分のキャンペーン用ウェブサイトでシリアにおける化学兵器の使用に関する主張について、ギャバードは自分が抱く懸念を詳しく述べている。彼女の立ち位置、ならびに、マサチューセッツ工科大学の教授で、カーン・シェイク―ンやドウマでのふたつの出来事に関して批判的評価を出版したセオドーア・ポストルの論文への彼女の依存は、べリングキャットのウェブサイトを創設したエリオット・ヒギンス(彼はポストルの論文とそれに依存するギャバ―トについて反論を掲載)を含めて、大手メディアやその他の分野において多くの者に深い憤りを招いた。

本論考における私の目的はポストルの研究の正確さを精査することやヒギンスの主張に対して反論することではなく、ギャバードのウェブサイトについて事実関係を調べることでもない。むしろ、元海兵隊の諜報関係の将校で兵器調査官を務めた私がここでやりたいことはギャバ―ドが懐疑心を抱くことになった背景に注目することである。

2018年4月7日のドウマにおける化学兵器攻撃に関する主張のほとんどが誤りであったことはすでに暴かれている。つまり、当初は神経ガスのサリンが使用されたという主張が成されたが、これは誤りであったことが示され、シリア軍のヘリコプターから投下されたという2個の塩素ボンベは、実際には、反政府派武装組織によって人手で個々の現場へ持ち込まれたものであるという証拠が現れた。米政府がドウマに関する主張に応えてシリアに対する軍事攻撃を正当化するために行った当初の状況評価は基本的に間違っていたことには疑いの余地がない。また、民主党大統領候補の間ではたった一人ではあるが、ギャバードがその主張の正しさについて懐疑心を表明したことは全うであるという点についても疑いの余地はない。

201744日に起こったカーン・シェイク―ンの出来事はもっと複雑である。この出来事では、化学兵器禁止機関(OPCW)から派遣された調査専門家はカーン・シェイク―ンの市民がサリンに暴露されたことを示す証拠を発見したと報告している。カーン・シェイク―ンの出来事でもっとも中心的な疑問点はサリンが使用されたかどうかということではなく、いったい誰がサリンを用いたのかという点である。米政府およびOPCWは化学兵器攻撃を行ったのはシリア政府であると結論付けた。一方、ポストルやギャバ―ドならびに私はこの結論には懸念を抱いている。

シリア政府の責任を主張するOPCWの調査専門家を含めて、独立した調査専門家でカーン・シェイク―ンの現場を実際に訪れた者は誰一人いない。これは収集されたデータがどのように評価されるのかに対して根源的な影響を与える非常に重要な要素である。攻撃が行われた当時、カーン・シェイク―ンはアルカエダの一派であるヌスラ・フロントに忠誠を誓った反政府派武装勢力のコントロール下にあった。民間の自衛・救護組織であるホワイトヘルメットシリアン・アメリカン・メディカル・ソサイエティ―、つまり、SAMS(シリアの反政府派地域で医療サービスを行うボランティア組織)を含めて、いくつかの非政府系組織が活動していた。ホワイトヘルメットとSAMSの両者はカーン・シェイク―ン地域で仕事をする際にはヌスラ・フロントの庇護の下で活動した。OPCWはその調査活動を行うに当たってはホワイトヘルメットとSAMSの両者に全面的に依存した。化学兵器攻撃に関する情報から始まって、攻撃の被害者に対するインタビューや医学的な試験検査、攻撃現場から採取されたとする物理的なサンプル、等々。

OPCW発行の報告書の信憑性にとってこのような現実はまさに致命的である。私は旧ソ連邦およびイラクで兵器調査官として10年余りを過ごしたが、調査中に収集したサンプルに必要となる「分析過程の管理」を含めて、現場での調査に関する本の出版に協力したことがある。反論を受ける心配もなく、私は次の事柄を断言することができる。つまり、サンプルの収集から最後の分析に至る間に完璧な「分析過程の管理」に欠けている証拠から推論された特性や結論には何らの公正さや法的な拘束力はない。このことはイラクにおける国連大量破壊兵器破棄特別委員会(UNSCOM)、ならびに、シリアで使用されたとする化学兵器を調査した国連派遣団にも当てはまる。あの派遣団は2013819日から930日までシリアで活動した。「受け取った情報について独立して実証することは不可能だ」とか、「サンプルの取得に関して分析過程の管理を検証することができない」として数多くの証拠を拒絶したことが記録に残されている。 

しかしながら、OPCW自分たちの手順を変更し、ホワイトヘルメットとSAMSを証拠となる「分析過程の管理」に招じ入れることを許した。OPCWの調査官は証言者の選定や篩分けといった個々の過程を開始するプロセスには関与してはいないにもかかわらず、彼らを情報を検証する手段として活用したのである。基本的に要求される手法に執着することを怠ったOPCWの行動は彼らの報告内容の信憑性に疑問を抱かせるのに十分である。それ以外の理由がない限り、アルカエダと近しい組織(つまり、ヌスラ・フロント)に実質的に調査そのものを委ねたことになる。その結果、OPCWの結論は挑戦を招くことになったのである。

ポストルとヒギンスはサリンを巡る科学について非常に多くの時間を費やしている。私は、むしろ、カーン・シェイク―ンでの出来事についてはもっと基本的な捉え方を採用したいと思う。つまり、サリンはどのようにして現場へもたらされたのか?OPCW次のように結論付けた。 「中程度の高度あるいは高高度から、つまり、4,00010,000メートルの高度から」投下された「比較的大型の爆弾」がカーン・シェイク―ンで用いられた搬送手段であると考えられる。しかし、この判断は高度な技術的問題を提起する。特に、シリア空軍のSu-22はこの爆弾をOPCWが描写したようには投下することができなかった。もしもシリア政府側がカーン・シェイク―ンで化学兵器爆弾を投下することができなかったとするならば、ヌスラ・フロントやホワイトヘルメットおよびSAMSによって提供された証拠に基づいてOPCWが結論付けた筋書きのすべては作り話であると見なさざるを得ない。

PCWは米国とフランスによって提供されたレーダー地図を引用した。その地図はSu-22機が201744日の朝カーン・シェイク―ンの上空にいたとしている。「Su-22はカフル・ザイタおよび北東にあるカーン・シェイク―ンの近傍にてループ状に旋回飛行をしていた」とOPCW報告書は指摘した。「その地図は戦闘機がカーン・シェイク―ンにもっとも近づいた飛行経路は約5キロメートル程の距離であったことを示している。」  

この情報はシリア政府がOPCWに提出したシリア空軍の日誌の内容にも一致し、44日の朝Su-22機を操縦していたパイロットの証言とも符合する。つまり、通常爆弾を用いてカーン・シェイク―ンの南西約8キロに位置するカフル・ザイタの集落を攻撃していたが、カーン・シェイク―ンにもっとも近づいた距離は79キロであったとパイロットは主張している。

OPCWは氏名が不詳の「兵器専門家」に相談し、「カーン・シェイク―ンを空爆することが可能な二つの条件、つまり、距離と高度」を特定するよう依頼したと言った。その「専門家」は「高度や飛行速度、飛行経路といった変数にもよるが、上述の高度から(カーン・シェイク―ンの)町を空爆することは可能だ」と結論付けた。OPCWはその「専門家」がこの結論を導くのに用いた変数は提示しなかったし、それらの変数が彼らが主張するような結果をもたらし得る事例に関しても何ら言及しなかった。 

OPCWがどうしてそうしなかったのかについては単純な理由がひとつある。その「専門家」は間違っていたのだ。

ロシア空軍のオフィサーが提供した状況説明Su-22機が問題の日の朝カーン・シェイク―ンを空爆したとするOPCWの主張とは真っ向から対立する。Su-22がこの種の攻撃を実行するには攻撃目標を目視で捉え、飛行高度は4,000メートル以下、時速8001,000キロで直接攻撃目標に向かって飛行する必要があると彼は言った。これらの条件に基づいて、爆弾の投下は目標から1,0005,800メートルほど離れた距離で行うことになる。それでもなお、Su-22は爆弾を投下した後に引き返すのにはさらに39キロの距離を必要とする。OPCWが用いたレーダー記録はSu-22機はカーン・シェイク―ンの西側を飛行しており、カーン・シェイク―ンの町とは並行して飛行しいる。その飛行経路はカーン・シェイク―ンへの爆撃を行うのに必要な条件とは相反する。

西側の「専門家」はロシア側が提示した内容は茶番だと述べて、破棄した。私はロシア側の提示内容は信用に値すると考える。Su-22と同様な性能特性を持つ米海兵隊のOA-4スカイホーク軽攻撃機の元搭乗員の一人として言わせてもらうと、私はカーン・シェイク―ンに対する攻撃に匹敵するような空対地攻撃には何回も出撃した。米レーダーが追跡した飛行経路は必要とあらば100回でも飛行することは可能であるが、カーン・シェイク―ンに出来た問題のクレーターの近傍へ爆弾を投下することは不可能である。この論点は、クレーターの基本的な特徴を分析すると、その攻撃の方位角が町の西側を通過するSu22の飛行経路とはほとんど直角を成しており、この事実によっても裏付けされる。爆弾が投下されたとすれば、攻撃機はその飛行経路からは大きく外れた経路を飛行し、引き返してその経路に戻る前に目標地点を飛び越さなければならなかったであろう。しかし、レーダー記録はそのような飛行を示してはいない。(カーン・シェイク―ンの北に位置する攻撃機が飛行した「ループ」は問題のクレーターの位置に爆弾を投下するのに必要な攻撃方位角を可能にはしない。)これはOPCWが直面する問題点の核心である。なぜならばOPCWはカーン・シェイク―ンを攻撃するのにサリンが充填された爆弾が投下されたと主張しているからだ。しかしながら、この爆弾を運ぶ唯一の手段(つまり、シリア空軍のSu-22機)の存在に関してOPCWが提供した証拠は、皮肉にも、彼らの主張に反証している形となっている。

シリア空軍のSu-22機の動向はカーン・シェイク―ンでのサリンの使用にシリア政府が連座するという主張においてはもっとも根幹を成す部分だ。誰にとってもサリンの持続性や別の輸送手段、あるいは、他のほとんど関係のない事柄についてあれこれと議論することは可能だ。しかし、ヌスラ・フロントやホワイトヘルメットおよびSAMSの筋書きが生きながらえるにはカーン・シェイク―ンの中心部へ爆弾を投下するシリア空軍のSu-22がどうしても必要なのである。しかしながら、彼らによって提示された証拠はそのような状況は実際には起こり得なかったことを決定的に示している。この現実に基づいて言えば、この後に続く諸々の行為はすべてが「偽旗作戦」であったと見なさなければならない。ギャバードのウェブサイトが指摘しているように、「これらの攻撃は米国と西側をこの戦争にもっと深く引きずり込むために反政府派武装勢力が仕掛けたものであることを証拠が示している。」

「これらの攻撃はアルカエダあるいはシリア政府の仕業であると結論付ける以前にわれわれは皆が注意深く証拠を精査するべきであると私は考える」とギャバードは自分のウェブサイトで述べている。 彼女が批判的な態度で対処して来たことは立派な行動であるばかりではなく、米軍の最高軍司令官の地位を標榜する戦士には是が非でも期待したい特性でもある。

シリアや化学兵器攻撃についてギャバードが見せた立ち位置に関して大手メディアが彼女を攻撃し続けていることは今日の米国のジャーナリズムが持つハードルが非常に低いことを示している。トランプ大統領ならびに民主党の大統領候補の全員がドウマやカーン・シェイク―ンでいったい何が起こったのかに関して知的好奇心を少しも見せなかったという事実は戦争と平和に若干でも取り組もうとする如何なる米国人に対しても警鐘を鳴らすことであろう。

著者のプロフィール: スコット・リッターは諜報分野で10数年を過ごした。1985年から米海兵隊の地上諜報オフィサーとして働いた。

この記事は最初は「Truthdig」によって出版された。


<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

この記事の著者はためらうこともなく次のように述べた:
これらの攻撃はアルカエダあるいはシリア政府の仕業であると結論付ける以前にわれわれは皆が注意深く証拠を精査するべきであると私は考える」とギャバードは自分のウェブサイトで述べている。 彼女が批判的な態度で対処して来たことは立派な行動であるばかりではなく、米軍の最高軍司令官の地位を標榜する戦士には是が非でも期待したい特性でもある。

民主党の大統領候補者20人が集まって討論会が開催され、その一部始終を見た市民の多数がギャバードに新たに関心を寄せた。彼女に関するインターネットでの検索が急増した理由が良く分かる。

一方では、民主党の大統領候補としての指名を目指す20人もの政治家エリートが集う政治討論会の結果、知的好奇心を発揮してシリアにおける化学兵器攻撃の実態を理解しようとしたのはたった一人、タルシ・ギャバードだけだったという現実には寒気を覚える。逆説的に言えば、彼らは政治にどっぷりと浸かっている政治家集団であることから、政治的プロパガンダの中枢にいる彼ららしい側面を垣間見せたのだとも言える。

しかしながら、今回、われわれ一般庶民は米国における情報の歪曲、欠如、偽情報といった大手メディアによる洗脳プロセスの成果の一端を改めて具体的に見せつけられたことにもなる。これは米国にとって、さらには、全世界にとって大きな不幸である。

タルシ・ギャバードの見識は他の候補者を圧倒していることが明白だ。彼女の行動や言動には基本的な行動原理がはっきりと見て取れることから、安心感を覚える。来年の大統領選に向けて今後彼女はどう展開して行くのかが見物である。第三回目の討論会は91213日にヒューストンで開催される予定だ。

この「芳ちゃんのブログ」では機会がある毎に核兵器のない世界を作り出すことが次世代に対する究極の贈り物であると私は主張してきた。軍刀をガチャガチャ言わせて相手を威嚇し、言う事を聞かないと政府を転覆させるぞと脅迫し、相手国の資源を略奪する武力に依存した対外政策を米国はもう止めなければならない。言うまでもなく、今日の武力の最たるものは核兵器であり、核兵器の使用・不使用は政治的意思によって決定される。




参照:

1Tulsi Gabbard Gets Some Vindication: By Scott Ritter, Information Clearing House, Aug/16/2019









2019年8月16日金曜日

インターネットにおける言論の自由は葬り去られた

インタ-ネットにける言論の自由が低下しつつあると言われている。インターネット上で発信される情報のコンテンツに規制がかけられ、たとえば、政府の政策について何らかの異議があって、その反対意見を表明しようとしても政府は表明をさせないといった状況が現出する。つまり、法的な枠組みによって政府に反対する意見を封じ込めてしまうのだ。

現実の世界ではインターネットにおける言論の自由は今どのような状況にあるのだろうか?

米国のシンクタンクのひとつであるフリーダムハウスは各国の言論の自由や出版の自由に関して毎年報告書を発行している。「ネットにおける自由」に関する2018年の報告書(原題:Freedom on the Net 2018)は、仮訳すると、現状を次のように総括している: 「インターネットでは自由の度合いが世界中で低下し、その影響を受けて、民主主義自体が後退している。オンライン上で発信される偽情報やプロパガンダは公的な領域に毒をばら撒いて来た。抑えの利かない個人情報の収集は伝統的なプライバシーの概念を破壊してしまった。徹底した検閲と自動化された監視システムを駆使した中国式モデルを採用することによって、いくつかの国は「デジタル専制国家」に向けてその動きを加速している。これらの趨勢の結果、世界のインターネット上の自由は2018年には過去8年間連続して後退した。」

ここに、「インターネットにおける言論の自由は葬り去られた」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。インターネットにおける言論の自由が米国ではどのような形で脅威を受けているのかに関して具体的に学んでおこう。米国で起こった政治的な場面は遅かれ早かれ日本にも飛来することが多いからだ。

<引用開始>

インターネットは、元来、何処の国の市民であっても分け隔てなく完全に自由で、検閲のないシステムにおいて意見交換を行い、お互いに通信する場として提供されたものであったが、今や、インターネットは実際にはそうではなくなってしまったと多くの人たちが言う。政府とサービスプロバイダの両者はインターネットにコントロールをかけることを好むようになった。たとえば、バラク・オバマ前大統領は、かって、「国家の緊急事態」が起こった際にはインターネットを完全に閉鎖することができる「スイッチ」を模索した。

また、ドナルド・トランプ大統領はフェークニュースに関しては多くを語りたいようであるが、インターネットの保護に関しては規制を加えることを支持する姿勢だと報じられている。5月に、サービスプロバイダがインターネットの通信をあれこれと操作することを防止する「ネットの中立性」法案が下院を通過したが、上院では「死に体」となってしまった。本法案は施行には至らない。

交流サイトは自主的にある種のコンテンツを制限し、受け入れられないような素材(文章や映像)を検索し、それらを排除する「検閲要員」を採用している。立法化待ちとなっているヨーロッパの法案は受け入れらない古い投稿メッセージに対するアクセスをインターネットのサーチエンジンが排除することを求めようとしている。ユーチューブはすでに古い投稿メッセージを削除しており、偏向した「パートナー」には、たとえば、名誉棄損防止組合(Anti-Defamation League)には将来のコンテンツを規制する指針を設けるよう求めている。多くのフェースブック利用者からの指摘によれば、幾つかのコンタクトがすでに疑いもなく一時的に(あるいは、永久的に)ブロックされ、サイトへのアクセスが拒否された事実がある。

グーグルは望ましくはないと判断される項目の検索に関しては今や自動的にその検索を中断するか、制限をかける。グーグルが何らかの理由で検索を認めない場合、検索結果は示されない。あるいは、検索された項目のリストの中でも非常に低位に置かれる。そして、検索の結果上位に現れるのは自分たちの製品やサービスを売り込むためにグーグルへの支払いをした事業者からのコンテンツだけとなる。競争相手に由来する情報は検索結果の中では低位に置かれ、時には、ブロックされる。したがって、グーグルは、とてもじゃはないが、偏向のない情報提供を行っているとは言えないのだ。

Photo-1 (訳注: 「404」というステイタスコードは「ファイルが見つかりません」というメッセージである)
2017年の5月、フェースブックは 新たに3000人の「検閲要員」を採用すると発表した。そして、交流サイトにおける検閲に関する私の個人的な体験が間もなく始まった。私は「シャーロッツビルの鎮魂曲」と題する記事を投稿した。それはウェブサイトに掲載された。一日目の終わりには、サイトマネジャーらはこの記事がかなりの数のフェースブックの読者の関心を呼んでいたにもかかわらず、同記事に寄せられた「いいね」の数はスクリーンのカウンタ上には表示されてはいないことに気付いた。つまり、作表がされてはいなかったのである。さらには、フェースブック上で同記事をシェアーすることも出来なかった。シェアーボタンが削除されていたのである。

ビデオ: Facebook and the New Face of Regime Change

フェースブックやヤフーニュースのコメント欄、ユーチューブ、グーグルの「いいね」は重要である。なぜならば、その記事がサイト全体にどのように配布されているのかを自動的に示してくれるからだ。もしも数多くの「いいね」が寄せられているならば、検索が行われた場合、あるいは、誰かがそのページを開いた場合、その記事は上位に位置する。もしも特定の記事が数多くの「嫌い」とか否定的な評価を受けるならば、これらの記事はコベントリーへ送付することが可能だ(訳注: 「コベントリーへ送付する」とは何を意味するのかは私には分からない・・・)。承認または非承認がどのような種類の読者に受けたのか、あるいは、検索の結果何が浮かび上がって来たのかを知る上で重要なのである。

私の例では、その翌日、私のウェブページは通常状態に戻り、「いいね」が再度現れ、読者がこの記事をシェアーできるようになった。しかしながら、誰かが私の投稿を操作していたことは明らかだった。間違いなく、私の書いた内容は何らかの政治的な判断に基づいて否認されたのだ。

23日後、私はまったく同様な別の出来事にも遭遇した。ロン・ポール研究所(RPI)のウェブサイトはその投稿のほとんどがユーチューブ(グーグルの所有)上で掲載されている。同サイトには広告も掲載されており、その広告収入のほんの一部がRPIに支払われていた。突然、何の説明もないまま、「手動の検閲」の結果、コンテンツが「広告主のすべてにとっては不適切である」との判断がされ、RPIの広告とRPIへのリベートが削除されてしまった。明らかに、これは同研究所の行動や論調を否認することから起こったものである。これらの投稿に関してコメントすることやリンクを張ることの可能性も排除されてしまった。

反政府的な言動で知られる元外交官のクレイグ・マレー(訳注: 反政府的な言動の事例: たとえば、スクリッパル父娘殺害未遂事件における彼の論点は常識的な観点から数々の疑問を論理的に表明し、政府が推し進めるスト-リーを問い質すたものだ。それが反政府的であるとするならば、民主主義が成り立たないように私には見えるのだが)は、2018年の4月、フェースブックへ掲載した論評が秘密裡に操作されたことを指摘した。彼のサイトを訪れる重複しない読者数が通常のレベルである一日当たり20,000人に比べて、その三分の一に低下したことから、彼はそう判断した。その理由を発見することは決して難しくはなかった。われわれのサイトへの訪問客は、通常、その半分以上がフェースブック経由でやって来る。最近の数日間、フェースブックからは誰もやって来なかった。特に悪質な点はフェースブックはこの検閲を秘密裡に行っていることだ。

フェースブックによってブロックされた際の主要なメカニズムは次のような具合だ: 私のフェースブックへの投稿は、単純に言って、大部分の私のFB友達やフォロワーのタイムラインへは送付されない。投稿は皆にシェアーされたものと思うしかないが、実際にはほんの少数に送付されるだけなのだ。もしもあなたが少数の受け取り側の一人であって、その投稿を見ることができ、その投稿をシェアーした場合、あなたがシェアーしたことはあなたのタイムライン上で示されるだろう。しかし、実際には、あなたのFB友達のほとんどはその投稿については何も受け取らない。フェースブックは自分たちが行っているとあなたに告げたことは実際には何も行ってはいないのである。フェースブックはその投稿がシェアーされたとあなたには告げるが、フェースブックはあなたに対しては事実を何としてでも隠す。ツイッターは「シャドー・バニング」と呼ばれる同種のシステムを有する。そこでもそれは極秘裏に行われ、犠牲者には何も告げない。

最近のことではあるが、インターネット上の交流サイトや情報サイトに対する検閲が強化された。その圧力は政府やさまざまなインターネットの顧客の両方からやって来る。5月末、フェースブックの創設者でCEOを務めるマーク・ズッカーバーグはフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会って、インターネットから「ヘイトスピーチ」を如何に排除するかについて論じ合った。

ふたりは米国のインターネット・モデルは、すでにひどく操作されているにもかかわらず、あまりにも自由放任主義的であるとしてお互いに合意し、受け入れられない見解は禁じることが許されるフランス方式を開発することに興味があると表明した。ズッカーバーグは欧州同盟全域のために立派なモデルとして稼働するであろうと述べた。すでに報じられているように、フランスは立法化を狙っている。監督官庁を設置し、もしもインターネット企業が嫌悪感に満ちた表現を抑えようとはしなかった場合、その企業にはその企業の全世界における収益の最高で4パーセントに相当する罰金が課される。これは莫大な金額である。

こうして、選挙で選出されたわけではない無名の検閲要員がコンテンツを制御しようとしてインターネットの全域で仕事をする。このことは誰をも驚かす程のものではないと思う。しかし、干渉は悪化するばかりである。政府もサービスプロバイダも自分たちが受け入れられないと判断した見解は排除することが好きなのだ。実に興味深いことに、これは「ロシアゲート」が如何にして登場したのかを彷彿とさせ、ベネズエラやイランに対して伝統的なメディアに醸成されている現行のヒステリーを想起させる。どれ程多くの怒りが本質的にはフェークなのだろうか?フェークは巨大企業によってあれこれと操作され、場合によっては捏造さえされる。これらの企業は偽りの装いの下で主として政府が望んでいることを実施するために徹底して管理下におかれたインターネットサービスを提案し、それによって何百億ドルも稼ぐのだ。ヘイトスピーチを禁じることは、不幸にも、現状に関する批判のすべてを排除するための第一歩となることだろう。

*

読者の皆さんへのお願い: 上部か下部にあるシェアーボタンを押して欲しい。この記事をあなたのメーリングリストに記載されている全員へ送ってください。あなたのブログサイトやインターネットフォラム、等ヘ掲載してください。

この記事の初出はAmerican Free Press

著者のプロフィール: フィリップ・ジラルディは元CIAの反テロリズムの専門家であって、軍の諜報関係のオフィサーでもあった。また、コラムニストやテレビの解説者でもあった。さらには、彼はThe Council for the National Interest (CNI)の事務局長である。ジラルディが執筆した他の記事はUnz Reviewのウェブサイトにて閲覧が可能。彼はGlobal Researchに頻繁に寄稿している。

引用したイメージはAmerican Free Pressから。

この記事の原典はGlobal Research

Copyright © Philip Giraldi, Global Research, 2019

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

インターネットにおける検閲の現状が被害を受けた当事者からの報告として具体的に伝えられている。この記事の結論として著者が述べている「ヘイトスピーチを禁じることは、不幸にも、現状に関する批判のすべてを排除するための第一歩となることだろう」という文言は貴重な洞察である。不幸なことには、現在の趨勢はわれわれ一般庶民の将来を暗くするばかりだ。

1983年に誕生したインターネットにおける言論の自由は2019年に葬り去られた。言論の自由の墓銘碑には象徴的に「19832019」と刻まれている(Photo-1を参照)。

インターネットの現実世界における役割や影響力を考えると、それはわれわれが想像する以上に強力なものであるに違いない。特定の政策を推し進めようとする政府にとっては、不都合な真実をあれこれと伝えるインターネット上の情報サイトは、時には、非常に厄介な存在であって、消してしまいたいという衝動に駆られるのであろう。今、世界は第二次世界大戦前にわれわれの父母あるいは祖父母が経験した情報統制時代、あるいは、警察国家に向かっているようである。歴史を振り返ってみると、このような動きは99パーセントの一般庶民にとっては決して好ましいことではない。

政府の政策は絶対に正しいとでも言うのであろうか?時には、間違った動きをしているのではないか?政府の政策は常に一般大衆の利益や福祉に応えているのだろうか?常にそうだとは決して言い切れない。政府の政策は長期的に見て国家の健全な成長を約束するのであろうか?さまざまな議論がある。政府はそれらの議論を避けてはならない。問題点を掘り下げることこそが重要だ。もしもこれらの議論を許さない社会が来るとしたら、それは中国ですでに進められているデジタル専制国家の到来を意味する。


参照:

1Internet Free Speech All but Dead: By Philip Giraldi, Global Research, Jun/08/2019








2019年8月8日木曜日

MH17便撃墜事件の証拠の隠滅についてマレーシアが暴露 - オランダは偽の録音テープを隠蔽し、ウクライナはレーダー記録を隠蔽


マレーシアのマハティール首相が発した批判を契機に、MH17便撃墜事件に関するオランダ政府主導の共同調査班(JIT)による結論は、今、真っ向からの挑戦を受けて、その信憑性が疑われている。勢いを増しつつあるこの新たな動きは2014年の7月に起こった事故以来満で5年を過ぎた今、事故の真相を知る上で非常に重要なものとなりつつある。何か重要な真相が隠蔽されていると感じて来た一般庶民は非常に多い筈だ。その素朴な疑念は単なるMH17便撃墜事件だけには留まらず、政治に対するさらなる不信感、米国による単独覇権構造に対する不満となって、全世界で一般庶民の心の中に沈殿しつつある。

ここに、「MH17便撃墜事件の証拠の隠滅についてマレーシアが暴露 - オランダは偽の録音テープを隠蔽し、ウクライナはレーダー記録を隠蔽」と題された記事がある(注1)。これはMH17便撃墜事件に関して行われてきた情報隠しの実態を暴く総括記事である。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

6月24日、私は「MH17便の撃墜はロシア人の仕業ではないとマレーシアのマハティール首相は言う。米国およびその同盟国はたくさんの事柄について回答しなければならない」と題して投稿した。その投稿と本投稿の両方を読んでいただければ、読者の皆さんは最新情報を手にしたに等しいと言える。しかも、公的な報道ではまったく触れられてはいない情報ばかりである。

NHKを含めて、日本で公に報じられている情報には限界があって、世界を取り巻く政治に関与するような、つまり、米国の覇権に関係するような事件については多くの情報が隠蔽され、意図的に情報操作が行われている。それ故、われわれ素人には真相に近づくことは極めて難しい。2014年のMH17便撃墜事件、2018年の英国ソルズベリーでのスクリッパル父娘殺害未遂事件、等がその好例である。また、米国における2016年大統領選で勝利を収めたトランプ陣営はロシアとの共謀によって選挙に介入し、勝利したとの共謀論がメディアによって毎日のように喧伝された。しかしながら、ミュラー特別検察官の最終報告書がトランプ大統領とクレムリン政府との共謀を実証することができなかったことから、このストーリーには幕が降ろされた。

好むと好まざるとにかかわらず、大手メディアだけに頼っていると、どこからどこまでが真相であるのかを正確に掴むことは、控えめに言っても、われわれには非常に難しい。われわれは、今、そんな世の中に住んでいる。


<引用開始>


マレーシア航空MH17便事件を独立した形で調査を行って来たマックス・ファン・デル・ウェルフによる新ドキュメンタリー・フィルムが検察用資料の改ざんや偽物の作成を示す画期的な証拠を明らかにしている。たとえば、ウクライナ空軍のレーダー・テープの隠蔽、オランダやウクライナ、米国およびオーストラリア政府による大嘘、等。また、米連邦捜査局(FBI)の工作員が撃墜された旅客機のブラックボックスを取得しようとした事実もマレーシアの国家安全保障委員会の職員によって初めて暴露された。




Photo-1: MH17便事件に関する大嘘を撃破しよう

突破口を開いたのはマレーシア人だ。モハマド・マハティール首相、ならびに、2014年7月17日に起こったMH17便の事故について現地調査を実施する任務を課され、首相府やマレーシア国家安全保障委員会のために職務を果たしたモハマド・サクリ大佐であった。さらには、ウクライナのシークレット・サービス(SBU)が提示し、オランダの検察官が「これは本物だ」として公表した電話の録音テープが作り物であることを見事に解析したマレーシアの「OG IT Forensic Services」社が行った科学捜査だ。

MH17便の犠牲者298人には192人のオランダ人、44人のマレーシア人、27人のオーストラリア人、15人のインドネシア人が含まれていた。国籍別の人数は実際の人数とは異なる。なぜならば航空会社の乗客名簿はオーストラリアや英国および米国の二重国籍の乗客を識別しないからだ。

この新ドキュメンタリーはマレーシア政府の発言に重点を置いている。マレーシアは共同調査班(JIT)の五つのメンバー国家のひとつであるが、出版された調査結果に反対し、JITに関わるオランダ政府職員によって最近報じられたロシア人容疑者を告発することにも反対している。マレーシアやオランダに加えて、JITのメンバー国家にはオーストラリア、ウクライナおよびベルギーが含まれる。マレーシアは当初からJITから除外され、ベルギー(MH17便の乗客名簿には4人のベルギー人が記載されている)が加えられたが、これらに関しては何の説明もされてはいない。

このドキュメンタリー・フィルムはJITの証人が行った陳述や写真、動画、および、電話記録がウクライナのシークレットサービス(SBU)によって改竄されており、マレーシアの法廷ばかりではなく、他の国でも、さらには、国際法廷においても犯罪の起訴に使用するには堪えられないような代物であると判断し、その証拠を示した。

初めての公表であるが、マレーシア政府は撃墜事件の一週間後に米国がウクライナ東部でNATOによる軍事攻撃を起こそうとしたが、その企てを阻んだ事実も暴露した。その企ての表面上の理由は航空機や乗客の遺体および墜落を引き起こした証拠を回収するためであるとされた。実際には、この展開はドンバス地域における分離派を駆逐することが目的であり、ロシアによって確保されているクリミアに抗するための動きであった。

この新しいドキュメンタリーは秘密裡に行動したマレーシアの軍事作戦が7月22日にMH17便のブラックボックスを手中に収め、米国やウクライナが取得することを阻んだことを暴露している。この作戦を指揮したマレーシア陸軍の大佐によって暴かれたマレーシアの作戦はカモフラージュのストーリーを組み立てるための証拠を排除することに成功し、NATO軍による軍事攻撃に対するドイツ政府の反対意見を強め、オランダ政府は7月27日の侵攻作戦を諦めることとなった。

マックス・ファン・デル・ウェルフとヤーナ・イエーラショヴァによるこの28分のドキュメンタリーは最近公開されたばかりである。イエーラショヴァは映画監督であり、ファン・デル・ウェルフやアフメド・リファザルと一緒にドキュメンタリーの製作に従事した。ヴィタリー・ビルアウコフが撮影を担当した。このフィルムの全編をこちらでご覧ください。

マハティール首相とのインタビューは、別途、先に公開されていた。そのインタビューはこちらでご覧ください。


Photo-2: マレーシアのモハマド・マハティール首相

マハティールは米国とオランダ、オーストラリアがどうしてマレーシアを調査活動の最初の段階でJITのメンバーから外したのかについて暴露した。その頃、米国、オランダ、オーストラリアおよびNATOの高官らは9,000人の兵力をウクライナ東部へ派兵し、表向きは撃墜現場、航空機、旅客の遺体を確保し、7月17日のMH17便撃墜事故におけるロシアの役割に対応するというものであった。この構想の詳細についてはこちらを読んでください。

軍事介入に関してはドイツが反対したことから中断されたけれども、オーストラリアは200人の特殊部隊をオランダへ送り込み、後にキエフへ配備した。ヨーロッパ連合と米国は、7月29日、対ロ経済制裁を発動した。

旅客機を撃墜したとしてロシアを非難する米国の企てに対するマレーシアの反対は事故の数時間後には当時マレーシア首相であったナジブ・ラザクが当時のオバマ米大統領に明確な立場を伝えていた。このストーリーの詳細はこちらこちらをご覧ください。

新しいドキュメンタリーでナジブの後継者であるマハティール首相は次のように述べている: 

「彼らはわれわれが関与することは最初から許そうとはしなかった。これは実に不公平で、まったく尋常ではない。彼らには墜落の原因や誰の犯行であるかを究明する積りなんてさらさらないことがわれわれには容易に読めた。彼らは犯人はロシアであるとすでに決めていた。われわれはこのような態度は決して受け入れることはできない。われわれは法の支配に興味があるのであって、誰が関与していたのかには関係なく、だれにも公平な司法に興味を持っているのだ。われわれは誰がミサイルを発したのかを知る必要があり、それを知ることができる時に初めてわれわれは完全な真実を受け入れることが可能となる。」 

7月18日に、撃墜後初のマレーシア政府の記者会見が行われ、ナジブ首相は電話で確認したオバマ米大統領とウクライナのポロシェンコ大統領との合意内容を公表した。

『「オバマと私は調査は秘密裡には行わず、国際調査団に墜落現場へのアクセスをを与えなければならないことを確認した。」 ナジブ首相はウクライナ大統領が完全な、徹底した、独立した調査を行うことやマレーシア政府の代表も参画することを約束したと述べた。「また、墜落現場への人道的回廊を設けるためにウクライナ大統領は東部の反政府派とも交渉をする」とナジブは述べている。「彼は、また、誰も航空機の破片やブラックボックスを現場から持ち出してはならない」とも言った。マレーシア政府はキエフに向けて特別機を派遣し、マレーシア特別救難チームと医療チームを送り出す。われわれはこの旅客便にいったい何が起こったのかを究明しなければならない。たとえ一個の石であってもそれをひっくり返して、徹底的な調査を行う。』 

新ドキュメンタリー・フィルムはマレーシア・チームを率いるモハマド・サクリ大佐とのインタビューでその次に何が起こったのかを明らかにした。プトラジャーヤにある彼のオフィスで撮影されたサクリの証言はマレーシア国外のメディアによってこの5年間に初めて報じられたものである。1年前、サクリ大佐はマレーシアの新聞に自分が与えられた任務を部分的に公開していた。


Photo-3: マレーシアのモハマド・サクリ陸軍大佐

「私は首相と話をした」とサクリ大佐は言う。「首相からは私が墜落現場へ急行するようにと指示された。」 当時、サクリは首相府の救難対策本部で安全保障を担当する上級将校であった。キエフへ到着後、ポロシェンコ政府の職員はマレーシアからの一行を遮ろうとしたとサクリは言う。「現場へ直行することは許されなかった。そこで、私は小さなチームを編成し、彼らを密かにキエフからドネツクへ向かわせた。」 現地ではサクリは墜落現場を見て回り、アレクサンダー・ボロダイに率いられたドネツク分離派政府の職員と会った。

二人の医療専門家、通信隊員、マレーシア陸軍特殊部隊員を含む11人の一行が現地へ急行した。オーストラリアおよびオランダの武装集団やウクライナ政府職員のグループとの競争となったが、マレーシアが先行した。オーストラリア・オランダのグループはドネツクの分離派勢力によって遮られたのである。オーストラリア軍の一行はキエフに控えているオーストラリアとオランダ両国の外相、つまり、ジュリー・ビショップ外相とフランス・ティマーマン外相によってせっつかれていたものの、自分たちの任務を放棄せざるを得なかったとオーストラリアのABC国営放送が報じた。 この報道はサクリ大佐がMH17便のブラックボックスを手中に収めた後のことであった。ブラックボックスが手渡される儀式は7月22日のボロダイのオフィスで行われ、その様子がフィルムに収められた。

米国の関係者は当時ウオールストリートジャーナルに次のように語った。「サクリの任務の成功はナジブ政権に政治的勝利をもたらした・・・ また、この成功はドネツクに現れたマレーシア政府の職員が署名をした合意書を介して分離派には非常に価値のある贈り物を与えることとなった。当の墜落現場をドネツク人民共和国の領土として認知したからだ。この認知は分離派には何の信頼感をも抱いてはいないキエフやワシントンの両政府の反感を買ったに違いない。主な指導者らはこの地域とは何の繋がりも持たないロシア人なのだ(訳注:因みに、当時ドネツク分離派政府を率いていたアレクサンダー・ボロダイはロシア市民である)。米国務省の副報道官のマリー・ハーフは月曜日の記者会見でこの交渉は分離派を正当だと認めることにはならないと言って、水をさした。」

オーストラリア国営ラジオ局は、当時、ブラックボックスの証拠によると「旅客機の破壊と墜落の理由はロケットの爆発に起因する複数のシュラップネルによって開けられた穴から起こった爆発的な破壊によるものであった」とウクライナ政府が主張していると報じた。しかし、これは作り話であった。6週間が経って、9月にオランダ安全保障会議によって発表されたブラックボックスやコックピットの音声記録、飛行データ記録の証拠からはこの種の内容は何も報告されてはいない。これらの証拠が示した内容はこちらをご覧ください。

ビショップ外相はキエフで、7月24日、オーストラリア軍がウクライナ国内で武器を携行することができるようにウクライナ政府と交渉していると言った。「われわれが武器の使用に頼ろうとしている訳ではない」と彼女は国営ニュース局に向けて述べた。「しかし、これは万が一のための策であり、この種の合意書にこういった条項を含めないとすれば、それは余りにも無謀だ。」 しかしながら、私は強調しておきたい。われわれの任務は人道的なものであることから、われわれは武器を携行しない。」


Photo-4: キエフにて、2014年7月24日。左から右へ、ジュリー・ビショップオーストラリア外相、フランス・ティマーマンオランダ外相、パヴロ・クリムキンウクライナ外相の面々。

彼女が国営ラジオに向けて話をする時点まで、ビショップは3,000人のオーストラリア軍を含む軍事介入の計画は取りやめになったことは隠していた。また、ブラックボックスはすでにサクリ大佐の手中にあるという事実も彼女は隠していた。

ブラックボックスを引き取るためにサクリ大佐が署名した文書は新ドキュメンタリーで確認することが可能である。サクリ自身が署名し、マレーシア国家安全保障委員会のスタンプを押した。

サクリはウクライナに派遣されている欧州安全保障協力機構(OSCE)の特別監視団からもブラックボックスをウクライナへ引き渡すよう要請を受けたと言う。しかし、彼は断った。それから、彼はFBIの工作員からも面会を求められた(6分56秒の辺り)。「連中は私に近づいて来て、ブラックボックスを見せてくれと言った。私はノーと言った。」 キエフではウクライナ政府がブラックボックスを引き渡すよう強引に求めて来た。われわれはノーと言った。「そんなことはできない。そうはさせない。」 


Photo-5: ドネツクでの引き渡しの儀式。2014年7月22日。

サクリ大佐が報道陣に話をすることについての許可はプトラジャーヤの首相府にいる上司から下され、彼の情報開示には事前に合意が与えられた。

その後キエフ政府が公表した内容はロシアが旅客機の撃墜に関与していたことを裏付けようとする電話記録を含んでいた。これらは、先月、4人のロシア人を起訴する証拠であるとしてJITによって提示されたものである。その詳細については、 こちらを読んでください。
ファン・デル・ウェルフとイエーラショヴァは、これらの電話の録音テープを詳しく調査するために、訴訟資料として用いられる音声や動画およびデジタル・テープに関して科学的解析を行うことを専門とするマレーシアの企業、OG IT Forensic Servicesに連絡をした。クアラルンプール所在のこの企業はマレーシア法曹協会によって認証されている。全143ページに及ぶ技術報告書はこちらで読むことが可能だ。

Photo-6: アカシャ・ローデン。OG IT Forensic Services社のデジタル科学捜査の上級専門家。

アカシャ・ローデンが報告した調査結果、ならびに、カメラに向けて描写された内容はこの録音テープは切ったり貼ったりして編集されており、捏造されたものであることを示していた。6月19日にオランダ警察の担当オフィサーで、オランダの国家犯罪捜査部門を率いるパウリッセンによって行われたJITの記者会見によると、このテープの出所はウクライナのSBUだ。ドイツの分析専門家であるノルマン・リッテルもファン・デル・ウェルフのドキュメンタリ-の中で同様の発見事項、つまり、テープの捏造や証拠の隠滅について報告している。

Photo-7: 左側:「いや、単純に言うと、それはウクライナからの盗聴電話だ」 右側: 「たくさんの編集が行なわれている」 - 録音テープの専門家、ノルマン・リッテルの言

ファン・デル・ウェルフとイエーラショヴァはウクライナ東部の撃墜現場で撮影をした。数人の地元の目撃者がインタビューを受け、トレーズの町のアレクサンダーという名前の男性やレッド・オクトーバーと称する農業集落からのヴァレンティーナ・コヴオレンコが含まれる。その男性はミサイル発射装置が7月17日の当日にロシアとの国境を越して持ち込まれたとするJITの説明に反して、少なくとも一日前からトレーズにあった、場合によっては、7月17日の撃墜の日の2日前からだったかも知れないと言った。彼はJITが断定したブク・ミサイルの識別については言及しなかった。

コヴオレンコはミサイルの発射を目撃した「比類のない」人物として、3年前に、BBCのドキュメンタリーに初めて登場した。彼女は自分が見たミサイルの発射地点に関してはBBCが報じた内容よりも遥かに詳しい内容を喋った。


Photo-8: ヴァレンテイーナ・コヴォレンコ:「しかし、間違った方へ行った。落下ではなく上昇。」(訳注:Photo-9のキャプションと一緒にして、理解してください。)

発射地点はJITによる記者会見で特定された場所ではなかった。ファン・デル・ウェルフはこう説明している。「われわれはコヴォレンコにミサイルがどちらの方向からやって来たのかを示してくれと頼んだ。そして、私はJITが言った発射地点の方向から来たのではないかと二度も重ねて質問した。彼女はそちらの方向に発射や飛行雲を見たのではなかった。JITが述べた「発射地点」は彼女の家や庭先から2キロ弱であることに留意されたい。彼女の証言の中でももっとも重要なこの部分をBBCは削除した。」 


Photo-9: ヴァレンテイーナ・コヴォレンコ: 左側:「最初の思いは撃墜された飛行機が落下するのではなく、どうして上昇していったのかという点。」 右側:「ミサイルはどこから来たんですか?」 「この辺りからよ。」 

新ドキュメンタリーでのコヴオレンコの証言によると、彼女はこのミサイル発射地点には「あの時、ウクライナ軍がいた」と明確に断定したのである。

コヴオレンコは7月17日の前の何日間かウクライナの軍用機が彼女の集落の上空を飛行していたことも記憶している。彼らは責任逃れのテクニックを用いていたと彼女は言う。彼女は民間機の陰に隠れて飛行する様子を見ていたのである。


Photo-10: 左側:「2機の軍用機が飛んでいた。見上げると、旅客機も飛んでいた。」 右側:「彼等は軍用機に向かって射撃を始めた(訳注:この部分はキャプションが間違っているようです。「軍用機」ではなく「旅客機」でしょう)。ジェット機は旅客機の真下へやって来た。」

「7月17日にはウクライナ軍のジェット機が周辺を飛び廻っていた。あれはちょうどMH17便の撃墜の時点だった」と他の3人の村民もファン・デル・ウェルフに話している。

このドキュメンタリーの結論として、ファン・デル・ウェルフとイエーラショヴァはオランダ人の独立したジャーナリストであるステファン・ベックが撮影したインタビューも紹介している。彼については、JIT高官らは彼が撃墜現場を訪問することは差し控えるようにと警告していた。ベックはエフゲニー・ヴォルコフをインタビューした。ヴォルコフは2014年7月にはウクライナ空軍の航空管制官を務めていた。ベックはヴォルコフにオランダ安全保障委員会の旅客機の撃墜に関する報告書、さらには、JITが後に発行した報告書によって裏付けされているウクライナ政府の声明に関してコメントを求めた。これらの報告書は撃墜の当日にはウクライナ軍のレーダーは稼働してはいなかったので、撃墜時点のこの空域に関するレーダー記録は何もないと報告していたのである。


Photo-11: 左側:「一基だけではなく、三基ある。」 右側:「チュグエフ?」
 
ヴォルコフはチュグエフの空軍基地からはジェット戦闘機が発進していることから、7月17日にはチュグエフに設置されている3基のレーダーは「厳戒態勢で」稼働していた筈だと説明した。チュグエフ基地は撃墜現場の北西200キロに位置している。彼はレーダーの一基について修理作業が行われていても、3基全部が稼働していなかったという理由にはならないと反論した。MH17便の撃墜の場所や時刻はウクライナのレーダーに記録され、保管されているとヴォルコフは言う。「連中は記録を持っている。ウクライナの何処かに持っている。」 

先月、6月19日にオランダで行われたJITの記者会見にはマレーシアからの代表がいた。マレーシア法務省の3人の法務次官のひとりであるモハメド・ハナフィア―・ビン・アル・ザカリアは、マレーシア政府のために、JITが提示した証拠とロシアに対する非難を受け入れることを拒否した。「JITが犠牲者の正義を希求することにはマレーシアは献身すると重ねて言いたい」とザカリアは述べた。 「JITの目的は調査を終わらせ、全ての証言者から証拠を収集することにある。これは犯行者を起訴するためであって、マレーシアは法の支配ならびに正当な裁判手続きを尊重する。」 [質問: あなたは結論を支持しますか?] 「結論の一部は・・・[聞こえなかった]・・・われわれの立ち位置を変えるものではない。」 

原典: Dances With Bears

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

MH17便のブラックボックスの行方を探すレースが展開されていた。このレースに登場した連中は最初から米ロ間の新冷戦の最前線に立たされていたことになる。結局、マレーシアからやって来たモハマド・サクリ大佐の使命感と機敏さがこのレースでの勝利をものにした。

NATOが9,000人の将兵をウクライナ東部へ送り込もうとしていたが、ドイツの反対にあってこの計画はおじゃんになったという情報は私はここで初めて耳にした。非常に貴重な情報である。この情報によってMH17便撃墜事件の背景が、まさに、霧が晴れたかのように、明確に見えて来たからだ。

もしもMH17便のブラックボックスがウクライナ政府の手中に陥ったとしたら、ウクライナ政府はさらなる大嘘を展開することが可能となり、ウクライナ東部へのNATO軍の派遣へと繋がって行ったことであろう。その先は米ロ間の戦争だ。マレーシアの行動がもたらした成功は、多分、神様が与えてくれたご褒美なのかも知れない。

一言で言えば、MH17便の撃墜はNATO軍を投入して、ウクライナ東部の反政府派を駆逐するための口実として必要だったのだ。NATO軍は独立を宣言したドネツクとルガンスクの両人民共和国を武力で手中に収めるだけではなく、クリミア半島から黒海に睨みを利かせているセバスト―ポリにあるロシア海軍の基地を奪いたかったのだ。米国の助けを受けてクーデターによって前政権を排除した当時のウクライナ政府はNATO、つまり、米国の手先となってMH17便を撃墜するという明確な任務を課せられていたということになる。JITのメンバー国には拒否権が与えられ、ひとつのメンバー国が拒否すれば、その情報は公表しないとの合意があった。言うまでもなく、このシナリオではこの拒否権を最大限に活用することになるのはウクライナであり、必要となる舞台道具はすべてが用意されていた筈であったが、何処かで歯車が噛み合わなかったのだ。

マレーシア政府の一連の言動と行動は主権を尊重する民主主義国家はマレーシアのような見識と行動力を持つことが最低限必要なんだということを改めてはっきりと認識させてくれた。米国に追従する日本政府と敢えて比較するまでもないが、マレーシア政府の毅然とした態度には拍手を送りたい程だ。



参照:

注1: MH17 Evidence Tampering Revealed by Malaysia - The Dutch Covered-Up Forged Telephone Tapes, Ukraine Hid Radar Records: By John Helmer, Checkpoint Asia, Jul/23/2019