2011年12月25日日曜日

究極の生物兵器、鳥インフルエンザ•ビールスがある研究所で完成

この情報は1221日にRT Newsによって報道された[1]

それによると、オランダのある大学の研究者はビールスに突然変異を繰り返させて、いままでは空気感染をすることはなかったビールスに空気感染するような特性を付与したものだという。従来の鳥インフルエンザ·ビールスは人から人への感染は非常に珍しかったのだが、この新たに獲得された特性によってこのビールスは毎年起こるインフルエンザのように誰にでも感染する能力を持つに至ったという。
ビールス研究者であるロン·フシエとその仲間の研究者らがH5N1ビールスを初めて変異させ、その結果を今年の9月に学会で報告した。その際、この研究成果が持つ潜在的な恐怖がインターネットを駆け巡り、この情報は専門からの間で一気に広まったという。

この研究に従事したビールス研究者たちは彼らの研究成果を公表したいとしている。
しかし、微生物学者であり米国のバイオセキュリテイ科学諮問委員会(NSABB)の委員長を務めるポール·カイム氏はこの種の情報の公開には懐疑的だ。「こんなに恐ろしい病原性微生物は他にはとても考えられない。あの悪名高い炭素菌でさえもこれに比べたら全然恐ろしいとは思えない程だ」と、単刀直入に意見を述べている。
鳥インフルエンザ·ビールスは約10年程前にアジアでその存在が確認された。特にH5N1ビールスが最も致死率が高いと言われている。渡り鳥を媒介して各地で流行が見られ、今や全世界的に鳥インフルエンザが発生する。人に感染すると約50%は死に至ると言われている。過去10年間に600人弱の死者が出ている[2]。しかし、今までは空気感染をすることは無かったので、人から人への感染は殆ど無かった。

この人工的に作り出されたスーパー·フルーは、目下、オランダのロッテルダムにある医科大学の地下室に保管されている。しかしながら、武装したガードマンが目を光らせて警護しているわけではない。
この研究結果を公表するべきかどうかにつては議論が高まるだろう。作り上げてしまったビールスによる世界規模の流行を防止するには、そのような流行の危険性をわきまえた上で他の科学者のさまざまな考え方を広く取り入れて取り組むしかない。しかし、その課程でこのビールスがテロリストの手中に陥る可能性はゼロとは言えない。非常に理不尽な状況になると見られている。
米国政府は著者に対してこの研究の詳細を公表しないように求めているが、この研究課題に助成金を出した米国の国立衛生研究所(NIH)は1220日に「研究者たちは原稿の内容を変更している。研究成果の全体像を公表することは大事だ」との見解を示した、とAP通信社は伝えている。



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人道的な見地からするとても許容することはできないとする常識論の立場と自分たちの研究成果を是非公表したいとする研究者のエゴとの間の駆け引きとなりそうだ。さらに、そこへはNIHという米国の国家機関の戦略も絡んで来る。
世間には人口爆発対策として人口を制御するためにエイズ·ビールスが作り出されたという陰謀論が存在する。そのための研究がどこかで密かに行われているという。エイズ感染は感染者の血液や体液に接触することによって伝播する。そこに、このスーパー·フルーが獲得した空気感染の特性が付与されたとしたら、手に負えないような爆発的な感染力を備えることになる。恐ろしい話である。

「エイズと鳥インフルエンザがどう関連し合えるのか?」という問いかけが起こるだろう。
一昔前はSFの世界の話であった事柄が現実の話になる昨今である。今後の10年間に何が起こるか分かったものではない。それだけに、こうした研究結果が持つ潜在的な可能性は安易に放置しておいてはならないと思う。



出典:
[1] Outbreak: Man-made super-flu formula to be published? RT News, Dec/21/2011

[2] Man-made super-flu could kill half humanity: RT News, Dec/03/2011


2011年12月17日土曜日

木村真三さんという放射線衛生学の研究者

YouTubeの動画サイト[1]で放射線衛生学を専門とする研究者、木村真三さんの活動振りを知ることができた。福島第一原発事故後の放射能による環境汚染の調査とのかかわりをNHKETV特集「ネットワークで作る放射能汚染地図」が詳しく記録している。
 
木村真三さんという研究者のひたむきさが感動的だった。頭が下がる思いがする。
 
311日の福島第一原発での事故直後、職場(労働安全衛生総合研究所)の幹部からは自主的な調査を控えるようにとの指示があったという。東海村での臨界事故やチェノブイリ事故について自分が今まで研究してきた成果や知識を、この未曾有の危機に直面しながら事故現場の人たちに対してまったくフィードバックができないという「やり切れない思い」があった。

木村さんは辞表を出した。そして、原発事故の5日後には放射線の測定器を携えて福島へ向かっていた。 
 
2ヶ月間で3000キロにもおよぶ調査の旅が始まった。それを支えるのは研究者の仲間の皆さん。日本における放射線測定の草分け的な存在である岡野眞治さん(84歳)、京都大学の今中哲二さん、広島大学の静間清さんと遠藤暁さん、長崎大学の高辻俊弘さんたちだ。
 
研究者の方々の努力によって、福島原発周辺の放射能汚染地図が作成された。
 
場所によっては、放射能線量が非常に高い地域も見つかった。半径20キロ圏内に入って、ある場所(双葉町)では250-300マイクロシーベルト/時(2,190から2,628ミリシーベルト/年に相当、すごいレベル!)というものすごく高い場所が見つかった。この線量レベルはチェルノブイリ事故で現在でも最も汚染がひどいと言われているレッド·フォレスト[1]地域をも越すものだ。

1:「レッド·フォレスト」とはチェルノブイリ原発事故によって非常に高いレベルの放射能を浴びて枯れ死し、赤茶けてしまった松林を指す。原発の周辺に広がっていた10平方キロにも及ぶ地域。今はその松林はブルドーザで撤去されてしまって跡形もないという。[2]

原発から27キロも離れている(浪江町の)赤宇木の集会所には4組の夫婦と4人の独身者の皆さんが避難して共同生活をしていた。皆この場所に留まらざるをえない事情があったからだ。
 
328日、木村さんと岡野さんが調査のためにやってきた。放射線量は測定器の限度を超えていた。木村さんが赤宇木の危険性について話した2日後の330日、集会所の人々はこの場所を去ることにした。
 
赤宇木が計画的避難区域に設定されたのは、この人たちが集会所を去ってから12日後のこと。年間の被曝線量が20ミリシーベルトを越えることが予想され、退避が求められる区域のひとつになった。
 
「直ちに人体に影響を与えるような数値ではありません」という政府の言葉がテレビ報道で何回となく繰り返されていた。これは急性の放射線の健康影響のことを言っているのであって、一年後、5年後あるいは20年後に現れる晩発性の影響については何も言っていない。残念ながら、繰り返して報道されていた政府見解には晩発性の健康影響についての配慮はまったくなかった。つまり、政府には当面のパニックを回避することしか念頭に無かったということだ。

この赤宇木地区についてはもうひとつのエピソードがある。
 
文部科学省にはすでに測定データが存在してはいた。しかし、その資料では具体的な地名は隠されていた。浪江町の馬場町長はデータをもらってはいたのだが、測定点の地名は伏せられていた。自分の町の地域が最も汚染が高いという事実が目の前にありながらも、そのデータをまったく重要視してはいなかったという。データの中の32番目が赤宇木地域に相当するのだという。そこは放射線量レベルが突出した地域のひとつだった。
 
情報がそこにありながらも、最も必要な時に最も重要な情報が活かされてはいなかったのだ。
 
地域住民の健康を守ることが急務の筈の地方自治体に対して正しい情報を故意に流さなかった文科省の責任は非常に大きい。こんなことが許されていいのか。
 
赤宇木集会所の人たちの中には汚染状態についてのスクリーニングを受けた結果、基準値を超しており除染が必要になった人もいたとのことだ。このご当人に、今後、どの程度の健康被害が出てくるのかはまったく予測もつかないが、仮に5年後、あるいは、10年後に放射能による健康被害が出たとしたら、そのような場合、文科省の責任は明白である。文科省が告訴されたとしても決しておかしくはないのではないか

文部科学省に言わせると、「地名を伏せていたのは風評が広がることを恐れたから」だという。それでは、赤宇木地域に住む人たちが被ることになる健康被害はどうでも良かったのか?自分たちの保身のためだけに、現場の住民の健康をないがしろにしたということだ。非常に理不尽だと言わざるを得ない。
 
この動画は幾つもの重要な側面を教えてくれた。

木村真三さんという研究者、ならびに、木村さんを支えてくれた仲間の研究者の皆さん対して、その行動力と使命感に乾杯!!
 


出典:

[1] ネットワークで作る放射能汚染地図:  http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65734984.html

[2] Red Forest: ウィキペデアから


2011年11月30日水曜日

「アラブの春」と米国の思惑

- ある歴史家の見方 -



RTニュースの111日版が「アラブの春」について面白いコメントを掲載した。このコメントはウィリアムF.エングダールという歴史家の見解である[1]

「アラブの春」は2010年から2011年にかけてアラブ諸国に起きた政治的な動きだ。チュニジアに始まり、エジプト、イエメン、そしてリビアへと飛び火し、民衆主導のデモによって旧体制が崩壊した。政権の転覆には至らなかったとはいえ、この動きに影響を受けた国は多い。サウジアラビアもそのひとつだ。そして、この地域は石油やガスの産出·埋蔵地帯でもある。

20101217日、チュニジア南部の小都市で野菜を露店で売りながら家計を支えていた26歳の青年が市役所の前で焼身自殺した。これは無許可販売をしていたとのことで摘発を受け、それに対する抗議の出来事だった。これが注目を集め、全国的なデモとなり、チュニジア政権はあっけなく崩壊した。他の国でも注目の的となり、「アラブの春」へと発展していった。

「アラブの春」は一見歓迎すべき民主化のプロセスのように見えるが、上述の歴史家は、当然のことながら、我々素人とはまったく違った見方を持っている。人とは違った見方こそが我々一般大衆の世界観を一気に解放してくれる。その点が興味深いのだ。それを少し覗いてみたいと思う。

以下に、このRTニュース[1]の仮訳を示す。

  「米国の最終的な目標はアフリカや中東の資源を軍事力の影響下に置くことによって、中国やロシアの経済成長を妨害することにある。そうすることにより、ユーラシア大陸全体を支配下に置くことだ。」 著者で歴史家のウィリアムF.エングダールはこう明かす。

第二次世界大戦後に築き上げられた超大国が今崩壊しようとしており、今起こっている米国経済や米ドルの危機、さらには、米国の一連の対外政策はすべてがこの崩壊過程の一場面だ、とエングダールは言う。

百年前に大英帝国が崩壊しつつあったとき英国人の誰もが自国の崩壊を認めようとはしなかった。それとまったく同様に、ワシントンDCでも誰もが認めようとはしない。今起こっていることのすべては、この超大国がただ単に崩壊をくい止めようとする努力をしているだけではなく、その影響力をいつまでも世界の隅々に行使しようとする米国の意思と深くかかわっている。

ウィリアムF.エングダールが信じるところによると、中東や北アフリカでの暴動は一番最初は2003年のG8会議においてジョージW.ブッシュが提唱した計画を反映したものだ。その計画は「大中東プロジェクト」と呼ばれた。

アフガニスタンから始まって、イラン、パキスタン、そしてペルシャ湾岸地域、さらには北アフリカを経てモロッコに至るまで、「民主化」の名目の下でこれらの国々をコントロール下に置くべく陰で操ったのだ。

いわゆる「アラブの春」は周到に計画され、予め組織化され、扇動者らによってカイロやチュニジア、あるいはその他の都市では「自然発生的な」抗議デモやツイッターを活用した暴動となり、それらの動きが巧妙に利用された、とこの歴史家は指摘する。

「アラブの春」の抗議デモのリーダーの中にはセルビアのベルグラードで「キャンバス」(Canvas: Center for Applied Non-Violent Actions and Strategists - 非暴力行動と戦略のためのセンター)とか「オトポール」(Otpor: セルビア語で「抵抗」を意味する。旧ユーゴスラビアでミロセビッチ大統領に対して非暴力の反政府運動を展開し、成功を収めたことで知られている[2])といった組織の活動家から訓練を受けていた者たちがいる、とエングダールは明かす。

エングダールによると、米国国務省がイスラム世界をどのようにしたいかと言うと、ふたつの主要な動機が挙げられる。

その最初の動機は巨万の富がアラブ世界のリーダーの手中にある点だ。政府系ファンドや資源など。基本的な筋書きは旧ソ連邦が1991年に崩壊した時と全く同様だと言ってもいい。それは、IMFによる民営化、自由市場経済、等を登場させ、西側の銀行や企業がアラブ世界に入り込み、その富を略奪することだ。

二番目は中国の将来の経済成長に対して非常に戦略的な地位を占めることになるかも知れないリビアや南スーダンといった石油産出国を米国の軍事的影響圏に収めることだ、とエングダールは指摘する。

「ユーラシア大陸をコントロール下に置くことが最終的な目標だ。そして、これはズビグニュー·ブレジンスキーが1997年に著した有名な本「偉大なるチェスゲーム」で述べていることと重なる。特に、ロシアと中国ならびにこれらの国と経済的および政治的な団結を標榜するユーラシアの他の国々をコントロール下に置くことだ。」

その結果はすでに現れている。エジプトやチュニジアでは民主化がすでに経済を弱体化し、かってはアフリカで最高レベルの生活水準を誇っていたリビアはNATOの爆撃によって今や廃墟同然だ。

西側の主要国、特にペンタゴンの最大の関心事はエジプトやリビアの市民のために正常な生活環境を回復することなんかではなく、異常事態に陥った国や地域を軍事的なコントロール下に収めることだ、と歴史家は評価する。TNC、すなわち、リビア臨時政府の主たる関心事はカダフィ大佐の42年間の政権下では聞いたこともないようなNATOへの基地使用権の供与だ。

アフリコム(AFRICOM:ペンタゴンのアフリカ·コマンド)が現地の動きを調整している。興味深いことには、2006年に中国が40カ国にものぼるアフリカの国々を北京に招き、石油資源の開拓や病院の建設、インフラの整備といったIMFが過去30年間に思ったこともやったこともないような事業について署名を交わし、アフリカ外交を展開した直後にこのアフリコムが設立された。

米国が中国の利益や安全保障に真っ向から敵対しているのは本当であるが、毎年貿易で3000億ドルもの利益を上げている北京としては、単純に言って、このお金をどこかに投資したいのだが、現実にはこんなに多額の金額を吸収してくれる市場がない。北京は米国の財務省証券を買うしかない。財務省証券を購入するということは米国が推し進めている戦争に資金援助をしているも同然だ。皮肉にも、中国は直接的に自国の利益に反することをしていることになる。

ウォール街の金融の神々にとっては、生き延びるためや米ドルを維持するための唯一のチャンスは今や略奪をすることができる新たな国や地域を見つけ出すことだ。「アラブの春」はアラブ世界が所有している膨大な富を掴み取り、それを民営化する方向に向けるためのものだ、とエングダールは結論付ける。

ユーロ圏の将来も厳しい。というのは、ギリシャの財政危機はEUの下で2002年に他ならぬゴールドマン·サックスによって仕掛けが作られた。金の流れを見ると、ギリシャ危機はウォール街や米国財務省ならびに米連邦準備金制度の命令で何時でも起爆させ、その準備金、つまり、米ドルを防御することができるような仕掛けだった。

米国は世界中に次々と基地を作っている。例えば、17箇所に新しい基地が作られ、そのほとんどが空軍用だ。アフガニスタンの基地は中国との新しい戦争のためかも知れない。あるいは、多分、ロシアとの戦争のためだろう。

「ただ単に冷戦時代の歴史からという訳ではなく、それ以上に、ロシア自身は、NATOや米国の「大中東プロジェクト」が持つ著しく危険な戦略に対する反撃勢力として、建設的で安定化に向けた非常に大事な役割を演ずることができる。少なくとも、そう願いたいものだ。」
 

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私は常に思っていた。ユーロ危機は米国がユーロ圏に対して仕掛けた金融戦争だと。

派手にドンパチとやる武器を使った戦争とはまったく違って、金融戦争では目には見えない武器が使われ、非常に長いスパンの時間をかけて戦争が行われる。

この歴史家が描いた米国像は辛らつだ。しかし、その実像に非常にうまく焦点が合っていると思う。素人のピンボケ写真とはまったく違うのだ。素人が抱いている日頃の印象や断片的な思いを上手に整理し、簡潔に纏めてくれていると思う。

ユーロ危機を戦争にたとえると、ギリシャ危機はひとつの作戦でしかない。次の作戦の対象はスペインやイタリアへと移っていくことになろう。投資銀行のゴールドマン·サックスや格付け会社のスタンダード&プアーズやムーディーズはそれぞれの専門分野に特化した作戦部隊だ。そして、世界を股にかけた強力なマスコミが後押しをする。

日本や韓国に目を移すと、TPP環太平洋経済連携協定)は原子力空母に匹敵するかも知れない。日本や韓国に配備して、持ち前のクルーズミサイルを駆使して次々と作戦を展開させるのだ。日本や韓国にとって最も大きな脅威はその「ISD条項」と名づけられたクルーズミサイルだ。医療保険制度とか環境条例が狙い撃ちされることになる。

ISD条項とはInvestor State Dispute Settlementの略で、「投資家対国家間の紛争解決条項」と呼ばれる。強力な破壊力を持ったこのISD条項によって、韓国や日本にはあるが米国にはない規制によって米国の資本家が被害を受けたとして韓国や日本が提訴され、彼らによって選出された国際調停機関によって日本や韓国の政府あるいは地方自治体は莫大な賠償金をとられる。これがTPP版の収奪の仕組みだ。

このようなISD条項による被害はカナダ、米国、メキシコの3国間のNAFTA(北米自由貿易協定)で数多くの事例が起こっている。米国の隣国であり、同じヨーロッパ文化圏に属するカナダさえもが莫大な被害を受けた。

米国の隣人であるカナダやメキシコから始まって、ヨーロッパや韓国および日本も含めて、米国は一方ではこれらの国々とさまざまな同盟を結びながらも、経済戦争では他国をあくまでも搾取の対象としか見ていない。

既にその甘い味を十分に覚えた米国の資本家にとっては、従順で金持ちの韓国や日本は濡れ手に粟だろう。

歴史を見ると、米国はこうした仕掛けの名人であることが分かる。特に、坂道を転げ落ち始めた今、米国の資本家は手段を選ばない。唯、彼らは狡猾にもこれを「経済のグローバル化」、「自由経済」、あるいは、「非関税障壁の撤廃」と呼んで、あたかも、韓国や日本にもその恩恵が得られるかのように偽装した。ここに彼らの詭弁の真骨頂が見られると言えるのではないだろうか...

ウィリアムF.エングダールの上記の記事によって、「アラブの春」の向こう側にはとんでもないものが見えてきた。



出典:

[1] Arab Spring is about controlling EurasiaRT News, November 01, 2011

[2] Who Really Brought Down Milosevic?New York Times, November 26, 2000





 


2011年11月23日水曜日

米国は歴史的教訓を学びとることができるか

面白い記事が見つかった。

それは、「我々は尊敬されなくなった」と題する記事[1]で、米国の元上院議員が最近の米国の政治を憂える内容だ。

米国は異を唱える国に対してはどの国に対しても戦争を吹っかけようとする酔っ払いみたいになってしまった。私はアメリカが好きだ。しかし、同時に、この国は強大であるとはいえ、今坂を転げ落ちつつある国家であるが、そのことを我々のリーダーは認めようともしない.....」と、元上院議員で、米国大統領選の候補者にもなったことがあるマイク·グレイブルは言う。

米国が今行っていることはと言えば、それはまさに非道徳そのものだ。9/11同時多発テロの結果、我々は自分たちの道徳のコンパスをすっかり変えてしまった。人々はお互いを残忍に扱うことに慣れてしまった。我々アメリカ人はドイツで起こったようなことは我々の間では起こりっこない!』と言っていたものだ。ところが、それが今起こっているのだ。しかも、世界規模での米国の地位を代償にしてまで、今、起こっているのだ.....」と。

米国は歴史から何も学ばないのだろうか?

後ろを振り返ることは勝利主義者にとってはタブーであるとでもいうのだろうか?



そこへ、次のような記事が今朝登場した。

ロシアのテレビ局(RT ニュース)の1123日版にはマレーシア法廷、イラク戦争でブッシュとブレアーを有罪判決に[2]という記事が掲載された。

それを仮翻訳すると次のような内容である。

­  マレーシアで開かれた象徴的な法廷は元米国大統領ジョージW.ブッシュと元英国首相トニー·ブレアーをイラクにおける「平和に対する犯罪」について有罪と判決した。この法廷はマレーシアの活動家たちが始めたもので、4日間を要して、上述の政治家二人を不在のまま有罪とした。

このクアラルンプールの法廷は何ら法的管轄権を持ってはいないことから、この評決は象徴的なものである。2007年に、イラクへの軍事行動に反対したことで有名なマレーシアのマハティール·モハマド元首相によって同国に戦犯法廷が設立された。



非常に興味深い内容だ。

ブッシュ元米国大統領は重大な戦争犯罪を犯したとする論調は前々からあった。特に、イラク戦争を開始する理由の中心にあった大量破壊兵器の存在が脆くも崩れ去った時、そのような指摘が結構たくさんあったと記憶している。しかし、かっての一国の首相がこの件に真正面から取り組み、世界の人々の良識に訴えようとするこの動きには脱帽だ。政治的にも健全だと思う。

さらに本件に関係する記事を漁ってみた。

数日前の20111118日に「象徴的な戦犯法廷がブッシュ、ブレアーを裁く[3]と題する記事があった。


それの仮訳を次に示す。

マレーシア、クアラルンプール発(AP)  マレーシア人に率いられた活動家たちが元米国大統領のジョージW.ブッシュと英国の元首相トニー·ブレアーはイラク戦争において平和に対する犯罪を犯したとして今月象徴的な法廷を開く、とこのイベントの組織関係者が火曜日に語った。

このクアラルンプール戦犯法廷はマレーシアのマハティール·モハマド元首相のイニシアチブで始まったもので、同氏は2003年の米国主導のイラクへの出兵に断固として反対した一人だ。

本法廷は土曜日から4日間の公聴会を開き、ブッシュとブレアーが平和に対する犯罪を犯したかどうか、ならびに、イラク侵攻において国際法を犯したかどうかを特定する、とマレーシアの弁護士、ヤコブ·フサイン·マリカンが説明した。

「起訴を免除されてきたこれら二人を我々はこのフォラムにおいて法廷へ連れ出し、彼らが戦争犯罪を犯したことを実証したい」と、ヤコブはAPに語った。

活動家たちは、最近、告訴に関する情報をブッシュとブレアーに送付したが、先方からは何も反応がない、とヤコブは言う。

イリノイ州出身の国際法を専門とするアメリカ人、フランシス·ボイル教授はこの公聴会での検察官の一人である。本公聴会は、イラク戦争によって影響を受けた人たちの訴えに耳を傾けたマハティールによって設立された「マレーシア平和基金」によって実施された2年間に及ぶ調査の後を受けて開催されるものである。

この種の公聴会には前例がある。それは1967年のベトナム戦争犯罪パネルだ。このパネルは哲学者のバートランド·ラッセルやジャン·ポール·サルトル等によってスウェーデンとデンマークで開催された、とヤコブは言う。このベトナム法廷は米国がベトナムに対して侵略行為を犯し、民間人を爆撃したと断定した。しかし、米国ではこの訴追はほとんど無視されたままだ。

クアラルンプール法廷は7人の裁判官で構成されたパネルを持ち、このメンバーにはマレーシア最高裁の元判事二人や米国からの平和活動家アルフレド·ランブルマン·ウェブルやインド出身でムンバイに拠点を置く弁護士ニロウファー·バグワド等が含まれている。

この法廷がブッシュとブレアーは有罪であると判決した場合、同法廷は彼らの名前を象徴的な「戦争犯罪人名簿」に登録する。

来年、同法廷は別個の法廷を開き、イラク戦争において甚大な苦痛を与えた罪で、元米国副大統領のディック·チェイニーや元国務長官のドナルド·ラムズフェルドならびに元検事総長のアルベルト·ゴンザレスを含む米国政府関係者を訴追する、とヤコブは語った。
 

するどい洞察力を持ち、個人的な利害関係に溺れない人たちだけが物事を正しく捉えることができるのではないかと思う。マレーシアの元首相は政治家でありながらも、そんな人たちの一人なのかも知れない。また、上述の米国の元上院議員もその好例だ。これらお二人はすでに引退しているとはいえ、今も政治の分野で人々を導こうとしている。
 
こういった動きを積みかさねることによって、マレーシアは小国かも知れないが、そこからの人道への呼びかけが周りの国を動かし、国連を動かし、米国を、そして、世界を少しでも変えて行って欲しいと思う。国際政治の方向性を少しでも修正して欲しいものだ。
 


 
出典:

[1] ‘We have lost respect’ – former US SenatorNov/22/2011, RT News

[2] Malaysian court convicts Bush and Blair over Iraq warNov/ 23/ 2011, RT News

[3] Symbolic 'war crimes' tribunal to try Bush, BlairNov/18/2011, Associated Press