2019年8月22日木曜日

タルシ・ギャバードの主張は正しい


米国の2020年大統領選挙を目指して、民主党や共和党の大統領候補としての指名を受けるために熾烈な競争がすでに始まっている。たとえば、民主党では、73031日、自動車産業の中心地であるデトロイトで20人の候補者が集まって、第2回目の討論会が開催された。二日間をかけて討論された論点には医療保険制度、刑事司法制度、トランプ政権の追加関税、TPPへの再加盟、等が含まれている。

20人の内で6人は女性である。これらの女性候補者は夫や父親の七光りではなく、自分の専門領域で頭角を現して来た者ばかりであって、その点が特筆に値する。2016年の大統領選では民主党指名のヒラリー・クリントン候補は、良いにつけ悪いにつけ、大統領を務めた夫の存在が見え隠れしていた。しかしながら、2020年の大統領選のために民主党から出馬したこれら6人の女性候補者は皆が、従来とは違って、自分自身の力で現在の地位を確立している。

6人の女性候補者の中にはハワイ州選出の下院議員、タルシ・ギャバードがいる。彼女は独自の政治的見解を持っていることから、今、さまざまな方面から注目を浴びている。

ここに「タルシ・ギャバードの主張は正しい」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。タルシ・ギャバードは上述の民主党候補者による第2回討論会では勝ち組の筆頭であると評されている。そこで、彼女の政治的見解を少しでも学んでおきたいと思う次第だ。


<引用開始>

731日に行われた大統領選の民主党予備選での候補者による討論会の後、ハワイ選出のタルシ・ギャバード下院議員は全候補者の中でもっとも多くのグーグル検索を受け、 彼女の討論会における目立った活躍(カリフォルニア選出のカマラ・ハリス上院議員を犯罪歴に関する討論で勝利したことを含む)が数多くの視聴者の関心を集めたことを示した。と同時に、この急激な関心の高まりは否定的な反応ももたらした。たとえば、ハリスは「アサドの擁護者」(シリアのアサド大統領を指している)と言って、ギャバード一言で片付けた 大手メディアからは、典型的にはCNNのクリス・クオモによって、ギャバードはハワイ出身の国家警備隊の少佐であって、中東で二回の従軍経験を有するが、シリア市民に対して化学兵器を用いたとして責任を問われているアサド大統領については米諜報関係者や国連調査官の見解よりもむしろアサド側についているとして報じられた。

「あなたの引用は私が表明したことについて懐疑的な見方をしており、皮肉そのものである。われわれに対して嘘をつき、米国市民に対して嘘をつき、下院や上院の議員がそれを信じて戦争に賛成票を投じることになった偽りの証拠を示した連中がもたらした戦争に私は従軍した。その戦争の結果、私の兄弟姉妹とも言うべき将兵がこの戦争で4,000人もが命を落とすことになった」と述べて、ギャバードはクオモに反論した。「我が国の軍隊は次の点が確実ではない限り、派兵をするべきではない。つまり、a)米国市民のために最善の策であり、b)その派兵行為が実際に好影響をもたらす。これらの事柄を確実にすることこそがわれわれ議員や指導者の責任である。私が投げかけた疑問点は自分自身が体験したことに基づいている。」 

2003年に遂行されたイラクへの侵攻と占領の前にイラクの大量破壊兵器に関する米政府の捉え方に関して挑戦した当事者として、アサド政権は2017年のカーン・シェイク―ンや2018年のドウマの町を攻撃するために化学兵器を用いたとする主張に関してギャバードが抱いた懐疑心は十分に信頼できるものであると私は考える。

自分のキャンペーン用ウェブサイトでシリアにおける化学兵器の使用に関する主張について、ギャバードは自分が抱く懸念を詳しく述べている。彼女の立ち位置、ならびに、マサチューセッツ工科大学の教授で、カーン・シェイク―ンやドウマでのふたつの出来事に関して批判的評価を出版したセオドーア・ポストルの論文への彼女の依存は、べリングキャットのウェブサイトを創設したエリオット・ヒギンス(彼はポストルの論文とそれに依存するギャバ―トについて反論を掲載)を含めて、大手メディアやその他の分野において多くの者に深い憤りを招いた。

本論考における私の目的はポストルの研究の正確さを精査することやヒギンスの主張に対して反論することではなく、ギャバードのウェブサイトについて事実関係を調べることでもない。むしろ、元海兵隊の諜報関係の将校で兵器調査官を務めた私がここでやりたいことはギャバ―ドが懐疑心を抱くことになった背景に注目することである。

2018年4月7日のドウマにおける化学兵器攻撃に関する主張のほとんどが誤りであったことはすでに暴かれている。つまり、当初は神経ガスのサリンが使用されたという主張が成されたが、これは誤りであったことが示され、シリア軍のヘリコプターから投下されたという2個の塩素ボンベは、実際には、反政府派武装組織によって人手で個々の現場へ持ち込まれたものであるという証拠が現れた。米政府がドウマに関する主張に応えてシリアに対する軍事攻撃を正当化するために行った当初の状況評価は基本的に間違っていたことには疑いの余地がない。また、民主党大統領候補の間ではたった一人ではあるが、ギャバードがその主張の正しさについて懐疑心を表明したことは全うであるという点についても疑いの余地はない。

201744日に起こったカーン・シェイク―ンの出来事はもっと複雑である。この出来事では、化学兵器禁止機関(OPCW)から派遣された調査専門家はカーン・シェイク―ンの市民がサリンに暴露されたことを示す証拠を発見したと報告している。カーン・シェイク―ンの出来事でもっとも中心的な疑問点はサリンが使用されたかどうかということではなく、いったい誰がサリンを用いたのかという点である。米政府およびOPCWは化学兵器攻撃を行ったのはシリア政府であると結論付けた。一方、ポストルやギャバ―ドならびに私はこの結論には懸念を抱いている。

シリア政府の責任を主張するOPCWの調査専門家を含めて、独立した調査専門家でカーン・シェイク―ンの現場を実際に訪れた者は誰一人いない。これは収集されたデータがどのように評価されるのかに対して根源的な影響を与える非常に重要な要素である。攻撃が行われた当時、カーン・シェイク―ンはアルカエダの一派であるヌスラ・フロントに忠誠を誓った反政府派武装勢力のコントロール下にあった。民間の自衛・救護組織であるホワイトヘルメットシリアン・アメリカン・メディカル・ソサイエティ―、つまり、SAMS(シリアの反政府派地域で医療サービスを行うボランティア組織)を含めて、いくつかの非政府系組織が活動していた。ホワイトヘルメットとSAMSの両者はカーン・シェイク―ン地域で仕事をする際にはヌスラ・フロントの庇護の下で活動した。OPCWはその調査活動を行うに当たってはホワイトヘルメットとSAMSの両者に全面的に依存した。化学兵器攻撃に関する情報から始まって、攻撃の被害者に対するインタビューや医学的な試験検査、攻撃現場から採取されたとする物理的なサンプル、等々。

OPCW発行の報告書の信憑性にとってこのような現実はまさに致命的である。私は旧ソ連邦およびイラクで兵器調査官として10年余りを過ごしたが、調査中に収集したサンプルに必要となる「分析過程の管理」を含めて、現場での調査に関する本の出版に協力したことがある。反論を受ける心配もなく、私は次の事柄を断言することができる。つまり、サンプルの収集から最後の分析に至る間に完璧な「分析過程の管理」に欠けている証拠から推論された特性や結論には何らの公正さや法的な拘束力はない。このことはイラクにおける国連大量破壊兵器破棄特別委員会(UNSCOM)、ならびに、シリアで使用されたとする化学兵器を調査した国連派遣団にも当てはまる。あの派遣団は2013819日から930日までシリアで活動した。「受け取った情報について独立して実証することは不可能だ」とか、「サンプルの取得に関して分析過程の管理を検証することができない」として数多くの証拠を拒絶したことが記録に残されている。 

しかしながら、OPCW自分たちの手順を変更し、ホワイトヘルメットとSAMSを証拠となる「分析過程の管理」に招じ入れることを許した。OPCWの調査官は証言者の選定や篩分けといった個々の過程を開始するプロセスには関与してはいないにもかかわらず、彼らを情報を検証する手段として活用したのである。基本的に要求される手法に執着することを怠ったOPCWの行動は彼らの報告内容の信憑性に疑問を抱かせるのに十分である。それ以外の理由がない限り、アルカエダと近しい組織(つまり、ヌスラ・フロント)に実質的に調査そのものを委ねたことになる。その結果、OPCWの結論は挑戦を招くことになったのである。

ポストルとヒギンスはサリンを巡る科学について非常に多くの時間を費やしている。私は、むしろ、カーン・シェイク―ンでの出来事についてはもっと基本的な捉え方を採用したいと思う。つまり、サリンはどのようにして現場へもたらされたのか?OPCW次のように結論付けた。 「中程度の高度あるいは高高度から、つまり、4,00010,000メートルの高度から」投下された「比較的大型の爆弾」がカーン・シェイク―ンで用いられた搬送手段であると考えられる。しかし、この判断は高度な技術的問題を提起する。特に、シリア空軍のSu-22はこの爆弾をOPCWが描写したようには投下することができなかった。もしもシリア政府側がカーン・シェイク―ンで化学兵器爆弾を投下することができなかったとするならば、ヌスラ・フロントやホワイトヘルメットおよびSAMSによって提供された証拠に基づいてOPCWが結論付けた筋書きのすべては作り話であると見なさざるを得ない。

PCWは米国とフランスによって提供されたレーダー地図を引用した。その地図はSu-22機が201744日の朝カーン・シェイク―ンの上空にいたとしている。「Su-22はカフル・ザイタおよび北東にあるカーン・シェイク―ンの近傍にてループ状に旋回飛行をしていた」とOPCW報告書は指摘した。「その地図は戦闘機がカーン・シェイク―ンにもっとも近づいた飛行経路は約5キロメートル程の距離であったことを示している。」  

この情報はシリア政府がOPCWに提出したシリア空軍の日誌の内容にも一致し、44日の朝Su-22機を操縦していたパイロットの証言とも符合する。つまり、通常爆弾を用いてカーン・シェイク―ンの南西約8キロに位置するカフル・ザイタの集落を攻撃していたが、カーン・シェイク―ンにもっとも近づいた距離は79キロであったとパイロットは主張している。

OPCWは氏名が不詳の「兵器専門家」に相談し、「カーン・シェイク―ンを空爆することが可能な二つの条件、つまり、距離と高度」を特定するよう依頼したと言った。その「専門家」は「高度や飛行速度、飛行経路といった変数にもよるが、上述の高度から(カーン・シェイク―ンの)町を空爆することは可能だ」と結論付けた。OPCWはその「専門家」がこの結論を導くのに用いた変数は提示しなかったし、それらの変数が彼らが主張するような結果をもたらし得る事例に関しても何ら言及しなかった。 

OPCWがどうしてそうしなかったのかについては単純な理由がひとつある。その「専門家」は間違っていたのだ。

ロシア空軍のオフィサーが提供した状況説明Su-22機が問題の日の朝カーン・シェイク―ンを空爆したとするOPCWの主張とは真っ向から対立する。Su-22がこの種の攻撃を実行するには攻撃目標を目視で捉え、飛行高度は4,000メートル以下、時速8001,000キロで直接攻撃目標に向かって飛行する必要があると彼は言った。これらの条件に基づいて、爆弾の投下は目標から1,0005,800メートルほど離れた距離で行うことになる。それでもなお、Su-22は爆弾を投下した後に引き返すのにはさらに39キロの距離を必要とする。OPCWが用いたレーダー記録はSu-22機はカーン・シェイク―ンの西側を飛行しており、カーン・シェイク―ンの町とは並行して飛行しいる。その飛行経路はカーン・シェイク―ンへの爆撃を行うのに必要な条件とは相反する。

西側の「専門家」はロシア側が提示した内容は茶番だと述べて、破棄した。私はロシア側の提示内容は信用に値すると考える。Su-22と同様な性能特性を持つ米海兵隊のOA-4スカイホーク軽攻撃機の元搭乗員の一人として言わせてもらうと、私はカーン・シェイク―ンに対する攻撃に匹敵するような空対地攻撃には何回も出撃した。米レーダーが追跡した飛行経路は必要とあらば100回でも飛行することは可能であるが、カーン・シェイク―ンに出来た問題のクレーターの近傍へ爆弾を投下することは不可能である。この論点は、クレーターの基本的な特徴を分析すると、その攻撃の方位角が町の西側を通過するSu22の飛行経路とはほとんど直角を成しており、この事実によっても裏付けされる。爆弾が投下されたとすれば、攻撃機はその飛行経路からは大きく外れた経路を飛行し、引き返してその経路に戻る前に目標地点を飛び越さなければならなかったであろう。しかし、レーダー記録はそのような飛行を示してはいない。(カーン・シェイク―ンの北に位置する攻撃機が飛行した「ループ」は問題のクレーターの位置に爆弾を投下するのに必要な攻撃方位角を可能にはしない。)これはOPCWが直面する問題点の核心である。なぜならばOPCWはカーン・シェイク―ンを攻撃するのにサリンが充填された爆弾が投下されたと主張しているからだ。しかしながら、この爆弾を運ぶ唯一の手段(つまり、シリア空軍のSu-22機)の存在に関してOPCWが提供した証拠は、皮肉にも、彼らの主張に反証している形となっている。

シリア空軍のSu-22機の動向はカーン・シェイク―ンでのサリンの使用にシリア政府が連座するという主張においてはもっとも根幹を成す部分だ。誰にとってもサリンの持続性や別の輸送手段、あるいは、他のほとんど関係のない事柄についてあれこれと議論することは可能だ。しかし、ヌスラ・フロントやホワイトヘルメットおよびSAMSの筋書きが生きながらえるにはカーン・シェイク―ンの中心部へ爆弾を投下するシリア空軍のSu-22がどうしても必要なのである。しかしながら、彼らによって提示された証拠はそのような状況は実際には起こり得なかったことを決定的に示している。この現実に基づいて言えば、この後に続く諸々の行為はすべてが「偽旗作戦」であったと見なさなければならない。ギャバードのウェブサイトが指摘しているように、「これらの攻撃は米国と西側をこの戦争にもっと深く引きずり込むために反政府派武装勢力が仕掛けたものであることを証拠が示している。」

「これらの攻撃はアルカエダあるいはシリア政府の仕業であると結論付ける以前にわれわれは皆が注意深く証拠を精査するべきであると私は考える」とギャバードは自分のウェブサイトで述べている。 彼女が批判的な態度で対処して来たことは立派な行動であるばかりではなく、米軍の最高軍司令官の地位を標榜する戦士には是が非でも期待したい特性でもある。

シリアや化学兵器攻撃についてギャバードが見せた立ち位置に関して大手メディアが彼女を攻撃し続けていることは今日の米国のジャーナリズムが持つハードルが非常に低いことを示している。トランプ大統領ならびに民主党の大統領候補の全員がドウマやカーン・シェイク―ンでいったい何が起こったのかに関して知的好奇心を少しも見せなかったという事実は戦争と平和に若干でも取り組もうとする如何なる米国人に対しても警鐘を鳴らすことであろう。

著者のプロフィール: スコット・リッターは諜報分野で10数年を過ごした。1985年から米海兵隊の地上諜報オフィサーとして働いた。

この記事は最初は「Truthdig」によって出版された。


<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

この記事の著者はためらうこともなく次のように述べた:
これらの攻撃はアルカエダあるいはシリア政府の仕業であると結論付ける以前にわれわれは皆が注意深く証拠を精査するべきであると私は考える」とギャバードは自分のウェブサイトで述べている。 彼女が批判的な態度で対処して来たことは立派な行動であるばかりではなく、米軍の最高軍司令官の地位を標榜する戦士には是が非でも期待したい特性でもある。

民主党の大統領候補者20人が集まって討論会が開催され、その一部始終を見た市民の多数がギャバードに新たに関心を寄せた。彼女に関するインターネットでの検索が急増した理由が良く分かる。

一方では、民主党の大統領候補としての指名を目指す20人もの政治家エリートが集う政治討論会の結果、知的好奇心を発揮してシリアにおける化学兵器攻撃の実態を理解しようとしたのはたった一人、タルシ・ギャバードだけだったという現実には寒気を覚える。逆説的に言えば、彼らは政治にどっぷりと浸かっている政治家集団であることから、政治的プロパガンダの中枢にいる彼ららしい側面を垣間見せたのだとも言える。

しかしながら、今回、われわれ一般庶民は米国における情報の歪曲、欠如、偽情報といった大手メディアによる洗脳プロセスの成果の一端を改めて具体的に見せつけられたことにもなる。これは米国にとって、さらには、全世界にとって大きな不幸である。

タルシ・ギャバードの見識は他の候補者を圧倒していることが明白だ。彼女の行動や言動には基本的な行動原理がはっきりと見て取れることから、安心感を覚える。来年の大統領選に向けて今後彼女はどう展開して行くのかが見物である。第三回目の討論会は91213日にヒューストンで開催される予定だ。

この「芳ちゃんのブログ」では機会がある毎に核兵器のない世界を作り出すことが次世代に対する究極の贈り物であると私は主張してきた。軍刀をガチャガチャ言わせて相手を威嚇し、言う事を聞かないと政府を転覆させるぞと脅迫し、相手国の資源を略奪する武力に依存した対外政策を米国はもう止めなければならない。言うまでもなく、今日の武力の最たるものは核兵器であり、核兵器の使用・不使用は政治的意思によって決定される。




参照:

1Tulsi Gabbard Gets Some Vindication: By Scott Ritter, Information Clearing House, Aug/16/2019









2019年8月16日金曜日

インターネットにおける言論の自由は葬り去られた

インタ-ネットにける言論の自由が低下しつつあると言われている。インターネット上で発信される情報のコンテンツに規制がかけられ、たとえば、政府の政策について何らかの異議があって、その反対意見を表明しようとしても政府は表明をさせないといった状況が現出する。つまり、法的な枠組みによって政府に反対する意見を封じ込めてしまうのだ。

現実の世界ではインターネットにおける言論の自由は今どのような状況にあるのだろうか?

米国のシンクタンクのひとつであるフリーダムハウスは各国の言論の自由や出版の自由に関して毎年報告書を発行している。「ネットにおける自由」に関する2018年の報告書(原題:Freedom on the Net 2018)は、仮訳すると、現状を次のように総括している: 「インターネットでは自由の度合いが世界中で低下し、その影響を受けて、民主主義自体が後退している。オンライン上で発信される偽情報やプロパガンダは公的な領域に毒をばら撒いて来た。抑えの利かない個人情報の収集は伝統的なプライバシーの概念を破壊してしまった。徹底した検閲と自動化された監視システムを駆使した中国式モデルを採用することによって、いくつかの国は「デジタル専制国家」に向けてその動きを加速している。これらの趨勢の結果、世界のインターネット上の自由は2018年には過去8年間連続して後退した。」

ここに、「インターネットにおける言論の自由は葬り去られた」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。インターネットにおける言論の自由が米国ではどのような形で脅威を受けているのかに関して具体的に学んでおこう。米国で起こった政治的な場面は遅かれ早かれ日本にも飛来することが多いからだ。

<引用開始>

インターネットは、元来、何処の国の市民であっても分け隔てなく完全に自由で、検閲のないシステムにおいて意見交換を行い、お互いに通信する場として提供されたものであったが、今や、インターネットは実際にはそうではなくなってしまったと多くの人たちが言う。政府とサービスプロバイダの両者はインターネットにコントロールをかけることを好むようになった。たとえば、バラク・オバマ前大統領は、かって、「国家の緊急事態」が起こった際にはインターネットを完全に閉鎖することができる「スイッチ」を模索した。

また、ドナルド・トランプ大統領はフェークニュースに関しては多くを語りたいようであるが、インターネットの保護に関しては規制を加えることを支持する姿勢だと報じられている。5月に、サービスプロバイダがインターネットの通信をあれこれと操作することを防止する「ネットの中立性」法案が下院を通過したが、上院では「死に体」となってしまった。本法案は施行には至らない。

交流サイトは自主的にある種のコンテンツを制限し、受け入れられないような素材(文章や映像)を検索し、それらを排除する「検閲要員」を採用している。立法化待ちとなっているヨーロッパの法案は受け入れらない古い投稿メッセージに対するアクセスをインターネットのサーチエンジンが排除することを求めようとしている。ユーチューブはすでに古い投稿メッセージを削除しており、偏向した「パートナー」には、たとえば、名誉棄損防止組合(Anti-Defamation League)には将来のコンテンツを規制する指針を設けるよう求めている。多くのフェースブック利用者からの指摘によれば、幾つかのコンタクトがすでに疑いもなく一時的に(あるいは、永久的に)ブロックされ、サイトへのアクセスが拒否された事実がある。

グーグルは望ましくはないと判断される項目の検索に関しては今や自動的にその検索を中断するか、制限をかける。グーグルが何らかの理由で検索を認めない場合、検索結果は示されない。あるいは、検索された項目のリストの中でも非常に低位に置かれる。そして、検索の結果上位に現れるのは自分たちの製品やサービスを売り込むためにグーグルへの支払いをした事業者からのコンテンツだけとなる。競争相手に由来する情報は検索結果の中では低位に置かれ、時には、ブロックされる。したがって、グーグルは、とてもじゃはないが、偏向のない情報提供を行っているとは言えないのだ。

Photo-1 (訳注: 「404」というステイタスコードは「ファイルが見つかりません」というメッセージである)
2017年の5月、フェースブックは 新たに3000人の「検閲要員」を採用すると発表した。そして、交流サイトにおける検閲に関する私の個人的な体験が間もなく始まった。私は「シャーロッツビルの鎮魂曲」と題する記事を投稿した。それはウェブサイトに掲載された。一日目の終わりには、サイトマネジャーらはこの記事がかなりの数のフェースブックの読者の関心を呼んでいたにもかかわらず、同記事に寄せられた「いいね」の数はスクリーンのカウンタ上には表示されてはいないことに気付いた。つまり、作表がされてはいなかったのである。さらには、フェースブック上で同記事をシェアーすることも出来なかった。シェアーボタンが削除されていたのである。

ビデオ: Facebook and the New Face of Regime Change

フェースブックやヤフーニュースのコメント欄、ユーチューブ、グーグルの「いいね」は重要である。なぜならば、その記事がサイト全体にどのように配布されているのかを自動的に示してくれるからだ。もしも数多くの「いいね」が寄せられているならば、検索が行われた場合、あるいは、誰かがそのページを開いた場合、その記事は上位に位置する。もしも特定の記事が数多くの「嫌い」とか否定的な評価を受けるならば、これらの記事はコベントリーへ送付することが可能だ(訳注: 「コベントリーへ送付する」とは何を意味するのかは私には分からない・・・)。承認または非承認がどのような種類の読者に受けたのか、あるいは、検索の結果何が浮かび上がって来たのかを知る上で重要なのである。

私の例では、その翌日、私のウェブページは通常状態に戻り、「いいね」が再度現れ、読者がこの記事をシェアーできるようになった。しかしながら、誰かが私の投稿を操作していたことは明らかだった。間違いなく、私の書いた内容は何らかの政治的な判断に基づいて否認されたのだ。

23日後、私はまったく同様な別の出来事にも遭遇した。ロン・ポール研究所(RPI)のウェブサイトはその投稿のほとんどがユーチューブ(グーグルの所有)上で掲載されている。同サイトには広告も掲載されており、その広告収入のほんの一部がRPIに支払われていた。突然、何の説明もないまま、「手動の検閲」の結果、コンテンツが「広告主のすべてにとっては不適切である」との判断がされ、RPIの広告とRPIへのリベートが削除されてしまった。明らかに、これは同研究所の行動や論調を否認することから起こったものである。これらの投稿に関してコメントすることやリンクを張ることの可能性も排除されてしまった。

反政府的な言動で知られる元外交官のクレイグ・マレー(訳注: 反政府的な言動の事例: たとえば、スクリッパル父娘殺害未遂事件における彼の論点は常識的な観点から数々の疑問を論理的に表明し、政府が推し進めるスト-リーを問い質すたものだ。それが反政府的であるとするならば、民主主義が成り立たないように私には見えるのだが)は、2018年の4月、フェースブックへ掲載した論評が秘密裡に操作されたことを指摘した。彼のサイトを訪れる重複しない読者数が通常のレベルである一日当たり20,000人に比べて、その三分の一に低下したことから、彼はそう判断した。その理由を発見することは決して難しくはなかった。われわれのサイトへの訪問客は、通常、その半分以上がフェースブック経由でやって来る。最近の数日間、フェースブックからは誰もやって来なかった。特に悪質な点はフェースブックはこの検閲を秘密裡に行っていることだ。

フェースブックによってブロックされた際の主要なメカニズムは次のような具合だ: 私のフェースブックへの投稿は、単純に言って、大部分の私のFB友達やフォロワーのタイムラインへは送付されない。投稿は皆にシェアーされたものと思うしかないが、実際にはほんの少数に送付されるだけなのだ。もしもあなたが少数の受け取り側の一人であって、その投稿を見ることができ、その投稿をシェアーした場合、あなたがシェアーしたことはあなたのタイムライン上で示されるだろう。しかし、実際には、あなたのFB友達のほとんどはその投稿については何も受け取らない。フェースブックは自分たちが行っているとあなたに告げたことは実際には何も行ってはいないのである。フェースブックはその投稿がシェアーされたとあなたには告げるが、フェースブックはあなたに対しては事実を何としてでも隠す。ツイッターは「シャドー・バニング」と呼ばれる同種のシステムを有する。そこでもそれは極秘裏に行われ、犠牲者には何も告げない。

最近のことではあるが、インターネット上の交流サイトや情報サイトに対する検閲が強化された。その圧力は政府やさまざまなインターネットの顧客の両方からやって来る。5月末、フェースブックの創設者でCEOを務めるマーク・ズッカーバーグはフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会って、インターネットから「ヘイトスピーチ」を如何に排除するかについて論じ合った。

ふたりは米国のインターネット・モデルは、すでにひどく操作されているにもかかわらず、あまりにも自由放任主義的であるとしてお互いに合意し、受け入れられない見解は禁じることが許されるフランス方式を開発することに興味があると表明した。ズッカーバーグは欧州同盟全域のために立派なモデルとして稼働するであろうと述べた。すでに報じられているように、フランスは立法化を狙っている。監督官庁を設置し、もしもインターネット企業が嫌悪感に満ちた表現を抑えようとはしなかった場合、その企業にはその企業の全世界における収益の最高で4パーセントに相当する罰金が課される。これは莫大な金額である。

こうして、選挙で選出されたわけではない無名の検閲要員がコンテンツを制御しようとしてインターネットの全域で仕事をする。このことは誰をも驚かす程のものではないと思う。しかし、干渉は悪化するばかりである。政府もサービスプロバイダも自分たちが受け入れられないと判断した見解は排除することが好きなのだ。実に興味深いことに、これは「ロシアゲート」が如何にして登場したのかを彷彿とさせ、ベネズエラやイランに対して伝統的なメディアに醸成されている現行のヒステリーを想起させる。どれ程多くの怒りが本質的にはフェークなのだろうか?フェークは巨大企業によってあれこれと操作され、場合によっては捏造さえされる。これらの企業は偽りの装いの下で主として政府が望んでいることを実施するために徹底して管理下におかれたインターネットサービスを提案し、それによって何百億ドルも稼ぐのだ。ヘイトスピーチを禁じることは、不幸にも、現状に関する批判のすべてを排除するための第一歩となることだろう。

*

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この記事の初出はAmerican Free Press

著者のプロフィール: フィリップ・ジラルディは元CIAの反テロリズムの専門家であって、軍の諜報関係のオフィサーでもあった。また、コラムニストやテレビの解説者でもあった。さらには、彼はThe Council for the National Interest (CNI)の事務局長である。ジラルディが執筆した他の記事はUnz Reviewのウェブサイトにて閲覧が可能。彼はGlobal Researchに頻繁に寄稿している。

引用したイメージはAmerican Free Pressから。

この記事の原典はGlobal Research

Copyright © Philip Giraldi, Global Research, 2019

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

インターネットにおける検閲の現状が被害を受けた当事者からの報告として具体的に伝えられている。この記事の結論として著者が述べている「ヘイトスピーチを禁じることは、不幸にも、現状に関する批判のすべてを排除するための第一歩となることだろう」という文言は貴重な洞察である。不幸なことには、現在の趨勢はわれわれ一般庶民の将来を暗くするばかりだ。

1983年に誕生したインターネットにおける言論の自由は2019年に葬り去られた。言論の自由の墓銘碑には象徴的に「19832019」と刻まれている(Photo-1を参照)。

インターネットの現実世界における役割や影響力を考えると、それはわれわれが想像する以上に強力なものであるに違いない。特定の政策を推し進めようとする政府にとっては、不都合な真実をあれこれと伝えるインターネット上の情報サイトは、時には、非常に厄介な存在であって、消してしまいたいという衝動に駆られるのであろう。今、世界は第二次世界大戦前にわれわれの父母あるいは祖父母が経験した情報統制時代、あるいは、警察国家に向かっているようである。歴史を振り返ってみると、このような動きは99パーセントの一般庶民にとっては決して好ましいことではない。

政府の政策は絶対に正しいとでも言うのであろうか?時には、間違った動きをしているのではないか?政府の政策は常に一般大衆の利益や福祉に応えているのだろうか?常にそうだとは決して言い切れない。政府の政策は長期的に見て国家の健全な成長を約束するのであろうか?さまざまな議論がある。政府はそれらの議論を避けてはならない。問題点を掘り下げることこそが重要だ。もしもこれらの議論を許さない社会が来るとしたら、それは中国ですでに進められているデジタル専制国家の到来を意味する。


参照:

1Internet Free Speech All but Dead: By Philip Giraldi, Global Research, Jun/08/2019








2019年8月8日木曜日

MH17便撃墜事件の証拠の隠滅についてマレーシアが暴露 - オランダは偽の録音テープを隠蔽し、ウクライナはレーダー記録を隠蔽


マレーシアのマハティール首相が発した批判を契機に、MH17便撃墜事件に関するオランダ政府主導の共同調査班(JIT)による結論は、今、真っ向からの挑戦を受けて、その信憑性が疑われている。勢いを増しつつあるこの新たな動きは2014年の7月に起こった事故以来満で5年を過ぎた今、事故の真相を知る上で非常に重要なものとなりつつある。何か重要な真相が隠蔽されていると感じて来た一般庶民は非常に多い筈だ。その素朴な疑念は単なるMH17便撃墜事件だけには留まらず、政治に対するさらなる不信感、米国による単独覇権構造に対する不満となって、全世界で一般庶民の心の中に沈殿しつつある。

ここに、「MH17便撃墜事件の証拠の隠滅についてマレーシアが暴露 - オランダは偽の録音テープを隠蔽し、ウクライナはレーダー記録を隠蔽」と題された記事がある(注1)。これはMH17便撃墜事件に関して行われてきた情報隠しの実態を暴く総括記事である。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

6月24日、私は「MH17便の撃墜はロシア人の仕業ではないとマレーシアのマハティール首相は言う。米国およびその同盟国はたくさんの事柄について回答しなければならない」と題して投稿した。その投稿と本投稿の両方を読んでいただければ、読者の皆さんは最新情報を手にしたに等しいと言える。しかも、公的な報道ではまったく触れられてはいない情報ばかりである。

NHKを含めて、日本で公に報じられている情報には限界があって、世界を取り巻く政治に関与するような、つまり、米国の覇権に関係するような事件については多くの情報が隠蔽され、意図的に情報操作が行われている。それ故、われわれ素人には真相に近づくことは極めて難しい。2014年のMH17便撃墜事件、2018年の英国ソルズベリーでのスクリッパル父娘殺害未遂事件、等がその好例である。また、米国における2016年大統領選で勝利を収めたトランプ陣営はロシアとの共謀によって選挙に介入し、勝利したとの共謀論がメディアによって毎日のように喧伝された。しかしながら、ミュラー特別検察官の最終報告書がトランプ大統領とクレムリン政府との共謀を実証することができなかったことから、このストーリーには幕が降ろされた。

好むと好まざるとにかかわらず、大手メディアだけに頼っていると、どこからどこまでが真相であるのかを正確に掴むことは、控えめに言っても、われわれには非常に難しい。われわれは、今、そんな世の中に住んでいる。


<引用開始>


マレーシア航空MH17便事件を独立した形で調査を行って来たマックス・ファン・デル・ウェルフによる新ドキュメンタリー・フィルムが検察用資料の改ざんや偽物の作成を示す画期的な証拠を明らかにしている。たとえば、ウクライナ空軍のレーダー・テープの隠蔽、オランダやウクライナ、米国およびオーストラリア政府による大嘘、等。また、米連邦捜査局(FBI)の工作員が撃墜された旅客機のブラックボックスを取得しようとした事実もマレーシアの国家安全保障委員会の職員によって初めて暴露された。




Photo-1: MH17便事件に関する大嘘を撃破しよう

突破口を開いたのはマレーシア人だ。モハマド・マハティール首相、ならびに、2014年7月17日に起こったMH17便の事故について現地調査を実施する任務を課され、首相府やマレーシア国家安全保障委員会のために職務を果たしたモハマド・サクリ大佐であった。さらには、ウクライナのシークレット・サービス(SBU)が提示し、オランダの検察官が「これは本物だ」として公表した電話の録音テープが作り物であることを見事に解析したマレーシアの「OG IT Forensic Services」社が行った科学捜査だ。

MH17便の犠牲者298人には192人のオランダ人、44人のマレーシア人、27人のオーストラリア人、15人のインドネシア人が含まれていた。国籍別の人数は実際の人数とは異なる。なぜならば航空会社の乗客名簿はオーストラリアや英国および米国の二重国籍の乗客を識別しないからだ。

この新ドキュメンタリーはマレーシア政府の発言に重点を置いている。マレーシアは共同調査班(JIT)の五つのメンバー国家のひとつであるが、出版された調査結果に反対し、JITに関わるオランダ政府職員によって最近報じられたロシア人容疑者を告発することにも反対している。マレーシアやオランダに加えて、JITのメンバー国家にはオーストラリア、ウクライナおよびベルギーが含まれる。マレーシアは当初からJITから除外され、ベルギー(MH17便の乗客名簿には4人のベルギー人が記載されている)が加えられたが、これらに関しては何の説明もされてはいない。

このドキュメンタリー・フィルムはJITの証人が行った陳述や写真、動画、および、電話記録がウクライナのシークレットサービス(SBU)によって改竄されており、マレーシアの法廷ばかりではなく、他の国でも、さらには、国際法廷においても犯罪の起訴に使用するには堪えられないような代物であると判断し、その証拠を示した。

初めての公表であるが、マレーシア政府は撃墜事件の一週間後に米国がウクライナ東部でNATOによる軍事攻撃を起こそうとしたが、その企てを阻んだ事実も暴露した。その企ての表面上の理由は航空機や乗客の遺体および墜落を引き起こした証拠を回収するためであるとされた。実際には、この展開はドンバス地域における分離派を駆逐することが目的であり、ロシアによって確保されているクリミアに抗するための動きであった。

この新しいドキュメンタリーは秘密裡に行動したマレーシアの軍事作戦が7月22日にMH17便のブラックボックスを手中に収め、米国やウクライナが取得することを阻んだことを暴露している。この作戦を指揮したマレーシア陸軍の大佐によって暴かれたマレーシアの作戦はカモフラージュのストーリーを組み立てるための証拠を排除することに成功し、NATO軍による軍事攻撃に対するドイツ政府の反対意見を強め、オランダ政府は7月27日の侵攻作戦を諦めることとなった。

マックス・ファン・デル・ウェルフとヤーナ・イエーラショヴァによるこの28分のドキュメンタリーは最近公開されたばかりである。イエーラショヴァは映画監督であり、ファン・デル・ウェルフやアフメド・リファザルと一緒にドキュメンタリーの製作に従事した。ヴィタリー・ビルアウコフが撮影を担当した。このフィルムの全編をこちらでご覧ください。

マハティール首相とのインタビューは、別途、先に公開されていた。そのインタビューはこちらでご覧ください。


Photo-2: マレーシアのモハマド・マハティール首相

マハティールは米国とオランダ、オーストラリアがどうしてマレーシアを調査活動の最初の段階でJITのメンバーから外したのかについて暴露した。その頃、米国、オランダ、オーストラリアおよびNATOの高官らは9,000人の兵力をウクライナ東部へ派兵し、表向きは撃墜現場、航空機、旅客の遺体を確保し、7月17日のMH17便撃墜事故におけるロシアの役割に対応するというものであった。この構想の詳細についてはこちらを読んでください。

軍事介入に関してはドイツが反対したことから中断されたけれども、オーストラリアは200人の特殊部隊をオランダへ送り込み、後にキエフへ配備した。ヨーロッパ連合と米国は、7月29日、対ロ経済制裁を発動した。

旅客機を撃墜したとしてロシアを非難する米国の企てに対するマレーシアの反対は事故の数時間後には当時マレーシア首相であったナジブ・ラザクが当時のオバマ米大統領に明確な立場を伝えていた。このストーリーの詳細はこちらこちらをご覧ください。

新しいドキュメンタリーでナジブの後継者であるマハティール首相は次のように述べている: 

「彼らはわれわれが関与することは最初から許そうとはしなかった。これは実に不公平で、まったく尋常ではない。彼らには墜落の原因や誰の犯行であるかを究明する積りなんてさらさらないことがわれわれには容易に読めた。彼らは犯人はロシアであるとすでに決めていた。われわれはこのような態度は決して受け入れることはできない。われわれは法の支配に興味があるのであって、誰が関与していたのかには関係なく、だれにも公平な司法に興味を持っているのだ。われわれは誰がミサイルを発したのかを知る必要があり、それを知ることができる時に初めてわれわれは完全な真実を受け入れることが可能となる。」 

7月18日に、撃墜後初のマレーシア政府の記者会見が行われ、ナジブ首相は電話で確認したオバマ米大統領とウクライナのポロシェンコ大統領との合意内容を公表した。

『「オバマと私は調査は秘密裡には行わず、国際調査団に墜落現場へのアクセスをを与えなければならないことを確認した。」 ナジブ首相はウクライナ大統領が完全な、徹底した、独立した調査を行うことやマレーシア政府の代表も参画することを約束したと述べた。「また、墜落現場への人道的回廊を設けるためにウクライナ大統領は東部の反政府派とも交渉をする」とナジブは述べている。「彼は、また、誰も航空機の破片やブラックボックスを現場から持ち出してはならない」とも言った。マレーシア政府はキエフに向けて特別機を派遣し、マレーシア特別救難チームと医療チームを送り出す。われわれはこの旅客便にいったい何が起こったのかを究明しなければならない。たとえ一個の石であってもそれをひっくり返して、徹底的な調査を行う。』 

新ドキュメンタリー・フィルムはマレーシア・チームを率いるモハマド・サクリ大佐とのインタビューでその次に何が起こったのかを明らかにした。プトラジャーヤにある彼のオフィスで撮影されたサクリの証言はマレーシア国外のメディアによってこの5年間に初めて報じられたものである。1年前、サクリ大佐はマレーシアの新聞に自分が与えられた任務を部分的に公開していた。


Photo-3: マレーシアのモハマド・サクリ陸軍大佐

「私は首相と話をした」とサクリ大佐は言う。「首相からは私が墜落現場へ急行するようにと指示された。」 当時、サクリは首相府の救難対策本部で安全保障を担当する上級将校であった。キエフへ到着後、ポロシェンコ政府の職員はマレーシアからの一行を遮ろうとしたとサクリは言う。「現場へ直行することは許されなかった。そこで、私は小さなチームを編成し、彼らを密かにキエフからドネツクへ向かわせた。」 現地ではサクリは墜落現場を見て回り、アレクサンダー・ボロダイに率いられたドネツク分離派政府の職員と会った。

二人の医療専門家、通信隊員、マレーシア陸軍特殊部隊員を含む11人の一行が現地へ急行した。オーストラリアおよびオランダの武装集団やウクライナ政府職員のグループとの競争となったが、マレーシアが先行した。オーストラリア・オランダのグループはドネツクの分離派勢力によって遮られたのである。オーストラリア軍の一行はキエフに控えているオーストラリアとオランダ両国の外相、つまり、ジュリー・ビショップ外相とフランス・ティマーマン外相によってせっつかれていたものの、自分たちの任務を放棄せざるを得なかったとオーストラリアのABC国営放送が報じた。 この報道はサクリ大佐がMH17便のブラックボックスを手中に収めた後のことであった。ブラックボックスが手渡される儀式は7月22日のボロダイのオフィスで行われ、その様子がフィルムに収められた。

米国の関係者は当時ウオールストリートジャーナルに次のように語った。「サクリの任務の成功はナジブ政権に政治的勝利をもたらした・・・ また、この成功はドネツクに現れたマレーシア政府の職員が署名をした合意書を介して分離派には非常に価値のある贈り物を与えることとなった。当の墜落現場をドネツク人民共和国の領土として認知したからだ。この認知は分離派には何の信頼感をも抱いてはいないキエフやワシントンの両政府の反感を買ったに違いない。主な指導者らはこの地域とは何の繋がりも持たないロシア人なのだ(訳注:因みに、当時ドネツク分離派政府を率いていたアレクサンダー・ボロダイはロシア市民である)。米国務省の副報道官のマリー・ハーフは月曜日の記者会見でこの交渉は分離派を正当だと認めることにはならないと言って、水をさした。」

オーストラリア国営ラジオ局は、当時、ブラックボックスの証拠によると「旅客機の破壊と墜落の理由はロケットの爆発に起因する複数のシュラップネルによって開けられた穴から起こった爆発的な破壊によるものであった」とウクライナ政府が主張していると報じた。しかし、これは作り話であった。6週間が経って、9月にオランダ安全保障会議によって発表されたブラックボックスやコックピットの音声記録、飛行データ記録の証拠からはこの種の内容は何も報告されてはいない。これらの証拠が示した内容はこちらをご覧ください。

ビショップ外相はキエフで、7月24日、オーストラリア軍がウクライナ国内で武器を携行することができるようにウクライナ政府と交渉していると言った。「われわれが武器の使用に頼ろうとしている訳ではない」と彼女は国営ニュース局に向けて述べた。「しかし、これは万が一のための策であり、この種の合意書にこういった条項を含めないとすれば、それは余りにも無謀だ。」 しかしながら、私は強調しておきたい。われわれの任務は人道的なものであることから、われわれは武器を携行しない。」


Photo-4: キエフにて、2014年7月24日。左から右へ、ジュリー・ビショップオーストラリア外相、フランス・ティマーマンオランダ外相、パヴロ・クリムキンウクライナ外相の面々。

彼女が国営ラジオに向けて話をする時点まで、ビショップは3,000人のオーストラリア軍を含む軍事介入の計画は取りやめになったことは隠していた。また、ブラックボックスはすでにサクリ大佐の手中にあるという事実も彼女は隠していた。

ブラックボックスを引き取るためにサクリ大佐が署名した文書は新ドキュメンタリーで確認することが可能である。サクリ自身が署名し、マレーシア国家安全保障委員会のスタンプを押した。

サクリはウクライナに派遣されている欧州安全保障協力機構(OSCE)の特別監視団からもブラックボックスをウクライナへ引き渡すよう要請を受けたと言う。しかし、彼は断った。それから、彼はFBIの工作員からも面会を求められた(6分56秒の辺り)。「連中は私に近づいて来て、ブラックボックスを見せてくれと言った。私はノーと言った。」 キエフではウクライナ政府がブラックボックスを引き渡すよう強引に求めて来た。われわれはノーと言った。「そんなことはできない。そうはさせない。」 


Photo-5: ドネツクでの引き渡しの儀式。2014年7月22日。

サクリ大佐が報道陣に話をすることについての許可はプトラジャーヤの首相府にいる上司から下され、彼の情報開示には事前に合意が与えられた。

その後キエフ政府が公表した内容はロシアが旅客機の撃墜に関与していたことを裏付けようとする電話記録を含んでいた。これらは、先月、4人のロシア人を起訴する証拠であるとしてJITによって提示されたものである。その詳細については、 こちらを読んでください。
ファン・デル・ウェルフとイエーラショヴァは、これらの電話の録音テープを詳しく調査するために、訴訟資料として用いられる音声や動画およびデジタル・テープに関して科学的解析を行うことを専門とするマレーシアの企業、OG IT Forensic Servicesに連絡をした。クアラルンプール所在のこの企業はマレーシア法曹協会によって認証されている。全143ページに及ぶ技術報告書はこちらで読むことが可能だ。

Photo-6: アカシャ・ローデン。OG IT Forensic Services社のデジタル科学捜査の上級専門家。

アカシャ・ローデンが報告した調査結果、ならびに、カメラに向けて描写された内容はこの録音テープは切ったり貼ったりして編集されており、捏造されたものであることを示していた。6月19日にオランダ警察の担当オフィサーで、オランダの国家犯罪捜査部門を率いるパウリッセンによって行われたJITの記者会見によると、このテープの出所はウクライナのSBUだ。ドイツの分析専門家であるノルマン・リッテルもファン・デル・ウェルフのドキュメンタリ-の中で同様の発見事項、つまり、テープの捏造や証拠の隠滅について報告している。

Photo-7: 左側:「いや、単純に言うと、それはウクライナからの盗聴電話だ」 右側: 「たくさんの編集が行なわれている」 - 録音テープの専門家、ノルマン・リッテルの言

ファン・デル・ウェルフとイエーラショヴァはウクライナ東部の撃墜現場で撮影をした。数人の地元の目撃者がインタビューを受け、トレーズの町のアレクサンダーという名前の男性やレッド・オクトーバーと称する農業集落からのヴァレンティーナ・コヴオレンコが含まれる。その男性はミサイル発射装置が7月17日の当日にロシアとの国境を越して持ち込まれたとするJITの説明に反して、少なくとも一日前からトレーズにあった、場合によっては、7月17日の撃墜の日の2日前からだったかも知れないと言った。彼はJITが断定したブク・ミサイルの識別については言及しなかった。

コヴオレンコはミサイルの発射を目撃した「比類のない」人物として、3年前に、BBCのドキュメンタリーに初めて登場した。彼女は自分が見たミサイルの発射地点に関してはBBCが報じた内容よりも遥かに詳しい内容を喋った。


Photo-8: ヴァレンテイーナ・コヴォレンコ:「しかし、間違った方へ行った。落下ではなく上昇。」(訳注:Photo-9のキャプションと一緒にして、理解してください。)

発射地点はJITによる記者会見で特定された場所ではなかった。ファン・デル・ウェルフはこう説明している。「われわれはコヴォレンコにミサイルがどちらの方向からやって来たのかを示してくれと頼んだ。そして、私はJITが言った発射地点の方向から来たのではないかと二度も重ねて質問した。彼女はそちらの方向に発射や飛行雲を見たのではなかった。JITが述べた「発射地点」は彼女の家や庭先から2キロ弱であることに留意されたい。彼女の証言の中でももっとも重要なこの部分をBBCは削除した。」 


Photo-9: ヴァレンテイーナ・コヴォレンコ: 左側:「最初の思いは撃墜された飛行機が落下するのではなく、どうして上昇していったのかという点。」 右側:「ミサイルはどこから来たんですか?」 「この辺りからよ。」 

新ドキュメンタリーでのコヴオレンコの証言によると、彼女はこのミサイル発射地点には「あの時、ウクライナ軍がいた」と明確に断定したのである。

コヴオレンコは7月17日の前の何日間かウクライナの軍用機が彼女の集落の上空を飛行していたことも記憶している。彼らは責任逃れのテクニックを用いていたと彼女は言う。彼女は民間機の陰に隠れて飛行する様子を見ていたのである。


Photo-10: 左側:「2機の軍用機が飛んでいた。見上げると、旅客機も飛んでいた。」 右側:「彼等は軍用機に向かって射撃を始めた(訳注:この部分はキャプションが間違っているようです。「軍用機」ではなく「旅客機」でしょう)。ジェット機は旅客機の真下へやって来た。」

「7月17日にはウクライナ軍のジェット機が周辺を飛び廻っていた。あれはちょうどMH17便の撃墜の時点だった」と他の3人の村民もファン・デル・ウェルフに話している。

このドキュメンタリーの結論として、ファン・デル・ウェルフとイエーラショヴァはオランダ人の独立したジャーナリストであるステファン・ベックが撮影したインタビューも紹介している。彼については、JIT高官らは彼が撃墜現場を訪問することは差し控えるようにと警告していた。ベックはエフゲニー・ヴォルコフをインタビューした。ヴォルコフは2014年7月にはウクライナ空軍の航空管制官を務めていた。ベックはヴォルコフにオランダ安全保障委員会の旅客機の撃墜に関する報告書、さらには、JITが後に発行した報告書によって裏付けされているウクライナ政府の声明に関してコメントを求めた。これらの報告書は撃墜の当日にはウクライナ軍のレーダーは稼働してはいなかったので、撃墜時点のこの空域に関するレーダー記録は何もないと報告していたのである。


Photo-11: 左側:「一基だけではなく、三基ある。」 右側:「チュグエフ?」
 
ヴォルコフはチュグエフの空軍基地からはジェット戦闘機が発進していることから、7月17日にはチュグエフに設置されている3基のレーダーは「厳戒態勢で」稼働していた筈だと説明した。チュグエフ基地は撃墜現場の北西200キロに位置している。彼はレーダーの一基について修理作業が行われていても、3基全部が稼働していなかったという理由にはならないと反論した。MH17便の撃墜の場所や時刻はウクライナのレーダーに記録され、保管されているとヴォルコフは言う。「連中は記録を持っている。ウクライナの何処かに持っている。」 

先月、6月19日にオランダで行われたJITの記者会見にはマレーシアからの代表がいた。マレーシア法務省の3人の法務次官のひとりであるモハメド・ハナフィア―・ビン・アル・ザカリアは、マレーシア政府のために、JITが提示した証拠とロシアに対する非難を受け入れることを拒否した。「JITが犠牲者の正義を希求することにはマレーシアは献身すると重ねて言いたい」とザカリアは述べた。 「JITの目的は調査を終わらせ、全ての証言者から証拠を収集することにある。これは犯行者を起訴するためであって、マレーシアは法の支配ならびに正当な裁判手続きを尊重する。」 [質問: あなたは結論を支持しますか?] 「結論の一部は・・・[聞こえなかった]・・・われわれの立ち位置を変えるものではない。」 

原典: Dances With Bears

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

MH17便のブラックボックスの行方を探すレースが展開されていた。このレースに登場した連中は最初から米ロ間の新冷戦の最前線に立たされていたことになる。結局、マレーシアからやって来たモハマド・サクリ大佐の使命感と機敏さがこのレースでの勝利をものにした。

NATOが9,000人の将兵をウクライナ東部へ送り込もうとしていたが、ドイツの反対にあってこの計画はおじゃんになったという情報は私はここで初めて耳にした。非常に貴重な情報である。この情報によってMH17便撃墜事件の背景が、まさに、霧が晴れたかのように、明確に見えて来たからだ。

もしもMH17便のブラックボックスがウクライナ政府の手中に陥ったとしたら、ウクライナ政府はさらなる大嘘を展開することが可能となり、ウクライナ東部へのNATO軍の派遣へと繋がって行ったことであろう。その先は米ロ間の戦争だ。マレーシアの行動がもたらした成功は、多分、神様が与えてくれたご褒美なのかも知れない。

一言で言えば、MH17便の撃墜はNATO軍を投入して、ウクライナ東部の反政府派を駆逐するための口実として必要だったのだ。NATO軍は独立を宣言したドネツクとルガンスクの両人民共和国を武力で手中に収めるだけではなく、クリミア半島から黒海に睨みを利かせているセバスト―ポリにあるロシア海軍の基地を奪いたかったのだ。米国の助けを受けてクーデターによって前政権を排除した当時のウクライナ政府はNATO、つまり、米国の手先となってMH17便を撃墜するという明確な任務を課せられていたということになる。JITのメンバー国には拒否権が与えられ、ひとつのメンバー国が拒否すれば、その情報は公表しないとの合意があった。言うまでもなく、このシナリオではこの拒否権を最大限に活用することになるのはウクライナであり、必要となる舞台道具はすべてが用意されていた筈であったが、何処かで歯車が噛み合わなかったのだ。

マレーシア政府の一連の言動と行動は主権を尊重する民主主義国家はマレーシアのような見識と行動力を持つことが最低限必要なんだということを改めてはっきりと認識させてくれた。米国に追従する日本政府と敢えて比較するまでもないが、マレーシア政府の毅然とした態度には拍手を送りたい程だ。



参照:

注1: MH17 Evidence Tampering Revealed by Malaysia - The Dutch Covered-Up Forged Telephone Tapes, Ukraine Hid Radar Records: By John Helmer, Checkpoint Asia, Jul/23/2019







2019年7月31日水曜日

西側はなぜ中国の成功を無視しようとするのか

この投稿の表題が示す内容は西側のメディアにとっては触れたくはないテーマのひとつであろう。

この記事の著者はアンドレ・ヴルチェクである(注1)。アンドレ・ヴルチェクはこのブログではすでに何度か登場していただいている。たとえば、2016年7月11日には「日本のメディアが誰にも喋って欲しくはないこと」と題する投稿を掲載した。2018年1月9日に掲載した「戦場の特派員からの新年のメッセージならびに警告」という投稿ではこの著名なジャーナリスト・哲学者・作家・記録映画製作者としての信条を詳しく学ぶことができた。すでにお気付きのこととは思うが、これらの論評には歯に衣を着せない著者の姿勢が色濃く出ている。

私は彼の率直に意見を述べる姿勢や洞察力の深さが好きだ。建前論ではなく、物事の本質に迫ろうとする姿に敬意を表したい。真実を報告されることによって不都合に感じる政治家や政治団体が出てくるだろうが、好むと好まないとにかかわらず、それは政治にとってより本質的な視点を見い出すために必要なひとつのプロセスである。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

中国が今までに達成した事柄をべースにして著者は中国が近い将来何処へ行き着くのかを読み取ろうとしている。彼の主張は多くの識者が支持するであろうが、その一方では、恐らく、多くの政治家や政治集団は不都合な真実に当惑することであろう。

<引用開始>

Photo-1

今までは漫画的でさえあったが、今や、決してそうではない。突然、状況が変わったのである。過去においては、盲目的な嫌悪感が中国についての無知を招き、少なくとも、西側のプロパガンダやマスメディアによる洗脳をもたらした。

しかし、今はどうか?中国が達成した大躍進、素晴らしい人道的な社会政策、決然と庶民に焦点を当てた科学研究を行い、いわゆる「生態学的文明」を目指して行進する中国の様子は詳しく文書に記録されており、そのことを本当に知りたいと思うならば、中国の本当の姿を学ぶのに誰でもが数多くの機会に恵まれることであろう。

しかし、本当に学ぼうとする者は少ないようだ。少なくとも西側では極めて少ない。

西側各国およびその衛星国においてはほとんどすべての国で中国は否定的に捉えられている。その一方で、アフリカで実施された調査によると、アフリカでは中国が称賛され、好まれていることは明白である。これは、ヨーロッパや北米からのマスターに対する依存性を断ち切るために中国がアフリカで支援の手を差し伸べていることを考えると頷けることだ。

昨年(2018年)、影響力のあるピュー・リサーチ・センターが行った調査によれば、中国は非西側諸国のほとんどの国によって好意的に評価されている。たとえば、中国がインフラの整備や社会的プロジェクトに従事しているケニアでは67パーセントが、アフリカで最大の人口を抱えるナイジェリアでは61パーセントが、アラブ人国家であるチュニジアでは70パーセントが、南シナ海における島々を巡る紛争では西側が火に油を注いで来たにもかかわらずフィリピンでは53パーセントが、今や中国にもっとも近しい同盟国となったロシアでは65パーセントの人々が好意を抱いている。

英国では49パーセントが、オーストラリアでは48パーセントが中国を好意的に捉えている。中国に好感を抱くドイツ人はたったの39パーセントで、米国では38パーセントだ。

しかしながら、本当に衝撃的な点は中国的な特徴を備えた真の社会主義に向けて中国を引っ張っている習主席に対する西側の態度にある。彼は極貧を撲滅し(2020年を目標に中国全土から極貧を駆逐する)、文化や生活の質、生態系、中国人民の健康や福祉を経済指標以上に押し上げようとしているにもかかわらずである。

保守的で反共産主義的なポーランドがこの集団の先頭をきっている。同国では習主席の指導力に「信任」を置く市民はたったの9パーセントである。ギリシャでは11パーセント、イタリアでは14パーセント、スペインでは15パーセントだ。これはヨーロッパの実情を伝えている。カナダでは42パーセント、米国では39パーセントである。

この実態は単に無知のせいであろうか? 

中国のメディアからインタビューを受ける時、多くの場合、私は同じ質問に遭遇する:「われわれは規則にしたがって行動し、地球環境を改善するために最善を尽くそうとしているのに、西側ではどうして何時も批判されるのだろうか?」

答は明白である: 「まさにそのこと自体が理由なのだ。」 

***

20年程前、中国とその社会主義プロジェクトは依然として「未完の段階」にあった。東部の都市地帯と地方との間には生活水準に大きな違いがあり、歴然としていた。輸送インフラは不適切であった。工業都市の汚染はひどいものであった。何百万人もが職を求め、より快適な生活を求めて、地方から都市へ移動しようとしていた。これは中国の社会システムに大きな歪をもたらした。

中国を嫌う人たちは当時の中国政府を批判した。攻撃するための「実弾」は豊富にあった。中国は発展していたが、国家を優福にし、清潔で健康な社会を築くという仕事は果てしもなく続く無駄な仕事であるかのようにさえ見えた。

その後の展開はまさに奇跡である。人類の歴史には前例がない。第二次世界大戦前のソ連邦だけが高度成長と国民の生活水準の改善において中国が過去20年間に達成したレベルを越していただけである。

中国では何もかもが変わった。都市は綺麗になり、緑化され、生態学的に整備され、公園が多くなって、大人や子供たちのために運動器具が設置されている。都市の中心部には第一級の(生態学的にも優れた)公共交通手段が整備され、立派な博物館やコンサートホール、素晴らしい大学、医療センターが設けられている。超高速列車が国中の大都市間を結び、運賃は政府からの補助によって支援されている。共産主義国家である中国では政府と共産党がすべてを計画し、民間は国家に仕えるためにある。その逆ではない。この構造はうまく動いている。目覚ましいほど立派に動いている。自分たちの国家を如何に統御するべきかに関して中国の市民は西側の市民よりも発言力がある。

都市は清潔で、効率が良く、まさに市民のために構築されている。乞食は見当たらなく、スラム街もない。悲惨さはない。状況はますます良くなっている。

中国を初めて訪問する外国人は衝撃を受ける。つまり、中国は米国や英国よりも遥かに裕福に見えるのだ。街の通りや空港、地下鉄、超高速鉄道、劇場、歩道、公園を見ると、ニューヨークやパリの住人に恥じらいを感じさせるほどだ。

しかしながら、中国は金持ちではない。現実に、金持ちとは程遠い!中国の人口当たりの国内総生産は依然として相対的に低いが、そのことが「中国的な特徴を持った共産主義」を強く印象付け、帝国主義によって動機付けられた西側の資本主義に勝るのである。国家が繁栄を極め、国民が今まで以上に立派な人生を送り、環境を維持し、偉大な文化を推進するために人口当たりで5万ドルを超すような平均収入は中国では必要ではない。

まさに、これこそが西側が恐れ慄いている理由なのではないか? 

経済成長がすべてである西側では、将来を楽観視する代わりに、恒常的に恐れを抱くのである。毎年何兆ドル、何兆ユーロもが浪費されている西側では、超エリートは不条理なほどに優雅な生活を送り、理由もなく不必要な過剰生産や武器の蓄積を指揮し続ける。これらは大多数の国民の福利厚生には何の役にも立たない。

中国とその中央官庁の計画が自国の市民や世界のためにより好ましい、より論理的なシステムを提供している。

中国の科学はそのほとんどが地球上の生活を如何に改善するかにその焦点が当てられており、冷酷な利益を追求するためではない。 

習主席の申し子である一帯一路(BRI)は世界中で何億人をも貧困から救済し、世界を分断するのではなく、世界を連携するよう意図されている。 

どうして習主席はヨーロッパでこれほどまでに嫌われているのか? 

それは、まさに、中国がとてつもない大成功を収めているからではないか? 

***

前の論点へ戻ろう: 20年ほど前、中国は社会や環境に関して大きな問題を抱えていた。どんな形であろうとも共産主義を嫌う西側の連中は中国へやって来て、こう指摘したものだ: 「上海や深圳は今や繁栄を極めている。だが、沿岸にある他の都市を見たまえ。違いが見えるかい?」 

その後、沿岸のすべての都市も改善し始めた。公園を設け、大学を設立し、地下鉄を開通させ、美しい街並みを作り始めたのである。

西側の批判は続いた: 「沿岸地帯を離れて、西部へ入って見たまえ。中国はひどく不平等であることが分かるだろう!」 

そうこうしているうちに、中国西部も大きく改善した。これらの西部の都市と沿岸部の都市との間には生活の質について言えば実質的な違いはなくなった。

「すべてがすこぶる皮肉だ」と大言壮語氏は続け、こう言った。「都市部と田舎との違いはとてつもなく大きく、農民は自分たちの集落から離れ、都市部で職を探している。」 

習主席の指導下で、田舎はどこでもが徹底的な改善や見直しを受けた。交通機関や医療サービス、教育機関、求職、等が著しく改善されたことから、2018年には、現代史上で初めて、人々は都市部から田舎へ移動し始めた。

さて、今は何が問題であろうか?次の課題は?「人権かい?」 目を開いて良く見れば、もはや、けなす材料なんて見当たらない程だ。

しかし、中国が立派になればなるほど、中国が自国民や世界中の人々について面倒を見れば見るほど、中国はさらに厳しい攻撃を受ける。

西側の政府や大手メディアからは「ワーオ!」という感嘆詞は一言も発せられない。「環境問題や社会システム、科学、公的な物事については何であっても中国は今や世界の指導者だ」という言葉は一言もないのである。

なぜか? 

答は明確だ。不幸なことには気が滅入るほどだ: 何故かと言えば、西側は中国、あるいは、中国の指導者が成功することを望んではいないのだ。もしも成功すれば、彼らは沈黙するしかない。ふたつのシステムは大きく異なり、中国のシステムが正解だとすれば、西側のシステムは間違いだと言うことになるのだ。

そして、西側は世界にとっていいことだと言えるような概念なんて模索しようともしない。自分自身の概念が生き残り、地球上のすべての国家を凌駕することだけを望んでいる。それだけだ。

このことこそが自国民を窮乏から救済し、新たな、より立派な社会を構築しようとする国家の間では中国がもてはやされる理由なのである。これが、西側や西欧人の子孫がマスメディアを支配し、コントロール下に置いている国々(たとえば、アルゼンチン)においては、中国が徹底して中傷され、嫌われ、さらには嫌悪される理由なのである。

好意的な指摘について一言だけ付け加えておこう。西側において、ならびに、西側によってマスメディアがコントロールされている地域においては揺るぎのない、悪質なプロパガンダが絶え間なく展開されているにもかかわらず、今まで以上に多くの人々が習主席に信頼感を置いており、それは米国のドナルド・トランプ大統領を凌ぐ勢いである。トランプ大統領によって元気づけられると感じる人々は世界中で27パーセントにしかならない。

著者のプロフィール: アンドレ・ヴルチェクは哲学者であり、小説家、記録映画製作者、調査報道ジャーナリストでもある。彼は「Vltchek’s World in Word and Images」を(インターネット上に)構築し、「China and Ecological Civilization」を含め、何冊もの本を書いている。また、オンライン・マガジンの「New Eastern Outlook」にて独占的な執筆を続けている。 

<引用終了>

これで全文の仮訳は終了した。

「どうして習主席はヨーロッパでこれほどまでに嫌われているのか? それは、まさに、中国がとてつもない大成功を収めているからではないか?」という指摘は秀逸である。著者は言いにくいことをズバリと指摘している。

読者の皆さんはすでにお気付きのことと思うが、アンドレ・ヴルチェクの基本的な姿勢は米国が過去数十年間推進して来た持てる国、覇権国としての米国の対外政策には疑問を抱いており、持たざる国とその国の一般庶民を何とか防護しようとすることにある。たとえば、持たざる国での仕事を終えて、米国の空港に到着した時、一種異様な空気を感じると彼は自分の体験を他の記事で語っている。米国社会は持たざる国の一般庶民の現実とはかけ離れ、苦い錠剤の外側を口当たりのいい物質で覆った糖衣錠のようなものだと言う。彼はこのような状況を「疑似的現実」と称している。現実が呈する苦い味は美辞麗句に飾られたプロパガンダによって化粧され、本当の味は巧妙に隠されてしまう。外観的には決して見えない。この疑似的現実は長年にわたるプロパガンダの産物であり、マスメディアによって喧伝されてきた洗脳の成果である。

私が言わんとしていることに関して幅広く理解したい方には、そのスターターとして2018年1月9日の投稿、「戦場の特派員からの新年のメッセージならびに警告」を読んでいただきたいと思う。


参照:

注1:Reason Why the West is Determined to Ignore China’s Success: By Andre Vltchek, NEO, Jul/17/2019






2019年7月23日火曜日

世界は米ドルの軛から脱しようとしている

脱ドル化に関しては最近の投稿(78日の「米ドルよ、サヨーナラ!君と会えて良かった」)で「米国の覇権が低下すればするほど、日米安保条約の存在の意味は薄れ、米ドルの強さは低下する。日本国内での日常生活ではそのことを実感する機会は決して多くはないけれども、少なくとも、国際政治の論議においては脱ドル化が何らかの形で論じられることがない日なんて一日もない程だ。今や、これが昨今の現実なのである」と書いたばかりである。本日もこのテーマをさらに掘り下げてみたいと思う。
何と言っても、脱ドル化は戦後70数年にわたって世界を席捲して来た米ドルが国際貿易の決済通貨や一国の準備通貨の役割から降りるという話であるから、国際社会にとってはこれは非常に大きな変化となるに違いない。
ここに、「世界は米ドルから脱しようとしている」と題された最新の記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したい。

<引用開始>
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明日にでも、米国を除いて、誰も米ドルを使わなくなるとしたらどうだろうか?各国は自国通貨、つまり、自国経済に根ざした兌換通貨を国内および国際貿易に使うことになろう。その通貨は伝統的な通貨であるかも知れないし、あるいは、政府の管理下で新たに設けられた通貨であるかも知れない。何れにしても、その国が独立国であることを象徴する通貨である。もはや、米ドルは使用されない。米ドルの申し子であるユーロも然りである。米銀ならびに国際送金システムであるSWIFTのコントロール下に置かれた国際通貨決済も行われない。このSWIFTシステムこそが米国によるあらゆる種類の融資あるいは経済制裁を可能にし、促進して来た手段なのである。つまり、外国の資産を差し押さえ、国家間の通商を停止させ、服従を潔しとはしない国家を脅迫する、等々。いったい何が起こるのであろうか?もっとも端的な答えはわれわれは米国の(金融上の)覇権から脱して、世界は平和になり、それぞれの国家は自国の主権を回復し、世界はより平等な地政学的構造に一歩近づくことになろう。

われわれはまだそこには到着していない。しかしながら、落書きが壁いっぱいに書き込まれ、われわれは今急速にその方向へ移動していることを告げている。そして、トランプはそのことを知っており、彼を操る側近たちもそのことを十分に知っている。このことこそが金融犯罪や経済制裁、貿易戦争、外国の資産や準備金の差し押さえ、等のすべてを「米国をふたたび偉大にする」という名目の下で行っている理由なのだ。そして、これらの行為は指数的に増加しており、何のお咎めもない。もっとも大きな驚きはアングロ・サクソンの覇者はこれらの脅かし、つまり、経済制裁や通商障壁は米国の偉大さを構築するのに役立つとする考えとはまったく正反対の結果をもたらすことには気が付いていないようだ。たとえそれがどのような形態であっても、世界が貿易や準備金のための通貨として米ドルを使用している限り、経済制裁は効力を発揮する。

世界中がワシントン政府のグロテスクな横暴振りや米国の専横的なルールに従わない国家に課す制裁には辟易となり、飽き飽きしてしまったら、各国は我先にと他のボートに乗り換え、米ドルを放り出し、自国通貨に価値を見い出すことになろう。これはお互いの通商には自国通貨を使うことを意味する。ひとつの国から他の国への送金がSWIFTを通じて行われる限りは米国の銀行システムは地方通貨を用いた通商を依然としてコントロール下に置くことが可能ではあったが、これは米国の銀行システムの枠外で決済される。

多くの国々は自国経済の価値が米ドルによってますます頻繁に操作されるようになったと感じている。米ドルは非兌換紙幣ではあるが、その膨大な量によって一国の経済を引き上げたり、引き下げたりする。どちらへ動かすは覇権国がその国家をどちらへ追いやりたいか次第である。馬鹿馬鹿しい現状ではあるが、この現象を大局的な視点から眺めてみよう。

今日、米ドルは上昇気流に乗っているわけではなく、むしろ、印刷された紙切れそのものの価値よりも低い。(世界銀行の推定によると)米国のGDP21.1兆ドルで、現在の借金総額は22.0兆ドル、あるいは、GDP105パーセントに相当する。フォーブスによると、「未積立負債」(将来支払いが予定されているが積立を行ってはいない借金、主として、社会保障や医療費補助制度のための支払い、および、借金の利息)は約210兆ドルとなり、米国のGDPの約10倍となる。借金の金利が加わることから、この数値は膨らみ続け、ビジネス用語では「債務元利払い」(金利と借金の償却)と称されるが、決して「返済」は行われない。これに加えて、世界中で発行されているデリバティブと称される商品が(誰も詳しい数値をつかんではいないが)1,000兆~2,000兆ドルも存在する。デリバティブは原資産の投機的な変化から価値を生み出す金融商品であって、通常はほとんどが銀行間で取引されたり、株式取引所で取引され、「先物取引」や「オプション」、「先渡契約」、「スワップ」といった種類がある。

この巨大な魔物となった借金は世界各国で米財務省証券の形で外貨準備として保有されている。その一部は米国自身によっても保有されるが、支払いを行う計画はなく、さらに紙幣を発行し、借金を続けている。こうして、米国は休む間もなく戦争を続け、武器を製造するために予算を使い、このゲームの一員として参画することを促すプロパガンダの継続に没頭している。

これが米ドルをベースとした巨大なピラミッドを構成しているのだ。たとえば、(ウオールストリートの)ひとつの、あるいは、いくつかの巨大銀行が破産間際であることからも、この借金の構造が崩壊する場合を想定してみよう。皆が彼らの発行済みのデリバティブやペーパーゴールド(これはIMFからの特別引出権の俗称で、銀行業が生み出したもうひとつのナンセンス)、小銀行からのその他の借金、等々について支払いを請求する。これが連鎖反応を引き起こし、米ドルに依存する世界経済を崩壊させることになろう。「2008年のリーマンブラザーズ危機」を世界規模で引き起こすことになるかも知れないのだ。

トランプカードで作った家のように極めて不安定な経済がもたらす現実の脅威について世界は以前にも増して認識を深めており、各国はこの落とし穴から抜け出し、米ドルの牙から逃れようとしている。ドル建ての準備金や世界中に投資された資産の取り扱いは容易ではない。ひとつの解決策はそれら(米ドルの流通性や投資)を徐々に処分し、米ドル以外の通貨、つまり、中国のユアンやロシアのルーブル、あるいは、米ドルや米国の国際支払いシステム(SWIFT)からは切り離されている通貨バスケットに乗り換えることだ。ところで、ユーロは米ドルの申し子であることに十分に留意されたい!

ブロックチェ-ン技術については今まで以上にさまざまな選択肢がある(訳注: ウィキペディアによると、ブロックチェーンは「ブロック」と呼ばれるデータの単位を生成し、鎖(チェーン)のように連結していくことによりデータを保管するデータベースである。これはビットコインのような仮想通貨で使用されている)。中国やロシア、イラン、ベネズエラは制裁を避ける意味で米ドルの枠外で支払いや送金を行える新システムを構築するためにすでに政府の監督下で仮想通貨の実験を行っている。インドがこのクラブに入会するかどうかは分からない。すべてはモディ政権が東西のどちらを選ぶのか次第だ。論理的に言えば、インドは広大なユーラシア経済圏に属し、ユーラシア大陸の一部であることからも、インドは東方へ傾斜しようとするであろう。

インドはすでに上海協力機構(SCO)のメンバーである。SCOは通商や通貨の安全および国防に関して平和的な戦略を標榜する機構であって、中国、ロシア、インド、パキスタン、中央アジア各国で構成されている。イランは正会員になるべく目下待機中だ。SCOは世界人口の半分を網羅し、世界の経済生産の三分の一を占める。東側は生存のために西側を必要とする訳ではない。西側のメディアはSCOについて報道することはほとんどなく、西側の一般庶民はSCOとは何を意味するのかについては何の理解もなく、どの国がメンバーであるのかについてもまったく知らない。

米国の威圧的な金融パワーに抗し、経済制裁に耐え忍ぶには、政府の監督下にありその規制を受けるブロックチェーン技術は重要な策となるのかも知れない。この新同盟の機構へはどの国の参加であっても歓迎され、通商のための代替策としては新しいとは言え、急速に拡大している。そこでは、参加国は国家政策や金融面で自国の主権を取り戻せるのである。

インド式の「物々交換銀行」は脱米ドルとまったく同じ文脈にある。たとえば、これらの銀行はインド産のお茶をイラン産の原油と交換する。イラン産の原油に対してインドの産物と交換する業務はインドの「物々交換銀行」が取り扱い、両国の通貨、つまり、イランのリアル通貨とインドのルピー通貨が同銀行で処理される。この物々交換ではイランの炭化水素製品に対してはインドの貿易品目の中でも金額的にもっとも大きい品目が選ばれる。たとえば、イランからインドに輸入される品目で大きなものはお茶だ。インド外部では金銭的な決済は何も行われない。こうして、米国による経済制裁は回避される。米銀や米財務省はこの種の二国間の経済活動に関しては何等の干渉もすることはできないからだ。

***

米国およびEUによる経済制裁が課されているにもかかわらず、ドイツのロシアへの投資はこの2019年には過去10年来の新記録を更新した。ドイツの業界は2019年の最初の3か月間に17憶ドル以上をロシア経済に注入した。ロシア・ドイツ商工会議所によると、ドイツ企業によるロシアへの投資は前年度比で33パーセント増、4億ドル増を示した。総投資額は32億ドルに達し、2008年以降で最大規模になった。同商工会議所に登録され、調査を受けた140社のドイツ企業は経済制裁によって約10億ドルの被害を被り、西側による反ロ圧力が高まったにもかかわらず、ロシア・ドイツ間の貿易は2018年に8.4パーセント増加し、約620憶ドルの規模に達した。

加えるに、米国からの反論や経済制裁による脅威があったにもかかわらず、モスクワとベルリンの両政府は天然ガスを輸送する「ノルドストリーム2」のプロジェクトを継続した。このプロジェクトは2019年末には完成の予定である。ドイツやヨーロッパにとってはロシア産天然ガスは自国の近くで入手が可能であって、非常に自然で論理的な供給源である。また、そればかりではなく、ロシア産天然ガスは米国の強圧的な売り込みを回避し、米国から独立することが可能となるのだ。そして、支払いは米ドルでは行われない。長期的に見ると、ドイツ・ロシア間のビジネスや経済関係の利益は非合法的な米国による経済制裁がもたらす損害を遥かに上回るであろう。この種の理解が浸透した暁には、ロシア・ドイツ間のビジネス関係が開花するのを止める術はなく、他のEU諸国とロシアとのビジネス関係をも誘い込み、それらはすべてがドル建ての金融・送金システムの枠外で行われる。

トランプ大統領による中国との貿易戦争は中国がアジアやアジア・太平洋地域およびヨーロッパで他の貿易相手国を見い出すことを促す。結局のところ、これは脱米ドルの効果をもたらす。これらの国々や地域については中国はドル建て契約やSWIFT送金システムの枠外で貿易を行う。たとえば、中国国際支払いシステム(CIPS)を活用する。この中国のシステムは如何なる国家に対しても国際貿易のために門戸が解放されている。

これは中国からの輸出品に対する厳しい関税を回避するばかりではなく(中国製品を求める米国の顧客にとっては中国製品が適度な価格では入手できなくなることを意味することから、あるいは、まったく入手することができなくなることから、これらの顧客を激怒させ)、この戦略は国際市場では中国ユアンを強化し、中国ユアンを信頼できる準備通貨としてもてはやすであろう。やがては米ドルを凌ぐことになろう。事実、ドル建ての資産は20年前には90パーセント以上を占めていたが、今や60パーセント弱に減少している。そして、ワシントン政府による威圧的な金融政策が継続する限り、この数値はさらに低下する。ドル建ての準備金は急速にユアンや金に置き換えられよう。オーストラリアのような強情な西側支持国においてさえも然りだ。

ワシントン政府はトルコに対しても非建設的な金融政策を開始した。これはトルコがロシアやイラン、中国との間で友好的な関係を築こうとしているからである。何よりもまず、NATOでは重要な地位を持つトルコがロシアから最先端技術のS-400対空ミサイルシステムを調達しようとしているからだ。米国としてはトルコ・ロシア間の新たな軍事的同盟関係を受け入れることはできないのだ。その結果、米国はトルコ通貨に対して邪魔立てをし、リラ通貨は20181月以降で40パーセントも下落した。

トルコは米ドルの抑圧や通貨に対する制裁からは何としてでも逃れようとしてあらゆる策をつくすことだろう。そして、さらに東側との同盟を求めるであろう。これは米国にとっては二重の失敗となる。トルコは米ドルによる貿易を放り出し、たとえば、自国の通貨を中国のユアンやロシアのルーブルと連携させ、トルコはNATOを離脱するかも知れない。大西洋同盟にとっては痛手となるに違いない。トルコは戦略的に重要であり、NATO29ヵ国の加盟国の間では、米国を除くと、NATOの軍事力としては最強メンバーのひとつであると見なされていることからも、NATOからの離脱は米国にとっては大失敗となる。

もしもトルコがNATOから離脱するとすれば、ヨーロッパのNATO同盟全体が影響を受け、NATOの存在が問い質されることであろう。長い間警戒心を抱き続け、NATOの核兵器を国内に貯蔵する国々、特に、イタリアとドイツはNATOからの離脱を試みるかも知れない。ドイツとイタリアでは、一般市民の過半数がNATOに反対であり、特に、ドイツやイタリアの国内にあるNATO基地から発進し、戦争を遂行するペンタゴンのやり方に反対をしている。

この潮流を阻止するために、前ドイツ連邦国防相であって、ドイツキリスト教民主同盟(CDU)のウルズラ・フォン・デア・ライエンがジャン・クロード・ユンケルの後継者として欧州委員長の座に就く準備が進められている。ユンケル氏は2014年から委員長の座にあった。フォン・デア・ライエン氏は今晩717日に9票差で選出された。彼女は頑迷なNATO支持者である。彼女の役目はEUからは不可分なNATOを維持することにある。今日のNATOを見ると、NATOは、事実、EUを動かしている。しかしながら、一般市民はNATOに反対し、米国の衛星国の立場にいることを反対し、ブリュッセルの指導層に反対している。自分たちの市民国家の民主的権利を要求して一般市民が立ち上がった暁にはNATOの現状は大きく変化することだろう。

ペンタゴンが開始し、ワシントン政府に同調するヨーロッパの操り人形的な同盟国によっても支持されている現行の戦争や紛争は核戦争に発展する可能性があることをヨーロッパ市民は感じ取っているのだ。自分たちの国内にあるNATOの基地は最初の攻撃目標となって、ヨーロッパをこの100年間で三回目の世界大戦の戦場に化してしまう恐れがある。しかしながら、三回目の大戦は核戦争であることから、そのような大惨事の被害や破壊の程度を知る術はなく、可能でもない。母なる大地は核戦争の被害から回復する時間さえも与えられないであろう。

トルコがNATOから離脱することを期待しようではないか。これはトルコの通貨に対してワシントン政府が課す脅迫や邪魔立てに対抗するものであって、平和で健全な対応を求める大きな第一歩となるであろう。米国によるトルコ通貨に対する制裁は、長期的に見ると、神の恵みでさえある。トルコにとっては米ドルを破棄し、東側の通貨、主として中国のユアンに徐々に移行する。これは米ドルの棺に打ち込まれるもう一本の釘となる。

ところで、ワシントン政府にとってもっとも耐え難い打撃はトルコがNATOを離脱する時であろう。フォン・デア・ライエンがNATOのために執拗に闘ったとしても、この動きは遅かれ早かれやって来る。NATOの崩壊はヨーロッパだけではなく、800カ所以上の米軍基地が存在する全世界においても西側の権力構造を破壊することだろう。その一方で、NATOの解体は世界の、特に、ヨーロッパの安全保障を改善し、それはこのようなNATOからの離脱がもたらす悪影響のすべてを相殺して、さらに余りがあるだろう。NATOからの脱退、ならびに、米ドルの軌道から抜け出すことは脱米ドルのための重要な一歩であり、これは米国の金融および軍事上の覇権に大打撃を与えるだろう。

最後に、中国の一帯一路(BRI)、あるいは、新シルクロードの政策に向けた投資はほとんどがユアン建てとなり、ひとつあるいはいくつもの地域や海域にまたがる当事国の現地通貨で行われ、これはやがて全世界に広がって行く。いくつかの米ドルによる投資は中国が保有する2兆ドル近くの準備金についてドル売りを行う道具として中国の中央銀行である中国人民銀行のために仕えることになろう。

BRIは次世代型の経済革命、つまり、今後数十年間、多分、今後一世紀間にも及ぶ非米ドルによる経済開発構想を約束し、各国の人々や数多くの国々を連携させ、文化や研究、教育は均等性を強制せず、むしろ、文化の多様性や人間性の平等を推進する。そして、それらはすべてが米ドル王国の枠外で行われ、悪名高い米ドルの覇権を崩壊させる。

著者のプロフィール: ピーター・ケーニッヒは経済学や地政学的な分析を専門とする。世界銀行にて30年間仕事をした後に、実務経験に根ざした経済に関するスリラー「インプロ―ジョン」を出版。オンラインマガジン「New Eastern Outlook」に独占的に投稿している。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

著者のプロフィールに記載されている書籍「インプロ―ジョン」を検索してみると、そのキンドル版を垣間見ることが可能だ。

著者は途上国の経済開発を取り扱う「開発経済学」に終生を捧げてきた。世界銀行に勤務して、貧困や飢餓、失業、教育、環境、飲料水、等の問題に取り組み、世界を駆け巡った。世界銀行やIMF、その他の経済発展を推進する諸々の組織が繰り広げる業務を通じて彼らが展開する仮面舞踏会の真の姿を見い出した時の感慨が著者の記述からありありと実感される。察するに、その時の印象は人間味を感じさせない、寒々とした風景であったに違いない。

たとえば、世界銀行やIMFは貧困国へ向けて過去に何兆ドルもの融資を行って来たが、何の役にも立たなかったと彼は言う。貧困を和らげる代わりに、この膨大な額の資金の流入はかえって債務を増加させ、貧困をさらに悪化させるだけに終わった。たとえば、アフリカ諸国の平均的な福利厚生は1970年代初頭のレベルに置き去りにされたままである。世界銀行の基本的行動理念はワシントンDCにあるきらびやかな本社の入口に掲示されているが、それは「我々の夢は世界の貧困を撲滅すること」と唄っている。

こうした現状を念頭に置いて引用記事を読んでみると、米国とその同盟国との関係が如何に一方的であり、不条理なものとなり易いかを理解することができる。「偉大な米国を取り戻す」と言って、2016年の大統領選で選出されたトランプ大統領は対外政策ではあらゆる機会に米国の一方的な利益を追求しようとする。そこには、EUや日本といった同盟国を相手にしてさえも、自国の利益のために難題を吹っかけて来る強引な姿勢があり、はた目には見苦しいほどだ。

引用記事の著者が声援を送っているトルコのNATOからの脱退に目を向けてみよう。1991年のソ連邦の崩壊によって東西の冷戦は終った。あれからすでに28年、NATOはとっくの昔に本来の存在理由を失った。その代わりに、NATOは米国の軍産複合体の利益代弁者となった。世界中の人々にとっては大きな不幸であるが、米国による絶え間のない戦争が米国の経済を支えている。何という皮肉であろうか。確かに、NATOが解体すれば、著者が展望する近未来小説の舞台はどの国にとっても遥かに住みやすい世界となることだろう。

賞味期限がとっくに過ぎてしまった米国を何時までも「偉大な米国」に維持しようとすると、必然的にその代価は大きくなるばかりであり、米国以外の国々がその多くを負担しなければならない。この構図はトランプ政権になってからはっきりとしてきた。日本は経済力が大きいが故に米国の期待も大きい。中国もドイツも然りだ。ロシアについては同国が保有する天然資源をただ同然で入手しようと、米国の地政学的な攻撃目標となっている。はた迷惑な話である。

ところで、722日のニューヨークタイムズ紙に異変が起こったと報じられている。RTの「極寒の日々は過ぎ去ったか?ニューヨークタイムズは対ロ関係を改善し、トランプを祝福したい」と題された記事(注2)によると、今までの2年間反ロ政策を喧伝し、トランプ大統領を敵のように批判してきた同紙は、722日、急遽方向転換をした。何のためか?これは中国の進出を阻止するためだ。米国としてはロシアと中国という二正面作戦から中国だけに焦点を絞ろうという戦略だ。これは攪乱のための一時的な動きであるのか、あるいは、新たな戦略なのかは時間が経たないと分からない。

すでに同盟関係が深化している中国とロシアの関係に風穴を開けることができるかどうかは不明だ。米国が抱える弱点や山積する国内問題に目を向ければ、中国一国を相手にしたとしても、疲弊した米国経済にとっては、依然として、負担が大き過ぎるのではないか・・・。米国は対外政策のために軍事予算(つまり、税金)を浪費するのではなく、今や国内問題の解決に向けて国家予算を戦略的に投入するべき時だ。

78日付けの投稿「米ドルよ、サヨーナラ!君と会えて良かった」の最後に記述しておいたように、米国人が米国を自分の故郷として誇れるようなごく普通の国家に早くなって欲しいものだ。



参照: