2020年7月31日金曜日

ソールズベリー毒殺未遂事件に関するBBCの最新のプロパガンダ映画はロシアを標的にした嘘で満載

今年の6月、英国では2年前に起こったスクリッパル父娘毒殺未遂事件をドラマ化した3部作が放映されたそうだ。「ソールズベリー毒殺未遂事件:テレビドラマでノヴィチョクによる攻撃を再訪」と題されたBBCエンタメ部門の記者が614日に報じた記事によると、このドラマは下記のように始まる(原題:The Salisbury Poisonings: TV deama revisits Novichok attack ‘horror’: By Steven McIntosh, Entertainment reporter, BBC NEWS, Jun/14/2020):

致死的な汚染に見舞われたことで実施された都市閉鎖のシーン、保健当局の職員が個人用安全防護服で身を固め、目には見えない敵と闘っているシーン、等が日曜日(614日)に放映されるテレビドラマで繰り広げられる。BBC-1で放映される「ソールズベリー毒殺未遂事件」の出来事は今回の新型コロナウィルスの大流行の2年前に起こった。3部作で構成されるこの連続ドラマは20183月に起こった出来事に基づいている。有名な聖堂があるウィルトシャー州の都市で英国の一般大衆は近年では最悪の脅威にさらされた。セルゲイ・スクリッパルと彼の娘ユリアは市の中心部でベンチに倒れ、口から泡を吹いている状態で見つかった。ふたりは致死的な毒性をもつ神経麻痺剤「ノヴィチョク」にやられたのであった。英国政府は、後に、これはロシアの諜報部門でる「GRU」から派遣された二人の工作員によって引き起こされたものであると結論付けた。衝撃的なストーリーである。ソールズベリーはいまだにその傷跡から立ち直ってはいない。しかしながら、このドラマはジャームズ・ボンドのようなスパイが活躍するスリラーではない。スクリッパル父娘は第1部の冒頭でほんのちょっとだけ登場するが、ロシア人容疑者たちはまったく姿を見せない。それに代わって、このドラマは地域社会と保健当局が取った対応策に焦点が合わされている。

上記はBBCからのインプット情報の一部である。

それとは対照的に、英国当局による情報の歪曲やフェークニュースに関しては従来から批判的な姿勢を示してきた消息通のひとりであるクレイグ・マレー(2002年から2004年まで駐ウズベキスタン英国大使を務めた。その後は人権の擁護や国際政治に透明性を求める政治活動に転身。彼のブログは広く読まれている)ははたしてこの第1部をどのように受け止めたのであろうか。617日付けの彼のブログが公開されている。その表題は「ソールズベリー毒殺未遂事件に関するBBCの最新のプロパガンダ映画はロシアを標的にした嘘で満載」と題されている(原題:The BBC’s New Propaganda Film About the ‘Salsbury Poisonings’ Is a Pack of Lies Aimed at Russia: By Craig Murray, Jun/17/2020)。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

この記事を読むと、好むと好まざるとにかかわらず、BBCが英国やその他各国の市民を洗脳しようとする手口が手に取るように理解することが可能だ。大手メディアが喧伝するニュースや解説だけに頼っていると、われわれ一般大衆は知らず知らずのうちに彼らが推進する筋書に沿った世界観を抱くようになってしまう。実に厳しい現実がわれわれを取り巻いているのである。

また、この記事にはもうひとつの興味深い側面がついてまわる。それは著者の英国人特有の皮肉を込めた言い回しだ。私がこの仮訳の中で彼の皮肉をどこまで忠実に日本語的に再現できるかはまったく未知数ではあるが、私なりに全力をつくしたいと思う。

「プーチンは私を消そうとする!」

「ソールズベリー毒殺未遂事件」に関する三部作ドラマの最初のエピソードが頂点に迫った時、BBC内のシェークスピアの後継者たちはこのような不朽の、実に見事なセリフを作り出した。これはスクリッパル父娘が見舞われた悲劇を巡る英国政府のプロパガンダ・ストーリーの3部作であって、昨晩私はその第1部を視聴した。続編は今日と明日放映される。この異例とも言える放映スケジュールはわれわれのご主人様が、悪魔的な外敵からの攻撃に曝されているにもかかわらず、英国が保有する回復力についての感動的な物語をどれだけ重要視しているかを示すものであろう。もしお望みであれば、BBC iPlayerで全三篇を視聴することはいつでも可能だ。しかしながら、私は個人的には彼らの大嘘に過剰に反応する抗体によってすっかり気分を害されてしまったので、しばらくは休息が必要だ。

プーチンを描写するセリフは英国の軍隊の出身であり、辛辣な口調で知られているロス・キャシディの発言である。だからこそ、全面的な説得力を持っている。もしも今週の発言ではなく、彼が同じことをもっと前に喋っていたとしたら、もっと説得力があったことであろう。まさに、こういった感じだ。

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ソーシャル・メディアから判断すると、一般大衆の多くはこの公式の筋書を全面的に受け入れているようである。私自身としては将来の民主主義について何の不安も感じてはいないなんて言えない。誰もが、腹を抱えて笑い転げることもなく、下記のような会話を聴くことははたして可能なのであろうか。これは完全に私の想像力を超越してしまっている。この会話の当事者たちがどうやってこのようなことを喋ったのかは私には見当もつかない。

ポートンダウン(英国の化学兵器研究所)からの人物:「あれは世界でもっとも致死性が高い物質だ。適切なばら撒き方をすれば、たったスプーンに一杯だけであっても何千人も殺戮することができる。」

保健省からの英雄的な女性:「でも、そんなに毒性が高いのであれば、スクリッパル父娘が依然として生きているのはどうして?」

ポートンダウンからの人物:「救急医療隊員はふたりが(鎮痛や麻酔に使われる)フェンタニルを過剰投与したものと想定して、ナロキソンを注射した。これは神経毒を中和する薬剤だ。それに加えて、あの日は寒かったので、この神経毒が効を奏するには長い時間が必要だった。」

そうそう、確かにあの日は寒かった。これは極めて厄介なロシア人たちが見過ごしていた重要な要素である。なぜならば、ロシアには寒い日なんてないのだから。ジッジスやビショップス・ミルのパブの内部はマイナス40度であることは誰もが承知している。神経毒が体内に入った場合、何らかの影響を与え得るもっとも厳しい条件というのはあくまでも外気温なのである。彼らがドアのノブに触ったとされる時刻以降セルゲイとユリアはどちらもかなりの時間を屋外で過ごしていたというわけではない。

いくつものあり得ないようなストーリーが過去3年間に諜報部門によってでっち上げられ、この超猛毒の神経毒がどうしてスクリッパル父娘を殺害するまでには至らなかったのかについて説明しようとしている。興味深いことに、このBBCのドラマはデイリーメールが諜報部門から入手していた詳細な事柄は割愛してしまった。それは次のような内容であった:

「完全に偶然の出来事であるのだが、犠牲者が運び込まれた時、特殊な化学兵器に対抗するための医師の訓練が実施されており、彼らがちょうど勤務に就いていたのだ。英国政府の極秘の研究所であるポートンダウンの専門家が承認したアトロパイン(中和物質)やその他の薬剤を用いて彼らはセルゲイとユリアを治療した。」

これは信じるに足りるようだ。と言うのは、最初に彼らふたりがベンチに倒れていた時にたまたま通りかかったのが英陸軍の看護師長であったことと同様に、これは単なる偶然ではないと私には思える。

それでもなお、この超猛毒の神経剤が死をもたらさなかったことを是が非でも説明しようとして、「あの日は寒かった」と言ったのは新たな試みであろう。これは一般大衆からの承認を受ける必要があるのである。何でもこなすことができるこの諜報部門の宣伝担当であるハミシュ・ド・ブレットン・ゴードン大佐は戦争屋であり、化学兵器の専門家であるが、BBCの制作部門の顧問として紹介されていた。

ここでほんのささやかな英知をあなた方には提供しておこう。つまり、こういうことだ。国営放送が「軍事顧問」の功績を認め始めると、あなた方はすでにファッシズムの途上にあるのだ。

恐らく極めて賢いことであるとは思うが、報じられている毒殺未遂事件がどのように展開したのかについてはこのBBCドラマの第1部は何も描写しようとしてはいない。スクリッパル父娘がどんな風に外出をしたのかについては、このドラマによると、その多くは監視カメラによって記録されているが、彼らの帰路は撮影されることがなかった。彼らが家に居る時に例のふたりのロシア人が到着し、真昼間の中で通りからは丸見えの屋敷で彼らはスクリッパル家のドアのハンドルに猛毒の神経剤を塗ったという。彼らが個人用の安全防護服を着用してはいなかったことは明白だ。ましてや、誰にも目撃されることもなかったという。いったいどうして?それから、スクリッパル父娘は再び外出するのだが、ドアを閉めるためにふたりともドアの外側のハンドルに接触したという。いったいどのようにして?超猛毒の神経剤に接触した後、彼らが公園のベンチに倒れているところを発見される迄の3時間半もの間、アヒルに餌をやったり、パブへ出かけたり、ジッジスへ寄って十分な食事をしたという。ふたりは年齢や性別、体格、代謝に違いがあるにもかかわらず、3時間余りの時間が経過してからふたりはまったく同時に突然倒れ、どちらも緊急通報の電話をかけることさえもできなかったという。いったいどうしてこうなのか?

単純に言って、BBCが、そんなストーリーはあり得ないと視聴者に思わせることもなしに、スクリッパル父娘が当日の朝とった行動を示せるようなドラマを作成することなんてそもそも不可能であった。しかし、彼らにとって幸運なことには、われわれは英国の国家主義者らが持っている熱烈さの靄の中で毎日の生活をしており、一般大衆の大部分は、特に主要メディアのジャーナリストやブレア派の戦争支持者たちはそのことは簡単に見過ごしてしまうであろう。「ソールズベリー毒殺未遂事件」から「毒殺」を省略してしまうことは明らかに芸術的な決断である。

これらの出来事はすべてがBBCのドラマが始まる時点よりも以前からすでに展開していた。BBCのバージョンはベンチでに倒れているスクリッパル父娘を助けるために人々がやって来るところから始まっている。しかしながら、ふたりを発見し助けに来たのは、まさに偶然なことではあるが英陸軍の看護師長であったが、この部分は飛ばしてしまった。軍の看護師長がすぐ側に居合わせたということは驚くべき偶然であり、BBCはこのドラマに含めたかったのではないだろうかとあなた方は思うかも知れない。しかし、明らかに、それはそういうことではない。これはもうひとつの芸術的とも言える決断だ。

ドアのハンドルに触れてからスクリッパル父娘が救急医療の手当てを受けるまでの時間は約4時間だ。例のナロキソンが非常に強い毒性を持った神経剤に接触してから4時間も経過しているのに依然として効力を発揮したということは注目に値する。

警官のニック・ベイリーと彼の家族が被った個人的な苦痛について私は過小評価したいとは思わない。しかし、ドラマの中では彼はこの「致死性の高い合成物質」を目の周りの柔らかい粘膜へ擦り込んでいたが、少なくとも24時間程は深刻な症状に見舞われることはなかったという。率直に言って、とてもそんな風に事が運ぶとは思えないのだ。

毒殺未遂が実際にどのように展開して行ったのか、たとえば、病院にはたまたま専門家チームが居合わせたこと、さらには、軍の看護師長が偶然にも通りかかったこと、等の事実が除外されていることはひときわ関心を呼ぶ。また、さらに除外されている人物がいるのだが、それはスクリッパルがスパイ時代を過ごした頃のMI6の上司であり、ソールズベリーでの隣人であったパブロ・ミラーである。ところが、彼を言及する価値はなかったようだ。他にも不可思議な点がある。このドラマでは実際の出来事に関するニュース番組はいつでも途中で中断されてしまうが、最初の三日間のスクリッパル父娘の動向に関するニュースはすべてがBBCの旗艦的な存在である外交部門の編集者、マーク・アーバンが扱っていたのである。

マーク・アーバンは王立戦車連隊ではスクリッパルのMI6スパイ時代の上司であるパブロ・ミラーと一緒だったという。その縁は決して疎遠ではなく、ふたりは戦車連隊に同じ日に同一階級で同じ士官採用によって入隊した。この物語には数多くの偶然の一致が現れるのが私は大好きだ。攻撃に見舞われることになった日の前年、マーク・アーバンは「一冊の本を研究するため」にセルゲイ・スクリッパルと何度も会っている。しかしながら、アーバンがスクリッパルに関するBBCの取材で陣頭指揮をとった際にはこれらの極めて重要な事実は両方とも公表されなかった。実際、彼は丸々4カ月にもわたってそれらを隠していたのである。マーク・アーバンが関与した初期段階でのBBCの報道はどうしてこのBBCによる再現ドラマに含められなかったのであろうか。実に不思議だ。

このプロパガンダに満ちたこの作品にはあり得そうもない展開がこれら以外にも数多くあるのだが、私としては次の2回の放映のためにも私が感じる軽蔑の念や幾つかの事実は温存しておかなければならない。当面は次のような再教育訓練の要点を読み取っていただきたい。これらの10個の疑問点のうちでBBCのドラマはいったい何点について十分に焦点を絞っているか。そして、いったい何点について巧みに避けて通り、無視してしまっているか。

インテグリティ・イニシアチブや第77連隊、べリングキャット、アトランティック・カウンシルおよび何百もの好戦的なプロパガンダ作戦を含めて、われわれの敵とはまったく異なり、本ブログは政府や企業あるいは金融機関からは何の支援も受けてはいない。このブログは全面的に読者からの寄付金によって運営されている。読者の皆さんの多くは必ずしもすべての記事に同意してくれるわけではないにしても、代替となる意見や内部情報あるいは活発な議論を歓迎してくれている。

これで全文の仮訳が終了した。

著者による詳しい指摘によって、英国政府における中核的な「ソフトパワー」の役割を演じているBBCが制作したスクリッパル父娘毒殺未遂事件の再現ドラマはいったい何を目指しているのかが浮き彫りになったと言えるのではないだろうか。

20183月に起こったスクリッパル父娘毒殺未遂事件は2104年のマレーシア航空MH17便撃墜事件と並んでそれぞれが「冷戦2.0」における個々の戦場であった。このスクリッパル父娘毒殺未遂事件は決着がついているわけではない。それどころか、この引用記事が示しているように、舞台裏では諜報機関が今でも活動を続けている。少なくとも、BBCがこの6月に放映したプロパガンダドラマでは英国の対ロ情報戦争がドラマの登場者に「プーチンは私を消そうとする!」とまで言わせている。この文言は「隣家に住むスパイ:ダブルスパイである当人は自分の死がもたらされることを事故の一週間前に予測していたことをセルゲイ・スクリッパルの隣人が暴露」と題された別の記事でも報じられている(原題:The spy next door: Sergei Skripal's neighbour reveals how the double agent predicted his own death on Vladimir Putin's orders just one week before: By David Jones for The Daily Mail, Jun/12/2020)。

「インテグリティ・イニシアティブ」とは英国政府の国家安全保障機関の一部であって、敵の情報戦争に対抗し、メディア対策のプログラムを実行する部門であると言われている。

英国人特有の皮肉な表現は頻繁に出て来るが、私の個人的な印象では「この物語には数多くの偶然の一致が現れるのが私は大好きだ」という一文に凝集されているように思う。また、極めて政治的な観点から下される決断を「芸術的ともいえるような決断」と形容する言い回しも実に面白い。

さまざまな局地戦からもっと大きな舞台に目を移すと、米英とロシア・中国というふたつの地政学的な大国の間では目下熾烈な綱引きが行われている。そして、何時になったら決着するのかは素人にはまったく分からない。しかしながら、今年の初めに中国の武漢で最初の感染が報じられ、世界中に広がった新型コロナウィルスの大流行は各国の経済をさまざまな形で直撃した。中国を除き、各国はまだ収束の域からは程遠い。これが今後各国の国内社会にどれだけの影を落とすことになるのかについて予測することは難しいと思うが、場合によっては意外と大きな影響を与えるのかも知れない。

世界の覇権国として自他共に認める米国は今回のコロナウィルスの大流行によって国内経済が低迷し、失業者の急増に見舞われた。それだけではなく、建国以来さまざな形で続いてきた人種差別問題がまたもや表面化し、社会経済的な分断をひどく悪化させている。その分断は今年11月の大統領選を控えているだけに、国内の分断をさらに厳しいものにしている。一部の専門家は方々の都市で発生した暴動や焼き討ち、略奪が内戦に発展するかも知れないと警鐘を鳴らしてさえもいる。その一方で、米国が新型コロナウィルスの大流行の中でこの大流行を収束させる指導力を発揮することには失敗したことを見て、国際社会では誰もが米国の衰退を感じ取っている。

これらの新しい事実は将来の国際政治の在り方を考える際にもっとも基本的な要素のひとつとなるのかも知れない。少なくとも、2020年の当初には想像もし得なかった展開が今進行しているようだ。






2020年7月22日水曜日

「国家的な新型コロナテストに関する行動計画」 ー 全市民を軍事的コントロール下に置くための米国の計画


新型コロナを巡る米政府の政策は10年、20年といった長い期間にまたがる戦略を進めようとしているように見える。

新型コロナの大流行に関しては米国社会にとってかなり大きな脅威となることが今や極めて明らかだ。その事実を考慮すると、トランプ政権は新型コロナの大流行の当初はその危険性を過小評価することに専念していたとしか思えない。その後、ある時点で大きく舵を切ったが、皮肉なことに、米国は、今や、この新型コロナによって世界中でもっとも大きな影響を受けている。

Worldometerのデータによると、720日現在の全世界の感染者総数は1,474万人を超し、死者数は61万人を越した。その内で米国の感染者数は390万人を超し、死者数は14万人超となった。4月から5月のピーク時には毎日ニ千数百人が死亡していたが、現在は減少傾向を辿って、数百人から千人前後の死者数となっている。一方、世界全体では毎日の新規感染者数は増加しており、毎日約20万~25万人の新規感染者が報告されている。死者数は毎日3,000~5,000人前後で微増の傾向を見せている。

本論に入る前に、この大流行の前にはどのような情報が飛び交っていたのかに関して少し振り返っておこうと思う。

今回の新型コロナの大流行が起こる前にすでにさまざまな警告が出されていた。もっとも早い時期の警告は、私の知る限りでは、2008年で、もっとも最近のものは昨年の11月だ。それでは、古いものから順に並べて、どのような警告が出されていたのかを確認してみよう。

2008年:米諜報部門が報告書を提出し、感染性が高く、毒性の強い呼吸器系感染症が発生し、治療薬が無いことから世界中に大流行するであろうとの警告が出された。この警告は正確なものではあったが、対策を開始しようとする者は誰もいなかった。同報告書はH5N1鳥インフルエンザに類する感染症ウィルスが最大の可能性を持っていると指摘し、コロナウィルスまたは他のインフルエンザウィルスも同様の可能性を持っていると報告した。(出典:These US intel reports ACCURATELY PREDICTED pandemic years ago. Why was NOTHING done? By RT, Apr/14/2020

201716日:ペンタゴンは2017年の計画書の中で人工呼吸器やマスク、病院の集中治療用ベッドが不足することをホワイトハウスに報告した。しかしながら、トランプ政権は何も行動を起こさなかった。この報告書は感染症の大流行によって引き起こされる状況を詳細に記述しているが、それらのいくつかは今回の新型コロナの現状と見事に重なってくる。(出典:Exclusive: The Military Knew Years Ago That a Coronavirus Was ComingBy Ken KlippensteinTwitter, The Nation, Apr/01/2020

201857日:100年前に起こった1918年のインフルエンザの大流行を記念して、CDC(米疾病対策予防センター)が主催したアトランタでの会議に米国を代表する公衆衛生の専門家や指導者らが集合した。当時の世界人口は18億人で、それに比べると現在の世界人口はさらに60億人も増加している。たとえスペイン風邪よりも毒性が低いとしても、甚大な被害が予測される。中国の武漢で新型コロナが発生し、瞬く間に全世界へと広がった今回の大流行の2年前、この会議に集合した感染症や疫学の専門家たちは新たな大流行が何時起こっても不思議ではないことに気付いていた。彼らはこの上なく迷惑な出来事について予測し得る展開について話し合った。議長は「われわれは準備ができているのか」と問い掛け、自らそれに答えてこう言った。「準備はできていないと思う」と。この議長の言葉だけではなく、このシンポジウムでは連邦政府や州政府は新たな大流行に対して真剣な対応をしてはいないとの指摘が多く成された。非営利団体であるTrust for America's Healthの代表は次のような指摘をした。病気に倒れ仕事に出れなくても、給与が法的に保証されているのは六つの州とワシントンDCだけであって、米国のほとんどの州は大流行に対する準備は何もできてはいない。(出典:Two years before coronavirus, CDC warned of a coming pandemic: By Alexander Nazaryan, Yahoo News, Apr/02/2020

201911月:米諜報機関はイスラエル軍とNATOに対して、昨年の11月、コロナウィルスに関する早期警告を発していたとイスラエルのテレビ局「チャンネル12」が報じた。この報道は今年の416日のことであった。これは米国の医療関係の諜報専門家が先週この種の警告は無かったと否定した直後のことである。これとまったく同様の報道が米国ではABCテレビからも報じられた。それによると、ペンタゴンの医療関係諜報部門(NCMI)は昨年11月に作成された文書の中で中国の武漢で感染症の大流行が発生し、「悲惨な出来事」となるかも知れないと警告していたと報道したのである。しかし、この筋書きは NCMIのディレクターによって速やかに否定され、彼はそのような警告はNCMIからは発せられてはいないと主張した。(出典:Israeli TV says US intel warned IDF & NATO of coronavirus threat in NOVEMBER 2019, doubling down on claims dismissed by… US intel: By RT, Apr/17/2020)

特に最後のエピソードは注目に値する。

時系列的に出来事を並べてみると、WHOの中国事務所が武漢で肺炎が流行しているとの地元メディアの報告を取り上げ、WHOの本部へ報告したのは昨年の1231日のことであった。武漢に発生したクラスターに関する中国政府からのWHOへの公式連絡は今年の13日に行われた。しかしながら、その2カ月も前に米国の諜報機関は内部報告書で「中国の武漢で感染症の大流行が発生し、悲惨な出来事となるかも知れないと警告していた」と言う。しかし、いったいどうして武漢だと言えたのであろうか?私には何も断定的なことは言えないけれども、放火魔が消防署へ自分がよく知っている火事について報告する状況に酷似していると言えば言い過ぎであろうか。それとも、米メディアが得意とするフェークニュースだったのだろうか? 

もしも新型コロナの大流行が何らかの大きな意思によって、ととえば、ディープステーツによって前々から計画され、それが実行され、コントロールされているのだとすれば、相互に矛盾するさまざまな情報の多くはかく乱戦術の一部であって、今までは曖昧な情報としか受け取れなかったことさえもが大きなジグソーパズルの絵の中にぴたりと納まって来るように思えるのだ。 

最近、「国家的な新型コロナテストに関する行動計画 ー 全市民を軍事的コントロール下に置くための米国の計画」と題された記事に遭遇した。これはロックフェラー財団が発表したものである。それによると、この行動計画はその表題が示唆するような単なる公衆衛生に関する行動計画ではないことが分かる。(原題:USA Plan: Militarized Control of Population. The “National Covid-19 Testing Action Plan”: By Manlio Dinucci, Global Research, Jun/14/2020) 

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。 

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ロックフェラー財団は「国家的な新型コロナテストに関する行動計画」を発表し、「われわれの職場や自治体の機能を再開するための具体策」を提示した。しかしながら、これはその表題が示すような単なる公衆衛生に関する行動計画ではない。 

最高の権威を誇る大学のいくつか(たとえば、ハーヴァード、イエール、ジョンズ・ホプキンス、等)がこの提言に貢献しており、この計画は高度に階層的で軍事的な社会モデルを前もって示唆している。 

その頂点には「第二次世界大戦時に米国が設立した軍需生産委員会を髣髴とさせるようなパンデミック・テスト委員会」が設置される。

このパンデミック・テスト委員会は業界、政府および学会の指導者らによって構成される(政府の代表者らが最初にリストアップされているわけではなく、財務や経済に関する代表者がその重要度に応じて列記されている)。 

この最高レベルの委員会は、国防生産法によって戦時下の米大統領に付与された権限のように、生産や諸々の行動について決定権を有する。

この行動計画は毎週3百万人の米国市民を動員して新型コロナのテストを行い、この数値は6か月以内に毎週3千万人に増やすよう求められている。目標は一日に3億人のテストを実施することで、これを1年以内に実現するとしている。


それぞれの個別のテストには「適正な市場価格(たとえば、100ドル)の払い戻しをする」ものと期待される。こうして、公的資金から月に何十億ドルもの支出が必要となる。

ロックフェラー財団とその資金提供を行うパートナーは信用供与のためのネットワークを構築し、物資を供給する業者との契約に署名をする。業者とは医薬品や医療機器を製造する巨大企業である。

この行動計画によると、「パンデミックコントロール委員会」は「パンデミック対応部隊」を創設する権限が与えられ、これは10万~30万人もの要員を持った特殊部隊である(当然のことかも知れないが、海兵隊と同様にCorpsという用語が用いられている)。

これらの要員は(さまざまな国家を支援する目的で米政府によって組織化された)平和部隊やアメリコーのボランティアならびに州兵の隊員たちから募ることになろう。パンデミック対応部隊の要員は年俸として平均で約4万ドルが支給され、総額として毎年40120憶ドルの国家支出となる。

パンデミック対応部隊の任務は軍隊のようなテクニックを用いて遂行され、何にも増して国民を制御する仕事に専念することになる。デジタル追跡技術やデジタル識別システムが職場や学校、居住地域、公共施設、旅行先で用いられる。ロックフェラー財団が言うには、この種のシステムはアップルやグーグル、フェースブックによって構築される。

この行動計画によると、個人の健康や行動に関する情報については「可能な限り」機密が厳守される。しかしながら、個人情報はすべてが連邦政府と民間企業によって合同で集中管理される。パンデミックコントロール委員会が提供するデータに基づいて、どの地域について都市閉鎖を行うか、どれだけの期間にわたって都市閉鎖を継続するか、等が決定される。

要約すると、これはロックフェラー財団が米国で実施したい計画であり、その先は外国にも適用されるであろう。もしもこの計画がその一部でも実施されたならば、経済や政治の権力は今まで以上に限定されたエリートたちの手中に収められ、大多数の人々の基本的な民主主義的権利は台無しにされてしまうであろう。 

この計画は「新型コロナをコントロール下に置く」という美名の下で実施される。新型コロナの致死率は公式データによると米国の人口の0.03%以下である。ロックフェラー財団の行動計画においてはウィルスは実際に武器として扱われ、新型コロナ自体よりも遥かに危険である。 

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この記事の初出:Il Manifesto  

著者のプロフィール:マンリオ・ディヌッチは Centre for Research on Globalizationの研究員。掲載されている写真はChildren’s Health Defenseからの提供。 

この記事の出典はGlobal Research© Manlio Dinucci, Global Research, 2020 

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これで全文の仮訳が終了した。 

この引用記事の著者はこのロックフェラー財団の行動計画はその表題が示すような新型コロナに対する単なる公衆衛生に関する行動計画ではなく、その背景にはもっと大きな政治的思惑があると指摘している。非常に意味深である。 

そのことをさらに掘り下げてみよう。 

ロックフェラー財団のグローバル・ビジネス・ネットワーク部門は10年も前の20105月にひとつの報告書を公開した(原題:Scinarios for the Future of Technology and International Development)。それは近い将来におけるグロ-バル・ビジネスを描写しようとするものだ。さまざまなシナリオのひとつとして、次のような描写がある。「ハイテック機器やソフトウェアは先進国ばかりではなく、発展途上国においても将来の可能性を大きく変えるであろう」と述べている。ここまではわれわれ素人にとっても常識的に受け入れ易い見方であると言えよう。 

その報告書の18ページ目では、発行の年の2年後、つまり、2012年には新型インフルエンザの大流行が起こると想定して、起こり得る状況を記述している。しかし、そこに記述されている新型インフルエンザの大流行の様子はまさに最近起こった新型コロナの大流行そのものではないかと言えるほど酷似しているのである。ただし、流行の時点は20192020年ではなく2012年と想定され、ウィルスの発生源はコウモリ(注:必ずしもコウモリと断定されているわけではないが、ここではコウモリとしておこう・・・)ではなく野生のガチョウである。ところで、専門家の間には今回の新型コロナは通常の季節性インフルのひとつだとの指摘がある。逆説的に聞こえるかも知れないが、2010年の報告書が将来起こるかも知れない新型インフルの大流行がまさに今回全世界が経験した新型コロナの実際の姿と酷似しているとしても決して不思議ではないとも言える。その点はまあいいとしても、最後まで腑に落ちない点はこの2010年の報告書はあくまでも将来のビジネスチャンスを描こうとしている点だ。どうして私に納得できないのかと言うと、それは民間企業にとっての大きなビジネスチャンスと一部の政治家の野心とが重なった場合、往々にしてとんでもない事態が起こるという経験則があるからだ。 

遺伝子操作を施した農作物に除草剤に対する耐性を持たせ、農作物の種子とその除草剤とを一緒に販売し、大儲けをした米企業が辿った道を今誰もが思い起すに違いない。金儲けとあらば安全性のデータを誤魔化し、監視役の政府機関には金をばらまいてでも販売し続ける米国流ビジネスのことである。しかし、その米企業を買収したドイツの企業は今集団訴訟に見舞われており、巨額の損害賠償に対応しなければならない。資本主義社会には今とんでもない企業文化が横行している。一般大衆は不安を覚えるのは極めて正常で、不安を感じないのは異常だと言えるほどの昨今である。 

一般大衆の健康を如何に守るか、如何に準備をするかという議論ではなく、将来のビジネスチャンスという観点で見ると、米国のビジネスマンや彼らを支援し、将来の選挙での得票を確保したい政治家らが今回の新型コロナの大流行を金儲けの絶好の機会として見なしたとしても、それは特別の関心を呼ぶことは無いのかも知れない。何時ものことなのである。しかしながら、もっと覚めた言い方をすれば、新資本主義やネオグローバリズムといった金儲けに都合のいい経済理論が提出され、それらが横行する米国においてはこれは決して不可解なことではないのだ。そう考えると、季節性のインフルを新型コロナの大流行として喧伝し、その伝染性と毒性を大袈裟に報道することは金儲けのためには政府やメディアにとっては当然だという論理が成り立ってくる。ましてや、今年の11月には米大統領選が控えているので、関係者の騒ぎ方にはさらに拍車がかかる。 

ビジネスチャンスという観点からの米国における動きにはもうひとつの重要な要素がある、それはビル・ゲイツの動きである。5年ほど前にビル・ゲイツがTEDコンフェランスで喋った内容は将来の感染症の大流行のためにはワクチンの準備を行わなければならないという内容である。最近はわれわれ素人でも知ることになった事実のひとつはビル・ゲイツが新型コロナのためのワクチンの開発プロジェクトに資金を提供しているという点だ。彼は世界でも指折りの超富豪であるから人道的な観点からこういったプロジェクトに関心を寄せてくれることは何の不思議でもなく、むしろ賞賛すべきことであろう。私も最初はそう思っていた。しかしながら、いくつもの要素を集めてみると、そこには大きな構図が浮かび上がって来る。新型コロナに対するワクチンの開発は絶好の金儲けの機会として新型コロナの大流行を捉えようとする彼の姿が見え隠れする。季節性のインフルと致死率がそれ程も変わらない新型コロナを特別に恐ろしい感染症として誇大宣伝しているメディアの姿はその典型的な行動であると言えるのではないか。これは私だけの穿った見方であろうか? 

ビル・ゲイツの最近の言葉(今年の318日の記事。原題:Bill Gates Calls For National Tracking System For Coronavirus During Reddit AMA)と今回の引用記事でご紹介したロックフェラー財団の行動計画とにはひとつの共通項がある。ロックフェラー財団はデジタル追跡システム(Digital Tracking System)を推奨し、ビル・ゲイツは韓国が採用した国家追跡システム(National Tracking System)が必要だと言う。韓国型のデジタル追跡システムはスマートシティとGPS追跡およびクレジットカードの三つの要素を組み合わせて、個人の接触相手を10分間で割り出せるという画期的なシステムだ。これが威力を発揮し、韓国は新型コロナの感染を抑え込むことに見事に成功したと言われている。韓国の追跡システムはあくまでも一時的な使用に限られ、新型コロナの大流行が収束した時点でこれは破棄され、個人情報の流失が起こらないよう配慮されているとのことだ。 

しかしながら、ビル・ゲイツの言動を調べてみると、人道的な貢献という仮面をかぶってはいるが、金儲けが彼の行動の動機となっていることが見え隠れする。このことを指摘するブログが最近現れた。われわれ一般大衆がビル・ゲイツに対して感じる危惧や不信感を率直に論じている(原題:Wayne Dupree: Vaccine for thee but not for me. Here’s why I don’t trust any rushed shots: By RT, Jul/21/2020)。現状がよく分かっている米国人にとっては大問題である。彼の言い分を抜粋すると下記のような具合だ。 

開発されたワクチンが使用開始となったら何が起こるか?この11月の大統領選の結果誰が大統領になったとしても、新政府は皆がワクチンを接種するよう推奨することであろう。接種しないと職場には復帰することができず、あなたの子供たちは登校することさえもできないのか?商店は接種してはいないお客さんの入店を断るのだろうか?将来起こるかも知れない集団訴訟を考えてみたまえ。上院の指導者であるミッチ・マコーミックが業界には訴訟沙汰に対応する義務を免除する法案を準備しようとしているが、その理由は、多分、この点にあるのだ。市場へ投入してからの医薬品の回収や撤退は過去に数多く起こった。米食品医薬品局は薬品の開発における賭けでは必ずしも好成績を残しているわけではいない。このブログを書けば書くほど、私の憤りは大きくなるばかりだ。97%以上もの生存率が確認されている「新型コロナウィルス」に対して6か月かそこらの短期間で開発されたワクチンを私は喜んで接種したいと思うであろうか?ビル・ゲイツは「新世界秩序」を標榜する連中のひとりであると私は思う。マイクロチップをワクチンの接種と一緒に行うであろうと数多くの人たちが推測している。あなたがそのことを信じようが信じまいが、私にはひとつのことについて確信がある。彼は人道的な貢献をするという仮面をかぶってはいるけれども、彼の心底には金儲けが見え隠れする。彼の会社は市場に提供したソフトウェアの更新を何度も行っていながらも、そのソフトウェアの不具合を完全には解決することができなかった。その彼がコロナウィルスの大流行を食い止めると言っている。いったい誰がこれを信用するのであろうか?短期的あるいは中期的な副作用があるのかどうかについては、米議会の議員たちが最初に自ら進んで接種を受けて証明するべきである。 

結局のところ、今や米政府に対する一般市民の信頼感は極めて低く、国内が極端に分断されている米国ではワクチンの開発と接種がうまく運用されるかどうかは極めて不透明であると思われる。

はたしてどんな展開が待っているのであろうか?今後報告される知見を注視して行きたいと思う。






2020年7月16日木曜日

どうして中国は資本主義国家として描かれているのか


アンドレ・ヴルチェクという著者の名前は本ブログの読者の皆さんにはすでにお馴染みであると思う。このブログに何回か登場して貰っているからだ。彼はロシア人として生まれたが、今は米国籍。哲学者であり、世界中を訪れて国際政治を分析し、調査報道を行うジャーナリストでもある。さらには、記録映画の制作や著作にも従事し、実に多才だ。

今思い起すと、彼の著作に始めて接した時私は彼独特の解析と洞察力に圧倒されるような印象を抱いたものだ。あの時の感慨は新鮮に残っている。若い頃、歴史家であるアーノルド・トインビーの本を読んで、目が覚めるような思いを感じたことがある。本一冊で世界観が大きく変わったのだ。これは、あの時の感覚と非常によく似ている。

アンドレ・ヴルチェクの著作の中で本ブログが掲載したものとしては下記のようなものがある:

202042日:「本当に病んでいると言えるのは中国ではなく、西側である」(yocchan31.blogspot.com/2020/04/blog-post.html
2019731日:「西側はなぜ中国の成功を無視しようとするのか」 (yocchan31.blogspot.com/2019/07/blog-post
201819日:「戦場の特派員からの新年のメッセージならびに警告 - アンドレ・ヴルチェク」 (yocchan31.blogspot.com/2018/01/blog-post_9.html
2016711日:「日本のメディアが誰にも喋って欲しくはないこと」 (yocchan31.blogspot.com/2016/07/blog-post_11.html

最近の彼の記事は「どうして中国は資本主義国家として描かれているのか」と題されている(原題:Why is China Painted as ‘Capitalist’ by Western Propaganda?By Andre Vltchek, Information Clearing House, Jul/09/2020 )。その内容は昨年731日に投稿した記事の続編であるかのような印象を受ける。中国問題は著者にとっては長い間熟成させてきた重要なテーマであり、哲学的な思考の結果でもあるようだ。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。


パンチの効いた表現から始めてみよう。「米国やヨーロッパ、カナダおよびオーストラリアのマスメディアは中華人民共和国を資本主義国家であると描写する。それはなぜかと言うと、今や資本主義という言葉は相手をさげすむのに都合がいい、実に汚い言葉であるからだ。西側の人たちは市場経済を一種のゴミのように汚いものだと見なしてさえもいる。」 

中国を資本主義国家と呼ぶのは同国を貶めるためである。それはあたかも「中国人はわれわれ自身とまったく同じではないか。中国はわれわれが行ったような不正義を行い、われわれが過去の500何十年間にわたって犯してきた犯罪行為と同様のことを犯している」と言おうしているように思える。

西側、特に米英両国が行う民衆に対する扇動はまさに完璧とも言えるほどの境地に達している。彼らは世界中のあらゆる地域で何十億人もの精神を条件付けし、一様で卑屈なほどに従順な物の見方をするように仕向けている。これはすべてがすでに単なるプロパガンダの域を越して、アートとでも言えるようなレベルの洗脳である。その目標を見逃すことなんてあり得ない。そして、何人かの頑迷な個人を説得することには失敗するかも知れないが、他人とは違う考えを持ち、独立心が旺盛な人物の精神に対しても常に彼らのプロパガンダ何らかの痕跡を残していく。

一言で言えば、西側のプロパガンダは完璧そのものだ。命取りとさえなる。現在までのところ、敵の反撃に対する防弾性能は群を抜いている。

「資本主義国家である中国」とか「中国の国家資本主義」といった言葉はすべてが真実を偽っているのであるが’、それらの文言について反論する者が誰もいなくなるまで彼らは何度でも繰り返して用いる。

ウィグルや香港、中印国境についてもまったく同様なことが言える。さらには、さまざまな歴史的出来事についても同様だ。

それにしても、現実の課題として彼らはどうして中国は「社会主義国家ではない」といった嘘をつかなければならないのだろうか? 

答えは簡単である。ほとんどの人たちは「社会主義」とか「共産主義」という言葉によってある種の希望を連想するからだ。確かに、その傾向は強い!少なくとも、意識下においてはそう連想してしまう。何十年にもわたる洗脳と相手を蔑むキャンペーンの後であってさえもだ!「社会主義国家の中国」とは「中国の人民ならびに世界に希望をもたらす中国」を意味することになるのである。その一方で、世界中の人々は「資本主義」という言葉は気分を沈滞させ、気の抜けた、退行的な状況を連想する。こうして、中国を「資本主義国家」と呼ぶことによってこの言葉は中国に関して陰鬱で、落ち込んだ印象をもたらす。

帝国主義的、かつ、資本市議的である西側は社会主義とはもうこれ以上競争することはできない。したがって、西側は中国を塵芥の中へ引きずり込もうとし、中国を破壊しようとしているのである。間接的には、経済制裁を課し、イランや北朝鮮、ボリビア、キューバおよびベネズエラではクーデターを試みた。直接的には、中東の国々でクーデターを引き起こした。中国は考え得るすべての面で攻撃を受けている。当面は軍事的な攻撃には至ってはいないが、これらの攻撃は経済面から始まってイデオロギーに至るまですべての領域で進行している。もっとも強力で極めて不快な武器としては、今までのところ、嘘や矛盾する言動ならびに虚無主義運動が常に注入されてきたことだ。たとえば、香港を見て欲しい!

虚無主義は致命的である。何かに熱中しようとする気分を破壊し、国家から自信や勇気を奪ってしまうからだ。

そして、そういった状況の実現こそが西側が達成しようとしている目標なのである。つまり、さらに先へ進もうとしている進歩的な社会主義国家を脱線させ、新植民地主義によって抑圧を受けている国々からは人々の夢を追い払い、希望を抱き、抵抗する意思を挫こうとする。(私はこうした破壊的なプロセスを「Revolutionary Optimism, Western Nihilism」と題した書物の中で詳しく書いている。)

西側の扇動者はよくわきまえている。つまり、中国はその真髄を奪い取られてしまっている。ここで言う真髄とは「中国的な社会主義」のことである。その真髄を見失った中国はもはや全世界に向けて代替となる社会制度に共鳴させる力はなく、それを売り込むことはできない。中国を貶め、静かにさせるのにもっとも効果的な手法は世界中に中国は「資本主義国家」であると信じ込ませることなのである。

そういった手練手管は以前から用いられてきた。たとえば、ドイツのナチスがそうした。彼らは自分たちの占領に抵抗する勢力には数多くのテロリストが含まれていると主張した。米国もまったく同一の手法を使っていることが知られている。また、大英帝国は反抗的な地域住民を「未開人の集団」と称した。真実の本末を転倒させ、勝ち取るのである!
恥も外聞もなく物事を歪曲し、物事を上下逆さまにし、嘘を何千回でも反復する。マスメディアの全能力を駆使してそれらを印刷する。その結果、何が起こるかと言うと、あなたが推進したい作り話は何十億もの人たちによって信じて貰えるようになる。

中国の場合、西側は中国が米英、仏、カナダと同様にギャング国家であることを全世界に信じ込ませようとしている。中国を資本主義国家と呼ぶことによって、西側はまさにそうしているのだ。中国の挙動を西側の植民地主義大国のそれと等置することによってそうしている。西側自身が何世紀にもわたってそうしてきたにもかかわらず、西側は中国が自国内の少数民族を抑圧していると主張することによってそうしているのである。

***

しかし、中国は資本主義国家ではなく、帝国主義国家でもない。中国はこの地球上で拡張主義を採用しようとはしない大国のひとつである。

中国は世界中で何百万人もの人々を殺害することはなく、外国の政府を転覆させることもしない。そして、貧窮に襲われている国々から最後に残された富を収奪するようなこともしない。

中国は大銀行や超富裕者に支配されているのではなく、社会主義的な5か年計画によって導かれている。同国の民間企業や国有企業は政府ならびに国民の意向に従わなければならない。これらの企業は国民や世界中の生活水準を向上させるために製品を作り、サービスを提供しなければならないのだ。何を製造しなければならないのかに関しては、企業は政府から詳細な指示を受け、西側で起こるような状況とは異なって、国民そのものを代表する。なぜそのような違いが起こるのかと言うと、西側においては政府を選ぶのは一般大衆ではなく、企業であるからだ!

中国は社会主義国家である。それは「中国的な特徴を持った社会主義」である。約14億人の人口を抱える国家において極貧を何とか一掃することに成功した社会主義国家である。「生態学的な文明社会」を作り出そうとしている社会主義国家である。今までは極貧に見舞われていた国々を「一帯一路」政策を通じて結び合わせ、世界をリンクさせようとしている社会主義国家である。

中国においては、民主主義は紙の破片を貼り合わせてひとつの箱を作り上げるような作業ではない。それは、文字通り、国民が支配するものなのだ。それは社会主義国的に発展し、その国の男女や子供たちの生活を毎年のように上へ上へと向上させる国家のことである。

それは新鮮で、楽観的で、常に改善され、進化していくシステムである。中国の都市部や地方で住民に問いかけてみたまえ。彼らはあなたの質問に答えてくれるだろう。彼らの大多数は幸福であり、彼らは希望を抱き、楽観的であさえもある。

北米の都会や地方で人々に同じ質問をしてみたまえ。すると、彼らが言わんとすることは直ぐに分かる。今まで以上に「生活は災難続きだ!」と彼らは毒づくであろう。

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大きな問題がある。それは北米やヨーロッパの人々のほとんどが中国に関しては必ずしも戦略的とは言えないような手法でしか中国を学んではいないことだ。一般的には、彼らはテレビの前の椅子に座り込んで、あるいは、高度に検閲されているヤフーやグーグルの一面記事から情報を入手するのが普通だ。

中国へ旅行する彼らの多くはグループ旅行をし、主要な観光スポットを訪れるだけである。もちろん、そういった中国との接触であっても何もしないよりは遥かにましだ。中国は何処を訪れても非常に印象深い。

しかしながら、中国に関する判断に関して合格することができるような人たちであってさえも、中国のことを深く理解している西側の人たちというのは極めて少ない。この範ちゅうには トランプ政権で国家通商製造業政策局の長官としてトランプ大統領の補佐役を務めるピーター・ケント・ナヴァロも含まれる。彼は中国のことは何も知らず、中国語は喋れない。しかしながら、反中国のテーマで本を書いている。また、共和党上院の重鎮であるマルコ・アントニオ・ルビオも同類である。

ロンドンやパリおよびニューヨークに住んでいるプロパガンダの専門家たちは、少なくとも西側においては中国に関する知識の欠如には十分に気付いている。とは言え、自分たちは何の反論さえをも受けないことから、彼らは言語同断な大嘘や作り話を勝手気儘に喋り、出版する。そして、反論された場合には、自分たちに大胆にも立ち向かおうとする人たちを容易く検閲することができるのである。

中国共産党の党員である中国人の男性あるいは女性が英国のテレビで自国について喋るのをあなたは今までに見たことがあるだろうか?そんなことは一度もないだろう。本当のことを言えば、少なくとも西側ではそのようなことは禁じられている。西側のプロパガンダの筋書を強く踏襲する中国人だけが西側のテレビチャンネルで自由に喋ることができるのである。そんなことは考えたこともなかった?だったら、ここで良く考えて貰いたい!親プーチン派または親共産主義派のロシア人の中でいったい何人が英国や米国の放送局で喋っているのを視聴しているであろうか?

西側のファイアーウオールは完璧である。

メディアは西側の歴史の中からもっとも汚らしい章を掘り出して、まばたきひとつもせずに、状況をすっかり入れ替えて、中国に対する批判に変換してしまう。オーストラリア人や北米の連中は先住民族やジプシー、アボリジニ、その他の女性を不妊化してきた。こうして、彼らは新たな考えを持ち出して、中国は今同じことを行っていると喧伝する。何世紀にもわたって、西側は人々を植民地の中へ囲い込み、ヨーロッパでは人々を収容所に押し込んだ。巧妙に歪曲した形を用いて、ロンドンやワシントンのプロパガンダの長老らはこれらの挙動を今中国に帰しているのだ。

決定的な証拠は必要ではない。ご自分の想像力をフル回転させるだけでいい。人々は嘘に慣れてしまっている。彼らは従順で、洗脳されている。彼らは他の国、つまり、西側に属さない国家が軽蔑されているのを見るのが好きである。特に、ヨーロッパや米国が何世紀にもわたって犯してきた犯罪と同一のことを仕出かしているとして他国が批判されるのを見るのが好きだ。そのような場面は自分たちの罪の意識を軽減してくれるのである。そして、彼らはこんな風に言うことができる。「世界はどこもかしこも汚らわしい。われわれはお互いに実に酷い!」 

多分、これらのプロパガンダ攻撃の後には何らの希望も残らないであろう。しかしながら、少なくとも西側は自分たちの優位性を急いで捨てる必要もなければ、特権を排除する必要性も感じない。

***

こうして、「中国は資本主義国家なのだ!」 おまけに、バオバブの木は本当はブーゲンビリアなのだ。 西側が主導する専制主義は、それを信じようが信じまいが、民主主義なのである。さらには、西側の助言者は世界に向けて説教を垂らす倫理的な委任状を携えているのである。

中国共産党の何人かの高官らは米国へ旅行することが西側によって禁じられている。それとは対照的に、世界の至るところで集団虐殺を主導してきた責任を持っているにもかかわらず、米国の高官らはどこへでも好き勝手に旅行することができる。

中国の共産党は14億人の人口を抱える国家を繁栄させ、高等教育を施し、今後ますます生態学的に健全な国家を築いていくという責任を担っている。その一方で、米国の帝国主義的な官僚は数多くの進歩的な政府を転覆させ、何百万人もの市民を爆撃し、植民地の環境を破壊し、経済制裁を通じて何億もの人たちを飢餓状態に放り込むという責任を担っている。しかし、彼らは自分自身を制裁することは決してなく、行きたいところは何処へでも出かけることができる。不思議な世界だと思うかい?なぜかを解明・・・ 

中国が順調に行けば行くほど、中国はさらに軽蔑の対象となる。将来さらにうまく行ったとしたら、中国は直接攻撃を受けるかも知れない。恐らくは、武力で。

社会主義国家である中国はますますうまくやって行くことであろう。そうそう、あなた方の推察は正解だ。それは共産党の指導の下でだ! 

ところで、われわれは何に向けて準備をするべきか?第三次世界大戦か?人類の滅亡か?これは西側が負け方を弁えてはいないからなのか?これは、たとえわれわれ人類が絶滅に瀕してさえも、資本主義や帝国主義は世界的な権力の座を手放そうとはしないからなのか?

これは北米やヨーロッパが病的な優越感を患い、集団虐殺の本能に苛まれている悪辣な嘘つきであるからなのか?

残念ながら、われわれのこの地球にとっていい展望であるとは決して言えない。

著者のプロフィール:アンドレ・ヴルチェクは哲学者であり、小説家、映画製作者、そして、調査報道ジャーナリストでもある。彼の近著には次の6冊が挙げられる:New Capital of Indonesia China Belt and Road InitiativeChina and Ecological Civilization John B. Cobb, Jr.との共著)、 Revolutionary Optimism, Western Nihilism、革命小説であるAurora、および、ベストセラーの政治ノンフィクションのExposing Lies Of The Empire 彼の他の書籍に関しては こちら Rwanda Gambitを視聴願いたい。これはルワンダとコンゴ民紙主義共和国に関する画期的な記録映画である。また、ノーム・チョムスキーとの対談を記録した映画、On Western Terrorismもお忘れなく。 ヴルチェクは現在東アジアと南米に住み、世界を駆け巡って仕事を続けている。彼との連絡は彼の ウェブサイト ツイッター および パトレオンでどうぞ。


これで全文の仮訳が終了した。

日本を含む西側においては大手メディアが報道する内容は何らかの検閲を受けていると言われている。21世紀に入ってから早くも20年を経過しようとしているが、言論界を巡る綱引きはどう見ても言論の統制を図る勢力の一人勝ちになりそうな気配である。その典型的な例は検閲がますます強化されているインターネット、ソーシャルネットワークの現状に見られる。ディープステーツの意向に沿わないフェースブックへの投稿があちこちで閉鎖され、グーグル検索では検閲の目標となった著述家の記事や情報は通常ならば上位に現れる筈なのに、何百もの検索結果のしっぽの方で初めて現れて来るような塩梅だ。好むと好まざるとにかかわらず、われわれは今そんな社会に住んでいる。

本日ご紹介したアンドレ・ヴルチェクの記事は、恐らく、多くの読者の皆さんは彼のあからさまなものの言い方に違和感を覚えるかも知れない。しかしながら、その違和感の一部は、この引用記事が言っているように、実は自分たちの罪の意識と何処かで深く関連し、本能的な自己防衛と繋がっているのかも知れないのである。彼がわれわれ一般庶民に要求しているように、今われわれはこの現状をよく考え、深層をよく分析した上で適正な判断をしなければならない。洗脳の罠に陥らないだけの判断力を養うことが急務だ。これはかなりの努力を強いることになるであろう。言うまでもなく、努力をし続ける価値は十二分にある。そういう意味からも、この引用記事はわれわれを覚醒してくれ、実に秀逸なインプットであると思う。

夏の夜空を見上げて、煌めく星に思いを馳せ、悠久の真理に迫りたいものである。