2018年9月24日月曜日

朝鮮半島における歴史的和平の動きは米国に紛争を止めるよう促している


韓国と北朝鮮の指導者は何回目かの会談を行い、両国は、920日、朝鮮半島の非核化に向けて新たな段階に到達した。米国の軍産複合体が邪魔をしない限り、東アジアの軍事的緊張を和らげるこの動きは具体化して行きそうだ。これは両当事国にとってだけではなく、周辺のロシアや中国、日本にとっても歓迎すべき動きだ。

少なくとも、韓国と北朝鮮の民意は両国の和平を求めている。

これは何十年も前からの願いであったが、今までは、不幸なことには、周囲の政治的環境がそれを許さなかった。しかしながら、今年の11日の金正恩の言葉が歴史の流れを変え、新しい潮流を見事に作り出した。今回は南北の民意として本気に動き出した。金正恩の指導者としての奔放さと独自性は後世の歴史書にも記されるのではないか。まさに、政治の妙である。

ここに、「朝鮮半島における歴史的和平の動きは米国に紛争を止めるよう促している」と題された最近の記事がある [1]

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>










Photo-1:  韓国の文在寅と北朝鮮の金正恩の両指導者、北朝鮮の白頭山の頂上にて。2018920日。© Pyeongyang Press Corps/Pool / Reuters

·       これ以上に象徴的な出来事はない。南北朝鮮の両指導者は朝鮮半島の最高峰の頂上に立って、お互いの手を握り締めた。平和裏に両国を統合することを固く約束したのである。今や、和平を実現するボールはワシントン側のコートにある。 

     南北朝鮮の和解に関しては、今年は重要な外交的成果がいくつもあった。しかし、今週三日間をかけて行われた両指導者間の会談は朝鮮半島の和平をさらに先へと進めた。

      韓国の文在寅は北朝鮮の首都で平和を願う数多くの市民の歓迎を受けた。北朝鮮の指導者である金正恩と共に、核兵器の廃絶と両国関係の正常化に向けて重要な約束をし、これに署名をした。

この歴史的な北朝鮮への訪問の二日目、文大統領は平壌のメーデー・スタジアムで15万人の市民に向けて演説を行った。その演説の最中、「朝鮮人であるわれわれの兄弟、姉妹」という言葉を何度も繰り返した。熱狂的な喝采に向かって、彼は「偉大な朝鮮人」の和平と統合を呼びかけた。















Photo-2:  金正恩は和平の記念として2トンものマツタケを韓国に贈呈した。

その翌日、文と金はそれぞれの婦人や代表団を伴って白頭山に登った。この山は朝鮮民族精神の誕生の地として5000年も前から南北朝鮮の人たちによって崇拝されている。文大統領が前夜スタジアムで行った演説で述べたように、朝鮮人は何千年にもわたって平和裏に暮らしてきた。冷戦と悲惨な内戦(195053年)によって過去70年間においてだけは分離されていたのである。

その分離は、今や、今週の友愛に満ちた指導者間の会談によって終わろうとしている。

決して無駄な話し合いではなかった。両者は両国を分断している国境を非軍事化し、紛争を回避する手順が履行されているかどうかを監視するための合同軍事委員会を設置することを約束した。ふたりの指導者は輸送システムや経済協力を介して両国を統合する行動計画を設定した。

悲痛な課題となっている戦争によって離散した家族の再会に関しては、国境を越えて接触を保つことを恒常化する計画である。

総括的和平の締結の可能性を高めている要素は何といってもトランプ政権の積極的な反応であろう。トランプ大統領は今週の南北朝鮮の会談を「素晴らしいことだ」と評し、平和の追求を支持した。

米国務長官のマイク・ポンペオは北朝鮮との交渉を「可及的速やかに」再開するよう部下に指示を与えた。

「この重要な(南北両国の)約束に基づいて、米国は直ぐにでも交渉に入る用意がある」とポンペオは述べている。

今のところは順調だ。今週、北朝鮮の金は核兵器の製造設備を撤去する約束を再確認した。しかし、彼は米国が「それに相当する」譲歩を見せることを望んでいる。















Photo-3:  金と文が非核化の道筋を採用した後、両国の国防大臣は「軍事協定」に署名。

これはワシントン政府からの実質的な見返りもなしに北朝鮮が核兵器を一方的に廃棄するというプロセスにはならない。米国からの見返りがどのようなものとなるのかに関しては、金は具体的には何も述べていない。しかし、それは朝鮮戦争に終止符を打つ平和条約の形で米国が安全保障を約束することだと推測される。

また、北朝鮮は米軍が韓国軍と共に毎年実施している合同軍事演習を永久に中止することを望んでいる。平壌にとっては、この軍事演習は自国の安全保障に対する挑発である。それに加えて、南北が両国の関係を正常化し、再統合のプロセスを開始するならば、現在28,000名を越す駐留米軍は韓国の領土内から撤退することを余儀なくされることであろう。

トランプとポンペオは先に示していた「完全で、検証可能な、非可逆的な非核化」といった高圧的な要求からは大きく離れたようだ。トランプ政権は、恐らく、われわれの多くにとっては驚くほど節度のある柔軟性を示し、信頼性を確立するために徐々に交渉を進めることに意欲的であるようだ。

最近の数ヶ月間に進行した関係改善は驚異的でさえある。昨年の今頃、トランプは国連総会で無鉄砲で好戦的な演説を行っていた。その演説で彼は金書記長を「ロケット・マン」と風刺して、攻撃した。さらには、もしも北朝鮮が大陸間弾道ミサイルを用いて米国を脅かすならば、北朝鮮を「徹底的に破壊する」と断言した。

金も同様に何度も攻撃的な姿勢を見せて、トランプは「もうろくしている」と激しく非難し、北朝鮮の常套句である「火の海」という文言を使って彼を脅かした。

世界中で多くの人々が核戦争が近づいているとして恐怖感を覚えた。しかしながら、今年の始めに金が韓国の文大統領に友情の手を差し伸べ、国家統一について喋った時、すべてが変わった。ふたつの国家間の緊張緩和に向けて長い間働き、政治的経験を豊富に持っている文は速やかにそれに報いた。彼は2017年の5月に北朝鮮との和平を約束して大統領に選出されていたのである。

今年の4月、ふたりの朝鮮の指導者は非武装地帯で歴史的な会談を行った。そこでは、国境の両側から取り寄せた土と水を用いて記念植樹が行われた。

その後トランプと金との間に突破口を開いたのは文であった。6月のシンガポールでの会談では米国の現職の大統領が北朝鮮の指導者と初めて会って、頂点に達した。
















Photo-4:  トランプ米大統領は近いうちに北朝鮮の指導者である金正恩と会うことになったと述べた。

来週、韓国大統領は国連総会の場でトランプと会合する予定だ。その場で、この非核化プロセスを推進するために北側はどのような譲歩を米国に求めているのかについての詳細を伝達するものと推測される。

ボールは米国側のコートにある。トランプは朝鮮に対する米国の政策を大幅に変更する必要がある。北朝鮮の安全保障を確実にし、朝鮮半島の和平を確立するには、朝鮮戦争の終結宣言が、遅きに失したとは言え、最初のステップとなる。

しかし、トランプはさらに先へ進む必要がある。平壌に対して強硬な姿勢をとっても功を奏しない。核兵器の製造施設を廃棄するという具体的なステップを評価し、北朝鮮に対する懲罰的な経済制裁を緩和することがさらに先へ進むための妥当な筋道であると思われる。

このプロセスはワシントンにおけるふたつの派閥によって空中分解を起こす危険性がある。そのひとつは朝鮮半島から米軍を引き上げることには反対する軍部と米帝国の政策立案者たちだ。何十年にもわたって継続されてきた米軍の駐留目的は韓国を「防護する」ことよりも、本質的には、むしろ、中国やロシアに対してアジア・太平洋地域で米軍の影響力を投射することにある。

和平を脱線しかねないもうひとつの派閥は「反トランプ」で結集し、民主党員やメディア界の支持者によって独占されている政治的権力層である。この派閥はトランプに関することであれば何でも嫌う。たとえば、彼が北朝鮮に対する外交で見せた、好ましい行為を行った場合であってさえもだ。しかし、本件はすべてをトランプの手に委ねようではないか。彼はどうにかこうにか金正恩との和平にひとつの機会を与えてくれたのだから。

依然として、反トランプ陣営は本件を喜んではいないようだ。ニューヨークタイムズは今週このサミットについてしぶしぶと次のような表題をつけた。つまり、「北朝鮮が新たに約束する核の放棄は米国の要求には程遠い」と。

もうひとつの反トランプ論者であるワシントンポストも「北朝鮮は今や非核化では最小限度の圧力しか受けてはいない」と言って不満を示し、トランプが公言した「最大級の圧力」をあざ笑っている。

米ロ間の正常化についてトランプ大統領が国内の反対派から妨害を受けているのとまったく同様に、トランプは北朝鮮との和平の試みについても邪魔されていることを悟るかも知れない。その場合、歴史的紛争の終結の機会が強引に浪費されてしまいかねない。

それでもなお、米国が邪魔をする戦術は脇に置くとして、南北朝鮮の人々は、今や、かっては見られなかったような断固とした決意と勇気を持って、自分たちの運命を形作ろうとしている。彼らは、たとえワシントン政府が何と言おうとも、戦争には終止符を打とうとするだろう。米国による弱い者いじめの時代は終わろうとしている。

あなたの知人や友人も興味を抱くかも。この記事を共有しよう!

注: この記事で表明された見解や意見はあくまでも著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。 

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

世間にはさまざまな議論がある。しかしながら、誰にとっても明白なことは全世界の市民にとっては核戦争の脅威を取り除くことこそが最優先である。

これはそれ以外の政策とは比べることさえも無意味だ。この最優先項目と二番目に重要な項目との間には大きな隔たりが存在する。たとえば、米国の政策論者が頻繁に持ち出す中国やロシアの人権問題は、本質論として議論すれば、人類の存続そのものを脅かす核戦争の脅威には立ち向かうことはできない。ましてや、米民主党の活動家にお得意のアイデンティティー問題も然りだ。同性婚の議論は文明の壊滅を目の前にしてどんな意味があると言うのだろうか?

朝鮮半島の非核化がすんなりと進展するかどうかは分からない。しかしながら、たとえ紆余曲折があるとしても、これは時代の要請であることには間違いがない。



参照:

1:Korea’s historic peace move puts onus on Washington to end conflict: By Finian Cunnigham, RT, https://on.rt.com/9erd




2018年9月20日木曜日

MH17便を撃墜したミサイルの製造番号によると、同ミサイルは1986年に製造され、ウクライナ軍の所有であったことが判明


マレーシア航空のMH17便を撃墜した「ブク」ミサイルはロシア軍が発射したものであるとオランダ当局はすでに結論付けている。ところが、9月17日にロシア国防省が発表した情報はオランダ当局の見解を真っ向から覆すものとなりそうだ。MH17便の残骸から見つかったミサイルの製造番号はふたつある。それらはエンジンとミサイルのノズルにマークされたものだという。それらを追跡したところ、この「ブク」ミサイルが特定されたのである。
問題のミサイルがいったいどの工場で製造されたのか、ならびに、何処へ納入されたのかを示す決定的な記録文書が発掘され、これらの情報が公開された [注1]。製造年は1986年だと言う。32年前の書類が見つかったのである。
ところで、MH17便撃墜事件は米ロ間での情報戦争の観点から言えば、ロシアを悪魔視するにはもっとも重要な最前線のひとつであると言えよう。ロシア側が発表したこの情報はウクライナ/米国側にとっては不利となる。そうした状況を反映して、ニューヨークタイムズはすかさずウクライナ側の肩を持った記事を発表し、今までの筋書きを踏襲しようとしている [注2]。
今まで展開されてきた米ロ間の情報戦争を観察すると、たとえば、シリアにおける反政府派武装集団からのアレッポ市の解放の場面、反政府派による化学兵器を用いた自作自演作戦、英国のソルズベリーで起こったスクリッパル父娘毒殺未遂事件、等の出来事で共通して見られたパターンを抽出すると、米ロの姿は相対的に次のように集約される。つまり、ロシアは事実に基づいた情報を提供し、米国やその同盟国は虚偽の情報やでっち上げを次から次へと流す。
今回のロシアからの新しい情報を巡る西側の反応として私が個人的にもっとも興味深く感じたのは「Silence on MH17 Data Released by Russia Proves Its Credibility - French Official」と題された9月18日付の記事(sptnkne.ws/j8MB)だ。この表題を仮訳すると、次のようになる: 「ロシアが発表したMH17便に関するデータ(つまり、「ブク」ミサイルの製造番号)については(西側は)皆が沈黙しているが、それはこの情報の信頼性が高いからだ ― フランス高官の言葉」
今まで西側は嘘やでっち上げの出来事、自作自演作戦、洪水のように流されるフェークニュースを駆使してロシアを押しまくって来たが、ロシアは事実を前面に出して防戦している。今後どのような展開が待っているのであろうか?
本日はこの記事 [注1] を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

 
<引用開始>



 
 
 
 
 
 
 

Photo-1: 資料写真。2014年に起こったMH17便撃墜事件の現場におけるオランダ人専門家。© Aleksey Kudenko / Sputnik

ウクライナ東部でマレーシア航空MH17便を撃墜した「ブク」ミサイルの残骸の中から発見された部品の製造番号はミサイルが1986年に製造されたことを示している、とロシア軍部が説明した。さらに、この飛翔体はウクライナが所有していたものだと言う。
オランダが主導する国際調査団によると、2014年6月 [訳注:「6月」ではなく、正しくは「7月」] に旅客機を撃墜したミサイルの残骸からはふたつの製造番号が発見されている。これらの製造番号はエンジンとミサイルのノズルにマークされていたものだ。
ロシア軍は月曜日(9月17日)にこれらふたつの製造番号を持った部品は「8868720」の製造番号を持つミサイルに使用されたと述べた。
記者団を前にして、ニコライ・パルシン将軍は「ブク」ミサイルに関する一連の書類を示した。これらの書類によると、いくつかの情報はこの説明のために機密が解かれたばかりであるが、問題のミサイルは1986年にモスクワ近郊のドルゴプルドニの軍需工場で製造されたものである。

 

 
 
 
 
 
 
 
Photo-2: エンジンとミサイルのノズルにマークされた製造番号。

また、このミサイルは1986年12月29日に製造工場から出荷され、現在のウクライナ領土内に駐屯していた20152部隊へ配送された。この部隊は現在はウクライナ軍の223対空防衛部隊であると同報告書は述べている。この223対空防衛部隊は、2014年6月、ウクライナ東部の反政府派を掃討しようとしたキエフ政府の軍事行動の一翼を担ったと同将軍は述べた。
本証拠はロシアから密かに持ち込んだ発射台を使ってミサイルを発射したものであって、ロシアはMH17 便の撃墜に責任があると主張するウクライナやその他の当事国の非難を覆すものとなるとこのロシア軍の報告書は言っている。さらに、ロシア軍部はすべての関連資料をオランダの調査団へ送付したと付け加えた。

 


 
 
 
 
 
 


Photo-3: ロシアで見つかったミサイルの出荷記録。

ロシア軍部は、英国に本拠を置き、市民によるジャーナリズム組織であると自称する「ベリングキャット」グループが提示したビデオ映像についても反論している。このビデオはミサイル発射台はロシアから持ち込まれたとの主張を支えるものである。ロシア国防省はこのビデオの一部を示し、辻褄が合わないことを強調した。つまり、このビデオは背景の中にオリジナルにはなかった発射台の画像を嵌め込み、合成したものであることが証明されたと述べている。
このべリングキャットの調査内容はMH17便の調査に従事しているオランダの検察官が最近報じた最新情報の中で言及されていたことから、ロシア軍としては急遽この調査内容を詳細に検証することになったと述べている。ロシア側のビデオはウクライナの通りでアブラム戦車が同様の手法でトレーラーで輸送される場合実際にはどのように見えるのかに関してひとつの事例を示すものとなっている。
 


 
 
 
 
 
 
 

Photo-4: べリングキャットの画像をロシアの専門家が検証。

この発表の3点目はウクライナの職員の通話を2016年に傍受した記録である。この記録によると、ウクライナの職員は飛行制限が設けられたウクライナ上空を航空機が通過する際のリスクを論じ合っていた。一連の不平不満の中にはひとつの文言があって、それは飛行制限を守らないと「われわれはマレーシア航空のもうひとつのボーイングを****するぞ」と言っている。
これはロシア人将校のルスラン・グリンチャク大佐から寄せられたものである。彼はウクライナ空域のレーダーコントロールの任に当っている部隊で勤務をしている。彼の部隊は2014年のMH17 便を追跡していたので、彼はこの悲惨な事件に関して一般大衆はまったく知らない情報を所有しているのかも知れない。

 


 
 
 
 
 
 
 

Photo-5: ルスラン・グリンチャク大佐からの情報がロシア軍部によって紹介された。

この記者会見でホスト役を演じたイーゴル・コナシェンコフ将軍はウクライナは自国のレーダー網から入手したデータをオランダの調査団へ提出することを怠ったと言った。また、彼は1986年に「ブク」ミサイルを受け取ったウクライナの部隊から入手可能な記録書類が、キエフ政府がこれらの記録はもはや入手できないと宣言しない限りは、この調査には有益であろうと述べた。彼はこの種の記録書類は今でも保管されている筈であり、関連規則は今でも生きている筈だと強調した。

 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


Photo-6: モスクワ政府は「根拠のない結論」を受け入れる積もりは毛頭ないと駐国連ロシア大使が言った。

ロシア軍部はウクライナの反政府派がウクライナ軍からミサイルを盗み出したというシナリオを反証する証拠は持ってはいないと言った。しかしながら、それと同時に、彼らはウクライナ政府の高官がそのような出来事はついぞ起こらなかったと公に述べた事実を指摘してもいる。
マレーシア航空MH17便は2014年7月17日にウクライナ東部の上空で撃墜され、同国の反政府派によって支配されている地域に落下した。この撃墜によって283名の乗客と15名の搭乗員の全員が死亡し、乗客のほとんどはオランダ国籍であった。現場から何の証拠も回収されてはいないにも拘わらず、この悲劇が起こった初日からロシアは西側のメディアによって非難される始末であった。

オランダが主導する合同調査団(JIT)にはロシアは含まれず、ウクライナをそのメンバーとして含めている。この調査は中立ではなく、偏見を持っており、ウクライナからすべての証拠を収集することには失敗し、不審な情報源に依存したり、キエフ政府好みの筋書きに合わないロシアからの情報は無視しようとしているとロシア側は見ている。
<引用終了>

 
これで全文の仮訳は終了した。
ロシアがオランダのJITに送付した記録情報に関しては、現時点ではJITの反応はまだ報じられてはいないようだ。関係各国や西側メディアは沈黙を守っている。この情報はJITが今まで推し進めてきた結論を根底から覆すものとなりそうなだけに、面目を保つためにも、その取り扱いは極めて困難なものとなるに違いない。

JITは真実に背を向け続け、今までの政治的な結論を踏襲するのか、それとも、この機会に事実に基づいた結論へと方向転換をするのか、実に見ものである。どちらになるのかは私には分からない。
この撃墜事件で犠牲となった398名の乗員・乗客の多くはオランダ国籍である。オランダ政府が主導するJITは自国民の悲惨な死を嘘で固め続けるのであろうか?民主主義を高らかに唄い続けてきた西欧にとって、倫理的にも、政治的にも、そして、人道的にも自国民が求める真実に背を向けることが果たして許されるのだろうか?

新冷戦という現行の米ロ戦争においては、何十年にもわたって米国の盟友であるヨーロッパ諸国の政治環境では真実が最初の犠牲者となり、新冷戦はそのまま続くのかも知れない。最悪の場合、オランダの市民は自国の政府が腐敗しているという現実を改めて認めざるを得ないことになる。それとも、ここでオランダの市民が目を覚まし、自国の政治を新しい方向へと動かすのだろうか?



参照:

注1: Serial numbers of missile that downed MH17 show it was produced in 1986, owned by Ukraine – Russia: By RT, Sep/17/2018,  https://on.rt.com/9ef8

注2: Russia Missile That Shot Down Flight MH17 Was Ukrainian: By The Associated Press/The New York Times, Sep/17/2018

 

 

 

 

 

2018年9月15日土曜日

米国の崩壊を見ている思いがする


副題:米国の存在が薄れようとしている

 

1989119日、ベルリンの壁が崩壊し、19911225日にはソ連邦が崩壊した。これらの一連の出来事によって何十年も続いて来た東西の冷戦には終止符が打たれた。誰の目にも共産主義のソ連が敗退し、資本主義の米国の一人勝ちが決定的であると映った。
 
こうして、90年代の初めは米国を有頂天にさせた。しかし、この有頂天振りはとんでもない勘違いであったのかも知れない。2003年に米国はイラクへ侵攻したが、米国は今でもイラクから軍を撤退させることができないままだ。米軍が方々へ派遣され、軍事費は増加するばかりで、米経済を疲弊させている。
 
冷戦の終結から27年が経過する今、米国による世界規模の支配に関しては「米帝国による覇権は崩れようとしている」、あるいは、「われわれはすでに多極化された世界の中にいる」といったさまざまな見解が出回っている。何を指標にして言うのかによって、見方は大きく分かれるようだ。
 
米国にはポール・クレイグ・ロバーツというブログ作家がいる。米国政府の政策を率直に批判する論客として定評がある。
 
ここに、彼の最近の記事がある [1]。その表題は「米国の崩壊を見ている思いがする」。
 
本日はこれを仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。米国内の識者のひとりが自分の国をどのように観察しているのかについて学んでおこう。

 
<引用開始>

1950年代から1960年代における米国の社会には活気があった。上向きの動きが顕著で、中産階級が拡大して行った。1970年代にはケインズ学派の需要管理に見られる内部矛盾によって景気が鎮静する中でインフレが進行した。しかし、レーガン政権の供給側経済政策がこの難問を解決した。冷戦を終結する交渉を始めるために、レーガンは健全な経済を引っさげて、自国の経済問題を解決できないでいるソビエト政府に対して圧力をかけた。
ところが、この極めて幸せな展開は、米国においてもソ連においても、国内勢力には歓迎されなかった。米国では強力な軍・安全保障複合体がソビエトからの脅威を失うことに落胆した。ソ連の脅威があったからこそ、彼らの予算や権力が拡大し続けて来たのである。愛国主義的で極右派の保守勢力はレーガンがソビエトを信頼することによって米国を売り渡そうとしていると非難した。米国の右派はレーガン大統領を二流の俳優で、「抜け目のない共産主義者」であると描写した。
ソビエト政府においてはゴルバチョフはもっと大きな問題に直面した。二つの核大国の間で確立された信頼感に基づいてゴルバチョフは東欧に対する手綱を緩めた。ソビエト共産党の強硬派は余りにも多くの事柄が余りにも急速に変化することを目にして、ゴルバチョフはソ連邦をワシントンに売り渡したのだと結論付けた。この結論はゴルバチョフの逮捕へと展開し、この逮捕の結果、ソ連邦と共産党が崩壊した。
共産主義が去って、ロシア人は資本主義に関するマルクスの教えを忘れてしまい、われわれにとっては今や誰もが友達だと思い込んだ。イルツィン政権は米国の忠告に基づいてすべてを開放し、ナイーブにも米国の忠告を受け入れた。ロシアは略奪され、極貧に陥った。イルツィンの指導下にあるロシアは米国の操り人形と化した。そのため、ロシア市民は自分たちの生活水準を下げてまで代価を支払うことになった。
ソ連邦の崩壊は通常レーガンに帰され、彼の成功例のひとつと見なされる。しかし、これは作り話だ。私はレーガン政権の財務省で次官補として働き、その後はCIAを召還する権限を持った大統領のための秘密委員会のメンバーでもあった。レーガンは彼の目的は冷戦に勝つことではなく、冷戦を終わらせることだとわれわれに何度も言っていた。
彼はこの仕事に関与する者には誰にでも「目的は核戦争の脅威を終わらせることにあり、相手に侮辱的に映るような凱旋をすることではない。ソビエト側には常に尊敬の念を示さなければならない」と言って聞かせた。
不幸なことに、ロシア人との間でレーガンが築き上げたこの信頼関係は、残念ながら、腐敗し切った犯罪者的なクリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマの政権によって裏切られてしまった。これらの極端に腐敗した政権のせいで、米ロ間の不信感は今や何十年間も続いた冷戦時には存在したこともないような酷い状況にある。犯罪者的なクリントン、ブッシュ、オバマが行ったことはレーガンとゴルバチョフが葬り去った核戦争の可能性を蘇らせた。
私が十分に説明したように、さらには、入手可能な証拠のすべてが支えてくれているように、トランプに対する攻撃は「ロシアゲート」と呼ばれる組織化された批判に依存している。しかし、これには何の証拠もない。これはジョン・ブレナンやジェームズ・コミー、クラッパー、ロッド・ローゼンシュタイン、ミュラー、そして、民主党全国委員会によってでっち上げられたものだ。トランプを大統領執務室から排除するという考えを一般大衆の心に植え付けるために、「ロシアゲート」がその根拠とするあからさまな嘘がプレスティチュートであるメディアによって継続的に繰り返されている。たとえば、次のサイトをご覧いただきたい:
さらには、こちらも: http://thehill.com/opinion/white-house/402959-cohens-plea-deal-is-prosecutors-attempt-to-set-up-trump 

ミュラーは、彼を特別検察官として指名した司法長官代理のローゼンシュタインと同様、反トランプの陰謀の重要な一角を成している。二人は米国の大統領を排除しようとする組織化されたクーデターに活発に参画したことから、扇動の罪を犯している。しかしながら、トランプは余りにも非力で彼らを逮捕し、民主主義に対する陰謀で裁判にかけることもできないでいる。トランプ大統領は事実や真実を信用することによって終末的な間違いを仕出かしそうである。これらはどちらも西側文明の乏しい残骸の中ではもはや尊重されてはいない。
かってはインターネット上で入手できる情報は西側の新聞やテレビ、NPRといったプレスティチュート、等によって喧伝された嘘に対抗する勢力として十分に機能してくれるのではないかという期待があった。しかし、これはまったく無駄な期待で終わった。良心的で、信頼できるウェブサイトがいくつも存在するが、支配層のエリートらによって閉鎖され、その数は多くなるばかりだ。支配層のエリートは多くの現金を所有し、オンライン上で発言する者の大半を資金的に支援することができる。資金援助された者は皆が真実に対して反論を唱えるために雇用されるのである。
私は今日ルーツアクションからトランプの弾劾を早期に実現するために募金を募っているとの電子メールを受け取った。彼らのウェブサイトは弾劾文さえをも準備しており、「トランプの元弁護士はトランプ大統領は2016年の大統領選を干渉する陰謀に参画したと言っている」との主張を掲載している。 
この非難はトランプの元弁護士であるマイケル・コーエンが発したものだ。この種の非難は被告弁護士であればほとんど誰もが一様に理解する代物であって、マイケル・コーエンは、ハーバード大学法学部のアラン・ダーショウィッツ教授の文言を使うとすれば、ミュラーが何としてでも捕まえたい相手であるトランプ大統領に不利になる証拠を「作文する」ことによって自分自身の脱税に課される罰を軽減しようとするものだ。
私は曖昧さを完全に排除したい。ルーツアクションは、ニューヨークタイムズやワシントンポスト、CNNMSNBCNPR、ならびに、その他諸々のメディアがそうしているように、嘘をついている。二人の女性に対する支払いが問題視されているが、このような申し立てを表に出すために、これらの女性は軍・安全保障複合体から支払いを受けているのかも知れない。あるいは、ヒラリー&ビル・クリントンまたは民主党全国委員会が支払っているのかも知れない。もしくは、彼女らはただ単にドナルド・トランプから大金をむしり取る絶好の機会であると判断したのかも知れない。これらの女性に対する支払いは決してルーツアクションが主張しているようなものではない。彼らは「この支払いは米大統領選の結果に不正な影響を与えようとして行った大罪であり、軽犯罪である。これは大統領府からトランプを排除することを正当化させるものであって、弾劾を可能とする犯罪である」と主張している。
誰がルーツアクションに助言を与えているのかは別にしても、この助言者は極めて無能な弁護士だ。さらに付け加えると、ルーツアクションの無知な主張がもたらした彼らの馬鹿さ加減を敢えて指摘すれば、「軽犯罪」は「大罪」ではないし、「大罪」は「重犯罪」である。
私は自分のウェブサイトに「原告に支払いをすることは不法行為ではない」とする法律専門家の見解を掲載している。企業はこのような支払いを何時でも行っている。偽りの主張に対する支払いはその申し立てに関して法廷で反論するよりも遥かに安く決着をつけることが可能だ。大統領選に臨み、党の指名を獲得しようとしている候補者にとっては自分の懐から金をもぎ取ろうとする原告と法廷で戦うことによって気を散らされてもいいとする理由は何もない。
さらには、東西の海岸線の間に居住する米市民が何十年にもわたって晒されてきた職場の海外移転による厳しい苦境、軍・安全保障複合体に対する年間1兆ドルにも達する財源の割り当てによって自分たちの生活水準を低下させられた何百万人もの市民に対して何の救済策をも提供することができないでいる政府の無能振り、一般大衆はロシアを戦争に誘い込むことには関心を抱いてはいないことにトランプが気づいている事、等を考慮すると、ルーツアクションやその他の間抜けな連中はどうしようもないほどに正気を失っていると言わざるを得ない。彼らはトランプに投票した選挙民はトランプが二人の女性と性的な関係を持ったかどうかを気にしていると考える始末だ。米国人が晒されている悲惨な苦境を考慮すると、実際にそのようなことが起こったと想定し、二人の女性と関係を持ったとしても、自分たちのチャンピオンに逆らって投票するのはどう見ても一番最後の行動であろうと思う。
ところが、自分自身の所得税を支払わなかった弁護士による何の証拠もない主張、つまり、より軽い罰則にして貰うことと引き換えに米国の大統領には不利となる偽の証拠を提出することは、ルーツアクションやニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、NPRCNNMSNBC、等によれば、米ロ間の非常に危険な緊張を和らげたいとする米国の大統領を弾劾する根拠として見なされるのである。
トランプはロシアとの和平を望んでいる。つまり、彼は彼らの予算と権力を正当化するのには欠かすことができない敵を奪い去ろうとしていることから、軍・安全保障複合体はトランプを弾劾したいのである。
米国人は余りにも愚かで、「ロシアゲート」の主張にはこれっぽちの証拠もないことには気付かないのだろうか?その代わりにわれわれが目にしているのは所得税の脱税に関する起訴であって、これはトランプに対する起訴ではなく、弁護士で共和党の選対委員長でもある人物に対する起訴である。もっと納得がいく起訴をしようと思えば、民主党員に対して起訴をすることが可能であるが、これは実現してはいない。犯罪者的なヒラリー陣営は今まで起訴を免れて来た。
ロシアとの和解を正常化したいとするトランプの意図は人類の生存を継続するために世界中で求められているもっとも中核的な願いであることを認識するために知性を持つ必要なんてこれっぽちもない。核兵器が爆発した暁には、地球の温暖化は今までとは異なる、まったく新しい意味合いを持つことになるであろう。
3人の米国大統領がそれぞれ8年間の任期を終えた後、米ロ関係は冷戦中に経験した緊張とは比較にならないほど危険なものとなっている。私にはこのことは事実として分かる。何故かと言えば、私は冷戦に直接関与していたからだ。
米国だけが軍事大国であると信じる中、無頓着な米国人が見い出す安全保障の姿はどう見ても無知そのものでしかない。クラリティ・プレスから出版されたアンドレイ・マルティアノフの新刊書は米国はせいぜい二流の軍事大国でしかなく、あの間抜けなNATO加盟諸国と共に、ロシアには意のままに、かつ、徹底的に破壊されてしまうだろうと述べている。NATOの加盟国は個々には軍事的に不能である。ロシアが馬鹿馬鹿しい非難や馬鹿馬鹿しい脅かし、あるいは、自分自身の傲慢さに酔いしれて完全に劣等な軍事力を宣伝する馬鹿馬鹿しさ、等に嫌気をさした暁には、現在の軍事力の相関関係において言えば、たとえ西側世界の1インチ平方の土地を救おうとしても西側は何もすることができないであろう。
米国人は余りにも無頓着で、このことを分かろうとはしないが、現実にはロシアの慈悲の下で一日一日を過ごしているのである。

著者のプロフィール: ポール・クレイグ・ロバーツ博士は経済政策を担当する財務省の次官補を務め、ウールストリートジャーナルの共同編集者を務めた。彼はビジネスウィークやスクリップス・ハワード・ニュース・サービス、ならびに、クリエーターズ・シンジケートの特別寄稿者も勤めた。彼は数多くの大学から招聘されている。彼のインターネットへの寄稿は世界中の関心を集めている。ロバーツ博士の近著: The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHow America Was Lost、および、The Neoconservative Threat to World Order

<引用終了>

これで前文の仮訳は終了した。
私が学校教育を受けていたのは1950年代から1960年代だった。あの頃の米国の存在感は絶大で、テレビで見る米国社会は子供の目にはキラキラと輝いていた。少なくとも私にはそう思えた。
レーガン政権(19811989)の下で働いていた著者はレーガン大統領の言葉を伝えている。こういった具体的な言動については私はまったく知らなかった。大手メディアが流すフェークニュースによってこれらも歪曲された真実のひとつであったのだろうか?実に興味深い言葉だ:
レーガンは彼の目的は冷戦に勝つことではなく、冷戦を終わらせることだとわれわれに何度も言っていた。
彼はこの仕事に関与する者には誰にでも「目的は核戦争の脅威を終わらせることにあり、相手に侮辱的に映るような凱旋をすることではない。ソビエト側には常に尊敬の念を示さなければならない」と言って聞かせた。
レーガン大統領がこれほどまで大きな器であったことに私は驚いた。ネオコン連中が評した二流の俳優どころか、彼は非常にまともな紳士ではないか!これらの言葉にはそう思わせる品格が感じられる。
ふたつの核大国間に存在する危険極まりない今日の緊張状態を考えると、レーガン大統領は歴代米大統領の中ではもっとも鋭い洞察力を持った大統領のひとりであったことを示している。そして、それに続くのはトランプ大統領だと言えよう。8月にヘルシンキで行われたトランプ・プーチン会談を受けて、トランプが今後ロシアとの和平を進めるためにどのような具体策を提案するのか、今後の動きを注視して行かなければならない。米国の国内政治は複雑で、非常に分かりにくいが、11月には中間選挙を控えているので、何らかの具体的な動きが見られることだろう。

 
参照:
1Watching America Collapse: By Paul Craig Roberts, Information Clearing House, Aug/24/2018