2019年5月23日木曜日

リークされた化学兵器禁止機関の内部メモによると、同機関が公表したドウーマでの化学兵器攻撃に関する結論は疑わしい


国連の機関である化学兵器禁止機関(OPCW)は化学兵器禁止条約(CWC)に参加している締約国が条約にしたがって化学兵器の開発、製造、貯蔵、使用をしていないことを専門家の立場から監視する役目を担っている。現在、193ヵ国・地域が加盟している。

シリアでは化学兵器攻撃が何回となく繰り返されてきた。反政府ゲリラと彼らを支援する国々は化学兵器を使用したのはシリア政府軍だ、アサド大統領は自国民を殺害したと主張してきた。その一方、シリア政府とその支援国は化学兵器攻撃は反政府ゲリラの仕業であって、シリア政府は何の関係もないと反論してきた。

シリアの現地で取材した何人ものフリーランス・ジャーナリストの報告によると、これらの出来事は反政府派武装ゲリラによる自作自演である。つまり、反政府派を支援する米国の企てであって、シリアに対する空爆を挙行するためのお膳立てである。ソーシャルメディアに投稿された化学兵器攻撃に関する動画は、多くの場合、反政府派を支援する作戦の一環として「ホワイトヘルメット」と呼ばれる団体によって作成され、ソーシャルメディアに投稿されたものだ。それらの動画の中には、化学兵器攻撃が実際に行われた時点よりも前に動画がソーシャルメディアに投稿されてしまったという珍妙な出来事さえもがある。こういった漫画的な出来事も含めて、自作自演の化学兵器攻撃は何回も繰り返されて来た。

シリア内戦は実際には内戦ではない。構造的に言えば、シリア内戦はシリアの原油や天然ガスをただ同然で入手しようと狙っている米国やその同盟国であるフランスならびに湾岸諸国と自国の主権や独立を守ろうとするシリア政府ならびにシリアを支援するロシア、中国およびイランとの間の地政学的な抗争である。

2015年、シリア政府軍は反政府派武装勢力の攻撃に曝されて劣勢を余儀なくされていた。その年の9月、ロシアはシリア政府から軍事支援に関する正式な要請を受け、ロシア空軍をシリアへ送り込んだ。その結果、シリア政府軍は急速に失地の回復を果たし、今や、米国が企てたシリアにおける代理戦争、つまり、シリアのアサド大統領を失脚させること、あるいは、シリアの世論を分断し、リビアのように機能不全に陥れるという筋書きは大失敗に終わった。しかしながら、米軍によるシリア国内での非合法的な駐留は今も続いている。

そのような流れの中で、米英仏がOPCWを本来の理念や行動規範から逸脱させて、シリアで起こった化学兵器攻撃について政治的に偏った報告をさせたとしたらどうなるか?これは国連という組織そのものを無視することに等しい。また、開発途上国に対しては民主主義の重要性を度々説いてきた米英仏にとっては政治的にも、倫理的にも自殺行為に等しい。

201847日にドウーマで起こった化学兵器攻撃に関してはOPCWによる最終報告書が今年の31日に公開された。最近になって、OPCW内部の報告書が新たにリークされた。このリークされた内部報告書にはOPCWが公開した最終報告書の内容とは決定的な相違がある。このことが今大きな批判を招いている。

ここに、「リークされた化学兵器禁止機関の内部メモによると、同機関が公表したドウーマでの化学兵器攻撃に関する結論は疑わしい」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>

OPCWのエンジニアが作成した内部報告書がリークされた。その内容は20184月にシリアで起こった化学兵器攻撃について公表されたOPCWの最終報告書の内容とは異なっており、このことは米英仏がこの国連機関に与えた政治的圧力に疑問を投げかけている。 

20184月、シリア政府軍がドウーマ市をイスラム過激派の手から奪回しつつある中、「ホワイトヘルメット」は塩素ガスとサリンによる化学兵器攻撃が行われ、40人以上の市民が殺害されたと主張した。国連の調査員が現地へ到着するのを待たずに、米英仏はシリア政府の諸々の拠点を空爆し、バシャール・アサド大統領こそが責められるべきだと宣言した。

この化学兵器攻撃に関する最終報告書によると、化学兵器禁止機関(OPCW)の事実関係調査ミッションはサリンを発見することは出来なかったが、「分子状塩素」が充填されたボンベが航空機から投下されたと報告した。同報告書は作成者の名前を公表せず、不特定の外部「専門家」の言葉を引用した。しかしながら、もうひとつ別の報告書が最近現れた。それはOPCW内部のエンジニアが作成したものであって、最終報告書に記載されているこれらの最終結論に挑戦するものであるのだが、この内部報告書は最終報告書に包含されてはいない。



Photo-1

この内部報告書は「シリア、プロパガンダおよびメディアに関する作業グループ」と称される独立した学者や研究者らから成るグループによって公開されたものである。同グループは武装過激派や彼らを支援する国家によって推進されてきたシリア内戦についての公的な見解に強く反論して来た。 「われわれはこの報告書が本物であることを複数の情報源によって確認して貰った」と、同作業部会のピアース・ロビンソン博士がRTに語っている。 

このリークされたエンジニアによる報告書の中でもっとも重要視される事項は攻撃に用いられたとされるガスボンベは人手でその場に置かれたという見解である。これは反政府過激派による犯行を示唆するものであり、シリア政府軍を示唆するものではない。さらには、これは公表されている最終報告書の主張を覆すものでもある。

要約すると、二カ所の現場で観察された事柄は、後に行われた分析の結果と相俟って、これらのふたつのガスボンベは人手によってふたつの場所に置かれたものであって、航空機から投下されたものではない可能性がより高いことを示している。

ロビンソンは次のことも述べている。OPCWはこの内部文書の正当性を否定せず、単に同文書と事実関係調査ミッションによる最終報告書との関連を断ち切ろうとしている。しかしながら、それは答えを提示するよりも、むしろ、もっと多くの疑問を招いている。

OPCWの事実関係調査ミッションの最終報告書には署名がされてはいない。誰の名前も署名されてはいないのだ。これはOPCWの最終報告書としては実に異例である」と、ロビンソンはRTに語った。彼はさらに次のことも指摘している。内部のエンジニアからの報告に代わって、同機関は「得体の知れない、名称が分からない、匿名の諸々の団体」の見解を採用した。同機関の最終結論の背後にはいったい誰が居るのかという深刻な疑惑を残すことになった。



Photo-2

「内部のエンジニアからの報告を公表することを禁止し、それに代わって外部の匿名の者からの報告をOPCWに採用させたパリ、ロンドンおよびワシントンからの政治的圧力とはいったいどのようなものであったのか」を知りたいものだとロビンソンは述べている。

もしも国連の主要な監視機関であるOPCWがこの種の圧力に屈したとすれば、これはドウーマで実際に起こり、依然として完全な調査を必要としているあの残忍な行為に加えて、「思いもよらない程に深刻な問題」だ、と彼はRTに語った。 

RTは約一週間前にOPCWに質問状を送付したが、その後何の回答も受け取ってはいない。同機関はザ・メール・オン・サンデー紙の著名なコラムニストであるピーター・ヒッチンズに対しては回答を送り、こう言った。「われわれは問題の文書を許可も無しに公表したことに関して内部調査を行っている」と述べ、事実関係調査ミッションについてはそれ以上のコメントをしなかった。 

ここに暴露された新事実の重要性は誇張し過ぎることはない。戦争マシーンは今やわれわれの民主国家に対して嘘をつき、最強国間同士の全面戦争になりかねないような自作自演の化学兵器攻撃に手を染めているところを見つかってしまったのである。#Syria

— George Galloway (@georgegalloway) May 13, 2019

金曜日(517日)にロシアの国連特使ヴァシーリー・ネベンジアはモスクワ政府はOPCWが「元来の軌道に戻って来る」ことを望んでいると表明した。

「同機関はかっては技術者の組織であったが、今は極めて政治的な組織になってしまった」と、ネベンジアは言う。「われわれは同機関がかって見せていた姿勢に復帰することを望んでいる。」  



Photo-3

事実関係調査ミッションの最終報告書が3月に公開されたことを受けて、OPCWに派遣されているロシア特使アレクサンダー・シュルギンはRTに次のように述べている。OPCWは厳しい圧力に曝されて、ダマスカス政府が化学兵器攻撃の張本人だとする米国の筋書きに「率直に言って、反論しようとさえもしなかった。」 

「あれは自作自演であった・・・と認めることは米国とその同盟国に対してシリア空爆の正当性を否定することになっただろう」とシュルギンは言った。

この空爆はOPCWの調査チームがドウーマに到着する2日前に行われ、100個以上もの巡航ミサイルを投下した。塵埃が鎮まって、OPCWの調査員が実際に現場へ到着すると、彼らは検査を実施するには「余りにも危険だ」と言って、武装ゲリラが塩素ガスのボンベを貯蔵していた倉庫の検査を拒んだ。

<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。

リークされた内部報告書はいったい何を意味するのかと言うと、OPCWが米英仏の対シリア政策のためにハイジャックされてしまったことを示している。OPCWの高官らは米英仏の政治的圧力に屈して、未知の空港へ強制着陸させられたのだ。そして、彼らはその空港には違和感を覚えないかのような振る舞いをしている。

このハイジャック事件は今も後遺症に悩まされている。引用記事は『同機関はザ・メール・オン・サンデー紙の著名なコラムニストであるピーター・ヒッチンズに対しては回答を送り、こう述べている。「われわれは問題の文書を許可も無しに公表したことに関して内部調査を行っている」と述べ・・・』と伝えている。最悪の場合、OPCWの内部告発者が特定され、解雇されるのかも知れない。

今年の315日、私は「OPCWのシリア報告書は西側の化学兵器攻撃という筋書きを不能にする」と題して投稿したが、あの投稿は著名なジャーナリストが米英仏によるシリア空爆の根拠として使われたドウーマにおける化学兵器攻撃は反政府派によって行われた自作自演であったことをさまざまな角度から検証したものだ。中でも、「化学兵器攻撃でいったい誰が得をするのか」という観点から行われた現状分析は秀逸である。勝利を間もなく手中に収めることができる政府軍側があのような化学兵器攻撃を行うことはあり得ないと断定した。見事な報告であった。

今回ここに引用した記事によると、OPCW内には最終報告書とはまったく異なる内容の報告がすでに存在していたことを示しており、OPCWの高官は英米仏からの政治的圧力に負けて、内部の専門家の報告を反故にして、外部の意見を取り入れた最終報告書を公開したことが明白となった。しかも、誰の署名もないという。これはOPCWの報告書としては異例である。OPCWにとっては非常に破廉恥な状況が一般大衆の眼に曝されることになった。

問題の内部報告書は15ページの文書で、OPCWの技術部門の専門家らしい詳細な内容で、綿密な構成となっている。もっとも重要な点は、引用記事にも報告されているように、「要約すると、二カ所の現場で観察された事柄は、後に行われた分析の結果と相俟って、これらのふたつのガスボンベは人手によってふたつの場所に置かれたものであって、航空機から投下されたものではない可能性がより高いことを示している」という指摘にある。つまり、ガスボンベはその場へ人手で置かれたという調査結果であって、これはOPCW31日に公表した最終報告書とはまったく異なる結論だ。

詳細な情報をお求めの方には「Assessment by the engineering sub-team of the OPCW Fact-Finding Mission investigating the alleged chemical attack in Douma in April 2018」と題された別の文書をお勧めしたい。この文書は引用記事で紹介されている「シリア、プロパガンダおよびメデイアに関する作業グループ」のピアース・ロビンソン博士らが執筆したものであって、読みごたえのある内容である。立派な技術報告書である。

このロビンソン博士らの反論に遭遇して、OPCWは今後どのようにして自分たちの整合性を説明するのであろうか?彼らにはOPCWの名誉を維持するために米英仏からの圧力に抗して、真実を追求しようとする勇気があるのだろうか?それとも、OPCWは内部文書をリークした告発者を罰して、すべてを終わらせてしまうのであろうか?

シリアにおける化学兵器攻撃とOPCWとの関係がどのようなものであるかをたとえ話を用いて対比してみよう。

私の想定はこんな具合だ。あなたや私が住んでいる地方の市では市立中学校や市立高校の生徒たちが麻薬中毒に冒され、その状況は急速に悪化している。子供たちが通っている中学校や高校は効果的な麻薬対策を講じたいものの、警察署のお偉いさんたちからはまともな協力は得られない。彼らは隣の市にある全国規模の暴力団の地方支部からさまざまな脅かしを受けており、麻薬対策はわれわれが思うようには進行しない。こんな状況に遭遇した場合、われわれ父兄に残された策は、多分、草の根的な署名活動を行い、何千人もの署名を携えて市議会に陳情し、親たちの懸念を理解して貰うしかないのではないか。われわれは隣の市の父兄にも呼び掛け、ふたつの市が団結することによってより効果的な行動を展開することができるかも知れない・・・

OPCWのお偉いさんたちは米英仏からの政治的圧力に屈してしまった。この状況はわれわれの市の警察署が暴力団の脅かしを受けて、学校での麻薬対策を思うように進行させ得ない状況とまったく同様であると言えよう。シリアにおける化学兵器攻撃の問題は単なるシリア国内の問題に留まらない。化学兵器に関して警察官役をしているOPCWは国連の機関である。この問題は国連加盟国全体の問題でもある。素人目にさえも一目瞭然だ。

それにもかかわらず、西側の大手メディアは沈黙を守ったままである。

代替メデイアからの情報によって、シリア内戦の現地の様子は詳しく報じられている。それらの報道は大手メディアが喧伝する筋書きとは大きく異なる。たとえば、フリーランス・ジャーナリストのヴァネッサ・ビーリーや記録映画作家のアンドレ・ヴルチェクの報告は秀逸だ。

今回の引用記事に登場したピアース・ロビンソンは、米大統領選で民主党全国委員会のサーバーコンピュータが不正侵入を受けたとして大騒ぎをした際にVIPS (Veteran Intelligence Professionals for Sanity)と称する元諜報部門の専門家で構成されたグループはこれはハッキングではなくて、誰かがフラッシュ・メモリーに直接ダウンロードしたとする内部犯行説を報告したが、あの明快な謎解きを思い起させる説得力を持っている。

大手メディアは扇動的な報道をすることによって読者を引き寄せようとするだけで、真理の追究では代替メディアに完全に後れを取っている。一般社会にとっては不幸なことではあるが、大手メディアが持つ限界は今や誰の眼にも明らかだ。

そして、大手メディアと同じ症状を示す、極めて末世紀的な症状が今回は国連の機関であるOPCWにも発見された。西側世界は、少なくともその一部は、今や、政治的にも、倫理的にも破産してしまったかのように見える。米国がその覇権を維持するためにあの手この手を使う限り、今の悲観的な趨勢はさらに悪化する一方であろう。こう感じるのは私だけであろうか?


参照:

1Leaked OPCW memo casts doubt on watchdog’s Douma ‘chemical attack’ conclusions: By RT, May/18/2019, https://on.rt.com/9unv






2019年5月16日木曜日

アメリカよ、お前はクビだ!

ドミトリー・オルロフの再登場だ。ここに彼の最近の記事がある。「アメリカよ、お前はクビだ!」というドキッとするような表題が興味を引く(注1)。

トランプ大統領がかって「アプレンティス」というテレビ番組で司会役として出演していた頃(2004年~2012年)、番組の参加者の中で落伍者に対しては「君はクビだ!」と宣告した。繰り返して発せられたこのセリフはこの番組の代名詞となった。
トランプ大統領はロシアゲートを通じて、良いにつけ悪いにつけ、世界中から注目されて来た。また、当然ながら米国そのものも然りである。米国への信頼は国際社会で急速に失われ、換言すれば、米国の役割が曖昧になって、同盟国さえも含めて、各国から「君はクビだ!」と言わんばかりの批判を受けている。

このトランプ大統領にまつわるセリフを中心にドミトリー・オルロフが米国の現状を掘り下げようとしている。彼の時評はユーモアと洞察に富んでおり、さまざまな意味で実に興味深い。そして、何と言ってもわれわれ素人にも分かり易いことが素晴らしい。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

 
<引用開始>

Photo-1

ある種の皮肉はそれを素通りしてしまうにはあまりにも惜しい。2016年の米大統領選からの贈り物はトランプ大統領であった。彼が出演していた「アプレンティス」という人気番組では「君はクビだ!」という名セリフによってトランプは有名になった。この名セリフに注目してみよう。とにかく、これは本日のブログには非常に重要なのだ。「トランプ撹乱不全症」(訳注: トランプ撹乱症候群とも称されている)に罹っている連中は賛成しないかも知れないが、それは彼らが何らかの誤解をしているからだ。どんな誤解かと言うと、たとえば、米国は民主国家であるとか、誰が大統領になるのかが重要であるといった類のものだ。米国は民主国家ではないし、誰が大統領になるかは大して重要でもない。現時点までについて言えば、波間に消えて行こうとしている船で演奏をし続ける楽団の指揮者を誰にするべきかという設問と同じ程度の重要さしかない。

私はトランプがホワイトハウス入りする前からこれらの点を指摘して来た。トランプが実際に選出されたのかどうかをあなたがあれこれと考えることとは無関係に、彼は何とかホワイトハウス入りを果たした。これには「君はクビだ!」という彼の痛快なセリフと何らかの関係があったと信じるに足る理由がある。彼に投票する動機は誰かを送り込んで、ワシントンDCやその周辺の地域に巣くっている悪党どもをクビにしたいという熱烈な願望にあったと推測することは実に適切だ。しかし、悲しいかな、彼はそれを実現することはできなかった。お飾りの指導者は自分をその座に据えてくれた政治の長老たちを排除する権限なんて与えられてはいないのである。しかしながら、私はそれはまったくあり得ないと言っている訳ではない。


その代わりに何が起こったのかと言うと、政治の長老たちはトランプに対して「君はクビだ!」と言う理由を探し出すために2年間ものたうちまわって来たが、結局、そのような理由を見つけることはできなかった。こうして、トランプはホワイトハウスに今も居残っている。しかしながら、彼が今も「権力の座に座っている」と言い切るには真の権力の座がどんな匂いを放つのかを熟知している者は苦笑せざるを得ないであろう。トランプは、彼の前任者らがそうであったように、ホワイトハウスにかくまわれた捕虜同然の身に過ぎない。トランプ大統領の弾劾は彼をクビにすることに関しては不成功に終わった訳だが、皮肉なことに、数多くの長老らをクビにするばかりか、多分、法務省の支援を受けて連中を刑務所に送り込むという彼の能力を強化してくれたという意味合いにおいてあの動きは大成功であった。そして、過剰なまでの敵意や悪意ならびに執念深さといった彼独自の性格はこの目標を実現するのにまさに最適であって、面白い見せ場を作り出してくれるだろう。彼の数多くの政敵や彼を中傷することにうつつを抜かしてきた連中は責任を問われることもなしに彼を厳しく非難していた日々を懐かしく思い出すことになるかも知れない。

トランプを阻止するという動きは大統領選の大分前から始まっていた。オバマ前大統領やクリントン夫妻は互いに協力して、トランプの粗探しのために連邦政府の人員を使った。具体的に言うと「ロシアとの共謀」を示す証拠を見つけようとしたのだが、彼らは何も見出すことはできなかった。彼らは(フェースブックのクリックベイトの形で)何らかの「ロシアの介入」を発見しようとしたが、彼らが掘り出した証拠は裁判所へ提示するにはあまりにもお粗末であった。残念なことには、彼らはウクライナの共謀や介入には目もくれなかった。イスラエルの共謀や介入についても目もくれなかったし、サウジの共謀や介入についても同様であった。仮にそうしていたならば、たくさんの証拠を見つけ出すことができたであろう。それらの証拠はヒラリー・クリントンを選挙運動から締め出すばかりではなく、彼女を刑務所へ送り込むには十分であった筈だ。それはウクライナの政治的介入を調査するための建設的、かつ、有益な予行演習となったに違いないのだが、以前私が説明をしたように、米国の仕事のやり方はそれとはまったく逆方向に向かっていた。彼らをロシアに向かわせたのである。

何れにしても、トランプに対して何らかの証拠を発見することには完璧に失敗したミュラー特別検察官のチームは、結局、彼に藁をも掴む思いをさせ、彼が掴んだ一本の藁は18 U.S.C. § 1512(c)(2)に基づいてトランプを非難するという実に曖昧な可能性だけであった。これは次のような理由で誰かが有罪となることを示すものであった。つまり、これは「・・・公的な訴訟手続きを妨害し、それに影響を与え、あるいは、それを邪魔する者、もしくは、そうすることを試みる者」のことである。明らかに、自分が行っている調査は「公的な訴訟手続き」であると考えたミュラーの頭の中では一本の神経が音をたてて切れてしまった。この専門用語を調べてみると、通常、それは裁判所の中で行われ、一人またはそれ以上の裁判官が担当し、そのような訴訟手続きを行うには犯罪が起こったことを示す証拠を提出することが必要となる。もしも犯罪が無かったならば、訴訟手続きはあり得ない。ましてや、それを阻害し、それに悪影響を与え、それを邪魔する行為なんて何ら存在し得ないのである。

そこには結果として一種の官僚的な死の舞踏が起こった。普通は、そのような問題については司法長官が指針を与え、AG・ジェフ・セッションズはミュラーに対して18 U.S.C. § 1512(c)(2) は裁判所での訴訟手続きに関してのみ適用せよと指示する権限を有しており、それ以外はあり得なかった筈だ。しかし、セッションズは、不運にも、和やかでずんぐりしたロシア大使のセルゲイ・キシリャクとたまにお喋りをしていた。この些細なお喋りのせいで、 - ご存知のように、ロシア人と同じ空気を吸っただけであるのだが、ロシア人は政治的にはそれほどに危険な存在なのだ - セッションズは自分の貴重な体液を汚染してしまった。それが故に、彼はミュラーの調査からは身を引くことになった。トランプの司法チームは前に司法長官を務めたウィリアム・バーに接近した。バーはこの問題を明確にするメモをしたため、それを副司法長官のロッド・ローゼンシュタインに送付した。ローゼンシュタインはセッションズが辞任した後の司法省内では二番手の高官であり、彼はそのメモを読み、それを理解し、それに基づいて行動を起し、ミュラーの調査を中断させるべきであった。しかしながら、彼はなぜかそうしなかった。

この官僚的な死の舞踏の結末は次のように展開した。中間選挙後、トランプはジェフ・セッションズに「君はクビだ!」と言った。それから、ウィリアム・バー司法長官は容赦できないほどに鈍感なロッド・ローゼンシュタインとロバート・ミュラーに対して「君はクビだ!」と言った。また、バー司法長官は職員の誤用や検事として許せない不正行為に関する調査においてはあらゆる手段を尽くすと明確に述べている。あなたには注目すべき重要なことなんて何もないとするならば、これは眺めているだけでも面白いことであろう。「君はクビだ!」というセリフがゴム製の手りゅう弾のようにワシントンのホール内を長い間跳ね回るのではないかと推察している。しかしながら、もっともっと重要で、注目しなければならない事柄がある。

世界中で今たくさんのことが同時に起こっている。全世界が急速に再編しようとしている。世界はポスト資本主義、あるいは、ポスト産業社会の新たな秩序を模索しようとしているが、前回の革命では豊富にあった資源(たとえば、蒸気機関時代の石炭や現代における原油)は、端的に言って、もはや存在しない。残されている選択肢のすべては今までの秩序を最適化し、それを強化し、それを再編すること、あるいは、もっとも危険でもっとも機能不全な物事を排除することでしかない。この目標に関しては西側のヨーロッパ諸国は米国やEUに譲り渡した主権を取り戻そうとしており、ユーラシア諸国は中国とロシアを中心に集合し、経済と安全保障の分野で強大な同盟関係を形成しようとしている。通商や金融の流れを米国から他所に振り替えることは並大抵のプロセスではないことから、両者とも十分な時間をかけなければならない。

世界各国の中央銀行は準備金としての米ドルを吐き出して、金を買い込もうとしている。4月現在、金はリスクが無い金融資産であると見なされている。その結果、多くの人たちは金は値上がりすると予測しているが、その予測は勘違いに根ざしたものでしかない。沈みつつある船にとっては金は灯台であり、まさに不換通貨の灯台であると考えてみよう。その船に乗船している人たちは辺りを見回して、この灯台は値上がりするだろうと考えるのだろうが、それは単に視覚的な勘違いでしかない。不換通貨の購買力は間違いなく低下する(ある通貨は他の通貨に比べて大幅に低下するだろう)。金の購買力は増大するように見えるが、これもまた勘違いでしかない。つまり、市場や固定資産、特に、物理的な工場の生産設備の崩壊を背景にして金は値上がりするように思えることだろう。しかしながら、結局のところ、金の購買力もまた低下するだろう。なぜならば、如何なる金融資産を取り上げてみても、将来の購買力はたったひとつの要件によって決定されてしまうからだ。それはエネルギー、特に、化石燃料だ。とどのつまり、それは原油だ。家畜用の飼料と動物の筋力に全面的に頼る農業経済を除けば、経済はエネルギー無しには動かない。

金にまつわる出来事の中で特に興味深い点は米国に蓄えられていた筈の金が実際には何処にも見当たらないことだ。ニクソンが「金の窓」を閉じて、米ドルを金と交換する可能性が失われてから最近に至るまで、米ドルは金融的な浮上効果によって世界中で準備通貨としての地位を維持し続けることができたが、実際には、あれは手品だった。米国の最大級の債権者に秘密裏に金が売られていたのである。さまざまな国が米国へ預託した金を取り戻そうとした。特に、ドイツ(訳注:1350トン、あるいは、1236トン。どの報告書を取り上げるかによってトン数が異なる。ドイツへの返還は2013年に開始され、20178月に完了)が金を取り戻そうとした時、その要請は拒絶され、ようやく話が通じて返還されて来た金はドイツ側が預託した金ではなかった。また、非常に長い時間がかかった。米国の金に対する需要はあり得そうもない強奪さえももたらした。つまり、イラク(訳注:シリアからも含めて、合計で40トン)、リビア(訳注:144トン)およびウクライナ(訳注:33トン)から準備通貨として蓄えられていた金を盗んだのである。こうして、自国通貨を支えるために米国自身が蓄えの金を使う時が来た時には、米国は戸棚が空っぽであることに気付くであろう。

金はますます重要になっているが、エネルギーはもっと重要であり、今後もより重要であり続けるだろう。何年間か背景に押しやられてはいたが、エネルギー供給に関する課題はふたたび正面に返り咲き、今や舞台の中央に位置している。ピークオイルの議論は、結局のところ、それが消えうせた訳ではなく、シェールオイルの開発を続ける間に膨大な量の退職年金基金を使い尽くす米国のお陰で何年間か先延べされていただけである。しかし、今や、もっとも利益のあがりそうな地域は開発し尽くされ、すさまじい勢いで継続されている掘削によって利益は相殺されつつある。この新しい状況はシェールオイルの開発業界が今まで恒常的に晒されて来た惨めな財務状況に新たな不安材料を付け加えようとしている。その一方で、ロシアは天然ガスの液化プラントをいくつか立ち上げ、中国への新たな原油供給用パイプラインやトルコおよびドイツへの、さらには、その先のEU各国へ向けて天然ガスを供給するパイプラインが建設されつつある。後者のパイプラインはウクライナを避けており、このことはウクライナの地政学的価値をゼロにしかねない。

ベネズエラの油田を自分のコントロール下に収めようとする米国の必死の試みはもっとも恥ずべき形で跳ね返ってきた。ベネズエラでは、最近の展開が非常に重要な課題を浮き彫りにした。つまり、仮に米国がカラー革命を打ち出したとしても、誰もそれに賛同しなかったとしたら?私が「崩壊の5段階」(原題:The Five Stages of Collapseと題した私の書籍の中で数年前に予測したように、カラー革命の組織は徐々にその魅力を失おうとしている。何人ものワシントンの外交経験者があらゆる種類の脅かしを唱導したとは言え、ベネズエラに対する米国の軍事介入なんて考えられないことだ。ベネズエラが所有するロシア製のS-300対空防御システムが米国の軍用機に対して飛行禁止区域を効果的に形成しているからだ。その一方、米国はベネズエラに対して自分たちが課した経済制裁によってベネズエラ産原油を排除してしまったことから、今やロシア産原油を輸入せざるを得なくなった。(それほど長くは続かないだろうけれども、当面、米国はフラッキングから得られる低品質の軽質原油を産出するが、皮肉なことには、重質原油を輸入し、それを混入しない限り、ジーゼル油やその他の留分を生産するには用を成さない。)

ところで、ロシアとベラルーシの両国はロシアからヨーロッパへ輸出される原油に関して愛人同士間のやかましい言い争いを演じているが、その原油輸出の多くはベラルーシのパイプラインを経由する。ロシアとベラルーシは殆どの点において互いをはっきりと区別することが可能ではなく、彼らが口論をしている際には傍観者は彼らの無礼な言語は無視し、その代わりに、空中を飛び交う壷や刃物類に注意すべきであろう。この内輪同士の喧嘩の結末はベラルーシはロシア産原油から精製された石油製品はウクライナには供給しないというものだ。他にも奇妙な展開があった。それはロシア産原油はベラルーシにパイプ輸送され、そこからさらにEUへ輸送されるのだが、不思議なことに輸送された原油に汚染が発見され、その状況が解決されるまで原油輸送が中断された。この出来事はヨーロッパに大きな危機感をもたらした。不足量を補うために、米国は自国用の戦略備蓄原油の提供を申し出たが、さらにもうひとつの摩訶不思議な展開が表面化して来た。この原油の一部が汚染されていることが判明したのである。さらに不正もあった。米国はイランに対して一方的な経済制裁を課し、イラン原油を輸入する者は誰であっても処罰するという脅しをかけた。これはまた別の重要な議論を引き起こした。つまり、米国は世界中の国々に対して経済制裁を課しているが、多くの者があくびをしている。この状況はいったい何だろうか? 

タールサンドやシェールオイル、あるいは、産業規模での太陽光発電や風力発電および電気自動車に見られるような経済的には破滅的で一般論的にも無意味な構想は、エネルギーに関して各国を持てる国と持たざる国とに分断し、持たざる国は急速に破産してしまうであろう。空想的で概念的でしかない数多くの構想(たとえば、核融合や宇宙鏡、等)は別として、すでに存在している技術に限って言えば、産業文明を維持する手法はひとつしかない。それはウラン235(希少資源)や高速中性子炉を使ってプルトニウム239(何千年も使える)から取り出される核エネルギーだ。もしもこの選択肢は好きになれないと言うならば、他の選択肢は農業に専念し、人口密度を極端に減らし、大小を問わず都市における生活なんて諦めることしかない。

もしもこの選択肢があなたのお好みならば、核エネルギー技術(VVERシリーズ軽水炉、BNシリーズ高速中性子増殖炉および閉回路核燃料技術、等)を提供する世界でも指折りの業者の門を叩く以外には有効な選択肢はほとんどない。偶然にも、この業者はロシアの国営企業であるロスアトムだ。同社は世界の核エネルギー市場の三分の一以上を押さえ、今後の遠い将来も含めて建設予定となっている国際原子炉プロジェクトの80パーセントを網羅する。米国は過去何十年にもわたって新プロジェクトを完成することはできなかったし、ヨーロッパはどうにかこうにかたったひとつの新プロジェクトを(中国で)稼動させただけだ。その一方、日本は福島原発の炉心融解事故ならびに金銭的には大失敗となった東芝によるウェスチングハウス社の買収劇以降、核エネルギー計画は無秩序状態に陥っている。最後に残る競争相手は韓国と中国だ。重ねて言うが、どういう理由であろうとも、核エネルギーは好きにはなれないという人は、ある程度の牧草地を買い入れて、そこでロバを飼うことをお勧めしたい。

米国や英語圏あるいはEUにお住まいで、マスメディアだけにしか接してはいない人たちにとってはここまでの話は衝撃的であろうかと思う。これはたしかに衝撃的であるかも知れないが、どう見てもこれはニュースではない。これらの展開はどれも特に新しいものではなく、予想もされなかったという訳ではない。ワシントンではこれらの事柄はすべてが強く否定され、このことは非現実性が大爆発を起こす爆心地となったが、一般的にいえば西側のメディアでは驚愕を与えるほどの出来事ではなかった。また、何らかの助けになるものでもない。これらの事柄を自分で探し当てた時、あなたは屋根の上からそれに関して大声で喋りたいという衝動に駆られたかも知れない。私に言わせると、そんなことはお薦めしない。否定し続ける人たちに対して行うべき妥当な策は、彼らがあなたと四つに組みたいと願っているゲームでは時間切れに導くためにも彼らと調子を合わせることだ。それから、彼らに向かって丁重にサヨナラと言う。たしかに、これはわれわれが常日頃目にして来たことだ。米政府の高官を相手に具体的に交渉をしたいという人はいないだろうが、彼らはどっちみちそうするだろう。なぜならば、危機的な場面で交渉を行う連中は誰もが知っているように、話を継続することこそがもっとも重要なのだ。単純に言って、たとえ時間切れとなるにせよ、非常に重要である。彼らが話をしている間に人質(それがウ
ール街やペンタゴンでの人質、あるいは、米財務省証券や連邦準備金に絡んだ人質であろうとも)は密かに救出されるのだ(訳注:この辺の話の展開はハリウッド映画そのものだ)。米国にとっては時間が過ぎようとしている。時間切れとなった暁には、もっとも凄い皮肉として、世界中が米国に向かって「お前はクビだ!」と宣告することだろう。
<引用終了>

 
これで全文の仮訳が終了した。
「君はクビだ!」というセリフで有名なトランプ大統領を巡って展開されるこの記事は実に興味深い。著者特有の底の深い知識や見解、ならびに、彼独特の説得力のある話の進め方はこの記事を読む読者をどんどんと引っ張ってくれる。

福島原発での炉心融解事故以降、私は個人的には核エネルギーの安全性に信頼を寄せる者ではないけれども、著者が述べているVVERシリーズ軽水炉、BNシリーズ高速中性子増殖炉および閉回路核燃料技術、等については詳細な情報を漁ってみる必要がありそうだ。
しかしながら、核エネルギーに関して未だに適切な答えが見つかってはいない最大の課題は使用済み核燃料の取り扱いである。広大な土地を有する米国やロシアとは異なり、国土が狭い日本は何処をとっても人口密度が高く、地震の頻度が桁違いに高く、雨量も多い環境にあることから、放射性廃棄物を金属製カニスターに封入して、地層処分を実施し、何千年も、あるいは、何万年にもわたってカニスターの腐食の心配もなく、安定して地下に保管できるような技術や立地が存在するとはとても思えない。日本にはそういった安全性を宣言できる専門家が存在するのだろうか?恐らく、誰も宣言はできないであろう。

参考までに具体的な議論をご紹介しておこう。地層が安定していると言われている北欧での話である。スウェーデンの国土環境裁判所は地層処分の手法について疑問を呈し、その意見書を公開した(注2)。これは昨年の123日のことだ。その骨子は無酸素水に曝される銅製カニスターの腐食の挙動には不確実性があり、関連企業はカニスターの有効性を実証しなければならないという指摘だ。こうして、スウェーデンでは使用済み核燃料の地層処分に待ったがかけられている。

話を本論に戻そう。
ール街やペンタゴンでの人質とはいったい何のことを言っているのだろうか?私が思うには、ウール街の人質とは、たとえば、ギリシャのことではないか。国全体が借金で首が回らなくなって、いや、もっと正確に言えば首が回らなくさせられて、ギリシャはIMFの言いなりに国内経済の引き締め策を採用し、公共インフラを民営化せざるを得なくなった。こういう国はまさにウール街に居並ぶ大銀行の人質であると言える。次に、ペンタゴンの人質とは韓国とか日本のことではないか。韓国は北朝鮮の核実験やミサイル発射実験に伴う脅威が最高潮に高まった時、米国製のTHAADミサイル迎撃システムを調達することにした。識者の指摘によると、このTHAADミサイル迎撃システムは必ずしも北朝鮮の脅威に対抗するものではなく、むしろ、中国を意識したものであると言う。韓国は米国の軍産複合体によって手玉に取られた格好である。そして、紆余曲折を経ながらも朝鮮半島は今や南北間の和平へと進んでいる。いったい、あの騒ぎは何だったのだろうか?そして、日本も高額な軍需品を大量に購入させられ、その挙句に最新のF-35ステルス戦闘機が故障して海へ墜落、欠陥機としての現状が国民に広く知られることになった。それでもなお、自衛隊幹部はF-35戦闘機の購入計画に変更はないと言う。また、大量に米財務省証券を購入してきた日本は米財務省証券に絡む人質であるとも言えよう。本日の引用記事によると、ドイツは連邦準備金に絡んだ人質であったと言える。米国に預託した金塊を戻して貰ったものの、預託した金塊とはまったく別物の金塊が戻ってきたという。

最後は「アメリカよ、お前はクビだ!」と、この記事はユーモアを交えて締めくくられている。しかしながら、この記事のメッセージの内容は実に深刻である。特に、日頃大手メディアにしか接していない一般大衆にとってはこの記事は衝撃的であろう。歴史を振り返ってみると、大英帝国がその覇権の座から転がり落ちた時大英帝国の政治家や一般庶民がそれに気付いたのは何年も経ってからのことであったとある歴史家が指摘している。今、米国ではそれとまったく同じ過程が進行しようとしているようだ。

 
参照:
1America, You Are Fired!: By CLUB ORLOV, May/07/2019, cluborlov.blogspot.com/2019/05/america-you-are-fired.html

2: The Swedish Environmental Court’s no to the final repository for spent nuclear fuel – a victory for the environmental movement and the science (23 January 2018) → Summary of the court's decision (translation), 180123 >> (MKG's unofficial translation into English 

 

 

 

 

2019年5月10日金曜日

2015年のジョン・ポデスタ宛電子メールがトランプをプーチンやロシアに結びつける策を提案 - これがロシアゲートの発端

ロバート・ミュラー特別検察官は2年間もの年月をかけてロシアゲートを詳細に吟味したが、彼が最近提出した報告書によると、2016年の米大統領選挙を巡ってクリントン大統領候補を退けるためにトランプ候補がロシアまたはプーチンと共に陰謀を図ったとする主張を支える証拠はついに何も見つからなかった。

しかしながら、これですべてが解決し、選挙戦でトランプが公約した対ロ関係の改善が一気に動き出すのかと言うと、そのような気配はさらさら感じられない。

クリントン候補の陣営や民主党ならびに大手メディアがこのロシアゲートにうつつを抜かすことになった発端はいったい何処にあったのだろうか?
 
ここに、「2015年のジョン・ポデスタ宛電子メールがトランプをプーチンやロシアに結びつける策を提案」と題する記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

 
<引用開始>

左翼系のコメディアンであるジミー・ドアーはヤングタークス・ネットワークで「挑戦的な進歩派」という番組のホスト役を務めている。
TGPThe Gateway Pundit)が日曜日に報じたように、クリントンとポデスタによるトランプ陰謀説のそもそもの発端に関しては、公知の事実や文書に基づいてジミー・ドアーが暴いてくれた。
 

Photo-1  

 
Photo-2

もちろん、トランプとロシアとの間には何の陰謀も無かった。そもそもロシアはトランプの選挙運動においては最も遠くに位置する存在であった。しかし、ジミー・ドアーが説明しているように、ヒラリー・クリントンの最大級の弱点は米国のウラニウムの五分の一を数百万ドルでロシア人に売却し、プーチンからはビル・クリントンの演説料として50万ドルを受け取ったことにある。

こうして、ジョン・ポデスタはトランプ候補がロシアと共謀しているとしてトランプ像を描く大嘘を広めようと画策した。

これらはすべてがクリントン陣営の内部から始まったことである。

201512月(選挙日の11ヶ月前)、この計画は「ドナルド・トランプを葬る」と名付けられ、彼らはトランプをウラジミール・プーチンと結び付けた。

この構想においてはジョン・ポデスタが主役であった。

焦点となる電子メールはウィキリークスによってリークされ、ジョン・ポデスタとヒラリー陣営の内部が画策した「トランプを葬る」計画が白日の下に晒された。

 
Photo-3

2016年の大統領選でヒラリー・クリントンはドナルド・トランプに劇的な負けを喫したが、以下はそのことに関して出版された「Shattered」と題する書籍からの引用だ。

敗戦を喫した後、ヒラリー陣営は直ちに、24時間以内に、ドナルド・トランプ新大統領を罠に陥れる策を講じた。彼らはすでに自分たちの議論の中心テーマとしてロシア人によるコンピュータへの不正侵入を推し進めていた。そして、連中は自分たちの同志であるディープステーツのFBIや法務省が組織ぐるみでトランプの選挙運動の幹部についてスパイ行為を行っていることを承知していた。

 
Photo-4

ここにビデオがある。
これはジミー・ドアーが行った極めて立派な調査報道だ。

最新情報: ポデスタに送付された電子メールの内容に次いで注目すべき点はbrentbbi@webtv.net というメール発信者の名前である。大雑把な調査の結果によると、これはハフィントンポストの寄稿者であるBrent Budowskyからの電子メールだ。彼は民主党の政治家のためにも働いていたことがあり、今は「インテリジェンスサミット」の国際顧問団のメンバーでもある。この電子メールはロシアとの陰謀という大嘘によってトランプとその陣営を罠に陥れようとしてごく初期に交わされた議論の一部であると推測される。


原典: The Gateway Pundit

 <引用終了>

 
これで全文の仮訳が終了した。

候補者が選挙運動を行う際には専門家からさまざまなインプットが寄せられる。この引用記事が紹介している電子メールはまさにそのような専門家から寄せられた助言のひとつである。引用記事のPhoto-3には問題の電子メールが示され、「20151221日がポデスタがロシア陰謀説を開始した日だ」との朱書きが添えられている。
 
♘♘♘

それでは、ここで、ブレント・ブドウスキーが20151221日にヒラリーの選対委員長であるジョン・ポデスタに送信した電子メールの詳細を別の情報から確認しておこう。ウィキリークスは「Re: HRC, Obama and ISIS」と題された電子メールの全文を公開している(注2)。このメールはbrentbbi@webtv.netからjohn.podesta@gmail.com 宛てに20151221日の1209分に送信されたものであることがはっきりと示されている。ところで、HRCとはヒラリー・クリントンのことだ。このメールに先立って、ジョン・ポデスタから同日の9:00amにコンサルタント役のブレント・ブドウスキー宛に電子メールが送付された。これはそれに対する返信である。二人の間ではヒラリー・クリントンの演説の内容に関してあれこれと戦術が議論されている。「最良のアプローチはトランプがプーチンと仲良くしていることを突いて、彼を葬り去ることだ。だが、プーチンのシリア政策に賭けてあまり深入りはしないように」との助言があった。これが発端である。

しかしながら、最大の問題はこの助言が、世界中が目撃したように、米政界で一人歩きを開始し、2年以上も大手メディアにもてはやされ、米政治史でも稀に見る政治的分断を招いたことだ。

この助言そのものは米政界では悪意があったものとは必ずしも解されないのかも知れないが、大統領選というお祭り騒ぎの中で大手メディアという強力なプロパガンダマシーンがスロットルを全開にして疾走を始めた時、良心とか節度、モラルあるいは伝統的なジャーナリズムの使命はそれを引き止めるにはあまりにも非力であった。プロパガンダマシーンの投入は2003年にイラクへの武力侵攻を行った際にも派手に行われた。今回はその再演であるが、二回も続けて大成功を収めたディープステーツは今ほくそ笑んでいるに違いない。

しかしながら、われわれ一般大衆にとっては悪夢の再来である。決まったように真実が隠蔽されるからだ。他にも、軌を同一にする出来事としては、ウクライナ上空でのマレーシア航空MH-17便の撃墜事件や英国でのスクリッパル父娘殺害未遂事件、等があり、これらを忘れてはならない。

 

参照:

12015 Email to John Podesta Reveals Plot To ‘Slaughter Trump’ by Linking Him to Putin and Russia: By Jim Hoft, RUSSIA INSIDER, Apr/24/2019

2Re: HRC, Obama and ISIS: By Wikileaks, WikiLeaks - The Podesta Emails

 

 

 

 

2019年5月6日月曜日

米空母のコストは50億ドルもする。しかし、コストが4千万ドルでしかないロシア空軍機によって撃沈されてしまうかも

49日掲載の「芳ちゃんのブログ: 米覇権の衰退と日本の選択」と題した投稿では米国の覇権構造が今大きく揺らいでいることをお伝えした。あの投稿では米国内の公的な報告書に関しても詳述した。

米議会の諮問委員会と米政府の会計検査院が米軍の軍事的優位性の低下は今や大きな脅威であることを報告したという事実があるのだが、ディープステーツの忠実な僕である米国の大手メディアは自分たちに都合の悪いこれらふたつの報告書を一般大衆に積極的に伝えようとはしなかった。メディアのこのような行動はこれらの報告書が伝えようとした内容がいかに深刻であるかを如実に物語っていると言えよう。


米ロの軍事面における非対称性は知れば知る程不思議である。ここに「米空母のコストは50億ドルもする。しかし、コストが4千万ドルでしかないロシア空軍機によって撃沈されてしまうかも」と題された記事がある(注1)。


一部の軍事分野におけるロシアの軍事技術はかって米国が誇っていた技術的優位性を越してしまったと言われている。特に、最近はこの種の見方が急増している。


ロシアの技術革新はどのような具体的な内容あるいは背景を持っているのであろうか?素人であるわれわれにはなかなかピンと来ない。私の考えでは、多くの理由のひとつとして、ロシア国内の低コストの経済構造が非常に重要だと思う。開発プロジェクトを低コストで推進することが可能であるからこそ、ロシアでは個々のプロジェクトを計画通りに推進することが可能となる。


米国ではどうか?ペンタゴンでは予算が具体的にどのように使われたのかについて説明することができない状況が慢性化している。1998年から 2015年までの使途不明金は21兆ドルに達したと言われている(注2)。1ドルを110円で換算すると、これは2310兆円に相当する。日本の国家予算は一般会計で約100兆円、特別会計で200兆円、合計で300兆円だ。ペンタゴンでは日本の国家予算の78年分に相当する金額が使途不明。通常、民間企業では毎年会計監査が実施され、企業の金の使い道が詳細に追跡され、使途不明金なんて出て来ることはない。しかし、最悪の場合は粉飾決算となり、新聞を賑わすことになる。ペンタゴンでは誰が何のために誰に支払ったのかを説明することができないという。これがペンタゴンの現実である。


さまざまな説明があるのだろうが、これはペンタゴンの組織全体による詐欺行為であると私は言いたい。歴史上でもっとも巨大な詐欺行為だ。個々の調達案件ごとに賄賂や着服がたくさんあるのではないか。大手の軍需企業から末端の部品供給企業に至るまで利益の確保は第一の目標である。利益を得ること自体は悪いことではないが、そこには節度が必要だ。こうして、ペンタゴンが調達する装備品はその性能とは無関係に、必然的に、非常に高価なものとなる。そればかりではなく、時間もかかる。


本日はこの記事(注1)を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。



<引用開始>

NATOが非常に恐れているロシアのツポレフTu-22M3バックファイアーには新たな改造が施され、Kh-32と呼ばれる長距離超音速ミサイルが追加装備される。この改造は、かっての冷戦時代にはバックファイアーがそうであったように、北大西洋全域で連合国側の目標を攻撃することを可能としてくれる。この爆撃機と新型ミサイルは、この10月、ロシア空軍に引き渡される予定だ。



Photo-1: Tu-22爆撃機は実際にはもっと近代的なSu-34に順次置き換えられるが、一部は温存され、最新モデルに改造される。この爆撃機は艦船の攻撃には欠かせない。

「現行の計画によると、最新式のKh-32長距離クルーズミサイルを搭載した最初のTu-22M3Mは、今年の10月、長距離飛行のために実戦配備される」[注: このテキストは2018年のもの]、とロシア防衛産業のある筋がス・ニュースエージェンシーに語ってくれた。



Photo-2: 赤色の部分がKh-32

冷戦時代の申し子であるラド—ガKh-22(またはAS-4キッチン)が強力なKh-32として近代的に改造され、それらが配備されるということはTu-22M3に素晴らしい攻撃力をもたらすことを意味する。つまり、艦船だけが対象ではなく、ヨーロッパのあらゆる戦略的攻撃目標を爆撃することが可能となるのだ。強力な破壊力を持つKh-22は元来米空母を破壊するために設計されたものであるが、新型のKh-32は、相互睨み合い距離の範囲内に点在する橋梁や軍事基地、発電所、等の大型インフラを含めて、非常に広範な軍事目標を攻撃できるように設計されている。

ロシア人はこのKh-32を長距離超音速クルーズミサイルと称しているが、このミサイルは弾道ミサイル特有のいくつもの特性も備えている。液体燃料で駆動されるロケットが装備され、本ミサイルは13万フィートの高度に達し、その後攻撃目標に向かって降下する。ロシアの情報筋によると、Kh-32 はマッハ5で飛行し、その到達距離は1000キロ、約600マイルである。このミサイルは慣性誘導とグロナスの組み合わせ、ならびに、能動型レーダーによって誘導される。


当面、ロシアは長年配備されてきたTu-22M3に改造を施す。ロシアは現存のTu-22M3バックファイアーの中から2030機を選び、Tu-22M3Mに改造する考えだ。本改造にはアフターバーナーの定格推力が5万ポンド(約23トン)の新規に製造されるクズネツフ・ターボファンが含まれ、全使用期間をカバーする。さらには、改造爆撃機にはツポレフTu-160M2ブラックジャックに用いられているものと同様の新型航空電子機器が搭載され、より広範な武器・装置が装備される。



Photo-3: 3個のミサイルを搭載することが可能

Tu-22M3は遅かれ早かれ実戦配備からは排除される公算が高い。なぜかと言うと、ロシアはもっと性能が高いTu-160M2戦略爆撃機の製造を再開するからだ。50機を配備することによって、バックファイアーに比較して、地上の戦略的な目標に対しては遥かに優れた長距離爆撃能力が実現されよう。さらには、最新鋭の航空電子機器やスタンドオフ兵器を搭載したれ物のスホイSu-34の導入によって、このフルバックはヨーロッパの攻撃目標を容易に爆撃することが可能だ。こうして、バックファイアーの役目は相対的に狭い領域となる。このことはなぜ現行の航空隊の半分だけを近代化するのかについての説明となろう。

艦船を長距離爆撃するという目標、つまり、上記に説明した狭い領域に関して言えば、Tu-22M3よりも素晴らしいプラットフォームがいくつかある。


冷戦の最中、バックファイアーとそれに搭載されたミサイルは米海軍の悩みの種であった。ソ連のTu-22M3航空編隊を迎え撃つために米海軍は「外部航空戦闘」というドクトリンを編み出した。これはイージス巡洋艦と駆逐艦、ならびに、グラマンF-14トムキャットとそれに搭載されるフェニックスミサイルを併用するという作戦だ。


ロシアのTu-22M3の航空編隊はソ連がかって所有していた空軍力のほんの一部分にしか過ぎないが、近代化された武器やセンサーを用いており、今日のバックファイアーはその規模が小さいとは言え、大きな脅威である。



Photo-4

米海軍はもはやトムキャットを使用してはいないことから事態はさらに悪化し、対空仰撃能力を劣化させている。そうした現状から、ロシアのそこそこの規模の対艦攻撃能力であってさえも、優れた速度と操縦性を有するKh-32ミサイルは米空母攻撃軍団にとっては本物の危険をもたらすであろう。

米海軍はボーイングF/A-18E/Fならびにイージス巡洋艦や駆逐艦を使って、近代化されたバックファイアーやKh-32ミサイルから空母を防護する能力は持っている。しかしながら、スーパーホーネットの速度がもの足りないことを考慮すると、バックファイアーがミサイルを発射する前にバックファイアーを仰撃するというシナリオに頼り切ることはできそうにない。


しかしながら、AIM-120Dアムラムや艦艇発射型のSM-6は優れたミサイルであって、Kh-32が戦場に現れてもKh-32に対抗するには十分であろう。 [ミサイルが群れを成して殺到しない限り・・・。] しかし、米軍にとっては問題はバックファイアーだけではない。中国は太平洋でロシアと同様な攻撃能力を確立している。最終的には、米海軍は2030年代までには空母を防護することが可能な戦闘機の開発を行う必要があろう。


過去の四半世紀の間眠っていた爆撃機の脅威が今戻って来たのである。


出典: Checkpoint Asia

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

元来は米空母を破壊するために設計されたミサイルが近代化され、攻撃目標としては空母だけではなく、地上のインフラをも破壊できるよう改造され、この新型ミサイル(Kh-32)は新型バックファイアー爆撃機に搭載されるという。米海軍はこのロシアの爆撃能力には対抗できないかも知れない。引用記事の著者は「バックファイアーがミサイルを発射する前にバックファイアーを仰撃するというシナリオに頼り切ることはできそうにない」と指摘している。バックファイアーを仰撃できなければ、50億ドルものコストを投入した米空母はロシア空軍の餌食となる。


米空軍が採用する最新式の戦闘機はF-35である。これはさまざまな型式の戦闘機を需要に応じて設計・製造し、顧客のニーズに合わせるという野心的な設計思想の下で開発が行われたものだ。地上基地を使う戦闘機(F-35A)、短距離離着陸・垂直着陸型機(F-35B)、艦載型(F-35C)とさまざまである。1992年から3000憶ドルもかけて開発が進められて来たが、まだ完成とは言えず、総開発コストは最終的に1兆ドルを超すかも知れないと言う。しかしながら、すでに配備された戦闘機は技術的な問題から全機が地上に待機させられ、検査を待つといった状況に何回も見舞われているという。検査で不具合が確認されると修理をしなければならないが、部品の供給が思うようにはいかない。


こうして、F-35戦闘機を運用する米空軍とか海軍では同戦闘機の稼働率は驚くほど低い。その状況は327日に掲載した「第三次世界大戦のシミュレーションでは米国が敗退 - ランド研究所」と題する投稿の後半で米政府の会計検査院が実施した調査の結果を紹介済みだ。ご興味のある方は327日の投稿をご覧願いたい。


このような現状を見ると、ペンタゴンはロシアや中国に対して先制核攻撃をするといった威勢のいい掛け声をかける割には実態がまったく伴わないのではないかという懸念が生じて来る。素人目にさえもギャップが余りにも大きい。


参照:

1A Carrier Costs 5 Billion Dollars. It Could Be Taken Out by This 40 Million Dollar Russian Plane: By The National Interest, Apr/25/2019; RUSSIA INSIDER, Apr/27/2019

2The Pentagon Can’t Account for 21 Trillion Dollars (That's Not a Typo): By Lee Camp, May/14/2018