2018年9月20日木曜日

MH17便を撃墜したミサイルの製造番号によると、同ミサイルは1986年に製造され、ウクライナ軍の所有であったことが判明


マレーシア航空のMH17便を撃墜した「ブク」ミサイルはロシア軍が発射したものであるとオランダ当局はすでに結論付けている。ところが、9月17日にロシア国防省が発表した情報はオランダ当局の見解を真っ向から覆すものとなりそうだ。MH17便の残骸から見つかったミサイルの製造番号はふたつある。それらはエンジンとミサイルのノズルにマークされたものだという。それらを追跡したところ、この「ブク」ミサイルが特定されたのである。
問題のミサイルがいったいどの工場で製造されたのか、ならびに、何処へ納入されたのかを示す決定的な記録文書が発掘され、これらの情報が公開された [注1]。製造年は1986年だと言う。32年前の書類が見つかったのである。
ところで、MH17便撃墜事件は米ロ間での情報戦争の観点から言えば、ロシアを悪魔視するにはもっとも重要な最前線のひとつであると言えよう。ロシア側が発表したこの情報はウクライナ/米国側にとっては不利となる。そうした状況を反映して、ニューヨークタイムズはすかさずウクライナ側の肩を持った記事を発表し、今までの筋書きを踏襲しようとしている [注2]。
今まで展開されてきた米ロ間の情報戦争を観察すると、たとえば、シリアにおける反政府派武装集団からのアレッポ市の解放の場面、反政府派による化学兵器を用いた自作自演作戦、英国のソルズベリーで起こったスクリッパル父娘毒殺未遂事件、等の出来事で共通して見られたパターンを抽出すると、米ロの姿は相対的に次のように集約される。つまり、ロシアは事実に基づいた情報を提供し、米国やその同盟国は虚偽の情報やでっち上げを次から次へと流す。
今回のロシアからの新しい情報を巡る西側の反応として私が個人的にもっとも興味深く感じたのは「Silence on MH17 Data Released by Russia Proves Its Credibility - French Official」と題された9月18日付の記事(sptnkne.ws/j8MB)だ。この表題を仮訳すると、次のようになる: 「ロシアが発表したMH17便に関するデータ(つまり、「ブク」ミサイルの製造番号)については(西側は)皆が沈黙しているが、それはこの情報の信頼性が高いからだ ― フランス高官の言葉」
今まで西側は嘘やでっち上げの出来事、自作自演作戦、洪水のように流されるフェークニュースを駆使してロシアを押しまくって来たが、ロシアは事実を前面に出して防戦している。今後どのような展開が待っているのであろうか?
本日はこの記事 [注1] を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

 
<引用開始>



 
 
 
 
 
 
 

Photo-1: 資料写真。2014年に起こったMH17便撃墜事件の現場におけるオランダ人専門家。© Aleksey Kudenko / Sputnik

ウクライナ東部でマレーシア航空MH17便を撃墜した「ブク」ミサイルの残骸の中から発見された部品の製造番号はミサイルが1986年に製造されたことを示している、とロシア軍部が説明した。さらに、この飛翔体はウクライナが所有していたものだと言う。
オランダが主導する国際調査団によると、2014年6月 [訳注:「6月」ではなく、正しくは「7月」] に旅客機を撃墜したミサイルの残骸からはふたつの製造番号が発見されている。これらの製造番号はエンジンとミサイルのノズルにマークされていたものだ。
ロシア軍は月曜日(9月17日)にこれらふたつの製造番号を持った部品は「8868720」の製造番号を持つミサイルに使用されたと述べた。
記者団を前にして、ニコライ・パルシン将軍は「ブク」ミサイルに関する一連の書類を示した。これらの書類によると、いくつかの情報はこの説明のために機密が解かれたばかりであるが、問題のミサイルは1986年にモスクワ近郊のドルゴプルドニの軍需工場で製造されたものである。

 

 
 
 
 
 
 
 
Photo-2: エンジンとミサイルのノズルにマークされた製造番号。

また、このミサイルは1986年12月29日に製造工場から出荷され、現在のウクライナ領土内に駐屯していた20152部隊へ配送された。この部隊は現在はウクライナ軍の223対空防衛部隊であると同報告書は述べている。この223対空防衛部隊は、2014年6月、ウクライナ東部の反政府派を掃討しようとしたキエフ政府の軍事行動の一翼を担ったと同将軍は述べた。
本証拠はロシアから密かに持ち込んだ発射台を使ってミサイルを発射したものであって、ロシアはMH17 便の撃墜に責任があると主張するウクライナやその他の当事国の非難を覆すものとなるとこのロシア軍の報告書は言っている。さらに、ロシア軍部はすべての関連資料をオランダの調査団へ送付したと付け加えた。

 


 
 
 
 
 
 


Photo-3: ロシアで見つかったミサイルの出荷記録。

ロシア軍部は、英国に本拠を置き、市民によるジャーナリズム組織であると自称する「ベリングキャット」グループが提示したビデオ映像についても反論している。このビデオはミサイル発射台はロシアから持ち込まれたとの主張を支えるものである。ロシア国防省はこのビデオの一部を示し、辻褄が合わないことを強調した。つまり、このビデオは背景の中にオリジナルにはなかった発射台の画像を嵌め込み、合成したものであることが証明されたと述べている。
このべリングキャットの調査内容はMH17便の調査に従事しているオランダの検察官が最近報じた最新情報の中で言及されていたことから、ロシア軍としては急遽この調査内容を詳細に検証することになったと述べている。ロシア側のビデオはウクライナの通りでアブラム戦車が同様の手法でトレーラーで輸送される場合実際にはどのように見えるのかに関してひとつの事例を示すものとなっている。
 


 
 
 
 
 
 
 

Photo-4: べリングキャットの画像をロシアの専門家が検証。

この発表の3点目はウクライナの職員の通話を2016年に傍受した記録である。この記録によると、ウクライナの職員は飛行制限が設けられたウクライナ上空を航空機が通過する際のリスクを論じ合っていた。一連の不平不満の中にはひとつの文言があって、それは飛行制限を守らないと「われわれはマレーシア航空のもうひとつのボーイングを****するぞ」と言っている。
これはロシア人将校のルスラン・グリンチャク大佐から寄せられたものである。彼はウクライナ空域のレーダーコントロールの任に当っている部隊で勤務をしている。彼の部隊は2014年のMH17 便を追跡していたので、彼はこの悲惨な事件に関して一般大衆はまったく知らない情報を所有しているのかも知れない。

 


 
 
 
 
 
 
 

Photo-5: ルスラン・グリンチャク大佐からの情報がロシア軍部によって紹介された。

この記者会見でホスト役を演じたイーゴル・コナシェンコフ将軍はウクライナは自国のレーダー網から入手したデータをオランダの調査団へ提出することを怠ったと言った。また、彼は1986年に「ブク」ミサイルを受け取ったウクライナの部隊から入手可能な記録書類が、キエフ政府がこれらの記録はもはや入手できないと宣言しない限りは、この調査には有益であろうと述べた。彼はこの種の記録書類は今でも保管されている筈であり、関連規則は今でも生きている筈だと強調した。

 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


Photo-6: モスクワ政府は「根拠のない結論」を受け入れる積もりは毛頭ないと駐国連ロシア大使が言った。

ロシア軍部はウクライナの反政府派がウクライナ軍からミサイルを盗み出したというシナリオを反証する証拠は持ってはいないと言った。しかしながら、それと同時に、彼らはウクライナ政府の高官がそのような出来事はついぞ起こらなかったと公に述べた事実を指摘してもいる。
マレーシア航空MH17便は2014年7月17日にウクライナ東部の上空で撃墜され、同国の反政府派によって支配されている地域に落下した。この撃墜によって283名の乗客と15名の搭乗員の全員が死亡し、乗客のほとんどはオランダ国籍であった。現場から何の証拠も回収されてはいないにも拘わらず、この悲劇が起こった初日からロシアは西側のメディアによって非難される始末であった。

オランダが主導する合同調査団(JIT)にはロシアは含まれず、ウクライナをそのメンバーとして含めている。この調査は中立ではなく、偏見を持っており、ウクライナからすべての証拠を収集することには失敗し、不審な情報源に依存したり、キエフ政府好みの筋書きに合わないロシアからの情報は無視しようとしているとロシア側は見ている。
<引用終了>

 
これで全文の仮訳は終了した。
ロシアがオランダのJITに送付した記録情報に関しては、現時点ではJITの反応はまだ報じられてはいないようだ。関係各国や西側メディアは沈黙を守っている。この情報はJITが今まで推し進めてきた結論を根底から覆すものとなりそうなだけに、面目を保つためにも、その取り扱いは極めて困難なものとなるに違いない。

JITは真実に背を向け続け、今までの政治的な結論を踏襲するのか、それとも、この機会に事実に基づいた結論へと方向転換をするのか、実に見ものである。どちらになるのかは私には分からない。
この撃墜事件で犠牲となった398名の乗員・乗客の多くはオランダ国籍である。オランダ政府が主導するJITは自国民の悲惨な死を嘘で固め続けるのであろうか?民主主義を高らかに唄い続けてきた西欧にとって、倫理的にも、政治的にも、そして、人道的にも自国民が求める真実に背を向けることが果たして許されるのだろうか?

新冷戦という現行の米ロ戦争においては、何十年にもわたって米国の盟友であるヨーロッパ諸国の政治環境では真実が最初の犠牲者となり、新冷戦はそのまま続くのかも知れない。最悪の場合、オランダの市民は自国の政府が腐敗しているという現実を改めて認めざるを得ないことになる。それとも、ここでオランダの市民が目を覚まし、自国の政治を新しい方向へと動かすのだろうか?



参照:

注1: Serial numbers of missile that downed MH17 show it was produced in 1986, owned by Ukraine – Russia: By RT, Sep/17/2018,  https://on.rt.com/9ef8

注2: Russia Missile That Shot Down Flight MH17 Was Ukrainian: By The Associated Press/The New York Times, Sep/17/2018

 

 

 

 

 

2018年9月15日土曜日

米国の崩壊を見ている思いがする


副題:米国の存在が薄れようとしている

 

1989119日、ベルリンの壁が崩壊し、19911225日にはソ連邦が崩壊した。これらの一連の出来事によって何十年も続いて来た東西の冷戦には終止符が打たれた。誰の目にも共産主義のソ連が敗退し、資本主義の米国の一人勝ちが決定的であると映った。
 
こうして、90年代の初めは米国を有頂天にさせた。しかし、この有頂天振りはとんでもない勘違いであったのかも知れない。2003年に米国はイラクへ侵攻したが、米国は今でもイラクから軍を撤退させることができないままだ。米軍が方々へ派遣され、軍事費は増加するばかりで、米経済を疲弊させている。
 
冷戦の終結から27年が経過する今、米国による世界規模の支配に関しては「米帝国による覇権は崩れようとしている」、あるいは、「われわれはすでに多極化された世界の中にいる」といったさまざまな見解が出回っている。何を指標にして言うのかによって、見方は大きく分かれるようだ。
 
米国にはポール・クレイグ・ロバーツというブログ作家がいる。米国政府の政策を率直に批判する論客として定評がある。
 
ここに、彼の最近の記事がある [1]。その表題は「米国の崩壊を見ている思いがする」。
 
本日はこれを仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。米国内の識者のひとりが自分の国をどのように観察しているのかについて学んでおこう。

 
<引用開始>

1950年代から1960年代における米国の社会には活気があった。上向きの動きが顕著で、中産階級が拡大して行った。1970年代にはケインズ学派の需要管理に見られる内部矛盾によって景気が鎮静する中でインフレが進行した。しかし、レーガン政権の供給側経済政策がこの難問を解決した。冷戦を終結する交渉を始めるために、レーガンは健全な経済を引っさげて、自国の経済問題を解決できないでいるソビエト政府に対して圧力をかけた。
ところが、この極めて幸せな展開は、米国においてもソ連においても、国内勢力には歓迎されなかった。米国では強力な軍・安全保障複合体がソビエトからの脅威を失うことに落胆した。ソ連の脅威があったからこそ、彼らの予算や権力が拡大し続けて来たのである。愛国主義的で極右派の保守勢力はレーガンがソビエトを信頼することによって米国を売り渡そうとしていると非難した。米国の右派はレーガン大統領を二流の俳優で、「抜け目のない共産主義者」であると描写した。
ソビエト政府においてはゴルバチョフはもっと大きな問題に直面した。二つの核大国の間で確立された信頼感に基づいてゴルバチョフは東欧に対する手綱を緩めた。ソビエト共産党の強硬派は余りにも多くの事柄が余りにも急速に変化することを目にして、ゴルバチョフはソ連邦をワシントンに売り渡したのだと結論付けた。この結論はゴルバチョフの逮捕へと展開し、この逮捕の結果、ソ連邦と共産党が崩壊した。
共産主義が去って、ロシア人は資本主義に関するマルクスの教えを忘れてしまい、われわれにとっては今や誰もが友達だと思い込んだ。イルツィン政権は米国の忠告に基づいてすべてを開放し、ナイーブにも米国の忠告を受け入れた。ロシアは略奪され、極貧に陥った。イルツィンの指導下にあるロシアは米国の操り人形と化した。そのため、ロシア市民は自分たちの生活水準を下げてまで代価を支払うことになった。
ソ連邦の崩壊は通常レーガンに帰され、彼の成功例のひとつと見なされる。しかし、これは作り話だ。私はレーガン政権の財務省で次官補として働き、その後はCIAを召還する権限を持った大統領のための秘密委員会のメンバーでもあった。レーガンは彼の目的は冷戦に勝つことではなく、冷戦を終わらせることだとわれわれに何度も言っていた。
彼はこの仕事に関与する者には誰にでも「目的は核戦争の脅威を終わらせることにあり、相手に侮辱的に映るような凱旋をすることではない。ソビエト側には常に尊敬の念を示さなければならない」と言って聞かせた。
不幸なことに、ロシア人との間でレーガンが築き上げたこの信頼関係は、残念ながら、腐敗し切った犯罪者的なクリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマの政権によって裏切られてしまった。これらの極端に腐敗した政権のせいで、米ロ間の不信感は今や何十年間も続いた冷戦時には存在したこともないような酷い状況にある。犯罪者的なクリントン、ブッシュ、オバマが行ったことはレーガンとゴルバチョフが葬り去った核戦争の可能性を蘇らせた。
私が十分に説明したように、さらには、入手可能な証拠のすべてが支えてくれているように、トランプに対する攻撃は「ロシアゲート」と呼ばれる組織化された批判に依存している。しかし、これには何の証拠もない。これはジョン・ブレナンやジェームズ・コミー、クラッパー、ロッド・ローゼンシュタイン、ミュラー、そして、民主党全国委員会によってでっち上げられたものだ。トランプを大統領執務室から排除するという考えを一般大衆の心に植え付けるために、「ロシアゲート」がその根拠とするあからさまな嘘がプレスティチュートであるメディアによって継続的に繰り返されている。たとえば、次のサイトをご覧いただきたい:
さらには、こちらも: http://thehill.com/opinion/white-house/402959-cohens-plea-deal-is-prosecutors-attempt-to-set-up-trump 

ミュラーは、彼を特別検察官として指名した司法長官代理のローゼンシュタインと同様、反トランプの陰謀の重要な一角を成している。二人は米国の大統領を排除しようとする組織化されたクーデターに活発に参画したことから、扇動の罪を犯している。しかしながら、トランプは余りにも非力で彼らを逮捕し、民主主義に対する陰謀で裁判にかけることもできないでいる。トランプ大統領は事実や真実を信用することによって終末的な間違いを仕出かしそうである。これらはどちらも西側文明の乏しい残骸の中ではもはや尊重されてはいない。
かってはインターネット上で入手できる情報は西側の新聞やテレビ、NPRといったプレスティチュート、等によって喧伝された嘘に対抗する勢力として十分に機能してくれるのではないかという期待があった。しかし、これはまったく無駄な期待で終わった。良心的で、信頼できるウェブサイトがいくつも存在するが、支配層のエリートらによって閉鎖され、その数は多くなるばかりだ。支配層のエリートは多くの現金を所有し、オンライン上で発言する者の大半を資金的に支援することができる。資金援助された者は皆が真実に対して反論を唱えるために雇用されるのである。
私は今日ルーツアクションからトランプの弾劾を早期に実現するために募金を募っているとの電子メールを受け取った。彼らのウェブサイトは弾劾文さえをも準備しており、「トランプの元弁護士はトランプ大統領は2016年の大統領選を干渉する陰謀に参画したと言っている」との主張を掲載している。 
この非難はトランプの元弁護士であるマイケル・コーエンが発したものだ。この種の非難は被告弁護士であればほとんど誰もが一様に理解する代物であって、マイケル・コーエンは、ハーバード大学法学部のアラン・ダーショウィッツ教授の文言を使うとすれば、ミュラーが何としてでも捕まえたい相手であるトランプ大統領に不利になる証拠を「作文する」ことによって自分自身の脱税に課される罰を軽減しようとするものだ。
私は曖昧さを完全に排除したい。ルーツアクションは、ニューヨークタイムズやワシントンポスト、CNNMSNBCNPR、ならびに、その他諸々のメディアがそうしているように、嘘をついている。二人の女性に対する支払いが問題視されているが、このような申し立てを表に出すために、これらの女性は軍・安全保障複合体から支払いを受けているのかも知れない。あるいは、ヒラリー&ビル・クリントンまたは民主党全国委員会が支払っているのかも知れない。もしくは、彼女らはただ単にドナルド・トランプから大金をむしり取る絶好の機会であると判断したのかも知れない。これらの女性に対する支払いは決してルーツアクションが主張しているようなものではない。彼らは「この支払いは米大統領選の結果に不正な影響を与えようとして行った大罪であり、軽犯罪である。これは大統領府からトランプを排除することを正当化させるものであって、弾劾を可能とする犯罪である」と主張している。
誰がルーツアクションに助言を与えているのかは別にしても、この助言者は極めて無能な弁護士だ。さらに付け加えると、ルーツアクションの無知な主張がもたらした彼らの馬鹿さ加減を敢えて指摘すれば、「軽犯罪」は「大罪」ではないし、「大罪」は「重犯罪」である。
私は自分のウェブサイトに「原告に支払いをすることは不法行為ではない」とする法律専門家の見解を掲載している。企業はこのような支払いを何時でも行っている。偽りの主張に対する支払いはその申し立てに関して法廷で反論するよりも遥かに安く決着をつけることが可能だ。大統領選に臨み、党の指名を獲得しようとしている候補者にとっては自分の懐から金をもぎ取ろうとする原告と法廷で戦うことによって気を散らされてもいいとする理由は何もない。
さらには、東西の海岸線の間に居住する米市民が何十年にもわたって晒されてきた職場の海外移転による厳しい苦境、軍・安全保障複合体に対する年間1兆ドルにも達する財源の割り当てによって自分たちの生活水準を低下させられた何百万人もの市民に対して何の救済策をも提供することができないでいる政府の無能振り、一般大衆はロシアを戦争に誘い込むことには関心を抱いてはいないことにトランプが気づいている事、等を考慮すると、ルーツアクションやその他の間抜けな連中はどうしようもないほどに正気を失っていると言わざるを得ない。彼らはトランプに投票した選挙民はトランプが二人の女性と性的な関係を持ったかどうかを気にしていると考える始末だ。米国人が晒されている悲惨な苦境を考慮すると、実際にそのようなことが起こったと想定し、二人の女性と関係を持ったとしても、自分たちのチャンピオンに逆らって投票するのはどう見ても一番最後の行動であろうと思う。
ところが、自分自身の所得税を支払わなかった弁護士による何の証拠もない主張、つまり、より軽い罰則にして貰うことと引き換えに米国の大統領には不利となる偽の証拠を提出することは、ルーツアクションやニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、NPRCNNMSNBC、等によれば、米ロ間の非常に危険な緊張を和らげたいとする米国の大統領を弾劾する根拠として見なされるのである。
トランプはロシアとの和平を望んでいる。つまり、彼は彼らの予算と権力を正当化するのには欠かすことができない敵を奪い去ろうとしていることから、軍・安全保障複合体はトランプを弾劾したいのである。
米国人は余りにも愚かで、「ロシアゲート」の主張にはこれっぽちの証拠もないことには気付かないのだろうか?その代わりにわれわれが目にしているのは所得税の脱税に関する起訴であって、これはトランプに対する起訴ではなく、弁護士で共和党の選対委員長でもある人物に対する起訴である。もっと納得がいく起訴をしようと思えば、民主党員に対して起訴をすることが可能であるが、これは実現してはいない。犯罪者的なヒラリー陣営は今まで起訴を免れて来た。
ロシアとの和解を正常化したいとするトランプの意図は人類の生存を継続するために世界中で求められているもっとも中核的な願いであることを認識するために知性を持つ必要なんてこれっぽちもない。核兵器が爆発した暁には、地球の温暖化は今までとは異なる、まったく新しい意味合いを持つことになるであろう。
3人の米国大統領がそれぞれ8年間の任期を終えた後、米ロ関係は冷戦中に経験した緊張とは比較にならないほど危険なものとなっている。私にはこのことは事実として分かる。何故かと言えば、私は冷戦に直接関与していたからだ。
米国だけが軍事大国であると信じる中、無頓着な米国人が見い出す安全保障の姿はどう見ても無知そのものでしかない。クラリティ・プレスから出版されたアンドレイ・マルティアノフの新刊書は米国はせいぜい二流の軍事大国でしかなく、あの間抜けなNATO加盟諸国と共に、ロシアには意のままに、かつ、徹底的に破壊されてしまうだろうと述べている。NATOの加盟国は個々には軍事的に不能である。ロシアが馬鹿馬鹿しい非難や馬鹿馬鹿しい脅かし、あるいは、自分自身の傲慢さに酔いしれて完全に劣等な軍事力を宣伝する馬鹿馬鹿しさ、等に嫌気をさした暁には、現在の軍事力の相関関係において言えば、たとえ西側世界の1インチ平方の土地を救おうとしても西側は何もすることができないであろう。
米国人は余りにも無頓着で、このことを分かろうとはしないが、現実にはロシアの慈悲の下で一日一日を過ごしているのである。

著者のプロフィール: ポール・クレイグ・ロバーツ博士は経済政策を担当する財務省の次官補を務め、ウールストリートジャーナルの共同編集者を務めた。彼はビジネスウィークやスクリップス・ハワード・ニュース・サービス、ならびに、クリエーターズ・シンジケートの特別寄稿者も勤めた。彼は数多くの大学から招聘されている。彼のインターネットへの寄稿は世界中の関心を集めている。ロバーツ博士の近著: The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHow America Was Lost、および、The Neoconservative Threat to World Order

<引用終了>

これで前文の仮訳は終了した。
私が学校教育を受けていたのは1950年代から1960年代だった。あの頃の米国の存在感は絶大で、テレビで見る米国社会は子供の目にはキラキラと輝いていた。少なくとも私にはそう思えた。
レーガン政権(19811989)の下で働いていた著者はレーガン大統領の言葉を伝えている。こういった具体的な言動については私はまったく知らなかった。大手メディアが流すフェークニュースによってこれらも歪曲された真実のひとつであったのだろうか?実に興味深い言葉だ:
レーガンは彼の目的は冷戦に勝つことではなく、冷戦を終わらせることだとわれわれに何度も言っていた。
彼はこの仕事に関与する者には誰にでも「目的は核戦争の脅威を終わらせることにあり、相手に侮辱的に映るような凱旋をすることではない。ソビエト側には常に尊敬の念を示さなければならない」と言って聞かせた。
レーガン大統領がこれほどまで大きな器であったことに私は驚いた。ネオコン連中が評した二流の俳優どころか、彼は非常にまともな紳士ではないか!これらの言葉にはそう思わせる品格が感じられる。
ふたつの核大国間に存在する危険極まりない今日の緊張状態を考えると、レーガン大統領は歴代米大統領の中ではもっとも鋭い洞察力を持った大統領のひとりであったことを示している。そして、それに続くのはトランプ大統領だと言えよう。8月にヘルシンキで行われたトランプ・プーチン会談を受けて、トランプが今後ロシアとの和平を進めるためにどのような具体策を提案するのか、今後の動きを注視して行かなければならない。米国の国内政治は複雑で、非常に分かりにくいが、11月には中間選挙を控えているので、何らかの具体的な動きが見られることだろう。

 
参照:
1Watching America Collapse: By Paul Craig Roberts, Information Clearing House, Aug/24/2018

 

 

2018年9月8日土曜日

オリバー・ストーンとのインタビュー


副題: プーチンは、ロシアの国益を除けば、すべてに関して交渉をする用意がある

オリバー・ストーンは1986年に映画「プラトウーン」でベトナム戦争における異常な人間行動を描いて、一躍有名になった。オスカー賞も受賞した。

彼自身はベトナム戦争では偵察隊員を務めた。その戦争体験に基づいて米軍による無抵抗のベトナム民間人に対する虐待や虐殺、強姦、放火、さらには、仲間内での殺人や同士討ち、誤爆、等を描いている。「プラトウーン」はオリバー・ストーンの代表作である。

洋の東西を問わず頻繁に経験することではあるが、記録映画にはわれわれ素人が見過ごしてしまう重要な要素が丁寧に描かれており、参考になることが実に多い。また、政治家や大手メディアが主張する内容とは大きく異なることが多い。

ここに最近報じられたオリバー・ストーンとのインタビュー記事がある [1]。聞き手はRTの著名なソフィー・シュワルナゼ。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。この有名な映画製作者が日頃何を考えているのかについて少しでも多く理解しておきたい。


<引用開始>

オリバー・ストーンは米国の映画製作者であり、脚本家でもある。彼はオスカーやゴールデングローブ賞を受賞し、彼の映画は熱狂的な支持を得ており、米国の良識の一部を成しているとも言えよう。オリバー・ストーンの最新のプロジェクトはウラジミール・プーチンに対する一連のインタビューである。私たちはモスクワにおける彼の経験に関してこの著名な映画監督とお話をしすることができた。

ツイッターで@SophieCo_RTを追跡してください。


ソフィー・シュワルナゼ(SS): こんにちは、オリバー・ストーンさん。本日はあなたとお話をすることができて光栄です。モスクワへの旅行を十分に楽しんでいただきたいと思います。

オリバー・ストーン(OS): はい、楽しんでいます。到着したばかりですが。

SS: プーチンに対する微に入り細にわたったインタビューを記した書籍が「アルピナ」社から出版されています。書名は「プーチンとのインタビュー」で、あなたは「4日間にもわたり、米国の映画製作者としては、私自身の奇妙な生涯においてさえも、実に画期的なものであった」と仰っていますが、ご自身の職歴の中でもまさに頂点を極めたようですね。今までの生涯で最良の出来事だったのでしょうか?

OS: 当たり前のことですが、これが最後の映画だと考えなければなりません。断定はできないけれども、年齢を重ねると、時間がより貴重なものとなって来ます。映画製作者としては、この分野はまだ非常に若い職業です。特に、米国では・・・。物事がえらく急速に動いています。もう一回機会がやって来るなんて、そうざらにはないことです。私にとってはまさにクライマックスの感じでした。何かを特集した訳ではないが、歴史の流れの中でこの時点では米国のメディアではもっとも許されそうにもない類のインタビューだった。西ヨーロッパにおいても同じことです。別世界の許されることがない領域へ入って行くような感覚でした。こちらへ来たこと(つまり、プーチンとのインタビューが出来たこと)を嬉しく思います。私はカストロやチャベスともインタビューをし、アラファトともインタビューをしています。ネタニヤフとも。彼が下野していた頃のことですが、彼は私好みの人物でした。彼は、今や、永久的な権限を謳歌しているように見える。これらの人物が全員集まって、今回は私をプーチンと引き合わせてくれました。率直に言って、彼との会合を多いに楽しむことができました。私はスノーデンとのインタビューを何回もしていたので、プーチンと初めて会ったのは何回目かにロシアを訪問した時だった。われわれはエド[訳注:スノーデンのこと]と一緒に調査をしていた。映画「スノーデン」の多くの部分は彼の見解を反映しています。そういった関連情報を入手するのには結構時間がかかった。われわれはまたこちらへ戻って来て、正確を期すことに専念しました。あの映画の最後のシーンはモスクワで撮ったものです。モスクワのある劇場の奥まった部屋で私はプーチンとお会いしました。あれは演劇、1960年代の古い演劇だったが、彼は民話文化を推進しようとしていましたね。我々は奥の方にある部屋で彼にお会いし、スノーデンのことをお聞きしました。実際に何が起こったのかに関して、彼はロシア側から見た話をしてくれました。実に素晴らしかった。われわれが公に知っていることや新聞報道、等とは違うのです。でも、話が長くなってしまうので、「スノーデン」の映画の最後の部分に話を戻すと、週末にエドと一緒にモスクワで撮影をしていました。それから、23日して、また戻って来た。われわれはクレムリンへ出かけ、そこで3日間にわたってプーチンを撮ったのです。あの時点ではわれわれはこの撮影を首尾よく続けられるとは考えてはいなかった。単純に言うと、台本もなくて、すべてがぶっつけ本番でした。私からの質問に関しては簡単なメモを彼にお渡ししただけだった。でも、メモの内容だけに限る訳ではなく、撮影の領域は無制限に広がり、彼は編集をしようともしなかったのです。

SS: つまり、完全にぶっつけ本番だったのですね。 

OS: その通りです。

SS: あなたからの質問には制限はなかったのですか? 

OS: 最後の最後まで私は非常にいい感じでいました。あなたにもお分かりのように、私自身は毎日のように違って見えます。ところが、彼は何時も同じに見えるのです。彼は非常に落ち着いていました。私の方はどうかと言えば、時差ボケに見舞われており、髪の毛は風になびいているような有様。私は何度か外見を良くしようとしました。別の言い方をすれば、私は米国のキャスターとは正反対です。たとえば、とてもじゃないがメーガン・ケリーのようには見えない。あなたのようにも見えない。

SS: プーチンとの面会が如何に大変なものであるかは私も十分に知っています。決して簡単ではないです。多くのロシア人のジャーナリストは、トップレベルのジャーナリストであってさえも、あなたに与えられたようなアクセスを謳歌することは出来そうもありません。これを実現し、纏め上げるためにあなたが如何に多くの努力を払ったのか、私には良く分かります。そして、これが公開されるや否やロシアでは大評判になりました。誰もが話していました。当然ながら、米国ではメディア全体があなたに襲いかかって来ましたよね。あなたはプーチンに対して「お世辞」が過ぎるとか、「悪いインタビュアー」だとか言われました。これらの批判を気になさいましたか?気に障りましたか?と言いますのは、プーチンとのインタビューは実に大仕事であるからです。

OS: 大仕事でしたね。しかし、自分がジャーナリストであるとは私は一度も言ってません。ジャーナリストの真似事をしたこともない。私は映画製作者だ。あなたはいくつもの映画から私のことをすでにお分かりだろうと思う。また、公的な人物に対して行ったインタビューからも私のことを知ることが可能です。映画監督以外の何かの振りをしたことなんてないのです。

SS: あなたはご自分の仕事では何らかの見解を示したことは一度もないと返事をしています。中立であると言っています。と同時に、私は一連のプーチンとのインタビューを拝見しましたが、プーチンに関してお世辞めいたことをたくさん言っています。あなたは客観的で中立的に振る舞おうとしていたのですか?

OS: 私は自分が真実であると感じることにはこだわる方です。プーチン大統領に対して虚偽の言葉は一度も喋ってはいない。私が喋った内容はすべてが私が言いたかったことです。これは冒頭で喋ったことのひとつですが、私は「あなたがロシアの申し子であることに感動を覚えます。何故ならば、あなたが政界に現れた時はちょうど1999年から2000年の頃で、ロシアは最悪の時期にあった。ロシアは大混乱だった!本格的な経済問題。それらを乗り切ることにあなたはまんまと成功した。誰もあなたからこの事実を奪い去ることはできない」と言った。これこそが彼が依然として人気を博している理由のひとつだと思います。彼は住むべき場所や宿命、「われわれはロシア人だ。そのことを誇りに思う。豊富な歴史を持っている」といった感覚を呼び戻してくれたのです。彼は主権国家の概念を再認識したのです。これは非常に重要なことでした。ロシアは1991年から2000年にかけて主権国家ではなかったのだから。当時、ロシアは主権を完全に失っていた。米国や他の国々からの連中がいたる場所に出没し、ありとあらゆる事を監視をし、監督していた。連中は原子力産業が在るあらゆる場所で目を光らせていた。注目すべき点は、プーチンがこの世で実際に重要なことをロシアに呼び戻してくれたことだ。この点に戻ろう。何故ならば、これこそが最も肝心な点であるからです。世界のためには錨が必要だ。存在し続けるためには抵抗が必要だ。これは米国による統治に対する抵抗です。

SS: 政治についてはあなたは話をしたくはないことはよく分かっていますので、これは仮定上の質問となります。あなたは記録映画の製作の対象とした人たちの側に立って来ました。たとえば、チャベスやカストロ、プーチンです。これらの人物は皆強力な人たちですが、明らかにあなたは強い人物に魅力を感じていらっしゃる。これらの人物のような強力な指導者が政治の将来の姿を示していると感じていらっしゃるのでしょうか?彼らは非常に強力で、妥協もしない。幾つもの点で評価は分かれ勝ちです。それとも、政治は対話とか政治的な公正さを追求すべきなのでしょうか?

OS: ああ、政治とは対話そのものでもあります。これらの人物は皆が対話を進んで取り入れます。誰が何を誰と話をしたのかをあれこれと議論することが可能だ。しかし、要は、カストロは米国と長い間交渉しようと試みたけれども、彼は肘鉄を食らわされ、侮辱され続けた。連中はカストロを何度も暗殺しようとさえした。対話とは何だろうか?対話は非常に重要だ。チャベスは、間違いなく、このような見解を持っていました。こういう場面をご記憶だろうか?チャベスがオバマと握手をし、彼は米国からはまったく新しい対応がもたらされるだろうと本当に期待していた。しかし、何も起こらなかった。つまり、政治は対話そのものなのです。政治においては妥協することだ。結局、プーチン大統領に関して総括的な意見を述べるとすれば、彼は究極的な交渉者です。交渉を通じて彼は相手を擦り減らすかも知れない。何事についてでも彼は議論をし尽くそうとする。どの国にとっても特定の関心事が存在します。各国が特定の国益を持っており、彼は常にこのことに関して傾聴しようとする。ロシアも自国の国益を持っている。これらの国益を除けば、彼は何事に関してでも交渉することを受け入れます。あなたが一線を越せば、彼はあなたにそのことを知らせてくれる。ところで、私は彼を押しまくった。誰が何と言おうとも、私は彼を押しまくった。民主主義や彼の続投、来年は何が起こるかといった質問では彼を押しまくったので、彼がイライラしていることは確かに感じましたよ。何度か彼をイライラさせてしまった。一度だけじゃなかった。でも、私は心配しているのです。一連のインタビューを行った理由はロシアとの自分自身の関りにもう一度回帰することでした。つまり、2000年に存在していた米国人とロシア人との間の関係にはいったい何が起こったのか?

SS: この記録映画はプーチンに対する米国人の態度を変えることができるとお思いですか?  

OS: ある程度はね。数百万人を超す人たちが観ている。高級ケーブルテレビ番組である「ショータイム」で配信されており、ロシアにおける全国規模の配信とは違います。つまり、配信は登録された視聴者だけに限定されています。配信はすでに行われており、再配信も行われる。ヨーロッパでも配信され、多くの国々で視聴されている。フランスでは素晴らしい議論となっています。配信したのは公共テレビチャンネルの「フランス3」だった。ミッテラン政権で外相を務めたユベール・ヴェドリーヌや他にも何人かが反対意見に対してこの映画を弁護してくれました。あの議論は実にフランス的だった。しかし、換言すると、ヨーロッパでは、たとえば、ドイツやフランス、イタリアでは、これらの議論は重要なのです。非常に重要だ。結果として物事が変化するのかどうかを予測することは非常に難しい。まったくの驚きではあるが、最近、米議会はほとんど全会一致で対ロ経済制裁を拡張することにした。これはごく最近起こったことです。トランプに対する反応であるとも言えそうだ。

SS: トランプはプーチンのような指導者を見習いたいのでしょうか? 

OS: 恐らくはね。私にはそれほどの確信はないけれども・・・。ドナルド・トランプの頭の中に何があるのかは私には何も言えません。誰にも言えないでしょう。彼が愚か者であるとは思えません。むしろ、彼は非常に切れ者であると思います。彼は物事を尊重するだろうと私は見ています。でも、彼はプーチンのことを誤解するかも知れない。私には分かりません。しかしながら、彼が選挙中に多くの選挙民に示した考えに基づいて行動しているようには見えない。彼は外国への介入には反対だと言った。米国は外国における戦争のために自国の資源や資産を浪費していると言った。世の中を変えようとする考えがあったが、何も変わらなかった。彼自身の意思によってではなく、彼の政権は何も実現することが出来ないでいる。反対意見が余りにも強く、彼は最初からがんじがらめの状態だ。

SS: 多分、これもまたロシアのせいでしょうか? 

OS: いや、それは単なる言い訳に過ぎない。彼はロシアのせいでひどく攻撃されて来た。ロシアがトランプ大統領と共謀したという証拠については私は何も見てはいません。彼はスパイ映画の「影なき狙撃者」のような存在ではない。この考えは実にくだらないと思う。だが、米国では多くの関心を集めており、このことが私にはとても心配です。また、これは、率直に言って、米国の選挙民が如何に愚かであるかをも示しているのです。多くの選挙民の行動は私にはとても信じられない。私には分からないが、世論調査がうまく行かなかったのかも・・・。どうも、理に合わないのです。

SS: もしも選出された者がシステムの変更には誰も着手しなかったと言うならば、米国では誰に投票するのかは大して重要ではないとでも? 

OS: それはプーチン大統領がインタビューの最後に言っている言葉です。彼は米国の4人の大統領を相手にして来たと言う。そこで、私は彼に「何か変化がありましたか?」と尋ねた。彼は「基本的には、何も!」と言った。つまり、官僚主義が蔓延っている事実を彼は示唆しています。彼は現状を官僚主義と描写していますが、米国ではこれを「ディープステーツ」と言います。変化に抵抗してきた官僚主義のことです。確かに、ロシアに対する米国の政策は1917年の革命以降大部分の期間においてかなり否定的なものだった。革命があった頃、ウィルソン大統領は米兵をシベリアへ送り込み、英国からの派遣軍と合流させています。

SS: 二回目の「冷戦」は言葉の綾ですか、それとも、それ以上の意味を持っているんでしょうか? 

OS: これは言葉の綾ですよ。冷戦、これは非常に危険な戦争だ。オリジナルの冷戦は本当に「冷たい」戦争だったと言えるでしょうか?多くの場所で、たとえば、ベトナムや朝鮮半島では共産主義と戦うという名目の下で、数多くの代理戦争が行われた。あの冷戦という名目でいったいどれ程多くの人たちが殺害されたのだろうと考えると、第三世界では数百万の人たちが損害を被った。アフリカではそこいら中で戦闘が起こった。そして、今は、中東で夥しい被害を目にしている。スペクターとしての共産主義はもはや機能しない。米国はその言葉を用いることが出来なくなった。だが、実際には、今でも冷戦に固有な物が引き継がれている。このことが対ロ経済制裁を拡大することに賛成票を投じた議員の考えにあったのではないかと思います。彼らの心の中には何らかの古い形態のロシアが残っているのです。

SS: その種の考えは80年代、90年代に廃れてしまっています。どうして舞い戻って来たんでしょうか?米国人の心からこの考え方を駆逐するには何が必要ですか?何世代も必要ですか? 

OS: これには私も驚きました。事実、私は衝撃を感じています。ゴルバチョフ元第一書記との対話は私の生涯ではもっとも素晴らしい出来事のひとつでした。自分の生涯の中で1989年は春のようで、まさに希望に満ちた春のようでした。これから物事が変化するというまったく新しい予感がありました。ベルリンの壁が崩壊し、東欧各国は皆が無血革命を表明した。本当に無血革命だった。ロシアも同様。比較的にね・・・。米国ではゴルバチョフをライオンに見立てて、彼を英雄視した。ところが、この国では彼はこの帝国における指導力を失った、弱い人物であるとして受けとめられた。つまり、両者の見解は完全に異なっていた。あの頃からゴルバチョフ氏と面会して来ましたが、私はプーチンに関する彼の批判にも遭遇しました。最後に彼と面会した際に彼が言ったことを述べておきます。「皆が何と言おうとも、プーチンは今の時点のための人物である」と彼は言った。何故ならば、1989年に彼が締結した合意を米国が破ったからだった。あの合意は東西両ドイツが統合すれば、NATO1インチたりとも東側へ拡大することはないというものであった。その合意に基づいて、彼は東西ドイツの統合を許容した。しかし、そうはならなかった。NATOはクリントン、ブッシュ、および、オバマ政権の下で拡大を加速して行った。そして、これはプーチン大統領が言ったことでもあるが、ゴルバチョフ氏は「連中は2001年にブッシュがABM条約を破棄することに賛成した」と指摘している。あれは大きな間違いだった。ABM条約の破棄はふたつの大国間に存在する軍事バランスを台無しにし兼ねない。それにも増して、プーチンが言っているように、コーカサスでは米国はテロリストに支援をしている。ウクライナに関しては、明らかに反対意見もある。この本ではプーチンは自国の状況を明確に述べているが、米国人は耳を傾けようともしない。さらには、シリア問題もある。シリアでの戦争に関する報道が実際よりも如何に過小報道されているか、私にとってはこれは驚くばかりです。幸い、RTがそれを補ってくれました。

SS: イエメンはどうでしょうか?イエメンがひどく過小報道されていることには驚きませんか? 

OS: もちろんです。続けましょう。リストは作成してはいないが、言いたい点は明確です。

SS: 私はこの本を出版することになった背景に関してもお伺いしたいと思っていました。本物の冷戦が真最中であった頃、冷戦は非常に分かりやすいものでした。両陣営がお互いに対立していた。現在は私にとってはより恐ろしい感じがします。世界は多極化して、無秩序の状況がいたる所に見られ、誰もが世界を自分の方へ引き寄せようとする。あなたがちょうど今言及された紛争、ならびに、それ以外の数多くの紛争は、それが故に、すべてが継続して行く。もしも終らせるとするならば、彼らはいったいどのようにこれらの紛争を終らせるのでしょうか?私たちには見当もつきません。

OS: 常に非常に厄介です。あなたは若く、まだ30歳代でしょう。私にとっては最初の「冷戦」は非常に分かりにくく、「われわれ対彼ら」という構図はそれ程はっきりとはしていなかった。実際に共産主義と戦うのだと信じて、私は兵卒としてベトナムへ行きました。言い方を変えると、偽装がたくさんあった。われわれが「もうひとつのアメリカ史」で試みたように、あの期間の歴史全体を振り返ってみると、あれは実際には非常に明快だったと言わなければならない。はっきり言って、あれは茶番だった。世界中の目を欺き、ソ連をスケープゴートに仕立てたのは米国です。世界大戦が終了した後に、連中はロシア人を第二次世界大戦のスケープゴートにし、スターリンをヒトラーと同一視して、この種の考え方がずっと続いた。このことはあの冷戦がいったい何だったのかを誤解したところから始まっている。米国はこの冷戦と戦うために莫大な資産を浪費した。米国は自国の市民、つまり、われわれの手からより高度な教育やより良いシステム、より効果的な安全保障、健康、富、等を剥ぎとった。これらはすべてが今日の問題として表面化している。この国の社会的セーフティー・ネットは消えようとしており、冷戦のために浪費をしなかったならば、これらは皆実現できていた筈です。要するに、われわれは冷戦のために非常に大きな代償を払っているのです。そして、それが和らぐ気配もない。1989年には「平和の配当」が議論されていたことを覚ています。連中はそれについて議論をしていた。あの平和の配当はいったいどうなったのだろうか?ベルリンの壁の崩壊から23週間が経った頃、ブッシュ・シニアーは50万の兵士を中東へ送り込んで、イラクへの介入を始めた。大きな出来事だった。ベトナムへ50万人もの兵士を送り込んだことは、あれはリンドン・ジョンソン政権下であったが、実に大きな出来事だった。そして、報道機関はこれをネタにして売り上げを大きく伸ばした。第二次世界大戦以降だけという訳ではないが、これらの数値は大き過ぎるいうことは分かっていた。われわれは余りにも多くの男たちと共に戦った。それは余りにも膨大であって、機能しなかった。それ以降、いったい何が起こったのか?そのことについては忘れてしまった!リーガン大統領は選挙運動を通じてベトナム戦争を忘れるよう訴えた。そして、またもや、外国での戦争のために50万人もの兵士を中東へ送り込んだのです。われわれは二度と中東から去ることはない!このことについて私は「W」と題する映画を製作し、その映画ではディック・チェイニーによく似た人物が「われわれの出口戦略は何か?」と問われた時、彼は「出口なんて無い」と言った。そして、真実を言えば、われわれは退却をしなかった。イラク戦争には出口がないのだ。われわれはイラクに留まったままだ。50万人にも及ぶこれらの男たちはなんらかの理由で中東から撤退することなんてないのだ。もしも歴史感をお持ちならば、これは実に悲痛な事態だ。これが間違いであることは私には分かっていた。第1次イラク戦争は巨大な間違いだった。交渉を進めるために必要となる十分な余裕があった筈だと私は思う! 

SS: そのような映画(たとえば、「W」または「もうひとつのアメリカ史」)が上映されますと、米国の歴史における言葉の綾や事実の多くを非難しているあなたを見て、あなたは米国ではどのように受け止められていますか?

OS: 容易いことだとは言えないけれども、これらは私の生涯で実現することができたもっとも重要な作品であると思っています。これらのふたつの映画を私は誇りに思っています。私は代償を払っています。ある種の人たちは私を論争の相手として認めてはくれない。でも、連中はノーム・チョムスキーでさえも相手にはしない。米国の政治論争には中心がなく、誰もが中道右派だ。クリントンが政権を取ってから、政治の中心は右派となってしまった。我が国に存在すべき平和の党は見当たらない。グリーン・パーティーを除くと、何かが存在しているという証拠はまったくない。しかし、この党はこっぴどく批判されている。

SS: 人々はこの党を笑いものにしています。 

OS: その通りだが、何故だろうか?ところで、私が育ち盛りの頃、民主党は少なくとも平和を希求する党だという感触を持っていたものです。今や、そのような感覚はすっかり無くなってしまった。何らかの意見の一致さえもまったく感じられない。共感できたのは一人だけです。それはバーニー・サンダースだ。もしもあなたが正しく記憶しているとすれば、彼が外交政策について喋ることは非常に稀だった。彼は外交問題は「サードレール」と見られることを知っていたので、彼は外交政策については非常に稀にしか喋らなかった。[訳注: 「サードレール」とは一部の地下鉄で電力を供給するために設置されている三番目のレールを指す。米国の政治用語では、これに触れると感電することになぞらえ、非難を浴び政治的な地位を失いかけない政策をサードレールと呼ぶ。(ウィキペディアから引用)] 

SS: 実際に何らかの成果を挙げるには米国にとっては彼は余りにも社会主義的でした。 

OS: まあ、そのことについては私は知りません。何故かと言うと、米国は生き延びるためにはより社会主義的な方向へ移行しねければならないかも知れないのです。もしもすべてが崩壊し、次から次へと危機が続くならば、株式市場は爆発し、メルトダウンを起こしてしまう・・・。

SS: 現時点ではすべてがトランプに向かっており、何かを変えるよう迫っています。 

OS: はい。ですが、オバマ大統領が沈んだ時、あれは何だったかな。覚えていますか?そう、75百億ドルを経済に注入した話ですが、あれはまさに社会主義的な動きです。米国はいったい何処へ向かって行こうとしているのかは非常に興味深い。これは非常に重要な問い掛けであるので、私は辺りをブラブラしながら、何としてでも見届けたいと思う。サイドラインに立って、何が起きるかを見たいものです。とてつもなく醜い状況となるかも知れないし、被害者にとってはえらく不快なものとなるだろう。米国が自己管理能力を喪失するかも知れないという意味ではこれは実に恐ろしい話だ。危機意識や攻撃の恐怖にかられて、「何についてでもロシアに責任がある」とするこの概念は正気の沙汰ではない。ジョセフ・マッカーシーが行ったように、1950年代のある種の未開状態に頼ろうとすること自体は容易いことだ。私が少年だった頃、「ソビエト人がクラスの中にいる」とか、「われわれのカレッジにもいる」、「我々のシステムの中へ忍び込んでくる」、「ソビエト人は戦争もせずにわれわれを乗っ取ってしまう」とか聞かされたものだ。私はこれらを非常に勤勉な人たちから聞かされた。あなたはこの種の精神状態が存在することを認めなければならない。人々を絞首刑に処すような暴徒となった自警団を身近に見るのは実に恐ろしいことです。常識的な感覚は窓から逃げ失せてしまい、これは真っ先に起こるのです。そして、慎重さや人間性も窓から逃げ出して行ってしまう。あの心理状態は実に恐ろしい。しかも、恐ろしいほどに蔓延している。

SS: あなたは政治をよく理解していらっしゃるし、政治家もご存知です。さらには、あなたは脚本をお書きになる。これがどのようにしていい結果を出すのかについてのシナリオを見せてください。現実的な観点から。

OS: あなたは私に映画を所望している!米国側に立っている私の観点から言えば、別の形態では起こりようがなく、方向は決まっている。だからこそ、恐ろしいのです。この時点ではロシアは何のイニシアチブも取れないと私は思う。降伏をし、核兵器のすべてを揃え、政権を交代させ、プーチンは辞職する、それ以外はない・・・。この筋書きはまったく狂気の沙汰です。ロシアの市民は皆がプーチンを支持しているから、そんなことは起こらない。現時点ではどんな出口もあり得ない。今や、第3党も存在し、彼らがその存在を示すのも真近だ。ド・ゴールがやって来る。シャルル・ド・ゴール・・・。皆が彼にフランスの指導者あるいはヨーロッパの指導者を期待する。この全プロセスを通じて見えて来たメルケルには私はひどく失望しました。彼女は事情を誰よりも良く知っており、ウクライナの本当の話を知っていたからです。しかし、彼女は本当の話に首ったけという訳ではない。何故ならば、彼女の外相が関与していたからです。ふたりは何が起こっているのかを理解していた。ウクライナではクーデターが起こっていた。換言すると、ある種のヨーロッパ的な指導者がいなければならなかった・・・。 

SS: それは米国に対して「NO」と言わせるでしょうか? 

OS: はい。それはひとつの表現でもあります。ド・ゴール将軍が米国に向かって「NO」と言った時、私は彼の近辺をうろついていました。あれは実に良かった。ド・ゴールは非常に誇り高い人物で、フランスの誇りでした。人々はそのことに期待をかけた。しかし、政治ブロックが崩壊するという別の事態もあり得る。もちろん、中国がいる。中国は実に巨大な数値だ。だが、米国は中国には強硬政策を取っている。でも、そうは言わない。相手を好きになることこそがそのことをロシアに伝えることになるんだと思います。しかし、われわれや日本が反中国であるのと同程度にまで韓国を武装する理由は中国を封じ込めるためのものです。私は韓国を心配しています。何故かと言うと、ここでもまた、われわれは莫大な量の武器を日本や韓国へ注ぎ込んでいるからです。瞬時に爆発するかも知れない火薬庫みたいなものだ。とてもじゃないが、好ましい状況とは見えない。仮に私があなたの年齢であれば、私は自分に残された歳月を全うしたいと願うでしょう。あなたはどうしますか?あなたはこのことに一般大衆の関心を引き寄せようとしている。今出来ることの中ではその仕事は最高だと思う。

SS: 私の観点から言いますと、あなたはこのことについて是非とも映画を製作するべきです。間違いなく、この仕事は中断しないで欲しいと思います。 

OS: それこそが記録映画が存在する理由なんです。それこそがこの映画を製作した理由なんです。私には気になっていたんです。平和にはもう一度機会を与えたかったのです。今思うに、30時間にもわたるインタビューでプーチン大統領と話をする度に、プーチンは力の均衡、お互いの主権の尊重、そして、世界の平和を願っており、それ以外はまったく何も念頭にはないことに気付かされたのです。ところが、連中はプーチンからそのことを受け取ろうともしない。悪い奴だと思っている相手が実際には世界平和を求めているなんてとても信じられないようです。

SS: オリバー・ストーンさん、この素晴らしいインタビューに感謝致します。すべてがうまく行きますよう祈っています。

OS: どうも有難う、ソフィー。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

オリバー・ストーンはプーチンとのインタビューを通じて、プーチンが何を一番大事にしているかを読み取った。彼は今思うに、30時間にもわたるインタビューでプーチン大統領と話をする度に、プーチンは力の均衡、お互いの主権の尊重、そして、世界の平和を願っており、それ以外はまったく何も念頭にはないことに気付かされたのです」と述べている。

この政治的姿勢が如何に重要であるかは議論を待たない。世界が平和でなかったら、結局、核戦争によって人類はこの地上から消え去る運命にあるからだ。

人間社会はさまざまな問題を抱えており、個々の問題が何時になったら解決できるのかは分からない。人種差別、人権、性差別、余りにも大きくなった貧富の差、各国間の経済格差、他国に対する干渉、等、個々の課題はそれぞれが重要なテーマである。重要な課題が山積している。しかしながら、人類の生存を左右する「世界の平和」、「核兵器の撤廃」といった課題と比較すると、これらの政治課題はどう見ても二次的な存在だ。言うまでもなく、人っ子ひとりもいない世界がやって来たら、元も子もない。われわれ一般庶民はこの点を明確に意識して、政治を監視して行かなければならない。平和にもう一度機会を与えるために・・・。



参照:

1Oliver Stone: Putin is ready to negotiate on everything but Russia’s national interests: By RT, Aug/13/2018