2019年1月20日日曜日

対ロ秘密戦争を続けるデイープステーツ


2018年105日、ペンタゴンが146ページの文書を発行した。この文書の名称は「Assessing and Strengthening the Manufacturing and Defense Industrial Base and Supply Chain Resiliency of the United States」。狙いは何か?これはロシアと中国を相手にした戦争のための準備に関して述べたものである。
この文書についてはある著者(Andre Damon)が詳しく内容を説明している(注1)。それによると、米国が核大国の2番目および3番目の国家と全面的な対決を目指し、「今晩にでも戦争を始める」という軍事的目標を達成するためには、米国の経済を戦争経済に改編する必要があるというのがその趣旨である。米国の製造業ならびに防衛産業基盤はこの報告書を遵守し、我が国の兵士らが頼ることができるような「プラットフォームとシステム」を構築しなければならない。この複合体制には政府だけではなく民間部門も参画する。これには「研究開発組織」や「学究分野」も含まれる。換言すると、経済の全域が網羅され、社会全体が戦争準備の対象となる。
しかしながら、Andre Damonに言わせると、ペンタゴンが発刊した上述の文書については大手メディアは何故かほとんど報道しなかった。
もうひとつの記事(注2)によると、対ロ戦争はすでに秘密裡に遂行されているという。視点を少し変えて世界を観るだけで、われわれを取り巻く世界はガラリと変わってしまう。驚くほどだ。個々の出来事を独立した事象として観るのではなく、より大きな対ロ戦争という枠組みで改めて見直してみると、個々の事象が巨大なジグソーパズルの全体像を構成する重要な要素として浮かび上がって来るのだ。
本日はこの記事(注2)を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>

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ロシアは1000年もの昔から存在する陰謀論に今でも狙われているのであろうか?この陰謀論は非常に古く、中央銀行を築き、君主に対してはもう一人の君主を擁立し、何世紀にもわたって継続されて来た。まさにこれはトランプが唱えるディープステーツのことではないか?ディープステーツは大金持ちや中央銀行および産業界の徒党が織り成すネットワークである。

今日、彼らはテロ攻撃を仕掛け、旅客機を撃墜し、世界中のメディアさえをも所有している。

2018年のクリスマスの日、イスラエルの軍用機は二機の民間航空機の背後に隠れてシリアを攻撃した。その内の一機の民間航空機はダマスカスに着陸した。レバノン政府はイスラエルによる自国の空域に対する侵犯と軍事行動は狂気の沙汰であると述べて、激しく非難した。イスラエルのこの行動はイスラエル首相のベンジャミン・ネタニヤフに関する「不信任」の投票から23日後のことであった。汚職の容疑によって彼は首相の任を解かれる可能性がある。

これと同様の攻撃が2018919日にシリア・ロシア軍に対して行われた。イスラエル機は着陸態勢に入っていたロシアのイリューシン20型偵察機の後方へ位置し、イスラエル機はロシア機を「人間の盾」として用いたのである。この行為によって、15人のロシア兵が犠牲となった。

キエフからの消息筋からの証拠によると、2014年に起こったMH17便の撃墜にはキエフで活動していたイスラエルのチームが関与していたことが今や判明している。ウクライナとアゼルバイジャンから発進したイスラエルのパイロットらはMH17便を「人間の盾として用いようとした。

しかしながら、この時は攻撃を行うべき地上の目標は無く、この出来事そのものはホワイトヘルメットによる偽物の化学兵器攻撃とよく酷似している。化学兵器攻撃をでっち上げ、世論を操作するために用い、NATOや米軍をその紛争に引きずり込むための仕掛けであった。

そのシナリオは次のような具合だ:

ウクライナの航空機を操縦するイスラエルのパイロットはSU27型機にイスラエル製の「レーダー・スプーフィング」を装着して地上攻撃を専門とするSU25型機になりすまし、マレーシア航空機を追尾した。モサドはキエフの管制塔に航空管制官を張り付け、過去に航空機による戦闘の歴史があることから「飛行禁止空域」とされている領域に向けてマレーシア航空の旅客機を誘導した。

この出来事を可能にしたひとつの要因は強力なレーダーを備え、二人乗りのイスラエルのF15戦闘機である。このF15機はアゼルバイジャンから発進した。イスラエルは2010年以降アゼルバイジャンにこういった軍事能力を備えて来た。この証言は投降したアゼルバイジャンの将校がアゼルバイジャンにおけるイスラエルの存在に関してイランの官憲に喋った内容である。アゼルバイジャンからイランを攻撃するという魂胆だ。

この非難の重要さから察するに、何らかの記録をこの時点で提供しておく必要がありそうだ。ロイター通信からの情報を下記に示しておこう:

トーマス・グラブ記者(ロイター) - イランの各施設を攻撃するというイスラエル独自の選択肢は中東全域をイライラさせ、米大統領選では主要な同盟国である米国を動揺させた。

ベンジャミン・ネタニヤフ首相はテヘランが核兵器能力のレッドラインに至るには1年を残すだけとなったと述べて、イライラ振りを示した。しかし、イスラエルの同胞の多くは米軍の支援も無しに行う一方的な攻撃はイランのように大きく、しかも遠距離にある敵国を攻撃することは失敗に終わるのではないかとの恐れを抱いている。

しかしながら、たとえワシントン政府の支援が無くてもイスラエルが単独ではないとしたらどうであろうか?

アゼルバイジャンは産油国であり、イランの北側に接し、旧ソ連の一員であったが、アゼルバイジャンの軍事政策に詳しい消息筋によると、イスラエルは、アゼルバイジャン側と共に、アゼルバイジャン国内の空軍基地とスパイ・ドローンを活用することによってイスラエルのジェット戦闘機が如何にして長距離攻撃を成功させることができるかを詳しく研究していたという。

それはネタニヤフがワシントン政府に期待する最強の軍事力や外交分野における援護からは程遠い。しかしながら、イスラエルの戦争計画では必ず表面化するイスラエルが持つ主要な弱点、つまり、給油、偵察、救助要員、等の課題に着目すると、アゼルバイジャンとの同盟関係はイスラエルが米国の支援なしでも軍事行動を起こす可能性に傾倒させる何らかのメリットがあるようだ。

これは広範な地域に暴力的な副作用をもたらすかも知れないし、アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領はエネルギー産業に損害を与える可能性があるとして、多くの人たちが懸念している。彼の富はこのエネルギー産業次第である。あるいは、イスラエルからの好意を勝ち取ろうとする彼の政権を覆そうとするイスラム派をさらに挑発することになるかも知れない。

このストーリーの背後にはまだたくさんの事柄がある。たとえば、ジョージア政府との共犯行為である。2010年の7月、黒海に面するジョージアのポティ港で米国の艦艇「グラップル」から爆弾が陸揚げされた。この陸揚げを行った職員は直ちに「べテランズ・トウディ」の責任者であるジェフリー・シルバーマンにこの積み荷と目的地に関して報告をした。

話を元の筋書きへ戻そう。われわれのキエフの消息筋によると、計画としてはこうだった。イスラエルの諜報組織と一緒に作業をしているキエフ政府によって変更された飛行経路へMH17便を誘導し、ミサイルによって撃墜する。もしもこの計画が奏功しなかった場合は、同旅客機を追尾している戦闘機が撃墜するというものであった。 

2018321日、「低高度」で飛行するSU25機を操縦していたとして間違って非難されていたウクライナのパイロット、ヴラディスラフ・ヴォロシンが「自殺」した。しかし、実際には、イスラエル空軍のパイロットがSU27機を操縦していた。われわれの消息筋は彼は殺害されたのだと言う。ところが、英国のインデペンデント紙は下記のように報じた: 

マレーシア航空のMH17便を撃墜したとしてロシアが避難していたウクライナのパイロットは既報のごとく自殺した。

低空を飛ぶSU-25攻撃機を操縦したヴラディスラフ・ヴォロシン大尉は南ウクライナの故郷の町、ムィコラーイウの自宅で自殺したと地方紙が報じた。

ロシアの高官やメディアはヴォロシンがボーイング777型機を撃墜し、298人の乗客と乗員のすべてを殺害したとして非難していた。

しかしながら、2年間に及んだオランダの調査はロシア製のブク・ミサイルによって撃墜されたとの結論を下した。


本件に関してはワシントン所在の法律事務所とマレーシア首相との間で法的な対処に関して内密のやり取りがあった。その内容は下記の通りである:

モハマド・ナジブ・ビン・トゥン・ハジ・アブドゥル・ラザク首相閣下
マレーシア首相官邸
Main Block, Perdana Putra Building Federal Government Administrative Centre 62502 Putrajaya, Malaysia

201499

用件: マレーシア、カザナおよびマレーシア航空 

親愛なるトゥン・ハジ首相閣下:

マレーシアの代理人となり、マレーシア航空に関わる法的課題やその他の問題について国内ならびに国際的な協調体制を確立するに当たってわれわれが支援を提供するという当方からの申し出に対する閣下のご高配に感謝致します。

われわれは小国の指導者にとっては大きな挑戦となる国際的な課題を解決する閣下の卓越した外交を十分に理解し、感謝するものであります。私どもは閣下にさらに大きな成功をもたらすことが出来るものと自負しております。

われわれは次のような分野においてマレーシアの代理人を務めたいと考えます。そうすることによって、われわれはマレーシアや貴国のカザナ・ナショナル、航空会社ならびに閣下ご自身にとって大きな価値となることでありましょう:

MH17便事件、MH370便事件、等に関してマレーシア航空のための顧問弁護士の役割を提供いたします。例えば、リストラ、ブランド名の変更、労組問題、刑事裁判、民事裁判、等。

MH17便事件に関して閣下が国際刑事裁判所の判断を得たいとお望みでしたら、われわれはそのような裁判権を獲得するために閣下のために法律顧問を務め、ご支援を提供し、国連やウクライナ、ロシア、中国、フランス、英国、米国において閣下のために必要な役割を務めたいと考えます。

私どもの弁護士はMH17便の撃墜によるマレーシアや他の国の被害者のご家族ならびに貴国の航空会社に正義をもたらす上で指導的な役割を演じる用意があります。また、そうすることが可能でもあります。われわれはウクライナや反政府攻撃者、ロシア、米国、保険会社、もしくは、その他の団体・組織に対抗し、犠牲者のご家族や貴国の航空会社へ正義をもたらすために必要となる極めて複雑な多国籍訴訟を完遂する所存であります。

私自身が関与した個人的なコンサルタント業務の後、マレーシア首相はすでに脅かしを受けており、正義を目にすることはもう「許されない」だろうと私に告げた。この脅迫は「ディープステーツ」というわれわれの定義に相当する筋からもたらされたものであった。この事実はこの時点以前に報じられたことはない。

2014年717日、ウクライナ東部の親ロシア派地域の上空でマレーシア航空のMH17便が撃墜された。この事件に関して新たな情報源が名乗り出て来た。その主張が正しいとすれば、さらには、情報源を評価付けする手続きによって本情報が「起訴をすることができる」、あるいは、「高い信ぴょう性がある」と評価されれば、この情報は過去数カ月間の出来事にまったく新しい光を投じることになるであろう。

現在メディアによって描写されているように、情報は斑模様を呈している。共謀論を主張するブログによく見られる「点と点をつなぐ」ような推論、あるいは、トランプ大統領が大手メディアに関して暴露したような論理はめったには見られない。

端的に言って、ロシアは狙われている。ロシアの広大な領土、尽きることがない天然資源が何百年にもわたってモスクワ政府に「事故多発地域」という異名を与えて来た。ヒットラーやナポレオンが失敗に終わった試みが今でもなお実際には終ってはいないのである。また、他の者たちはロシアを相手に政治戦争、プロパガンダ戦争、経済戦争を遂行している。

「ロシアゲート」はそのような戦争のひとつの部分である。スクリッパル父娘毒殺未遂事件も然りだ。また、シリアで化学兵器攻撃をでっち上げ、それに関してロシアを非難することもまったく同列にある。

これらとは別に、ロシアはジョージアのトビリシで米国が関与している生物兵器作戦の目標にされているのではないかと推測できるような強力な証拠が存在する。一例を挙げると、多分、事故であったかも知れないが、致死性の高い、兵器化されたインフルエンザの毒素がジョージア国内で放出された。こういった「事故」は以前にも起こったことがあり、不思議な、説明の施しようがない豚インフルエンザの流行を引き起こしている。考え得る運び屋が存在しないにもかかわらず、この流行は何千マイルも離れた飛び地で発生したのである。

今日、われわれは指を差し始めた。そうするためには、われわれはディープステーツとはいったい何か、いったい誰なのかについて定義をしておく必要があろう。この言葉はトランプが初めて使ったものであるが、超政府的な采配の背後に「隠れた役者」を表現するのにはさまざまな言い方がある。歴史家は個人的な脅威を感じながらこのことを論じることになるのであろうが、その歴史は連綿と続き、実在の人物が登場し、本当の氏名が絡んでくる。歴史を通して観察される限りでは、この系譜は単に何世代という比較的短い期間ではなく、何世紀にもわたっているのである。

「国際的銀行家」あるいは「悪徳資本家」といった用語を使用することは余りにも過小評価した表現であって、妥当ではない。銀行家が国外へ追放された歴史は明確そのものである。英国からは1289年にエドワード一世によってある銀行家が追放された。スペインでは1492年にある銀行家が追放され、それ以降にも豊富な歴史がある。

連邦準備「銀行」の手によって米国で最近引き起こされた経済崩壊を調べると、まったく同様の特性を持ったディープステーツの姿がはっきりと見えて来る。ここで、われわれは1492年以前のスペインからスタートしてみよう。当時、スペインではパレンスエラ家が貸した金の高金利によって国家を搾り取っていた。新世界におけるスペインの黄金帝国はその時点よりも1世紀も後のことだ。

敵、即ち、パレンスエラ銀行カルテルは1942年にベニスへ逃亡し、「デル・バンコ」あるいは「オブ・ザ・バンク」と名前を変えて、今までの名前と犯罪歴とを捨てた。そして、彼らはベニスからドイツのウォーブルグという町へ引っ越して、姓を「ウォーブルグ」に変更した。この姓に聞き覚えがあるとすれば、それは1913年に「連邦準備法」を起草したポール・ウォーブルグのことだ。彼は連邦準備銀行の初代頭取となった。

先ず、米国は憲法で否定されている中央銀行を持つことになった。そして、何年か後には、米国はヨーロッパで戦争をしていた。これは単なる偶然であろうか?

他にも名前がある。たとえば、アストールズ、あるいは、アストールガスはスペインから追い出されていた。さらには、カボッツ。むしろ、カボタスと言った方がいいだろうか。彼らもスペインから追放された。これらの銀行家は奴隷制度とアヘンの売買によって米国に莫大な富を築きあげた。当時、アヘンの売買は中国で行われ、今はCIAによってアフガニスタンで行われているが、相変わらず昔と同じ家族が取り仕切っているのである。

これがディープステーツだ。他にも呼び方がある。それらの幾つかはあなた方もご存知だろう。また、たとえば、闇に隠れ、背後から糸を引く「新興財閥」とか「中心人物」といったあなた方が知らないようなまったく新しい呼び方も存在する。

これらの雑多な組み合わせにさらに加わった一団がある。グーグルとかフェースブック、あるいは、まったく目には留まることがない「シリコンバレー・ウオリアー」は政治、経済、通商、文化の分野で橋頭保を築き、彼らの存在は世界中の人々によって認識されている。彼らはディープステーツの諜報役、すなわち、「世界の知覚」の役割を持っている。
しかし、その知覚は病理学的には狂気じみており、その性格は犯罪者的でさえある。

千年以上もの歴史を持ってはいるが、彼らは変化し、適応する。しかしながら、彼らの行動パターンは丸見えだ。彼らはISISであり、アルカエダであり、彼らはCIAMI6であり、彼らは政府を買収し、戦争を行い、混乱は彼らの貴重な道具であり、人間性は彼らの餌である。

彼らにとっては自分たちの完全なコントロール下に収まらないものは何でもが脅威であるのだ。


著者のプロフィール: ゴードン・ダフはベトナム戦争時代には海兵隊の戦闘員であった。元兵士や戦争捕虜に関わる諸々の問題に何十年にもわたって関与して来た。また、安全保障問題を抱える政府に対して顧問役を務めた。「ベテランズ・トデイ」の上級編集者ならびに重役会の会長を務め、オンライン情報誌である「ニュー・イースタン・ルック」に寄稿している。


<引用終了>




これで、全文の仮訳が終了した。

ディープステーツについての具体的な解説をしてくれた著者に感謝したいと思う。この引用記事を読んだことによって、現在の世界を動かしているメカニズムを鮮明に理解することができるようになった。少なくとも、私にはそう思える。

米国が仕掛けている対ロ戦争のさまざまな局面の中でもっとも興味をそそられる出来事は、私の個人的な観点から言えば、MH17便撃墜事件だ。2014年の撃墜事件以降、オランダ政府を中心とした国際調査団が結成された時、私はこの調査団の構成内容では真実は究明されないだろうと感じていた。まったくその通りに終わった。この引用記事の著者であるゴードン・ダフも間違いなくそう信じている。マレーシア首相が脅迫を受けて、この事件を国際刑事裁判所へ告訴する道が閉ざされてしまったという事実はこのMH17便撃墜事件の本質を雄弁に伝えていると言えよう。この事件を操った黒幕にとってはマレーシア政府が配慮していた国際刑事裁判所への提訴は何としてでも潰さなければならないと必死だったに相違ない。

また、この撃墜事件にはイスラエルが大きく関与していたとする報告は「ああ、そうだったのか。やっぱりな~」という感じがする。イスラエルの関与に関する情報については、私は今までまったく気が付かなかったのだが、今後さらにわれわれの関心をひくことだろうと容易に想像される。




参照:

1Pentagon Report Points To US Preparations For Total War: By Andre Damon, Information Clearing House, Oct/11/2018

2The Deep State’s Secret War on Russia: By Gordon Duff, NEO, Dec/31/2018




2019年1月12日土曜日

シリアから米軍を撤退させるためにトランプはこの1年間将軍らとの戦いを続けてきた

トランプ米大統領は気まぐれで、外交についてはまったくの素人だと批判する声がたくさんある。それだけではなく、トランプは軍・安全保障複合体によって懐柔されてしまったと見る向きが最近多い。このブログでも、12月22日に「トランプは軍・安全保障複合体によって潰された」と題する投稿を掲載したばかりである。

しかしながら、話はそれ程単純ではないようだ。

最近の報道で「シリアから米軍を撤退させるためにトランプはこの1年間将軍らとの戦いを続けてきた」との表題を持つ記事が出回っている [注1]。私は「オヤッ」と思った。トランプのまったく違った側面を伝えているからだ。少なくとも、私は完全に意表を突かれたような印象を覚えた。一般的に言われているトランプの気まぐれな言動からは1年間も政府内の反対派と戦うトランプの姿を想像することは難しい。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>

副題: 他の大統領たちに対して行ったのとまったく同様に、トランプの国家安全保障チームは彼を封じ込めようとした。しかし、彼は連中のはったりにしっぺ返しをしたのである。

この50年間で彼は好戦派による封じ込めを許さない初の大統領となった。

大手メディアは、シリアから米軍を撤退させるというトランプ大統領の決断は衝動的で、彼の国家安全保障チームに不意打ちを食らわすものだと述べて、大統領を攻撃した。しかしながら、この1年間の政策提案の過程を振り返って、それらの詳細や公開されている説明を検証してみると、まったく違ったトランプ像が浮かび上がって来る。国家安全保障部門の高官らや利己心の旺盛なこれらの組織は、シリアに米軍を恒久的に駐留させるという決断においてトランプが迷うことがないように、何か月間にもわたって極めて複雑な政治ゲームを進めて来たことが分かる。

つまり、全体のエピソードを見ると、ベトナム戦争の頃にまで遡るもので、良く知られたパターンではあるのだが、新たな類型が浮かび上がって来る。当時、国家安全保障担当補佐官らは気が進まない大統領に圧力をかけて、戦闘地域ですでに実施されている軍事展開に了解を与えるよう、もしくは、その種の計画に賛同してくれるよう求めたものだ。違いがあるとすれば、それはトランプが違った政策を公に採用し、連中の見え透いた計画を吹き飛ばし、米国に新たな進路を与えようとしたことだ。この動きは恒久的な戦争状態を維持しようとするものではない。



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トランプ政権の発足以降、トランプと国家安全保障チームとの関係は緊張状態にあった。2017年夏の中頃までには、ジェームズ・マチス国防長官や統合参謀本部議長のジョセフ・ダンフォード将軍は米軍の世界的な配備を正当化しようとする自分たちの報告に対してトランプが否定的な反応を示したことから、トランプをひどく警戒するようになっていた。彼らはペンタゴンで統合参謀本部が使用する「タンク」にて公式の報告会を開くことにした (訳注: ペンタゴンの会議室は窓がなく、あたかも戦車の中に居るような印象を受けることから「タンク」と呼ばれている)。

マチスとダンフォードとが「過去70年間にわたって平和を維持」して来た「ルールに基づく国際的な民主主義秩序」を讃える賛歌を唄いあげていた時、トランプは信じられないとでもいうように頭を横に振っていた。

しかしながら、その年の終わりまでには、マチスとダンフォードおよびマイク・ポンぺオ国務長官らは米軍はイスラム国の武装兵力を駆逐するだけではなく、シリアの北東部を安定化させ、ロシアやイランの支援勢力と均衡を保つ任に当たらせることにトランプの賛同を得ようと努め、これに成功したと信じるようになっていた。しかしながら、米軍をシリアに恒久的に駐留させるという構想をトランプが引き続き嫌っている兆候については彼らは無視した。

3月のオハイオでの遊説でトランプは表面上は保険制度改革を喋っていた。しかし、突然、うっかりと「われわれはシリアから撤退する。直ぐにだ。シリアは他国に任せておけばいい。直ぐにでも撤退する」と口走った。

その後、2018年4月の始めには、シリアに関しては担当補佐官に対するトランプの忍耐心が尽きて、国家安全保障会議での大きな対立へと発展して行った。同会議でトランプは基本的にまったく異なる政策を彼らが明確に受け入れるよう命じたのである。

トランプは米国はシリアへの介入を終わらせ、もっと広義には、中東に対する介入を収束させなければならないとする彼自身の公の持論を引っ提げて、会議を開催した。すでに報じられているAP電の説明によると、米国はその努力の割には「何の利益」も得ていないと彼は繰り返して議論を展開している。これはその会議に出席していた政府幹部とのインタビューで入手した説明である。ダンフォードがトランプに大統領が望んでいることを明確に言って欲しいと迫ると、トランプは米軍を直ちに撤退させ、シリアの「安定化」プログラムには終止符を打ちたいと述べたのである。

マチスはシリアからの即時撤退を責任のある状態で実施することは不可能だ、イスラム国が舞い戻って来る危険性があり、米国の国益に反する目標を持ったロシアやイラン、トルコの手中に陥るようなものだと述べて、反論した。

トランプは、既報の如く、折れて、こう言った。「イスラム国を撲滅するには5~6カ月の時間をやろう」と。しかし、10月に彼の元へやって来て、ISISを壊滅することは出来なかったので、シリアに居残るとは言わせないと念を押して、キッパリと指示をした。彼の担当補佐官らが米国が責任のある形で撤退することは不可能だと改めて言うと、トランプは「任務を遂行するだけだ」と彼らに告げた。

トランプの国家安全保障チームは会議のために注意深く準備をし、彼の関心を明確な撤退予定の議論からは遠ざけようとした。彼らは撤退予定に関する具体的な選択肢を省いた書類を持参した。その代わりに、AP電の詳しい報告が伝えているように、彼らは即時撤退か、あるいは、イスラム国を完全に、しかも、恒久的に排除するために必要な恒久的な駐留をとるかという二者択一の案を示した。撤退案はISISが舞い戻って来る危険性があり、勢力の真空地帯を生ぜしめ、そこへロシアやイランが居座るだろうとの予測を示した。

このような二者択一の戦略は、政府関係者によると、かってはうまく行ったものだ。このことは2018年の前半にトランプが何か月にもわたってシリアに関しては沈黙を保っていた事実を説明している。その頃、当時の国務長官であったレックス・ティラーソンやマチスは長期間にわたる駐留を実現するための詳細な議論を進めていた。

このアプローチが上手く行ったもうひとつの理由はトランプがバラク・オバマがアフガニスタンからの撤退に関してペンタゴンに予定を示していたことを大問題として扱ったことにある。その結果、彼はシリアからの撤退予定に関して公に同様な要求をすることには消極的になっていた。CNNが報じているように、この会議において簡潔な説明を受けた国防省の高官は「何らかの予定が議論されたという事実はきっぱりと否定した。」 さらに、同高官は「マチスは撤退の選択肢を練り上げる指示は受けなかった・・・」と断言している。米統合参謀本部のケネス・マッケンジー中将は記者たちに次のように述べた。「大統領はわれわれに具体的な予定を求めなかった。実際問題として、これは実に好ましいことだ。」 

それでもなお、予定を言及することもなく、ホワイトハウスが出した短い声明文はシリアにおける米国の役割は「急速に終わりに近づいている」と述べている。

マチスとダンフォードは大統領が自衛の側に回っていることにつけ込んで、意識的に自分たちの戦略を押し通そうとしたが、それは大統領がそのことに関して公に彼らを招集するまでのことでしかなかった。トランプが言っていた6カ月の期限が来る数週間前に起こったのはまさにそのことだった。トランプの補佐官らは不意を食らったと言っていたが、実に不誠実な言動である。先週起こったことはトランプが4月に述べていた明確な政策をおさらいしただけに過ぎないからだ。

シリアからの撤退という仕事は前政権がもたらした永遠の戦争状態に終止符を打つことに関してトランプ政権が基本的な苦境に見舞われていることを物語っている。米国市民の大多数が中東やアフリカに対する米軍の配備は抑制するべきだと希望しているにもかかわらず、トランプの国家安全保障チームは丸っきり逆のことに専念しているのである。

トランプは自分と同じ目標を抱く補佐官なしでは外交政策を実施することは事実上不可能であることを今や十分にわきまえている。これは永遠の戦争状態が続いていた間にはこの政治システムの外部に位置し、そのイデオロギーや文化には批判的であったような人物を迎え入れる必要があることを示している。もしもトランプが真の意味で反体制的な人物を重要な地位に抜擢することができるならば、トランプ政権のこれからの2年間に今日われわれがどっぷりと浸かっている永遠の戦争状態を招いた官僚や将軍らを首にすることが可能となるであろう。

原典: The American Conservative

<引用終了>


これで、全文の仮訳が終了した。

この記事の仮訳作業を通じてひしひしと感じさせられたことがひとつある。トランプ大統領は今までの2年間さまざまな妨害に遭遇し、サボタージュに見舞われ、自分が思い描いていた政策を思うように実施することはできなかったにもかかわらず、その水面下ではトランプ派と反トランプ派との間の暗闘が継続され、トランプ大統領の側が今や優勢になって来た、あるいは、そうなることを期待する見解が現れ始めた。実に大きな変化である。

もちろん、過去の事例を参考にすれば、シリアからの米軍の撤退はそう一筋縄では行かないであろう。

米軍が撤退した後には真空地帯が生じ、イスラム国が盛り返すかもしれないといった議論がある。シリアにとって幸いなことには、ロシアやイラン、トルコといった隣国が「アスターナ・プロセス」の枠組みを活用して、治安維持のために力を貸してくれるようだ。ロシアやトルコ、イランはシリアにおける停戦の保証人であって、シリア国内ですでに何ヵ所かについて停戦を成功裏に実現してきた実績がある。モスクワ政府は、テロと戦うシリア政府を支援し、一般市民に対しては人道支援物資を供給し、戦争当事者たちを交渉の席に着かせることによって、何年にも及ぶ紛争を決着させようと積極的な努力をして来た。(”Turkey calls for joint control with Russia and Iran over US troop pullout from Syria”: By RT, Jan/09/2019, https://on.rt.com/9ly7

トランプ政権の今後の展開を占う場合、もっとも悲観的に見ると、彼は軍・安全保障複合体に懐柔されてしまい、選挙運動中に彼が約束したロシアとの和解は実現しない。一方、その対極にあるのは、この投稿でご紹介しているように、ディープステーツとの暗闘の結果、トランプが軍・安全保障複合体を出し抜いて、ロシアとの和解に漕ぎつけるかも知れないと言う期待感が高まっている。果たしてどちらのケースになるのか?今は何とも言えない。

最後に一般庶民の感慨を私なりに一言付け加えておこう。

常識的な判断から言えば、シリアにおける米国の役割は終わったことは確かであり、米軍の撤退を速やかに実行することが長い目で見ると政治的にはもっとも妥当であると思う。もっとも重要なことは、非難先から祖国に帰還して来るシリア人たちを含めて、シリアの将来はシリアの市民が決断し、彼らが自分たちの決断を実行し、祖国を再建することだ。



参照:

注1:Trump Fought the Generals for His Syria Withdrawal for a Year: By Gareth Porter, The American Conservative, Jan/03/2019












2018年12月29日土曜日

ロシアゲート推進派は対ロ戦争を避けるよりも、むしろ、トランプを罷免したいのか?


米国の対外政策、特に、対ロ政策は今まで以上に歪んでしまっている。2016年の大統領選以降、トランプ政権を批判する民主党や大手メディアの論調はすでに正気の沙汰を越していると私には思える。民主党で代表される反トランプ派はあまりにも党利党略にこだわっていることから、真の意味での米国の国益を見失い、米国市民の安全安心を損ないかねない状況にある。そして、全世界の安全安心もだ。

米国や西側諸国にはそのような現状を憂える正統派の論客が何人もいる。たとえば、ポール・クレイグ・ロバーツやスティーブン・F・コーエン、アンドレ・ヴルチュク、ジョン・ピルジャー、クレイグ・マレー、グレン・E・グリーンワルド、ぺぺ・エスコバー、等。他にも数多くの名前が浮かんでくる。

しかしながら、彼らの意見や見解はトランプが選挙運動中に公約した対ロ関係の改善を論じると、その途端にこれらの論客は「ロシアの手先」としてレッテルを貼られ、彼らの主張や見解が大手メディアによって取り上げられることは極めて少ない。大手メディアは自分たちが流すフェークニュースによって自らが洗脳され、重度のフェークニュース依存症に陥っている。巨額の軍事費を予算化する正当性を維持するために(つまり、都合よく嘘をつくために)ロシア・中国は敵であるとする筋書きに固執し、ジャーナリストとしての使命はとっくの昔にゴミ箱へ投げ入れ、「ロシア叩き」の大合唱に興じているのが現状である。この一連の「ロシア叩き」は「ロシアゲート」とも称される。

スティーブン・F・コーエンはプリンストン大学とニューヨーク大学の名誉教授であって、ロシア学を専門とする学者である。彼の学問的な業績はロシア革命以降のロシア現代史ならびに同国の米国との関係に関する分野に見られる。米国においてはロシア学の最高峰である。米ロ関係を論じる場合、彼ほど適している人物は見当たらない。

トランプ大統領がロシアとの間で締結されているINF(中距離核兵器制限)条約を破棄すると宣言した(1019日のニューヨークタイムズの報道)ことから、この条約の舞台であるヨーロッパは米ロ間の軍拡競争の犠牲となりそうな気配だ。即ち、ヨーロッパは米ロ間の核戦争の戦場になる危険性が一段と高まっているのである。

この米国の発表を受けて、EUを率いるドイツのハイコ・マース外相は、1226日、「ヨーロッパは(米ロ間の)軍拡競争のためのプラットホームとなるべきではない。新たな中距離核ミサイルの配備はドイツでは大規模な反対に見舞われるだろう」と表明している。

最近、コーエン教授が「ロシアゲート推進派は対ロ戦争を避けるよりも、むしろ、トランプを罷免したいのか?」と題する記事を発表した [1]。非常に興味深い内容である。それと同時に、われわれ一般庶民の感覚にも共鳴し、極めて常識的な問い掛けであると私は思う。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。



<引用開始>

旧冷戦は40年間続いた。新冷戦は全世界が何とか生き延びることができた旧冷戦の単なる複製ではない。極めて重要な面において新冷戦はよりももっと危険である。2018年のさまざまな出来事が示唆するように実際の戦争の危険性を伴う。実例を挙げてみよう。

新冷戦は、今、軍事化への傾斜が目覚ましい。バルト諸国やウクライナおよびシリアでは米ロ間の直接武力対決、あるいは、代理勢力による抗争が推進され、より「使用が簡単な」武器を求めて米ロ両国は新たな核戦力の開発競争に入りつつあり、アトランティック・カウンシルといった大きな影響力を持つ冷戦推進派は「ロシアは欧州への進攻を企てている」という根も葉もない主張を流布している。さらには、モスクワ政府内の「タカ派」の影響力も高まっている。旧冷戦でも軍事化が著しかったけれども、新冷戦のようにロシアの国境に直接迫るようなことは無かった。東欧の小国からウクライナに至るまで、2018年にこれらの一連の動きが展開された。

ロシアゲートとはトランプ大統領がクレムリン政府の著しい影響を受けている、あるいは、その支配下にあるという主張である。しかながら、この主張はそれを裏付ける実際の証拠が何もないまま展開され、新冷戦においては非常に危険で、前例のない要素となった。クレムリンが2016年の大統領選に介入したのではないかという推測から始まったこの主張は主流派による当てこすりへと発展し、クレムリンがトランプをホワイトハウスに据えたのだという確信にまで成長して行った。その結果、危機の打開に向けてロシアのプーチン大統領と交渉をしようとするトランプの足を引っ張っている。こうして、ヘルシンキで開催されたプーチンとの会談では、トランプがその際に自分自身が大統領に選出されたことの正当性を防衛しようとしたことから、彼は「反逆罪」を犯したとして米国の大手メディアや政治家から広く避難を浴びた。その後2度にわたって、トランプは予定されていたプーチンとの会談をすっぽかした。アイゼンハワー以降代々の大統領が行ってきた指導者外交を今厳しく非難している政治家やジャーナリストならびに諸々の団体はロシアとの戦争を避けるよりも、むしろ、トランプを罷免しようとしているのか、と米国市民が問いただすことは非常に妥当な行動であると言える。

旧冷戦の後半には妥当なレベルでの均衡を実現し、事実に基づいた報道や解説を行っていたものであるが、今やそうした態度を実質的に放り出してしまった大手メディアに対してもまったく同じ問い掛けをすることが可能だ。たとえば、2018年には、プーチンが率いるロシアは「2016年に米国の民主主義を破壊しようとした」との彼らの主張は彼らが推進するロシアゲートや新冷戦の中心的な教義となり、回転軸とさえなっている。また、旧冷戦の頃とは違って、彼らは反対意見や代替意見となり得る報告や視点あるいは意見を排除し続けた。さらには、これらの大手メディアは多くの場合かって諜報部門を率いていた人物を情報源とし、解説者としているが、これらの人物たちこそがロシアゲートという筋書きを作り出した張本人であることは、今や、明白である。メディアによる過誤の好例はアゾフ海と黒海との間にあるケルチ海峡で起こった海上での抗争に関する報道にも見られる。これは、1125日、ウクライナとロシアの砲艦の間に起こった出来事だ。経験的事実はすべてが入手可能である。また、ウクライナのポロシェンコ大統領は20193月に予定されている大統領選で再選のチャンスを何としてでも高める必要があり、これらの状況から判断すると、これはキエフ政府による挑発であったことが歴然としている。しかしながら、それに代わって、米国の大手メディアはこの事件をまたもや「プーチンの攻撃」であると描写した。こうして、これは極めて危険な米ロ間の代理戦争であり、基本的に、米国の一般大衆は事実が完全に歪曲された報道に曝されているのである。

多くはこのような大手メディアの過誤によるものであり、米ロ関係においてはさまざまな危険が拡大しつつあるにもかかわらず、引き続き2018年にも新冷戦に反対する動きは見られなかった。議会における主流の政治そのものにも、二大政党にも、シンクタンクにも、大学のキャンパスにも見られず、ごくわずかの個人的な反対者が観察されただけであった。こうして、ロシアとの和解政策、または、トランプが何度も提唱していた「ロシアとの協力」は未だに主流の政治においては著名な支持者を見い出してはいない。この政策はかっては共和党の他の大統領、つまり、アイゼンハワーやニクソンおよびリーガンの政策であったにもかかわらずである。トランプはそうすることを試みたが、彼の意図は2018年にまたもや排除されてしまった。

ところで、「米国の民主主義を攻撃」し、今後もそうするだろうというロシアに対する言いがかりはロシアゲート推進派たち自身についてこそお誂え向きである。彼らの主張は制度としての大統領制を台無しにし、米国の選挙制度に疑問を投げかけた。「ロシアとの接触」や「より良好な関係」に関する提言を犯罪視することによって、さらには、米国のメディアにおいて大きな勢力を占め、曖昧模糊とした「虚偽情報」を流す組織を排除すると脅かしを掛けることによって、彼らは言論の自由や自由な発想によって高く評価されて来た米国社会をひどく損なってしまった。さらには、伝統的な政治的正義の概念は今やますます脅かされており、少なくともロシアに関して分かっていることから判断すると、それはマイケル・フリン将軍やソビエト流の扱いを受けたマリア・ブティナの事件で誤用された。この若いロシア人女性は、最悪の場合でも、「より良好な関係」の未明の(率直に言って極めて開放的な)擁護者であり、自国に関しても熱心な支持者であった。このことはロシアにおいても若い米国人によって長い間熱心に追求されてきたが、彼女は自白するまでの間、つまり、司法取引に応じるまで何か月にもわたって独房に監禁され続けた。そして、これが海外で公に「促進」されてきた民主主義国家の実態である。

最終的に、ロシアゲートの実態にはロシアの存在ががますます希薄となっている。それに代わって、「脱税ゲート」あるいは「セックスゲート」へと姿を変貌しつつある。米国の政治家やメディアのエリートたちがロシアゲートの虚構に憑りつかれている間に、彼らが口にする内容とはまったく異なり、彼らに注目されることは極めて稀な三つの最近の文献(訳注:1Outfoxed by The Bear? America’s Losing Game Against Russia in the Near East: By Michael A. Reinolds, Apr/25/20182Isolation and Reconquista: Russia’s Toolkit as a Constrained Great Power: By Marlene Laruelle, Dec/12/20183How the New Silk Roads are merging into Greater Eurasia: By Pepe Escobar, Dec/13/2018)に記されているように、ロシアは東方の外交大国へと成長している(訳注:ロシアの外交大国への成長とは何を指しているのだろうか。そのひとつはシリア紛争がロシアの支援によって収束しつつあることであろう。もうひとつは、11月にタリバンとアフガニスタン政府とがモスクワに招かれ、将来のアフガニスタンについてお互いに直接話し合いを行う機会が準備された。119日のことだった。報道によると、この話し合いは成功裏に終わった)。そうこうしている内に、世界規模の外交においてはワシントン政府の主たる盟友であるEUは自ら招いた、混迷するばかりの危機に陥りつつある。

著者のプロフィール: スティーブン・F・コーエンはプリンストン大学とニューヨーク大学の名誉教授で政治学とロシア学を専門とする。ジョン・バチェラーが毎週コーエン教授との間で米ロ間の新冷戦に関して議論する対談番組は5年目の記念日を迎えている。(これ迄の放送分はTheNation.comにて視聴可) 

本稿はまずThe Nationにて出版された。


<引用終了>



これで引用記事の全文の仮訳が終了した。

米国の軍・安全保障複合体が求めているのは大きく膨れ上がった軍事費を正当化することが可能な「大きな敵国の存在」である。911同時多発テロを受けて、米国がすかさず対テロ戦争を宣言したのもこの流れの中にある。あの同時多発テロは対テロ戦争を開始するための引き金であったという指摘もある。いわゆる、自作自演である。

この種の指摘は、201444日付けの「軍事予算を確保するために大きな敵を探そうとしている米国」と題した私の投稿でもご紹介したことがある。その投稿では、政治分析を専門とするパトリック・ヘニッグセンの言葉として、「米国の年間国防予算が1兆ドルにも達し、ボーイング社のような超ド級の防衛関連企業のロビー活動が高まる中、これだけの大金の出費に関しては米国は世界中で新たな敵を具体的に作り出さなければならない」という指摘をご紹介した。 

あれから4年半が経った。米国は、今や、ロシアと中国を大っぴらに敵として位置付けている。貿易戦争、経済戦争、金融戦争、情報戦争、ハイブリッド戦争、等は激しくなるばかりだ。そして、通常兵器による代理戦争は後を絶たない。今や、米国では「永遠の戦争」という言葉さえもがメディアで使用されている。

イラクやシリアならびにイエメンでの事例で明白になっているように、戦争がもたらす最大の問題は必ずしも将兵の死亡ではなく、それは何百万人もの一般市民が巻き添えとなって生命を失うことだ。それに加えて、さらに何百万人もの市民が故郷から追い出され、難民化することだ。これ程の不幸の責任はいったい誰がとるのだろうか。

米ロ戦争の場合、通常兵器による戦争が何時の間にか核戦争に切り替わる可能性があり、これが最大の懸念だ。米ロ両国には地球上の人類を10回も絶滅させるに十分な量の核兵器が備蓄されている。そして、数多くの専門家が指摘するように、米国が志向する先制攻撃はロシアの核兵器を一掃することは不可能で、必ず報復攻撃を受ける。この報復攻撃は次の連鎖をもたらす。両国の将兵は最後の一発まで核ミサイルを相手側に発射しようとすることだろう。

米国の一般市民や政治家、ジャーナリストらが現行の対ロ戦略は大きな間違いであることに気づかない限り、人類は皆が蒸発してしまうことになる。

核戦争を回避するという政治課題は他の如何なるテーマよりも重要である。米国の国内政治がトランプ大統領の罷免を目指し、その過程で何の根拠もなくロシアを敵扱いし続け、軍事演習を行い、ロシアを挑発することの危険性は甚大である。引用記事にも述べられているように、旧冷戦では米ロ両国にはまだ節度があった。しかしながら、新冷戦では米国側はロシアとの外交的対話を放棄してしまったようだ。トランプ大統領は国内の反対派からの圧力を受けて、プーチンとの会談を最近二回もドタキャンした。

こうして見ると、コーエン教授が示した対ロ戦争を回避することは現実に最大級の課題であり、これに勝るものは何もない。実に正当な見解であると私は思う。

2019年には米ロ間に何らかのマジックが起こって欲しい。核戦争の回避に向けた具体的なロードマップを見たいものである。





参照:

1Do Russiagate Promoters Prefer Impeaching Trump to Avoiding War With Russia?: By Stephen F. Cohen, The Nation/Information Clearing House, Dec/24/2018








2018年12月22日土曜日

トランプは軍・安全保障複合体によって潰された


トランプ米大統領の今後の政策が怪しくなってきた。少なくとも、最近の記事 [注1] によると、トランプはついに軍・安全保障複合体によって潰されたとのことだ。

この記事が言うようにトランプが軍・安全保障複合体によって潰され、ネオコンや好戦派の言いなりになってしまったとすれば、今後のトランプ政権の対外政策は大きく変わることだろう。

彼が2年前の大統領選で公約した「対ロ関係の改善」は限りなく遠のくこととなる。

「対ロ関係の改善」を促進する代わりに、新冷戦の構図を維持し、世論を誘導するために、大手メディアは、2016年の大統領選で起こったと彼らが主張するロシアの干渉は実証できなかったものの、またもや「ロシア人がやって来る」と大合唱を再開することだろう。在りもしないロシアの脅威を絶え間なく喧伝することによって、日本を始めとする米国の同盟国は不要な米国製武器を大量に購入させられ、年中行事化した合同軍事演習のために莫大な費用を拠出させられる。こうして、米国の軍需産業だけは短期間の内に大きな利益をあげることが可能となる。

これこそがディープステーツの狙いだ。世界平和は彼らの最大の敵なのだ。

ロシア、中国、その他の反米諸国は米国とその同盟国に対峙することになる。米国の最終的な目標はロシアや中国が地域覇権国として存在し、さまざまな天然資源を有するユーラシア大陸を自分たちの影響圏に含めることである。覇権国としての米国の世界観は国連憲章や国際法を遵守し、外交努力を優先する合理的な世界とはまったく異なる。それは軍事力とプロパガンダとがすべてを優先する世界だ。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>

軍・安全保障複合体から自分の身を守るために、トランプ大統領はロシアと和解するという選挙民との公約を投げ出した。まさにネオコンのイデオロギーが米国の覇権を必要とするように、軍・安全保障複合体は1兆ドルにも達する年間予算を正当化するためには敵の存在を必要とするのだ。クリントンやジョージ・W・ブッシュならびにオバマの政権がロシアを敵に仕立て上げたのである。トランプはこれを変えようとしたが、彼の意図は葬り去られた。

ロシアゲートはトランプ大統領を屈服させるために組織化されたものだ。スティーブン・コーエンや私も含めて何人かが主張しているように、ロシアに対する組織化された対峙がもたらす核戦争のリスクは、今や、冷戦時のそれ以上に危険な状況を呈している。冷戦時には、ワシントン政府とモスクワ政府は少なくとも両国間の緊張を和らげ、相互の信頼を構築しようとする政治的意思があった。しかし、21世紀の今、ワシントン政府は信頼感をぶち壊してしまったのである。

ロシア側は非常に忍耐強く、ワシントン政府の侮辱や挑発に対しては喧嘩腰の態度を取らず、それを避けて来た。しかしながら、彼らは、今や、「ロシア側の忍耐は限界に達した」と言い始めている。

アンドレイ・コルトウノフはトランプ大統領を非難しているが、最大の問題はネオコンや軍・安全保障複合体、プレスティチュートのメディアであり、それらの組み合わせである。この組み合わせは全体としてひとりの大統領にとっては途方もなく大きな力を見せた。民主党およびリベラル派・進歩派・左派はこの悲劇の共謀者である。彼らは自分たちの嫌悪感が合理的な判断を損なうのを見ながらも、それを矯正しようとはせず、その結果、核戦争が再び地球上の生命を脅かす状況をもたらしている。

著者のプロフィール: ポール・クレイグ・ロバーツ博士は経済政策を担当する財務省補佐官を務め、ウオール・ストリート・ジャーナル紙の副編集長を務めた。また、彼はビジネス・ウィークやスクリップス・ハワード・ニュース・サービス、クリエイターズ・シンジケートへ寄稿した。数多くの大学から指名を受けている。インターネット上の彼のコラムは世界中で注目を集めている。近著: The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHow America Was LostThe Neoconservative Threat to World Order、等。


参考記事: 「よせばいいのに又もや冷遇: クレムリンは忍耐の限界に達し、トランプに愛想をつかす」(原題:One Snub Too Many: Kremlin Ready to Turn Against Trump as Patience Coming to an End)。タイラー・ダンカン著。Information Clearing House. 2018年12月9日。

(訳注: この参考記事の全文が下記に掲載されています。)

「ロシア側の忍耐は限界に達した」と、ロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトウノフ議長はブルームバーグに述べている。トランプ政権が発足して2年、米ロ両国の関係は劣化するばかりの今、異例なことではあるけれども、実際にはこれはロシア側の国益を分析する試みである。ロシアゲートで始まり、いわゆる四次元的意思決定という幻想的なシナリオによってトランプの反ロ政策 [訳注:「反ロ」ではなく、「親ロ」ではないかと推測されます] にけりをつけることで終わるというごく一般的に見られる大手メディアの分析と比べると、これは実に対照的だ。

コルトウノフはさらに「この人物と取引をするのは難しく、彼をパートナーとして信頼することはできず、パートナーには向いていないことを示している」と述べている。

氏名は伏せられているが、クレムリン内部の何人かの高官とのインタビューの後、ブルームバーグはロシア側の欲求不満は限界に達していると結論付けた。その報告は「ドナルド・トランプは1カ月足らずの間に2回もプーチンの期待を裏切っている。よせばいいのに又もや、プーチンをすっぽかしてしまいそうだ」と書いている。

最初の出来事は休戦記念日の百年祭を祝う11月11日の週末で、舞台はパリだったが、 ブルームバーグによると、もっと大きな衝撃をもたらしたのはアルゼンチンで開催されたG20のサミットだった。

トランプは2016年の大統領選で選出された後、ロシアの議員たちからは拍手喝采やシャンペーンによる敬意を表されたけれども、トランプの気まぐれな意思決定はモスクワでは日増しに重荷として見なされるようになった。先週、トランプが直前になってG20のサミットでのプーチンとの会合をツイッターでドタキャンした時、ロシアの高官らはあっけに取られたものだ。これは実に醜悪な決断だ、と高官のひとりが述べている。4人の高官(内部事情を喋っていることを認識されることがないように、彼らは名前を伏せるよう求めてきた)によれば、それ以来、ロシア側の欲求不満は募る一方である。

MSNBC流のクレムリン・ホワイトハウス間での秘密の操り人形をあれこれと操作する巧妙な術についてはこれぐらいにしておこうと思うけれども、われわれはそのような退屈なコメントが間もなく和らぐであろうと期待しているわけではない。

同じテーブルにつくことは極めて困難である、あるいは、不可能であると両大国が認めたのだ。これはいったい何を意味するのだろうか?ここにますます危険な兆候を示す得点表があるが、これは世界の安定や平和にとって吉兆であると言えるような代物ではない。ブルームバーグの知見によれば、地政学的な緊張が高まる中で、これは対立する二人の指導者を超すものである。

新たな軍拡競争: 歴史的な中距離核戦力条約を破棄するとのトランプの脅かしによってもたらされる新たな軍拡競争に関してプーチンが警告を発しているように、米国の要求に対抗する備えを固めること以外に、クレムリンにとっては代替策は何も残されてはいない。

制裁: プーチンは前に課された罰に対しては対応策を取ることを控えたが、もしも将来米国が新たな制裁を課した場合には、ロシアは報復措置を採るかも知れない・・・ ロシアが行ったとされる選挙に対する介入に関して米国が新たな制裁を課せば、何か月にもわたって緊張は一気に高まるであろう。

ウクライナ、シリア、イラン: 軍縮、ウクライナやシリアにける紛争、ならびに、イランとの核合意といった厄介な争点に関する米国との話し合いにおいてはロシアは強硬路線を採る。

黒海における軍事的緊張: 安保理の臨時会合においては駐国連米国大使のニッキー・ヘイリーはウクライナの艦船に対する攻撃を「無謀で」、「違法な」行為だとまくしたてた。マイケル・ポンぺオ国務長官は同行為を「危険な展開であり、国際法の違反だ」と述べた。

欧州の安全保障に対する脅威: この地域の軍事的最前線については、もしもトランプが中距離核戦力制限条約から脱退した後に欧州が米国のミサイルを配備した場合、ロシアはそれらの国を目標とすると述べ、すでに脅しをかけている。「ロシアと話をする際には戦力的な立場から話をするな」と、議員のクリンツエヴィッチが警告している。「あんた方はどんな攻撃を受けるかについては何にも分からず、厳しい頭痛に見舞われることだろう。」

外交の扉は閉ざされつつある: 米国議会が(ロシアによる)選挙介入に関して調査を行う中で、トランプが直面する政治的困難についてはロシアの高官は以前は「理解」を示していたものだが、今やトランプに対して大っぴらに疑問を呈するようになった。トランプ大統領はクリミア半島の近海でロシア海軍がウクライナと紛争を起こしたことを非難し、両大統領の会談を中止した。彼の決断は彼の個人弁護士であるマイケル・コーエンがモスクワにおけるトランプの不動産投資の計画に関して議会で偽証をしたことを認めてから数時間後に公表された。

最近、トランプがロシアを冷遇する状況が顕著となっている。クレムリンの報道官を務めるドミトリー・ぺスコフは両大統領のヘルシンキでの会談の際に提案されたプーチンのワシントン訪問は、今や、完全に「問題外だ」と述べている。これが意味するところは来年6月に日本で開催されるG20のサミットの前に両者が会談を持つチャンスはまったく無くなったということだ。G20のサミットの場でさえも怪しい程だ。

参考記事: スティーブン・F・コーエンが言うには「ミュラー特別検察官の捜査に伴って引き起こされた興奮状態はトランプがロシア側と会談を持つことを妨げる。これは国家の安全保障を危険に陥れかねない」 https://t.co/ANv5o6zhmU — RCP Video (@rcpvideo) Dec/04/2018 

ロシア側の政府高官やシンクタンク関係者らの間で重要なテーマは、ロシアはワシントン政府との関係を改善するためには「何かを提供する」ように何時も求められるが、その見返りとしてはその過程でよそよそしい態度に見舞われ、イライラさせられるだけだという点だ。

国内メディアから始まって政府高官に至るまで、ロシア全土の楽観主義は今や衰退しつつある・・・ 

もしも民主党のヒラリー・クリントン候補が大統領に就任していたら現行の衝突は回避されていたかも知れないという考えはプーチンがきっぱりと退けてしまったが、与党であるユナイテッドロシア党の中枢の党員らはトランプが勝利を収めたことを残念に思っている。

「クリントンの場合に比べて、状況は遥かに悪い」と、ユナイテッドロシア党の運営委員会を率いるフランツ・クリンツエヴィッチ上院議員が述べている。「彼女は経験豊かな政治家であって、彼女の行動はすべてが論理や議論された内容に基づいている。ところが、トランプの場合はあちらこちらへと大きく揺らぐ。」 - ブルームバーグ

前駐米ロシア大使を務め、現在はロシア議会の代議士であるウラジミール・ルーキンはブルームバーグに対してロシア人の見方を「われわれはギブ・アンド・テイクに応じることはできるが、ギブ・アンド・ギブには応じられない」と述べている。

本稿は最初に「Zero Hedge」に掲載された。


注: この記事に表明されている見解はあくまでも著者の見解であって、Information Clearing Houseの意見を代表するものではありません。

<引用終了>


これで引用記事全文の仮訳が終了した。

トランプはわが身の安全が心配になって来たようだ。トランプが政治的信条を変えて、ネオコンや好戦派の圧力に屈したと判断する観測筋は少なくない。事実、トランプの家族の安全を脅かすメッセージが寄せられたとも報じられている。

この引用記事を読んで、少なくともひとつだけはっきりとしている点がある。不幸なことには、世界はさらに混乱の度を高めている。米国の軍・安全保障・大手メディア複合体がこの混乱を推進していることは明白だ。これが現実なのである。この混乱の延長線上には核大国間の核戦争が待ち構えている。嫌な世の中になって来たものだ。

トランプは奥の手が尽きてしまったのだろうか?彼特有の意表を突いた政治的行動によって、米国政界における対ロ関係の綱引きを関係改善に向けて引き戻せないものであろうか?

12月19日、トランプ大統領はISISの討伐が終了したので、米軍をシリアから撤退させると宣言した。もちろん、ネオコンや軍・安全保障複合体、ならびに、アラブ世界の混乱を恒常化させたい親イスラエル派は大反対である。これがすんなりと実行されるのかどうかは現時点では不透明だ。

トランプ大統領は表面的には軍部に対する統制力を失ったかのように見えるが、彼は今でもこのような決断ができるのだ。11月の中間選挙の結果、下院での過半数体制は失ったものの上院では与党が過半数を維持したことから、トランプ大統領は中間選挙は大成功だったと評した。上院の支持さえ取り付けられれば、トランプは歴史的な快挙を実行できる筈だ。今年の前半に行われた北朝鮮との交渉では彼特有の離れ業を見せて、トランプが軍部の上手を取ったことは記憶に新しい。対ロ関係の改善でもこのような動きが可能なのかどうか、注視して行きたいと思う。この文脈においては、シリアからの米軍の撤退は少なくとも歓迎すべき兆候だ。


参照:

注1: Trump Has Been Broken by the Military/Security Complex: By Paul Craig Roberts, Information Clearing House, Dec/09/2018










2018年12月10日月曜日

人身売買のために連れ出された子供を保護することはその子の人生を救ってやるようなものだ

インドでは幼い子供たちが「親切な叔父さん」に連れ出されて、大都市の工場で安い労働力として働かされたり、売春婦として売りとばされることが後を絶たない。子供たちの家庭が貧困から抜け出せず、一時的な報酬につられて子供たちを手放す親が少なくないからだ。

日本でも貧困は大きな試練であった。連続テレビ小説に登場する「おしん」は貧困の中でも逞しく生き、周囲から学び、成長して行った。そんなひとりの女性の姿が共感を呼んで、このテレビドラマは68ヵ国・地域で放映されたという。子供たちを襲う貧困は、時に、とんでもない結果をもたらし、その子が歩む人生を誤らせてしまうことが多い。

インドでは今日でも貧困が暗い影を落としている。ここに、「人身売買のために連れ出された子供を保護することはその子の人生を救ってやるようなものだ」と題された記事がある [注1]。子供の人身売買はインドにおける極めて今日的な社会問題のひとつである。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

なお、人名の読み方については間違いがたくさんあるだろうと推測しています。ご容赦ください。


<引用開始>

人身売買のために連れ出され、オールドデリー駅を通過するおびただしい数の子供たちを識別し、保護してやれる機会は一瞬のうちに遠のいてしまう。けれども、インド政府がこの取り組みを強化するに連れて、本格的な成果が観察できるようになった。


Photo-1: オールドデリー鉄道駅に設置されたチャイルドライン・キオスク。鉄道の職員やポーターがここのメンバーだ。写真提供:Amrit Dylan 

毎日約50万人がこのオールドデリー駅を通過する。同駅のアーチ型の正面玄関から出て来る人々の中には子供たちがいる。彼らを率いる大人の付添人は彼らを劣悪な条件で働かせる工場や売春宿へと売り飛ばす。列車が到着すると、プラットホームでは毎日250人ものそういった類の子供たちが無数の一般乗降客に紛れて、この駅を通過する。アジシュにとっては、連れ出されてきた子供たちが駅を離れ、外部の雑踏の中に紛れ込んでしまう前の数分間が勝負どころだ。

驚いたことには、このほんの僅かな時間だけがチャイルドライン・インディア基金で全力を奮っている彼自身と彼のチームが活用できる唯一の機会なのである。毎月、90人から100人もの子供たちが人身売買業者の軛から解放されている。

この日、アジシュは11番線に入って来るカルカッタからの「カールカーメール」に狙いを定めた。その列車からひとりの乗客がチャイルドラインに電話し、彼の客室に同乗している4人の男の子たちは場違いな感じで、えらく不幸せな様子だと伝えてきた。到着駅に本拠を置くチャイルドラインのチームがその列車に乗り込んで、子供たちを見定め、彼らと一緒に旅行をしてきた「叔父さん」に近づくと、その「叔父さん」は人込みをかき分けて、逃げてしまった。

アジシュは子供たちを一番線のホームにあるチャイルドラインのオフィスに連れて行き、座らせ、ゆっくりとお茶やビスケットを与えた。 

「叔父さんは僕がいい仕事にありついて、ジーンズを無料で貰えるようになると両親に言っていた」と10歳のアニル・パスワンが言った。「そして、毎月両親に送金するのに十分な給料を稼げる。僕の両親はその金で弟や妹たちのために食糧を買えるんだ。」  

アジシュは、毎日、これと同じような話を聞いている。現実には、「叔父さん」は男の子を雇用主に売り飛ばし、この男の子は道路脇の食料品の露店または工場で、あるいは、低賃金で衣料品を製造する業者の汚らしい作業場で毎日12~14時間も奴隷のようにこき使われるのだ。

インド鉄道は毎日2千5百万人を輸送する。しかし、同鉄道は人身売買のために用いられている中核的な舞台でもある。

3年前に婦人・子供省の肝いりでチャイルドライン基金が設立され、同基金は移動中の子供たちを保護することを目的にインド鉄道と協力することになった。このプロジェクトは鉄道の職員を訓練することから始まった。彼らは誰よりも早く子供たちに関心を払い、何かおかしなことがないかどうかを見極めることができるのだ。

「われわれは全鉄道網を対象に訓練を行っている。(列車が停止してから列車に乗り込む)ポーター、検札係や食事を配給する係員、プラットホームの職員、プラットホーム上の売子、清掃員、等を含めて、皆を訓練した。誰もが警戒態勢を取り、何らかの予兆を見逃さないようにした。これこそが機を逸することなく、移動中の子供たちを保護する唯一の方法だ」と、同基金の理事長を務めるアンジャイアー・パンディリ博士は説明する。


Photo-2: フェースブック/ツイッター/ピンタレスト。オールドデリー駅に設置されたチャイルドライン・インディアのオフィスにおけるアジシュ。写真提供:Amrit Dhillon

鉄道職員は意気消沈し混乱しきった子供たちや彼らに付き添っている大人とは違ってえらくみすぼらしい衣服を身に着けた子供たち、あるいは、かなり違った方言を喋っている子供たち、何処へ行くのかという質問に対して非常に限定的な答えしかできず、それを繰り返したり、曖昧な返事しかできない子供たちを特定し、一行の大人と子供たちとの間に観察される不釣り合いな様子を報告するよう訓練を受ける。


Photo-3: ソサイエティ・ウィークリーをどうぞ。これは公共サービス担当職員のためのニューズレター。

ニーラジ・カポーアは1番線ホームでキオスクを運営し、本や新聞を売っている。彼が電話をしてきた。「いったん兆候を理解しさえすれば、人身売買のために連れ出された子供たちを見い出すことはそれ程難しいことじゃない。以前は関心を払っていなかっただけだ。前はこの問題がこんなにも深刻であるとはまったく考えもしなかった」と、彼は言う。 

国立刑事犯罪記録所によると、2016年にはインド国内で8,132件の人身売買が報告された。これは2015年の6,877件から18パーセントもの増加であった。

職員は別としても、一般大衆もこの問題に関心を示した。列車やプラットホームには20万枚ものポスターが掲載され、チャイルドライン・ヘルプラインの電話番号が示されている。さらに、鉄道当局は飲料水のボトルや使い捨てのお茶のカップにも電話番号を記載した。主要な列車内や駅では拡声装置を用いて誘拐された子供たちや連れ出された子供たちに気を配るよう呼び掛けている。

「反応は驚くほどであった。何か怪しいと感じた乗客から毎日のように何百回もの電話があった。また、人身売買のギャング組織のメンバーからで、報酬を払って貰えなかったことに対して恨みを抱くメンバーからの電話もあった。つまり、他のメンバーについてのたれ込みである」と、チャイルドラインの地方組織を率いるヒーヌ・シンは言う。

場所柄から見てリスクが高い83カ所の駅にチャイルドライン・キオスクが設置された。毎日24時間にわたって運営し、何人もの職員を配置した。発見されることを避けるために人身売買業者は夜行列車を多用し始めた。3月までには、さらに75の駅でチャイルドライン・キオスクが開設される予定だ。 

「われわれのプロジェクトはまだ先が長い。駅の総数は8,000もあって、その中で約1,000の駅が高リスクだ。つまり、それらは子供たちを送り込もうとする大都市に繋がる主要な接続駅だ。われわれにはどの駅が人身売買用の回廊となっているかほぼ分かっている」と、パンディリは言う。

当面の成果に彼は満足している。2015年以降、総勢で48,000人以上もの子供たちを保護したのである。カルカッタのハウラー駅だけでも、月に150人もの子供たちが保護されている。チャイルドラインの推測によると、これらの子供たちの約40パーセントは人身売買のために連れ出されたもので、残りは父親がアルコール中毒であるとか、関心を寄せてくれない継母といった家庭内の問題からの逃避が原因である。あるいは、子供たちのふざけた行為が悪い結果をもたらしたというケースもある。しかし、後者の場合であっても、すっかり途方に暮れ、迷子になっていると見なされると、彼らは鋭い顔つきのギャングや人身売買業者の餌食となって、家へ帰って来ることはなくなってしまうだろう。

アジシュの仕事のひとつは鉄道駅で子供たちをどのように扱うべきかについて鉄道会社の職員を訓練することである。決して焦らず、優しく、きめ細やかな扱いをすることが必要だ。本当の状況を把握するには探偵のような技を必要とする。そればかりではなく、子供自身が安心して本当のことを話してくれるまでじっと待ってやる辛抱強さも必要である、とアジシュは言う。

「子供たちが喋る嘘は丁寧により分けなければならない。叔父さんは自分自身に関しては子供たちや両親を助けてやることができる善良な人間だと子供たちに言い含めている。そこへわれわれが現れ、君たちの叔父さんは悪い人間だとわれわれが言う。子供たちにとってはわれわれを信じ始めるまでには何日もかかるのだ」と、彼は言う。 

2~3日前、立派な電気屋さんになれるように訓練を受けると言われていた6人の子供たちがチャイルドラインのオフィスで座っていた。彼らは放心したような表情で、ソフトドリンクを飲もうとはせず、ビスケットを食べようともしなかった。涙がこぼれるのをじっと堪えているかのようであった。アジシュがデリーから2,000キロも離れているグワハティからのアヴァド・アッサム急行に乗り込み、彼らを連れ出した人物を逮捕した。

子供たちのひとりが泣いているのをポーターが発見して、彼はアジシュへ電話をした。鉄道警備隊にはプラットホームで待機するように告げ、アジシュと彼のチームは大急ぎで列車に乗り込んだ。彼らはチャイルドラインによって訓練を受けているとは言え、彼らが身に着けている制服は子供たちを怖がらせることが多い。

アジシュは年齢が13歳前後の少女に手こずらされた思い出がある。その少女は職業紹介所で女中として働くか、場合によっては売春宿へ売られるところであった。彼女は3日間にもわたって自分の名前や年齢を偽っていた。人身売買屋はもしも彼女が誰かに本当のことを喋ったりしたら彼女の両親は拷問を受け、彼女自身も刑務所へ送り込まれるぞ、と脅しをかけていたのだ。

「中には連れ出されるまえに拷問を受けて、彼らを連れ出した人物は本当の叔父さんだと言い張る子供もいる。また、驚きのあまりすっかり混乱してしまう子供もいる。タジマハールはまったく別の都市にあることも知らずに、タジマハールを見学しに来たという子供もいれば、まったく季節外れであることも知らないで、ディーワリーのお祭りにやって来たと言う子供もいる」と、アジシュが現状を説明してくれた。

駅から出た後にたっぷりと食事を取り、安心していられる周囲の様子を眺めて、すでに保護された他の子供たちが丁寧に扱われているのを実際に見て、子供たちは警戒心を弱め始める。その後、子供たちは近くにある収容施設へ案内される。「通常、年長の子供がわれわれを信じ、われわれに本当の話をしようと決心すると、他の子供たちもそうしてもいいんだ、そうしても安心なんだと自分自身に言い聞かせるようになる」と、彼は言う。 


Photo-4:  フェースブック/ツイッター/ピンタレスト。 オールドデリー駅のプラットホームで子供たちを調べているアジシュ。写真提供:Amrit Dhillon

収容施設に到着すると、次の行動を決めるために政府の福祉委員会が子供を評価する。多くの場合、第一の目標は彼らを自分たちの家族と合流させることにある。両親が貧困のあまりに子供を人身売買業者に売り飛ばした場合には、その地域のNGOを介して子供をその家庭に送り届け、再会を果たした後も様子を観察し続ける。彼らがどうして悪い行いをしたのかについて両親の相談に乗り、再びこのような事態を引き起こした場合には罰せられることになると警告をする。

最近人身売買業者が始めた計略を予測して、チャイルドライン・チームは彼らの一歩先へ進まなければならない。たとえば、捕らえられるのを回避するために、彼らはオールドデリーの手前の小さな駅で列車を降り、そこからはバスを使い始めたのである。


Photo-5: インド鉄道の駅から拉致され、消息不明となった子供たち

「以前、彼らは自分の身分証明書を検札係に提示することが求められない一般客用の客室を使っていたものだ。明らかに、そこはわれわれにとっては見逃せない場所だ。しかし、今は、彼らは疑いをかけられないようにもっと高額の客室を使っている」と、検札係を務めるバグワト・プラサド・シャーマは言う。

アジシュにとっては、彼らの仕事がもたらす成果は数字になってはっきりと現れて来ている。2015年以前は、鉄道警備隊はオールドデリー駅で月に2~3人の子供を保護していた。今は、その数値は約100人にもなっている。

「彼らを保護してやれると、彼らの全生涯を救ってやったような気分になる。彼らの教育や健康、家庭生活、そして、もちろん、彼らの子供時代のすべてをだ」と彼は言う。 

<引用終了>


これで、全文の仮訳が終了した。

どこの社会にも暗黒部分はある。子供の人身売買は家庭の貧困に端を発しており、これを絶滅するには長期間の忍耐深い取り組みが必要であることは明らかだ。

大学の医学部に掲示されている人骨の標本は大人もあれば子供もある。ある国の話であるが、貧困のあまりに子供を人骨標本のために売ってしまった親のことを読んだことがある。しかも、結構最近の話だ。このようなとんでもないことをしてしまう親は決して許せるものではないが、この悲惨な出来事の背景には子供の人骨を密売するネットワークが存在している。これは上記のインド鉄道を使って大都市に子供を連れ出し、人身売買をする業者とまったく同じ構図である。悲しい現実である。

高リスクの駅が1,000カ所もあって、キオスクが設置された駅はまだ83カ所とのこと。このプロジェクトはまだ始まったばかりだと言える。子供たちを待ち受ける悲惨な現実を解決しようとして、チャイルドラインのプロジェクトを立ち上げたインド社会に賛意を送りたい。子供たちの人生そのものを救うためにも、より以上の成果を上げて貰いたいものだ。




参照:

注1: 'When you rescue a trafficked child, it’s like saving a life': By Amrit Dhillon in New Delhy, HUMANITY UNITED, Nov/26/2018  












2018年12月2日日曜日

ネオコン、好戦派のアトランティック・カウンシルがウクライナにおける対ロ紛争の拡大を求める - 重砲、艦船、経済制裁

先日の日曜日(1125日)、クリミア半島とロシア本土との間に位置するケルチ海峡にてウクライナ・ロシア間で領海を巡るイザコザが起こった。

その焦点はウクライナの小砲艦であって、漁船ではない。ロシア側は領海を守るためにロシアの領海を不法に通過しようとした小砲艦に停止を命じた。しかし、ウクライナの艦船はロシア側の停止命令を聞き入れなかった。止むを得ず、ロシアの沿岸警備隊はこれらの艦船に対して射撃を行った。

このイザコザはすべてがウクライナの小砲艦2隻 (注:排水量54トン、最高速度28ノット、乗組員5名)とタグボート1隻がロシアへの事前連絡もなしに、さらには、何度となく発せられた停止命令も聞かずにロシアの領海であるケルチ海峡を通過しようとしたことから始まった。これらの小砲艦はクリミア半島の西側に位置するオデッサ港を出港し、途中で一行に加わったタグボートを含めて、クリミア半島の東側にあるアゾフ海のベルディアンスク港に向かおうとしたが、極秘で通過しようとしたケルチ海峡でロシアの沿岸警備隊に発見され、拿捕された。この出来事によって2人のウクライナ人乗組員が負傷したと報じられている。しかし、生命にかかわるような負傷ではなかった。

法的な取り扱いに関しては、この種の紛争においては常にそうであるが、さまざまな意見(多くは情報の歪曲を目的としている)が述べられており、どれが正論であるのかを正しく判断し、識別しなければならない。素人のわれわれには難しいことだ。

今までの経緯を見ると、この夏、ウクライナ海軍の2隻の艦艇はケルチ海峡の通過にあたっては事前にロシア側に連絡をし、水先案内人を乗船させ、ロシア側はこれらの艦艇の通航を了承した [1]

今回、ウクライナ側は何らかの理由でこの手続きを履行しなかったのだ。

さっそく、この出来事を巡ってウクライナとロシアとの間で激しい舌戦が始まった。ウクライナを支援する米国とその同盟国の大手メディアは、マレーシア航空のMH17便撃墜事件の際と同様に、あるいは、スクリッパル父娘毒殺未遂事件の時のように、ロシアを非難する大合唱を速やかに開始した。事前に計画されていたかのような感がある。

事実、1128日の報道 [2] によると、ウクライナ海軍がこの作戦で用いたチェックリストがすでに英文に翻訳されて、インターネット上で報じられている。それによると、ウクライナ海軍のこれらの艦艇は極秘にケルチ海峡を通過し、アゾフ海のベルディアンスク港にその本拠を移設するように命じられていたことが判明している。興味深いことには、「極秘にケルチ海峡に接近し、通過する」ことが非常に重要な任務であったらしく、このチェックリストに繰り返して記されている。

ウクライナのポロシェンコ大統領が何故このような命令をこの時期に下したのかに関しては、専門家らはさまざまな見解を提示している。やはり、ウクライナ政府が単独で実行したものではなく、これは米国の対外政策、特に対ロ政策を反映したものであって、米国の後押しあるいは指導があったという推測がもっとも妥当なようである。

ここに1129日付けの記事 [3] がある。「ネオコン、好戦派のアトランティック・カウンシルがウクライナにおける対ロ紛争の拡大を求める - 重砲、艦船、経済制裁」と題されている。

(注:アトランティック・カウンシルは1961年にワシントンDCに設立されたシンクタンク。このシンクタンクは国際的な安全保障や経済発展を専門の分野とし、NATOを支える大元の組織であるAtlantic Treaty Associationの一員である。つまり、アトランティック・カウンシルはNATOのためのシンクタンクである。この背景から判断すると、アトランティック・カウンシルの言動がウクライナ政府に対して如何に影響を与えているのかが明瞭に見えて来る。)

本日はこの記事 [3] を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>
最近、ウクライナの艦艇が黒海からケルチ海峡を無断で通過し、アゾフ海に入ろうとしたことがニュースとなり、世界中を駆け巡った。大きな危機として報じられ、いとも簡単に戦争に拡大していったかも知れない。予想に違わず、米ディープステーツの重要なメンバーであるアトランティック・カウンシルはこの出来事について意見を発し、介入して来た。

この紛争の舞台となった地域の地図をここに示す。中央にはクリミア半島、アゾフ海が中央から右上に広がり、アゾフ海の東側はロシア本土。アゾフ海の北側はウクライナ領東部。 


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次の写真は36.9憶ドルを投下して最近建設されたばかりのケルチ海峡ブリッジの745フィート(227メートル)の橋桁を封鎖する貨物船を示す。ケルチ海峡ブリッジはロシア本土とクリミア半島を結んでいる。


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次の写真はロシアがケルチ海峡を封鎖したために起こった商船の渋滞振りを示す。 クリミア半島は今やロシア領であり、ロシアの領海をコントロールするための封鎖であった。


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ここで、この強まるばかりの嵐についてアトランティック・カウンシルがいったい何を言いたいのかを検証しておきたい:

「アゾフ海ではロシアとウクライナとの間で緊張が高まっている。これは2008年の夏に起こったジョージアとの戦争を引き起こしたロシア側の挑発を思い起させる。ウクライナ東部の港を封じ込め、クリミア半島に対するモスクワ政府の支配を強化するために、ロシアは何カ月にもわたってアゾフ海をロシアの内水にしようとしてきた」と、アトランティック・カウンシルの副理事長であるデイモン・ウィルソンは言う。

「モスクワの積み上げ方式的なやり方は2008年にわれわれがジョージアで観察した通りであって、個々の動きは劇的ではないかも知れないが、総合的に見るとロシアは戦略的な成果を挙げることが多い。本日、ロシアはウクライナに脅しをかけ、ウクライナの船舶が国際的な海域を航行し、自国の港へ入港することを諦めさせようとした」と、彼はさらに付け加えた。 


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ウクライナ・ロシア間の緊張は1125日に劇的に高まった。キエフ政府はロシアの沿岸警備艇がアゾフ海でウクライナ海軍のタグボートに衝突し、モスクワ政府はウクライナの艦船が事前の許可もなしにこの海域を通過することを阻止したと言った。ロシアは、すでに報じられている通り、3艘のウクライナ海軍の船舶を拿捕した。ウクライナ政府はロシア軍はこれらの艦艇に向けて射撃し、6人の乗組員が負傷したと言った。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は、この状況に鑑みて、ウクライナ議会が戒厳令を敷くよう提言したいと述べた。

「クレムリンの隣国に対する政策を監視している者たちにとっては、この動きは危険極まりなく、しかも、周知の状況である」と、アトランティック・カウンシルのユーラシア支部の理事であるジョン・E・ハーブストが述べている。 

「モスクワは何年間もジョージアに対して挑発をした。たとえば、軍用機による領空侵犯、ジョージア領内へのミサイルの発射、ロシア軍(訳注:ロシアから派遣されていた平和維持軍のことを擁している地域とそれ以外のジョージア領とを区別する境界線を越しての砲撃、等。南オセチアからのこういった砲撃が2008年のジョージアとロシアとの間の戦争をもたらした」と、彼は説明する。 

アトランティック・カウンシルのユーラシア支部で非居住者の上席研究員を務めるマイケル・カーペンターは「黒海とアゾフ海を繋ぐケルチ海峡でのロシアによるウクライナ艦艇の拿捕はアゾフ海でのコントロールを確保し、ケルチ海峡を出入りするウクライナの商船を封じ込めようとするロシア側のより大きな戦略の一部だ」と述べている。  

「この動きは国際法の侵犯であり、ウクライナに対する4年半に及ぶロシアの戦争に新たな要素を加えることになった」と、彼は付け加えた。 

「米国は直ちにこれに対応し、ウクライナ政府に商船の状況を熟知するためのレーダー網を与え、陸上発射型の対艦ミサイルを備えて、同国のアゾフ海沿岸を防衛させるべきだ」と、カーペンターは言った。 

「また、米国はスベルバンク、VTB、ガズプロムバンクといったロシアの大手銀行のひとつに関して資産を凍結するべきだ。ロシア側がわれわれの要求に対応することを怠るならば、ロシアの銀行に対する制裁の解除はロシア側がウクライナ船の自国の港への入港を再開できるようにし、ドンバス地区からはロシア軍を撤退させることを条件とするべきだ。これらが実行されるまでは、クレムリン側のコストはさらに膨らむことだろう」と、彼は補足した。


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アトランティック・カウンシルのユーラシア支部において居住者であり上席研究者でもあるアンデルス・アスルンドは次のように述べている。「NATOと米国はアゾフ海に海軍艦艇を送り込み、アゾフ海で船舶の国際的な航行が自由に行われることを保証するべきだ。」 

『これらの行動は1982年の「海洋法に関する国際連合条約」や1936年の「モントルー条約」にも準拠するであろう』と、アスルンドは言う。

アゾフ海は、2014年にロシアがクリミアを併合してからというもの、モスクワ政府とキエフ政府との間での争点となっていた。

「ロシアが2014年にクリミアを併合してからというもの、ロシアは国際的なアゾフ海をロシアの内水にしようとしてきた。彼らはウクライナ沿岸の多くの部分、ならびに、マリウポルやベルディアンスクといった大きな商港を封鎖してきた」と、アスルンドは言う。

アトランティック・カウンシルの目的は極めて明白であって、それは対艦ミサイルや米海軍を導入することによって、さらには、対ロ経済制裁を課し、ロシアはこの地域で新たな戦争を引き起こそうとしていると非難することによって、この地での紛争をさらに拡大させることにある。

あなたがもしもお忘れだったならば、ここにアトランティック・カウンシルのために寄付を行った主だった人物や組織(つまり、アトランティック・カウンシルに大きな影響力を持っている人物や組織)の表があるのでご覧いただきたい。


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下記の主だった寄付者のことを記憶しておこう:
  • 英外務省
  • 米国務省
  • ジェネラルアトミックス
  • ユナイテッドテクノロジー
  • ロッキードマーチン
  • レイセオン
  • タレス(フランスの航空宇宙防衛関連企業)
  • 米空軍アカデミー
  • ボーイング
  • テクストロン
  • ウクライナ系カナダ人議会
  • 米空軍
  • NATO米代表部
影響力とは良く言ったものだ。まさにその通りだ。アトランティック・カウンシルは、ケルチ海峡での出来事を巡って対ロ軍事行動を拡大するよう推奨することにより、主だった寄付者たちの思惑 [訳注:つまり、政府からの軍需品の注文を急増させること] に応えようとしているのだ。

記憶しておきたい重要な事柄がもうひとつある。20185月、フェースブックはアトランティック・カウンシルおよびその傘下にあるデジタル・フォレンシック・リサーチ・ラブ(デジタル・シャーロックスとも称する)との連携を開始した。この連携の目的は愚かにもロシアに基盤を置いたプロパガンダと米国に基盤を置いたプロパガンダとをはっきりと識別できないでいるわれわれを防護することにある。これは例の悪辣なイラン関連プロパガンダからわれわれを守ろうとしているグループと同一の組織だ。(訳注:「この連携の目的は・・・」の文章はかなり皮肉を込めた言い回しになっている。「はっきりと識別できないでいるわれわれを防護することにある」とは「はっきりと識別できないでいるわれわれが目を覚ますこともなく、いまのままで居続けるようにすることにある」といった意味であると私は解釈した。)

海洋法に関する国際連合条約からの抜粋を下記に示して、この論考を終ることにしよう:訳注:この条約の和訳文はウィキペディアにて入手可能であるので、そこから引用する。抜粋されている条項は「第19条無害通航の意味」からのものである。

1. 通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。無害通航は、この条約及び国際法の他の規則に従って行わなければならない。

2. 外国船舶の通航は、当該外国船舶が領海において次の活動のいずれかに従事する場合には、沿岸国の平和、秩序又は安全を害するものとされる。

(a) 武力による威嚇又は武力の行使であって、沿岸国の主権、領土保全若しくは政治的独立に対するもの又はその他の国際連合憲章に規定する国際法の諸原則に違反する方法によるもの
(b) 兵器(種類のいかんを問わない。)を用いる訓練又は演習
(c) 沿岸国の防衛又は安全を害することとなるような情報の収集を目的とする行為
(d) 沿岸国の防衛又は安全に影響を与えることを目的とする宣伝行為
(e) 航空機の発着又は積込み
(f) 軍事機器の発着又は積込み
(g) 沿岸国の通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令に違反する物品、通貨又は人の積込み又は積卸し
(h) この条約に違反する故意のかつ重大な汚染行為
(i) 漁獲活動
(j) 調査活動又は測量活動の実施
(k) 沿岸国の通信系又は他の施設への妨害を目的とする行為
(l) 通航に直接の関係を有しないその他の活動」 

誰もが少なくともウクライナ海軍がとった行動の動機は何であったのかを質すべきだ。特に、上記の国連海洋法条約からの抜粋の中では(d)項に関して質すべきである。

この論考からも垣間見ることができるように、米国に本拠を置いた、選挙で選出されたわけでもなく、完璧なまでに好戦的な組織がわれわれをロシアとの戦争に限りなく近づけようとして全力を奮っているのだ。彼らの軍産複合体・議会からの後援者の利益のために、この強力なアトランティック・カウンシルが最善をつくすべく行動していることは明白である。われわれのすべてにとって悲しいことには、ワシントンの悪評の高い暗部に住むメンバーらは彼ら自身が戦争の最前線に立っていることを決して自覚することがないのである。



原典: Viable Opposition

<引用終了>


これで、全文の仮訳が終了した。

この引用記事で学んだもっとも重要なことは、またもや、米国のネオコンがロシア国境の近くで新たな軍事紛争を起こし、拡大しようとしている現実であろう。何のためか?

海洋法の観点からは、ウクライナ側が海洋法に関する国際連合条約に違反したことはほぼ確実である。

また、このブログを読んでいただき、さらに多くの追加的な情報を読んでいただいている読者の方々はウクライナ政府を支援する西側の大手メディアが流布する情報には歪曲や偽情報が少なからず存在していることにお気付きだと思う。このケルチ海峡紛争に関する報道もまったく同じ状況にある。アトランティック・カウンシルのお偉方の発言はその最たるものだ。

ある批評家の指摘によると、G20サミットでトランプとプーチンとの会談が予定されていたが、つい最近起こったケルチ海峡でのイザコザの目的はこのトランプ・プーチン会談を潰すことにあったのではないかと言う。 1130日の報道によると、トランプ大統領はプーチン大統領との会談をキャンセルした。

しかしながら、121日、両大統領はG20サミットで非公式な会話を持ったとのことだ。米ロ両国ともこの事実を認めている。

状況がめまぐるしく変化した。トランプ大統領にとっては国内向けに、特に軍産複合体向けにはサミットの直前にプーチンとの会談をキャンセルしたが、今思うに、これは単なる目潰しであって、トランプ大統領はプーチンとの会談を何らかの形で行うことに決めていたのではないかと推測される。二転三転した状況はすべてがトランプ派と反トランプ派との間の政治的綱引きの結果である。

ところで、核大国である米国とロシアとの間の武力紛争は最終的には核戦争になってしまう可能性が実に高い。そうなったら、文明の終焉である。石器時代に戻る程度で核戦争が終わるならば、それは想定し得る中では最良のシナリオであろう。全世界の人類を蒸発させるのに必要な量の原爆の10倍もの核兵器を備えている核大国は最後の最後まで相手を攻撃し、攻撃された側は報復攻撃を行うことであろう。軍人にとってはそうすることが究極の任務であるからだ。こうして、人類はあっけなく消滅してしまう。

米国の経済はすっかり軍事経済になっている。米国経済を成長させるために、米国は冷戦時代からもう何十年間にもわたって仮想敵国の存在が必要であった。全世界の市民にとって不幸なことには、今、戦争に依存する米経済の体質はかってない程に亢進している。

米ロ両国の一般大衆は自分たちの運命を投げ出し、好戦的な一部の集団に自分たちのすべての権利と運命を与えてもいいと考えているのであろうか?一刻も早く目を覚まして欲しいものだ!

また、ヨーロッパ市民も目を覚ましてほしい!米国がINF(中距離核戦力全廃)条約から脱退し、米ロ武力対決が始まると、ヨーロッパは間違いなく対ロ戦争の主要な戦場と化すことになる。それでもいいのか?

米ロ武力対決の一歩手前にまで漕ぎつけてしまった今、シリア紛争にせよ、ウクライナ東部のドンバス地区の独立要求にせよ、さらには、最近のケルチ海峡紛争にせよ、全世界の政治家は東西間の武力緊張を緩和する方向で思考し、行動しなければならない。政治家にとっても、われわれ一般庶民にとってもこれ以上に重要な政治課題はない!



参照:

1The Context to Understand the Russian-Ukrainian Naval Clash at Kerch Strait: By Rostislav Ishchenko, RUSSIA INSIDER, Nov/26/2018

2Proof that Ukrainian crews were given the order to try to “covertly” cross the Kerch strait: By The Saker, Nov/28/2018

3Neocon, War-Loving, Atlantic Council Calls for Escalation Against Russia in Ukraine – Guns, Ships, Sanctions: By A Political Junkie, RUSSIA INSIDER, Nov/29/2018