2018年10月16日火曜日

米国は全面戦争を準備 - ペンタゴンの報告書が示唆


今月の10日、マティス米国防長官は戦術用戦闘機の稼働率を来年の9月までの1年間に80パーセント代に乗せるようにと指示を出した [1]。対象となる戦闘機はF-35 F-22F-16およびF-18 。米空軍の2017年度のこれらの戦闘機の稼働率は71.3パーセントで、前年度の稼働率よりも0.8ポイントの低下を示した。
 
特定の機種について詳細を見ると、稼働率の低さは驚くほどだ。たとえば、F-16C70.22パーセント、使用が始まったばかりのF-35A54.67パーセント、F-22ラプターは何と49.01パーセントだという。部品の供給に時間を要することやソフトの改善、経験豊かな補修要員の不足、等が主な理由であると言う。
 
このような現状を目にして、マティス国防長官はついに厳しい改善指示を発した ものと思われる。この前途多難な取り組みの一方で、ペンタゴンとしては経費の削減も実現しなければならない。そうしなければ、米政府は破産となりかねないのだ。寄生生物が宿主を殺してしまうような状況は何としてでも避けなければならない。
 
トランプ大統領が述べているように(1012日のブルームバーグの配信)、1ヶ月後に迫った米中間選挙で米下院で共和党が過半数を維持するかも知れない。そうすれば、トランプ政権を巡る政治的環境が整い、ロシアと中国を敵視する現行の対外政策は多少緩和されるのかも・・・。つまり、核大国同士の全面戦争の危険性はかなり軽減されるであろう。国内経済が自信を取り戻す中、トランプ大統領の選挙公約のひとつが実現される。
 
あるいは、それとはまったく関係なく、米国の対ロ・対中政策は今のまま継続され、さらに敵対的な状況になって行くのであろうか。私には分からない。
 
ここに、「米国は全面戦争を準備 - ペンタゴンの報告書が示唆」と題された記事 [2] がある。
 
私が知る限りでは、対ロ・対中の全面戦争を口にするのは今までは個人のレベル、あるいは、民間のシンクタンクのレベルであった。ところが、ここにご紹介する記事はペンタゴンという米国政府内の組織が作成した報告書に関するものである。それだけに、その衝撃は比較のしようも無いほどに大きいと推測する。
 
その一方で、ペンタゴンがネオコンや軍産複合体の牙城であることを考えると、中間選挙では民主党が過半数を得られないという予測をしながらも、この報告書は対ロ・対中強硬派、つまり、反トランプ派がトランプ大統領に送った牽制球である可能性も否定できないような気がする。
 
本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

 
<引用開始>

最近の2週間、メディアによる報道がほとんど無いまま、米国政府は核戦力では世界で第2位、第3位に位置するロシアならびに中国との軍事的対決に向かって実質的な動きを見せた。

103日、米国は冷戦以降で始めてロシアの本土を直接攻撃すると脅しをかけた。註NATO米国大使のケイ・ベイリー・ハッチソンはロシアが中距離核戦力(INF)協定に違反して、核エネルギーを動力源にした巡航ミサイルを開発したとしてロシアを批判し、ワシントン政府は米国がロシアを叩いて、この兵器を排除すると述べたのである。

この声明は南シナ海でいわゆる「航行の自由」と称する作戦を展開中であった米駆逐艦に向けて中国海軍の軍艦が衝突の進路をとった事件のちょうど3日後のことであった。太平洋上で何十年もの間起こったこともないような潜在的な軍事的衝突を避けるために、米艦艇は進路変更を余儀なくされた。

髪の毛を逆立てるようなこれらの事件の背景において米国は敵国との全面戦争のために非常に真剣で、長い時間がかかる準備を進めようとしている。これは米国の経済や社会に、さらには、政治生命に根源的な変化をもたらすことであろう。

これが金曜日にペンタゴンによって発表された146ページの文書(題名: Assessing and Strengthening the Manufacturing and Defense Industrial Base and Supply Chain Resiliency of the United States)の骨子である。ワシントン政府が局地戦ではなく、ロシアと中国を相手に壮大で、長期的な戦争のために専制政治的な環境の下で準備をしようとしていることは明白である。

この文書は米国の軍事力が既存の目標、つまり、敵国に対して「今晩にでも参戦する」ために準備を整えるには経済の大規模な再建が必要であることを明確にした。米国が「軍事力競争」に勝つためには「産業態勢を一新しなければならない」とこの文書が宣言をしている。

「米国の製造業や防衛産業の基盤」はこの報告書を遵守し、「我が国の兵士」が頼りにすることができる「プラットフォームやシステム」を作り出さなければならない。この複合体は政府を擁するだけではなく、民間部門や「研究開発機関」ならびに「学会」をも擁する。換言すれば、米経済の全体と米社会を擁しているのである。

「米国の製造業は過去の20年間にすっかり疲弊してしまった・・・。この事態は米製造業が国家の安全保障要求を満たす能力を蝕んでいる。今日、われわれはある種の部品においては国内で単一の供給源に頼らなければならないし、外国の部品供給網に頼らざるを得ない部品や製品さえもある。われわれは軍部に供給する部品を国内では製造できない可能性に直面している」と、本報告書は警告している。

この戦略上の欠陥を矯正するべく、本報告書は次のような結論を述べている。「活発な国内製造業や堅固な防衛産業基盤を育み、弾力的な部品供給網を支援することが重要だ」と。

本報告書は、「中国の経済戦略は他の国の産業政策の敵対的な影響力と結託して、米国の産業基盤に脅威を与えており、これは米国の国家安全保障に対してますます大きなリスクを形成している」として、真っ向から中国をやり玉に挙げている。

換言すると、軍事的優位性を維持するには米国産業の優位性の推進は不可欠である。

重工業の保護は米国の収益の大部分を実現しているハイテック業界を保護する米政権の取り組みと並んで推進される。

本報告書が述べているように、『中国共産党の「2025年における中国製」と称される「主要産業イニシアティブ」のひとつとして、人工頭脳や量子コンピュータ、ロボット、自律走行車両、新エネルギー車両、高性能医療機器、ハイテック船舶用備品、その他の国防に不可欠な新規産業が列挙されている。』 

「中国の研究開発費用は急速に米国のそれに近づいており、近い将来に同等のレベルに迫ろうとしている」と同報告書は警告し、たとえば、中国の製造業者であるDJIが商業用ドローン市場を席巻しているという事実を心配そうに指摘している。 

米国のハイテック業界を保護し、さらに拡大させるペンタゴンの計画には中国人学生の米大学への留学をビザの発給を制限することによって抑制するという政府の取り組みも含まれる。本報告書は米国でSTEM(科学、技術系、工学系、数学)分野での卒業生の25パーセントは中国国籍である・・・として不満を述べている。取りも直さず、米国の大学は中国が経済や軍事面で台頭する上で主要な支援役を演じているのである。

換言すれば、本報告書は「国家の力を構成する複数の要素、つまり、外交、情報、経済、金融、諜報、法の執行、軍事、等をうまく統合すること」を求めており、最近刊行された「米国家安全保障戦略」に記された概念を具体的に表現したものである。

この方程式の主要な要素は米企業の技術部門である。彼らは実入りのいいペンタゴンとの契約に跳びつき、最新世代の武器の開発を行って来た。これらに対する支払い、ならびに、国際的な競争相手からの頑固なほどの保護を受けることの見返りとして、彼らはリークされたグーグルの文書が示す内容を忠実に実行してきた。それは「検閲への動き」と称され、米軍や諜報部門の要求に協力するものである。

政府の圧政的な手法とますます強力になっていく寡占状態との結びつきを促す論理は「全面戦争」と「独裁的社会」との間の相関関係でもある。そこではもはや憲法の主要条項といえども実質的な意味を持たない程だ。

これらの措置の中心的な目標は「国家的な安全保障」を推進するという名目の下で階級闘争を何としてでも抑圧することにある。世界的に展開されて来た米国の軍国主義の拡大は階級闘争の急激な高まりと符合する。その事例としては、流通業界の大手であるUPS社の従業員による利権契約の拒否が挙げられる。同社の強力な労働者組織は米国の産業基盤に害を与えるだけではなく、戦時経済の実に多くの業界に害を及ぼしかねないのである。 

この記事の初出は「WSWS で。
<引用終了>

 
これでこの記事の仮訳が終了した。
むしろ、私はこの引用記事の著者が推測した内容が間違っていることを望みたい。核大国間の全面戦争などは間違っても起こって欲しくはないからだ。
米国が世界の覇権を達成するために対ロ・対中全面戦争を開始するとすれば、その準備は米国の全産業が対象となり、非常に長い時間を要することであろう。因みに、米国は第二次世界大戦のために大恐慌時代、あるいは、それよりも前から準備を開始していたと言われている。この歴史的事実を参考にすると、これから1020年という長い準備期間が必要となるであろう。

米国の戦争立案者は対ロ・対中戦争では米国は被害を受けずに、相手を一方的に叩くことを夢見ているのであろうか。まさにそれは夢に過ぎないのではないか。

現実には、甚大な相互破壊に見舞われることになる。それはほぼ確実である。何故かと言うと、ロシアの防衛能力が最先端技術を駆使して、一段と躍進しているからだ [注: ロシアの最新の防衛能力に関しては、316日付けの「ロシアの新兵器が意味すること」と題した投稿をご一覧ください。内容はロシアの軍事評論では第1人者と見られるアンドレイ・マルティアノフの解説です]。もしも米国がこの種の技術を開発しようとすると10年も20年もかかるだろうと言われている。したがって、米国の先制核攻撃によってロシアの報復能力を壊滅するというシナリオはもはや現実味を持ってはいない。米ロの核大国同士が全面戦争に突入するという筋書きは必ずしも米国がロシアを叩く先制攻撃によって戦争が終わることにはならず、お互いに報復攻撃の繰り返しとなる。最悪の場合、これは人類が築き上げた文明の崩壊をもたらし、ほとんどすべての生命が地球上から抹殺されてしまうことを意味する。
米国の製造業は海外へ移転し、中産階級が縮小の一途を辿り、国内の政治理念はもはや伝統的な二大政党間の政治議論ではなく、持てる者と持たざる者に二極分化し、国内の持たざる者の不満を抑えるためには警察国家となって、まるで軍隊のように武装した警察が市民に向けて襲い掛かり、政府に反論する者に対しては武力の行使も厭わない。今日の米国社会はそんな将来の社会を示しているかのようである。
そして、海外においては、ロシアや中国の原油や天然ガス、その他の天然資源を求めて、自暴自棄となった米政府(米帝国、あるいは、ディープステーツ)は手持ちの世界で一番強力な軍事力を活用しようとする。それを推奨する報告書がペンタゴンに現れたのである。米国の憲法や民主主義、人権、ならびに、国連憲章や国際法への配慮は見られない。
しかし、このような事態は決して起こってはならない!
政治家の間では、つまり、米国の与党と野党の間には政治的議論の対象が数多く存在する。しかし、それらの議論はこの核大国間における全面戦争を是が非でも回避するという政治的命題に比べると非常に瑣末であることを肝に銘じて貰いたいものだ。

そして、それを現実のものにするのは民意だ。米中間選挙は1ヶ月足らずでやって来る。米国の市民よ、一刻も早く目を覚ませ!
好むと好まざるとにかかわらず、これは西側各国の市民にもそっくりそのまま共通することだ。


参照:
注1Mattis orders fighter jet readiness to jump to 80 percent - in one year: By Aaron Mehta, Defense News, Oct/10/2018

注2Pentagon Report Points To US Preparations For Total War: By Andre Damon,  Information Clearing House, Oct/11/2018

 

 

 

 

2018年10月8日月曜日

スクリッパル父娘毒殺未遂事件はMI6によるでっち上げだ。女性向けの探偵小説にもならない - イスラエルの専門家が英国側の筋書きを一刀両断

注: 本文の部分では通常英文の原文に日本語を上書きする形で翻訳を進めています。今回はこの部分のフォントが前後の部分のフォントとは違ったものとなっています。何故こうなってしまうのかは私には分かりません。多分、原文の書式が何らかの影響を与えているのかも・・・。読みにくいと感じられるかも知れませんが、ご容赦ください。


英国のソルズベリーでスクリッパル父娘毒殺未遂事件が起こってから半年が経った。幸いなことには、二人は一命をとりとめた。しかしながら、二人は何処かに監禁されているようで、公の場に表れては来ない。英国政府によってその責任を名指しされたロシア政府は英国政府に証拠の提示を求め、事件の捜査に協力することを申し出ているが、英国政府は今もって証拠を示すこともなく、両国の緊張関係は和らぐ気配もない。

今までに公表されている情報から判断すると、素人目から見ても、英国政府によるでっち上げの可能性が高い。この事件については多くの皆さんがこの事件の経緯をご存知だと思う。

ここに、イスラエルの諜報専門家との対談の記事があって、専門家から見たこの事件の矛盾点が詳細に論じられている [1]。つい最近の記事である。非常に興味深い内容が最初から最後まで満載だ。

イスラエルの諜報能力は世界でも指折りだ。スクリッパル事件に関してこの専門家がどんな見解を持っているのか、詳細な議論を覗いてみよう。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

 

<引用開始>

彼は非常に説得力がある。このイスラエルの専門家は英国側の筋書きを一刀両断にした。
「もしもGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)が関与していたとするならば、暗殺者やこの作戦に関与した他の参加者らは、間違いなく、英国入国のためのビザが免除されている国のパスポートを使って英国へ入国したことであろう。ところが、GRUのオフィサーであると言われている二人はビザを取得するために大使館へやって来て、そこで指紋を残し、ホテルに滞在し、あらゆる下部組織の監視下を通行した。こんなことは女性向けの探偵小説であってさえも見かけることはない。」 
国際テロに関するイスラエルの専門家で、作家でもあるアレクサンダー・ブラスがソルズベリーで起こったスクリッパル毒殺未遂事件について自分の見解を喋ってくれた。ブラスは諜報部門におけるイスラエルとロシアとの関係を例にとって話した。つまり、彼は特殊サービスの工作員の仕事ぶりを英国が示した筋書きと比べてみると、筋書きの馬鹿らしさが明白になって来ると言うのだ。



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― アレクサンダー、ソルズベリーではいったい何が起こったんだろう?あなたの考えは?

― これは英国の諜報関係者による手荒な挑発だ。私の考えでは、それは実に明白だ。



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― どういう理由でそう考えるのですか? 

― 馬鹿らしさの上に別の馬鹿らしさを上塗りしている。ペトロフとボシロフに関する筋書きは専門家の審査ではあっさりと棄却されてしまうような代物だ。英国人によれば、スクリッパル父娘はGRUの工作員によって毒を盛られた。 

私は特殊サービスの仕事がどんな風に行われるのかをまず説明しておきたい。もしも誰かを消したいと思うならば、それは実に真剣な仕事だ。長い準備期間が必要となる。かなりの材料や機材、人員を動員することになる。どれ位の規模かと言うと、何十人にもなるのだ。まず、対象となる国に「最新式の命令拠点」が設置される。

実際の作戦では技術支援、兵站、隠蔽、外部監視といった専門グループと暗殺実行グループとが関与する。

暗殺の実行者らは一番最後の段階になってから登場する。彼らは何処かへ出かけ、監視カメラの前でタバコに火をつけるとか、公共の交通機関を使ったりすることはない。彼らはレンタカーを使って移動する。しかも、自分自身がレンタカーを借りるようなことはしない。さらには、彼らはホテルには泊まらず、兵站グループが手配した安全な家で寝起きする。

こういったグループの人員は自国のパスポートを使って移動するようなことはしない。ビザを取得するために大使館へ出かけ、指紋を取られるようなことはしない。英国の主張は完全にナンセンスだ。プロフェッショナルはそんな風には仕事をしない。

もしもGRUが関与していたとするならば、暗殺実行者も他の参加者らも英国との間でビザ・フリーの関係を有する他の国のパスポートを使って英国へやって来ただろう。ところが、GRUのオフィサーであると言われている例の二人は大使館へやって来て、ビザを取得するために大使館で指紋の採取に応じ、ホテルに泊まり、下部組織の監視下を通行した。こんなことは女性向けの探偵小説においてさえもお目にかかることはない。 

― 多分、それはソ連邦の崩壊以降に、特殊サービスも含めて、ロシア社会のあらゆる組織や官庁で起こった劣化や崩壊と関連して起こったプロフェッショナリズムの欠如ではないだろうか?そういった意見が出ている。

― それは台所で交わされるレベルの意見だ。ワールドカップやオリンピックをあのような高いレベルで運営したことを考えれば、単なる「ガラスのコップ」をそのような高いレベルにまで引き上げるためにはロシア連邦の軍部や軍産複合体はいったい何処でどう運営しているのだろうか?GRUは常にもっともプロフェッショナルな組織であったし、世界でももっとも真剣な諜報機関のひとつでもあった。そして、現在もその通りだ。 

もしもGRUがスクリッパルを排除すると決心したとするならば、私にはひとつの疑問がある。いったいなぜ「ノビチョク」を使用したのか?これは処方薬ではない。これは大量殺戮に使用される化学兵器だ。たった一人の犯罪者を殺害するために原爆を投下するようなものだ。特殊サービスが誰かを消す場合、彼らは司法解剖を行っても毒物が決して検出されることがないようにする。

― たとえば? 

― たくさんの例を挙げることが可能だ。1978年にパレスチナ解放人民戦線の創立者の一人であって、テロリストとして国際的にもよく知られていたヴァディア・ハダッドが殺害された。「モサド」は これについては犯行責任を公表しなかったが、隠すことができない袋に縫い込んだ [訳注:この文章の後半は直訳のままに残しておきます。感触としては「犯行責任は隠しおおせるものではなかった」といった意味だと推測されます]。生物起源の強力な毒物をチョコレートに混ぜ込んだ。3ヵ月以内に彼は痛みを伴う、訳の分からない病気のせいで東独の病院で亡くなった。東ベルリン大学で司法解剖が実施されたが、毒物は何も検出されなかった。医師団は彼は白血病で亡くなったと推測した。

― 彼はモサドによって消されたとどうしてご存知なんですか?

― 本件に関する情報が数年前にリークし始めた。アルジェリアからだった。別件の裁判で元モサド職員の一人が本件がどのようにして起こったのかを証言し、証拠を示して、実行者の具体的な名前まで挙げた。また、この男は自分自身が本件に参加していたことも認めた。この情報は他の、まったく重複しない情報源によっても確認されたのだ。

― モサドの暗殺が不成功に終わり、イスラエルの敵が今でも生きているような事例は何かありますか? 

― 不成功に終わった最後の事例を挙げるとすれば、それはハレド・マシャールの殺害だった。彼はハマスのテロリスト組織の指導者だった。もしも最後の段階になって解毒剤が与えられていなかったとしたら、彼は間違いなく死んでいただろう。

すべては、1997年9月25日、アンマンの路上で起こった。通行人の一人がマシャールの直ぐ側を通り、「間違って」彼にぶつかり、コーラの缶の液体が彼の首にかかった。翌日にはマシャールは心臓発作を起こして死亡し、毒物の痕跡は何も見つからなかったであろう。しかし、暗殺実行者はその場で取り押さえられた。その後、ヨルダンのフセイン国王がイスラエルに解毒剤を提供するよう要請し、ヨルダン側はその代わりにイスラエルの工作員を釈放すると約束した。

― 痕跡を残さない物質は専門家によってさえも検出されることはないし、病死を装うことが可能となりますが、特殊サービスはこのことを前々から知っていたんですか? 

― その通りだ。GRUは「ノビチョク」ではなくて、他の何らかの毒物をどうして使えなかったのだろうか?この種の技術は1950年代には特殊サービス部門では知られていたのに、GRUは今日に至ってもこういった毒物を所有してはいないというのだろうか? 

監視カメラのことを議論しよう。英国では監視カメラは一種のブームになっている。人口当たりの設置数では英国に勝る国はない。

間違いはないと思うが、英国では15人当たり1台のカメラが設置されている。文字通り、1メートルの空白も残さずに監視が行われている。英国の対諜報活動機関であるMI5は世界でも最高の組織であると見なされている。もしも英国の対諜報組織がスクリッパルの面倒を見ていたとすれば、彼は十分に防護されていた筈だ。少なくとも、彼の家には監視カメラがたくさんぶら下がっていた筈だ。 そうすることだけが可能だからだ。

MI5によれば、これらの工作員はソルズベリーを訪れ、スクリッパルの家にやって来て、ドアのハンドルにこの物質を塗ったとしているが、もしそうだとすれば、 監視カメラの記録を見せて欲しい!ちょうどその時カメラのスイッチが切れていたなんていったいあり得るのか? 

― でも、工作員たちがカメラを発見して、スイッチを切ったのでは? 

― GRUはひどく劣化しており、工作員らはいたる所でタバコの火をつけたり、痕跡を残して行ったと言うならば、これらの劣化した諜報工作員はスクリッパルの家では、ちょうどその時に限って、うまいことに監視カメラのスイッチを切ったとでも? 論理性はいったい何処にあるのか? 

― われわれの工作員がカタールでチェチンのテロリストであるゼリムハン・ヤンダルビエフを殺害した時、工作員たちは地方の警察に捕まってしまった。確かに、彼らは任務をやり遂げてはいたのだが・・・。 

「イスラエルの工作員はいったい何人が逮捕されたのだろうか?」 これは劣化を意味するものではない。ソ連邦が崩壊した後にGRUでは何が起こったのかは私は知る術もないが、対外諜報部門については何が起こったのかを知っている。私の友人の一人はその部門での高官であったが、何年も働いて来て、すでに定年の身分であった。彼とは何年にもわたって友達付き合いをして来て、親しい間柄だった。不幸なことには、彼は2-3年前に亡くなった。

特殊サービス部門の劣化は単に見かけだけだと彼は私に言った。彼はすでに何年もの勤務をしており、退職することにした。彼は自国で進行している混乱振りには納得できなかったからだ。しかし、特殊サービスには何の混乱もなかった! 退職したい者は退職した。情報の漏洩は起こったのであろうか? 彼らは工作員のネットワークを発見したのだろうか?ソ連の特殊サービスの工作員は世界中で仕事をしていた。何かに苦しんでいる者はいたのだろうか?誰もいなかった。混乱はいたる所で見受けられたが、特殊サービスでは混乱はまったくなかった。

― 事実を認めよう。本件はすべてが実に不可思議だ。たとえば、まず、スクリッパルを釈放する。それから、彼を殺害する。彼を刑務所に入れたままにしておけば、すべてが簡単に済んだのではないか?

― 次に、セルゲイ・スクリッパル自身の人柄についてだ。英国人が説明しようとした中心的な説は復讐であるが、特殊サービスでは復讐をするなんてあり得ない。イスラエルであっても、ロシアであっても、それは同じことだ。キューバにおいてだけは様子が異なるが・・・。特殊サービスは実に現実的な組織であることをわれわれは理解しておかなければならない。何の理由で復讐などするのか?誰かが実際に害を引き起こす場合に限ってだけ、その人物は排除される。スクリッパルはすでに害を引き起こしていたが、それ以上の害を引き起こすことはあり得なかった。

― たとえば、他の潜在的な反逆者に対する見せしめとして?

― いや、そうではない。私は前にあなたの国の特殊サービスで働いていた知り合いに質問をしたことがある(私の知り合いは現役ではなくて、退職者ばっかりだが・・・)。「カルーギンはなぜ消されなかったのかね?」と質問した。彼らは私の質問に答える代わりに、こちらへ質問を返してよこした。「あなた方はどうして国外への逃亡者を消さなかったのかね?」と。私はこう言った。「彼らはすでに害を引き起こした。彼らを排除しようとすると、実に真剣な作戦を実行しなければならない。人員を派遣しなければならない。派遣された人員は自分たちの生命をリスクに曝すことになる。いったい何のために消すのかね?復讐のためかね?」 彼らはこう言う。 「まったく同じ理由だ。われわれはカルーギンには手を出さないし、誰にも触ることはない。」 イスラエル人が元テロリストによって壊滅されることなんてあり得ない。テロリストがテロ行為を止めた暁には、彼が何を仕出かしたのかとは関係なく、彼をそっとしておくのだ。最後まで責任を問われるのはナチの犯罪者だけだ。

― 彼は対諜報活動の学校で教鞭を取り、若い職員にGRUとの対処の仕方を教えていたことから、消されることになったという見方があるが・・・。

― MI5では、スクリッパルを除いては、対処の仕方については誰にも分からないとでも言うのかい?連中はスクリッパルよりもよく知っていると私は思うよ。

― そのような場合、非常に簡単なやり方がある。スクリッパルが反逆罪で捕らえられた時、多分、彼は十分な説明を受けたことであろう。北極圏内の刑務所の独房で死ぬまで刑期を過ごすのか、それともヨーロッパロシアの何処かで規則正しく12年間を服役するのかのどちらかだと。しかし、後者の場合、どんな情報を洩らしたのかを詳しく説明し、証拠を示さなければならない。調査に協力することになる。

イスラエル国防省の諜報部門の元大佐が、彼の名前は省略するが、ビジネスを開始し、借金に陥った時も同様だった。

彼はレバノンへ出かけ、ヘロインを買って、麻薬の取引をした。挙句の果てに、ヒズボラーに捕まった。彼は自分が知っていることをすべて喋った。これはイスラエル国防省にとっては大きな痛手であった。彼はこの地で勤務するオフィサーであったので、彼はレバノンのためになった。

イスラエル側は彼を交代させ、彼を帰国させた。「取引をしようじゃないか」と彼は持ちかけられた。訴追はしないよ。しかし、自分が喋ったことを詳細に、かつ、完全に報告しなければならない。われわれはあんたが知っていることをすべて知る必要があるんだ。スクリッパル事件もまったく同じだ。端的に言って、彼を消す必要なんて何もなかった。

― つまり、ロシアの特殊サービスには何の動機もなかったということ?

― 動機は無かった。考えてみようじゃないか。彼らは「ノビチョク」を使った。香水の瓶の下に挿入して彼らはそれを持ち運んだ。しかし、特殊サービスのやり方としてはこんなことはあり得ない。暗殺実行者は他人のパスポートを使って、白昼に辺りをぶらつく。彼らは現場で武器を受け取る。こういった暗殺集団が仕事をする時、彼らは自分たちですべてをこなし、周囲の住民には何の迷惑もかけない。失敗した場合でも住民には害を与えない。監視が行われており、捕獲チームが動いている時であっても、彼らはお互いに相手のことを個人的にはまったく知らない。彼らは特定の連絡チャンネルを通してのみ連絡をとる。

― 問題はあの毒物がどうして直ぐには効かなかったのかという点だ。スクリッパルは何時間も歩き回っていた。

― それはまったく別の問題だ。英国人はロシアをすごく蔑視しており、挑発行為を適度な水準で実行することさえも出来ない有様だ。だから、ロシア側はこのことについてはコメントを控えている。そもそもナンセンスについてコメントをする必要なんてあるだろうか?

英国人は「容疑者」を割り出すのに半年もかかった。ビザを取得するために彼らは個人情報や指紋を大使館に残して来たにもかかわらず・・・。これはもうひとつ別のナンセンスだ。そこで、ロシア側はこう言った。「お願いだ!彼らはここにいる。ここに彼らと行ったインタビューがある・・・」と。もしも彼らがGRUのオフィサーであるならば、彼らは何のためであったとしても自分たちの指紋を大使館に残すようなことはしないよ。

― 「彼らは何者だろうか?」 

― 私には分からないが、特殊サービスの隊員ではないことだけは確かだ。もしもGRUにとってスクリッパルを消す必要があったとするならば、彼はとうに死んでいる。こういうことは密やかに、スキャンダルを起こさずに実行した筈だ。

― 「英国はどうしてこのようなスキャンダルを必要としたのだろう?」 

― これはロシアを悪魔視し、国際的に孤立させるためにあれこれと考え抜いた上での戦略だ。英国においては、 西側の他の国々のように、すべては非常に簡単に運ぶ。市民のほとんどは新聞をまったく読まない。そして、新聞を読む人たちはその半分も理解することができない。しかしながら、誰もが見出しだけを目にする。スクリッパル父娘暗殺未遂事件はシリアでの化学兵器使用の調査委員会からロシアを締め出すために必要だったのだ。


原典: 
News Front


<引用終了>


これで全文の仮訳を終了した。

話が飛んでいるような部分があって、「オヤッ」と感じることもあったが、対談ではあり得ることだと思う。

スパイ活動の専門家によるスクリッパル事件の考察に始めてお目にかかったが、この内容には結構驚かされた。また、諜報活動の現状を学ぶには格好の内容であることも分かった。貴重な情報だと思う。

『もしもGRUがスクリッパルを排除すると決心したとするならば、私にはひとつの疑問がある。いったいなぜ「ノビチョク」を使用したのか?これは処方薬ではない。これは大量殺戮に使用される化学兵器だ。たった一人の犯罪者を殺害するために原爆を投下するようなものだ』という解説は素晴らしい。的を得ていると思う。

また、「スクリッパル父娘暗殺未遂事件はシリアでの化学兵器使用の調査委員会からロシアを締め出すために必要だったのだ」という見解は新冷戦という大きな構図の中でこの事件を見事に位置付けしている。まさに専門家らしい見解だ。
 
この対談には心からの拍手をお送りしたい。

 

参照:
 
1The Skripals Are an MI6 Hoax – ‘Not Worthy of Ladies’ Detective Novels’ - Israeli Expert Demolishes UK Case: By RUSSIA INSIDER, Oct/05/2018

 


 

2018年10月3日水曜日

米国は決して戦争には勝てない。その本当の理由は・・・

米国は朝鮮戦争では勝てなかった。ベトナムでも勝てなかった。

そして、最近では、米国は今もアフガニスタンから撤退できないままだ。イラクやリビアでも同様だ。その後、ソマリアはどうなったのだろうか。最近はニュースにさえも登場しなくなった。シリアでは、米国はアサド政権の転覆を諦めて、遅かれ早かれシリアから撤退せざるを得ないのではないか。それとも、公の目的であるイスラム国のテロリストが一掃された後でさえも、お得意の詭弁を駆使して米軍はシリアに居座り続けると説明するのだろうか?ウクライナでは米国の動向が今ひとつはっきりとしない。

大手メディアが詳しく報道しないとは言え、代替メディアが伝える情報を総合してみると、非常に明確な事柄がひとつある。それは夥しい数の一般市民の犠牲者が出ているという事実だ。

米帝国が推進して来た新資本主義やネオリベラリズム、グローバリズムはその名称が次々と替わったとは言え、一貫して観察される政治的目標は相手国に米国のルールに従うことを強要することにある。もしも従わなければ軍事力に訴えてでも政権を転覆し、米国の言いなりになる傀儡政権を擁立する。世界規模の覇権を維持するために米国はこの手法を世界中で採用して来た。

不幸なことには、こうして、戦争が必然的についてまわる。

ここに、「米国は決して戦争には勝てない。その本当の理由は・・・」と題された最近の記事がある [1]。この論評は現行の国際政治を総括的に把握する上で非常に有用だと私は思う。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

 
<引用開始>

 
 
 
 
 
 
 
 
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注: この小論はジェームズ・ペトラス教授の記事によって触発されたものだ。その記事は「米国は戦争予算や軍事的優位性を維持するために何兆ドルもの金を注ぎ込んだけれども、戦争には勝てない」と述べている。
ぺトラス教授が述べていることは、もちろん、正しい。米国は、現在、血なまぐさい戦争を七ヶ所(アフガニスタン、イラク、パキスタン、シリア、イエメン、ソマリア、リビア)で行っており、第二次世界大戦も含めて、勝った戦争はひとつもない。それは何故か? 
これらの戦争には、青空刑務所とでも呼べるガザ地区で、何千人もの子供たちを含め、非武装の一般市民を殺戮するためのあの徹底的に破壊的で、人権を真っ向から否定した、イスラエルが米国のために遂行しているパレスチナに対する代理戦争も付け加えるべきだと皆さんは思うことだろう。さらには、イランやベネズエラ、北朝鮮に対する好戦的な挑発も然りだ。新しい様式の戦争、つまり、中国やEU、メキシコやカナダに対する経済戦争、並びに、ロシアを始めとして世界中に課せられる経済制裁の形で遂行される戦争も論を待たない。国際経済学の如何なる書物を取り上げてみても、経済戦争による領土の保全は明らかに違法である。
勝つことが決して意図されなかった戦争や紛争は他にもある。たとえば、1990年代にクリントン政権とNATO によって遂行されたユーゴスラビアの解体だ。いわゆる、ユーゴスラビアのバルカン化である。今や、「バルカン化」という用語は「分割・統治」様式を用いた帝国による世界支配を意味する言葉として使われている。ユーゴスラビア共和国の元加盟国の多くは、その後、国内が沈静化しないだけではなく、互いの国家間においても決して穏やかではない。毛沢東主義者であり、かつ、社会主義者でもあったチトー大統領はユーゴスラビアを国家として平和裏に統治し、1970年代から1980年代にかけては同国をヨーロッパではもっとも裕福な国のひとつにすることができた。社会主義国家において社会的、経済的に満足できる生活が達成されているなんて許しておけるのか?断じて許せない!こうして、ユーゴスラビアは破壊された。と同時に、NATO軍は自分たちの軍事基地をモスクワへ近づけて行った。しかし、戦争には勝てなかった。紛争は依然として続いている。こうして、ヨーロッパと米国の国家安全保障のためにNATOの存在が「正当化」されて来たのである。   
ニカラグアやホンジュラス、グアテマラといった中米諸国を忘れないでおこう。また、8年間にも及んだイラン・イラク戦争や他にもある数多くの戦争は破壊や無秩序をもたらし、何と言っても、数百万人もの市民を殺害し、これらの国々を弱体化した。国民を悲惨な状況に陥れ、恒常的な恐怖にさらした。そして、今日に至るまで国内の敵対関係や戦争、テロを維持するために皆が武器を求め続けている。 
これらの戦争はすべてが非合法的であり、如何なる国際法を取り上げてみても、これらは禁止されている。しかし、特別で例外的な存在である国家はこれらの禁止を遵守しようとはしない。トランプ大統領の下で国家安全保障を担当し、弱いもの虐めを行うジョン・ボルトンは最近国際刑事裁判所(ICC)とその判事らに対して脅しをかけた。イスラエルと米国の戦争犯罪者を訴追するならば、「制裁」措置を課すと言ったのだ。そして、このことについては、世界はまったく気にもかけてはいないようだ。恒常的に軍事力を見せつけられ、あるいは、世界に対する反対者として外へ放り出されることを恐れて、弱い者虐めのルールを受け入れる。15カ国のメンバーで成り立っている安全保障理事会も含め、国連さえもが弱い者虐めに反対して立ち上がることを恐れる有様だ。191カ国対2カ国(米国とイスラエル)の構図は国連が正常に機能しているとは言えないのではないか?
これらの戦争では、冷戦であろうと熱い戦争であろうと、決して勝ったことはない。勝とうという意図さえもなかった。そして、将来の米国主導の戦争では米国が勝つという兆候も見られない。つまり、それらの戦争に何兆ドルもの金を注ぎ込んだとしても、勝つこととは無関係なのだ。これらの戦争を維持し、新しい戦争を開始するために何兆ドルもの金が用意されたとしても、まったく無関係だ。もしも国連に参加している191カ国がこれらの戦争の継続を許容するならばの話だ。繰り返すが、それは何故か? 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Photo-2: ヴィクトリア・ヌーランド

その答えは簡単だ。戦争に勝つことは米国の関心事ではないのだ。
理由はいくつかある。戦争に勝つと、理論的には平和がもたらされる。武器はもう要らなくなるし、戦いもなく、破壊もない。テロや恐怖もない。武器産業にとっては正気とは思えないような馬鹿儲けはできなくなる。しかし、何と言っても、平和裏に過ごす国家は恒常的に紛争にさらされている国家よりもあれこれと懐柔し、兵糧攻めにして降伏させることはより困難となる。政権交代をしてさえも終わらない紛争をわれわれは世界中で数多く目にしている。典型的な最近の事例はウクライナだ。長い期間の準備を経て、米国・NATOEU20142月にマイダン革命を引き起こした後、当時米国務省の次官補であったヴィクトリア・ヌーランドはこう言った。「われわれは5年以上の時間を費やし、50億ドルも注ぎ込んで、政権交代を達成し、ウクライナに民主主義をもたらした。」 
今日、ウクライナの東部、つまり、ロシア側に傾くドンバス地区(約90パーセントがロシア語を喋り、約75パーセントはロシア人)では「内戦」が続いており、ワシントン政府が擁立したポロシェンコ・ナチ政権によってこの内戦にはさらに油が注がれている。米軍の軍事顧問や支援を受けたキエフ政府軍の冷血な行為によって何千人もが殺害され、2百万人以上もの住民がロシア国内へ避難した。ウクライナの総人口は約44百万人(2018年の推算)で、土地面積は604千平方キロである。その内で、ドンバス地区(ドネツク州)はもっとも人口密度が高く、総人口の10パーセントが約27千平方キロの土地に住んでいる。
このキエフ政府による侵攻は終焉するのだろうか?もちろん。もしも西側がドンバス地区を開放してやればの話だ。この地区は今後キエフ政府に従うことはないし、すでにロシアへの帰属を要請している。西側が主導するナチ・キエフ政府による市民の殺害や悲惨な状況、破壊は直ぐにでも終わることだろう。しかしながら、和平は西側・NATOEUの関心事ではない。特に、米国にとってはなおさらのことだ。無秩序や絶望は国民をより簡単に操ることを可能にしてくれ、この非常に豊かな国家を搾取することをより容易にする。ウクライナはかってはロシアの食糧生産基地と称され、天然資源も豊富である。さらには、モスクワの玄関口に着実に近づこうとするためでもある。実は、このことこそが彼らの意図なのだ。 
事実、ワシントンと西側の衛星国であるEU諸国はロシアがウクライナを干渉し、ミンスク合意を守ってはいないと執拗に非難している。彼らはロシアがミンスク合意(ウクライナ、ロシア、フランスおよびドイツがウクライナ頭部における内戦を回避する一連の措置について2015211日に合意した)を遵守してはいないとしてロシアに経済制裁を課した。実際には、完全にその逆が真の姿であるのだが・・・。この合意の中核的な要素は非干渉の原則である。しかし、西側はそれを無視している。そして、西側のプロパガンダと嘘つきメディアは西側の市民を洗脳し、ロシアは悪魔であると信じ込ませている。キエフのナチ政権に干渉し、武器を与え、「軍事顧問団」を提供しているのは西側なのである。 
現行の戦略は虚偽に満ちたプロパガンダを行うことにあって、西側の嘘偽りに酩酊しきっている一般大衆は「悪いのは何時もロシアだ」と信じ込んでいる。プーチン大統領に率いられたロシア人は悪党だと信じている。メディア戦争は西側の対ロ戦争の一部である。考え方としては、たとえ人命を失い、戦費がかかったとしても、進行中の紛争を決して解決させないことだ。単純そのものである。米国は戦争に勝つのではなく、負けてばかりいるとして数多くの分析が依然としてそのように取り繕っているが、本当の事実をどうして指摘しないのであろうか?これは西側の地政学のイロハであるのだが・・・。 

人類の存続。世界に対する経済戦争:
 
ご存知ではなかった方々に言っておこう。米国務省は上院外交委員会で世界における米国の優越性を保証する計画を公表した。ウェス・ミッチェル国務次官補は、モスクワ政府はワシントン政府が全世界における優位性を確立することに対しては邪魔になることから、米国はロシアを罰すると宣言した。驚くほど単刀直入だ。米国はロシアと戦う理由を公に認め、ワシントン政府は中途半端な降伏は受け入れないと述べたのである。
 
世界に対する完全な優位性はユーラシア大陸を制覇することなくして実現することはできない。目下、彼ら、つまり、米国は同大陸を制覇してはいない。ミッチェルはさらに付け加えた。「アメリカ新世紀プロジェクト」(PNAC)を引用して、ロシアと中国は物質的にも思想的にも21世紀における米国の優位性を邪魔するもっとも危険な競争相手であると言明した。
 
さらに、ミッチェルは爆弾を落とした。 「敵国がユーラシア大陸を制覇しないように邪魔をすることは米国の安全保障にとっては非常に根源的な利益となる」と。これは米国はこの目標を達成するためには決して後へは引かないことを示するものだ。つまり、その目標を達成するためには、核戦争であれ、通常兵器による戦争であれ、全面的な戦争を意味し、夥しい数の死者をもたらし、徹底した破壊をすることもいとわないのだ。このことこそが現行の偽りに満ちた膨大な量の非難を率直に説明している。夢遊病者のようなニッキー・ヘイリーによる国連での徹底した非難から始まって、スクリッパル父娘毒殺未遂事件における決して終わりそうにもない物語の展開、2016年の米大統領選でロシアが干渉したとする主張に至るまで、ロシアをやっつけるという政治目標に合致するものでありさえすれば何でもありだ。そして、これらの作り話はほとんどがワシントン発やロンドン発だ。西側の他の衛星国は単にこれらの情報を鵜呑みにするだけである。
 

 

















Photo-3: ピンクフロイドの共同創始者であるロジャー・ウオーターズ。 

「戦争は実に巨大な利益をもたらす。戦争では大量の金を素早く費やすので、大きな利益を産み出す。大儲けをする機会があるのだ。戦争を鼓舞し、戦争を続ける動機が常に存在し、合法的に戦争を仕掛けるべきよそ者、つまり、戦争相手のことを識別しようとするのだ」と、ロックバンドの「ピンクフロイド」の共同創始者のひとりであるロジャー・ウオーターズは言う。 
ロシアは、今、経済ならびに通商上の「制裁」によって攻撃されている。旅行が制約され、西側にあるロシアの資産が没収された。全世界にとってはソ連邦の侵略を受ける恐れがあるとして喧伝されて来た冷戦は始めから最後まで真っ赤な嘘であった。第二次世界大戦中にヨーロッパをヒトラーの手から救出することによってロシアは極貧に陥った。そう、ヒトラーの軍隊を打ち負かしたのはアメリカ合衆国と西側の同盟国ではなく、ソ連であった。25百万人から3千万人もの人々を失った!想像してみて欲しい!ヨーロッパを救いながらも、ソ連自身は想像も出来ないような打撃を受け、極貧に陥ったのである。
米国のプロパガンダは「鉄のカーテン」という概念を作り上げ、基本的にはこの鉄のカーテンが想像上の盾の向こう側に存在するソ連が第二次世界大戦後どのような国であったのかを西側が正しく理解することを妨げてしまったのである。ソ連は第二次世界大戦によって極貧にさらされていた。しかしながら、この冷戦と鉄のカーテンを巡るプロパガンダによって西側は「自分たちはソ連軍の侵攻という脅威に毎日のようにさらされているんだ」と信じ込まされていたのである。さらに、ヨーロッパはソ連からの想像上の侵攻に対してNATOと共に防衛をする準備をしなければならないと信じ込んだ。ソ連は西側からの侵攻に備えて労働者が蓄積して来た資本を自国の防衛のために注ぎ込み、国家の再建、つまり、経済や社会の機構を改善するために充当すべき経済資源は何程もなかった。嘘をついて来たのは西側だ。西側は自分たちの市民を恒常的に徹底して騙して来たのだ。みんな、もう目を覚まそうぜ!!! 
ここにウェス・ミッチェルによって確認された事柄がある。米国は敗北し、その目標を達成せずに、むしろ、軍事力を使って底なしの悲惨な状況へ全世界を引きずり込もうとするのかも知れない。これはディープステーツの容赦のない決定である。彼らは過去200年間米大統領を背後から操ってきたのだ。世界の半分の人口を擁し、世界経済の3分の1を産出するSCOBRICS、ユーラシア経済同盟といった東側の新たな同盟関係が米国を経済面で押さえ込むことが出来ない限り、われわれもまた運の尽きとなるであろう。

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現在進行中の7カ国での戦争は無秩序振りを物語っている。戦争は終わる気配を示さず、まさに意図した通りである。決して終わることがなかった他の23の例についても反芻してみたいと思う。意識的に勝とうとはしなかったのはもちろんだ。第二次世界大戦とその局地戦争、経済戦争、紛争、等をもう一度おさらいしておこう。第二次世界大戦の立案は1928年から1933年までの大恐慌、あるいは、それ以前から進められていた。ヒトラーは好都合なカモだった。戦争は大儲けをするためだけではなく、あらゆる経済領域を活発にし、経済を支えてくれるのだ。当時の米国にとっては主要な目的はボルシェビイキ共産党、つまり、ソ連の脅威を排除することだった。今は、米国はプーチン大統領を悪魔視して、もしも可能であるならばロシアの政権交代を実現しようとしている。これこそがワシントンの願い事リストでは一番上にランクされている事柄だ。
大恐慌の最中、1931年に、米国はスイスのバーゼルに国際決済銀行(BIS)を設立した。ドイツとの国境に近く、好都合な立地である。BISは完全に民間の銀行であって、ロスチャイルド家によって支配され、公にはドイツが履行すべき賠償の支払いを決済するためのものであった。ほとんどの人たちにとってはまったく知られてはいないことではあるが、ドイツは第一次世界大戦についても、第二次世界大戦についても賠償としてはほとんど何も支払ってはいない。ほとんどが免除されたのである。ドイツはソ連の「共産党の呪い」を排除する上で非常に重要な役割を持っていた。ソ連に対するヒトラーの戦争に資金を供給するために連邦政府はウールストリートの銀行を経由し、BISを使った。
何時ものように、米国はふたつの結婚式で踊っていた。つまり、ヒトラーのドイツと戦う振りをしながら、実際にはモスクワと戦うヒトラーを支援したのだ。よく聞く話だろう? 中東や世界中でイスラム国や他のテロリスト集団と戦う振りをしながら、実際には聖戦戦士であるテロリスト集団を組織し、軍事訓練を行い、資金を提供し、彼らを武装するのである。ソ連軍が莫大な人的犠牲を払いながらも第二次世界大戦で勝利を収めた時、米国とその同盟国やNATOは行進をし、勝利を叫んだ。そして、今日まで西側の学校では歴史の教科書でこれらを教え、ソ連やロシアの市民に帰せられるべき大きな名誉はひどく軽んじられている。
ソ連邦が敗戦には至らなかったことから、西側は冷戦を発明しなければならかった。そうこうしている内に、ワシントンのカモであるミカエル・ゴルバチョフやボリス・イルツインの助けを得て、西側はソ連を崩壊させ、一人勝ちの道を準備することができた。しかしながら、非常に幸運なことには、例外的国家が企てたこの壮大な目標はロシアのプーチン大統領の登場によって中断することとなった。
しかし、それだけではなかった。ロシアを征服するには、ヨーロッパを「植民地化」しなければならなかった。つまり、アメリカ合衆国のような本当の意味での連合体ではない欧州連合(EU)へと変えなければならなかった。欧州連合の考えはCIAによって第二次世界大戦後に構築され、その後はローマクラブに引き継がれた。そして、数多くの協定を経て、1992年にはマーストリヒト条約にまで漕ぎ着けた。EUをヨーロッパ諸国間の堅固な結びつきとして実現するためには、次の論理的な段階は共通した経済政策や国防、対外政策を持つ憲法をEUに与えることであった。しかし、これは決して実現するような代物ではなかった。 
ジスカール・デスタン前フランス大統領(19741981)はEU憲法を起草する役目を与えられた。多くの人たちは何も知らないだろうが、メンバー諸国が批准したくはないような内容をもった草案を作成するよう厳密な指示が彼に与えられた。つまり、EU参加国の主権のほとんどをブリュッセルへ委譲するという内容である。こうして、EU憲法は、フランスを始めとして、各国に拒否された。多くの国は憲法について投票を行おうとさえもしなかった。ヨーロッパ連合の連邦化は実現しなかった。仮にヨーロッパ連邦が実現していたならば、それは米国にとっては経済的にも軍事的にも打倒しがたい相手となっていたことであろう。それに代わって、NATOがワシントン政府の監督下で欧州の統合役を担うことになった 。今日、EUは今まで以上にNATOの下で統合されようとしている。
欧州連合の創設と平行して起こったのは1944年のブレトン・ウッズ体制の合意であった。この体制によってヨーロッパの金融および経済上の植民地化あるいは奴隷化が推進された。彼らは世界銀行を創設し、米国が出資してヨーロッパの復興を支える基金、つまり、「マーシャル・プラン」を管理し、主としてヨーロッパの兌換通貨に対する金の交換レート(1オンスの金が35米ドル)を監視し、規制を行った。実際に、マーシャル・プランは圧倒的に米ドルによって運営され、1971年のニクソン政権による金本位制からの脱退に刺激され、ヨーロッパ共通通貨としての地位に向けての第一歩として、当面、米ドルのイメージにならった不換通貨としての「ユーロ」が誕生した。米ドルの弟分としての不換通貨であるユーロは、こうして、新しい通貨となり、ヨーロッパの経済、金融、通貨に関する政策は外部勢力、つまり、連邦政府やウールストリートによってあれこれと操作されることになった。ヨーロッパ中央銀行の現総裁はマリオ・ドラギで、彼は以前はゴールドマンサックスの重役であった。
これらは戦争である。後者は経済戦争であるが、常に戦争が行われるが、勝つことはない。彼らは混乱状態や妄想を作り出し、虚偽の情報を信じ込ませ、ワシントン政府や政府の背後にいる親分の指示に向かって思い通りに国民を誘導し、動員する。彼らは皆が過去200年来西側の支配に関与してきた親分らと同様であるが、西側の一般大衆にはまったく知られてはいない。これらの親分たちは、今日われわれが知っているように、西側の通貨システムを牛耳る銀行や金融組織から成る小さなグループを形成している。これは連邦準備金法によって1913年に設立された。これらの親分は連邦政府やウールストリート、中央銀行の中の中央銀行と称されるBISを支配する。世界中の一握りの中央銀行を除き、BISはすべての銀行を支配する。
この不換金融システムは世界中で戦争や紛争、代理戦争のために資金を供給することによって借金を作り出す。借金はそのほとんどが米国以外の国の準備金として米財務省証券の形で運用される。このシステムを存続させるには戦争を継続することが重要である。ぼろ儲けが可能だ。もしも戦争に勝ったならば、平和が訪れる。平和では軍需産業は利益を得られない。平和では借金を作り出す銀行からの融資なんてあり得ない。戦争を続けなければならないのだ。そして、世界でもっとも多額の軍事予算(米会計検査院はこれを「前代未聞の借金」と称し、米国のGDP7.5倍にも達する)を使い、もっとも強力な軍事力を有する例外的国家が最終的な勝者となることが出来るのである。西側に住むわれわれはピラミッドの形状をした通貨詐欺の世界に住んでいる。この世界は、実際の経済や平和な行為に根ざした、これとはまったく違う、正直なシステムが次第に米ドルの覇権や世界中の準備通貨としての役割に取って代わってくれるまでは、戦争によってのみ維持し得るのである。この小論が印刷に回される間にも、この状況は続いている。東側の経済が、即ち、金と交換することが可能なユアンを擁し、国の借金がGDPの約40パーセントにしかならない中国の経済が米ドルの準備通貨としての役割に次第に取って代わることだろう。
こうして、米国はロシアや中国を悪魔視し、戦争に引き込むためには可能なことは何でも行うであろう。何故ならば、ユーラシア大陸を支配し、それを所有することが「キラー帝国」の究極の目標であるからだ。 

*

著者のプロフィール: ピーター・ケーニッヒは経済の専門家で、地政学的な分析を行う。また、彼は水資源や環境に関する専門家でもある。世界銀行や世界保健機構において環境や水資源の分野で世界中で30年以上も働いてきた。彼は米国やヨーロッパ、南アの大学で講義をしている。次のようなメディアに定期的に寄稿している。グローバル・リサーチ、インフォメーション・クリアリング・ハウス、RT、スプートニク、プレス・テレビ、The 21st CenturyTeleSUR、セーカー・ブログ、ニュー・イースターン・アウトルック(NEO)、その他のインターネットサイト。著書:「Implosion – An Economic Thriller about War, Environmental Destruction and Corporate Greed」  本書は諸々の事実や彼が世界銀行にて30年間にわたって世界中で経験した事柄に基づいて執筆されたフィクションである。共著者としては「The World Order and Revolution! – Essays from the Resistance」。 

ピーター・ケーニッヒはグローバリゼーション研究センター(CRG)の研究員を務める。

この記事の原典はGlobal Research

Copyright © Peter Koenig, Global Research, 2018

<引用終了>

 
これで全文の仮訳が終了した。
一般大衆が知らされてはいない事柄がいくつも懇切丁寧に解説されている。非常に分かり易く、啓蒙的な記事だ。
冒頭で私は「ウクライナでは米国の動向が今ひとつはっきりとしない」と言ったが、この記事の著者は『米国はロシアや中国を悪魔視し、戦争に引き込むためには可能なことは何でも行うであろう。何故ならば、ユーラシア大陸を支配し、それを所有することが「キラー帝国」の究極の目標であるからだ』と述べている。これらの文言を文字通りに受け止めれば、米国が今後ウクライナにおいて採用する動きは火を見るよりも明らかだ。ウクライナにおける代理戦争が何時の日にか米ロ間の直接の軍事的対決へと発展する可能性が高い。
ロシアの国防ドクトリンを見ると、ロシアが戦略的脅威を受けた場合には、それが通常兵器による脅威であったとしても、核兵器を使って防衛に当たるとしている。ウクライナにおける米国の干渉がロシアにとって戦略的脅威となるのはどのような状況なのか?それはロシアの指導者の判断次第だ。一旦戦術核兵器が使用されると、それは戦略核の使用へと一気に拡大する危険性を秘めている。軍部は相手を叩くことしか考えない。そして、叩かれれば、相手に報復する。どこかのレベルで自制することなんてあり得ないだろう。
世間には「米国は実際には核戦争はしたくはないのだ」との見方も多く見られる。米国の政策立案者が世界規模の核戦争が起こった暁には、勝者も敗者もなく、人類は完全に消滅してしまうという見方を十分に理解しているならば、核兵器による米ロ間の全面的対決は起こらないとする考え方は現実味を帯びてくるだろう。しかしながら、彼らの言動にはそうした見方を肯定することができる兆候が感じられるだろうか。まったく見当たらないのだ!彼らはあまりにも好戦的で、自国の軍事能力を異常なほどに過信している。彼らが喧伝する核兵器による先制攻撃論が彼らの心中を明瞭に物語っていると私には思える。
結局、すべてがあまりにも楽観的過ぎるのか、それとも、現実的な見方であるのかについては、素人の私には断定めいたことは何も言えない。著者の考え方を踏襲すれば、「米国は実際には核戦争はしたくはないのだ」と見ることは楽観的過ぎると言うしかないだろうと思う。
果たして、世界はいったいどちらに向かって進もうとしているのだろうか?



参照:
1The United States of America:  The Real Reason Why They Are Never Winning Their Wars: By Peter Koenig, Global Research, Sep/20/2018

 

 

2018年9月24日月曜日

朝鮮半島における歴史的和平の動きは米国に紛争を止めるよう促している


韓国と北朝鮮の指導者は何回目かの会談を行い、両国は、920日、朝鮮半島の非核化に向けて新たな段階に到達した。米国の軍産複合体が邪魔をしない限り、東アジアの軍事的緊張を和らげるこの動きは具体化して行きそうだ。これは両当事国にとってだけではなく、周辺のロシアや中国、日本にとっても歓迎すべき動きだ。

少なくとも、韓国と北朝鮮の民意は両国の和平を求めている。

これは何十年も前からの願いであったが、今までは、不幸なことには、周囲の政治的環境がそれを許さなかった。しかしながら、今年の11日の金正恩の言葉が歴史の流れを変え、新しい潮流を見事に作り出した。今回は南北の民意として本気に動き出した。金正恩の指導者としての奔放さと独自性は後世の歴史書にも記されるのではないか。まさに、政治の妙である。

ここに、「朝鮮半島における歴史的和平の動きは米国に紛争を止めるよう促している」と題された最近の記事がある [1]

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>










Photo-1:  韓国の文在寅と北朝鮮の金正恩の両指導者、北朝鮮の白頭山の頂上にて。2018920日。© Pyeongyang Press Corps/Pool / Reuters

·       これ以上に象徴的な出来事はない。南北朝鮮の両指導者は朝鮮半島の最高峰の頂上に立って、お互いの手を握り締めた。平和裏に両国を統合することを固く約束したのである。今や、和平を実現するボールはワシントン側のコートにある。 

     南北朝鮮の和解に関しては、今年は重要な外交的成果がいくつもあった。しかし、今週三日間をかけて行われた両指導者間の会談は朝鮮半島の和平をさらに先へと進めた。

      韓国の文在寅は北朝鮮の首都で平和を願う数多くの市民の歓迎を受けた。北朝鮮の指導者である金正恩と共に、核兵器の廃絶と両国関係の正常化に向けて重要な約束をし、これに署名をした。

この歴史的な北朝鮮への訪問の二日目、文大統領は平壌のメーデー・スタジアムで15万人の市民に向けて演説を行った。その演説の最中、「朝鮮人であるわれわれの兄弟、姉妹」という言葉を何度も繰り返した。熱狂的な喝采に向かって、彼は「偉大な朝鮮人」の和平と統合を呼びかけた。















Photo-2:  金正恩は和平の記念として2トンものマツタケを韓国に贈呈した。

その翌日、文と金はそれぞれの婦人や代表団を伴って白頭山に登った。この山は朝鮮民族精神の誕生の地として5000年も前から南北朝鮮の人たちによって崇拝されている。文大統領が前夜スタジアムで行った演説で述べたように、朝鮮人は何千年にもわたって平和裏に暮らしてきた。冷戦と悲惨な内戦(195053年)によって過去70年間においてだけは分離されていたのである。

その分離は、今や、今週の友愛に満ちた指導者間の会談によって終わろうとしている。

決して無駄な話し合いではなかった。両者は両国を分断している国境を非軍事化し、紛争を回避する手順が履行されているかどうかを監視するための合同軍事委員会を設置することを約束した。ふたりの指導者は輸送システムや経済協力を介して両国を統合する行動計画を設定した。

悲痛な課題となっている戦争によって離散した家族の再会に関しては、国境を越えて接触を保つことを恒常化する計画である。

総括的和平の締結の可能性を高めている要素は何といってもトランプ政権の積極的な反応であろう。トランプ大統領は今週の南北朝鮮の会談を「素晴らしいことだ」と評し、平和の追求を支持した。

米国務長官のマイク・ポンペオは北朝鮮との交渉を「可及的速やかに」再開するよう部下に指示を与えた。

「この重要な(南北両国の)約束に基づいて、米国は直ぐにでも交渉に入る用意がある」とポンペオは述べている。

今のところは順調だ。今週、北朝鮮の金は核兵器の製造設備を撤去する約束を再確認した。しかし、彼は米国が「それに相当する」譲歩を見せることを望んでいる。















Photo-3:  金と文が非核化の道筋を採用した後、両国の国防大臣は「軍事協定」に署名。

これはワシントン政府からの実質的な見返りもなしに北朝鮮が核兵器を一方的に廃棄するというプロセスにはならない。米国からの見返りがどのようなものとなるのかに関しては、金は具体的には何も述べていない。しかし、それは朝鮮戦争に終止符を打つ平和条約の形で米国が安全保障を約束することだと推測される。

また、北朝鮮は米軍が韓国軍と共に毎年実施している合同軍事演習を永久に中止することを望んでいる。平壌にとっては、この軍事演習は自国の安全保障に対する挑発である。それに加えて、南北が両国の関係を正常化し、再統合のプロセスを開始するならば、現在28,000名を越す駐留米軍は韓国の領土内から撤退することを余儀なくされることであろう。

トランプとポンペオは先に示していた「完全で、検証可能な、非可逆的な非核化」といった高圧的な要求からは大きく離れたようだ。トランプ政権は、恐らく、われわれの多くにとっては驚くほど節度のある柔軟性を示し、信頼性を確立するために徐々に交渉を進めることに意欲的であるようだ。

最近の数ヶ月間に進行した関係改善は驚異的でさえある。昨年の今頃、トランプは国連総会で無鉄砲で好戦的な演説を行っていた。その演説で彼は金書記長を「ロケット・マン」と風刺して、攻撃した。さらには、もしも北朝鮮が大陸間弾道ミサイルを用いて米国を脅かすならば、北朝鮮を「徹底的に破壊する」と断言した。

金も同様に何度も攻撃的な姿勢を見せて、トランプは「もうろくしている」と激しく非難し、北朝鮮の常套句である「火の海」という文言を使って彼を脅かした。

世界中で多くの人々が核戦争が近づいているとして恐怖感を覚えた。しかしながら、今年の始めに金が韓国の文大統領に友情の手を差し伸べ、国家統一について喋った時、すべてが変わった。ふたつの国家間の緊張緩和に向けて長い間働き、政治的経験を豊富に持っている文は速やかにそれに報いた。彼は2017年の5月に北朝鮮との和平を約束して大統領に選出されていたのである。

今年の4月、ふたりの朝鮮の指導者は非武装地帯で歴史的な会談を行った。そこでは、国境の両側から取り寄せた土と水を用いて記念植樹が行われた。

その後トランプと金との間に突破口を開いたのは文であった。6月のシンガポールでの会談では米国の現職の大統領が北朝鮮の指導者と初めて会って、頂点に達した。
















Photo-4:  トランプ米大統領は近いうちに北朝鮮の指導者である金正恩と会うことになったと述べた。

来週、韓国大統領は国連総会の場でトランプと会合する予定だ。その場で、この非核化プロセスを推進するために北側はどのような譲歩を米国に求めているのかについての詳細を伝達するものと推測される。

ボールは米国側のコートにある。トランプは朝鮮に対する米国の政策を大幅に変更する必要がある。北朝鮮の安全保障を確実にし、朝鮮半島の和平を確立するには、朝鮮戦争の終結宣言が、遅きに失したとは言え、最初のステップとなる。

しかし、トランプはさらに先へ進む必要がある。平壌に対して強硬な姿勢をとっても功を奏しない。核兵器の製造施設を廃棄するという具体的なステップを評価し、北朝鮮に対する懲罰的な経済制裁を緩和することがさらに先へ進むための妥当な筋道であると思われる。

このプロセスはワシントンにおけるふたつの派閥によって空中分解を起こす危険性がある。そのひとつは朝鮮半島から米軍を引き上げることには反対する軍部と米帝国の政策立案者たちだ。何十年にもわたって継続されてきた米軍の駐留目的は韓国を「防護する」ことよりも、本質的には、むしろ、中国やロシアに対してアジア・太平洋地域で米軍の影響力を投射することにある。

和平を脱線しかねないもうひとつの派閥は「反トランプ」で結集し、民主党員やメディア界の支持者によって独占されている政治的権力層である。この派閥はトランプに関することであれば何でも嫌う。たとえば、彼が北朝鮮に対する外交で見せた、好ましい行為を行った場合であってさえもだ。しかし、本件はすべてをトランプの手に委ねようではないか。彼はどうにかこうにか金正恩との和平にひとつの機会を与えてくれたのだから。

依然として、反トランプ陣営は本件を喜んではいないようだ。ニューヨークタイムズは今週このサミットについてしぶしぶと次のような表題をつけた。つまり、「北朝鮮が新たに約束する核の放棄は米国の要求には程遠い」と。

もうひとつの反トランプ論者であるワシントンポストも「北朝鮮は今や非核化では最小限度の圧力しか受けてはいない」と言って不満を示し、トランプが公言した「最大級の圧力」をあざ笑っている。

米ロ間の正常化についてトランプ大統領が国内の反対派から妨害を受けているのとまったく同様に、トランプは北朝鮮との和平の試みについても邪魔されていることを悟るかも知れない。その場合、歴史的紛争の終結の機会が強引に浪費されてしまいかねない。

それでもなお、米国が邪魔をする戦術は脇に置くとして、南北朝鮮の人々は、今や、かっては見られなかったような断固とした決意と勇気を持って、自分たちの運命を形作ろうとしている。彼らは、たとえワシントン政府が何と言おうとも、戦争には終止符を打とうとするだろう。米国による弱い者いじめの時代は終わろうとしている。

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注: この記事で表明された見解や意見はあくまでも著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。 

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

世間にはさまざまな議論がある。しかしながら、誰にとっても明白なことは全世界の市民にとっては核戦争の脅威を取り除くことこそが最優先である。

これはそれ以外の政策とは比べることさえも無意味だ。この最優先項目と二番目に重要な項目との間には大きな隔たりが存在する。たとえば、米国の政策論者が頻繁に持ち出す中国やロシアの人権問題は、本質論として議論すれば、人類の存続そのものを脅かす核戦争の脅威には立ち向かうことはできない。ましてや、米民主党の活動家にお得意のアイデンティティー問題も然りだ。同性婚の議論は文明の壊滅を目の前にしてどんな意味があると言うのだろうか?

朝鮮半島の非核化がすんなりと進展するかどうかは分からない。しかしながら、たとえ紆余曲折があるとしても、これは時代の要請であることには間違いがない。



参照:

1:Korea’s historic peace move puts onus on Washington to end conflict: By Finian Cunnigham, RT, https://on.rt.com/9erd