2018年8月16日木曜日

ベネズエラが不安定化し、カリブ海には新手の海賊が出没


一国の行政が機能しなくなると、治安は乱れる。官憲の手が届かないと察するや、悪事を働く者が横行する。それは陸上でも、海上でもまったく同じことだ。

そのような典型的な状況を伝える記事に出遭った [注1]。カリブ海における「海賊」の出没を報じている。

海賊と言えば、アフリカのソマリア沖やフィリピンの南部での事例を近年よく耳にしてきたが、それ以外は映画の世界での話しであることから、「オヤ!」という感じがした。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>

【トリニダードトバゴ、セルドス発】 カリブ海のコバルトブルーの海面からチカチカと反射する太陽の光の中でその船は水平線を切り裂くようにして現れた。近くまでやって来た。しかし、「アシーナ」の乗組員でそれに関心を払う者は誰もなかった。

「俺たちは何時ものようにお目当ての赤い魚を漁っているところで、奴らも多分そうだろうと思っていた」と、乗組員の一人である36才のジミー・ラーラが言った。彼らは、4月の終わり頃、無法地帯と化したベネズエラの沖数マイルのトリニダードの海域で釣り糸を下ろしていた。

もう一方の船が近寄ってきた。「助けを求めているのかな」と、28フィートの丸木舟が舷側にやって来た時やや不審に思ったことをラーラは思い起こす。背は小さいが筋骨のたくましい男がピストルを振り回してスペイン語で叫んだ。

「これで合点がいった。奴らは海賊だ。」 

「黒髭」の大砲が鳴りを潜め、ジョリー・ロジャーがカリブ海のラム酒の輸出港でその地位を失ってからというもの、何世紀間もこの地域はロマンに欠ける新手の海賊に直面して来た。

ベネズエラからニカラグアやハイチにかけて政治的ならびに経済的な危機が急速に広がって、無政府状態や犯罪が起こっている。法秩序が崩壊し、カリブ海のある地域ではすでに何年間もそうであったよりもさらに酷い状況に陥っていると、専門家は伝えている。

腐敗した政治家の関与があるようだ。特に、汚職が著しいベネズエラの海域ではなおさらのことだ。

「ベネズエラ沿岸は犯罪が蔓延して、誰でもが自由に参加できる程の無法状態だ」と、南米やカリブ海における組織犯罪を調査している非営利団体の「インサイト・クライム」の共同ディレクターであるジェレミー・マクダーモットは言う。

南米やカリブ海地域では海賊行為に関する総括的なデータはほとんどない。しかし、非営利団体の「オーシャンズ・ビヨンド・パイラシー」によって実施された2年間の調査の結果、2017年については71件の大きな事件が記録されている。これらのデータには商船の略奪やヨットに対する襲撃が含まれている。前年に比較すると163パーセントの増加を示した。圧倒的に多くの事件がカリブ海の海域で起こっている。

これらの事件には栄光視されるような海上での強盗から17世紀の海賊に匹敵するような野蛮な襲撃までが含まれ、その範囲は実に広い。




Photo-1: 船に乗る漁師たち。何人かはベネズエラの海賊による略奪に遭ったり、殺害された。

たとえば、この4月、覆面をした男たちがガイアナ沖30マイルの海域に居た4艘のガイアナの漁船に乗り込んできた。生き残った乗組員によると、乗組員たちは熱い油をかけられ、ナタで切り付けられ、船外へ投げ出された。さらには、彼らの漁船が盗まれた。20人の犠牲者の中で生き残ったのは4人だけであった。残りは死亡したか、生死が不明のままである。

ガイアナのダビッド・グランジャー大統領はこの殺害を「大量虐殺」だとして非難した。ガイアナの官憲はこの事件は隣国スリナムのギャング暴力と何らかの関連があったのではないかと仄めかしている。

「奴らは船を取り上げると言い、皆海へ飛び込めと言った」と、生き残った47歳のデオナリン・ゴバードハンがロイターに向けて喋ってくれた。殴られ、海へ投げ込まれてからは、「俺は必死に頭を水面から突き出し、何とか息をしようとしていた。海水を大量に飲んでしまった。星や月を見ていた。希望をつなぎ、祈りをするだけだった。」 

ホンジュラスやニカラグア、ハイチ、セントルシアの近辺では過去18ヶ月間海賊行為が報告されている。しかしながら、何処でもベネズエラ沖よりも酷い状況は報じられてはいない、と調査専門家が述べている。

南米諸国の経済危機はインフレ率を100万パーセント近くに押し上げ、食物や医薬品の不足を招いている。栄養失調が蔓延し、疾病がはびこっている。訓練された職員や交換部品の不足から飲料水や電力の供給はしょっちゅう中断する。警察や軍隊は自分たちが受け取る給料が何の価値も無くなってしまったことから、職場を放り出した。ニコラス・マドウーロ大統領の社会主義政権の下で、経済停滞と政治の腐敗が進行している。

この状況はベネズエラ人にやけくそとも言えるような策に走らせている。

政府職員の腐敗振りに関してベネズエラのある港湾職員は、無名で取材を受けることを条件に、ベネズエラの海岸警備職員らは停泊している船舶へ乗り込んできて、金品を巻き上げたり、食料を要求していると話してくれた。この状況に対応する策として、商業船はずーと沖に停泊し、夜になるとその存在が確認できないようにエンジンを停止し、照明を切ってしまうとのことだ。

しかし、常に首尾よく行くとは限らない。




Photo-2: 最近密輸と海賊行為が広まって、極めて多くの暴力沙汰が起こっている、と地元民は言う。

この7月、近海のベネズエラの島々への物資の輸送を行っていた地元の企業であるコンフェリーの船がグアンタ港の近くでナイフや銃を振り回す3人組に襲われた。4人の乗組員は何時間にもわたって縛られたまま放置され、食料品やエレクトロ二クス製品を盗まれた。

この1月、これも北東部の海岸にあるのだが、プエルト・ラ・クルスにおいて、停泊中のタンカーに7人の武装した強盗が乗り込んできた。Advertisement

連中はその船の警備を担当する職員を縛り上げ、倉庫を物色した。ロンドンに本拠を置く国際商工会議所の商業犯罪サービス部門によると、これ以降何ヶ月にもわたって同様の事件が報告されている。

ベネズエラからは目視できる距離にあって、140万人の人口を擁するトリニダード・トバゴは隣国発の犯罪に長いこと悩まされ続けている。1990年代以降、麻薬の密売者がマリファナやコロンビアのコカインをベネズエラの港からトリニダードへ運び、そこからさらにカリブ海諸国へ、あるいは、その先へと密輸を行ってきた。

密輸と海賊行為は最近さらに広がって、暴力が酷くなってきている。南部のセルドス港に住む5人のトリニダード人漁師らは、匿名を条件に、自分たちが経験した身の危険を引用して、インタビューでこう言った。彼らの目撃談によると、ベネズエラ船籍の船が軍用の小銃や麻薬、女、珍獣、等を運び込むのが急増している。

「時には、これらのベネズエラ人は小銃や珍しい動物を好んで食料品と交換する」と41歳の漁師が言った。 

もう一人の漁師は、この1月、スペイン語を喋る海賊に何時間も拘束され、その間、彼の兄弟は500ドルの身代金を要求されたと言った。

何件もの強盗や海賊行為が報道された後、今年になってから、トリニダード沿岸警備隊はこの海域をパトロールするために警備艇を派遣した。しかし、これらの犯罪者たちはパトロールの警備艇をやり過ごしてから自分たちの行動を開始する、と地元の住民らは言う。

トリニダードの官憲にこのことに関するコメントを何回か求めたが、回答はなかった。

しかしながら、野党の政治家は海賊行為の急増に悲鳴を上げている。ベネズエラからの自動小銃の流れを見ると、その一部は軍事品の専門店から流されている模様で、トリニダードにおける殺人事件の急増に一役買っている。
















Photo-3: 漁船は陸に引き上げられ、レインコートを着た漁師がトリニダードの海岸で霧の中を歩いている。

数年前に無法状態と化したソマリアの沖で始まった船舶のハイジャック事件を引用しながら、「これを見ると、アフリカ東部の海岸地帯で始まった問題を思い起さざるを得ない」と、野党のユナイテッド・ナショナル・コングレス党の議員であるルーダル・ムーニラルは言う。「われわれが今目にしている海賊行為や密輸はベネズエラの政治や経済が崩壊したことによって引き起こされたんだ。」

カリブ海の暖かい海域で仕事に精を出して、生計を立てている者たちにとっては、海賊行為は新しい脅威だ。この頃は、襲撃を避けるために地元の漁師たちは近海で漁をし、時には夜中に漁をする。

アシーナ号が海賊に乗り込まれた4月のある日の午後、彼は恐怖を感じた、とラーラは言う。

「スペイン語を喋る男が俺にピストルを向けてきて、その次にピストルを海面に向けた。俺には直ぐに分かった。彼は俺に海へ飛び込めと言っているんだと。」 

彼は海へ飛び込んだ。彼の一番の仲良しで、22歳のナレンドラ・サンカーも彼の後を追って、海へ飛び込んだ。二人は沖合いの石油掘削リグに向かって泳いでいたが、サンカーがこむら返りを起こした。

「俺はもうリグに辿りついいていたんだが、彼を助けるためにもう一度海へ飛び込んだ」と彼は言う。「サンカーは溺れるところだった。」 

 


Photo-4: 58歳のデオラジ・バルシング。彼はベネズエラとトリニダードとの間の海域でベネズエラの海賊によって誘拐された漁船の船長の父親である。

彼らは海賊が自分たちの漁船を拿捕する様子を見ていた。この漁船には高価な船外機が2機も装備されていた。船長のアンドレル・プラマーは依然として船上にいた。二人は近くを通りかかった漁船に助け上げられた。この襲撃について官憲に報告したところ、彼らはこう言われた。「海賊の後を追いかける船がないんだ。何も出来ない。」 

あれ以降、プラマーについての情報は全然ない、と男たちは言う。トリニダードの国家安全保障省にこの件に関するコメントを求めたが、回答はなかった。

「奴らが俺の息子を拉致したんだ!」と、何艘もの船に囲まれた、濁った水をたたえているトリニダードのドックの傍に佇む船長の父親が言った。 

「俺たちには何も分からないんだ」と、バルシングは言う。「息子がまだ生きているのか、死んでしまったのか、全然分からない。」 

 (注; 表題を除き、この記事には何の編集も施してはいません。これは新聞雑誌連盟の配信です。) 

<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。


ベネズエラ経済は原油の輸出で成り立っている。輸出の95パーセントを原油が占めるという。その結果、政府の政策は原油輸出が稼ぎ出す利益が源泉となる。しかし、エネルギー市場は起伏が大きい。原油輸出に過剰に依存する経済は必然的に大きく翻弄される。ベネズエラを襲ったハイパーインフレはそのいい例だ。

これらのことを十分に知っている米国は、シャベス前政権を踏襲して米国の政策に異論を唱えるベネズエラのマドウーロ政権に対しては経済制裁を課し、国内の分裂を煽って、政権交代を引き起こそうとしている。インターネット上ではこのことを伝える情報が数多く入手できる。最近起こったドローンを用いたマドウーロ大統領の暗殺未遂事件も米国の息がかかっていると言われている。

ところで、政治や経済の混乱が起こった場合、最大の被害者は常に弱者である一般大衆であることを忘れてはならない。

この引用記事が伝えてくれているように、零細漁民である一般庶民が一番大きな影響を受けている。時に、一個人としては完全に過剰な影響となる。最悪の場合、殺害に見舞われる。

国家としての秩序が失われ、無法化に陥り、暴力が蔓延する状態はメディアは「リビア化」という言葉を用いている。リビアのかってのリーダーであったカダフィは「アラブの春」の運動をきっかけにして、国内政治の混乱を強いられ、米国が支持する反政府派によって殺害された。リビアの国家機構は麻痺状態となって、今も無政府状態が続いている。この一連の動きの背景には米国の思惑が流れている。米国がカダフィを嫌った最大の理由は原油輸出の清算には米ドルを止めて、金本位制のディナールにするというカダフィの構想であった。カダフィ政権の打倒には当時のヒラリー・クリントン国務長官の影が色濃く登場してくることは、今や、周知の事実だ。

トリニダード・トバゴの一般庶民にとっては非常にはた迷惑なことではあるが、隣国のベネズエラの不安定化が大きな黒い影を落としている。今後、恐らくは、さらに悪化することであろう。このベネズエラの不安定化のシナリオを書いたのはドル覇権を維持しようとする米国である。米国は世界中で紛争や戦争を引き起こし、今や、世界平和の敵として世界中から嫌われる身になってしまった。



参照:

注1:New Breed Of Pirates Sail In The Caribbean, As Venezuela Disintegrates: By Anthony Friola, The Washington Post, Aug/13/2018


2018年8月11日土曜日

イスラエルの米選挙に対する干渉はロシアのそれを遥かに圧倒する - チョムスキー

2016年の米大統領選では勝利を自他共に確実視していた民主党のヒラリー・クリントンが共和党のトランプに敗北した。その結果が判明してからというもの、ヒラリー・クリントンや民主党は自分たちの失敗を認めず、トランプがロシアと結託して選挙に干渉したからだとして大失敗の矛先を相手側の候補に向けた。こうして、ロシアが米国の大統領選を干渉したとする筋書きが過去2年近くにわたって米国の大手メディアを賑わし続けている。率直に言って、すべてが作り話だ。

この「でっち上げ」を証拠付ける最も有力な理由はCNNの或るディレクターが「これはでっち上げだよ。売れるようにするためさ!」と、録画されているとは知らずに喋ったことだ。少なくとも、大手メディア側の当事者の間には「でっち上げ」をしているという明確な自覚があったことを物語っている。これはもう何をかいわんやだ。

しかしながら、その後の大手メディアの筋書きはしたたかにも何も変わってはいない。「嘘でもいいから、言い続けてさえいれば、一般大衆はそう思い込むようになるさ」と言わんばかりの態度だ。

米国の最高の思索家と目され、言論界の超大物であるノーム・チョムスキーが自分の意見を述べている。「イスラエルの米国の選挙に対する干渉はロシアがやったことを遥かに圧倒する」と言っている [注1]。彼は失うものが何もないことから、彼の指摘は実に単刀直入である。

今の米国ではイスラエルの政策に関して率直に喋ることが非常に難しいと言われている。たとえば、書き物を残すことを生業とする大学教授や研究者らは将来の研究費の枯渇を懸念して、言いたいことさえも言えないのが現実であると伝えられている。米国社会はそれほど迄に歪んでしまった。

本日はこのチョムスキーの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。


<引用開始>

やれやれ、これは米国における週末の政治論議をさらに厄介なものにしそうだ。

大手メディア(や左翼の政治家たちさえも)が「共謀」の筋書きから退去し始めたことから、彼らは米選挙へ介入し、「われわれの民主主義に干渉」するといった「悪意に満ちた」ロシアの努力を喧伝するとか、そういった類の非常に感情的な文言に今まで以上に焦点を合わせようとしている。

それが故に、世界でも良く知られている反体制派で、リベラルな思考の持ち主である大物、ノーム・チョムスキーが「デモクラシー・ナウ」とのインタビューで喋った言葉はトランプを嫌う連中にとっては厄介なものになりそうだ。

・・・そー、それでは、われわれの選挙に対して行われたと言われている外部からの干渉を取り上げてみよう。ロシア人はわれわれの選挙を干渉したのだろうか?メディアは非常に大きな懸念を抱いている。でも、世界中の人たちはほとんどがこれは冗談だとして受け止めている。

まずは、われわれの選挙に対する外国からの干渉について興味があるならば、ロシアが行ったかも知れない行為はほとんど問題にはならない。他の国が大っぴらに、厚かましく、しかも、非常に大きな支援を受けながら行っている行為と比べてみることが重要だ。

米国の選挙に対するイスラエルの干渉の程度はロシア人がやったかも知れない行為を遥かに圧倒している・・・

私が言いたいのはイスラエル首相のネタニヤフが米大統領への連絡もせずに、直接米議会へ出向き、大統領の政策を駄目にするために議会で演説を行い、拍手喝采を受けていることだ。2015年にオバマとネタニヤフとの間で何が起こったかはご存知だと思うが。 

プーチンは米議会の両院合同の議場へやって来て、米国の政策を覆すよう議員たちに呼びかける演説を行っただろうか?しかも、米大統領には何の連絡もせずにだ。しかし、これはイスラエルが及ぼす圧倒的に大きな影響力の中ではほんの一部分でしかない。

もしもあなたが米選挙に対する外国からの干渉に興味をお持ちならば、検証すべき場所は他にある。しかしながら、それさえもが冗談みたいなものではあるが。

つまり、機能する民主主義のもっとも基本的な要素のひとつは選挙で選ばれた代議士たちは自分たちを選出してくれた有権者に対して責任を負うという点だ。それよりももっと基本的な事柄なんて何もない。しかし、米国では、単純に言って、実際にはそうではないことをわれわれは十分に知っている。

学術的な政治学の本流においては有権者の意向と選出された代議士が模索する政策との間の比較を行った論文が豊富にあり、それらが示すところによれば、有権者の大部分は基本的に選挙権を奪われたも同然だ。彼らが選出した代議士らは有権者の声には何の関心も示そうとはしない。彼らは有名な1パーセント、即ち、裕福で、強力な大企業の声に耳を傾けるだけだ。

トム・ファーガソンの非常に素晴らしい研究によると、何年も前に遡るが、米国の選挙は長い間多くが買収されて来た。単純に選挙運動の費用を見るだけで、大統領選や議会選挙の結果をかなりの精度で予測することが出来る。これは全体のほんの一部分だけだ。ロビー活動家たちは実際に議員会館で法案を起草する。強力なやり方で、個人資本家や大手企業、超裕福な連中が集まって、われわれの選挙にたっぷりと、圧倒的に介入し、それはもう民主主義のもっとも基本的な要素さえもが蹂躙される程のものだ。もちろん、これらはどれを取り上げてみても、純法律的には合法的ではあるのだが、社会がどのように機能しているのかを端的に示している。

もしもあなたが我が国の選挙を少しでも心配し、選挙がどのように運営され、その結果がこの民主主義社会に起こる事とどのように関わって来るのかについて心配するならば、ロシア人の不法侵入についてあれこれと詮索するなんてお門違いも甚だしい。メディアでは時にはこれらに対する関心も見られるが、その関心の程度はロシア人の不法侵入という取るに足りない問題と比べてさえも非常に小さい。

われわれはこれが次から次へと問題視されているのを目撃しており、トランプが言わんとすることについてさえも問題視されている。それがどんな理由からであろうとも、彼の言いたいことがまったく妥当性を欠いているという訳ではない。つまり、彼はロシアとの関係を改善するべきだと言っているが、これは完全に正しいことだ。 

そのことで泥の中を引きずり回されるなんてことは驚くほどに奇妙なことであり、ロシアは米国との交渉を拒否すべきではない。何故かと言えば、当の米国はイラクへの侵攻によって今世紀では最悪の犯罪を犯しているのだから。ロシアがかって犯した悪事と比較するとイラクへの侵攻は遥かに悪辣だ。

しかし、彼らはそのことを理由にしてわれわれとの合意を拒むべきではないし、何らかの法律違反が存在するかも知れないが、彼らがどのような法律違反を犯していようともわれわれも彼らとの合意を拒むべきではない。実にばかばかしいことだ。われわれは一緒になって、改善の方向へ向かわなければならない。ロシアとの国境では緊張が非常に高まっており、その緊張が何時爆発するか分かったものではない。そんなことが起こったら、最終核戦争を招き、地球上の生物や生命の終焉となりかねない。われわれは今そのような状況に非常に近くなっている。

今、われわれは「何故」と問い質すべきだ。まずは、状況を改善するために何かを実行しなければならない。二番目には、われわれは「何故」と問い質さなければならない。さてと、ことの発端はソ連邦の崩壊後にミカイル・ゴルバチョフとの口頭の約束を破って、NATOを拡大したことにある。ほとんどはクリントン政権下での出来事であった。最初は父ブッシュの下で、ほとんどはクリントン政権の下で行われ、NATO圏はロシアとの国境にまで拡大された。その後、オバマ政権下でもさらなる拡大が進められた。

米国はウクライナをNATOへ加入させようとした。ウクライナはロシアにとっては戦略地政学的にも中核的な地域である。

そー、確かに、ロシアの国境付近では緊張が高まっている。メキシコとの国境でこんなことが起こったとしたら米国はいったいどう反応するかを考えて貰いたい。これらの出来事こそすべてがもっとも重要な関心事であるべきだ。

組織化された人間社会の運命、さらには、生命体の存続自体がこの問題に大きく依存しているのだ。トランプが嘘をついたかどうかという問題に比べて、いったいどれだけの関心がこれらの課題に寄せられているというのであろうか?思うに、これらはメディアに対する非常に基本的な批判である。

要約すると、 トランプがロシアとの関係を改善すると言っていることは正しい。世界の運命がそれと大きく関わっており、ロシアは特に注目すべきことなんて何もしてはいない。ロシア人による不正侵入は非常に瑣末な事柄である。イスラエルこそが本物のお節介焼きだ。米国の民主主義はもはや存在しない。米国を支配し、動かしているのは億万長者である大企業だ。

ノーム・チョムスキーは「プーチンの手先」であろうか?反体制派のベテランの闘士は「役に立つ馬鹿」になってしまったのだろうか?いや、彼は反ユダヤ主義者であるに違いない。そうだろう? われわれは左派の「ロシア、ロシア、ロシア」という筋書きに対するこのチョムスキーからの破壊的な攻撃にアダム・シフ [訳注: カリフォルニア選出の民主党下院議員で、外交問題に明るい] がどのように反応するのかを見ることにしよう。楽しみである。

この記事は最初に「
ZeroHedge」によって出版された。

注: この記事に表明された見解は全面的に著者のものであって、必ずしもInformation Clearing Houseの意見を代表するものではありません。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

チョムスキーのもっとも中核的な論点は「われわれは一緒になって、改善の方向へ向かわなければならない。ロシアとの国境では緊張が非常に高まっており、その緊張が何時爆発するか分かったものではない。そんなことが起こったら、最終核戦争を招き、地球上の生物や生命の終焉となりかねない。われわれは今そのような状況に非常に近くなっている・・・」という点にあると私は思う。

また、米国が犯したイラクへの軍事的侵攻は米国が他国のことをあれこれと論じる際のモラルの基盤そのものを台無しにしてしまったというチョムスキーの指摘は決して忘れたくはない。

人類の存続を確実にすることは他のすべての課題よりも優先させなければならない。これは自明の理である。



参照: 

注1: Chomsky Admits “Israeli Intervention In US Elections Overwhelms Anything Russia Has Done": By Tyler Durden, ZeroHedge, Information Clearing House, Aug/05/2018





2018年8月4日土曜日

米諜報機関は米国の崩壊を駆動する役

7月16日、ヘルシンキでトランプ・プーチン会談が開催された。会談後、両大統領は共同記者会見に臨んだ。

記者会見ではさまざまな質問があった。もっとも関心を呼んだのはロシアが2016年の米大統領選に干渉したのかどうかという点である。トランプ大統領は会談の場でプーチン大統領の明確な否定を目撃したことから、ロシアは何の干渉もしなかったと答えた。米国内ではかねてから諜報部門からの代表者が集まり、諜報界全体の意見として、ロシアが大統領選に干渉したとする見解を報告していた。この諜報界からの報告は必ずしも正式に16部門全体を代表する見解ではないとの指摘もあるが、トランプ大統領はこの記者会見で自国の諜報機関からの報告を反故にして、ロシア大統領の言葉が正しいとしたのである。このことが反ロ・反トランプのキャンペーンを行って来た民主党や大手メディアの興奮状態を更に激しいものにした。

一連のロシアゲートを2年近くも観察して来たが、今回のトランプ・プーチン会談後の記者会見を受けて米国内がかくも騒然となったのは9/11同時多発テロ以来初めてのことである。

最大の不幸は、私の個人的な意見では、反トランプ・反ロの議論は作り話ばかりで、非常に理不尽であることだ。その理不尽な状況を先導しているのは米諜報機関だとする記事がここにある [注1]。その表題は「米諜報機関は米国の崩壊を駆動する役」と題され、著者はロシア系米国人で、ロシアに関する論評では定評のあるドミトリー・オルロフ。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。


<引用開始>

今日、米国では「スパイ」という用語は特定の分野以外ではそれ程用いられない。散発的に産業スパイが話題に登場することもあるが、米国人が国境を越えた世界を理解しようとする場合には「諜報」という言葉が多用される。物事をどう見るかによるが、これは知的な選択であるかも知れない。あるいは、そうではないかも知れない。

まず、米国の「諜報」は米国が伝統的に関与してきたスパイ・ゲームとは曖昧に関係するだけである。その一方、ロシアや中国といった国々では依然としてスパイ活動が行われている。スパイ活動では非常に重要な情報が収集され、自国の関連部署の意思決定者に送付される。この間、情報の収集や検証は極秘裏に進められる。

かっては、自分の存在が露見するとスパイは青酸カリを呑んだものだ。拷問は紳士的ではないと考えられている今日、相手に捕まってしまったスパイは「スパイの交換」の機会を辛抱強く待つことになる。スパイの交換に関する常識的な不文律としては、スパイの交換は密かに実施し、将来の交渉作業に支障を来たさないためにも交換された当事者に対しては何の介入もしない。近年、米諜報機関は囚人の拷問は利用価値があると判断しているが、職業的なスパイはその対象ではない。無実の傍観者が対象である。時には強制された挙句に「アルカイダ」のような作り話も登場する。米諜報機関がイスラム系テロリストの間でそれを喧伝する前はそんなものは存在してはいなかった。

米諜報機関の下部組織であり、ドクター・イーブルの小型版として見られる英国の「特殊サービス」は、最近、自分たちのスパイであり、二重スパイでもあるセルゲイ・スクリパルに干渉した。セルゲイ・スクリパルはスパイの交換によってロシアの刑務所から解放されていた。連中はスクリパルに毒を盛り、何の証拠も示さずにロシアにその罪を着せようとした。これで、英国のスパイはロシアとの間でスパイの交換が行われることはなくなるだろう。(英国がポートン・ダウンの「秘密」の研究所で所有しており、実に強力であるとされていたノビチョクが正常に機能せず、致死的な効果を示すのは20パーセントのみであることから)ロシアで活動する英国のスパイには、多分、伝統的な青酸カリが配布されるだろう。

一般的にスパイ活動については他にも常識的な不文律がある。何事が起こっても、すべてを法廷外に留めることだ。どんな訴訟であっても、事実の探索の過程は検察側に情報源や手法を暴露するよう強要し、これらの情報は公知の事実となってしまう。これに代わるものは秘密法廷でしかないが、この手法は正当な過程を踏んでいるかどうか、あるいは、証拠の原則を踏襲しているかどうかを独立に検証することが出来ないので、大きな利用価値があるとは言えない。

反逆者に対しては違った基準が適用される。つまり、この件においてはことの発端は公判中の人物であり、その方途は国家に対する反逆であって、これは暴露することが可能であることから、彼らを裁判所へ送り込むことは受け入れられ、倫理的にも高い目標に仕える。しかし、たとえ二重スパイであることが判明したとしても、この論理はただ単に自分の仕事をこなしている由緒正しい、職業的なスパイの場合には適用されない。事実、対防諜活動によって一人のスパイが発見された場合、プロフェッショナルな策は彼を二重スパイに仕立て上げるか、それが不可能な場合には偽情報を注入する経路として彼を活用することだ。

このルールを破るために米国人は最善を尽くして来た。最近、ロバート・ミュラー特別検察官はロシア国内からDNC(民主党全国委員会)のメール用サーバーに不正侵入し、電子メールをウィキリークスに送ったとして12人のロシア人の工作員を起訴した。ところで、このサーバーは今行方不明である(間違ってどこかへ置き去りにされてしまった)が、ウィキリークスによって公開されたファイルの更新日時を辿ってみると、これらのファイルはインターネット経由で送付されたのではなく、USB メモリーにコピーされたものであることを示している。したがって、これはリークであって、不正侵入ではない。ロシアの遠隔地から操作するなんて誰にもできない相談だ。

さらには、米国の高官にとってはロシア国内のロシア人市民を公判に付すという考えは無益となる。ロシアの憲法には次のような条文があることから、彼らが米国の裁判所へ出頭することはない。「61.1条 ロシア連邦の市民は国外へ退去させられたり、外国へ送還されることはない。」ミュラー特別検察官は憲法学者らをパネルに招致し、この条文を解釈して貰うべきだ。あるいは、その条文を読んで、くやし涙を流すことも可能だ。確かに、米国人らはスパイを裁判所に送り込むことに関する不文律を破るために最善の努力を尽くしてはいるのだが、彼らの最善の努力は決して十分だとは言えない。

とは言うものの、ロシア人スパイはDNCのメールサーバーへ不正侵入することは出来なかったと信じる理由はない。あのサーバーは、多分、マイクロソフト・ウィンドウズを使用しており、この基本ソフトは穴だらけであったに違いない。まさに、米国人が多くの市民が住んでいたシリアのラッカの街をガラクタに化した後のように穴だらけなのだ。フォックス・ニュースがこの不正侵入について質問をした時、プーチン大統領(現職の前はスパイとして仕事をしていた)は真面目な顔付きを保つことに苦労しているようでさえあったが、明らかにこの瞬間を楽しんでいた。不正侵入を受けた、あるいは、リークされた電子メールは不正行為のパターンを明確に示していると彼は指摘した。つまり、DNCの職員らは民主党の予備選挙でバーニー・サンダースから勝利を掠め取ろうと共謀し、このことがバレてしまった後に彼らは辞職を強いられた。もしもロシア人による不正侵入が本当に起こっていたとしたら、米国の民主主義を救うために働いていたのはロシア人であったということになる。とすると、感謝の念はいったい何処に向けるべきなのか?愛着の念は何処に向けたらいいのか?そうそう、DNCの犯罪者らはどうして刑務所に放り込まれていないのか?

米国とロシアとの間には刑事事件の捜査において協力するという合意があることから、プーチンはミュラーによって告訴されたスパイを尋問することを提言した。さらにプーチンはミュラーがこの訴訟に同席するよう提言した。しかし、そのお返しとして、ウィリアム・ブラウダーという有罪判決を受けている犯罪者に手を貸し、悪事を働いたかも知れない米国の政府職員を尋問することをプーチンは希望したのである。当のウィリアム・ブラウダーはロシアで9年の服役を何時でも開始するばかりとなっている。ところで、彼は不正に得た金の中から莫大な金額をヒラリー・クリントンの選挙運動に寄付をしていた。これに応えて、米上院は米国の政府職員に対してロシアが尋問をすることを禁じる決議を採択した。12人のロシア人のスパイに対する尋問について有効な要求書を発行する代わりに、少なくとも米国のある政府職員は彼らが米国へやって来るようにとの馬鹿げた要求をした。重ねて言うが、いったい彼らは61.1条のどの部分が理解できなかったのであろうか?

もしもわれわれが諜報活動や反諜報活動の伝統的な定義、つまり、国家を防護する上で最善の意思決定をすることを目的として詳細な情報に基づいて決断をするためにも十分に検証された情報を提供するという米国の専門用語における「諜報」の意味に厳密に従うならば、米国政府職員の論理は理解することが困難であろう。しかし、もしもわれわれがそのような奇妙な考えから自分自身を解放し、われわれが実際に目にする現実を受け入れるとするならば、すべてが完全に意味を成すのである。即ち、米国の「諜報」の目的は事実に基づくものではなく、単に「ナンセンスをもたらす」だけである。

米諜報機関が提供する「諜報」は何についてでもあり得るが、実際には、それが馬鹿げていればいるほどいいのだ。何故ならば、その目的は馬鹿げた連中が馬鹿げた意思決定をすることにあるからだ。事実、彼らは事実は有害であるとさえ考える。例えば、それがシリアの化学兵器であったり、バーニー・サンダースから予備選挙を勝ち取ろうとする陰謀、イラクの大量破壊兵器、あるいは、オサマ・ビン・ラーデンの居場所であったりする。何故ならば、事実は正確さや厳密さを要求する。その一方、彼らは純粋な幻想や奇行の世界に棲むことを好む。この意味においては、彼らの実際の目的は容易に認識可能である。

米国の諜報の目的は存在しない(即ち、借り物の)財政源を非効率的で、過大な値札が付けられた軍事作戦や兵器システムのために浪費することによって在りもしない攻撃的な敵国から米国を防護すると見せかけながら、米国やその同盟国に残されている富のすべてを吸い取り、出来るだけ多くをポケットに収めることにある。もしも攻撃的な敵国が想像上の存在ではなく現実のものである場合、彼らに代わって誰かが戦いを遂行するようお膳立てをする。例えば、「穏健な」テロリスト、等を使う。彼らの最先端技術でもっとも目覚ましい進歩の一例は、9/11 同時多発テロという実際に行われた偽旗作戦からシリアの東グータで観察された偽物の化学兵器攻撃に見られる作り物による偽旗作戦への移行に見ることができる。ロシアが米大統領選に干渉したとする物語はこの進化の過程の最終段階であろう。つまり、このでっち上げの過程でニューヨークの摩天楼は破壊されることもなかったし、シリアの子供たちは何の傷も受けなかった。一見したところ、この物語は数多くの人たちによって語り継がれ、永久に生きながらえることが可能であろう。これは、今や、純粋な信用詐欺である。もしもあなたが彼らが発明した筋書きにそれ程の感銘を受けないとするならば、あなたは共謀論者であると見なされ、最新の言葉を使うとすれば、あなたは反逆者である。

トランプ大統領は、最近、米国の諜報機関を信用するかとの質問を受けた。彼は言葉を濁した。気軽に表現すれば、彼の答えは下記のような具合だ:

「そんな馬鹿げた質問をするなんてあんたは何というお馬鹿さんであろうか。もちろん、彼らは嘘をついている!彼らは嘘をついているところを何度も捕まっているので、彼らを信用することなんて出来ない。彼らは今回は嘘をついてはいないと主張するならば、彼らが嘘をつくことを止めたのは何時だったのかを特定しなければならない。そして、それ以降彼らは嘘をついたことがないことを実証しなければならない。入手可能な情報に基づいて実証するのはまさに不可能だ。」

もっと真面目で事実に即した答えは次のようなものとなるだろう: 

「米国の諜報機関は2016年の大統領選の結果を覆すために私がロシアと共謀したとの言語道断な主張をした。これの証拠を示す責務は彼らにある。彼らは裁判所で彼らが述べたことを証明しなければならない。もしも決着することが出来ると言うならば、裁判所こそが物事を合法的に活着することが可能な場所だ。決着されるまでは、われわれは彼らの主張は事実としてではなく、陰謀論として取り扱わなければならない。」

そして、本格的で、かつ、無表情な答えは次のようなものとなろう: 

「米国の諜報サービスは米国の憲法を守るとする宣誓をしている。この宣誓によれば、私は彼らの最高司令官である。彼らが私に報告をするのであって、私が彼らに報告するのではない。彼らは私に対して忠実でなければならないのであって、私が彼らに対して忠実でなければならないのではない。もしも彼らが私に対して忠実ではないならば、その事実は彼らを解雇するのに十分な理由となる。」

しかし、そのような現実に即した、堅実な対話をすることは不可能であるようだ。われわれが耳にするのはすべてが作り話の質問に対する作り話の答であって、その結末は一連の間違いだらけの意思決定である。作り話の諜報に基づいて、米国はこの国のほとんどすべてを浪費し、この国は非常に高価で、最終的にはまったく無益な紛争に巻き込まれている。彼らの努力によってイランやイラク、シリアは今や宗教的にも地政学的にも同盟関係を維持し、ロシアに対して友好的になった。アフガニスタンではタリバンが再興し、イラクやシリアにおいて米国によってひとつの勢力として組織化されたイスラム国と戦っている。

今世紀になってから米国がこれらの戦争で費やした戦費の合計は4,575,610,429,593ドルに達したと報告されている。これを138,313,155人の米国の納税者数で割ると(実際に税金を支払っているのかという指摘は余りにも些末な質問だ)、納税者一人当たりで33,000ドルとなる。もしもあなたが米国で税金を払っているならば、それは米国のさまざまな諜報機関が発した「しまった!」という言葉に関してあなたに向けて発行された当面の請求書である。

16部門もある米国の諜報機関の予算の合計は668憶ドルにも達し、彼らが如何に効率的であるかを自覚するまでは、この額は著しく大きいと感じることであろう。彼らの「しまった!」の費用の総額は我が国にとっては彼らの予算の70倍にも相当する。20万人もの職員を抱え、米国の納税者にとっては個々の職員は平均で2千3百万ドルの負担となる。この数値はまったく途方もなく大きな金額だ!エネルギー業界は従業員当たりの稼ぎが一番高く、一人当たりで180万ドルとなる。ヴァレロエネルギーは飛びぬけて稼ぎが大きく、一人当たりで760万ドルだ。米諜報界は一人当たり2千3百万ドルで、ヴァレロの3倍となる。脱帽だ!当面、これは米諜報界を最高の地位に据えてくれた。考え得る限りでは最高に効率が高く、米国の崩壊に向けて駆動役を担っている。

なぜそうなのかに関してはふたつの仮説が想定される。

まずは、これらの20万人の職員はべらぼうに無能で、彼らがもたらす失敗は偶発的なものであると想定することができる。しかし、ひどく無能な連中がそれでもなお平均で一人当たり2千3百万ドルもの金額を彼らが選択した多種多様な無益な仕事に向けて何とか注ぎ込む姿を想像することは実に難しい。そのような無能な連中が自分たちが犯した失敗を咎められることもなく何十年間にもわたってヘマをし続けることが許されていることを想像するのはさらに難しい。

もうひとつの仮説はもっと妥当なものだ。米諜報界は終わることのない、高価で、無益な一連の紛争にこの国を追い込むことによってこの国を倒産させ、財政的にも、経済的にも、政治的にもこの国を崩壊させるという素晴らしい仕事をして来た。世界が認識している限りでは、これは単一の連続した行為としては最大級の窃盗である。「知的な存在」がどうして自分の国家に対してこのようなことを仕出かすことができるのであろうか。「諜報」に関して考え得る定義については、あなた方ご自身が見出して貰いたいと思う。その難題に取り組んでいる最中に、「国家に対する反逆」に関しても新たに改定された定義を見出して貰いたい。永久的な嘘つきとして知られている連中によってもたらされた馬鹿げた、根も葉もない主張に向けられる懐疑的な態度よりも遥かにましな定義を見つけて欲しいのだ。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

ところどころにユーモアを交えることによってこの記事を読みやすくしている。

下記に示す段落は実に秀逸だ:

米諜報機関が提供する「諜報」は何についてでもあり得るが、実際には、それが馬鹿げていればいるほどいいのだ。何故ならば、その目的は馬鹿げた連中が馬鹿げた意思決定をすることにあるからだ。事実、彼らは事実は有害であるとさえ考える。例えば、それがシリアの化学兵器であったり、バーニー・サンダースから予備選挙を勝ち取ろうとする陰謀、イラクの大量破壊兵器、あるいは、オサマ・ビン・ラーデンの居場所であったりする。何故ならば、事実は正確さや厳密さを要求する。その一方、彼らは純粋な幻想や奇行の世界に棲むことを好む。この意味においては、彼らの実際の目的は容易に認識可能である。

米諜報機関の存在は米国の社会に巣食う癌細胞であると言えようか。自己増殖によって今や余りにも大きくなってしまった。癌細胞を摘出しようとすると、周辺の正常な臓器を著しく傷つけてしまう危険性がある。それ程にも危険な状態となっているのだと感じられる。トランプ政権が発足してから1年半余りが過ぎたにもかかわらず、米国の政治は「軍産・ウオールストリート・大手メディア複合体」によってハイジャックされており、反ロ・反トランプのキャンペーンのせいで空回りをしている。そして、その中心に諜報部門が存在すると著者は言う。非常に興味深い指摘である。さまざまな事象を観察すると、著者の指摘が当を得ていることを思い知らされる。


参照:

注1: US Intelligence Community as a Collapse Driver: By Dmitry Orlov, cluborlov.blogspot.com, Jul/24/2018  






2018年8月1日水曜日

ドイツ議会はシリアにおける米国の駐留を非合法と判断

7月10日のある記事 [注1] によると、ドイツ議会にある「議会科学サービス」がシリアにおける米軍の駐留を非合法であると判断し、そのことを報告した。

興味深いことには今欧州では米国離れが着実に進んでいるようだ。今までは米国との同盟関係を重視するあまりに、言いたいことを言わなかった欧州がそうした受け身の態度を改めて、自分たちの本当の気持ちをはっきりと言い始めたのだ。果たしてこれがどこまで進行するのかは分からない。NATOが瓦解するのか、EUが内部崩壊を起こすのか・・・

また、欧州勢はシリアから完全に撤退するのか?イラン核合意は米国を抜きにして継続されるのか?ドイツが推進しているロシアからの天然ガスのパイプライン、ノルドストリーム2は完成するのか?ウクライナの行方は?と、大きな問題が山積している。そのどれもが欧州の政治的自立を試すことになるだろう。

欧州における米国離れの傾向は中国やロシアが米ドルによる貿易の決済を自国通貨に切り替え始めたことと相俟って今日の国際政治や国際経済においては非常に重要な要素であると思う。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

ドイツ議会の議会科学サービスがどのような論理でシリアにおける米軍の駐留を非合法であると判断したのか、その論理的背景を学んでおきたい。


<引用開始>

ドイツ議会の「科学サービス」は米議会の「議会調査サービス」に匹敵する組織である。議員は専門家の中立的な意見を求めて、この組織に法的な質問やその他の件について意見を求めることができる。科学サービスが提出する見解は何よりも高く評価される。

ドイツの左派の党「リンクス」の党員、アレクサンデル・ノイはシリア国内におけるロシア、米国ならびにイスラエルの軍事的作戦の合法性に関して意見を求めた。

その結果(pdf, ドイツ語) は極めて明白なものである: 

- ロシアは(国際的に)認知されているシリア政府からの要請を受けた。シリアにおけるロシア軍の駐屯は国際法の下では何の疑いもなく、合法的である。

- シリアにおける米国の軍事行動はふたつの局面として観察することができる: 

政権変更:

シリア国内の反乱者に対して行われた米国(ならびに、他の国)からの武器の供与は非合法である。これは国際法で定められている武力の行使の禁止、特に、国連憲章の第2条の4項に違反する。

すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

ISISに対する戦い:

シリアにおけるイスラム国は米国に対して攻撃の脅威を与えることから、米国はシリアにおける米軍の存在は国連憲章の第51条に定められた(集団的)自衛権に相当するものだと主張している。その主張自体は、シリアが主権国家であることから、不十分なものとなろう。そのような状況から、イスラム国に対する戦いについてはシリアには「その気もなく、能力もない」と米国は主張している。

科学サービスは「その気もなく、能力もない」という主張は米国の作戦が開始された時点ですでに曖昧であったと述べている。これはふたつの理由からである: 

これは法律ではなく、国際的に認知された法的原理でもない。(非同盟諸国の120か国、ならびに、他の国々がこれに反対。) 

シリア政府自体はイスラム国と戦って来たが、イスラム国が支配していた地域はシリアの大部分を占めるものではなく、全土に及ぶ作戦ではなかった。人によってはこれは「能力もない」という主張を正当化すると言う。しかしながら、イスラム国はほとんどが敗退し、もはや意味のある領土的支配を保ってはいない。

米軍や他の同盟国のシリアにおける存在はすでに法的に曖昧になっており、この主張はもはや維持することはできない。シリアにおける米軍の存在は非合法である。

- シリアにおけるヒズボラやイラン軍の部隊あるいは施設に対するイスラエル軍の攻撃は、シリア軍そのものに対する攻撃と同様に、国連憲章の51条の下で「予期される自衛の行動」であるとイスラエル側は主張する。しかし、「予期される自衛の行動」はイスラエルに対する攻撃が真近に迫った時にのみ主張することが可能なものである。ところが、そのような事態は生じてはいなかった。したがって、イスラエルの攻撃は「先制攻撃」であって、これは国際法の原理として認知されたものではない。

このようにイスラエルによる攻撃は「専制的な自衛の行動」であって、これは国際法で認知された原理ではない。

科学サービスはシリアに対するトルコの侵攻に関しては意見を求められてはいないが、シリア国内でクルド人勢力に対してトルコが行っている侵攻はあくまでも「自衛」のためであると主張しているが、これは、多くの場合、地政学的戦略の目的のために乱用されている。


限定的な科学サービスの意見:

ここに提供された議論はまったく新しいという訳ではない。他の論者も同様な経路を辿って、同様な結末に至っている。

しかし、ドイツ軍はイスラム国に対抗する米国の同盟国の一員であり、米国が主張するこの議論の下で米国を支援するためにトルコやヨルダンから偵察機を発進させて来た。ドイツ議会は、目下、イスラム国に対抗する委任状を更新する積りはなさそうだ。他の国々もこれにならって、米国との同盟軍としての参画は中断する模様である。

これはシリアの地上の状況を変えるものにはならないけれども、国際政治の雰囲気を変えるものとなる。また、これはヨーロッパの一般大衆の目に映るシリア政府の「リハビリ」に功を奏するであろう。シリア政府はもはや「敵国」とは見なされないからだ。

この記事は最初に「Moon Of Alabama」によって出版された。

注:この記事の見解は全面的に著者のものであって、必ずしも Information Clearing Houseの意見を反映するものではありません。

<引用終了>


これで全文の仮訳は終了した。

ドイツ議会の科学サービスが行ったこの検証結果は「シリアの地上の状況を変えるものにはならないけれども、国際政治の雰囲気を変えるものとなる。また、これはヨーロッパの一般大衆の目に映るシリア政府のリハビリに功を奏するであろう。シリア政府はもはや敵国とは見なされないからだ」と述べている。

昨年の夏、カタールとサウジアラビアとの間の関係は非常に険悪なものとなった。両国の間には天然ガスを巡って20年間にも及ぶ争いが続いていたと言われている。結果として、カタールはサウジの影響圏から脱して、天然ガス源を巡ってはかねてから仇敵であったイランと天然ガスの共同開発を行うといった話題さえもが出て来る昨今である。また、イランはサウジのライバルである。カタールはかってはサウジと並んでシリアの反政府派を支援する強力なメンバーでもあった。大量の資金が供給されていた。また、カタールから大量の資本を導入していたフランスもカタールの外交上の変化によって対シリア政策に大なり小なりの影響を被っていることだろうと推測する。

数年前にシリアを取り巻いていた状況と比べると、ドイツ議会の科学サービスが提示した結論は国際政治の上では画期的なものであると言えるのではないか。この趨勢が逆戻りすることもなく前進し、故郷を追われ、難民生活を余儀なくされて来た何百万人ものシリア市民が故郷へ再び戻れる日が来ることを願うばかりである。




参照:

注1: German Parliament Report U.S. Presence in Syria Is Illegal: By Moon Of Alabama, Information Clearing House, Jul/10/2018











2018年7月27日金曜日

「今までとは完全に違う世界秩序が始まる」 - ロシアの一番人気のトークショーがトランプ・プーチン会談を語り合う

716日にヘルシンキで開催されたトランプ・プーチン会談は米国の軍産複合体を中心とした戦争推進勢力に激震を引き起こしただけではなく、EUやロシア国内にも大きなショックを引き起こしたようだ。特に、プーチン大統領のお膝元では今いったい何が議論されているのかという問い掛けは非常に興味をそそる。

ここに「今までとは完全に違う世界秩序が始まる - ロシアの一番人気のトークショーがトランプ・プーチン会談を語り合う」と題された記事がある [1]

この記事の原典はロシア語によるYouTubeの動画である。動画の表題は「“He Fears For His Life”: President Trump Trying His Best to Not End Up Assassinated Like Kennedy」で、そのアドレスはhttps://youtu.be/IUK5g6v5zrg。英語の字幕付き。もっと長い動画の一部分を取り出して、英語版を準備したような感じだ。このトークショウの参加者は何人もいるのだが、ひときわ光っているのは映画監督、脚本家、映画製作者と幅広い活動を行っているアルメニア系ロシア人のカレン・シャフナザーロフだ。彼の熱弁振りを動画で観察して欲しい。映画監督特有の鋭い洞察力が如何なく発揮されており、非常に興味深いトークショーとなっている。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>

ロシアでも指折りの政治評論家のひとりが非常に興味深い議論をしている。彼はいくつもの事柄についてソ連邦の崩壊と平行に議論を進めている。

米国の大手メディアが喧伝する古臭いネオコン系のまやかし商品に比べると、このロシアのトークショーは非常に新鮮である。 
  字幕を下記に転写する: 

カレン・シャフナザーロフはディレクターで、ロシア人民芸術家: 

あなたが言っていることはこの会談とどのような関係があるのか?

明らかに何の関係もない。彼は主題を遠回しに喋って、自分の思惑を推し進めようとしている。


私は完璧な記者会見だったと思う。劇的な性格は完璧そのものだ。トランプ氏は何故サーバコンピュータについて喋っているのかをお分かりだろうか?彼は自分の命のために弁護しているんだ。

もちろん。

自分の地位ではなくて、自分の命だ!何故かと言うと、彼は米国のシステムとはどのようなものか、そして、米国のシステムは権力に対抗する人物をどのように扱うかを熟知しているからだ。彼はケネディ・シニアやジョン・ケネディ、等のケネディ一家の伝記について完全にわきまえている。リーガンについてさえもだ。彼が自分の命を守ろうとしていることは明白だ。ディレクターとして私が言うことを信じて欲しい。私にはそれがありありと見える。彼にとってあれは生か死の問題だった。実に素晴らしい記者会見だった。

このような記者会見は私の記憶にはない。私とは違って、多分、あなた方は遭遇したことがあるのかも知れない。米国の大統領が彼のライバル(連中は、実際に、プーチンをライバルとして見ている)と一緒に記者会見をするなんて初めてのことである。米国のジャーナリストは自国の大統領がそのライバルと一緒に居ることについて直接批判した。この点はまさにあらゆる規範とももつれあうのだ。米国のジャーナリストがプーチンに対してトランプ大統領の名誉を傷つけるような何らかのネタを持っているのではないかと質問したが、こんな質問は前例がない。まったく前代未聞だ。これは米国社会が大きく分断していることを物語っている。あなた方はあれやこれやを喋り、われわれに関しても喋って、藪の周りを叩いているだけだ。これはあの件とどんな関係があるんだい?

前にも言った通り、これは実に奇妙な現象だ。トランプはまるでペレストロイカをやろうとしているみたいだ。見てご覧。今、1989年とまったく同一のシナリオが演じられている!ゴルバチョフはソビエト圏のエリートたち、つまり、東独、チェコスロバキア、ポーランド、等の指導者から反撃を受けたが、トランプはあれとまったく同じ状況に今直面している。もちろん、政治的文化そのものは異なるけれども、状況はまったく同じだ。



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Photo-1: カレン・シャフナザーロフ:「われわれは地球上のあらゆる国家へ兵士を送り出し、戦いをすることなんてもう望んではいない。」

連中は彼をどうしても受け入れなかった。諜報機関についての言動も同様だ。シナリオはまったく同じだ。何故だろうか?トランプは世界を凌駕する帝国としての米国を潰そうとしており、連中はそれに感付いているからだ。連中は完全に理解している。米帝国によって育て上げられた欧州の権力者らもこのことを理解している。帝国が崩壊するならば、彼ら自身も立ち退かなければならないと理解している。そう、彼らは立ち退き始めるだろう。
もっとも重要な点は、トランプが、意識的、あるいは、無意識的に、恐らくは、無意識的にであろが、実際にはいいことを実行していることだ。事実、彼は「もう、たくさんだ!これ以上は望まない。政治的権力に対する戦争が始まった。われわれは地球上のあらゆる国家へ兵士を送り出し、戦いをすることなんてもう望んではいない。戦争はもうたくさんだ!」と言っている米有権者の半分を代表しているのだ。
しかし、問題は彼が非常に強力なシステムに対して挑戦をしている点だ。このシステムはソビエト時代のエリート集団よりも遥かに手強い。ソビエト帝国は軍と官僚で構成された帝国であったが、エリートたちは皆が礼儀をわきまえていた。このエリート集団はゴルバチョフを受け入れなかったけれども、彼を打ち負かすことはできなかった。今回のケースでは、われわれは軍と金融界のエリートを相手にする。これらのエリートと闘い、トランプは生産資本を呼び込もうとしている。これがエリートたちを破滅に追いやるトランプの手法であるが、彼らは実に強力だ。こうして、トランプはエリートらに対して闘いを挑んだ際に遭遇した数多くの米国の政治家と同じ結末に直面する。彼らは、時には、ジョン・ケネディの場合と同様の結末に見舞われた。
これこそがこの記者会見が実に凄いものであることの理由である。たくさんの劇的な性格を帯びている。この文脈で言えば、トランプが支援を求めてプーチンに向かったことは正解だ。もちろん、彼は米国社会の中のたくさんの人たちから支持を受けている。このグループの人たちにとってプーチンはライバルではない。その文脈では、プーチンの立ち位置は正しい。しかしながら、状況は非常に劇的である。
私は賛成だ。

ところで、緊張緩和を期待する人たちがいる。しかし、緊張緩和はないだろう。それとはまったく正反対で、米ロ関係はさらに悪化するだろう。舵取りをするエリートらは、経済制裁や敵対的な行動を含めて、明らかにロシアをさらに叩こうとするだろう。こうして、われわれは国際政治においては非常に劇的な時代に突入することとなる。

私には理解できないが・・・
要は、私が「ペレストロイカみたいだ」と言う時、その言葉を文字通りには受け止めないで欲しい。歴史においては何事も文字通りには行かない。

セミョーン・バグダサーロフ: 

もしもあなたが・・・
バグダサーロフ氏よ、ちょっと待った。ちょっと待ってくれ。われわれはあなたの素晴らしい技巧についてはよくわきまえているが、私の声の方が強いよ。信用して貰いたい。私は(映画の製作で)何千人もの群衆のシ-ンを取り扱っているんだ。
バグダサーロフ氏よ、中断してくれ。バグダサーロフ氏! 
要するに、このような規模の歴史的な出来事について、例えば、帝国の崩壊あるいは革命について理解すると、これらの出来事は実際には同一のシナリオに従って展開している。私が「ペレストロイカ」を引用する時、私はそれをその文字通りの意味で引用している訳ではない。セルゲイ、あんたはゴルバチョフはペレストロイカがいったい何をもたらすことになるのかについてはまったく考えが及んではいなかったと言うが、それは正解だ。彼は当時のわれわれのソビエト人民に不満を抱いていると表明していた。
何かを変革しなければならないと誰もが理解していた。そこで、彼は変革を導入した。トランプもまったく同じだ。彼の挑戦がいったい何をもたらすかに関して彼は何の考えもない。われわれにもない。しかし、われわれにもそれと分かるように、明らかに、彼の行動はすでに西側を壊し始めている。非常に大きな動きだ。それだけではなく、彼は今の趨勢を継続するだろうと私は推測するし、これは非常に客観性の高いプロセスであると思う。こちらでわれわれに出来ることなんて何もない。

そうだ、このプロセスは、ちょうどソ連邦の崩壊がそうしたように、予想外の事柄をもたらすかも知れない。私は米国がばらばらに崩壊すると言っている訳ではない。しかし、欧州のエリートたちは変化するだろう。何と言っても、彼らは、現在、余りにも「天使」のような存在だ。アンゲラ・メルケルはホーネッカーみたいだ。彼女は米国の優位性の中で育って来た。彼女はそれ抜きにしては生きられないし、他のエリートたちも皆がまったく同じだ。

これは彼らにとっては大惨事だ。彼らはこの種の世界で生きることに慣れている。さて、世界はバラバラになり、深刻な結果を伴うだろう。でも、それに備えて準備する事なんて出来ない。われわれは何も準備してはいなかったとあなたは言うが、あなたの言っていることは正しい。米国人だってソ連邦の崩壊に対して準備をしていた訳ではない。誰も認めようとはしなかったが、彼らはソ連邦の崩壊を幸せに思っているし、われわれだって同様だ。私がペレストロイカのことを喋る時、私はソ連邦にとっては非常に貴重な機会であったと言おうとしている。とにかく、ペレストロイカはわれわれには有益であった。

もちろん、有益だ。

好ましいことだった。しかし、それが世界にどんな影響を与えるかについてはわれわれには分からない。米国人の考え方からすると・・・ 親愛なるバグダサーロフ氏よ、われわれが米国人であると想定しよう。われわれ側の見解を知って、記者会見後に私は次のことを言うとする。「さあさあ、あんたは何をしているんだい?あんたはライバルの眼前で汚れ物の洗濯をしている。何てことだ!」 

国内政治の汚れ物!そんなことはするなよ!

もちろんだ。ところで、あんたは反トランプなんだろう?あんたは彼には大反対だ。あんたにとって彼は反逆者だ。

その通り。彼はどうしてわれわれの諜報機関について悪口を叩くんだろう!

それがポイントだ。それこそが私が言いたいことなんだ。もしもあんたが米国人であるとすれば・・・ 

彼は米国大統領にはならなかっただろう。

いや、そうではなくて、問題はもっと遥かに複雑だ。

個人的には誰も彼に属してはいない。でも、彼は最高司令官だ。

いや、そうではなくて、もっと、もっと複雑だ。それこそが彼が諜報機関の何人かを解任した理由なんだ。

しかしながら、最終的には、トランプはこの客観性のあるプロセスを表明する。今日の世界秩序はソ連邦の崩壊後はまったく意味を成していない。米国は軍事力を誇示し、その強大で、どこへでも配備することが可能な諜報機関を自慢する。でも、これらは不可避的に崩壊する運命にある。トランプはひとつの症状だと言えよう。彼がどのような運命を辿るのかは私にも分からない。彼にとっては最悪の状況となるかも知れない。米国では内戦が始まるかも知れない・・・ 
セルゲイ・スタンケヴィッチ:

彼は2期目に出馬することを実際に宣言した。彼はそのことを隠そうともしない。

その点に関してもっとも重要なことは・・・ 

—88百万人が彼を支持している・・・

申し訳ないが、終わりまで話させてくれ。あの会談の一番凄い点はシリアやウクライナ、あるいは、クリミアのために準備されたものではなく、プーチン氏が米国の有権者に向けて「トランプはわれわれのエージェントではない。信じてくれ。保証するよ」と言ったことだ。これこそがトランプがこの会談で実現したかったことなんだ。なぜならば、あの記者会見はこのことを土台にしていることを如実に示していた。これは実に興味深いし、劇的だ。

私は、個人としては、別の意見だ。まず、トランプの大統領としての業績を評価すると、彼のような大統領は、たとえ誰かがいたとしても、長いこと現れなかった。彼がもたらした結果は凄い。確かに、トランプは術策に特に長けているという訳ではなさそうだが、それでもなお、彼は米国の大統領だ。そして、トランプは選挙選で訴えていた公約に実際に固執している。この点はほとんどの米国の大統領とは異なっている。

この記者会見の際に、彼は就任演説で述べたことを再確認した。つまり、ワシントンのドブ池を掃除するという意味だ。セルゲイは彼の概念は不明瞭だと言うが、明確だ。実際には、それはパックス・アメリカーナだ。それはリーガン政権によって、あるいは、それよりも前から発展して来たものだ。トランプはこの概念を仄めかし、ひとつの理由として自分のモットーを「米国を再び偉大な国家にする」とした。数多くの件で、彼は国内生産に依存する伝統的な手法に従おうとしている。米国人は、事実、彼が言っていることが良く分かる。彼は狭い範囲の学生やリベラル派のメディアに訴えかけるのではなく、米国の有権者に向けて訴えており、とてつもなくアメリカ人的な大統領だ。この文脈において言えば・・・ 

プーチンとトランプはどうしてこうもお互いに理解し合えるのだろうか?それは二人共自分たちの有権者を完全に理解しているからだ。プーチンはロシア連邦の大統領であり、トランプはアメリカ合衆国の大統領だ。二人はどちらも相手側のエージェントではない。彼らは二人共それぞれの国家が発展することを望んでおり、このことが相互コミュニケーションの余地を与えているのだ。

彼らは何らかの理由で中国の指導者に尊敬の念を抱いている。われわれは今新しい世界秩序を構築する第一歩を目撃しているように思う。概念的には、これらの三つの大国は相互に作用しあい、お互いの目を覗き込んで、相手が自分の国家や人類のためにどんなことを行いたいのかを判断しなければならない。それこそがトランプが両国は全世界の核兵器の95パーセントを所有していると特に注釈した理由である。われわれは交渉しなければならないのだ。 



本投稿はまずRussia Insiderにて公表された。
このテキストは誰でも自由に如何なる媒体やフォーマット上であっても再出版、コピー、再配布すること、ならびに、内容を練り直し、変形させ、このテキストを元に商業用に再構築することが可能です。その際、Russia Insiderとのリンクを明記し、原典を表示してください。Russia Insiderに連絡する必要はありません。ただし、画像やビデオは除きます。
Licensed Creative Commons

<引用終了>
 
これで全文の仮訳が終了した。

カレン・シャフナザーロフ映画監督の指摘は非常に鋭く、奥が深い。特に、将来起こりそうな米国の変化をソ連邦の崩壊の過程と対比させた説明は秀逸だと思う。人によって、その受け止め方は千差万別であろうが、彼の説明は説得力を持っていることがこのテキストを読んでいる最中にひしひしと感じた。映画監督であり、脚本家でもあることから、彼は個々の要素を全体像の中で何処へ位置づけし、どのような役割を持たせ、全体からどんなメッセージを読み取って貰うかといった構成の仕方が非常に巧みだ。少なくとも私にはそう思えた。

多くの識者が述べているように、このトランプ・プーチン会談は歴史的な出来事であることには間違いない。このトークショウに出演した人たちの中でもっとも中心的な人物、カレン・シャフナザーロフはこの会談に紛れもない歴史的胎動を感じ取っている。彼の思いはソ連邦の崩壊と比較するところまで行った。そうすることによって、われわれ一般読者にこの歴史的な動きの意味を明瞭に示してくれた。

また、米国の政治が時にはとんでもないことを仕出かすことを十分にわきまえているカレン・シャフナザーロフはトランプが暗殺される可能性さえをも懸念している。

最期に個人的な感慨を敷衍して付け加えるとすれば、特に、日本の大手メディアにしか接してはいない方々にとってはこの記事は新鮮な印象をもたらすのではないか・・・と勝手ながら想像している。

 

参照:
1'It’s the Start of a Completely Different World Order’ - Top Russian Talk Show Discusses Trump-Putin Summit (Video): By RUSSIA INSIDER, Jul/24/2018