2017年7月17日月曜日

トランプとプーチンの協力関係が本物であるかどうかはシリアでの次の動き次第である



副題: マチス国防長官とポンぺオCIA長官が果たしてシリアへ送り込んだ部下を掌握できるのかどうかを見届ける必要がある



「米政府は伏魔殿だ」と前の投稿で書いた。それは、米軍部を掌握することが如何に難しいかを描写するものであった。

具体的にそのことを考えてみよう。

G20 サミットの副行事として開催されたトランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領との初会談は、厳しい批評家の言葉を借りて言えば、そこそこの成果を挙げて終わった。

しかし、好意的な批評家(たとえば、ニューヨーク大学の教授を務めるスティ―ブン・コーエン)に言わせると、あのトランプ・プーチン会談は歴史的な意味を持つであろうと述べている。

米ロ首脳が膝を突き合わせて話をしたこと自体が大事なんだという見方も多い。それは両大統領の間で個人的な関係を築き上げることができたからであり、必要に応じて話し合いを継続するための基本条件で整ったと言えるからだ。

何れにしても、この会談が全世界にとってどういう意味を持つのかは時間が経ってみないと判断が難しい。

たとえば、シリアの南西部では米ロ間で停戦が合意された。この停戦は現時点で8日目となった。小さな停戦違反は起こっているが、総じて、この停戦合意は維持されているみたいだ。次の政治的課題は、当然ながら、シリア南西部の3州だけが対象となっているこの地域的停戦を如何にしてシリア全土に発展させて行くかであろう。つまり、米ロ両国がシリア全域の停戦に関して同意できるかどうかだ。

ここに、興味深い記事がある [1]。その表題は「トランプとプーチンの協力関係が本物であるかどうかはシリアでの次の動き次第である」としている。そして、副題では「マチス国防長官とポンぺオCIA長官が果たしてシリアへ送り込んだ部下を掌握できるのかどうかを見届ける必要がある」と総括している。

この副題は極めて単刀直入な問い掛けである。これは今後常に注目して行かなければならない優先テーマとなろう。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたい。


<引用開始>

マチス国防長官とポンぺオCIA長官が果たしてシリアへ送り込んだ部下を掌握できるのかどうかを見届ける必要がある。」 



Photo-1: シリア人は米メディアによって大きな苦難を与えられているが、彼らの多くはキリスト教徒だ。ネオコンは倫理的侵害を犯している。

近い将来、米ロ関係に見るべき改善が実現されるかどうかは、今や、具体的な行為に依存す
る。つまり、ネオコン派やリベラル派の介入主義者らが標榜する「政権交代」の夢を温存させるために、前回のシリアにおける停戦合意を葬り去った米軍部が、またもや、同じことを仕出かすかどうかだ。 

あるいは、トランプ大統領が米軍と諜報の官僚組織とが大統領に対して不服従を貫き通すことは許さず、停戦政策の下で彼らを一線に並べることにうまく成功するのかどうか?実は、これはオバマ大統領が実現することには失敗した政治テーマなのだ。

これはシリアの市民にとっては生死を分ける問題である。また、シリアを分断し、すでに6年にもなる代理戦争による惨禍を避けようとして、洪水のように流入してきた難民によって不安定化してしまったヨーロッパに対してもさらなる影響をもたらすであろう。

しかし、米国の大手メディアが土曜日朝その1頁目に示した大見出しにはこの重要な最優先テーマをほのめかすものなんて何も感じ取れなかった。大手メディアは次のような妄想をすでに長い期間にわたって抱き続けきた。それはロシアのウラジミール・プーチン大統領が2016年の米大統領選で「介入」の罪を犯したことを認め、悔い改めることを約束するのではないかという実にはかない思いである。

さまざまな大見出しが踊っている。「トランプとプーチン、選挙介入について語る」(ワシントンポスト)、あるいは、「トランプが選挙中の介入に関してプーチンに質す」(ニューヨークタイムズ)、等。ロシアによる介入をプーチンが否定した折には、CNNMSNBCの解説者らはわざとらしい咳払いをした。 



Photo-2: 大手新聞やケーブルニュースは日曜日に実施されるシリア南部の停戦を明らかに第2級のニュースとして報じた。 

ドナルド・トランプに関してプーチンがどのように評価するのかの鍵は米大統領がお互いに合意した停戦を維持するのに十分なだけの断固とした態度を保てるかどうかにある。プーチンが十分に理解しているように、トランプは過去において喜々として同様な停戦を台無しにしたことのある張本人、「ディープステ―ツ」を相手にしなければならない。換言すれば、本停戦について寿命予測表を見ると、現実は決して甘くはない。停戦の合意を長生きさせるには奇跡に近いものが必要となろう。

レックス・ティラーソン国務長官はペンタゴンやCIAの強硬派を屈服させなければならない。ティラーソンはジェームズ「マッド・ドッグ」マチス国防長官やマイク・ポンペオCIA長官らが、恐らく、シリアに派遣されている米軍や工作員を通じて米国が支援する「穏健派反政府勢力」を抑制することによって協力してくれることを期待している。

しかし、果たしてマチスとポンペオとが関係部局によってシリアに配備されている軍部を本当に制御することができるのかどうかをわれわれは見極めなければならない。最近の歴史が何らかの指標になるとすれば、有志連合は「間違って」シリア政府軍を空爆したり、喧伝されている化学兵器攻撃を行ったり、ソーシャル・メディアや大手メディアはバシャール・アル・アサド大統領を非難するためにその他のまったく意味を成さない「戦争犯罪」を素早く用いたりする。これ等の行動を考えてみないなんて実に馬鹿げていると言えよう。 


苦い経験: 

ジョン・ケリー米国務長官とセルゲイ・ラブロフ外相は11カ月にわたる苦労の末に合意に達し、オバマとプーチンの両大統領の個人的な承認を勝ち取り、昨年の秋、シリアにおけるの限定的な停戦が実現した。しかし、たった5日間続いただけで終わった(912日から17日まで)。世間ではよく知られており、固定地点に設営されていたシリア政府軍の基地を米主導の有志連合が空爆し、64人から84人のシリア軍兵士を殺害し [訳注: 情報源によって被害の数値は異なる]100人前後の負傷者をもたらしたのである。

[訳注: 昨年918日の日経の記事「米軍主導の有志連合、シリア軍を誤爆か 83人死亡」を読むと、・・・米国防総省のクック報道官は17日の声明で「本日のシリアでの有志連合の空爆について情報収集を続けている」としたうえで「もしシリア軍を誤爆していたなら遺憾だ」と表明した。クック氏によると、当日の空爆計画はロシア側に事前に伝えたが、その時点で懸念は示されなかったという。今後もIS掃討作戦は続けるとしていると伝えている。
当日の空爆計画はロシア側に事前に伝えたが、その時点で懸念は示されなかった」という文言は詳しい説明を要する。今年16日の記事 [2] によると、カタールにあるハリソン将軍が指揮する米軍司令部はロシア側に対してシリア国内の空爆目標地点に関して偽りの座標を流していた。つまり、その日の空爆目標はふたつあって、デリゾール空港から南へ9キロの地点にあると伝えたのである。しかし、実際にはそれぞれの攻撃目標は空港から3キロと6キロの地点にあった。正確な情報をロシア側に流していたならば、ロシア側は速やかにシリア政府軍基地が空爆されると理解したに違いないのだ。 

また、「世間ではよく知られており、固定地点に設営されていた・・・」という文言は非常に重要だ。このシリア軍基地は2年も前から同一地点に設営されており、あちらこちらへと頻繁に移動する仮設の基地とはまったくわけが違う。
これらの要素を総合してみると、有志連合による空爆は「誤爆」ではなく、故意に行われたものであるという状況が濃厚になってくる。]

不服従と見られてもおかしくはないような公のコメントで、917日の空爆の23日前、ペンタゴンの高官はケリー・ラブロフの合意の主要点、つまり、ロシアとの情報の共有(オバマとプーチンによって承認された重要合意事項)に関して普通には見られないような公の場で疑義を挟んだのである。

ペンタゴンの抵抗、ならびに、シリア政府軍に対して「間違って」行われた空爆に関しては、926日、ロシアのテレビにおいてラブロフ外相が次のような率直な批判を表明した: 

「我が友、ジョン・ケリーは目下米軍官僚機構からの厳しい批判に曝されている。連中は米軍の最高司令官である米大統領はロシアと折衝を行う彼を支援することを保証すると常に言っていたのだが、実際には、米軍部は最高司令官の言うことを聞こうとはしていないことが明らかだ。」 

具体的には、ラブロフ外相はロシアと情報を共有することには反対すると米下院で述べた統合参謀本部議長のジョセフ・ダンフォード将軍を批判した。ラブロフが言うには、「この合意はウラジミール・プーチン・ロシア大統領とバラック・オバマ米大統領の直接命令に基づいて締結されたものであって、両大統領が情報を共有すると明記しているにも関わらずだ。」 米軍の官僚機構内における抵抗を指摘して、ラブロフは「このようなパートナーと一緒に仕事をするのは実に困難だ」と付け加えている。 

[訳注: 戦場における動きとは別に、米国政府内の状況も非常に重要である。今年の113日の記事 [3] によると次のように報じられている。停戦の合意は米国防省内では強い反対が起こるであろうことが知られていた。特に、前国防長官のアッシュトン・カーターは急先鋒だ。同長官はロシアに対して容赦のない好戦的態度をとっていた。カーターはロシアとの協調は何であっても反対であった。ロシアとの情報の共有は停戦発効の7日後からスタートすることになっていた。そして、有志連合によるシリア軍基地の誤爆は停戦発効の5日後に起こったのである。つまり、情報の共有をスタートさせる予定日の2日前こことであった。] 

プーチンはヴァルダイ国際討論クラブでの昨年1027日の演説でこの不服従に言及した。彼は公に次のような遺憾の言葉を表明した: 

「米国の大統領と個人的に交わした合意事項は何の結果ももたらさなかった。・・・ワシントンの連中はこれらの合意事項が実施されることを何としてでも妨げようとしている。」 

シリアに関して、プーチンは「このように長期にわたる交渉やとてつもなく多くの努力、ならびに、難しい妥協をしたにもかかわらず、テロに対する共同戦線の意思には完全に欠けている」と非難した。

ラブロフが率いるロシア外務省の女性広報担当官はケリーのドン・キホーテ的な努力に同情の念を示し、彼の尽力には「A」の最高評価点を与えている。これは当時の国防長官、アッシュトン・カーターが米軍機を送り込み、ほぼ1年も掛けてようやく到達した停戦の合意を早々と葬り去った後のことだった。

ケリーとしては「残念なことだ」と述べている。「世界で唯一の必要不可欠な」国家の特命使節の代表に相応しい自信を反映した言葉であるとは言えようが、結果は不運なものであった。彼は現場の軍部を「一線に」並ばせることは出来なかったのだ。

停戦をめちゃめちゃにしてしまって、ケリー前国務長官は2016929日に公の場でこう愚痴をこぼした。「シリアは私が公職に就いていた間に目にした中ではもっとも複雑だ。同時に六つほどの戦争が行われている。たとえば、クルド対クルド、クルド対トルコ、サウジアラビア、イラン、スンニ、シーアとの戦い、誰もがISILと戦い、住民対アサド、ヌスラ[シリアにおけるアルカエダの一派]。これは宗派間の争いであり、内戦でもあり、戦略的な戦争でもあり、また、代理戦争でもある。戦力を一線に並べるのは至難の技だ。」 


ディープステーツの卓越振りを認める: 

あれは2016年の12月になってからだった。ボストン・グローブのマット・ヴァイザーとのインタビューで、ケリ―はロシア側と一緒に取り組んだ自分の努力が当時の国防長官アシュトン・カーターによって邪魔され、彼自身が認めているように、一線には並ばせることができなかった現地の武装勢力によっても邪魔されたことを認めたのである。 

「不幸な事には、われわれ自身の政府組織には分裂があって、それがこの停戦の実行を非常に難しいものにした」と、ケリーは述べている。「しかし、やろうと思えばうまく行ったのかも知れない。事実、われわれはロシアとの間で協力的な取り組みに関して合意に達していたのだから。」
「政府内には停戦を実行することに酷く反対する者がいた。そのことが残念でならない。私はあれは間違いだったと思う。停戦を実行することが出来たならば、まったく違う状況をもたらしていただろうと私は思う。」 

ボストン・グローブのヴァイザーはケリーが不満そうであったと描写している。確かに、あの件は34年間に及ぶ公職から身を引く間際にあったケリーにとってはきついものであったに違いない。
金曜日のトランプ大統領との話し合いの後は、クレムリンはティラーソン国務長官に焦点を当てることになろう。果たして彼がケリーよりも幸運に恵まれ、アッシュトン・カーターの後釜に座ったジェームズ「マッドドッグ」マチスや、つい最近、言わば人質の身となったポンペオ長官らを大統領の政策にならって一線に並ばせることができるかどうかを観察するためだ。

米ロ間で合意された新しい停戦が日曜日には実施されることからも、オバマの時とは違って、トランプが今度こそはシリアでの停戦を維持させることができるかどうか、あるいは、オバマと同様に、トランプはこの停戦がワシントンのディープ・ステ―ツによる妨害工作を受けることを予防することができないのかどうかをプーチンは是非とも見届けたいことであろう。

その証はきっとプディングの中に隠されているのではないか。明らかに、それは今後数週間に何が起こるのかによって決まる。この時点では、プーチンは停戦が持ちこたえるという自信を信じ切るしかないだろう。

著者のプロフィール: レイ・マクガバンはワシントンの都心にある世界統一救世主教会の出版部門「Tell the Word」にて働いている。CIAで解析を専門とする仕事を27年間続け、ソ連外交を担当する部門を率いていた。ロナルド・リーガン政権の第1期には大統領に対する早朝の状況報告を担当。今は、彼はVeteran Intelligence Professionals for Sanity (VIPS)と呼ばれる元諜報専門家の集団を運営するグループで活動している。

原典: Consortium News

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

米軍の最高司令官である米大統領に対するシリア派遣米軍の不服従は、誰が大統領になろうとも、米政府の背後から外交政策を操っているディープステ―ツや軍産・ウールストリート複合体の意思に沿うものであるに違いない。これ以外にどのような説明があり得るだろうか?

エリートの軍人たちにとっては、多くの場合、それが自分の退職後の経済的利益を間違いなく保証する近道となるからだ。軍産・ウールストリート複合体は世界に対する米国の覇権を維持し、今や、国際政治の新たな極として台頭して来たロシアや中国を弱体化することが最大の目標である。

要するに、米国やその同盟国の軍の指導者の主な仕事は新冷戦を維持することだ。このように単純化してみると、NATOのさまざまな動きを容易に説明することが可能となる。

大手メディアは一般大衆が真実を学ぶこともなく、彼らが流す情報だけに頼って外的世界を眺め、彼らが喧伝するシナリオには異論を唱えることもなく、彼らに従順に服従することが一般市民にとっては最適な選択であるかのような状況を作りだす。さまざまなフェークニュースが動員され、大多数の一般大衆には真実の姿がどこにあるのか、あったとしてもそれが真の方向を示しているのかどうかを正しく知る術はない。言うまでもなく、これは洗脳である。

前回の投稿に続いて、この投稿でも米ロ間の新冷戦について書くことになったが、このテーマはそう簡単には終わりそうもないような気がする。何故かと言うと、新冷戦を作り出したのは米国であり、新冷戦という状況を必要としているのも米国である。この新冷戦が終わるとすれば、それは米国自身が「こんな意味がないことはもう止めよう」と決心した時でしかないからだ。




参照:

1Next Moves in Syria Will Show Whether Trump-Putin Cooperation is Real: By Ray McGovern, RUSSIA INSIDER, Jul/09/2017

2Inquiry Points Toward a Pentagon Plot to Subvert Obama’s Syria Policy: By Gareth Porter, “Information Clearing House” – “Truth Dig”, Jan/06/2017

3Syria and the US: More Truths Emerge: By James ONeill, New Eastern Outlook, Jan/13/2017