2020年5月22日金曜日

武漢のコロナウィルスに対するワクチン開発で遭遇するであろう主な問題点 - ロシアの専門家の意見

「感染症流行対策イノベーション連合」(CEPI)によると、202048日現在、世界中で115のワクチン開発プロジェクトが進行中である。それぞれのプロジェクトは違う開発段階にある。それらの内で78のプロジェクトが今活動中で、残りの37のプロジェクトは未確認だそうだ(公知の情報や知的所有権に関する情報からは確認ができなかった)。この調査によると、伝統的な手法や斬新な手法も含めて、非常に幅の広い取り組みが行われている。(出典:CEPI publishes analysis of COVID-19 vaccine development landscape: By CEPI, Apr/09/2020

そうしたワクチン開発が進行する中で非常に興味深い意見が出ている。たとえば、

新型コロナウィルスは世界中の人々がワクチンの恩恵を享受する前に「消滅してしまう」かも知れないと元WHOで指導的な立場にあった癌の専門家で、著名な研究者でもある人物が述べている。「このウィルスはワクチンが開発される前に消えてしまう可能性がある」と、バッキンガム大学医学部長を務めるカロル・シコラがツイッターに書いている。われわれは今どこであってもほとんど同様なパターンを目にしている。推定以上に多くの者が免疫を獲得しているのではないかと思う。ウィルスが広がるのを遅くさせる必要があるが、ウィルス自身が消えてしまう可能性もある。この意見は大きな反響を呼び、後に、シコラはこれは彼自身の個人的な意見であって、現行の「未知の状況」において起こるかも知れない「あり得そうなシナリオ」を仮定したまでのことだと付け加えた。この学者はさらに「何が確実に起こるのか」は誰にも分からないと述べ、一般大衆は、当面、社会的距離を維持するよう推奨した。(出典:Coronavirus to burn out ‘naturally’ BEFORE vaccine? Former top WHO oncologist Karol Sikora says there’s ‘REAL CHANCE’ of thatBy RT, May/17/2020

ワクチン開発の話へ戻ろう。

ここに「武漢のコロナウィルスに対するワクチン開発で遭遇するであろう主な問題点 – ロシアの専門家の意見」と題された記事がある。(原題:Russian Virologist Details Main Obstacle in Creation of Vaccine Against Wuhan Coronavirus: By RT, Mar/12/2020)果たしてどのような問題が横たわっているのであろうか?

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。



Photo-1: © REUTERS / STRINGER

武漢コロナウィルスの感染者総数は121,564人となった(訳注:この数値は2カ月以上も前のものだ。2020529日現在、感染者数は5,003,155人、死者数は325,218人)。コロナウィルスの感染が拡大することを防ぐためにより多くの国が旅行規制やビザの発給を規制することを再考する中、WHOは水曜日(311日)にパンデミックを宣言した。

「セチェノフ・モスクワ国立第一医科大学にて寄生虫学・熱帯病・病原媒介生物による疾患に関するマツィノフスキー研究所」の理事を務めるアレクサンダー・ルカシェフは武漢ウィルスと闘うためのワクチンをタイミング良く開発する際に遭遇する問題点に関して自分の見方を表明した。

スプートニク:コロナウィルスは外界の空間で生き延びる可能性はあるのか?もしも可能性があるとすれば、それを変え得るのは何か? 

アレクサンダー・ルカシェフ:コロナウィルスは表面上で暫くの間は保存が可能だ。少なくとも、24時間程度は。ある特定の条件下では23日。それ以上は不可能だ。

技術的に言えば、「生き延びる」ということではなく、ウィルスは人の外部では複製を繰り返すことが出来ないことから、単に「保存される」という意味に過ぎない。

スプートニク:中国は厳しい対策を講じて大流行が押し寄せて来るのを食い止めた。あの大流行を「食い止める」にはいったい何が重要であったと考えるか?

アレクサンダー・ルカシェフ:もちろん、中国は大流行を食い止めることに成功した。しかし、他の国があのような厳しい策を実行するだろうとは私は思わない。

大流行を食い止めるのに必要な策は人々が集合することを禁じ、感染者を隔離し、潜在的な感染経路を遮断することだ。

しかし、社会生活や経済に大きな影響を与えずにそうすることは不可能だ。これらの策のすべてを実行し、大流行をコントロール下に置くことができる国は非常に少ないと私は思う。

スプートニク:人から人へ感染するコロナウィルスは1960年代に初めて確認された。最初の大流行は2012年に起こり、主として中東地域であった。そして、ヨーロッパへもやって来た。あれから何年にもなるが、ワクチンの開発における主な課題は何か?

アレクサンダー・ルカシェフ:最初の大流行は実際には2002年に起こり、あれはSARSコロナウィルスだった。

あれ以降、ワクチンの開発に取り組んできた。主要な問題点は抗体依存性の感染の強化が起こる現象だ。これは不適切な、あるいは、量が足りない抗体は感染を防ぐ代わりに感染を強化してしまう現象のことである。

この現象は動物モデルで再現することが非常に難しい。他のウィルスの場合はワクチンを作成し、抗体反応を起こすことは十分に可能であり、ワクチンの効力や安全性に関して動物モデルを使うことは容易にできる。

コロナウィルスの場合、動物モデルではこの抗体依存性の感染の強化は正確には再現できず、人ではそれがいつでも起こる危険性がある。したがって、コロナウィルスのワクチンを採用すつ際には警戒をするべきだ。

それらの安全性について試験を行う前に、われわれは新型コロナウィルス感染の動物モデルを確立する必要があり、それができて初めてこれらのモデルが適切に抗体反応や潜在的な抗体依存性感染強化とを再現することができるようになる。さらに、われわれはこれらの動物試験で成功したワクチンに関して臨床試験を開始することができる。

ワクチンを製造する際のもうひとつの問題点はコロナウィルスは主として粘膜細胞に現れるのだが、これらの部位は血漿中にある抗体が容易に到達できる場所ではない。

コロナウィルスの感染を効率よくコントロール下に置くには具体的な粘膜での抗体反応が必要となり、幾つかの試作品段階にあるワクチンではこれは確認されてはいないかも知れない。


Photo-2: © REUTERS / JASON REDMOND
コロナウィルス感染の大流行の中、米国の首都は緊急事態を発令

第一に、提案されているワクチンの多くが順調に開発されるだろうとは言えないし、第二にはワクチンが安全であると確信を持てるわけでもない。

スプートニク:イスラエルの科学者らは90日以内にワクチンを製造することができると言う。そういうシナリオはいったい現実的なのだろうか?ワクチンの効能は次回に起こるかも知れない大流行、あるいは、ウィルスの突然変異にも現実的に対抗できるのだろうか?

アレクサンダー・ルカシェフ:ワクチンの試作品を作ること自体は非常に易しく、3カ月程度で作ることは可能だ。あるいは、それよりも短期間であってさえも可能だ。

しかしながら、当面、そういったワクチンの効能や安全性を証明するモデルさえもが存在してはいない。

数多くの研究所や企業が今ワクチンの試作品を作っているが、これらのワクチンを年内にでも人に投与することが出来るようになるとは私は思わない。

注:この記事で表明されている見解や意見は必ずしもスプートニクの見解や意見を反映するものではありません。


これで全文の仮訳が終了した。

この専門家の意見を聴く限りでは、1年や1年半でワクチンを開発するという発言は夢物語のように思えてくる。

今ワクチン開発でしのぎを削っている企業や研究所は安全性の追求よりも競争相手に先駆けて商業化することにまい進する。残念ながら、99パーセント確信を持ってそう言える。もしワクチンの製造を許可する監督官庁が何らかの理由で政府や新市場の獲得を目指す製薬企業あるいは広告収入が非常に気になるメディアからのプレッシャーに耐えることができないとすれば、結局のところ一般消費者が大きな負担を抱え込むことになるだろう。最悪の場合、ワクチンの開発には成功したけれども、実際に使ってみると副作用のせいで数多くの死者が出るといった本末転倒の事態が出現する。つまり、どこかで聞いたことがある場面がまたもや繰り返されることになるのだ。

SARSウィルスによるパンデミックは2002年に起こった。その後、ワクチンの開発研究が行われてきたが、20年近くになるにもかかわらず未だ成功してはいない。この現実を考慮に入れると、SARSコロナウィルスと兄弟分である新型コロナウィルスに有効なワクチンが今後1年とか1年半で実現すると期待することには大きな無理があると言わざるを得ない。ロシア人の専門家が表明した見解の意味がよく分かるような気がする。

新型コロナウィルスは遅かれ早かれ自然に消滅してしまうかも知れないとの見方については、冒頭に引用したバッキンガム大学のカロル・シコラとは別の識者からも聞いたことがある。兄弟分のSARSMARSウィルスがそうであったように新型コロナウィルスは人間以外の動物宿主の下へ戻ってしまうだろうと言っていた。

ウィルス自身が人現社会から自然消滅する時期とワクチン接種が開始される時期との間で競争が始まりそうだ。安全面では100パーセントの信頼性を確保することができそうもない商業主義の世界にいるわれわれとしては、ワクチン接種が開始される前にウィルスが「サイジイエン」と言って人間社会に別れを告げ、元の宿主動物の下へ戻って行って欲しいものである。しかし、この願いがはかない夢で終わるのかどうかは今の私には分からない。







2020年5月17日日曜日

新型コロナウィルスには祖父母がいて、曾祖父もいる。彼らはどこにいるのか?

各種の用語の解説を行っているウィキペディアによると、「新型コロナウィルス」は下記のような説明で始まっている。

2019新型コロナウイルス(2019-nCoV, SARS-CoV-2)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19[2]の原因となるSARS関連コロナウイルス(SARSr-CoV)に属するコロナウイルスである[3]。日本の国家機関や主要な報道機関は「新型コロナウイルス」と呼んでおり[4][5]、「新型コロナ」と省略される場合もある[5][6][7][8]2019年に中国湖北省武漢市付近で発生が初めて確認され[9]、その後、COVID-19の世界的流行(パンデミック)を引き起こしている[10][11][12]

さらに、「SARS関連コロナウイルス」は次のように始まる。

SARS関連コロナウイルス(英: Severe acute respiratory syndrome-related coronavirus, SARSr-CoV)は、ヒトやコウモリをはじめとする哺乳類に感染するコロナウイルスの1[1]ACE2受容体を利用して宿主細胞に侵入する。エンベロープを持つ一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。ベータコロナウイルス属(第2群コロナウイルス)に含まれる。以前は単にSARSコロナウイルスと呼ばれていたが、非常に近縁なウイルスが複数発見されたため、2009年にそれらを含む形に拡張された[2]。 

これらのウィキペデイアの説明文はそのすべてをここに引用したわけではなく、ほんの冒頭の部分でしかないけれども、専門用語の解説であるが故にそう容易くはないのが難点だ。われわれ門外漢にとっては必ずしも理解し易い解説ではない。さらに深く知ろうと思えば、さまざまな用語を際限なく検索する必要が出て来る。

ところで、ここに、「新型コロナウィルスには祖父母がいて、曾祖父もいる。彼らはどこにいるのか?」と題された記事がある(原題:Covid-19 has a grandma, grandpa and great grandpa. Where are they?: By M. K. BHADRAKUMAR, Indian Punchline, Apr/21/2020)。要するに、これは現在世界経済を前代未聞の危機状態に陥れている新型コロナウィルスの祖先に関する話だ。平易な言葉で解説しようとしている点がいい。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたいと思う。



Photo-1: 中国の武漢では新型コロナウィルス対策で76日間の都市閉鎖が続いたが、
202047日についに解除となった。

新型コロナウィルスの起源がどこにあったのかを探そうとすると、大規模な物語に発展していく。ドナルド・トランプ大統領が放った辛辣な当てこすり、つまり、「中国ウィルス」とか「武漢ウィルス」といった政治的にも戦略的にも危険極まる言い方のせいで、北京政府は今まで以上に真剣にその真相を探る構えを見せている。

これはいいことだと思う。なぜならば、中国政府は急所を突かれ、今エンジンを全開にして対処しようとしていることからも、本件の全貌は近いうちに一般に公開されることになるのではないか。

異例な動きではあるが、先週(412日~18日)、ロシアに駐在する張漢暉(Zhang Hanhui)中国大使が新型コロナウィルスの全容が紐解かれつつあるが、世界中が驚くような事柄でいっぱいだと述べた。 

張大使が北京政府の了解もなしに独断でこのようなことを喋ったとは考えられない。特別な意味があるかのように、中国大使はロシア国営通信社の「タス」を選んで、この驚くべき公開を行ったのである。

同大使によると、

中国のトップ・ファイブの科学研究機関が93個の新型コロナウィルスの遺伝子サンプルを収集した。これらのデータは四つの大陸にまたがる12ヵ国から提供された情報に基づいて構成されている世界的なデータベースにおいて出版された。

この研究によると、新型コロナウィルス(Covid-19)のもっとも初期の祖先は「mv1」として知られており、このウィルスは後に進化し、二種類のハプロタイプ、つまり、「H13」と「H38」 になった。(「ハプロタイプ」とはある個体が両親の一方から受け継いだ一連の遺伝子を指す。)

そして、H13H38はさらに進化して、ニ世代目のハプロタイプである「H3」を生み出し、これはさらに「H1」、つまり、Covid-19へと進化した。

つまり、もっと簡単に言えば、Covid-19の父親はH3であって、祖父と祖母はH13H38、さらに曾祖父は「mv1」である。

さて、武漢の海鮮卸売市場で発見されたウィルス(Covid-19)はH1の種類である。この点はOKだ。武漢では「父親」であるH3だけが発見されたが、海鮮卸売市場では発見されなかった。

極めて重要なことには、Covid-19の「祖父母」、つまり、H13H38は武漢では発見されなかったのだ。

「これはH1サンプルが感染者によって海鮮卸売市場に運び込まれ、そこから感染が広がって行ったということを示している。遺伝子配列は決して嘘をつかない。」(張大使談)

あえて言うならば、新型コロナウィルスの流行の根源は今後さらに追跡しなければならないが、それを辿ると何れかの方向に向かうことになろう。今のところは、新型コロナウィルスは最初に武漢で発見されただけであるが、その起源についてはこれから特定しなければならない。

ところで、明確な兆候が存在する。張大使は次のように詳しく話した:

日本人夫婦がハワイ(米軍基地がある)で新型コロナウィルスに感染した。128日から23日までの滞在中のことであった。二人は中国を訪れたことはなく、中国人との接触もまったくなかった。注目すべきは、夫の方が23日には症状を示した。

イタリア北部のロンバルディア地方における新型コロナウィルスの最初の症例は11日に現れたとメディアが報告している。

イタリアの医療分野では著名な専門家であるジュゼッペ・レムッツィによると、イタリアでは新型コロナウィルスの感染は中国で感染が始まる前にすでに始まっていたという。

米国の著名なウィルス学者であるロバート・レッドフィールドは、現在、疾病予防管理センター(CDC - これは米国の最高レベルの公衆衛生研究所であり、連邦機関のひとつである)の長官を務め、米国有害物質・疾病登録局(ジョージア州アトランタに本拠を置く連邦レベルの公衆衛生機関)を管理しているが、米国のインフルエンザによる死者の多くは新型コロナウィルスによって死亡したのかも知れないけれども、米国政府は当時それを示す検査は実施しなかったと述べている。(今冬、米国ではインフルエンザとその合併症のせいで8万人が死亡したと推定されている。)

衝撃的な話ではあるが、イタリアは米国のいわゆるインフルエンザの死者に関して検視を行って新型コロナウィルスの最初の症例を追跡するよう申し入れたが、米国政府はそれをきっぱりと断った。

しかしながら、現代の科学技術は新型コロナウィルスを追跡するのに非常に便利にできており、「遅かれ早かれ、今まで知られてはいなかったことのすべてが明らかにされる日がやって来ることだろう」と張大使は述べている。

興味深いことには、張大使がタス通信に現れてインタビューに応じてからというもの、以前から中国の陰謀や不誠実な意図について主張していたトランプ大統領は自分の主張を再調整したのである。トランプは当時中国に対して報復すると言って、脅しをかけていたが、それ以降彼は自分の姿勢を改め、土曜日(418日)にはホワイトハウスの記者会見で次のように述べた:

「ところで、あなたは中国について怒っているのかとの問いかけを私は受けた。その答えはまさにその通りだと言うしかないが、すべては状況次第だ。あれはすべてが間違いから始まったものであって、コントロールができなくなってしまったとか、故意に行ったものだとか。ね、そうだろう?これらのふたつの状況の間には実に大きな違いがある。どちらにしても、彼らはわれわれが現地を訪問することを受け入れるべきだ。諸君も知っているように、われわれは当初現地入りすることを申し入れたが、彼らはそれを断った。彼らは恥じ入っていたに違いない。あれは非常に悪い状況であることが彼らにはよく分かっていたのだと思うし、彼らはすっかり恥じ入っていたのだと思う。」 

トランプは中国側に責任があることはもはや主張してはいない。しかしながら、未解決でもなく、解決済みでもないのだ。 多分、この案件は今や交渉が可能だ。トランプは張大使がインタビューに応じた日の二日後に上記のように喋った。

明らかに、中国大使は新型コロナウィルスの足跡を追跡することは可能であって、科学的に追跡することができることを暗に示したのである。 新型コロナウィルスの祖父母や曾祖父が実際に米国に籍を持っていることが明らかになれば、トランプは深刻な問題を抱え込むことになるだろう。 


これで全文の仮訳が終了した。

実に興味深い内容である。米中間の現実の外交の一コマがわれわれ素人にも分かりやすい形で報じられたのである。しかも、力で押してくる米国の圧力を中国側は科学的な情報によって手際よく押し返したのである。

この記事の最後の文章は秀逸だ。「新型コロナウィルスの祖父母や曾祖父が実際に米国に籍を持っていることが明らかになれば、トランプは深刻な問題を抱え込むことになるだろう」と言っている。

この張中国大使の発言によって中国に関するトランプの毒舌が姿を消したのかどうかは私には知る術もないが、引用記事の著者は「トランプは中国側に責任があることはもはや主張してはいない」と述べている。トランプ大統領が中国ウィルスとか武漢ウィルスといった文言を使わなくなったということのようだ。

われわれ一般人に届く情報は今でもいわゆる中国叩きの路線のままであって、大手メディアに現れる多くの論評はトランプが例の辛辣な文言を控えるようになったなんて一言も報じてはいない。少なくとも、私にはそう思える。それとも、私が気付かなかっただけのことだろうか。

ところで、この引用記事が出てからすでに1カ月だ。大手メディアに関するわれわれの経験則から言えば、多くの場合、彼らは自分たちの筋書に不都合な情報はやっきになってもみ消そうとする。あるいは、完全に無視して沈黙を守ろうとする。この引用記事の内容については、大手メディアは後者の姿勢をとっているようだ。

今後、新型コロナウィルスの祖父母や曾祖父の籍がどこにあるのかに関して米中間でどのようなやり取りが展開されるのか興味が募るばかりである。







2020年5月12日火曜日

他の国々が失敗したにもかかわらず、スウェーデンはどうして成功したのか?

新型コロナウィルス危機の全面的な収束については米国を見ても、ヨーロッパを見ても、さらには、お膝元の日本を見てもかなり長い期間が必要となりそうだ。早く収束して欲しいと願わずにはいられないが、現実にはそう簡単には行かないように思える。

コロナウィルス危機の震源地となったお隣の中国は2カ月以上にも及んだ都市閉鎖政策をこなして、1カ月前に閉鎖が解除された。経済活動は再開され、徐々に回復している。新規感染者は5月に入ってからはほとんどが海外から移入された事例だけであって、地元での発症はほとんどゼロ、もしくは、ゼロに近い。

日本がそのようなレベルに達するのは何時になるのであろうか?現状を見る限りでは、残念ながら、はっきりとした展望はまだ見えない。

中国からの医療用機材の海外への輸出は堅調に維持されており、430日の環球時報によると、米国へは3億3千万着の外科用手袋、3千8百万着の保護用衣服、6百万個の保護眼鏡、7500台の人工呼吸器が輸出されたとのことだ。

上記に示すように、中国が通常の生活や生産活動へ順調に復帰しつつある中で、西側諸国は、今、都市封鎖の解除が始まったばかりだ。この過程ではさまざまな紆余曲折が予想される感じだ。そのような混乱状態にありながらも、西側にも明るい材料がひとつある。

各国は都市封鎖政策を採用し、市民に社会的距離を取ることを要請し、経済活動は一部を除いて実質的に中断状態となった。たとえば、国際便が中断され、観光業や接客業は閉鎖され、ホテルやレストラン、バー、ジム、美容院、歯科クリニック、等が閉鎖となった。それとは対照的に、スウェーデン政府は社会的距離を維持することは強制しなかった。つまり、レストランや美容院は店内のお客さんの数を減らして、営業を続けることができた。

このスウェーデンの政策に関してはソーシャルネットワーク上ではさまざまな懸念や不満が沸き上がった。最大の懸念は死者が増えるのではないかという指摘である。しかしながら、都市封鎖の解除を始めた現時点(51011日)での数値を見ると、これらの懸念は建設的な議論ではなかったように思える。人口百万人当たりのスウェーデンの死者数は319人。このレベルは都市閉鎖を行っている他のヨーロッパ諸国と大差がない。スウェーデンよりも死者の割合が多いのは、たとえば、ベルギーは746人、スペインは569人、イタリアは503人、英国は466人、フランスは403人だ。(ヨーロッパ圏の20カ国のデータを抽出して、人口100万人当たりの死者数を計算してみた。本投稿の末尾の表をご参照ください。)

この時点での最大の疑問点は「経済活動に大打撃を与える都市封鎖はコロナウィルス対策として功を奏しているのか」という点だ。

現時点では大流行が収束したわけでもないことから断定的な評価や結論は下せないが、中間点における現状を見る限りでは、都市封鎖を行わなかったスウェーデンが最高の成績ではないにしても、結構立派な成績を収めていることは注目に値すると言えるのではないだろうか。

ここに、「他の国々が失敗したにもかかわらず、スウェーデンはどうして成功したのか?」と題された記事がある(原題:Why Sweden Succeeded While Others Failed: By Mike Whitney, April 30, 2020 )。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


治療法が存在しない感染症に対処する場合、その対処に成功したのかどうかはどのように評価するべきか?

新型コロナウィルスの対処において何処の国がもっとも成功したのかを評価する前にわれわれは上記の設問に答えなければならない。特効薬やワクチンが存在しないという現実は、政治家は自分たちの目標を達成するのに効果的な社会政策を打ち出すことによってもっとも実効性のある施策を模索しなければならないという事実は大きく変わるものではない。私が思うには、ヨーロッパのほとんどの国や米国は指導者らが希求する目標を達成するのにはもっとも疎遠な政策を採用した。換言すると、自己隔離を行い、社会的距離を保つと言う「封じ込め」戦略はウィルスが広がる(ならびに、医療施設が満杯になって崩壊する)ことを一時的に食い止めてはくれるが、都市閉鎖が解除されると、感染は疑いようもなく再度現れ、感染者数や死者数が急上昇する。これが、米国を含めて、数多くの国々が直面している最大の問題点だ。指導者らは現行の規制を解除したいと思っているが、規制の解除は新たな感染をもたらす。いったい、どうするべきか?

問題はこの取り組みの手法が最初から十分に検討されたとは言えないことだ。この手法は政策として採用する前にこれがもたらすすべての可能性を調べておくべきであった筈だ。今ではもう遅すぎる。人々は仕事場へ戻りたいと思ってはいるが、感染の脅威が依然として存在する。これは何を意味しているのかと言うと、人々が仕事場へ復帰した後で流行が散発的に起こり、社会的な反応や騒乱を引き起こし、「職場放棄」に発展するかも知れない。こういった騒ぎは経済停滞を長引かせるだろうし、最近の歴史ではどの時代を取り上げてももっとも辛辣で、分断気味の国内政治をさらに悪化させることになるかも知れない。

この難問のすべては政府が最初に封じ込め戦略を打ち出した頃、つまり、大流行のごく初期にその端を発している。封じ込めの目標は公共医療制度の崩壊を防止することであった。それは実に結構なことではあったけれども、封じ込め策はふたつの車輪を持つ車軸上の一方の車輪でしかない。もう一方の車輪は封じ込め策と同じ程度に重要な免疫だ。問題は次の点にある。つまり、自己隔離を強要する封じ込め策を課しておきながら、いったいどうやって免疫を獲得するのか?これでは、免疫は獲得できない。獲得できるとでも思うのかい?

スウェーデンの専門家たちはお互いに相反するふたつの目標を同時に達成する手法を模索した。つまり、それはこの感染症が医療制度を崩壊させることがない程度にウィルスを封じ込め、その一方で人々を十分に感染に曝して集団免疫を達成するという考え方だ。彼らは一般大衆が自分たちに求められた社会的距離を維持するよう推奨し、それと同時に、ウィルスが一定のコントロール下で広がって行くのを許容した。これが彼らの中核的な手法だ。すなわち、封じ込めと集団免疫。それと同時に、スウェーデンは都市封鎖の実施は避け、経済を続行させて、ヨーロッパでは類を見ないやり方を採用し、いつもと何の変わりもないという雰囲気を維持し続けたのである。実際、これは驚くべき達成である。

スウェーデンの戦略は三つの主要な柱で支えられている。免疫を確立し、持続性を維持し、年配者や他の弱者を守ること。免疫の確立では封じ込め作戦を採用した他の国々の何処よりも優れた成果を収め、スウェーデンの得点はA+だ。封じ込め作戦が終わるやいなや、他の国々は感染者数や死者数の急激な増加に見舞われることであろう。いったい何がいいと言うのか?人々にドアを閉めさせ、鍵をかけ、経済の緊縮による痛みが耐えられなくなるまでべッドの下に隠れていることを強いるような政策のいったい何がいいのだろうか?これはまさに精神錯乱だ。それとは対照的に、スウェーデンの戦略はある程度の社会的距離を維持しながらも、人々が集合することは規制し、それと同時に、感染のリスクが低い人たちには通常の社会生活を許し、彼らをウィルスに曝す戦略を取った。これらの健康な人々のほとんどはまったく症状を示さないか、軽い咳や発熱を経験する程度で終わる。彼らは入院や集中治療室あるいは人工呼吸器のお世話になることはない。そればかりではなく、彼らは感染しても感染からは回復する。その過程で彼らは将来に流行が起こった際に必要となる抗体を生成する。これは非常に重要なことだ。何故ならば、免疫性が無いと、その国は無限に流行に見舞われ続け、経済を疲弊させ、公共医療制度に過度の負担を強い、老人や弱者を死に至らしめることになるからだ。

そうとは言え、批評家の幾人かはウィルスへ曝すことは免疫性を確保するのに十分な抗体を生成するのかと今も問いただす。これは確かに興味深い質問ではあるのだが、見当違いだ。スウェーデンの疫学者は彼らが以前経験したことがある基本に基づいて行動しなければならない。感染に曝すことは実際に抗体を生成させ、この抗体がウィルスがもたらす将来の感染症に対して闘う時に役立つのである。いずれにしても、この問題はできるだけ速やかに決着すべきであって、多分、二回目、三回目の流行が世界を駆け巡る今年中には決着することができるであろう。その時点で「集団免疫」という理論は本物の試験に曝されることになる。それまでは、われわれは最終的な判断を棚上げにしておこう。

スウェーデンの致死率は隣国の数値よりも明らかに高く、このことに多くの関心が寄せられている。しかしながら、これらの数値はこの話の全体を物語るものではない。死者数の半数以上はスウェーデンの大規模老人ホームに由来している。これは悲劇であって、スウェーデンの指導者らは自分たちの失敗を認めている。指導者らはかれらの死亡の責任を認めており、二度と悲劇を起こさないために規制を強化した。たとえば、外部からの老人ホームの訪問を禁止したのである。

他の死亡原因のいくつかは老人ホームという共同体の中でより多くの感染を許してしまう戦略そのものに起因している。しかし、ここには相殺の関係がある。つまり、社会的な交流を多くすると初期段階に死者数が増加し、都市封鎖では規制が解除されるまで死者数の増加を先延ばにするだけに過ぎない。騒ぎが収束し、今日から1年後に振り返って見た場合、多分、われわれは死者数のパーセントは多くの国々の間で僅かの差があるだけだと気付くことであろう。これが、少なくとも、何人かの評判の高い疫学者たちが想定する展開である。

上記に指摘したように、スウェーデンの策は都市封鎖を行わない。つまり、経済を破壊させず、公共医療制度を過度に苦しめないようにする。そうすることによって、スウェーデン方式は二番目の目標である経済の持続性を維持する。スウェーデンの指導者らは経済に深刻な打撃を与えることもなく、この手法を際限なく継続することが可能だとさえ述べている。米国に関しても同じことが言えるのであろうか?コロナウィルスの大流行の第二波がこの秋に襲来した場合、米国は経済活動を停止し、何百万人もの労働者を解雇し、何千社もの中小企業を破産させ、何兆ドルもの金を浪費する積りか?

米国の戦略には持続性がなく、再現性もなく、決して好ましいものではない。考え方が非常に貧弱で、これは行き当たりばったりのトランプが踏んだドジであって、免疫の確立に必要となる基本的な課題に取り組もうともしない。もしも米国の市民がある程度の集団免疫さえも獲得し得なかったとしたら、将来今回の大流行と似たような事態に見舞われた際、われわれはいったいどうやってその大流行と闘うのであろうか?これこそがトランプや水晶占いを行う彼の側近たちが自問しなければならない点なのだ。しかし、われわれは彼らがそうするだろうとは思わない。下記にニューヨークタイムズからの抜粋を示そう: 

アンダース・テグネルはこう言った。「われわれが思うには、ストックホルムでは25パーセント程の人たちがコロナウィルスに暴露されて、恐らくは免疫を獲得している・・・ われわれはストックホルム地域の集団免疫を数週間以内に獲得することができるかも知れない。」 (注:集団免疫は感染症を間接的に予防する形態であって、人口の大多数が前回の流行によって免疫を獲得した場合、次回の流行では免疫を持たない人たちを防護するためのひとつの策を提供する。)

「今何が起こっているのかと言うと、多くの国がスウェーデン様式に同調しようとしているのだ。多くの国々が学校を再開し、出口戦略を模索している。こうして、話は持続性に戻って来る。数カ月や数週間ではなく、さらに長期間にわたってこれを継続するには、われわれは評価尺度を持つ必要がある。(ニューヨークタイムズ紙の記事「Is Sweden Doing It Right?」から)」 

集団免疫はその国の人々に将来の感染に対して一定の防護の策を提供することになることから、それはコロナウィルスに対する社会政策における最高の目標となる。しかしながら、集団免疫がそのように好ましい策であるとするならば、集団免疫を積極的に追求しているのはどうしてスウェーデンだけなのか?この件に関してはウールストリートジャーナル紙の記事でジョセフ・スターンバーグが興味深い背景を報じている。スターンバーグによると、数多くの専門家たちは「われわれはウィルスの拡大を中断させることはできず、われわれにできることはウィルスの広がりを遅延させることだけだ」と認識していた。しかし、自分たちが元々到達していた正論から逸脱したことからすべての混乱が始まったのである。それを下記に確認しておこう:

「問題は3月の中頃に始まった。世界中のほとんどの国にとっては集団免疫は暗黙の了解であり、最終段階として認められていたのであるが、この言葉は毒を含んだ文言となった。批判者らはウィルスがコントロール下で広がることを許すとすれば、死者が発生することになると指摘したのである。彼らは厳しい都市封鎖を提案し、そうしなければイタリアの病院で起こった苦い経験の二の舞となる。どちらか一方だと言った。しかし、もしも彼らがコントロール下で集団免疫を実現する手法よりももっと説得力のある方法を持っているならば、全世界はそれを拝聴しようと待っていた。ところが、それに代わって、専門家らはワクチンの到来を待つか、感染の試験を強化し、感染者が接触を持った人たちをきめ細かく追跡するかのどちらかだと提案した。ご成功を祈る。ワクチンが現れるとしても、それは1年かそれ以上も先のことだ・・・」(ウールストリートジャーナル紙の記事「Maybe the Experts Were Right About Covid-19 the First Time」から)

著者によれば、実際に専門家らはある時点では同意見ではあったが、彼らは自分たちの取り組み方を変更するよう脅かされた。それとは対照的に、スウェーデンは「自分たちの立場を固守し」、メディアからの容赦のない批判を払いのけ、理性的な政策、つまり、ウィルスをコントロール下で広めさせることによる集団免疫の確立を推進した。今やこの目標には真近にまで迫ってはいるが、これには確固たる信念と肝を据えた忍耐心とを必要とした。

スウェーデンに万歳!正気に万歳!


これで全文の仮訳が終了した。

この引用記事を読んでみると、著者のマイク・ウィットニーは米国の住人であるだけに、自国のコロナウィルス感染の惨状を毎日目のあたりにしており、致死率を下げながらも集団免疫を確保するには何が必要なのか、スウェーデンは他の国々がとった策とは違って独自の対策を採用して比較的うまくやっているではないかといった米政府の対策に苦言を呈している。彼は焦燥感を覚えているようだ。憤りのようなものさえもが伝わって来る。

著者のマイク・ウィットニーはニューヨークタイムズを引用して、「今何が起こっているのかと言うと、多くの国がスウェーデン様式に同調しようとしているのだ」と述べている。今ヨーロッパ各国は、中国が辿った死者がゼロになるまで都市閉鎖を続ける策は中断して、ピークが過ぎたとは言えまだまだ新規の感染者や死者が毎日のように報告されている現状にあるにもかかわらず、都市封鎖を解除しようとしている。これは経済活動を再開し、諸々の規制を継続しながら、今後かなり長い期間をかけて集団免疫を確立しようという戦略に切り替えたということだ。

ところで、人口100万人当たりの死亡率で各国を比較してみると、米国の最近の死亡率は100万人当たりで319人である。51011日現在のヨーロッパでのトップであるベルギー(747人)やスペイン(569人)の致死率に比べると、米国の死亡率はその半分前後である。絶対数で比べた場合は、人口が多い米国はダントツの状況を示すだけに、感情論に走ってしまうのではないかとも思われる。

参考のためにヨーロッパ各国の死亡率を下記に掲載してみよう。ただし、これはEU圏の全ての国を網羅したものではない。


Photo-1

マイク・ウィットニーはこの記事で成功例としてスウェーデンを取り上げているが、スウェーデンの死亡率はヨーロッパ圏ではトップから6番目に位置している。ところで、スウェーデンの専門家は首都のストックホルムに関しては間もなく集団免疫が確立できそうだと公言している。首都圏では感染が広がって、抗体を獲得した人が順調に増えているということだ。感染が進んでおり、数多くの死者が出ているニューヨーク市でも同じ現象が起こっている。つまり、集団全体としての抗体の獲得が進んでいる。

これらの数値を比較する場合、感染が国内や特定の地域ですでに飽和に近いのか、それとも、まだ人口の半分にも満たないのかによって、死亡率の比較や成功・不成功の議論は意味を成す場合もあれば、意味を成さない場合もある。つまり、中間の時点での比較や議論は難しい。

因みに、今回の新型コロナウィルスの大流行の震源地となった中国の湖北省の死亡率をここで再確認しておきたいと思う。510日の時点での累計感染者数は68,134人、死者数は4,512人である。総人口が71,854,202人(注:ヨーロッパと比べると、ドイツの人口よりも少なく、英国の人口よりは多い)であるから、人口100万人当たりの死亡率は63人となる。この死亡率が中国では死亡率がもっとも高いと推定される地域のひとつである湖北省での第一波の結果である。この数値はヨーロッパでもっとも厳しい感染が起こった国々の十分の一のレベルである。しかも、ヨーロッパ各国ではまだ収束したわけではなく、大流行のサイクルが中国に比べて遅く始まったヨーロッパでは死者総数は今後もしばらくは増え続けるであろう。西側の批判者の中には中国政府は正確な数値を報告してはいないと主張しているが、その批判はこの辺りに理由があるのかも知れない。あるいは、そういった批判は中国叩きという政治路線から来た単なるフェークニュースなのかも知れない。

この投稿を準備し始めた時点からはまだ数日しか経ってはいないのに、中国では状況が急速に変化しているようだ。

今回の新型コロナウィルスの大流行の震源地であった武漢では、511日の報道によると、地元で新たに5人の感染者が報告された。この日、中国全土では前日よりも3人増加して17人の感染が新たに報告された。これらの新規感染者のうちで7人は海外での旅行が絡んでおり、10人が国内での感染であるという。428日以降ではもっとも多くの新規感染者が報告されたことを受けて、この記事は第二波の襲来かと懸念を表明している。

まだ即断はできないけれども、第二波が遅かれ早かれやって来るとすれば、一回目の流行でどれだけの集団免疫を確立することができたのかが非常に重要になって来る。

震源地であった湖北省では免疫の獲得はそれほど進んではいないと専門家は言っている。つまり、都市封鎖策によって大流行をくい止めたものの、集団免疫の確立にはまだまだほど遠いという。つまり、中国の手法はスウェーデンの手法とは大きく違う。ワクチンや特効薬といった治療法がない現時点では感染症と闘うことの難しさを改めて思い知らされる。

511日に英国政府は都市封鎖を解除するやり方について60ペ―ジから成る戦略を公開した。その中でジョンソン首相は「ワクチンの到来は1年以上も先のことだ。最悪の場合は使用可能なワクチンは見つからないかも知れない」とさえ述べている。ワクチンは見つからないかも知れないという英首相の発言は、英国民が新しい政府の戦略に従順に従うことを狙ったもので、単なる言葉の綾なのであろうか?それとも、副作用がなく、安全なワクチンの製造はまだ予定表には登場してはいないと本当のことを述べたのか?私には分からない。

何れにしても、引用記事の著者が主張する三つの目標(集団免疫の確立、持続性の維持、死亡率の低減)が重要になってくることは明白であると私には思える。

半年後、1年後あるいは2年後、世界各国のコロナウィルスとの闘いが果たして成功したのか、不成功に終わったのかがより鮮明になることであろう。それまでは一喜一憂の状態が継続することになる。そして、最終的には各国間でそれほど大きな差異は出ないかも知れないという専門家の予測もある。インフルエンザを含めて、ウィルスによる感染症はそういうものなのかも知れない。

とすると、これだけ騒いで、恐怖心を扇動した、あるいは、扇動したと推定されるメディアには何らかの隠された目標があるのかも知れない。しかし、ここから先は陰謀論めいた話になりかねないので、詳細な議論は控えたい。何といっても、それはこの投稿の目的ではないからだ。

要は、事実に基づいて理性的な判断をしなければならないという一言に尽きる。われわれはそのことだけを念頭に置きたいと思う。今後もさまざまな賛成論や反対論が出て来る筈だ。先入観に囚われず、事実を掘り起こす努力を続けたいと思う。特に、現実的な話として、コロナウィルスに関してはわれわれが知らないことや一般大衆が知らされてはいないことがまだまだたくさんあるような気がする。






2020年5月5日火曜日

新型コロナウィルス奮闘記 - 三つの国の物語

多くの医師や研究者は善良であって、それぞれの国で新型コロナウィルスと闘っている。そのご努力には全面的に感謝したいと思う。

その一方で、コロナウィルスの最前線で毎日闘い、疲労困憊して命を落としたという悲報を幾つも聞いた。さらには、コロナウィルスに感染して死亡した看護師や医師も決して少なくはない。そういった方々には心から哀悼の意を表したい。

しかしながら、短期的な政治的目論見のために科学が押しのけられ、献身的な医療専門家の知識や見解がなおざりにされた場合、医療従事者ばかりではなく、その国の一般庶民は結果として大きな負担を強いられることになる。これは実に大きな不幸だ。その最たる事例は国内の諸々の政治課題から国民の関心を逸らして、外部に向けようとする政治家であろう。すべては当人の保身のためである。

それはそれとして、世界を見回してみると政治家の中にも卓越した理性と公益に奉仕する意欲に燃えた人たちが存在することも事実だ。それを知ると、明日への希望が湧いてくる。

今回の新型コロナウィルスの大流行に対する処置を巡っては、好むと好まざるとにかかわらず、どのような政治家が一国のトップに座っているのかが図らずも浮き彫りになった。後知恵の部類に属するものであろうが、この大流行はトップの政治家が、側近も含めて、十分な理性を備え、公益に奉仕する意欲に燃えているのかどうかを評価することができる格好のリトマス試験紙になったとも言えよう。

われわれの国、日本は果たしてどのような政治家を擁しているのか?それは読者の皆さんの評価にお任せしたいと思う。

今日のブログではベトナム、キューバ、スロバキアの3国に焦点を当ててみたい。これらの国々はコロナウィルスの大流行の中でそれぞれが特有の成果を収め、国民の安全を図ることに成功したからだ。言うまでもなく、そういった対応をタイミングよく可能にしたのはその国のトップの指導力に他ならない。率直に言って、大多数の国々はその対応に失敗した。もっとたくさんの成功例があっても良さそうに思えるのだが、成功例は完全に少数派である。非常に不思議なことであり、残念なことでもある。

ベトナム、キューバおよびスロバキアに関する三つの記事を仮訳し、読者の皆さんと下記に共有しようと思う。これらの記事は国民の生命を守ると言う非常に基本的な社会的・政治的使命を実行し、それに成功した国々の物語である。


1)ベトナムは感染者数がピークに達したことからコロナウィルス関連の規制を緩和(原題:Vietnam relaxes virus restrictions as cases plateau: By AFP, Apr/23/2020


Photo-1: © Nhac NGUYEN 中国と接する長い国境を持ち、しかも、
それは穴だらけであるにもかかわらず、公のデータによると
ベトナムは感染者数が268人で、死者はゼロである。

ベトナムは社会的距離の確保を木曜日(423日)に解除した。専門家らは新型コロナウィルスを封じ込めるために採用した集団隔離や広範にわたる接触者のきめ細かい追跡が功を奏したことを指摘している。

中国との間に非常に長く、しかも、穴だらけの国境を有しながらも、この東南アジアの国家は公的なデータによると266人の感染者を記録したが、死者はゼロである。

新型コロナウィルスの感染に関する試験数は比較的少数に限られてはいるが、専門家は専制的な政府の保健省がこれらの数値の唯一の情報源であると指摘するが、彼らはこれらの数値を疑う根拠は何もないとも言う。

ベトナムは中国と行き来する航空便を禁止した最初の国のひとつであって、2月の始めに禁止措置をとった。当時、感染者数がまだ10人前後であったが、首都に近い1万人の人口を持つ集落が隔離された。

それと同時に、きめ細かな接触者の追跡も実施された。


Photo-2: © Manan VATSYAYANA ベトナムは4月の初めから
部分的な都市封鎖を行った

近隣の住民を監視する草の根的な共産党組織を頼りにしながら、感染が疑われる人たちを徹底的に追跡する任務に関して、ハノイ在住の72歳の住民は彼自身と彼の集落のチームとがどのように任務を遂行したのかを説明してくれた。

「われわれは個々の通りへ出向いて、戸別訪問を行った」とウェン・トウリン・タングがAFPに語ってくれた。

「われわれはこの大流行はあたかも敵と戦うようなものだという政府の指針を遵守している。」

WHOの西太平洋地域事務局長である葛西健はベトナムが一般大衆の協力を得ることに成功したことがもっとも重要な要素であると言う。

「彼らは自分たちのそれぞれの役割をこなしている」と彼は今週の始めに語った。そして、約8万人が隔離されたと付け加えた。

「それこそが感染者数を低く抑え続けることができた最大の理由ではないかと私は思う。」 

今ベトナムへ飛来する国際便はほとんどゼロで、ベトナムは4月始め以降は半閉鎖状態である。

ハノイの通りは通常ならばモーターバイクや旅行者、行商人らでごった返しているのだが、実質的にすっかり人通りが絶えて、いわゆる施し用のお米のATMに列を作る人たちにとっては助けとなっている。

厳しいコントロールが明らかに功を奏している。

水曜日(422日)には6日間連続して新たな感染が出なかったことが報じられた。その後で政府は特定の店やサービス業は開業が許されると述べた。

木曜日(423日)、通りは依然として閑散としたままではあるが、首都のカフェのいくつかは営業を再開した。

- 予想を超える成果 -

ヨーロッパや米国では何処でも地方政府は市民を屋内に留めておくことに手を焼いているのが現状だ。たとえば、海水浴客が海岸を埋め、反対者たちは都市閉鎖命令に従うことを拒んでいる。

それとは対照的に、共産主義国家であるベトナムでは、帰省して来る海外居住者を含めて、何万人もの人たちが国中で軍のキャンプの様な施設で国家による隔離下に置かれた。

ヴュ・ティ・ニョングと彼女の息子は3月にドイツから帰国した際にはハノイのキャンプでマットレスもない2段ベッドで2週間を過ごした。

兵士が三度の食事を運んで来て、二人の部屋の外へ置いていった。

「家に居る時とは比べものにはならないけれども、ベトナムの現在の経済環境や大流行の真っただ中にあることを考えると、私が予想したよりもはるかに良かった」とAFPに話してくれた。 

1月の中旬、中国国外としては初めて隣国のタイが感染者を報告した。そのタイも、先週、感染者数が減少したことを報じた。医師らは政府がタイミングよく規制をしたこと、たとえば、夜間の外出禁止令を出したことを賞賛している。

カンボジアでは感染者数が1週間ずっと122人に留まり、ラオスでも19人に留まった。

しかし、タイのチュラーロンコーン病院の緊急感染症科を指揮するオーパス・プチャロエンは 隣国の感染者数が低いのは「検査数が少ないからだ」と言った。

今までのところ、タイ(訳注:現在の総人口は約6970万人)は新型コロナウィルスの感染に関する検査を142,000回行い、カンボジアは9,000回行った。ベトナムは総人口9600万人に対して180,000回の検査を行っている。

ニューサウスウェールス大学の名誉教授であるベトナムの専門家カール・サイアーはベトナムの感染者数について異議を挟む者は誰であってもハノイ政府によって罰せられることがあり得るので、これらの情報の取り扱いには注意を要すると言った。

しかし、こうも付け加えている。「今や、(隠そうとしても)海外からの入国者は多過ぎるし、携帯電話を所有する人は余りにも多い。しかも、インターネットへのアクセス人口は余りにも多過ぎる。」 


2)新型コロナウィルスの大流行の中、キューバは利益よりも人々を優先する取り組みに成功。その一方で、資本主義は米国に苦渋をもたらした(原題:Covid-19: Cuba’s people-before-profit approach pays off as capitalism proves a bitter pill for the US: By RT, Apr/28/2020)


Photo-3: キューバのヘンリー・リーブ国際医療旅団の医師や看護師たちがアンドラ
でのコロナウィルスとの闘いを支援するために出発するのに先立って
行われた歓送会に参加。ハバナの医療協力セントラル・ユニット
にて、2020328日。 © AFP / YAMIL LAGE

著者のプロフィール: パブロ・ヴィヴァンコはジャーナリスト兼分析専門家。米州の政治や歴史の分野を扱う。以前は teleSUR訳注:ベネズエラのカラカスに本拠を置くテレビ局で、中南米全域に向けて報道しているの英語部門でディレクターを務めていた。最近の署名入りの記事にはThe JacobinAsia TimesThe ProgressiveおよびTruthout向けのものが含まれる。 彼のツイッター@pvivancoguzmanをフォローして欲しい。

ハバナ政府は医療分野で何十年にもわたってその能力を超すと思われるような業績を実現してきた。しかしながら、キューバの社会主義システムとキューバに関しては世界でもっとも辛辣な悪口を言う米国の市場原理に基づくシステムとの相違が今回ほどあからさまになったことはない。

キューバは3月に国内のコロナウィルス感染者を報告したが、その報告以前にさえも世界的な大流行を食い止めるための取り組みにおいてはキューバはすでにさまざまな分野で活躍していた。中国は患者の治療のためにこの島国で開発された治療薬を使用した。英国のクルーズ船は最終的にキューバに入港することを許可され、新型コロナウィルスに感染した6人を含めて、1000人もの乗船客が帰国できるように支援を行った。

ほとんどが英国人の船客でいっぱいのブレ―マー号は幾つかの港への入港を打診したが、入港許可を拒否されていた。ある報告によると、英国の主要な同盟国である米国は入港を拒否した国々のひとつである。同船を運行するフレッド・オルセン・クルーズ・ラインズは具体的には米国についてコメントすることを避けたが、彼らはいくつもの選択肢を試みたと言った。しかし、その交渉に関する具体的な内容については言明をしなかった。最終的にはこのクルーズ船がキューバへ入港したという事実はこの大流行に対する取り組み姿勢には国によって大きな違いがあることを浮き彫りにした。

60歳以上の年配者が多いとか、同国への旅行者が数多くいるといったさまざまなリスク要因がありながらも、キューバは427日現在の感染者を1,370人に抑え、死者を54人に抑えることができた。

この成果の多くはこのカリブ海の島国が人口当たりで世界中でもっとも多くの医者がいるというだけではなく、前向きで、地域社会による対応に根ざし、無料で、誰に対しても平等な保険制度によって支えられているという事実にも大きく関係している。

rt.comによる関連記事:エクアドルの新型コロナウィルスの惨事は人為的なものだ。なぜならば政治エリートにとっては一般庶民は単に使い捨ての存在でしかないからだ。(原題:Ecuador’s Covid-19 catastrophe is man-made disaster — because for political elites ordinary Ecuadorians are just disposables

同国の社会主義政府は、悲惨な1990年代の特別時代から始まって年中行事のようなハリケーンの季節における動員に至るまで、何十年にもわたって強いられた危機マネジメントによって鍛えられている。そして、被害を最小限にするために、特に、人命を救うためには速やかな対応をするのが常である。

1月に開始された対策には医療関係者の訓練や医療施設の準備が含まれているが、3月までにはこれらの対策は他の分野にも拡大され、実質的に観光産業を停止するほどまでになった。観光産業はキューバ経済にとっては大きな部分を占める。

依然として、キューバ政府はコロナウィルスの感染をコントロール下に収める上でキューバからの支援を必要とする国々へ医師を派遣し続けた。こういった医師団の派遣はアフリカ諸国では2014年に始まったエボラの大流行を抑えて、コントロール下に置く上で大きな助けとなったのである。

rt.comによる関連記事:新型コロナウィルスの大流行は米国の破綻した保険制度を露呈(原題:The Covid-19 pandemic exposes deep flaws in America’s broken healthcare system

しかし、今や、キューバの医師たちはヨーロッパで、たとえば、イタリアやアンドラにおいて諸手を挙げて迎えられている。たった数か月前にはキューバを中傷し、キューバ人を追い出していた南米の親米派諸国ではいくつかの国が彼らが戻って来るのを歓迎しさえしている。

キューバで訓練を受け、他国で働いている医師の数はハバナ南米医科大学からの卒業生を加えるとさらに増える。同大学は1999年以降138ヵ国から35,000人にも上る留学生を無料で教育してきたのである。

これらの活動はすべてが野蛮な米国による経済制裁の結果余儀なくされた厳しい制約や乏しい資源の枠内で実施されてきた。この経済制裁は最近トランプ政権によってさらに強化されている。

rt.comによる関連記事:「非倫理的であり、非人道的だ」:ロシア外務省は米国の経済制裁は新型コロナウィルスの大流行と闘う全世界の努力を妨げていると非難(原題:'Immoral & inhumane': Russian FM denounces US sanctions hampering worlds' efforts against Covid-19 pandemic

キューバにとっては医師や看護師を海外へ派遣することは歳入を確保する重要な稼ぎ手でもある。毎年約110憶ドルの歳入を実現し、これはこの島国の観光産業による稼ぎよりも大きい。どの時点を取っても、約5万人のキューバ人の医師が67ヵ国で働いている。まさに「白衣を着た軍隊」であるとある高級官僚が彼らのことを描写している。

しかしながら、キューバの人たちが世界中で国家やそこの住民を支援するために自分たちを危険に晒している中で、米国はまったく正反対のことをしてきた。

偽善振りを大胆に発揮して、ワシントン政府は自らは何の支援も提供せずに、キューバからの医師団を受け入れないようにと各国に圧力をかけた。そして、出荷中の医療器材を故意に差し止めた(恐らく、これは非合法だ)。自分たちのもっとも近しい同盟国のいくつかに対する出荷分さえもがその対象となった。

もっと公平に言えば、たとえ米政府にその気があったとしても、同政府にとっては何処の国に対しても支援の手を差し伸べることができるような状況にはないのである。

米国の保険制度には現在のところ人口ひとり当たりでは世界でもっとも多くの資金が提供されているのだが、逆説的に言えば、今回の大流行以前にさえもその弱さをすでに露呈していた。民主党の大統領候補らは保険制度の恩恵に浴してはいない7千万人を超す人たちに適切な医療を提供できる案を思い描いていたのである。

現行の危機に入ってからすでに数週間となるが、状況はより深刻である。さらに何百万人もが失職し、それに伴って保険制度を活用する権利を失い、病院は患者や医療従事者のための適切な保護具にさえも不足している有様だ。

さらに悪いことには、州や地方の行政レベルでの対策には大きな食い違いがあって、米国の総合的な対応振りはまさに精神分裂症的でさえある。その一方で、ホワイトハウスの意思決定は、大流行への対応を指揮する責任のある地位に犬の育種家を抜擢したことや患者には消毒剤を注入するといった失言を含めて、ますます皮肉っぽくなって来た。

この悲劇的であり、滑稽でさえもある状況を見ると、保険制度そのものやその対応の仕方における米国とキューバとの違いはより以上に明白なものとなる。

キューバは長い間医療制度をすべての国民が享受するべきものとして優先して来たが、米国は医療制度を享受する、享受しないは市場原理に任せるとしてきた。キューバは大流行の潮流を食い止めるために医師団を世界中に派遣したが、米国はキューバがそのような活動を続けることを邪魔しようとして、この島国に対して締め付けをさらに強化した。

rt.comによる関連記事:キューバはコロナウィルスに対する取り組みを邪魔しようとする米国の「邪悪で大量虐殺的な」封じ込め策を厳しく非難した(原題:Cuba enraged over ‘cruel & genocidal’ US blockade impeding anti-coronavirus efforts

両国間の相違は金の問題ではなく、むしろ、哲学の問題である。キューバは全ての分野で欠乏をしているにもかかわらず、人々の健康を維持し、生命を救うことに断固として関与し続けてきた。今回の大流行においてキューバはその正当性を証明した。

その一方で、彼らの北側に位置し、極めて裕福である隣国は死の底へ沈みつつあるにもかかわらず、資本主義の正統性を証明しようとして自分たちの主張を他国の生活のあらゆる分野に当てはめ、世界中の何処へでも当てはめようとする。 


3)スロバキア - コロナウィルスによる死者数がもっとも少ないヨーロッパの国は対応の迅速さが鍵であることを物語っている (原題:European Nation With Least Virus Deaths Proves Speed Is Key: By Radoslav Tomek, Bloomberg, Apr/28/2020 ) 

ヨーロッパではコロナウィルスによって一日に何千人もの死者が出ているが、ひとつの国が死亡率を低く抑えることで抜きんでている。

スロバキアは海への出口を持たず、人口が550万人の小国家であるが、イタリアの事例を見て、他の国々よりも速やかに学校や商店を閉鎖し、国境を閉じた。その一方で、政治家やテレビの司会者は政府がその使用を義務付ける以前からマスクを使用し始めた。

これらの対策が実を結んだ。最初の感染者が報告されてから6週間後、スロバキアにおける死者数はたったの18人で、426日付けのジョン・ホプキンス大学が作成したデータによると、ヨーロッパ中の人口当たりの死者数のリストにおいて最低を記録している。


Photo-4:汚職追放という政治運動を行っている「庶民と独立心のあるパーソ
ナリティ」(OLaNO)の指導者であるイーゴル・マトヴィッチが他の
党首ら(Olano, Sme Rodina, SaS and Za Ludi)と会合を終えて、帰る
ところ。これらの政党は2020313日に新政府を発足する潜在的な
同盟相手である。政党指導者らは新政府の樹立について合意した。
(Photo by VLADIMIR SIMICEK/AFP via Getty Images)

「迅速さこそがもっとも肝要である」とウィーン医科大学の疫学部長を務めるエヴァ・シェルンハンメルが電話で答えた。「新たな患者のすべてについて接触者をきめ細かく追跡することが可能な初期の内に流行を封じ込めることが理想だ。」 

ブラチスラバ行政区の長であるユライ・ドロバは最初の感染者が報告されてから二日以内に学校を閉鎖した。この閉鎖処置は国内の他の地域よりも一週間も速かった。彼はイタリアで何が起こっているのかを理解することができたのである。

この地域はこの国の人口の10%超を擁している。


Photo-5: スペインのセビリアにて、426日。スペイン政府が2020426
に子供たちに対する封鎖の規制を緩めたことから、セビリヤで自転車を乗り
回す少年。ヨーロッパではもっとも厳しい封鎖措置をとった国のひとつ
あるスペインでは子供たちは一日当たり一時間だけ自宅外へ出ることが
許されるようになった。同国は新型コロナウィルスの感染者22
人、死者は2万人となった。これらの数値は数週間に及ぶ隔離
よって減少している。(Photo by Marcelo del Pozo/Getty Images)

世界中がコロナウィルスの大流行と闘っている中、一日当たりの新規感染者数が減少したいくつかの国は、市民らが最近の数週間で初めて自由に動き回り、経済の再開に当たることを許すために、一時的な解除措置を取り始めた。写真をクリックして、各国が徐々に、しかも、警戒をしながら通常に戻ろうとしている様子をご覧いただきたい。

(写真の事例) スペイン政府は14歳以下の子供たちに対する規制を緩めた。男の子がスペインのセビリヤで自転車に乗っている様子。2020426日。

注:都市閉鎖を解除する措置の内容は国によっては今後修正される可能性がある。このスライドショウは427日の時点のもの。

また、スロヴァキアの環境保険長官であるヤン・ミカスはオーストリアから帰国してきたスキーヤーの団体を停止する命令を下し、彼らを監視付きの隔離施設へと誘導した。検査の結果、約60人が陽性を示した。

都市閉鎖によって経済が破壊されたが、その後、政府は今ゆっくりと経済を再開しつつある。こうした処置を課すことは小国ではより簡単である。

科学者らはコロナウィルスに対する戦争が終わったと宣言するにはまだ早すぎると警告している。

「この傾向が維持されれば、この事態の取り組みではわれわれは最良の結果をもたらした国のひとつだ」と、ウィルスの感染をモデル化する作業に従事する国立保険政策研究所の所長を務めるマルチン・スマタナが述べた。「人口のほとんどの部分にはウィルスは拡散してはいない。」


これで三つの記事の仮訳が終了した。

今回の新型コロナウィルスの大流行を巡る各国の対応は千差万別である。その結果、死者数の低減と集団免疫の樹立という政治的に、ならびに、公衆衛生上で基本的にもっとも重要なふたつの目標に関しては、その達成の度合いは国によって大きく異なっていることが判明した。時期が来れば、これらの詳細は誰の目にも明らかになって来るであろう。

その違いの一端をここに引用したベトナム、キューバおよびスロバキアに関する三つの記事が伝えていると私は思う。

また、これらの三つの国の他にもさまざまな知見が出始めている。

たとえば、スウェーデンでは都市封鎖を行わなわず、学校やレストランは閉鎖されることがなかった。スウェーデンがとった措置については、当初、国の内外からさまざまな批判が沸き上がった。しかし、今、結果を見ると、スウェーデンは死者数の低減と集団免疫の樹立という二つの相反する目標のそれぞれをほぼ達成するという離れ業に成功したようだ。コロナウィルスの特徴や挙動が必ずしも理解できてはいない現時点ではスウェーデンの今回の経験は貴重な情報を残してくれたのではないだろうか。

新型コロナウィルスの大流行に関しては、半年後には真相にもっと近づくことが可能となって、誰もが今とは見違えるような理解をしているかも知れない。