各種の用語の解説を行っているウィキペディアによると、「新型コロナウィルス」は下記のような説明で始まっている。
2019新型コロナウイルス(2019-nCoV,
SARS-CoV-2)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)[2]の原因となるSARS関連コロナウイルス(SARSr-CoV)に属するコロナウイルスである[3]。日本の国家機関や主要な報道機関は「新型コロナウイルス」と呼んでおり[4][5]、「新型コロナ」と省略される場合もある[5][6][7][8]。
2019年に中国湖北省武漢市付近で発生が初めて確認され[9]、その後、COVID-19の世界的流行(パンデミック)を引き起こしている[10][11][12]。
さらに、「SARS関連コロナウイルス」は次のように始まる。
SARS関連コロナウイルス(英:
Severe acute respiratory syndrome-related coronavirus,
SARSr-CoV)は、ヒトやコウモリをはじめとする哺乳類に感染するコロナウイルスの1種[1]。ACE2受容体を利用して宿主細胞に侵入する。エンベロープを持つ一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。ベータコロナウイルス属(第2群コロナウイルス)に含まれる。以前は単にSARSコロナウイルスと呼ばれていたが、非常に近縁なウイルスが複数発見されたため、2009年にそれらを含む形に拡張された[2]。
ところで、ここに、「新型コロナウィルスには祖父母がいて、曾祖父もいる。彼らはどこにいるのか?」と題された記事がある(原題:Covid-19
has a grandma, grandpa and great grandpa. Where are they?: By M. K.
BHADRAKUMAR, Indian Punchline,
Apr/21/2020)。要するに、これは現在世界経済を前代未聞の危機状態に陥れている新型コロナウィルスの祖先に関する話だ。平易な言葉で解説しようとしている点がいい。
本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたいと思う。
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Photo-1: 中国の武漢では新型コロナウィルス対策で76日間の都市閉鎖が続いたが、
2020年4月7日についに解除となった。
新型コロナウィルスの起源がどこにあったのかを探そうとすると、大規模な物語に発展していく。ドナルド・トランプ大統領が放った辛辣な当てこすり、つまり、「中国ウィルス」とか「武漢ウィルス」といった政治的にも戦略的にも危険極まる言い方のせいで、北京政府は今まで以上に真剣にその真相を探る構えを見せている。
これはいいことだと思う。なぜならば、中国政府は急所を突かれ、今エンジンを全開にして対処しようとしていることからも、本件の全貌は近いうちに一般に公開されることになるのではないか。
異例な動きではあるが、先週(4月12日~18日)、ロシアに駐在する張漢暉(Zhang
Hanhui)中国大使が新型コロナウィルスの全容が紐解かれつつあるが、世界中が驚くような事柄でいっぱいだと述べた。
張大使が北京政府の了解もなしに独断でこのようなことを喋ったとは考えられない。特別な意味があるかのように、中国大使はロシア国営通信社の「タス」を選んで、この驚くべき公開を行ったのである。
同大使によると、
中国のトップ・ファイブの科学研究機関が93個の新型コロナウィルスの遺伝子サンプルを収集した。これらのデータは四つの大陸にまたがる12ヵ国から提供された情報に基づいて構成されている世界的なデータベースにおいて出版された。
この研究によると、新型コロナウィルス(Covid-19)のもっとも初期の祖先は「mv1」として知られており、このウィルスは後に進化し、二種類のハプロタイプ、つまり、「H13」と「H38」
になった。(「ハプロタイプ」とはある個体が両親の一方から受け継いだ一連の遺伝子を指す。)
そして、H13とH38はさらに進化して、ニ世代目のハプロタイプである「H3」を生み出し、これはさらに「H1」、つまり、Covid-19へと進化した。
つまり、もっと簡単に言えば、Covid-19の父親はH3であって、祖父と祖母はH13とH38、さらに曾祖父は「mv1」である。
さて、武漢の海鮮卸売市場で発見されたウィルス(Covid-19)はH1の種類である。この点はOKだ。武漢では「父親」であるH3だけが発見されたが、海鮮卸売市場では発見されなかった。
極めて重要なことには、Covid-19の「祖父母」、つまり、H13とH38は武漢では発見されなかったのだ。
「これはH1サンプルが感染者によって海鮮卸売市場に運び込まれ、そこから感染が広がって行ったということを示している。遺伝子配列は決して嘘をつかない。」(張大使談)
あえて言うならば、新型コロナウィルスの流行の根源は今後さらに追跡しなければならないが、それを辿ると何れかの方向に向かうことになろう。今のところは、新型コロナウィルスは最初に武漢で発見されただけであるが、その起源についてはこれから特定しなければならない。
ところで、明確な兆候が存在する。張大使は次のように詳しく話した:
日本人夫婦がハワイ(米軍基地がある)で新型コロナウィルスに感染した。1月28日から2月3日までの滞在中のことであった。二人は中国を訪れたことはなく、中国人との接触もまったくなかった。注目すべきは、夫の方が2月3日には症状を示した。
イタリア北部のロンバルディア地方における新型コロナウィルスの最初の症例は1月1日に現れたとメディアが報告している。
イタリアの医療分野では著名な専門家であるジュゼッペ・レムッツィによると、イタリアでは新型コロナウィルスの感染は中国で感染が始まる前にすでに始まっていたという。
米国の著名なウィルス学者であるロバート・レッドフィールドは、現在、疾病予防管理センター(CDC
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これは米国の最高レベルの公衆衛生研究所であり、連邦機関のひとつである)の長官を務め、米国有害物質・疾病登録局(ジョージア州アトランタに本拠を置く連邦レベルの公衆衛生機関)を管理しているが、米国のインフルエンザによる死者の多くは新型コロナウィルスによって死亡したのかも知れないけれども、米国政府は当時それを示す検査は実施しなかったと述べている。(今冬、米国ではインフルエンザとその合併症のせいで8万人が死亡したと推定されている。)
衝撃的な話ではあるが、イタリアは米国のいわゆるインフルエンザの死者に関して検視を行って新型コロナウィルスの最初の症例を追跡するよう申し入れたが、米国政府はそれをきっぱりと断った。
しかしながら、現代の科学技術は新型コロナウィルスを追跡するのに非常に便利にできており、「遅かれ早かれ、今まで知られてはいなかったことのすべてが明らかにされる日がやって来ることだろう」と張大使は述べている。
興味深いことには、張大使がタス通信に現れてインタビューに応じてからというもの、以前から中国の陰謀や不誠実な意図について主張していたトランプ大統領は自分の主張を再調整したのである。トランプは当時中国に対して報復すると言って、脅しをかけていたが、それ以降彼は自分の姿勢を改め、土曜日(4月18日)にはホワイトハウスの記者会見で次のように述べた:
「ところで、あなたは中国について怒っているのかとの問いかけを私は受けた。その答えはまさにその通りだと言うしかないが、すべては状況次第だ。あれはすべてが間違いから始まったものであって、コントロールができなくなってしまったとか、故意に行ったものだとか。ね、そうだろう?これらのふたつの状況の間には実に大きな違いがある。どちらにしても、彼らはわれわれが現地を訪問することを受け入れるべきだ。諸君も知っているように、われわれは当初現地入りすることを申し入れたが、彼らはそれを断った。彼らは恥じ入っていたに違いない。あれは非常に悪い状況であることが彼らにはよく分かっていたのだと思うし、彼らはすっかり恥じ入っていたのだと思う。」
トランプは中国側に責任があることはもはや主張してはいない。しかしながら、未解決でもなく、解決済みでもないのだ。
多分、この案件は今や交渉が可能だ。トランプは張大使がインタビューに応じた日の二日後に上記のように喋った。
明らかに、中国大使は新型コロナウィルスの足跡を追跡することは可能であって、科学的に追跡することができることを暗に示したのである。
新型コロナウィルスの祖父母や曾祖父が実際に米国に籍を持っていることが明らかになれば、トランプは深刻な問題を抱え込むことになるだろう。
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これで全文の仮訳が終了した。
実に興味深い内容である。米中間の現実の外交の一コマがわれわれ素人にも分かりやすい形で報じられたのである。しかも、力で押してくる米国の圧力を中国側は科学的な情報によって手際よく押し返したのである。
この記事の最後の文章は秀逸だ。「新型コロナウィルスの祖父母や曾祖父が実際に米国に籍を持っていることが明らかになれば、トランプは深刻な問題を抱え込むことになるだろう」と言っている。
この張中国大使の発言によって中国に関するトランプの毒舌が姿を消したのかどうかは私には知る術もないが、引用記事の著者は「トランプは中国側に責任があることはもはや主張してはいない」と述べている。トランプ大統領が中国ウィルスとか武漢ウィルスといった文言を使わなくなったということのようだ。
われわれ一般人に届く情報は今でもいわゆる中国叩きの路線のままであって、大手メディアに現れる多くの論評はトランプが例の辛辣な文言を控えるようになったなんて一言も報じてはいない。少なくとも、私にはそう思える。それとも、私が気付かなかっただけのことだろうか。
ところで、この引用記事が出てからすでに1カ月だ。大手メディアに関するわれわれの経験則から言えば、多くの場合、彼らは自分たちの筋書に不都合な情報はやっきになってもみ消そうとする。あるいは、完全に無視して沈黙を守ろうとする。この引用記事の内容については、大手メディアは後者の姿勢をとっているようだ。
今後、新型コロナウィルスの祖父母や曾祖父の籍がどこにあるのかに関して米中間でどのようなやり取りが展開されるのか興味が募るばかりである。
興味深いですね。こう言ってはなんですが、面白くなりそうです。紹介されたサイトには他にも読みたくなる記事がいっぱいありますね。
返信削除いつもタイムリーに興味を惹きつける記事を訳してくださってありがとうございます。感謝しています。
kiyoさま
返信削除コメントを有難うございます。こちらこそ感謝です。
新型コロナウィルスに関する報道や解説記事はふたつの陣営が凌ぎを削っており、まさに乱戦模様のような感じがします。私としては中立性をできるだけ保って、少しでも事実の掘り起こしに役立ちたいと思っています。
当地、ブカレストでは外出禁止令が緩和され、次のフェーズに移行しています。依然としてマスクの着用が求められますが、今までの2か月間に比べますと時間制限がなくなったり、どんな目的で外出するのかを示す自己申告書を用意する必要もなくなりました。結構、大きな緩和です。
登録読者のИсао Симомураです.大変知的興味を掻き立てられました.ありがとうございます.北海道の友人宅に落ち着いて,早50日になります.日本での報道は必要以上の恐怖感を引き起こすもののように,小生には映ります.東京や大阪の通勤電車の混雑の放置は,既に多くのひとに集団免疫を形成しつつあるのではないでしょうか.ロシアでは日本の「三密」は徹底的に排除されていました.ところで昨日ロシアのテレビで「ノーヴォスチ」(ニュース)を視聴しました.このコロナ禍に関して状態が良い方向にあり,中央政府は7月の第二週から国際線運航の再開を許すとありました.
返信削除シモムラ様
返信削除コメントを有難うございます。
その後もお元気にお過ごしの様子を伺い、嬉しく思っております。今、北海道に滞在ですか。もう桜の季節は過ぎたでしょうか?早く航空便が再開されるといいですね。
日本では外出規制を法的に行使させることは出来なかったので、通勤する人の数はかなり多く、集団免疫がかなり進んでいるのではないでしょうか。米国が嫌うスウェーデン方式を暗に実施していたということかも知れませんね。
ブカレストでは通常ならばヨーロッパ圏(たとえば、ウィーン)で一回の乗り継ぎで日本へ帰国することができますが、現時点では2回の乗り継ぎで何とか帰国可能といった状況のようです。当国の航空便の規制は少なくともさらに1カ月は続くみたい。ルーマニア政府は、昨日、緊急事態から警戒事態へと規制のランクを下げました。これによって65歳以上の市民の外出時間帯が解除され、外出の目的を記述した自己申告書の携行は不要となりました。閉鎖空間でのマスクの使用義務は続きます。総じて、個人レベルでは気分的に大きな変化です。
何はともあれ、お健やかな毎日を過ごされますよう祈願しています。
今日もいい一日を!