2016年8月22日月曜日

仲間のアメリカ人たちよ、私たちはどうしようもない馬鹿者だ!



どこの社会を取り上げてみても驚かされることがある。社会を構成する個人には素晴らしい見識を持った人たちや頭が下がるような行動をする人がたくさん居るにもかかわらず、そういった個人の集合体である社会あるいは国家は果たしてどうかと言うと、まるでなってはいないことがある。この落差はいったい何処から生じるのだろうか?

今の国際情勢、特に、シリア情勢とかウクライナでの内戦を見ながらそのようなとりとめのない思いに浸っている時、ひとつの記事 [1] が目についた。米国の大統領選に絡んだ記事である。

上記の疑問に対して直接の答えになるわけではないとしても、同じ感慨をもっている人がこの世の中に少なからず存在することを知って、何だか意を強くした。この記事をご紹介することによって読者の皆さんにも物の考え方や何らかの行動を起こす上でのヒントになれば幸いである。

本日はその記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたい。


<引用開始>

本日の夕方のことだ。米民主党の全国大会 [訳注:全国大会は725日から28日までであったから、この記事は最終日の様子に関するものであろう] を見てから、私はここに何らかの説明をしてみたい気持ちに駆られている。あの党大会は私の友達の多くに冷笑をもたらしたに違いない。さまざまな言葉が私の喉を詰まらせ、胃袋を捩り、ひどくムカムカしている。これはもう吐き出してしまうしかない。私の心の中にある反米感情は今にも爆発しそうで、私の憤怒は理性を超えて何処かとんでもない場所に落下しそうな気配だ。私は半分がアメリカ人として生まれた。このことが、本当のアメリカ人である先住民を除けば、この国の誰と比べてみても私を「より以上に」米国人らしくさせていたのではあるが、今宵こそは、私はあなた方と同じアメリカ人であることを全面的に拒否したい。

私は半分がカナダ人だ。私は彼の地で育ち、アメリカ人の皆さんとはまったく違う価値観を持っている。そして、今晩、米国の軍国主義の偉大さを際限なく吐露し、自慢し、大袈裟に喋り、米国の軍事力を賞賛し、ISISを一掃することや米国は地球上で軍事的に最強の国家であることについて得意気に話す様子を目にし、オバマの戦争で息子を亡くした女性がオバマ大統領の肩で泣かせて貰ったことに感謝していると言った・・・というひどく無意味な物語を聞かされもした。こうして、今晩、私は心底からカナダ人であると感じている。国境越しにもたらされるガキ大将振りや彼らの傲岸さからは、その都度、些細ながらも有用な教訓を無意識的に学びとって来た。そして、彼らの教育の無さや他国の人たちが自国内に有している物でさえも何でも手に入れようとし、それ以外には何の理由もなしに他国を爆撃する権利を自分に与えてしまうことについても然りだ。さらには、彼らの金銭欲だ。これらすべてのことが、今、私の意識の表面に顔を現して来ている。

遠くに連なる山々の景観が私を自分の魂のどこかにある筈の良識と再び結びつけてくれるかも知れないという期待を抱いて、私は当地モンタナ州を流れるイエローストーン川の流域をやたらと歩き回って、今帰って来たばかりだ。しかし、何も見つからなかった。目に入る景色は何時ものように実に見事で、素晴らしいものであった。しかし、私の心の奥深くに横たわっている憤怒にはとても届きそうにはなかった。シリアで殺害された子供たちの光景。ヒラリー・クリントンはこれらの子供たちの殺害に手を貸したのだ。アフガニスタンやパキスタンではオバマのドローン作戦によって子供たちが爆撃の巻き添えとなって、バラバラになっている。リビアにおける身の毛もよだつような無秩序振り。イラクは荒廃の地と化した。米軍の介入によって至る所で死と破壊がもたらされた。ウクライナ、エルサルバドル、グアテマラ、チリ・・・と、枚挙にいとまがない。あなた方の国、米国はこれらの国々を爆撃し、必要最低限のやり方で市民生活を破壊した。

アメリカ人のすべてがウェルズ・ファーゴー・センターで軍隊に声援を送り、話し手が武力を表明する度に皆が喝采しているのを聞いた時、私はあなた方に嫌悪感を覚えた。あなた方の一人一人を憎んだ。私が子供の頃に教えられたことは本当なんだ。「あなた方」は敵なんだと直感した。「あなた方」の国こそ敵として警戒しなければならないんだ。「あなた方」は無知だ。そして、「あなた方」の金銭欲や自己満足ならびに労せずして得た自尊心にはまったく際限がない。

今宵、私はもうアメリカ人ではない。私は1648年にこの地に上陸した私の清教徒の先祖を棄却する。私は市民権を得た時にお祝いの式典で私が口にした文言を棄却する。私にはこの国でゾクゾクするような発見をした瞬間が幾度もあったが、私はそのすべてを棄却する。

あなた方は自分たちの銃や爆弾、兵士たち、数知れない軍部の指導者、戦争犯罪者、そして人を殺し、良心のかけらもないあなた方の最高指揮官について自慢しているのを聞いて、他国の市民はいったいどんな思いを抱くのだろうかなんてこれっぽっちも考えることはない。それらの高邁な言葉はすべてが残りの我々によって、我々のような非アメリカ人によって、さらには、我々の体の中のすべての細胞によって、完全に不快なものとして、常識からまったく逸脱したものとして受けとめられる。

あなた方は、今宵、テレビやコンピュータの前で釘付けとなっている。地球上で最強の国に属しているという思いから、あるいは、人殺しを続ける大統領に声援を送って、あなた方の気持ちは自尊心によって大きく膨れ上がっている。しかし、全世界からの反発にはまったくと言っていいほどに無知だ。あちらでも人を殺し、こちらでも人を殺していながら、あなた方は依然として誇りに思っているのだ。

私たちアメリカ人はどうしようもない馬鹿者だ!

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

著者はカナダと米国の国籍を持っている。モンタナ州に住む女優であり、活動家でもある。映画「スーパーマン」ではスーパーマンの恋人役を演じていることから、彼女の知名度は高い。彼女は自分でも言っているように普通のアメリカ人以上にアメリカ人であると自負していた。その本人が「米国嫌い」を公に宣言したのである。彼女の言葉を辿ってみると、本人はもう居ても立ってもいられないほどアメリカ人を嫌悪していることが感じ取れる。

この著者が日頃から感じていたアメリカ人に対する違和感は民主党党大会の最終日に最高潮に達した。カナダ人の価値観をもって育てられた著者の目には、アメリカ国籍をも取得しているとは言え、アメリカ人が見せる行動は本質的にまったく受け入れられない。それはまったく異質のものであることが民主党の党大会の様子を観察することによって明白に浮き彫りされたのだ。

彼女はその理由として、下記のように述べている:

シリアで殺害された子供たちの光景。ヒラリー・クリントンはこれらの子供たちの殺害に手を貸したのだ。アフガニスタンやパキスタンではオバマのドローン作戦によって子供たちが爆撃の巻き添えとなって、バラバラになっている。リビアにおける身の毛もよだつような無秩序。イラクは荒廃の地と化した。米軍の介入によって至る所で死と破壊がもたらされた。ウクライナ、エルサルバドル、グアテマラ、チリ・・・と、枚挙にいとまがない。あなた方の国、米国がこれらの国々を爆撃し、必要最小限の手法で市民生活を破壊したのだ。

大統領選というお祭り騒ぎは国を挙げての政治的欺瞞のショウである。このショウには大勢の観客がいる。全米から集まった有権者のすべてを興奮の渦に巻き込み、テレビやコンピュータの前で党大会を観ている庶民を洗脳し、世界各国に対してさらなる軍事的覇権を確実にするためのひとつの演出の場として大統領選が用いられている、とこの著者は言いたいようだ。

特に、911同時多発テロ以降の米国の対外政策は失敗の連続であることを考えると、この著者が訴えたいことは私にもよく分かる。米国の有権者を深い眠りから呼び覚ましてやりたいのだ。

ところで、「米国の近年の対外政策は失敗の連続である」という指摘についてはもっと厳密に述べておく必要がありそうだ。

これは最大級の皮肉ではあるが、米国の軍産複合体にとっては911同時多発テロ以降の米政府の対外政策は大成功であったに違いない。東西の冷戦が終結してからというもの、軍需が低迷し、軍需関連企業の売り上げは大きく減退したと言う。しかし、これらの軍需企業は911同時多発テロを境にして盛況を極めるようになった。例えば、ジョージ・ブッシュ政権で副大統領を務めたディック・チェイニーが元CEOであったハリバートン社はイラク戦争を通じて大儲けをした。

しかし、中東での一連の軍事作戦、つまり、軍事的な大浪費のサイクルが一巡したかに見える今、次は何か?ロシアや中国を相手にする新冷戦が始った。中東諸国よりもはるかに大きな相手だ。多分、もっと長持ちがするだろう。

8億ドルを投じたミサイル防衛システムがルーマニアに設置され、今年の5月以降稼働している。これと同一のミサイル防衛システムが2018年にはポーランドにも設置される予定だ。これらの施設の設置・稼働後は改善に次ぐ改善が待っていることだろう。こうして、米国の軍需関連企業はほくそ笑んでいるに違いない。しかしながら、これらは巨大な氷山のほんの一角でしかない。核兵器の近代化では3桁も大きい1兆ドルの予算化が待っている。

しかし、これらの政策を人間中心に見ると、様変わりとなる。米国が採用した対外政策は明らかに大失敗である。しかも、最悪である。米国はあちらでも人を殺し、こちらでも人を殺している。世界にとっての最大の不幸は、上記に引用したカナダ人の女優が述べているように、米国人は自分たちのこの現状に気付いてはいない、あるいは、気付こうとしてはいないことであると言えよう。

米国社会の内部からの発言は今さまざまな形で行われている。もっとも大きな受け皿は独立心が旺盛な代替メディアだ。誤解を恐れずに言えば、残念なことには、大手の商業メディアはジャーナリズムの基本的な機能においては何の役にもたってはいない。何故ならば、大手メディアは自分たちの筋書き(ネオコン的、ネオリベラリズム的、あるいは、アングロ・ザイオ二スト的な思考)に逆らう情報は報道しようとはしないからだ。こうして、全米規模での情報コントロールが行われている。一般市民はそれに気付かない。あるいは、毎日の生活に追われていて、代替メディアから入手可能な情報を検索する暇なんてないのだ。

この前の投稿では米国内に住み、米国で仕事をしている4人のロシア人の発言をご紹介した。今回はカナダと米国の両方の国籍を持ち、カナダ育ちの女性が民主党の全国大会で感じた率直な印象をご紹介した。これらふたつの声の共通項は軍産複合体の利益のためにあまりにも偏っている今の米国の政策に対する批判であり、大多数の米国人の行動に対する失望であり、また、武力を背景に世界中で覇権を維持しようとするあまり、人間の尊厳をすっかり忘れてしまっている米国の対外政策に対する憤怒である。

私は米国社会がまったく駄目だと言っているわけではない。米国で17年間生活をしてみて、米国には日本社会にはないいい点がたくさんあることをその間に肌で感じた。しかしながら、ここでご紹介したカナダ人の意見のように、悪い点について例を挙げようとすると限りが無いのだ。残念ながら、今や、悪い点が目立ちすぎる。それが米国の今日の姿だ。

その最たるものはネオコン派政治家や多国籍企業ならびに巨大銀行が推進し、大手メディアが支援し喧伝している米国至上主義であり、ネオリベラリズムであり、米国の覇権を維持するための米軍やNATOの専横振りである。外交交渉をないがしろにして、武力に訴えようとする行動は余りにも傲慢である。その結果、最近の1年から2年の間に急速に拡大している究極的な懸念は米ロ間の核戦争である。


参照:








2016年8月16日火曜日

ロシア人たちからの警告



米国に住み、米国で仕事をしているロシア人は多い。

このブログでご紹介した記事の総数は、お陰様で、今や決して少なくはない(この原稿を投稿すると、総数は228件となる)。それらの投稿が引用する記事の出処や著者には、クラブ・オルロフとかザ・セイカー、あるいは、アンドレ・ヴルチェクといったロシア系の米国人が何人もいる。単なる偶然かも知れないが、興味深いことには彼らが提供する意見や論評は一味も二味も違うのである。

クラブ・オルロフを主宰するドミトリー・オルロフが他の著名なロシア系アメリカ人たちを誘って、現在の米政府やNATOが繰り広げている反ロシア・反中国の外交・軍事政策を批判する公開状をインターネット上に掲載した [1]6月の始めのことだ。

本日はこの公開状を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

好むと好まざるとにかかわらず、読者の皆さんの多くは西側の主張や世界観については十分に理解しているとしても、ロシア人あるいはロシア系米国人の物の見方に関してはそう詳しくはないのではないか。少なくとも、私自身についてはそう言える。要するに、今までの数十年間にインプットした情報量が桁違いに異なるからだ。米ロ間の新冷戦が色濃くなる中、核戦争を抑止するには、ロシアを少しでも多く、かつ、深く理解することが我々一般庶民にとっても重要な課題であると私は考える。少なくとも、議会性民主主義が維持され、選挙によって議員が選出されている間は非常に大切なことである。

西側のネオコン連中や軍産複合体が何時の日にかロシア脅威論を捨てるだろうと期待することは大きな間違いだ。すでに進行している新冷戦は遅かれ早かれさらに深化し、最後には偶発的な出来事、システムの誤作動、あるいは、何らかの人的ミスをきっかけにして米ロ間の戦争になってしまうかも知れない。その場合、究極の懸念は不可逆的な結末をもたらす全面的な核戦争である。

私自身がもっとも興味深く感じるのは、そういった一連の筋書きを回避するための提言として、これらの共著者は自分たちの意見を公開することに踏み切った点にある。

米国社会に住み、仕事をしていて、彼らは米国の対外政策に関してそれだけ切羽詰まった雰囲気を感知しているということだ。今年は米国では大統領選の年でもある。この公開状は米国社会の政治や外交・軍事政策を決定する中枢(つまり、ネオコンや軍産複合体に牛耳られている勢力)やトップの考え方を批判するだけではなく、軍事力に依存する覇権国家という、基本的には他人の意見を受け入れようとはしない閉鎖的な物の考え方に浸り切っている、金太郎飴のように同じ意見を述べるしかない一般大衆の世界観を打ち崩そうとする試みでもある。

ヨーロッパにおいては、過去2年間以上の米国主導の対ロ経済制裁ではヨーロッパ各国は明らかにロシア以上に自分たちが経済的損害を受けている。ロシアへの食品輸出が出来なくなり、多くの生産者は経済的打撃を受けた。一般大衆は西側のプレスティチュートが喧伝する反ロ・キャンペーンや情報の歪曲にすっかり嫌気を感じている。最大の皮肉は、ヨーロッパが再び米国のために戦場となるかも知れないという点だ。こんな状況はまったく望んではいないヨーロッパの一般大衆にとっては、ロシア人の著者たちの提言は自分たちが日頃感じている点を上手く代弁するものとして映るのではないか。

1年前に比べて、第三次世界大戦の危険性を指摘する識者や専門家の数は非常に増えている。これが毎日のようにインターネット上で英語世界の情報を検索しようとしている私の率直な実感だ。


<引用開始>

下記に署名をする我々は米国に住み、米国で仕事をしているロシア人である。米政府とNATOは現在ロシアや中国と正面からぶつかるような非常に危険な政策を展開していることから、それらを目にしている我々の懸念は高まるばかりだ。数多くの尊敬すべき、愛国的な米国人、たとえば、ポール・クレイグ・ロバーツやスティーブン・コーエン、フィリップ・ジラルディ、レイ・マクガバン、そして、他にも多数の識者らが迫りくる第三次世界大戦の危険性を指摘している。しかしながら、彼らの発言はことごとく虚偽や不正確な記述が満載されているマスメディアによってかき消されてしまう。これらのマスメディアはロシア経済は最悪の状態にあり、ロシア軍は弱体だと言う。しかし、何の証拠も示さない。ロシアの歴史、ならびに、ロシア社会やロシア軍の現状を十分に理解している我々はこれらの嘘を鵜呑みにすることは出来ない。我々は、米国に住んでいるロシア人として、米国の一般大衆には虚偽の情報が流されている事実を皆に告げ、真実の情報を皆に伝えることが自分たちの責務であると信じている。真実というものは単純だ。それを下記に示そう: 

もしもロシアとの戦争が起こるとすれば、米国は多分間違いなく
敗退することだろう。そして、我々の大部分は結局死亡することだろう。

ここで、一歩退いて、歴史的な文脈からはどのようなことが起こり得るのかを考察してみよう。第二次世界大戦においては、ロシアは外国からの侵略者のせいで大きな損害を被り、22百万もの人命を失った。国土が侵略されたことから、死者の多くは一般市民であった。ロシア人はこのような惨事を二度と許さないと誓っている。しかし、ロシアは侵略される度に勝利を手にした。1812年、ナポレオンがロシアを侵略した。1814年にはロシアの騎兵団がパリへ乗り込んだ。1941622日、ヒトラーの空軍がキエフを爆撃した。194558日にはソビエト軍がベルリンへなだれ込んだ。 

しかし、あれ以降、時代は変わった。もしも、今日、ヒトラーがロシアに侵攻しようとしたならば、彼は20分か30分後にはもう死亡していることだろう。彼の地下指令所はバルト海の何処かにいるロシア海軍の小さな艦艇から発射された超音速カリブル・クルーズ・ミサイルによってがらくたと化しているだろうからだ。新しいロシア軍の作戦能力はシリアで行動しているISISやアル・ヌスラ、ならびに、外国から資金を得て活動している他の武装組織に対して行われた最近の空爆によって非常に説得力がある形でその威力を示した。以前はロシアは自国の領土内で地上戦を戦うことによって外部からの挑戦に対抗しなければならなかった。これはもう大分前の話である。今は、このような戦いは必要ない。ロシアの新しい武器は瞬時に反撃を行い、敵に探査されることも仰撃されることもなく、間違いなく敵を殺害する。

こうして、もしも、明日、米国とロシアとの間で戦争が始まるとしたら、米国は確実に壊滅する。最低の損害の場合であっても、送電網は破壊され、インターネットは使えず、ガソリンも天然ガスも途絶え、州間高速道路網は分断され、空路は閉ざされ、GPSを用いる飛行はすべてが中断される。金融センターは廃墟と化す。政府はそのすべてのレベルで機能が停止する。世界中に配備された米軍への再補給はもはや不可能となるだろう。また、高レベルの損害が起こる場合には、米国のすべての国土は放射性降下物で蔽われることになるだろう。我々は警告者として皆さんに警告しようとしているのではない。我々自身が知っている事実に基づいて、自分自身に向かって警告しているのだ。攻撃された暁には、ロシアは引っ込んではいない。ロシアは反撃し、米国を徹底して破壊するだろう。

米国の指導者は大破滅が起こる寸前になるまで状況を押しやろうとして、出来ることは何でもやってきた。先ず、米国が取ったさまざまな反ロ政策はロシアの指導者にこう思わせている。つまり、西側に譲歩をしたり、西側と交渉をすることは無益なことだ・・・と。西側はどんな個人であろうとも、どんな動きであろうとも、どんな政府であろうとも、もしそれが反ロ的でありさえすれば、それを支援した。脱税をしようとしたロシア人の富豪から始まって、有罪となったウクライナ人戦犯、サウジからの財政支援を受けたチェチンのテロリスト、そして、モスクワの聖堂を汚したパンク集団に至るまでだ。NATOは前に交わした約束を破って、ロシアの国境にまで拡大し、米軍をバルト諸国に配備し、ロシアで二番目に大きな都市であるサンクト・ペテルスブルグは今や砲弾が届く距離となっている。ロシア人はもう何処かへ退却することさえも出来ない。ロシア人は他国を侵略しようとはしない。そうかと言って、決して引き下がったり、降伏したりもしない。ロシアの指導者は80パーセントを超す支持率を持っている。残りの20パーセントは西側が近づいてくることに反対するには弱すぎると感じている。しかし、ロシアは反撃する。ロシアに対して挑戦をしたり、何らかの間違いが起こると、それが引き金となって一連の出来事が連鎖し、何百万人もの米国人に死をもたらし、米国は廃墟と化すことだろう。

戦争を何か興奮させるようなものとして見なしたり、外国で勝利を実現する冒険事として見ようとする米国人とは違って、ロシア人は戦争を嫌い、戦争を恐れる。しかしながら、それと同時に、戦争を遂行する用意はできている。彼らはすでに何年間も戦争のための準備をしてきた。ロシア人の準備は非常に効率がいい。F-35ジョイント・ストライカー・ファイターのような怪しげで、過剰な値札が付けられた戦闘機プログラムへ莫大な資金を注ぎ込んでいる米国とは違って、ロシア人は国防予算には非常にケチで、膨大な予算を使う米国の軍需産業と比べたら同一の金額で10倍もの効果を引き出そうとする。ロシア経済は原油価格の低迷によって苦労しているのは事実だけれども、その現状はロシア経済が最悪の状態にあるという描写からは程遠く、来年の経済は成長へと一転することが予測されている。ジョン・マケイン上院議員はかってロシアを「国家の仮面をかぶったガソリンスタンド」と称したことがある。彼は嘘ぶいたのだ。確かに、ロシアは世界で一番大きな産油国であり、二番目に大きな原油輸出国である。しかし、ロシアは世界で最大の小麦ならびに原発技術の輸出国でもある。ロシアは米国と同じように進歩した、高度に発達した社会である。ロシア軍は通常兵器と核兵器の両分野において戦う準備ができている。特にロシアの国境付近で戦争が勃発した場合には、ロシア軍は米国およびNATOの競争相手には留まらず、それ以上の遥かに大きな実力を示すことだろう。

しかし、そのような戦いは両者にとっては自殺行為となる。ヨーロッパにおける通常兵器による戦争は急速に核戦争へと深化し、米国・NATOがロシア軍やロシア領土への核攻撃を行った場合には、それは自動的に米国に対する核兵器によるロシア軍の反撃を招くだろうと我々は確信する。宣伝に従事する何人かの米国人が発する無責任な発言とは矛盾して、米国の弾道ミサイル防衛システムは米市民をロシアの核攻撃から防護することは出来ない。ロシアは長距離核ミサイルだけではなく、通常兵器においても米国内の目標を攻撃する手段を有している。

広範囲にわたる国際的な問題に関して緊張を和らげ、協力しようとするのではなく、米ロ両国が正面衝突をする軌道上にある唯一の理由は米国の指導者がロシアを対等のパートナーと見なすことをかたくなに拒否していることにある。つまり、ワシントン政府は、イラクやアフガニスタン、リビア、シリア、イエメンおよびウクライナにおける一連の外交や軍事面での失敗の後、その影響力が鈍化しているにもかかわらず、「世界の指導者」および「不可欠の国家」であることを死守しようとしているからである。米国が引き続き世界の指導者として存在することはロシアや中国ならびに他の諸国の殆んどにとっては諸手を挙げて受け入れようとする事柄ではないのだ。このゆっくりとした、しかしながら、明白な権力や影響力の喪失は米国の指導者らをヒステリックにした。そして、これはヒステリックな状態から自殺行為へと辿る小さな一歩でもある。米国の政治指導者らは自殺行為の監視下に置かなければならない。

何よりもまず、米軍の司令官たちに訴えたい。皆さんはウィリアム・フォーロン提督の事例を追跡してみて欲しい。イランとの戦争に関して質問をされた時、報道によれば、同提督は「私の役割ではない」と答えた。あなた方が自殺志向なんて持ってはいないということ、ならびに、実態とはすっかりかけ離れた帝国主義者特有の尊大さのために自分の命をかけようなんて思ってはいないことを我々はよく承知している。もし可能ならば、どうかあなた方の参謀や同僚、そして、特に非制服組の上司に対して、あなた方がその役割についている限りはロシアとの戦争は決して起こさないと告げて欲しい。最低限でも、自分のためにそう誓って欲しい。自殺的な命令が下される日が来たら、それは犯罪であることを理由にその命令を実行することを拒否して欲しい。ニュルンベルグ法廷によれば、侵略戦争を始める・・・という行為は国際犯罪であるだけではなく、それには組織全体で蓄積された悪が含まれるという理由から、それは他の戦争犯罪とは異なって、より悪質な戦争犯罪となることを覚えておいて欲しい。ニュルンベルグ裁判以降、「私は命令に従っただけだ」という主張はもはや有効な弁護とはならない。どうか、戦争犯罪者にはならないで欲しい。

また、米国の市民にも訴えたい。ロシアを戦争に引っ張り込もうとし、1時間以内には米国を破壊する能力を持っている核大国と不必要な武力対決をする政策を許し、それらを支援する無責任で好戦的な行為にどっぷりと浸かっている政治家や政党に対して反対して欲しい。そのために、平和的で強力な行動を取って欲しい。声を挙げよう。マスメディアによるプロパガンダの障壁をぶち壊して欲しい。そして、同胞の米国人が米ロ両国の間に存在する非常に大きな危険に気付くように手助けをして欲しい。

米国とロシアはどうしてお互いを敵国として見なければならないのかに関しては客観的な理由はない。今起こっている敵対関係は全面的にネオコンたちの狂信的集団が主張する過激主義によってもたらされた結果である。そのメンバーたちはビル・クリントン政権下で連邦政府に潜り込むことを許され、彼らは自分たちの命令に従うことを拒む国家はすべてを敵国と見なし、そういう国家を崩壊させた。彼らの疲れを知らない取り組みによって、前ユーゴスラビア共和国やアフガニスタン、イラク、リビア、シリア、パキスタン、ウクライナ、イエメン、ソマリア、ならびに、その他の国で、百万人を超す無実の市民がすでに死亡している。これはすべてが米国は単なる普通の国家ではなく、世界に君臨する帝国でなけれならない、何れの国でもその指導者は彼らの前に屈服しなければならない、さもなければ政権の座から引きずりおろしてしまうぞ、といった脅迫的な主張のせいである。しかしながら、ロシアにおいてはこの圧倒的な力は最終的には梃でも動きそうもないものに遭遇した。ロシアが我々を破壊する前に、ロシアを強引に引き下がらせなければならない。

ロシアは米国を攻撃しようとは決してしないし、EU加盟国に対しても同様だ、と我々はきっぱり断言することができる。ロシアはソ連邦を再興することにはまったく興味がないし、「ロシアの脅威」とか「ロシアの侵攻」はまったくあり得ない。最近のロシア経済の成功はその多くの部分が以前のソ連邦が依存していた諸々の悪弊から脱皮し、「ロシア第一」という政策を推進したことによって実現されたものだ。しかし、もしもロシアが攻撃を受けた暁には、たとえ攻撃の脅威を受けただけであったとしても、ロシアは一歩も引き下がとうとはしないだろうし、ロシアの指導者は「目をぱちくりさせる」ことなんてない。これはもう確実だ。米国にとっては非常に大きな不幸であると言わなければならないが、ロシア人は自分たちが誓ったことを遂行し、核弾頭を発射する。その攻撃によって引き起こされた破壊から米国が立ち直ることはもはやないだろう。たとえロシアの指導者の全員が米国の第一撃によって殺害されたとしても、いわゆる「死の手」(あるいは、「ペリメーター」システム)が十分な数の核ミサイルを自動的に発射し、地図上から米国を抹殺してしまうことだろう。このような大惨事を防止するために、我々は自分たちの責務を果たすべく全力を尽くしたいと思う。

Evgenia Gurevich, Ph.D.
http://thesaker.ru
 
Victor Katsap, PhD, Sr. Scientist
NuFlare Technology America, Inc.

Dmitry Orlov
http://cluborlov.blogspot.com

The Saker (A. Raevsky)
http://thesaker.is

(ご自分の署名を追加したい方は私宛に電子メールをお送りください。私のアドレスはこの文書のトップにあります。) 

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

平和時に米軍がロシアに対して先制核攻撃をおこなった場合には、ロシアの地下サイロに納められている固定式核ミサイル発射装置は殆んどが破壊されることだろう。しかし、先制攻撃が成功裏に行われたとしても、ロシアの移動式核ミサイル発射装置や外洋に出ている潜水艦から発射される核ミサイルは依然として反撃が可能な戦力として残るだろう。

シリア紛争ではロシア海軍は1500キロも離れているカスピ海上の小さな艦艇から巡航ミサイルを発射し、シリア国内の反政府テロリストの拠点を正確に爆撃した。また、地中海上の潜水艦からも巡航ミサイルが発射された。こうして、ロシア軍はアフガニスタンにおける軍事行動から20数年も経った今、ロシアが有する最新の軍事能力を試す絶好の機会を持つことになった。

そして、非常に興味深いことが起こった。それは米軍の反応である。これらのシリアでのロシアの軍事行動ならびにその成果を目にして、米軍はちょうどその頃ペルシャ湾で行動していた空母集団をインドネシア沖にまで退避させたのである。

シリア紛争の最中に使われたロシア軍の長距離巡航ミサイルや潜水艦からの発射は、とりもなおさず、たとえ米国が先制攻撃を行って、ロシアの固定式ミサイル発射装置を成功裏に破壊し、モスクワに住むロシアの指導者たちが全員殺されたとしても、ロシアの報復攻撃能力は依然として無疵で残され、「死の手」報復攻撃システムが作動して、核ミサイルが米本土を襲う事になることを示唆している。結局のところ、先制攻撃で米国の一人勝ちとはならずに、相互確証破壊が起こる。

このような最悪の事態を是が非でも避けたいとして、引用記事の共著者である米国在住の4人のロシア人は、官民を問わず、さらには、制服組・非制服組を問わず、米国人全員に呼びかけているのである。



参照:

1A Russian Warning: By Dmitry Orlov, The Saker, Victor Katsap and Evgenia Gurevich, "Information Clearing House" - "ClubOrlov"  Jun/02/2016