2016年8月22日月曜日

仲間のアメリカ人たちよ、私たちはどうしようもない馬鹿者だ!



どこの社会を取り上げてみても驚かされることがある。社会を構成する個人には素晴らしい見識を持った人たちや頭が下がるような行動をする人がたくさん居るにもかかわらず、そういった個人の集合体である社会あるいは国家は果たしてどうかと言うと、まるでなってはいないことがある。この落差はいったい何処から生じるのだろうか?

今の国際情勢、特に、シリア情勢とかウクライナでの内戦を見ながらそのようなとりとめのない思いに浸っている時、ひとつの記事 [1] が目についた。米国の大統領選に絡んだ記事である。

上記の疑問に対して直接の答えになるわけではないとしても、同じ感慨をもっている人がこの世の中に少なからず存在することを知って、何だか意を強くした。この記事をご紹介することによって読者の皆さんにも物の考え方や何らかの行動を起こす上でのヒントになれば幸いである。

本日はその記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたい。


<引用開始>

本日の夕方のことだ。米民主党の全国大会 [訳注:全国大会は725日から28日までであったから、この記事は最終日の様子に関するものであろう] を見てから、私はここに何らかの説明をしてみたい気持ちに駆られている。あの党大会は私の友達の多くに冷笑をもたらしたに違いない。さまざまな言葉が私の喉を詰まらせ、胃袋を捩り、ひどくムカムカしている。これはもう吐き出してしまうしかない。私の心の中にある反米感情は今にも爆発しそうで、私の憤怒は理性を超えて何処かとんでもない場所に落下しそうな気配だ。私は半分がアメリカ人として生まれた。このことが、本当のアメリカ人である先住民を除けば、この国の誰と比べてみても私を「より以上に」米国人らしくさせていたのではあるが、今宵こそは、私はあなた方と同じアメリカ人であることを全面的に拒否したい。

私は半分がカナダ人だ。私は彼の地で育ち、アメリカ人の皆さんとはまったく違う価値観を持っている。そして、今晩、米国の軍国主義の偉大さを際限なく吐露し、自慢し、大袈裟に喋り、米国の軍事力を賞賛し、ISISを一掃することや米国は地球上で軍事的に最強の国家であることについて得意気に話す様子を目にし、オバマの戦争で息子を亡くした女性がオバマ大統領の肩で泣かせて貰ったことに感謝していると言った・・・というひどく無意味な物語を聞かされもした。こうして、今晩、私は心底からカナダ人であると感じている。国境越しにもたらされるガキ大将振りや彼らの傲岸さからは、その都度、些細ながらも有用な教訓を無意識的に学びとって来た。そして、彼らの教育の無さや他国の人たちが自国内に有している物でさえも何でも手に入れようとし、それ以外には何の理由もなしに他国を爆撃する権利を自分に与えてしまうことについても然りだ。さらには、彼らの金銭欲だ。これらすべてのことが、今、私の意識の表面に顔を現して来ている。

遠くに連なる山々の景観が私を自分の魂のどこかにある筈の良識と再び結びつけてくれるかも知れないという期待を抱いて、私は当地モンタナ州を流れるイエローストーン川の流域をやたらと歩き回って、今帰って来たばかりだ。しかし、何も見つからなかった。目に入る景色は何時ものように実に見事で、素晴らしいものであった。しかし、私の心の奥深くに横たわっている憤怒にはとても届きそうにはなかった。シリアで殺害された子供たちの光景。ヒラリー・クリントンはこれらの子供たちの殺害に手を貸したのだ。アフガニスタンやパキスタンではオバマのドローン作戦によって子供たちが爆撃の巻き添えとなって、バラバラになっている。リビアにおける身の毛もよだつような無秩序振り。イラクは荒廃の地と化した。米軍の介入によって至る所で死と破壊がもたらされた。ウクライナ、エルサルバドル、グアテマラ、チリ・・・と、枚挙にいとまがない。あなた方の国、米国はこれらの国々を爆撃し、必要最低限のやり方で市民生活を破壊した。

アメリカ人のすべてがウェルズ・ファーゴー・センターで軍隊に声援を送り、話し手が武力を表明する度に皆が喝采しているのを聞いた時、私はあなた方に嫌悪感を覚えた。あなた方の一人一人を憎んだ。私が子供の頃に教えられたことは本当なんだ。「あなた方」は敵なんだと直感した。「あなた方」の国こそ敵として警戒しなければならないんだ。「あなた方」は無知だ。そして、「あなた方」の金銭欲や自己満足ならびに労せずして得た自尊心にはまったく際限がない。

今宵、私はもうアメリカ人ではない。私は1648年にこの地に上陸した私の清教徒の先祖を棄却する。私は市民権を得た時にお祝いの式典で私が口にした文言を棄却する。私にはこの国でゾクゾクするような発見をした瞬間が幾度もあったが、私はそのすべてを棄却する。

あなた方は自分たちの銃や爆弾、兵士たち、数知れない軍部の指導者、戦争犯罪者、そして人を殺し、良心のかけらもないあなた方の最高指揮官について自慢しているのを聞いて、他国の市民はいったいどんな思いを抱くのだろうかなんてこれっぽっちも考えることはない。それらの高邁な言葉はすべてが残りの我々によって、我々のような非アメリカ人によって、さらには、我々の体の中のすべての細胞によって、完全に不快なものとして、常識からまったく逸脱したものとして受けとめられる。

あなた方は、今宵、テレビやコンピュータの前で釘付けとなっている。地球上で最強の国に属しているという思いから、あるいは、人殺しを続ける大統領に声援を送って、あなた方の気持ちは自尊心によって大きく膨れ上がっている。しかし、全世界からの反発にはまったくと言っていいほどに無知だ。あちらでも人を殺し、こちらでも人を殺していながら、あなた方は依然として誇りに思っているのだ。

私たちアメリカ人はどうしようもない馬鹿者だ!

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

著者はカナダと米国の国籍を持っている。モンタナ州に住む女優であり、活動家でもある。映画「スーパーマン」ではスーパーマンの恋人役を演じていることから、彼女の知名度は高い。彼女は自分でも言っているように普通のアメリカ人以上にアメリカ人であると自負していた。その本人が「米国嫌い」を公に宣言したのである。彼女の言葉を辿ってみると、本人はもう居ても立ってもいられないほどアメリカ人を嫌悪していることが感じ取れる。

この著者が日頃から感じていたアメリカ人に対する違和感は民主党党大会の最終日に最高潮に達した。カナダ人の価値観をもって育てられた著者の目には、アメリカ国籍をも取得しているとは言え、アメリカ人が見せる行動は本質的にまったく受け入れられない。それはまったく異質のものであることが民主党の党大会の様子を観察することによって明白に浮き彫りされたのだ。

彼女はその理由として、下記のように述べている:

シリアで殺害された子供たちの光景。ヒラリー・クリントンはこれらの子供たちの殺害に手を貸したのだ。アフガニスタンやパキスタンではオバマのドローン作戦によって子供たちが爆撃の巻き添えとなって、バラバラになっている。リビアにおける身の毛もよだつような無秩序。イラクは荒廃の地と化した。米軍の介入によって至る所で死と破壊がもたらされた。ウクライナ、エルサルバドル、グアテマラ、チリ・・・と、枚挙にいとまがない。あなた方の国、米国がこれらの国々を爆撃し、必要最小限の手法で市民生活を破壊したのだ。

大統領選というお祭り騒ぎは国を挙げての政治的欺瞞のショウである。このショウには大勢の観客がいる。全米から集まった有権者のすべてを興奮の渦に巻き込み、テレビやコンピュータの前で党大会を観ている庶民を洗脳し、世界各国に対してさらなる軍事的覇権を確実にするためのひとつの演出の場として大統領選が用いられている、とこの著者は言いたいようだ。

特に、911同時多発テロ以降の米国の対外政策は失敗の連続であることを考えると、この著者が訴えたいことは私にもよく分かる。米国の有権者を深い眠りから呼び覚ましてやりたいのだ。

ところで、「米国の近年の対外政策は失敗の連続である」という指摘についてはもっと厳密に述べておく必要がありそうだ。

これは最大級の皮肉ではあるが、米国の軍産複合体にとっては911同時多発テロ以降の米政府の対外政策は大成功であったに違いない。東西の冷戦が終結してからというもの、軍需が低迷し、軍需関連企業の売り上げは大きく減退したと言う。しかし、これらの軍需企業は911同時多発テロを境にして盛況を極めるようになった。例えば、ジョージ・ブッシュ政権で副大統領を務めたディック・チェイニーが元CEOであったハリバートン社はイラク戦争を通じて大儲けをした。

しかし、中東での一連の軍事作戦、つまり、軍事的な大浪費のサイクルが一巡したかに見える今、次は何か?ロシアや中国を相手にする新冷戦が始った。中東諸国よりもはるかに大きな相手だ。多分、もっと長持ちがするだろう。

8億ドルを投じたミサイル防衛システムがルーマニアに設置され、今年の5月以降稼働している。これと同一のミサイル防衛システムが2018年にはポーランドにも設置される予定だ。これらの施設の設置・稼働後は改善に次ぐ改善が待っていることだろう。こうして、米国の軍需関連企業はほくそ笑んでいるに違いない。しかしながら、これらは巨大な氷山のほんの一角でしかない。核兵器の近代化では3桁も大きい1兆ドルの予算化が待っている。

しかし、これらの政策を人間中心に見ると、様変わりとなる。米国が採用した対外政策は明らかに大失敗である。しかも、最悪である。米国はあちらでも人を殺し、こちらでも人を殺している。世界にとっての最大の不幸は、上記に引用したカナダ人の女優が述べているように、米国人は自分たちのこの現状に気付いてはいない、あるいは、気付こうとしてはいないことであると言えよう。

米国社会の内部からの発言は今さまざまな形で行われている。もっとも大きな受け皿は独立心が旺盛な代替メディアだ。誤解を恐れずに言えば、残念なことには、大手の商業メディアはジャーナリズムの基本的な機能においては何の役にもたってはいない。何故ならば、大手メディアは自分たちの筋書き(ネオコン的、ネオリベラリズム的、あるいは、アングロ・ザイオ二スト的な思考)に逆らう情報は報道しようとはしないからだ。こうして、全米規模での情報コントロールが行われている。一般市民はそれに気付かない。あるいは、毎日の生活に追われていて、代替メディアから入手可能な情報を検索する暇なんてないのだ。

この前の投稿では米国内に住み、米国で仕事をしている4人のロシア人の発言をご紹介した。今回はカナダと米国の両方の国籍を持ち、カナダ育ちの女性が民主党の全国大会で感じた率直な印象をご紹介した。これらふたつの声の共通項は軍産複合体の利益のためにあまりにも偏っている今の米国の政策に対する批判であり、大多数の米国人の行動に対する失望であり、また、武力を背景に世界中で覇権を維持しようとするあまり、人間の尊厳をすっかり忘れてしまっている米国の対外政策に対する憤怒である。

私は米国社会がまったく駄目だと言っているわけではない。米国で17年間生活をしてみて、米国には日本社会にはないいい点がたくさんあることをその間に肌で感じた。しかしながら、ここでご紹介したカナダ人の意見のように、悪い点について例を挙げようとすると限りが無いのだ。残念ながら、今や、悪い点が目立ちすぎる。それが米国の今日の姿だ。

その最たるものはネオコン派政治家や多国籍企業ならびに巨大銀行が推進し、大手メディアが支援し喧伝している米国至上主義であり、ネオリベラリズムであり、米国の覇権を維持するための米軍やNATOの専横振りである。外交交渉をないがしろにして、武力に訴えようとする行動は余りにも傲慢である。その結果、最近の1年から2年の間に急速に拡大している究極的な懸念は米ロ間の核戦争である。


参照:








5 件のコメント:

  1. いつも大変有益な論文のご紹介有り難うございます。英語が苦手な者にとっては、大変貴重なサイトです。長く続けられますことを願っております。

    何回か前のヴルチェクの文章の時に書こうと思ったのですが、昨年、小生が読んだ本の中で印象深かったのが彼とチョムスキーの対談本、邦題「戦争のからくり」です。何故か英語版は無料で読めます。
    http://www.shadowsgovernment.com/shadows-library/On%20Western%20Terrorism%20-%20From%20Hiroshima%20To%20Drone%20Warfare%20(with%20Andre%20Vltchek).pdf
    この冒頭で、アンドレが「第二次世界大戦後の世界では、5000万から5500万とも言われる数の人々が西側諸国の植民地主義や新植民地主義の結果、亡くなっています。この比較的短い間に、人類史上、最大とも言える虐殺がおこなわれてきました。、、、、」と述べたのに対し、チョムスキーもこれに応じ、アメリカにおける先住民虐殺の例を引いています。僕は、この5000万という数字は大変重要だと思うのです。よくヒトラーがユダヤ人600万人殺したと言われますが、(田中宇氏によればこの数字も怪しい)これは過去のことであり一応、決着のついたことですが、5000万については現在進行形でありこの数字がどんどん加算されている世の中に我々は生きていると思います。この5000万の内訳明細等、根拠も示されてないので、これは是非知りたいところです。どなたか教えて下さい。チョムスキーも否定はしていないのでそれなりの数字だと思っています。

    僕は最近思うのですが、ヒトラーもアメリカに比べれば全くの小物小悪だなと。ヒトラーの権力基盤は暴力もあったのでしょうが、基本は大衆の支持があったことだと思います。国内経済政策は非常に理に適ったもので、恐慌を克服し大衆に経済成長の配当が渡ったという成功無しには政権運営はできなかったと思います。「ユダヤ撲滅」「スラブ奴隷化」政策も自身の著作通りに行ったことですから分かり易い。(勿論、容認できることではありませんが)これに対しアメリカは、「大正義」の国であり、「自由」と「民主主義」が建国時から現在、未来に至るまで完全に保証された国である。(こう思っているのが一般的な西側の人間ではないでしょうか。特に日本では)この人類の模範とされている国が「人類史上、最大とも言える虐殺」を行ってきて、現在も実行しているのですから僕にはこれ以上の悪を想像出来ません。

    この大いなる偽善とでも言うべき欺瞞、悪辣さは何に由来するのか考えるのですが、僕はアングロサクソンの文化自身に内包されたものがあるような気がしてなりません。交易に平気で麻薬を商品として用いたり(これは現在も)、アパルトヘイト或いは人種差別も大陸よりもアングロサクソン地域での方が苛烈ではなかったでしょうか。これが何かは小生程度の知能の及ぶところではありませんが、この点を明確に指摘できれば何らかの歴史の前進があるような期待を抱いています。

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    1. 石井鶏児さま

      コメントを有難うございます。

      私自身も貴兄の問いに答えるだけの知識を持っているわけではありませんが、貴兄がここに記された懸念や疑問には全面的に同感する者の一人です。

      アングロサクソン文化の影響に加えてもうひとつはユダヤ思想が関係しているのではないでしょうか。これらの融合によって排他的エリート意識が非常に強い「アングロ・ザイオニスト」思想が生まれ、世界の覇権国たる米国はネオリベラリズムや例外主義へと邁進して行った。

      しかし、今後これが続くかどうかについては、今や、不透明さが増しつつあります。まだまだ予断は許しませんが、トルコの今後の動向、ならびに、中国やロシア、イラン、インド、等の動きによっては今の世界に地殻変動が起こるかもしれません・・・

      どうなることでしょうか?

      WWII後の世界ではさまざまな内戦が起こっています。個々の内戦には米国が陰に陽に関与しました。インターネットで入手可能なデータを収録してみました。下記に纏めてみます。

      朝鮮戦争(国連軍や米軍を含む):   637万人
      ベトナム戦争                817万人
      アフガニスタン、イラク、リビア、シリア    400万人
      ルアンダ内戦                  100万人
      アルジェリア内戦                 10万人
      ナイジェリア内戦                200万人
      カンボジア内戦                 122万人
      バングラデシの分離              100万人
      アフガン内戦(ソ連の介入)          150万人
      スーダン内戦                  150万人
      中国:国共内戦                 100万人
      イラン・イラク戦争                110~140万人

      合計すると  2,899~2,939万人

      注:アフガン内戦の犠牲者数(150万人)がアフガニスタン・イラク・リビア・シリアの犠牲者総数(400万人)に含まれているのかどうかの検証はできてはいません。

      上記の総計は大雑把に言うと、約3千万人です。他の事例、たとえば、南米での政権転覆に絡む軍事介入を加算しますと、100万のオーダーで増えてくるような気がします。

      これら以外にもたくさんの内戦や紛争があります。ウクライナ紛争での犠牲者数は9000人を超したと言われていますが、上記の事例とは1桁も2桁も違います。パレスチナ紛争も然りです。(勿論、数が少ないからと言って米国が行っている行為の罪の深さが軽減するわけではありませんが)

      軍事作戦と両輪となっている経済制裁等によっても犠牲者が出ます。その究極は飢餓です。食糧は全体で見れば余っていると言われていますが、資本主義の社会では対価を支払わない限り、非常に冷淡です。億万長者の寄付であったり、国連による支援がないと、何も動きません。つまり、飢餓も戦争と並んで資本主義社会の犠牲者であると言えるのではないでしょうか。

      中国(1960-1961)    2,000万人
      ナイジェリア(1968)       150万人
      サハラ砂漠以南(1968)    10万ー20万人
      インド(1972-1973)     100万人
      セネラル、スーダン(1982)  300万人
      スーダン(1989)         25万人
      これらの飢餓の犠牲者の合計:    2,615万人
        
      上記のふたつの総計を加えますと5,500万超となります。

      ということで、この総計は数値の上ではヴルチェクが述べた数値とかなり近いですが、個々の数値の精度はばらばらだろうと推察します。

      忌憚のないご意見をお待ちしています。

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  2. 石井さま

    もうちっと付け足してみます。

    WWII後の戦争による犠牲者数は算出が結構やっかいですね。

    ふたつ目の試みとしてウィキペデイアの「List of wars by death toll」を活用して集計してみました。このリストは数多くの戦争を網羅している点が素晴らしいです。総計としては、19,875,986人となりました。つまり、約2千万人です。なお、この計算では範囲で示されている数値の場合は中央値を採用しています。しかしながら、中央値が正解であるかどうかは保証できません。

    どの研究者の値を採用するかによって、数値は2倍になったりします。

    結局、石井さんが疑問にしている「5千万人」の裏付けはこのふたつ目の試算では不成功に終わっています。

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  3. ご丁寧なご回答ありがとうございます。実は小生、片田舎の零細工場で汗して働く作業員でして、凡そ知的雰囲気とは隔絶した環境で生まれて此の方生活しております。ですから、こうして自分の書いた文章に何等かの反応をいただけるのは大変刺激になり、自分の思考も進む気がして嬉しく思います。

    紛争犠牲者数の集計ありがとうございます。ヴルチェクの前掲書を再読して、その中で具体的数字に言及しているところを探してみました。
    2010前後 コンゴ東部 600~1000万人
    1970年代 カンボジアラオス 数百万
    1965 インドネシア 300万人
    これ以外にも、アメリカの侵略のあからさまな例として、中南米の紛争をいくつか挙げています。彼は、「私は統計学者の協力を得て、第二次世界大戦後、植民地主義や新植民地主義の結果としてどれだけの人が亡くなったかを推計しています。、、、、」と述べていますが、その裏付けについては全く語っていません。メールで連絡取れるなら、質問してみた方が良いかも知れませんね。

    「アメリカ、及び西側諸国の責任で戦後5000万から5500万人殺された」と言っても、恐らく連中は、陰謀論だと全く相手にしないか、「証拠を出せ」と言うでしょう。ですから、少しでもこの数字を固めて説得力のあるものにする必要はあると思います。その上で、通史的に、「そもそも欧米は人類に何をもたらしたか」を問うべきです。水野和夫氏は、著書「資本主義の終焉と歴史の危機」で、資本主義とは常に「中心」が「周辺」というフロンティアを広げることで利潤を獲得するシステムとしています。大航海時代以降の西欧の発展は、彼等の功績に由来するというよりもむしろ、「周辺」からの富の収奪の結果ではないでしょうか。他国から富を移転するために様々な謀略を張り巡らせ、いざとなれば虐殺をも厭わない冷酷さで築き上げたのが近代西欧文明だと思います。その計略に最も秀でていたのがアングロサクソンということでしょう。20世紀初頭までの帝国主義の時代までは、植民地という形ではっきりした収奪対象があったので分かり易かったのですが、特に第二次大戦以降、植民地が「独立」して各国が「主権」を持つとされるようになってから、非常にこの欧米による「周辺」の収奪構造が分かり難くなりました。見えなくなったと言っても良い。このプロセスに絶大な力を発揮したのが新聞、ラジオ、テレビと続くマスコミです。19世紀の時点で既に新聞は権力により利用され(米西戦争がその例)、プロパガンダとは無縁ではなくなりましたが、21世紀の現在の報道は、ほぼプロパガンダ一色になったと言えるのではないでしょうか。その結果どうなったか。欧米は世界に自由と民主主義を広め、富をもたらす正義だ。ソ連、ロシア、中国は自由のない独裁国家であり人々は虐げられている、虐げられた人々を我々は救わなければならない。この逆転したオーウェル的世界が完成したのはソ連ではなく西側社会だという気すらします。

    欧米が正義だと一般に信じられている世界では、欧米による収奪は終わらないと思います。彼等、特にアメリカは世界で何をやっているか(プーチンの国連演説では「何をやらかしたのか」)事実に基づき正確に知らしめ、コンセンサスにすることが必要です。その説得の一歩として5000万から5500万人という数字を利用したいと考えています。

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    1. 石井さま

      「2010前後 コンゴ東部 600~1000万人」: これはウィキペデイアでは「第二次コンゴ戦争」として記述されている件でしょうか?それによると、500万から600万の犠牲者が出たとしています。

      私が当初箇条書きにした際には「ルアンダ内戦」として100万人の犠牲者とした件に相当します。

      どの研究者のデータを採用するかによって大きく違ってしまいます。この第二次コンゴ戦争の場合はかなり極端で、5倍から10倍も異なってきます。このようなケースは歴史的にも数多くあるわけですが、内戦の犠牲者数を特定することの難しさはこの辺りにありそうですね。 

      しかし、個々の出来事をあれこれ辿っていくと、数値の最大値や最小値を知ることが可能となります。多分、最大値を集計することによってヴルチェクが言った5000万から5500万という数値に近づけるのではないでしょうか。

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