2014年7月28日月曜日

キエフ国際空港の管制塔で勤務していたスペイン人航空管制官の言

マレーシア航空MH17便が撃墜された当日、キエフのボルィースピリ国際空港の管制塔で勤務していたスペイン人管制官は当日の様子をかなり詳細にツイートしていた。ツイート内容はインターネット上で入手可能である [1]
この管制官は一時は行方不明とされていたが、管制官は首になって、家族ともどもウクライナから追放されたとのことだ。彼の存在はキエフ政府にとっては非常に不都合であったに違いない。
今日のブログではこの管制官が発信したツイートの内容を追跡してみよう。
ところで、個々のツイートは時系列的に掲載されている。
マレーシア航空MH17便は現地時間では7月17日の午後515分頃に墜落したと報告されている。ところが、下記に引用するツイートは当日の10時21分から始まっている [訳注:他の情報によると、最初のツイートは午前817分から始まった]。ツイートが墜落の時刻よりも7時間も前から始まっており、これでは辻褄が合わない。しかし、例えば、キエフとニューヨークとの時差は7時間である。もしスペイン人管制官のツイートをコピペした当人はニューヨークあるいはその時間帯と同一の地域に住んでいる人であるとすれば、この7時間の時刻差は問題とはならない。多分この解釈が正解だろう。
余談になるが、引用記事の本文の冒頭では、「本記事の掲載後、スペイン人の航空管制官は偽物であり、このツイッター・メッセージはロンドンから発信されたとの趣旨の報告をわれわれは受け取った」との記載があるが、ロンドンで表示されるツイートはロンドン時間で表示されているに違いない。
上記のことを除いては、内容は非常に具体性があり、管制塔の雰囲気が十分に伝わって来る。これを偽物だと言った人がいるらしいが、この情報を掲載した主も調査を行ったと書いている。その上で掲載しているところを見ると、信頼してもいいのではないか。私にもとても偽物とは思えない。
遅かれ早かれ、回収されたコックピット・ボイス・レコーダの内容が公表されることになる。後ほど、それとの整合性も是非とも確認してみたいと思う。 

<引用開始> 

Photo-1:ウクライナの地図

更新情報: 本記事の掲載後、スペイン人の航空管制官は偽物であり、このツイッター・メッセージはロンドンから発信されたとの趣旨の報告をわれわれは受け取った。
さらに調査を継続してみた。その結果、このスペイン人管制官は 過去2-3か月の間にメデアから複数のインタビューを受けていることが分かった。例えば、RTとのインタビューについては次のウェブサイトを参照されたい: http://actualidad.rt.com/actualidad/view/127516-amenazar-controlador-espanol-ucrania-crisis
このスペイン人管制官のツイッターは閉鎖された。
*     *
アムステルダム発クアラルンプール行きのマレーシア航空MH17便のボーイング777の機体はレーダーから消えて、木曜日の夕刻、ウクライナのドネツク州、グラボヴォ付近に墜落した。
GRGlobal Research News)の読者の皆さんにはキエフのボルィースピリ国際空港の管制塔で勤務していたスペイン人管制官が発したツイートの内容をご紹介する。
本報告は他の情報でも十分に補強し、注意しながら読んで欲しい。そうしていただきたい部分は黄色にハイライトしてある。
マレーシア航空MH17便は飛行ルートを変更しているが、これについては何らの説明もされてはいない。同機はウクライナ東部の戦争地帯へ向けて真っ直ぐに入って行った。
スペイン人管制官は国防省と内務省との間に対立が起こっていることを認めており、マレーシア機を撃墜せよとの命令は内務省から発せられたとほのめかしている。内務省は強硬派のスウボダ党や極右派によって牛耳られている。
また、彼は、墜落の数分前MH17便はウクライナ軍のジェット戦闘機に付き添われていたとも述べている。スペイン人管制官が述べた同便がジェット戦闘機に付き添われていたとの事実はドネツク地域の目撃者によっても証言されており、この点も留意しておく必要があろう。
「ドネツクの目撃者たちは旅客機の側に戦闘機が付き添っているのが見えた。」 目撃者たちは大きな爆音を聞いており、墜落のほんの少し前にウクライナ軍の戦闘機が見えたと言っている。(ITAR Tass)  
(M.Ch. Global Research編集者)
更新情報:
われわれの知るところによると、スペイン人管制官のツイッターは閉鎖された。彼が情報公開を行った後、彼と彼の家族はキエフ政府による脅迫を受け、殺害の脅かしさえもあった。
彼はウクライナから追放された。彼は真実を追求する勇気に溢れ、やる気を持っていた。
彼のRTスペインとのインタビュウを下記のサイトで見ていただきたい。http://actualidad.rt.com/actualidad/view/127516-amenazar-controlador-espanol-ucrania-crisis
この記事を幅広く拡散していただきたい。
スペイン語から英語への翻訳はLuis Lopezが行った。
出典: スペイン人管制官のツイート - @spainbuca
2014717日、1021分: 「キエフ政府は撃墜を親露派のせいにしようとしている。」
2014717日、1024分: 「ご用心!これは撃墜だ。マレーシア航空のボーイング777型機がウクライナで。乗客数は280人。」
2014717日、1025分: 「警報!キエフはやりたかったことをしでかした。」
2014717日、1025分: 「(軍部が)キエフの管制塔を占拠。」
2014717日、1027分: 「マレーシア航空のボーイング777型機がレーダーから消えた。異常を示す連絡は何もなかった。」 

Photo-2:スペイン人管制官、カルロスのツイッターの画面

2014717日、1030分: 「飛行機は撃墜された。撃墜、撃墜だ。事故ではない。」
20147171031分: 「キエフ政府はやりたかったことをしでかした。これは最初のツイートで言った通り。キエフの仕業だ@ ActualidadRT
20147171035分: 「この事故、まったく異常だ。彼らはキエフ空港の同じ管制塔でわれわれを脅かそうとしている。
2014717日、1035分: 「彼らはわれわれの電話やその他の物を取り上げるだろう。」
2014717日、1038分: 「彼らが私の電話を取り上げるか、私の頭を割る前に言っておこう。キエフ政府が撃墜した。」
2014717日、1112分: 「確認した。航空機は撃墜された。キエフ政府はすでにこの撃墜の情報を所有している。今、われわれは静穏になっている。」 
2014717日、1113分: 「この管制塔であの部外者たちはキエフ政府と一緒に何をしようとしているのだろう? きっと、情報収集だ。」
2014717日、1115分: 「可能な限りツイートを書き続けたいと思う。」
2014717日、1148分: B777機はレーダーから消える2分前まではウクライナ軍のジェット戦闘機に付き添われて飛行していた。」
2014717日、1154分: 「もしキエフ政府が真実を公表したいならば、情報は集まっている。2機のジェット戦闘機が数分前に旅客機に非常に近く飛行していた。その内の1機によって撃墜されたということではない。」
2014717日、1200分: 「マレーシア航空のB777機は消えてしまった。間もなく、キエフの軍部は撃墜されたとわれわれに言った。でも、どうして撃墜されたと知ったのだろうか?」
2014717日、1200分: 「旅客機が消えた7分後、撃墜されたことが通知された。そして、われわれの管制塔は部外者たちによって占拠され、今も彼らが居座ってる。」
2014717日、1201分: 「一部始終はレーダーに収集されている。驚くべきことだ。キエフ政府が撃墜した。この管制塔ではわれわれは知っている。軍の管制官もだ。」
2014717日、1315分: 「ここでは軍の司令官たちは状況を掌握しており、軍は他の誰かの命令に従っていると認めている。親露派の命令ではない。」
2014717日、1329分: 「内務大臣は戦闘機がこの空域で行動していることを知っていたが、国防大臣は知らなかった。」
2014717日、1331分: 「軍部はウクライナ軍の仕業だと認めているが、その命令が何処から来たのかは依然として不明のままだ。」
2014717日、1336分: 「数日前、私はここで言った。キエフの軍部は現在の指導者に反対して決起しようとした。テモシェンコの命令に従っているのかも。」
2014717日、1338分: 「レーダーから消える3分前までは、戦闘機は777機のすぐ側を飛行していた。ちょうど3分だ。」
2014717日、1343分: 「空域は閉鎖された。」
2014717日、1345分: 「空域は閉鎖され、さらなる撃墜が起こるのかが懸念される。」 
2014717日、1517分: 「軍は今や旅客機はミサイルによって撃墜されたと公式に言っている。」 
2014717日、1523分: 「政府はキエフの軍の管制当局が署名した公式の報告書を所有しており、旅客機は撃墜された。」 
2014717日、1526分: 「この報告書はミサイルが何処から発射されたのかを示しており、反政府派の自警団からではないと明記している。」 
2014717日、1534分: 「軍のレーダーは旅客機に向けて発射されたミサイルからのデータを収集しているが、民間のレーダーは同データを収集してはいない。」
2014717日、1536分: 「軍の最高司令部はミサイルの発射を命令してはいない。誰かがウクライナ国家の名を借りてやってしまった。」 
2014717日、1538分: 「何も知らない人たちのために言っておこう。国防省の命令の下で動く軍部と内務省の命令の下で動く軍部とがある。」
2014717日、1538分: 「内務省傘下の軍部は何が起こっているのかを何時も知っている。」
2014717日、1606分: 「この管制塔に詰めている軍の司令官たちはミサイルはウクライナ軍からのものだと認めている。」 
2014717日、1607分: 「それを知っていたのは軍の司令官たちであって、他の人たちは知らなかった。」 
2014717日、1608分: 「何の罪もない290人もの人たちが殺害された。何と無益な戦争だろうか。この戦争では愛国の精神は金との引き換えだ。」 
2014717日、1609分: 「管制塔を数分後には占拠したが、彼らのやり方やすべての詳細を知っていることを考えると、連中は実に巧妙に実行したと言わざるを得ない。」 
2014717日、1610分: 「後にやって来た兵士たちの顔を読むとありありだ、何の疑いもない。」 
2014717日、1612分: 「最終局面はこうだ。部外者を連れてやって来た軍人はわれわれの所へ来て、彼らの筋書きで話をするようにと頼んできた。」
2014717日、1613分: 「われわれの返事はこうだ。これらのレーダーはミサイルの発射データを収集してはいないが、軍のレーダーは疑いもなく収集している。」 
<引用終了> 

以上が参照記事の全容だ。
他の情報と突き合わせながら行間が何を伝えているかを探ってみると、この情報が如何に貴重なものであるかということが分かる。管制塔では多くの情報がすでに改ざんされているだろうと推測されるだけに、この情報が持つ意味は大きい。このマレーシア航空MH17便の撃墜はスウボダ党や極右派によって牛耳られている内務省による作戦だったとする見方は非常に興味深いし、さもありなんという気がする。何と言っても、この撃墜事件でもっとも得をすると思われるのは結局ウクライナ政府であるからだ。
自明なことではあるが、ツイートの中に出てくる「軍部」とか「部外者」とかは内務省の傘下にある軍部を指している。国防省の傘下にある軍部ではない。ウクライナの軍部は決して一枚岩ではない。今日の報道によると、41人のウクライナ兵が国境を越して、ロシア側へ投降したそうだ。「自分たちはいったい誰と戦争をしているのかまったく分からない」とか「同朋を殺すことなんてとてもできない」と言っている。軍部内には基本的な点で大きな混乱があることは明白だ。
52日にはオデッサでの街頭デモで数十人(あるいは、一部の報道によると百人超)が焼き殺されるという痛ましい事件があったが、あれは極右派によって巧妙に仕組まれた自作自演であったと言われている。彼らは極右派である。
ウクライナ内務省がマレーシア航空MH17便を撃墜するように命令したという事実を考慮すると、このMH17便の大惨事はロシアに責任をなすりつけようとする一連の自作自演の全体像の一部であると容易に推測される。いわゆる、「ダブル・ダウン」を実現しようとしたものだと言えよう。
前のブログ(726日付けの「新たな情報 - マレーシア航空MH17便は空対空ミサイルで撃墜された?)では「空対空ミサイル説」をご紹介した。本日のブログでは前回のブログを直接支えるものとはならなかった。旅客機の側を飛行していたウクライナ空軍の2機の戦闘機の役目はNH17便を正規の航路から外れて内戦が進行中の空域へと誘導することだけだったのか。その場合は、撃墜の下手人は地上のミサイル部隊ということになる。それとも、これらの戦闘機は下手人の役目も同時に果たしのだろうか。この時点では何とも言えない。
軍のレーダーが収集したデータはすでに改ざんされてしまったとすれば、ミサイルを打ち上げた時の様子はウクライナのレーダーではどこにも存在しないということだ。NATOのレーダーからは真実の情報を期待することはできないだろう。最後に残るのはロシアのレーダーだけとなる。
考えてみると、実に巧妙に情報戦が行われているとも言えよう。われわれ一般人の目をごまかすことは如何に容易であるかということでもある。 

参照:
1Spanish Air Controller @ Kiev Borispol Airport: Ukraine Military Shot Down Boeing MH#17By Global Research News, July/18/2014,

 

2014年7月26日土曜日

新たな情報 - マレーシア航空MH17便は空対空ミサイルで撃墜された?


アムステルダムからクアラルンプールに向かっていたマレーシア航空MH17便は地対空ミサイルで撃墜されたとの見方が大勢を占めている。ただ、その地対空ミサイルを発射したのは誰だったのかは確定されていない。ウクライナ軍か、それとも、反政府派か? あるいは、ひょっとしてロシア軍の仕業であったのか… 

そこへ、まったく新たな情報が現れた。撃墜された航空機の右側のエンジンを見ると、「空対空ミサイル」でやられた様子が見られると言う。これが事実であるとすると、この一週間世界中のメデア、特に米国とその同盟国においてメデアが集中して取り上げて来た「地対空ミサイル説」は退場することになるかも知れない。 

♞  ♞  ♞ 

今日はこの空対空ミサイル説を掲載した記事 [1] を仮訳し、皆さんと共有したいと思う。 

著者のペペ・エスコバールは香港に本拠を置く「アジアタイムズ」のコラムニストであり、彼の評論は興味深い。本も書いている。
 

<引用開始> 

諜報や事実は政策を巡って解釈され、振り回されてきた。誰もが記憶にあるのは「ダウニング街メモ」ではないだろうか。このメモは2003年のイラクの爆撃・侵攻・占領に向けてブッシュとブレアが密かに抱いていた「政策」を見事に暴いてくれた。その「政策」は電撃戦によってサダム・フセインを片付けるというもので、その理由付けに使われたのが「テロリズム」と(実際には存在しなかった)大量破壊兵器だった。この大量破壊兵器はトラックに積み込まれて、シリアの奥深くへと「消えてなくなった」。諜報とか事実とかはもう忘れてしまおうではないか!

MH17便の悲劇 - たまたま大量破壊兵器となってしまったが、この事件はイラクにおける帝国主義政策の再演として見ることも可能だ。今回はメモなんてまったく必要ない。「カオスの帝国」の「政策」は明確であり、何本もの柱で構成されている。具体的に言うと、それはヨーロッパとロシアとの間の通商を破壊するためにウクライナに橋頭保を築くことによって「アジアへの回帰」を多様化する、NATO組織をウクライナにまで拡張する、露中間の戦略的提携を破壊する、独露間の提携から始まり中国とルール工業地帯とを結ぶ新シルクロード計画に至るまでユーラシア大陸における通商・経済の統合を防止し、ヨーロッパを米国の覇権の下に維持することにある。

ロシアのプーチン大統領が何故ウクライナ東部を「侵略」しなかったのかという点に関してもっとも重要な理由は、同大統領は、米国の軍事顧問団の手助けの下で行われている市民の虐殺を食い止めようとしてウクライナ東部への侵攻をするであろうとのワシントンやNATOからの勧誘あるいは期待があったものの、ロシアのもっとも大きな通商相手であるEUを敵に回したくはないことにある。

極めて重要な点は、「保護する責任」を行使するとしてコソヴォに対してワシントンが行った介入はロシアがドネツクやルガンスクに介入する際に適用しようと思えばまったく同じ理由で正当化することができることだ。今や、ドネツクやルガンスクへの介入の理由は完全に正当化し得る状況にある。ただ、モスクワ政府はそうしようとは思わない。何故かと言うと、クレムリンはかなり長期的な視点で行動しているからだ。

MH17便の悲劇は恐ろしい手違いだったのかも知れない。あるいは、「カオスの帝国」のキエフにおける手先たちによる捨て身の作戦だったのかも知れない。今はもう、ロシアの諜報当局は重要な事実をしっかりと掴んでいるに違いない。ワシントン政府がやりそうな手口は、考えもせずに衝動的に行動し、戦争を引き起こし、その戦争に勝ち、そして、ソーシャル・メデ
アから得た証拠で手が一杯の「高官たち」をお払い箱にすることによって倍賭けをする、といった展開だ。一方、モスクワは時間をかけてでもこの複雑なジグソー・パズルを組立てて、それが完成した時に初めてその情報を公にすることだろう。


失われた覇権:

全体像を見ると、「カオスの帝国」のエリートたちは今すっかり狼狽している。例えば、「グランド・チェスボード」の著者、ブレジンスキーだ。以前にも増して意気消沈しているホワイトハウスでは多くの高官たちが外交政策の前指導者としての彼の言葉を待っている。先週の日曜日、ブレジンスキーはCNNニュースに登場し、「プーチンに対して立ち上がれ!」とヨーロッパの指導者たちに向けて檄を飛ばした。彼は「ヨーロッパは衛星国になりたいと思っているのか」、もしそうだとすると「世界システムの将来にとっては決定的な影響を与えることになる」との懸念を示した。

そして、もちろん、これはすべてがプーチンの責任である。「われわれは冷戦を巻き起こそうとはしていない。彼(プーチン)が始めたのだ。彼は自分自身とてつもない泥沼の中に陥ってしまった。ロシアでは多くの人たちが、大統領から遠く離れているわけでもない人たちさえもが国際社会におけるロシアの立場は劇的に損なわれる、ロシア経済は低迷し始めるのではないか、ロシアが中国の衛星国家になってしまう可能性がある、あるいは、ロシアは自ら孤立の道を歩み自ら信用を落とそうとしている、と心配しているのではないか。」

ブレジンスキーは、明らかに、中露間の戦略的な提携関係が持つ素晴らしい点、ならびに、BRICSG20 および数多くの他の国際組織の内部で聞こえてくる声については知らぬが仏である。彼のトレードマークである「ロシア恐怖症」は、結局、何時も彼を圧倒してしまう。彼の最近の本「Strategic Vision (2012)」でそのことを考えてみると、ブレジンスキーにとってはトルコやロシアを併合した広大な「西側」こそが彼のお好みの構図であって、「カオスの帝国」をその拡大された「西側」の「推進者」あるいは「保護者」とし、東側の主要な国々の間では「均衡を保つ役割」や「調停者」として位置付けている。しかしながら、2012年以降のリビア、シリア、ウクライナ、ならびに、中国に対する包囲の記録を見ると、「カオスの帝国」はカオスを醸成しただけであって、他には何の役にも立ってはいない。

さて、恐怖におののいているブレジンスキーをイマヌエル・ワレルスタインと比べてみよう。彼は私が2007年に地政学的に歪んだ世界を描いた「
Globalistan」と題するトラベル・ブックでは大きな影響を与えてくれた。この書籍(スペイン語) では、ワレルスタインは「カオスの帝国」は地政学的な退廃を単純には受け入れることはできない。このことから、「カオスの帝国」は非常に危険な存在となった。世界システムにおける自分たちの覇権を再構築することこそが究極の執着となったのだ。そこにすべての「政策」が集中し、MH17便の惨劇の背景には本質的にこの「政策」が潜んでおり、ウクライナはやるかやられるかの戦場と化してしまった。

ヨーロッパではすべてがドイツと絡んで来る。特に、米国家安全保障局のスキャンダルとそれが引き起こした悪影響の後、ベルリンで交わされている重要な議論はどうしたら地政学的に米国を避けながらも自国の立つ位置を決めることができるかという点にある。そして、その答えはドイツの大企業のほとんどが後押しをしているロシアとの戦略的な提携である。


そのミサイルを見せてくれ:

大騒ぎもせず、歪曲もせずに、ロシアの軍部はじっくりと事の真相を伝えようとしている。
ここに情報源は「Vineyard of The Saker」というブログであるが、彼らがこれまでに公表した中でもっとも中心的な説明がある。「The Saker」が述べているように、ロシアは「レーダーによる正常な視力」を備えている。つまり、ウクライナで起こっていることのすべてに関して徹底した監視を行っている。そして、ほぼ間違いなく、NATOもそうしている。ロシア国防省が言っている内容は専門家たちのために提示した内容と同様に非常に重要だ。

破壊されたMH17便の右側のジェット・エンジンは空対空ミサイルから受けたと推察される鋭い攻撃の跡を匂わせている。これは地対空の「ブク」のせいではない。これはロシア国防省が図解をしながらMH17便を追尾していたウクライナ軍のSU-25戦闘機の存在を説明してくれた内容と辻褄がよく合う。「カオスの帝国」が世界中に広めようとしてきた「ブク」のシナリオはこれで次第に捨てられることになるだろう。言うまでもなく、仮に「ブク」ミサイルが使用されていたとすれば、はっきりと見える筈のミサイルからの飛行雲が見えていた筈だ。しかし、誰も目撃してはいないのだ。

ウクライナ軍のSU-25 戦闘機がMH17機を追尾していたという事実とは別に、答えが得られてはいない疑問点はたくさん残っている。その内のひとつはアムステルダムのスキポール空港のセキュリテ
ーの手順は胡散臭いことこの上ないという点だ。同空港のセキュリテーはオランダに本拠を置いたイスラエルの企業、
ICTSによって運営されている。この会社はShin Betという諜報の専門会社の前役員によって設立された。その上、キエフの管制塔には「外国からの」アドバイザーたちがいるのだが、彼らについての説明は何もない。 

シリアのバシャル・アル・アサド大統領には自国の市民を化学兵器で殺戮する理由がまったくなかったことと同じように、ウクライナ東部の連邦派の住民には民間機を撃墜する理由はまったくない。そして、ワシントン政府はガザにおいて現在進行している住民の虐殺にはまったく関心を示さないのと同様に、ワシントン政府はMH17便での民間人の死亡にもまったく関心を示さない。たったひとつの彼らの執着はロシアに経済制裁を加え、ロシアを死に至らしめることにある。つまり、ヨーロッパとロシアとの間の通商や地政学的な統合を断ち切ることにある。

MH17便の惨劇の一週間前、ロシアの戦略問題研究所はすでに「カオスの帝国」が抱いている「政策」について、ならびに、彼らは「国際法の原理・原則ならびに現存する国際関係システムの精神に準拠することを拒んでいる」ことについて警鐘を鳴らしていた。

モスクワはMH17便の惨劇に関する証拠をそろえ、キエフ政府の主張が偽りであることを暴くために機をうかがい、自分たちの信頼性を最大限に高めることだろう。このゲームは今ブラックボックスへやコックピット・ボイス・レコーダへと移りつつある。依然として、ウクライナはやるかやられるかの戦場そのものである。チェスボードはすっかり血にまみれてしまった。

ペペ・エスコバールは
Globalistan: How the Globalized World is Dissolving into Liquid War (Nimble Books, 2007)Red Zone Blues: a snapshot of Baghdad during the surge (Nimble Books, 2007)、および、Obama does Globalistan (Nimble Books, 2009)の著者である。彼は pepeasia@yahoo.com のメールアドレスで連絡が取れます。

Copyright 2014 Asia Times Online (Holdings)
 

<引用終了>
 

世間の関心はこれからブラックボックスやコックピット・ボイス・レコーダに移って行く。 

しかし、この「カオスの帝国」が執着する覇権の維持を考えると、現在進行中のブラックボックスやコックピット・ボイス・レコーダの解読には大きな懸念がついてまわる。解読作業を行う場所は英国である。英国は盟主である「カオスの帝国」の懐刀だ。そのような英国の研究所で解析作業が行われるということは結果がもう予測できるということと同等だ。 

現時点では「ブラックボックスやコックピット・ボイス・レコーダは損傷がなく、毀損された形跡もない」と報じられている。ということは「これから行われる解析の結果が全てを物語ってくれるので、解析の結果は誤りようもない」とでも言っているように聞こえる。つまり、「俺たちの言うことを聞け。他の解釈はあり得ない」とでも言いいたいのではないかと勘繰ってしまう。 

地対空ミサイル説にせよ、空対空ミサイル説にせよ、あるいは、機内に爆弾が装着されたにせよ、政治によって全てが翻弄され、真実がことごとく歪曲されると、この惨劇で亡くなった乗員・乗客の皆さんの霊は行き場を失ってしまうのではないか。嫌な世の中になったものだ! 

さて、これからどのように展開するのだろうか?

 

参照: 

1The Tragedy of MH17 - A Chessboard Drenched in Blood: By Pepe Escobar, Asia Times, Jul/23/2014

 

 

 

2014年7月7日月曜日

ちょっと想像してみてくれ… もしもロシアがカナダ政府を転覆させたとしたら


現在進行しつつあるウクライナ情勢や昨年8月にシリアを取り巻いた国際政治の不条理さはどのようにしたらより正しく理解することができるのだろうか?
英国のジャーナリスト、ニール・クラークが秀逸な記事 [1] を発表した。その内容は風刺が効いており、素人のわれわれにとっても国際政治が持つ不条理さを理解しやすくしている点がいい。そして、その語り口には一種の小気味良ささえもが感じられる。
ところで、非常に読みやすいことから単なる風刺としてこの記事を受け止めたとしたらそれは大きな間違いだと思う。同記事の奥深くには著者の率直な気持ちが満ちている。そこには今日横行している国際政治に関して著者が抱いている不信感、人間性に対して一顧もしない軍事行動に頼った新経済主義に対する憎悪の念、あるいは、人間の業に関する哀しさみたいなものさえも感じ取られる。
個々の文章は最近起こった出来事の主人公やそのドラマを観ている観客を他者と入れ替えることによって、立場が逆転した場合にわれわれ読者がどのように反応するかを計算しつくした上で、われわれが国際政治における諸々の出来事をより正しく、より深く理解することを著者は狙っているようだ。この記事を読み進めて行くと、個々の文章がどの出来事を具体的に語っているのかが直ぐに理解できるという趣向だ。しかも、より深く理解できる。
それでは、早速その記事を仮訳してみよう。 

<引用開始> 

Photo-1: Reuters / Yevgeny Volokin  

民主主義的に選出されているカナダ政府がロシアからの資金援助を背景にしたクーデターによって崩壊させられ、その政権転覆の場面では極右派の活動家やネオナチたちが中心的な役割を担っていたという場合をちょっと想像してみてくれ。
そして、新たな選挙によって選出されたわけでもないこのオタワ「政府」がフランス語を公用語として位置付けている法律を反故にし、ケベック州の知事として億万長者を任命し、ロシア主導の経済ブロックとの連携協定に署名をした場合を。
ちょっと想像してみてくれ…
ロシアが50億ドルもの金をカナダ政府の転覆のためにすでに注ぎ込んでおり、カナダの主要なエネルギー企業がロシア政府の有力政治家の息子を重役の一人として任命した場合を。
ちょっと想像してみてくれ…
シリア政府がキャメロン政権を暴力的に転覆させようとしている「英国の友人たち」と称するいくつかの国で構成されたグループのためにダマスカスで会合を開いた場合を。
シリア政府とその同盟国が英国内の「反政府派」に対して何百万ポンドもの金や様々な支援を行っており、反政府派が英国市民を殺害し、学校や病院ならびに大学に爆弾を仕掛けたにもかかわらず、そうした反政府派の行為を非難しようともしなかった場合を。
シリアの外相が翌年に予定されている英国の総選挙を「民主主義の物まね」に過ぎないとしてそれを一蹴し、キャメロン首相は選挙が実施される前に退陣するべきだと公言した場合を。
ちょっと想像してみてくれ…
2003年に、ロシアとその同盟国が中東の石油産出国に対して大規模な軍事的侵攻を行い、その石油産出国が世界を震撼させるような大量破壊兵器を所有していると公言していたにもかかわらず、実際には大量破壊兵器の存在云々はまったくの虚言であることが判明した場合を。
その進攻後百万人にも及ぶ市民が虐殺され、同国はその後10年も過ぎたというのに依然として混乱状態に陥ったままである場合を。
「政権交代」後にはロシア企業がやって来て、復興や再建のプロジェクトを通して莫大な利益を上げている場合を。
ちょっと想像してみてくれ…
2003年にロシアが侵攻した中東の国家は大量破壊兵器を所有しているとの宣伝を忠実に繰り返し、報道していた親ロ派のジャーナリストたちがその後陳謝することもなく、多くの人命が失われたにもかかわらず悔い改める気配さえも示すことがなかった場合を。また、そればかりではなく、高給を貰って他の独立国に対する非合法な戦争や「介入」に関する宣伝を続け、戦争を喧伝することには潔しとしない正直なジャーナリストたちを攻撃した場合を。
ちょっと想像してみてくれ…
中央政府に反対する40人以上もの市民がベネズエラで親政府派の活動家たちによって焼き殺された場合を。
ロシアの対外情報庁の職員ならびにメドベージェフがカラカスを訪問した直後、ベネズエラ政府がより大きな自治権や連邦制を要求している反政府派に対して軍事的な攻勢を開始した場合を。
ちょっと想像してみてくれ…
昨年の8月、べラルースのミンスクで政府に反対してキャンプを張って抗議をしている600人を超す市民たちが軍隊によって虐殺された場合を。そして、この春、べラルースの法廷が600人を超す野党の支持者に死刑の判決を言い渡した場合を。
ちょっと想像してみてくれ…
旧「冷戦」の終結後、ロシアが何年もかけて米国の周囲に軍事基地を設け、カナダやメキシコに対してロシアとの軍事同盟に加わるように工作した場合を。そして、今月の始めにはメキシコで軍事演習を大々的に実施した場合を。
ちょっと想像してみてくれ…
ロシア外務省の高官が駐カナダ・ロシア大使との間で交わした電話の内容がリークされ、その内容をわれわれも知ることになった場合を。その電話では彼らはカナダ政府のメンバーとしては誰々を参画させ、誰々は参画させないといった話をしていた場合を。そして、その後、ロシアが資金援助をした「政府の交代」が実現した後、彼らが了承した人物が選挙を経ずに新たな首相として据えられた場合を。
また、ロシア外務省の高官が「くたばれ、EUめ!」と言った場合を。
ちょっと想像してみてくれ…
シリアの空軍がイスラエル国内の武器保管庫を空爆し、シリア国内の反政府派へ武器を輸送している車列(安全保障担当者の言)に爆弾を投下した場合を。
ちょっと想像してみてくれ…
ロシアの有力な政治家が西ヨーロッパの街頭で緊縮政策に反対を唱えるデモに加わり、反政府活動をする人たちにクッキーを配り、デモ参加者が要求している政府の辞任を後押しした場合を。  

上記に想定したような出来事のどれかが実際に起こった場合を想像してみて欲しい。実際の出来事との比較をすることによって、今日の世界ではいったい何が悪さをしているのかが分かってくる筈だ。非常に教訓的でもある。  

Photo-2: Reuters / Hamid Khatib
 
米国とその同盟国がとった行動がもしも他の国々によって実行されたならば、その行動は言語道断であると見なされるのが落ちだ。ここでわれわれがしなければならない事は当事国の国名を他国の国名と置き換えることによって二重基準を浮き彫りにすることだ。
2003年にロシアが中東の石油産出国を攻撃し、親ロ派のジャーナリストが、米国のイラク侵攻時にネオコンやえせ左翼主義者たちが西側で行ったのとまったく同様に、大量破壊兵器に関して虚偽に満ちた好戦的な宣伝活動に加担したとしたら、われわれは間違いなくロシアを国際社会ののけ者として見なすことだろう。また、非合法的な侵攻に関してチアーリーダーの役を演じたジャーナリストらは信用を失墜したままその後の生涯を終わることだろう。米国は制裁を受けることもなく、落伍者として扱われることもないことを除いては、2003年当時に米国大統領であったジョージWブッシュともっとも近しい同盟者であったトニー・ブレアは何れの日にか戦争犯罪のかどで裁判を受けなければならないかも知れないが、イラクへの侵攻を支持したメデアの「評論家」たちは今も依然として健在であり、ロシアに対する新たな冷戦を後押ししたり、シリアへの新たな軍事介入を支持したりしている。
ロシアがカナダあるいはメキシコの民主主義的に選出された政府を転覆させるためにすでに50億ドルもの金を使い、親ロ的な傀儡政権を据えたとしたら、数時間の内にも米国による大規模な軍事的侵攻が始まり、新政府は政権の座から引きずり降ろされるに違いない。西側のテレビのニュース番組や名だたる批評家たちは熱烈に米国の行動を賞賛し、軍事的侵攻を「ロシアの武力侵略に対する反撃」であると宣言し、それを全面的に正当化することができると言うだろう。ところが、ウクライナでの政権交代が米国の手で行われ、キエフに親米的な傀儡政権が樹立された場合、話はまったく違うのだ。もしもロシアがカナダかメキシコでクーデターを画策した場合には声高に「卑劣極まりない!」と叫ぶのではないかと思われる同一人物がウクライナでは合法的な政府を非合法的な方法を用いて崩壊させたことについてはお祝い気分でいる始末だ。
他国が米国の国境に近い場所へ核兵器を据えようとした場合米国がどのように反応するかは衆知の通りだ。1962年のキューバ危機では世界は戦争の瀬戸際に追いやられた。ロシア軍がメキシコで軍事演習を行った場合には第三次世界大戦の危険が声高に論じられることだろうが、NATO軍がエストニアで軍事演習を行う場合は、不思議なことには、それは挑発行為とは見なされないのだ。
べラルースやベネズエラの政府がエジプトの軍事政権が昨年8月に行った様に反政府派に対して容赦のない対応を示したり、西側が支持するキエフの傀儡政権が行った様に戦車を投入し、自国民に対して重火器を使用したならば、えせ左翼主義者の「人権擁護派」の連中は金切り声をあげて、制裁措置を取るようにと訴え、空爆を迫り、ルカシェンコ大統領やマドロ大統領はハーグの国際裁判所へ送り込まれることだろう。
イスラエルの兵器貯蔵庫や車列を爆撃した当事者がシリア空軍であって他の何者でもないとしたならば、シリアに対していったい何が起こるかは誰もが予測し得る。われわれはどうしてこのような厚かましい偽善行為を許容するのだろうか?
他国がしでかした場合には間違っていると非難し、制裁を加え、軍事攻撃や侵攻をするけれども、同じことを米国やその同盟国がしでかすことは可能だと言い張ることができる法的あるいは倫理的な根拠はまったく存在しない。国際法や他国への不干渉の原則は、その国の政治システムや政府の形態の如何を問わず、すべての国に対して平等に適用するべきである。英国政府は、シリア政府が英国の国内問題に関して干渉する権利を持ってはいないのと同様に、シリア政府の国内問題に関して干渉する権利を持ってはいない。ロシアが米国と国境を接する国で「政権交代」を実現する権利を持ってはいないのと同様に、米国はロシアと国境を接する国で「政権交代」を実現する権利を持ってはいないのである。
われわれはすべての主権国家が平等であることに基盤を置いた新しい国際秩序を必要としている。つまり、今年開催されたベルグラード・フォーラムにおいて想定された新しい「平等な世界」を必要としている。その宣言はここに読み上げることができる。その宣言を整備するために現行の西側諸国の偽善や二重基準が起こる度にその事実を暴露することによって同宣言を想い、同宣言に取り組むことができるならば、世界は遥かに安全な場所となるのではないだろうか。
この文書に示された文言や見解ならびに意見は著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではなりません。

<引用終了> 

イラクやシリア、エジプトやウクライナに関しては毎日のようにニュースが報道されてきた。その報道内容は、多かれ少なかれ、米国とその同盟国の筋書きに都合のよい内容だけを伝え、都合のよい解説だけが行われてきた。
この記事の著者はそういった国際政治が持つ不条理をあばくことによって、もっと安全で住みやすい世界が到来すると述べている。日本でもそうだが、欧米の大手の商業新聞やテレビ局は「プレステチュート」(「商業主義のためにジャーナリズム精神を売りとばし、身を沈めてしまった新聞あるいはメデア」の意)と呼ばれて久しいが、この著者は旺盛なジャーナリズム精神を今も持っている。頼もしい限りだ。
この記事はウクライナ紛争の本質を見事に伝えている。 

参照:
1: Just imagine... If Russia had toppled the Canadian government By Neil Clark, RT, May/20/2014, http://on.rt.com/7yfllx