2019年6月24日月曜日

「MH17便の撃墜はロシア人の仕業ではない」とマレーシアのマハティール首相は言う。米国およびその同盟国はたくさんの事柄について回答しなければならない

5年前に起こったMH17便撃墜事件を再訪してみよう。

最近の6月20日、AFPは次のような報道をした。2014年にウクライナ東部でマレーシア航空のMH17便が撃墜され、乗客乗員298人が死亡した事件で、オランダが主導する国際捜査チーム(JIT)は、19日、ロシア人3人とウクライナ人1人を殺人罪で起訴すると発表した。同事件で容疑者が裁判にかけられるのは初めて。ロシア外務省は声明で、「全く根拠のない嫌疑」だと反発している。4人はいずれも軍や情報機関とのつながりがあり、裁判は来年3月にオランダで開始される予定。だがロシアとウクライナはいずれも自国民の外国への身柄の引き渡しには応じないため、裁判は被告人が欠席のまま行われる可能性が高い。

以上がMH17便撃墜事件にかかわるもっとも最近の出来事だ。

私の個人的な理解はこうだ。捜査チームが発表した本事件の説明には当初から重要な要素が欠如していた。政治的な野心が最優先であったからだ。彼らは意図的に情報を歪曲している。オランダが主導するJITには事実を発掘し、この撃墜事件を引き起こした真犯人を見い出そうとする努力がまったく感じられない。彼らが行っていることは米国の主導の下で真犯人であると思われるウクライナに繋がる証拠はあくまでも隠蔽し、犯人としてでっち上げられたロシアを徹底的に追求することに狙いがある。彼らは科学的な捜査は行わず、米国の政治的思惑に沿う情報しか公開しない。JITはわれわれが理解している科学的な捜査を行うのではなく、あくまでも一般大衆の洗脳のために設置されたと言える。何という捜査班であろうか?

そう思う読者の方々が多いのではないだろうか?少なくとも、不審に思っている人たちが数多くいるだろうと推測する。何と言っても、彼らは誰もが考え得る常識的な質問に答えようとはしないからだ。

「MH17
便 - 真実がついに現れつつある」と題された記事がある(注1)。去年の9月26日の記事であるが、その内容は私が今までの情報検索の結果到達していた私なりの結論とほぼ同一である。まずは、この記事の要旨をここに纏めておこうと思う。


要旨: 

2014年7月17日、マレーシア航空のMH17便はアムステルダムを出発し、クアラルンプールに向けて飛行をしていたが、ウクライナ上空で予定の飛行経路を変更するよう誘導された。航空管制官は予定の飛行経路から200キロも北へずれた航路を飛ぶよう指示した。

新しい飛行経路は戦闘地域の真上であった。その5ヶ月前、右翼によるクーデターの後に動き出したキエフ新政権は、当時、ウクライナのドンバスおよびルガンスクの両地域に住む多数派のロシア語系住民に対して内戦を推進していた。

旅客機が撃墜された際は、通常、誰もが従わなければならない手順が存在する。これらの手順には、まず、独立した捜査チームを設定し、現場での実地検証を行い、乗員の遺体を収容し、機体の破片を回収することが含まれる。それに付随して、レーダーや人工衛星のデータ、航空管制官の管制記録、等を取得することも含まれる。

MH17便事件の悲劇のもっとも中心的な要素のひとつはこれらの手順に間違いが起こることを予防する手法がことごとく無視されたことだ。明白な事例を挙げてみよう。

旅客機が撃墜されて1時間も経たない時点で、航空管制官の作業を記録したテープがウクライナ秘密警察(SBU)によって差し押さえられた。それ以降、この管制記録は誰も眼にしてはいない。

当時の米国務長官ジョン・ケリーはこう言った。「米国はウクライナ上空で静止位置にあった衛星からの情報によって何が起こったのかについては熟知している。」 そのデータは後にJITに開示されたが、この衛星データは一般には公表しないとの条件付きであった。

今もそのままである。もしもこの衛星データが過去の5年間に喧伝されてきた「ロシア犯人説」を実際に証明するものであるならば、誰だってそのような証拠はいち早く公開するべきだと考えるであろう。

刑事事件の捜査は捜査の結果には何の利害関係もない捜査官が実施しなければならない。これは古くから存在する自然的正義の原則である。自分が関与した事件の審判には誰も参画することはできない。

驚くことに、JITはオランダとオーストラリア、ベルギー、および、ウクライナで構成されている。最初の2カ国はこの旅客機がアムステルダムから出発していること、ならびびに、オランダとオーストラリアは数多くの犠牲者を出したことから説明が可能だ。

ベルギーの参画はこの悲劇が持つ地政学的な文脈だけから説明が可能だ。つまり、ベルギーにはNTO本部があることだけで説明される(2018年にマンチェスター大学出版から発刊されたKees van der Pijl著の「Flight MH17, Ukraine and the New Cold War」)。しかしながら、ウクライナの参画はこれらの基本的な原則を見事に破ってしまった。ウクライナは当初から中心的な容疑者であった。下記に論じている理由から、今やなおさらその容疑の程度が濃くなっている。マレーシアは、当初、メンバーではなかった。この件についても説得力のある理由は見つからない。

捜査の構造そのものが妥協の産物であるだけではなく、2014年8月に四カ国が署名した機密に関する合意によってこの妥協はさらに深化した。この合意の当事国の一国でも反対であるならば如何なる捜査情報も公表をしないというものである。まったく前代未聞である。これは犯人としてもっとも強く疑われているウクライナに捜査結果について拒否権を与えたも同然である。

如何なる捜査においてももうひとつの原則が存在する。審判は、通常、適度なレベルにある高度な基準にしたがって、すべての証拠が収集され、吟味され、個人または国家が犯人であるとして確定されるまで証拠は保留される。

この基本的な原則も無視された。(ウクライナ政府が言うことは、明白な理由から、誰だって疑ってかかっていただろうが、)特に、オーストラリア政府はこの捜査の初期段階からロシアを非難し、ずけずけと発言した。

ロシア政府が実際の証拠を公表した際、オーストラリア政府は無知のせいか、それとも、恥じ入ったのかは別として、徹底して沈黙した。2018年5月、JITはMH17便を撃墜したと判断されるブク・ミサイルの識別番号を公開した。

この情報公開は事故後4年も経過してからだ。このような基本的な証拠がこのように長い間保留されていたのは何故かという問いかけは実に的を射ている。

2018年9月17日、ロシア国防省のスポークスマンを務めるイーゴル・コナシェンコフ将軍および中央ミサイル砲兵部隊のニコライ・パルシン中将が突破口を開いた。これは長い期間にわたって公の捜査からは欠落したままであったものだが、ブク・ミサイルを識別することに不可欠なデータをJITが公開したことから、急遽、さらなる調査が可能となったのだ。

ロシア当局は関連のある記録文書(これらは今や機密書類から解除されている)を探し出すことに成功した。この調査の結果、下記の事実が報告されている:

(a) このミサイルは1986年にロシアのドルゴプルドニで生産された。

(b) このミサイルは鉄道で1986年12月29日にウクライナへ輸送され、後に配備された。同ミサイルは二度とロシアへ戻っては来なかった。

(c) ブク・ミサイルを所有していた部隊はリヴィウ地域のストルィーという地方都市に駐屯していた。この部隊はドネツクやルガンスク地域で何回にもわたっていわゆる反テロリズム作戦に従事した。

(d) JITの説明はミサイル発射装置はロシア領内へ戻されたとするべリングキャットのビデオの分析に全面的に依存するものであるが、このビデオは偽物であった(スポークスウーマンのスベトラーナ・ぺトレンコの言)。

(e) ロシア側はウクライナのルスラン・グリンチャク大佐の電話内容の音声記録を所有しているが、これはグリンチャクの部隊がMH17便を撃墜したことを示唆している。

(f) グリンチャクの部隊はレーダー追跡にも関与していた。2014年7月17日にはMH 17便を追跡していた。(このことはウクライナ政府は当日はレーダーがメンテナンスのために閉鎖されていたと言ったが、彼らは嘘をついた。)

ところで、米国やオーストラリアの反応は、通常、実に素早い。今回もロシアを非難したのであろうか?彼らは完全に沈黙してしまった。MH17便やウラジミール・プーチン大統領に関して発せられた驚くほどに酷い声明について何らかの陳謝を期待することはナイーブであろう。陳謝をすれば、(自分たちの)政治生命を絶つことに繋がってしまうからだ。

とは言え、多分、将来の審判を急ぐことはない。当初の余りにも性急で、正当な理由に欠けた非難はこの悲劇がもたらした痛みをさらに大きくした。この悲劇は腐敗しきった、非常に危険な、ウクライナ政府に巣食う輩によって引き起こされたという可能性が濃厚である。西側各国がこの現実を認識し、物の言い方や政策を調整するべき機会はとっくの昔に過ぎている。

著者のプロフィール: ジェームズ・オニールはオーストラリアを本拠とする弁護士で、オンライン誌の
New Eastern Outlookのために独占的に執筆している。
https://journal-neo.org/2018/09/26/mh17-some-truth-emerging-at-last/

これで要旨の記述は完了した。

実に立派な纏めであると思う。事実を掘り起こそうとする著者の姿勢が率直で、見事である。

本来ならば、JITこそがこのような姿勢を貫いて現場検証を行い、証拠を収集し、客観的な結論を導く筈であった。民主主義を誇りに思う西側の一般市民は誰もがそう期待し、そのような展開を当然視していた筈だ。特に、数多くの犠牲者を出したオランダやオーストラリア、マレーシアの一般市民にとっては、このJITの仕事の進め方や判断の内容はまったく受け入れられないであろう。民主主義国に住んでいると信じて疑わないわれわれ一般大衆は完全に無視され、われわれは政治的な洗脳の対象でしかない。そして、JITが公表してきた説明は巨大な、組織だった大嘘でしかないことが、今や、明白となった。


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前置きが長くなってしまったが、ここで本論に入ろう。

ここに『「MH17便の撃墜はロシア人の仕業ではない」とマレーシアのマハティール首相は言う。米国およびその同盟国はたくさんの事柄について回答しなければならない』と題された最近の記事がある(注2)。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。


<引用開始>

マレーシアのマハティ-ル・モハマド首相は、新たに制作されたドキュメンタリー・フィルムで、マレーシア航空のMH17便の撃墜はロシアの犯行だとする主張は最初から仕組まれたものだと述べている。彼はマレーシアの政府高官が証拠を吟味することは制止されていたという事実を強調した。

2014年7月17日、MH17便の乗員と乗客の合計298人が犠牲となったが、この犠牲者の中には43人のマレーシア人が含まれている。その内のひとりが旅客機が地対空ミサイルによって撃墜された当時首相を務めていたナジブ・ラザクの義理の祖母、
プアン・スリ・シティ・アミラー(83歳)であった。




Photo-1

5月26日、彼のオフィスでマハティ-ルは「彼らは最初からわれわれの参画を許そうとはしなかった。これは不公平であり、通常ではあり得ないことだ。彼らには墜落の本当の理由や犯人が誰であるのかを見つけようという意思がないことは見え見えだった。すでに、犯人はロシアだと決めつけていた。われわれはこのような態度を受け入れることはできない。われわれは法の支配に関心があり、誰が関与したのかには関係なく、誰にとっても正義が行使されることに強い関心を持っている。いったい誰がミサイルを発射したのかをわれわれは突き止めなければならない。そうすることによって初めて、完全な真実で構成された報告書を受け取ることが可能となる」と述べた。

「彼ら」という言葉を用いているが、マレーシア首相はモスクワ政府の主導の下でロシア軍がミサイルを発射したというでっち上げを喧伝して来たオランダとオーストラリアの両政府、ならびに、米国政府を非難したのである。

彼らの主張は2014年7月29日に米国とEUによって
課された経済制裁の正当な理由として公けにされた。これらの施策はロシアの銀行や造船業に対する経済・貿易戦争としては始めてのものであった。

昨年の末、ロシア国防省はマレーシアのジェット旅客機を撃墜したミサイルは1986年にロシアの製造工場で製造されたものであって、その後ウクライナに向けて出荷されたという証拠を提供した。このミサイルが最後に確認された場所はウクライナ軍の基地である。詳細については、
これを読んでもらいたい。

マハティ-ルはMH17便の撃墜に関してオランダやオーストラリア、米国を非難した最初のマレーシア政府の高官という訳ではない。

ワシントンDCにおいては、撃墜の当日、バラク・オバマ大統領はクアラルンプールのナジブ首相に電話した。ふたりの会話について米国とマレーシアの記録を見ると、オバマはロシアが犯人であるとは
主張していない。 オバマからの電話の後、犯人を言及しないという点においてはナジブはより一層明確であった。「われわれは旅客機にいったい何が起こったのかを究明する」と7月18日の記者会見で述べている。 「旅客機が間違いなく撃墜されたのだとすれば、われわれは犯人の責任を問う。ウクライナ政府は旅客機は撃墜されたと言っている。しかしながら、この段階においてはマレーシアはこの悲劇の原因を特定しなければならない。この旅客機が撃墜されたことが明らかになれば、犯人は速やかに法の裁きにかけなければならない。緊急対策センターが設立された。この数時間、マレーシア政府はウクライナならびに他の関係国と接触を保ち続けている。」

ナジブはオランダ首相とウクライナ大統領と話をしたと記者会見で述べた。彼はオバマとの会話については何も言わなかった。




Photo-2: 2014年7月18日、記者会見でのナジブ首相(中央)。供給元:  https://says.com/  ナジブ首相の声明の重要な点はマレーシア航空とマレーシア政府は国際航空当局からの確認を受け取っていたという点である。

マックス・ヴァンデル・ウェルフとヤーナ・ヴェルラショヴァは5月28日のマハティール首相とのインタビューの様子を撮影した。「MH17便 - あれから5年」と題したドキュメンタリーフィルムの予告編として、今週、彼らはこのインタビュー記録の抜粋を公開した。独立したジャーナリストのための場を開始するために、彼らはこの5月に「ボナンザ・メディア・テレビチャンネル」を創設した。彼らが作成したMH17便に関するドキュメンタリーはこのテレビチャンネルで最初に放映された。
こちらをクリックして、このフィルムを観ていただきたい。このフィルムの全編は来月放映される予定だ。

ヴァンデル・ウェルフはウクライナ東部で破壊されたMH17便について調査を行っている独立した、著名な人物であって、オランダ人である。ヤーナ・ヴェルラショヴァはロシア人のドキュメンタリーフィルムの製作者であって、かってはRTで仕事をしていた。RTは国営放送のBBCやボイスオブアメリカと同様にロシアの国営メディアである。 



Photo-3: 左側はマックス・ヴァンデル・ウェルフ、右側はヤーナ・ヴェルラショヴァ。この映像で、独立したドキュメンタリーフィルムを製作するために何故ヴェルラショヴァがRTを去らなければならなかったのかについても彼らは説明している。この新着のドキュメンタリー「MH17便 - あれから5年」は国際的な寄付金によって資金提供が行われた。 

3月26日、オーストラリアとオランダ両国の外相はシドニーで公の場に姿を現した。ふたりは同月にロシアの代表と「オーストラリアとオランダおよびロシアとの間で責任国家に関して第一回目の反復協議」を開いたと述べた。交渉の詳細については何も言及せずに、オランダのステファン・ブロック外相は「MH17便の撃墜に関してはロシアに責任があるとすでに断定したことを繰り返して述べた。この段階に続いて、われわれはロシアとの接触の段階に入った。」 

マレーシアの犠牲者数は193人のオランダに次いで二番目に多く、オーストラリアの28人よりも多いにもかかわらず、ふたりの高官はマレーシアが「責任国家に関する話し合い」にどうして含まれていないのかについては説明をしなかった。 




Photo-4: 中央左側はオランダ外相のステファン・ブロック、右側はオーストラリア外相のマリーズ・ペイン。供給元: https://www.nst.com.my/  オランダとオーストラリアの高官はマレーシアが自分たちのMH17便の筋書きをぶち壊すことがないようにとマレーシア側に圧力をかけるために定期的に会合を持った。

オランダ・オーストラリアの会談はマハティールからの批判を招き、彼の批判はヴァンデル・ウェルフとヴェルラショヴァとのインタビューを通じて5月26日に記録された。

それから4日後の5月30日、マハティールはオランダとオーストラリアに対する自分の反応を公にした。東京での記者会見で、マレーシアの国営メディアであるBERNAMAは首相が
述べた内容を報じた。「旅客機がロシア人によって攻撃されたと断定するには強力な証拠が必要だ」とマハティールはコメントした。 「犯人はウクライナの反政府派かも知れないし、同一種類のミサイルを所有しているウクライナ政府かも知れない・・・ われわれは当初からこの捜査からは除外されてきたがそれが何故かはわれわれには分からない。これらの動きには政治が大きく絡んでいること、そして、狙いはこの悲劇がどのようにして起こったのかを究明するのではなく、悲劇の責任をロシア人になすりつけようとしていることが見え見えだ。中立的な捜査ではない。」

オーストラリアのマードック・メディアは、マレーシア紙の記事をカンニングして、次のような趣旨の論説を発表した。「マハティール博士は立派な陰謀論を楽しむことで知られた存在であるが、彼の意見が眉をひそめさせるのはこれが初めてではない。」 

原典:
johnhelmer.net

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

最近の数年間というもの、もっと正確に言えば20年近くにわたって、米国(およびその盟友である英国)の対外政治は空回りをしている。少なくとも、このMH17便撃墜事件やシリア紛争、2016年の米大統領選におけるロシアゲート、英国のソルズベリーで起こったスクリッパル父娘毒殺未遂事件、ベネズエラでのクーデター未遂、ホルムズ海峡近海で最近おこった2隻のオイルタンカーに対する攻撃、等は何れもその目的を達せず、次々と失敗している。

この空回りは911同時多発テロ事件における政府調査団にも見られた。イラク戦争では喧伝していた大量破壊兵器が見つからなかった。これらの失敗はそれぞれが同じ延長線上に位置している。

このMH17便撃墜事件でもロシアを犯人としてでっち上げることには失敗した。今や、ロシア犯人説を覆す情報が世間にはたくさん出回っており、われわれ一般庶民さえもがそれらの情報にアクセスし、真の状況を詳細に理解し始めている。この現状を知ろうともせずに、ロシア犯人説をゴリ押しすることはオーストラリアにおいても、オランダにおいても政治的な自殺行為に等しい。

つまり、西側の政治家は選挙民は次回の選挙では今までのようには投票をしてはくれないだろうということを自覚しなければならないだろう。


参照:

注1: MH17: Some Truth Emerging at Last: By James O’Neill, NEO, Sep/26/2018

注2: Russians Did Not Shoot Down MH17, Says Malaysian Prime Minister. US, Allies Have a Lot to Answer for: By John Helmer, Russia Insider, Jun/08/2019

















2019年6月18日火曜日

「芳ちゃんのブログ」からひとつのテーマについて抽出、分類してみました


まずは、このテーマで・・・
 

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Ⓐ テーマ: モンサント、グリフォサート、ラウンドアップ除草剤、殺虫剤、遺伝子組み換え

更新日:2019/06/18

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私は2011年から「芳ちゃんのブログ」をインターネットに掲載しています。最初の段階では特に決まったテーマはありませんでしたが、日数を重ねるにしたがって、外界世界ではシリア紛争、ウクライナ紛争、マレーシア航空MH-17便撃墜事件、スクリッパル父娘毒殺未遂事件、ロシアゲート、等々、が起こり、人々は毎日のように報じられる新しいニュースに釘付けの状態となりました。
私のブログも例外ではありません。その頃から国際政治に関わる投稿が急速に多くなっていった次第です。
その一方で、食品の安全性の問題も重要な関心事です。特に、2014/06/02の投稿は「モンサントの除草剤と腎疾患との関連性」との表題の下で、世界市場を相手にするバイオテクノロジーがもたらす負の側面は必然的に世界規模の影響を与えるという現実を明確に伝えています。この投稿をきっかけにして、私の関心は除草剤、殺虫剤、遺伝子組み換え作物、環境汚染へと広がり、「芳ちゃんのブログ」では国際政治に次ぐ重要なテーマとなっています。
フェースブック友達のひとりの方からの助言もあって、私のブログの中でこの「除草剤、殺虫剤、遺伝子組み換え作物、環境汚染」の分野に属する諸々の投稿を纏めてみることにしました。その結果がここに示すリストです。
「芳ちゃんのブログ」は見出し機能を備えてはいないことから使いにくいのではないかと推測します。その不便さを少しでも解消するために、上記のテーマに属する個々の投稿を抽出し、それらの日付と表題を頼りにリスト化してみました。このリストに含まれる投稿はひとつのファミリーを構成します。このリストでは古い投稿は下部に、新しい投稿ほど上部に位置するように配置しています。
尚、このテーマは人の健康に関わる事柄でもあることから、読者の皆さんの関心がもっとも高い分野であろうと推測し、まずはこのテーマで纏めてみることにしました。このリストは2014/06/02の投稿から始まって、今までの5年間に掲載した投稿を網羅し、現時点では21篇を収録しています。関心のある投稿がありましたら、「芳ちゃんのブログ」を開き、その投稿の日付にしたがって目標の投稿にアクセスしてください。

遺伝子組み換え作物や除草剤がもたらす健康被害について少しでも多く、より深く理解する上でこのインプットが読者の皆様に何らかの形で役立ってくれれば嬉しい限りです。

他のテーマについても同様の試みを継続して行きたいと思います。

 


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Ⓐ テーマ: モンサント、グリフォサート、ラウンドアップ除草剤、殺虫剤、遺伝子組み換え

更新日:2019/06/18

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(21) 2019/06/03、「グリフォサートはわれわれが想像する以上に悪い」
yocchan31.blogspot.com/2019/06/blog-post.html 
            原典:Glyphosate Worse Than We Could Imagine: By F. William Engdahl, NEO, Apr/14/2019

(20) 2019/05/28、「遺伝子組み換えのジャガイモを作り出した科学者が危険な真実を暴露 - 独占インタビュー
yocchan31.blogspot.com/2019/05/blog-post.html
原典:The Creator of GMO Potatoes Reveals The Dangerous Truth - Exclusive Interview: By Sustainable Pulse, Oct/09/2018

(19) 2019/04/02、「最近のグリフォサート由来の癌の訴訟に関して米陪審員はバイエルに対して8千百万ドルの損害賠償を裁定
yocchan31.blogspot.com/2019/04/8.html
原典:US Jury Punishes Bayer with 81 Million Dollar Damages Ruling in Latest Glyphosate Cancer Trial: By Sustainable Puls, Mar/28/2019

(18) 2019/03/08、「このままでは欠かすことができない昆虫さえもが絶滅してしまう
yocchan31.blogspot.com/2019/03/blog-post.html
原典:We’re Killing Off Our Vital Insects Too: By F. William Engdahl, NEO, Mar/02/2019

(17) 2019/02/17、「グリフォサートの致死性を明らかにしたことによりスリランカ人の専門家が著名な科学賞を受賞
yocchan31.blogspot.com/2019/02/blog-post_40.html
原典:Sri Lankan Experts Receive Top Scientific Award for Revealing Lethal Truth about Glyphosate: By Sustainable Pulse, Feb/04/2019

(16) 2018/10/31、「人の遺伝子編集における地政学
yocchan31.blogspot.com/2018/10/blog-post_31.html
原典:The Geopolitics of Human Gene Editing: By Ulson Gunner, NEO, Oct/19/2018

(15) 2018/10/22、「遺伝子操作によって再合成された「馬痘」が引き起こすかも知れない天然痘の大流行の可能性に科学者たちはびびっている
yocchan31.blogspot.com/2018/10/blog-post_22.html
原典:Scientists Freak Out Over Pandemic Potential Of Genetically Engineered Smallpox: By Tyler Durden, ZEROHEDGE, Oct/14/2018

(14) 2018/08/29、「モンサントの有罪判決は始まったばかり
yocchan31.blogspot.com/2018/08/blog-post_29.html
原典:Monsanto Guilty Verdict Is Only Beginning: By F. William Engdahl, NEO, Aug/15/2018

(13) 2018/01/16、「機密の裁判所文書においてモンサント社は安全性試験が未完了の「ラウンドアップ」除草剤に発癌性があることを認めている
yocchan31.blogspot.com/2018/01/blog-post_16.html
原典:Monsanto Admits Untested Roundup Herbicide Could Cause Cancer in Secret Court Documents: By Sustainable Pulse, Aug/09/2017

(12) 2017/06/15、「遺伝子組み換え大豆に危険なレベルの除草剤グリフォサートを検
yocchan31.blogspot.jp/2017/06/blog-post_15.html
原典:Potentially dangerous levels of glyphosate found in GM soy: From THE DETOX PROJECT, detoxproject.org/glyphosate/potentially-dangerous-level..

(11) 2017/06/11、「グリフォサートの機密データの中に腫瘍を引き起こす証拠を発見」
yocchan31.blogspot.com/2017/06/blog-post_11.html
原典:New Tumor Evidence Found in Confidential Glyphosate Data: By Sustainable Pulse, May/31/2017


(10) 2017/01/10、「バイエル社の農薬がミツバチを不妊化している
yocchan31.blogspot.com/2017/01/blog-post.html

原典: Bayer AG Makes Bee Contraceptives: F. William Engdahl, New Eastern Outlook, Aug/13/2016,  journal-neo.org/2016/08/.../bayer-ag-makes-bee-contraceptive...


(9) 2016/06/27、「除草剤グリホサートに対する反対が驚くほど拡大」 
yocchan31.blogspot.com/2016/06/blog-post_43.html
原典: The Amazing Glyphosate Revolt Grows: By F. William Engdahl, New Eastern Outlook, May/23/2016, journal-neo.org/2016/.../the-amazing-glyphosate-revolt-grows...
(8) 2015/12/24、「不信感が募るばかり - 「遺伝子組み換え作物のリスク評価は欠陥だらけ」と専門家が指摘
yocchan31.blogspot.com/2015/12/blog-post_24.html
原典:Growing Doubt: a Scientist’s Experience of GMOs. Flawed Processes of GMO Risk Assessment: By Jonathan Latham PhD, Global Research, Sep/02/2015
(7) 2015/09/02、「アルゼンチン - モンサントによって汚染された国
yocchan31.blogspot.com/2015/09/blog-post.html
原典: Argentina: The Country that Monsanto Poisoned? Photo Essay: By Syddue, Dec/29/2014, overgrowthesystem.com/argentina-the-country-that-monsanto-... 
(6) 2015/08/27、「遺伝子組み換え食品には安全性の証拠が出揃ってはいない
yocchan31.blogspot.com/2015/08/blog-post_27.html
原典: No scientific evidence of GM food safety: By Nafeez Ahmed, INSURGE Intelligence, Jul/13/2015
(5) 2015/06/22、「モンサント社の元社員であった一流専門誌の編集者、その地位から解任される
yocchan31.blogspot.com/2015/06/blog-post.html
原典: Former Monsanto Employee Fired from Major Scientific Journals Editor Position: By Christina Sarich, Global Research, Mar/30/2015, www.globalresearch.ca/former-monsanto-employee-fired-fro...
(4) 2015/06/15、「モンサントの除草剤と発がん性との関連性 - WHOは公表した調査結果を撤回しそうもない」
yocchan31.blogspot.com/2015/06/who.html
原典:World Health Organization Wont Back Down From Study Linking Monsanto to Cancer: By Derrick Broze, The Anti-Media, Mar/30/2015, theantimedia.org/world-health-organization-wont-back-down-... 
(3) 2014/06/13、「遺伝子組み換え食品による著しい炎症反応 - 豚を使った試験で
yocchan31.blogspot.com/2014/06/blog-post_13.html
原典:Large Pig Study Reveals Significant Inflammatory Response to Genetically Engineered Foods By Dr. Mercola, May/18/2014, articles.mercola.com/sites/.../gmo-foods-inflammation.aspx
(2) 2014/06/07、「まさに信じがたい - 遺伝子組み換え作物に反対する人を黙らせようとしたシンジェンタ社の対応
yocchan31.blogspot.com/2014/06/blog-post_7.html
原典: Syngenta methods of silencing GMO opposition are unbelievable: By William Engdahl, RT, May/15/2014, http://on.rt.com/yfwt3v
(1) 2014/06/02、「モンサントの除草剤と腎疾患との関連性
yocchan31.blogspot.com/2014/06/blog-post.html
原典: Monsanto's Roundup may be linked to fatal kidney disease, new study suggests: By RT, Feb/27/2014, http://on.rt.con/do84uy
 

 
 

 

2019年6月16日日曜日

ゴルノフに関してロシアのメディアが連帯 - アサンジのことで媚びへつらう欧米の不快なメディアとはまったく対照的


イワン・ゴルノフという調査報道ジャーナリストのことをご存知であろうか。誰も知らなかったと思う。ロシア人のジャーナリストのことであることから、今回の出来事が世界中を駆け巡るまでは、このジャーナリストの存在は日本の一般庶民にとっては知る術もなかった。

彼は、最近、麻薬ディーラーの容疑でモスクワの警察に逮捕された(6月6日)。しかしながら、警察は確固たる証拠を示すことが出来なかった。市民やメディアからの批判を受けて、結局、当局は彼の逮捕を白紙に戻した。内務省は今回のスキャンダルを引き起こした警察の幹部を調査すると約束した。このような展開はロシアでは異例のことである。それだけに、この一週間世間の注目を集めていた。

ロシアにおいてはジャーナリストが首を突っ込むことが出来ない、あるいは、非常に難しいと言われている分野がいくつかある。プーチン大統領の個人的な事柄を筆頭にして、ロシア政府に対する批判、等々、はタブー視されている。首都モスクワの警察がイワン・ゴルノフを逮捕したことは不当であるとする批判も、その展開次第ではあらぬ方向へ走ってしまう可能性があった。しかしながら、今回はメディアが彼の逮捕に対する批判をしっかりと支えてくれたことから、警察はゴリ押しすることができず、ゴルノフの逮捕を白紙に戻した。

ここに「ゴルノフに関してロシアのメディアが連帯 - アサンジのことで媚びへつらう欧米の不快なメディアとはまったく対照的」と題された記事がある(注1)。著者は長年モスクワに駐在しているアイルランド人のブライアン・マクドナルドである。この著者はロシアを正しく理解しようという姿勢を常に貫いていることを私はここで指摘しておきたい。それは米国で2年以上も続いたロシアゲート事件にかかわる彼の論評、等から容易に感じられる。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。ブライアン・マクドナルドの意見を拝聴してみよう。

<引用開始>
Photo-1: © REUTERS/Tatyana Makeyeva; © AFP / Daniel LEAL-OLIVAS 

もしもあなたがイワン・ゴルノフについて懸念を表明し、ジュリアン・アサンジについては何の懸念も示さずに言論の自由を支持すると宣言したならば、あなたはとんでもない偽善者である。逆の場合も同じことだ。

モスクワで根拠が薄弱なまま麻薬取締法違反で逮捕されたロシアン人ジャーナリストについて連帯の表明があった。これは大歓迎だ。しかしながら、自国におけるジャーナリズムに対する攻撃を無視し、あるいは、それを助長しておきながら、地政学的な得点をあげようとする輩からの連帯の表明はご免蒙りたい。

予測通りではあるが、ゴルノフの逮捕に関する米英のメディアならびに政治家からの反応はそのほとんどがこの出来事をクレムリンが言論の自由を抑圧するものとして捉えようとしていた。

RT.COMからの関連記事: 
Russian journalist accused of drug dealing tests negative for drugs

しかしながら、現実は遥かに複雑である。西側の大手メディアはロシアに関して真面目な専門的知識に欠けている実態を、またもや、露呈することになった。

先ず、ロシア政府の狼狽振りを1から10の点数尺度でこの出来事を明確に評価しておこうではないか。ロシア政府にとってはこのゴルノフの逮捕は最高点を越して、11点だ。麻薬取締法違反で自分の仲間を逮捕することは馬鹿げており、ロシアへ外資を呼び込む旗艦として働いている「サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム」の存在を霞ませてしまった程だ。

第一面でサンクトペテルブルグを訪問している習近平中国主席を報道し、ウラジミール・プーチン大統領のチームのために立派なPRを行う筈であった。しかし、その代わりに、ニュース紙は繰り返してゴルノフに焦点を当てることになった。国内でも、そして、国外でもだ。
rt.comからの関連記事: Court puts Russian journalist charged with drug dealing under house arrest 


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ゆっくりとした変化:

クレムリン政府が莫大な費用を要する自分たちの通商媒体に破壊工作をするという何らかのサディスティックな願望を持ってはいない限り、明らかに、この出来事には「プーチンをまさにボンドのような全能の悪党」と見なす西側が頻繁に使う筋書きを通して見る場合に比べてさらに何かが存在するみたいだ。皮肉なことには、現実は専制的で、全権力を掌握する政府が反対意見を封じ込めようとしているという筋書きよりももっともっと深刻であるのかも知れない。

それに代わって、この出来事は国の安全保障当局の内部には実際に罰を受けることもなく活動する工作員がいることを追認するようなものでもある。これはロシアだけに特有なものという訳ではないが・・・。

さらには、微妙な違いに興味を抱く人たちは、その歴史から見てさえも、ロシアにおける変化はどうしてこうも遅いのかを理解しているに違いない。さらには、プーチン(あるいは他の指導者)が深く根付いている政府機関に分け入って、一日の内にそれをひっくり返すことはできないということをも十分に理解しているに違いない。一日ではなく、多分、何十年もかけたとしてもだ。

とは言え、何時も繰り返される反ロシアの大合唱には、予想通りではあるが、何かを理解しようとする姿勢は何も見えては来ない。彼らはこの出来事が潜在的には分水嶺的な瞬間であるということを理解するのに必要な知識もなく、何の関心も持ってはいないのだ。

Michael Weiss (@michaeldweiss) のツイッタ一、
2019年6月9日:

ロシア政府によって無実の罪で投獄されたジャーナリスト、イワン・ゴルノフ
@meduzaprojectとの完全な連帯、これは実に心打たれる光景だ。日刊紙のコメルサントやヴェドモスチ、ならびに、RBKテレビチャンネルが出版・放映した: pic.twitter.com/1ZXT58CYiG

ロシアにおけるジャーナリスト集団はゴルノフを巡って団結し、社会運動を引き起こした。この連帯は思想が何であるとか、所有者が誰であるとかという諸々の境界を越して、結集された。たとえば、公共テレビ網のNTVではイラダ・ゼウナロヴァは、驚くことには、こう言った。「この国はペレストロイカの過程でオーウェル的な反ユートピア社会にはならないと決断した。今、わが国はそこへ戻ってはならない」と。

 その一方で、フィル・ドナヒューと一緒に行って来た仕事振りや公共テレビでの人気の高いショウ番組の司会役を務めたことから米国では知名度が高いウラジミール・ポズナーは
こう言った。 「イワン・ゴルノフの逮捕はロシア人ジャーナリスト全員の顔に唾を吐きかけたようなものだ。私は自分の顔に唾を吐きかけようとは思わない。」 

RTならびにロシア・セヴォードニャの編集長を務めるマルガリータ・シモニアンは金曜日(6月7日)に
ツイッターでこう言った。 「政府はこの逮捕に関しては一般大衆の疑問点のすべてに答えなければならない。理由は簡単だ。一般市民は実に多くの疑問を抱いているからだ。」 

彼女は、土曜日の午後、
さらにこう言った。 ゴルノフを裁判前の逮捕の状態に置くのではなく、彼は自宅へ帰らせるようにと嘆願した。これは「彼の健康と一般的な状況を配慮した結果だ」と言った。さらに、彼女は悪行があったことを示す何らかの「証拠」を一般大衆に示さなければならないという自分の主張についても念を押した。

グルノフは偶々RTのTシャツを着ていた。そのTシャツにはフランスでの「黄色のヴェスト」運動とロシアとの関連性を見つけ出せという上層部からの圧力の下でBBCの特派員が述べた「ニュース編集室は血なまぐさいニュースを求めている」という引用が書かれていた。結局、英国の国営テレビ局は自分たちの国内から始まった運動の中にロシアの幽霊を見つけ出すことはできなかった。
rt.comからの関連記事: ‘We are Golunov’: Leading Russian papers run similar frontpage supporting charged journalist 


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彼らは一緒に肩を並べている: 

月曜日(6月10日)に、ロシアの三つの「高級日刊紙」が 「Я/Мы Иван Голунов」 (私・われわれはイワン・ゴルノフ)という同一の見出しでそれぞれの第一面を
飾った。これは、明らかに、2015年にフランスで起こったパリの風刺雑誌社に対するテロリスト攻撃の後に現れた「Je suis Charlie」(I am Charlie) という連帯を表明する文言からヒントを得たものだ。

これらの三紙はどれを取っても「親プーチン派」であるとは言えない。彼らは一般的に政府に対しては批判的である。しかし、今回の出来事には前例がなく、「ロシアのメディアには自由がない」として頻繁に用いられる欧米のたわ言をはっきりと否定するものだ。

明確さを期して言えば、当地のテレビ局はほとんどが国営であり、彼らは極めて親政府的である。しかしながら、新聞はほとんどが独立しており、多くの新聞はクレムリン政府に対しては毅然とした態度を保ち、敵対することも辞さない(たとえば、ノーバヤ・ガゼタ紙がそうだ)。

と同時に、インターネット(今やニュースの供給源としてはテレビとライバル関係にある)はほとんどまったく検閲を受けず、数多くの反政府的な新聞が広く購読されている。これには西側によって支援され、西側の管理下にあるBBCのロシア語放送、カレント・タイム(訳注:これは米国が2年前に設立したロシア語放送であって、ロシアのRTに対抗するものだ)、米国のRFERL(ラジオ・フリー・ヨーロッパおよびラジオ・リバティー)、ドイチェ・ヴェレ、フランス24、ベル、メデューサといったメディアも含まれる。因みに、メデューサはゴルノフの雇い主である。

そして、これは西側はいったいどのような反応をしたのかという点にわれわれの関心を向けさせ、最近起こった、非常に知名度の高いジャーナリストの逮捕との比較を余儀なくさせるのだ。言うまでもなく、ジュリアン・アサンジとの比較だ。
rt.comからの関連記事: Journalists silent on Assange’s plight are complicit in his torture and imprisonment 


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米国への送還を明確に意識した罪状でアサンジが逮捕された時、BBCのボスであるトニー・ホールは黙りこくっていた。2014年、英国の国営放送局はロンドンのエクアドル大使館に亡命しているジャーナリストを揶揄するホームコメディーを製作し、ホールはその放送予定を喜んで
発表した。 ポズナーやゼウナロヴァとは対照的に、この国営テレビ放送局の他の司会者らはホールに倣って沈黙していた。

また、ロンドンの指導的な新聞各社はアサンジを防護するために結集することはなかった。それどころか、(ドナルド・トランプを支持するルパート・マードックが所有する)タイムズ紙はこの逮捕を支持した。ガーデイアン紙だけは気の抜けたような支持を表明し、反アサンジのくだらない馬鹿騒ぎに対して一定のバランスを保った。

実際に、同紙のもっとも秀でた、論調を決めてくれる記者ではあるのだが、退屈で、繰り返しの多い、飽き飽きするような無骨者で、どうにかこうにか読み取れる長い記事やツイッターによって親体制派の田舎者であるという自分の
地位を何年にもわたって固めたマリナ・ハイドはアサンジの苦しみや屈辱にサディスティックとも言えるような快楽を見出していた。

Joseph A. Farrell (@SwaziJAF)のツイッター、
2019年6月1日:

国連の特別報告者による拷問に関する声明の中に
@marinahydeを参照する記述を見つけた。あなたも歴史に残るだろう。でも、それは悪い意味でだ。@wikileaks#Assangepic.twitter.com/xe2M1n0V4Y


ふたつの顔: 

最後に、われわれはジェレミー・ハントのことを忘れることはできない。英国の外相で、将来、首相となるかも知れない彼が、先週、米国のテレビでアサンジの米国への送還を阻止する積もりはないと言った。しかしながら、日曜日に彼は「われわれは本件の行方を見守っている」と
ツイートして、ゴルノフについて懸念を表明した。

彼のロシア人ジャーナリストに対する支援は、それが純粋なものでありさえすれば、歓迎されるだろう。主権国家の内政への干渉を匂わせる何かがあるとしても、アサンジに対する間違った取り扱いや彼に対する抑圧に関するハントの姿勢を見ると、彼の言動は実にばかばかしい。

もちろんのこと、ハントは自分の言動に饒舌さとか偽善性とかを感じ取っている訳ではない。なぜかと言うと、彼のようなタイプは洗練さを求めることはないし、倫理的な同義性を追求することもないからだ。自分たちはそういった不都合を超越した地位にあると思っている。

私はグルノフを応援するだけではなく、アサンジをも応援する。これら両者を応援することができずに、自分は基本的な倫理観と行動原理を持ったジャーナリストであるとか、政治家であると自認するならば、あなたは鏡の中の自分を数日にわたってじっくりと見つめ直す必要があるだろう。とは言え、この忠告は、多分、ピントが外れている。なぜならば、これらの連中の多くや宮廷の道化師らは、恐らく、鏡に映った自分の姿を賞賛しながら何日間かを過ごすだけであって、必要とされる自己反省には取り組もうともしないだろう。

注: この記事で表明されている声明や見解および意見は全面的に著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。

<引用終了>


これで引用記事全文の仮訳が終了した。

英国のメディアとロシアのメディアとの比較が興味深い。ブライアン・マクドナルドの世界観から見ると、英メディアのジャーナリストとしての倫理観や使命感は完全に地に堕ちたと言える。つまり、彼らが新聞を売り、テレビ放送を継続している理由は金儲けしかないのだ。一般大衆にとって不幸なことには、彼らは真理の追究をとっくの昔に捨ててしまった。彼らは事実を隠蔽し、捻じ曲げて、報じたいことだけを報じ、一般大衆の理解を特定の方向へ誘導しようとする。そのことは大分以前からさまざまな出来事を通じて感じられていた。最近の例では、マレーシア航空MH-17便撃墜事件やスクリッパル父娘毒殺未遂事件に関するメディアの取り組み方を見て、何らかの疑問を抱いた人たちにはこのことは容易に納得できるであろう。

一方、ロシアでは、引用記事に報じられている3紙に加えて、欧米のメディアや政治家から敵視されているRTの編集長を務めるマルガリータ・シモニアンも言論の自由を守るためにゴルノフの釈放を求めていた。ロシアのメデイア界では幅広い支援があったのだ。

ゴルノフは6月11日に釈放された。驚くほどに急速な展開であった。

しかも、当局はゴルノフを麻薬ディーラーとして罠にかけようとした警察を調査することを約束した。ゴルノフの釈放は捜査当局が自分たちの間違いを認めた非常に稀な事例である。また、ロシアのジャーナリストが汚職事件や政治的腐敗あるいはプーチン大統領の個人的な生活について報じるには大きな困難が伴うことが露呈された。(出典:Russian journalist freed after police abruptly drop charges: By Nataliya Vasilyeva and Francesca Ebel, Associated Press, Jun/12/2019)

総じて、ブライアン・マクドナルドは「この出来事は潜在的には分水嶺的な瞬間である」という見方をした。これは歴史的な流れを直視した結果であると思われる。ロシアと西側とを比較する時、たとえば言論の自由について論じる時、今まではロシアには言論の自由がなく、言論の自由を享受しているのは西側だけだという見方が主流を成していた。ところが、相前後して最近起こった二人のジャーナリスト、つまり、イワン・ゴルノフとジュリアン・アサンジの逮捕劇を見ると、ロシアでは言論の自由が定着し始めているが、西側は言論の自由を投げ捨ててしまったと言える。今、真の意味で民主主義が所在する場所が入れ替わろうとしているのである。2019年6月はまさに時代の流れを変える分水嶺的な瞬間である。

ブライアン・マクドナルドのジャーナリストとしての冷静な分析、ならびに、旺盛な独立心に敬意を表したい。


参照:

注1: Russian media solidarity for Golunov contrasts with loathsome US/UK press bootlicking over Assange: By Bryan MacDonald, RT, Jun/10/2019,
https://on.rt.com/9w48






2019年6月9日日曜日

ヨーロッパが不可逆的に崩壊しようとしている ― 欧州選挙がそのことを示唆


5年に一度の欧州議会の選挙が52326日に実施された。751の議席をめぐって数多くの党が入り乱れる混戦であったが、選挙前から与党は議席を失うだろう、それに代わって大衆受けのする党が躍進するであろうと言われていた。ほぼ、その通りの結果となった。ふたつの政党(中道右派のEPPと中道左派のS&D)が伝統的に強力で、今まで過半数を占めてきたが、今回初めて過半数を割った。選挙前にはこれらのふたつの政党が合計で403議席を占め、過半数(376議席)を維持していたが、選挙後は過半数を割って、332議席にとどまった。躍進した政党はグリーン党とALDEである。

有権者の心理としては現行の欧州議会の政策に不満を抱き、現行の指導者に愛想をつかして、新たな政策を求めている。

どうしてそうなのかと言うと、数多くの要因が絡んでいるようだ。

ここに、「ヨーロッパが不可逆的に崩壊しようとしている ― 欧州選挙がそのことを示唆」と題された論評がある(注1)。著者は辛口の論調と幅広い見識、ならびに、鋭い洞察力で知られているアンドレ・ブルチェクだ。彼の社会を見つめる姿勢には1パーセントの超富裕者と99パーセントの一般大衆との間の格差を如何に是正するべきかと言う難問を解決しようとする熱意が感じられる。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>

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ヨーロッパは「古くから」の植民地主義者の大陸であるが、今やそれは衰えつつある。いくつかの地域は崩壊しさえしている。それは状況が如何に悪いかを示唆するものだ。不思議なことに、ヨーロッパの人たちはそれが自分たちの間違いであるとは決して考えない。

北米も衰えつつあるが、そこでは、人々は他と比較することにはまったく不慣れで、彼らは「状況は良くないと感じる」だけである。すべてがうまく行かないと、彼らは単に二流、三流の仕事に就こうとするだけで、何とか生き延びようとする。

指導者らは大西洋の両側でパニックに陥っている。彼らの世界は危機的な状況にあるのだ。主として中国やロシア、イランといった大国、さらには、南ア、トルコ、ベネズエラ、北朝鮮、フィリピンといった素晴らしい国々がワシントンやロンドン、パリが示す筋書きに従って行動することは大っぴらに拒んでいることから、この「危機」が到来したのである。これらの国々では西側の裕福な市民の祭壇に自分たちの国民を生贄として捧げることにはもはや応じようとしなくなった。いくつかの国々では、たとえば、ベネズエラやシリアでは自分たちの独立のために戦っている。

彼らに対しては正気の沙汰とは思えないような虐待的な禁輸措置や経済制裁が西側によって課される。中国やロシア、イランは今や盛況を極めており、いくつもの分野でヨーロッパや北米よりもうまくやっている。

この先彼らがさらに押しやられるようなことがあれば、中国とロシアならびにその同盟国は団結して、米国の経済を簡単に崩壊させてしまうであろう。米国の経済は粘土細工であり、役立たずの借金で構築されている。また、ペンタゴンは北京やモスクワ、テヘラン政府を軍事的にやっつけることは出来ないということがすでに明白になっている。

西側は何世紀にもわたって世界中を脅威に曝して来たが、その西側も今やほとんど終わりだ。倫理的にも、経済的にも、社会的にも、さらには、軍事的にもだ。西側は依然として略奪しているが、世界の現状を改善しようという計画なんて何も持ってはいない。そのようなことは考えることさえも出来ないのだ。

進歩的で国際的な施策を提案する中国や他の国々を西側は憎んでいる。西側は習近平国家主席や彼の申し子である一帯一路については悪口を叩くが、西側は全世界に向けて提案できるような新しい、誰もが有頂天になるような提案をすることはできないでいる。そうそう、政権交代やクーデター、軍事介入、ならびに、天然資源の略奪はもちろん行っている。だが、それ以外にはどうだろうか?何もない。口を閉ざしたままだ!

*

私はヨーロッパで仕事のために2週間滞在した。その間のことだが、人間開発指数(HDI)ではイタリアやスペインを越しているチェコ共和国(今は名称をチェヒアと変更している)では、私は身だしなみが決して悪くはない何人かの若い男たちが私が泊まっているホテルの前で、何か食べられる物を求めてゴミ箱を物色している様子を目撃した。

ドイツで二番目に裕福な都市であるシュトットガルト(ここではメルセデスやポルシェが生産されている)では若いヨーロッパ人らが跪いて、物乞いをしているのを見た。

今回訪問したEU内の7カ国で目撃したのは混乱であり、無関心、極端な利己主義、まさに醜悪とも言えるような無駄であった。アジア諸国とはまったく対照的であるのだが、ヨーロッパでは誰もが自分たちの権利や特権に執着していた。ところが、責任については誰も関心を払わない。

私の旅客機がコペンハーゲンからシュトットガルトに向かっている時、雨が降り出した。酷い降り方という程ではなく、ごく普通の雨だった。SASが運行していたカナダ航空の旅客機は小型で、到着ゲートには横付けしなかった。ターミナルからは何メートルか離れて駐機し、機長が地上作業員は雷と降雨を理由にバスを用意してはくれないとアナウンスした。ということで、われわれは機内で待機した。10分、20分、そして30分。雷が止んだ。しかし、小雨は続いており、40分経ってもバスは来なかった。1時間後、バスがやって来た。地上作業員は全身をプラスチックで包み、雨からは完全密封するような雨具をまとって、くつろいだ様子で現れた。でも、乗客には傘の一本も提供しなかった。

それから、街の中心部では「I love myself」という落書きが目についた。 

この落書きを見た場所は鉄道の中央駅からそれ程遠くはなかった。この中央駅は、市民の反対があったにもかかわらず、何十億ユーロもかけて改装されていた。この巨大プロジェクトは正気の沙汰とも思えないようなゆっくりとしたペースで進んでいる。深く掘り下げた工事現場ではせいぜい56人の作業員の姿しか見えない。

シュトットガルトは信じられないほど汚ない。エスカレータはしばしば停止し、酔っ払いが至るところに認められる。そして、物乞いもだ。もう何十年にもわたって誰もこの街の改善を行わなかったかのように見える。かっては無料で入館することができた博物館が高額の入場料を請求し、公園や通りに設置されていた公共ベンチはほとんどが姿を消してしまった。

劣化が至る所に見られる。ドイツ鉄道(DB)は実質的に崩壊してしまった。ほとんどすべての列車が遅延する。地域鉄道から始まって、かっては栄光を極めていたインターシティー・エクスプレス(ICE)(このドイツ版の「弾丸列車」は、インドネシアのインターシティー・エクスプレスに比べてさえも、実際に速度を落として運行されている)に至るまで・・・

ヨーロッパで提供されているサービスは、フィンランドからイタリアに至るまで、見苦しい程に悪化している。コンビニ店、カフェ、ホテルのすべてが人手不足であって、それらのサービスは劣化し、ほとんど横柄に近い。人手は、多くの場合、機能が完全とは言えない機械にとって代わられている。至る場所で緊張が増し、何処でも険悪なムードが感じられる。何かを頼むなんて考えられない。相手に噛みつかれ、侮辱されて、えらい目に遭うことだろう。

西側のプロパガンダがかっては資本主義圏の国々でのサービスを如何に栄光視していたかを私は今でも覚えている。あれはわれわれが共産圏に住んでいた頃の話だ。「お客様はいつでも神様のように扱われる。」 そう、その通りだ!何とも笑止千万である。

何百年間にもわたって「ヨーロッパの労働者」は植民地主義者やネオ植民地主義者からの「助成」を受け、世界中のあらゆる非白人国家で略奪を行い、犯罪を犯して来た。彼らはすっかり甘やかされ、さまざまな恩恵を与えられ、非生産的になってしまった。エリートたちにとってはそれはオーケーであった。つまり、西側の帝国主義体制に投票をしてくれる限り、オーケーなのだ。

「プロレタリア層」はこうして右傾化し、帝国主義者となり、快楽主義者となった。

今回、私は数多くの物事を観察することになった。それらについては近いうちにもっと多くを書きたいと思う。

私がまったく目撃しなかった事柄は希望とか熱狂である。楽観主義なんて何処にもなかった。健全で生産的な意見交換はなく、掘り下げた討論を行うこともなかった。つまり、中国やロシア、あるいは、ベネズエラで私がよく見慣れていたものは何処にも見当たらなかったのだ。あらゆる場所で混乱や無関心、劣化だけが目についた。

もっと良心的で、人間的で、近代化された社会主義的熱狂に包まれている国々に対する憎しみだけだった。

*

イタリアは少し違った感じである。ここでは私は偉大な左翼の思想家らと会った。教授や映画製作者、ジャーナリストたちである。私はヨーロッパでは最大規模のサピエンツ大学で話をした。ベネズエラと西側の帝国主義に関して講義をした。私はローマにあるベネズエラ大使館で一緒に仕事をした。しかし、これは本当にイタリアでの出来事だったのだろうか?

私がローマからベイルートへ飛んだ翌日、イタリアでは皆が選挙に出かけた。彼らは私の友人たちが属している「五つ星運動」党に対する支持を止め、同党の支持率は17パーセントに低迷した。その一方、極右翼の「北部同盟」は支持率を倍増させた。

このような状況は実質的にヨーロッパの至る所で起こった。英国では労働党が負け、右翼のEU離脱勢力が著しく多くの票を集めた。極右翼は、ファシスト党に近い勢力を含めて、予想を上回る得票を確保した。

すべてが「ミー、ミー、ミー」の政治だ。言わば、これは「政治的セルフィー」の乱痴気騒ぎである。「ミー」勢力には移民者が多くいる。「ミー」はより良い恩典を手にしようとする。「ミー」はより良い医療サービス、より短い労働時間、等々を手に入れようとする。

いったい誰がそれを支払うのだろうか?そのことについてはヨーロッパでは誰も気にはしていないようだ。ヨーロッパの政治家が西パプアまたはボルネオ、あるいは、アマゾンまたは中東での略奪を遺憾に思う声なんてまったく何も聞かなかった。ましてや、アフリカについてはなおさらのことだ。

ところで、移住者についてはどうか?ヨーロッパからの難民(移住者)のはた迷惑についてわれわれは何か聞いたことがあるだろうか?何百万人にもなり、多くは非合法である。彼らは過去何十年かの間に東南アジアや東アフリカ、南米ならびに亜大陸へ移住した。彼らは集団で意味のなさや憂鬱さ、空虚な存在感から逃れようとしたのだ。その過程で、彼らは地元住民の土地や不動産、海岸、等を何でも奪ってしまった。

「難民は出て行け!」 それもいいだろう。(ついでに言えば、)ヨーロッパからの難民もヨーロッパ以外の地域から出て行け!一方的な主張はもうたくさんだ! 

最近行われた欧州選挙はヨーロッパが進化してはいないことをはっきりと示してくれた。数え切れないほど数多くの世紀にわたって、ヨーロッパは自分たちの喜びのためだけに生き、自分たちの生活を高く維持するために何百万人もの人たちを虐殺して来た。

ヨーロッパは、今、政治システムおよび行政機構を改革しようとしている。この改革は前と同じことを継続するためのものである。もっと効率よく!

そして、何よりもばかばかしいほどに世界はあの過剰に賃金が払われているが、生産性が低く、多くが右翼系で、無気力なヨーロッパのプロレタリアートを哀れみ、さらに何千万人もの他の国の人々を犠牲にするよう期待されている。これは単にヨーロッパの生活水準を引き上げるためなのだ。 

これらはどれもが決して起こってはならないことだ。二度と起こってはならない!是が非でも止めさせなければならない。

何百万人という「よそ者」の犠牲の上に立ってヨーロッパがこれまでに成し遂げたことは、間違いなく、そのために死ななければならないような価値なんて何もない。

ヨーロッパとヨーロッパ人には気をつけよう!彼らの歴史を学ぼう。彼らが世界中に広げて来た帝国主義や植民地主義、大量虐殺についてよく学んで欲しい。

彼らにはファシストへの投票をさせておこう。しかし、彼らを近づけさせるな。彼らが世界中に害毒をばら撒くのを防止しよう。

彼らは自分たちの国益を第一に考えたいのか?実に素晴らしいことだ!われわれもまったく同じことをしようではないか。ロシアの人々を第一に考えよう!そして、アジア、アフリカ、南米を第一に考えようではないか! 

著者のプロフィール: アンドレ・ヴルチェクは哲学者であり、小説家、映画製作者、調査報道ジャーナリストでもある。彼はVltchek’s World in Word and Imagesと称するサイトを立ち上げ、数多くの本を書いている。たとえば、 China and Ecological Civilization。また、オンライン誌の “New Eastern Outlook”にて健筆を振るっている。
https://journal-neo.org/2019/05/30/europe-in-irreversible-decay-eu-elections-are-proof-of-it/

<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。

さまざまな国を訪問し、数多くの人たちと会い、議論をし、意見交換をする著者の姿が目に浮かぶようだ。著者のプロフィールで紹介されているVltchek’s World in Word and Imagesと称するサイトを覗いてみると、旅行記やインタビュー、投稿記事(オンライン誌のNEOに掲載された本引用記事もリストアップされている)、著書、映像(百か国を超える国々での写真が掲載されている。日本に関しては、たとえば、原爆ドームの写真)、講演(ローマのサピエンツ大学での彼の話の様子は動画で紹介されている)、等、が掲載されている。この著者の活動の広さを物語っている。

この著者について私が個人的に感じることはこんな具合だ。たとえば、彼はヨーロッパの国々を訪問し、そこで人々がどんな行動をしているのかを観察し、さまざまな断片を集めて、それらの集合の中にこの地域に住む人々の思考構造を読み取り、それをひとつの概念に抽象化する。アンドレ・ヴルチェクはこの作業を効率的に行い、それにめっぽう秀でている。私ら素人は街で落書きを見ると、「街を汚しているなー」と感じる。しかし、そこから先の知的展開はほとんど皆無だ。しかしながら、この著者にとっては、一見非常に些細な要素ではあっても、この小さな要素が、実は、その先の思考の展開に重要な役割を担うことになる。こうして、素人のわれわれにも理解しやすい説得力のある論評を提供してくれる。何時ものことではあるが、彼の非凡さを痛感させられる。

もっとも感銘させられる点は、彼は一般大衆の目線から国際政治や貿易戦争、経済制裁、武力紛争、内戦、戦争を冷静に観察していることだ。1パーセントの持てる者が残りの99パーセントに対して当然のごとくもたらす不正義を暴こうとする彼の熱意には頭が下がる思いがする。昨今の大手メディア、たとえば、ニューヨークタイムズやワシントンポスト、CNNMSNBCBBCからは真実の報道を期待することはできなくなった。今や、真実は代替メディアからの情報に求めるしかないようだ。われわれが住む世界における出来事は、その理由が必ずしも表面には現れず、われわれの意識や知覚に明確に認識されることは決して多くはない。それらの出来事について隠されている真実とわれわれ一般大衆との間に立って、アンドレ・ヴルチェクがわれわれ一般大衆のために提供することができる知的サービスには計り知れない程大きな価値が秘められている。世間には知識人はたくさんいる。しかしながら、私の印象では、その中で彼は群を抜いているひとりだ。今後もこの非凡な才能に期待したい。


参照:

1: Europe in Irreversible Decay, EU Elections are Proof of It!: By Andre Vltchek, NEO, May/30/2019