2019年4月2日火曜日

最近のグリフォサート由来の癌の訴訟に関して米陪審員はバイエルに対して8千百万ドルの損害賠償を裁定

昨年の829日、「モンサントの有罪判決は始まったばかり」と題して世界中で使用されているグリフォサートを主成分とするバイエル(モンサント)製の除草剤「ラウンドアップ」による健康被害に関する損害賠償訴訟第1号をこのブログでご紹介した。
そして、つい最近の326日、グリフォサートが癌を引き起こしたとして製造者を訴える史上ふたつ目の損害賠償訴訟がサンフランシスコ地裁で裁定された。その結果、この訴訟でバイエル社は二度目の敗訴を喫した。バイエル社は上告すると言っている。
目下、この種の訴訟は11,000件以上もが待機しており、バイエルが敗訴したこれら2件の損害賠償訴訟は今後の訴訟にとってはいい見本になるだろうと言われている。
ふたつ目の訴訟ではバイエルのラウンドアップ除草剤が原告であるエドウィン・ハーディマン氏の非ホジキンリンパ腫の発症に重大な役割を演じたことが判明し、この裁定が言い渡された。バイエル社は75百万ドルの懲罰的損害賠償と590万ドルの補償的損害賠償、および、20万ドルの医療費を支払うよう命じられた。バイエルは、昨年の6月、本除草剤を製造販売するモンサント社を630憶ドルで買収したばかりである。
ここに、「最近のグリフォサート由来の癌の訴訟に関して米陪審員はバイエルに対して8千百万ドルの損害賠償を裁定」と題された2件目の損害賠償訴訟に関する最新の記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>
米陪審員は、ふたつ目の事例として、バイエル(モンサント)のグリフォサートを主成分とした除草剤「ラウンドアップ」が癌を引き起こしたとして、原告のエドウィン・ハーディマンに8千百万ドルの損害賠償を支払うよう裁定した。
サンフランシスコ連邦裁(訳注:記事によっては「連邦裁」であったり「地裁」であったりする。どちらが正解かについては、私自身にとってもまだ決着がついてはいない・・・)の陪審員はバイエル(モンサント)社は原告のエドウィン・ハーディマンの非ホジキンリンパ腫の発症に関して法的な責任を有すると述べた。
ラウンドアップの製品設計には欠陥があり、モンサントは本除草剤が癌を引き起こす可能性について警告を発することを怠り、同社の行動は軽率であったという事実を見い出し、米陪審員は560万ドルの補償的損害賠償と75百万ドルの懲罰的損害賠償、ならびに、20万ドルの医療費をハーディマン氏に支払うよう裁定した。
陪審員の評決後、ハーディマンは記者らに向かって「圧倒された思いだ。まだ信じられない感じだ」と言った。
ハーディマンの訴訟は今後の裁判の指標として見なされ、損害の範囲を決定し、決着の選択肢を定義する上で大きな助けとなろう。同地方裁判所のヴィンス・チハブリア判事の手元にはこの判決の他に760件以上もの訴訟案件が待っている。
ハーディマンの弁護士を務めるアンドラス・ワグスタッフ法律事務所のエイミー・ワグスタッフとムーア法律事務所のジェニファー・ムーアは声明文で下記のように述べた:
「ハーディマン氏は陪審員全員がモンサントは彼の非ホジキンリンパ腫の発症に責任を負うとの裁定を下したことに非常に喜んでいる。裁判の間中われわれが主張して来たように、40年以上も前のラウンドアップの販売開始以降、モンサントは責任を持って行動することを怠って来た。モンサントの行動に関してはっきり言えることは同社はラウンドアップが癌を引き起こしても気に掛けず、その代わりに公衆の意見を誘導し、ラウンドアップに関して純粋、かつ、正当な懸念を抱く者に対しては、それが誰であっても、卑劣な手段で攻撃をして来た。モンサントの従業員でラウンドアップの安全性やモンサントの行動に関して弁護しようと裁判所へやって来る者は一人もいないという事実は実に多くを物語っている」と弁護士らは述べている。 
「本日、陪審員はモンサントが過去40年間にわたって行って来た企業としての不正行為について責任を負わなければならないと明確に裁定を下し、モンサントに対して彼らのビジネスの在り方は変える必要があるとするメッセージを送りつけた」と弁護士らは付け加えた。
この訴訟は全米で裁判を待っている11,200件の訴訟の内でまだ2番目でしかない。
次の裁判はピリオド対モンサントの訴訟であって、これは3月28日頃にオークランドにある州裁判所で開始の予定で、広域係属訴訟において指標となるこの二つ目の裁判は5月に開始の予定である。しかしながら、今月の始めに行われた公聴会でチハブリア判事は、両当事者が示談の交渉を配慮することができるように、ピリオド裁判に関する陪審員の評決が終了後、連邦訴訟については「休憩のボタンを押す」積りだと述べた。

昨年の夏、かって学校の校庭管理者であって、何年にもわたって5カ所の校庭で、最低限の保護具を付けただけで、150ガロンもの「レンジャープロ」を散布していた原告からの同様の訴訟において、州裁判所の陪審員はバイエル(モンサント)に対して2億8千9百万ドルの損害賠償を裁定した。後に、その額は78百万ドルに減額されたものの、次のハーディマン裁判がやって来た。この最初の裁定についてはモンサントは上訴している。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

329日の別の記事(注2)によると、フランクフルトでは木曜日(328日)にバイエルの株価がGMT830分までに1.14パーセント下落し、55.69ユーロとなった。モンサントの買収以降、同社の市場価格は46パーセントも下落した。

今回報道された陪審員の裁定はバイエルに対してどれ程の影響を与えるのであろうか?この引用記事で報じられた数値を基にして考えてみよう。仮に78百万ドルとか8千百万ドルといった裁定が今後も続いたとしたら、莫大な額となる。バイエルの負担は単純計算すると1万件では7800憶ドルに達する。バイエルがモンサントを買収した金額が630億ドルだというから、これは買収金額の約12倍に相当。今後、個々の案件に関する裁定や示談交渉がどの辺りで落ち着くのかが見ものである。



参照:

1US Jury Punishes Bayer with 81 Million Dollar Damages Ruling in Latest Glyphosate Cancer Trial: By Sustainable Puls, Mar/28/2019

2MONSANTO ORDERED TO PAY 80 MILLION DOLLARS IN ROUNDUP CANCER TRIAL: By Staff, Afp.com, Mar/29/2019






2 件のコメント:

  1. 11,000件以上の訴訟とは驚きです! バイエル社は日本からの収益だけでやってず、生産中止したのとニュースが欲しいものです。

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    1. kumakaさま、
      コメントを有難うございます。
      11,000件とは非常に多いですよね。訴訟大国の米国のことですから、中には便乗組も混じっていることでしょう。しかしながら、モンサントが情報を隠し、歪曲して来たことによる健康被害の後始末としては分相応かも知れません。

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