2019年4月21日日曜日

もしもウィキリークスを失うならば、われわれはすべての自由を失う - ピルジャー

ロンドンのエクアドル大使館にて7年間も籠城して来たジュリアン・アサンジがついにロンドン警視庁によって逮捕された。この出来事を受けて、海外特派員、調査報道ジャーナリスト、あるいは、記録映画製作者として素晴らしい活躍をして来たジョン・ピルジャーがこの逮捕劇について強烈な批判を行っている。彼は「もしもウィキリークスを失うならば、われわれはすべての自由を失う」と言った(注1)。もちろん、ピルジャー以外にも数多くの識者が批判を寄せている。

ウィキリークスの創始者であるジュリアン・アサンジは何年間もロンドンにあるエクアドル大使館で亡命生活を余儀なくされてきた。アサンジは自分が置かれている状況は「恣意的な拘禁」であるとして国連に訴えていた。国連の人権に関する高等弁務官事務所の「恣意的拘禁に関する作業部会」はアサンジの主張を認める判断を下した。これは2015年の12月のことであった。そして、同作業部会は2016122日に英国とスウェーデンにその意見書を送付した。この作業部会はスウェーデンと英国に対してアサンジ氏の安全と健康を確実にするために彼が置かれている現状を吟味し、彼が自由に行動する権利を行使できるようにし、国際法によって保証されている拘禁時の人権を彼が十分に享受できるようにすることを求めた。また、同作業部会はアサンジの拘禁は終息させるべきであり、彼には補償の権利を与えるべきだとの意見を表明した。

あの時点からもう3年余りが経過した。

国連の国際法に詳しい専門家パネルが上記のような意見を表明していたにもかかわらず、米国に追従する英国とスウェーデンは意に介さなかった。西側の大国は「民主主義」と並んで「法の秩序」が重要な規範であると他国に対して説くのが常であるのだが、自国の行動については都合よく忘れてしまう。今日の国際政治が持つ偽善性が、またもや、恥も外聞もなく一般大衆の眼前で繰り広げられている。

本日はこの記事(注1)を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>


Photo-1: 2019412日、ベルリンの英国大使館の近くでジュリアン・アサンジの逮捕に抗議をするアサンジの支持者たち。©REUTERS / Fabrizio Bensch

·        米国によって押し進められているウィキリークスの創始者であるジュリアン・アサンジの訴追は一般大衆の自由に対する悪意に満ちた攻撃であり、これは米国の優位性を何とか維持しようとする老いた大国によって行われているものだ、と英国に本拠を置いて活動するジョン・ピルジャーがRTに語った。 

誰もがアサンジに起ころうとしていることを勘違いしてはならない。彼はワシントン政府が中東で行って来た残虐行為を一般大衆に暴露したことによって米政府に恥をかかせたのだ、と華々しい受賞歴を持ち、英国を拠点にして活躍するジャーナリスト、ジョン・ピルジャーがRTの「Going Underground」の番組で述べている。

「米国はわれわれに深い憤りをもたらした。われわれが今真っ只中に置かれている状況は、こともあろうに、その優位性を維持するために四苦八苦している、世界でももっとも強力な筈の大国によってもたらされたからだ。情報における優位性、最新技術における優位性、文化における優位性、等。これに対してウィキリークスは極めて手厳しいハードルを提示した」と、彼は主張する。

もしもアサンジを失うならば・・・ ところで、アサンジのような人物は多くはいない。多分、片手で数えられる程度であって、誰も彼には匹敵しない。もしもウィキリークスを失うならば、われわれは自由のすべてを失うことになるだろう。そうなったら、われわれは(政府の行動について)疑問を挟むことは止めざるを得ない。

エクアドル政府がアサンジの政治亡命を取り消し、英国警察がアサンジをロンドンのエクアドル大使館から引っ張り出すことを許容したことから、アサンジは木曜日(411日)に英官憲によって逮捕された。ウィキリークスの情報源となったチェルシー・マニングがイラクやアフガニスタンにおける米軍に関する機密情報をリークした際に彼女と共謀したとして米国はアサンジを非難している。

マニングのリークに基づいて成されたウィキリークスによる出版、特に、「巻き添え殺人」と称される動画は「米国の植民地戦争が有する虐殺的な性格」を隠蔽しようとする試みにとっては大打撃となった、とピルジャーは言う。(訳注:「巻き添え殺人」と称される動画はYouTubeにて「Collateral Murder - Wikileaks - Iraq」という表題で掲載されている。https://youtu.be/5rXPrfnU3G0 引き金を引きたがっている米兵の言葉が実に衝撃的だ。人を殺すことに躍起となっているかのようだ。しかも、相手は民間人である。ピルジャーは、下記に示すように、「米国の戦争がどのようなものであるかについてはすべてがあの動画で示されている」と言っているが、この動画を見るとその意味がよく分かる。興味のある方はご一覧ください。)

「米国の戦争がどのようなものであるかについてはすべてがあの動画で示されていたので、あの動画を見た人は誰でもがウィキリークスの暴露以外にはもう何も読む必要はないだろう。ところが、(米国には)われわれはこんなことはしない、われわれは永遠に無害な存在だというある種の合意のようなものが存在する。率直に言って、私は「洗脳」という言葉に代わるもっと優しい言葉を見つけようとしているのだが・・・」と、彼は説明した。

「われわれ」の側では、単純に言って、こんなことは起こらない・・・ 専制主義国家やならず者国家で起こるだけだ。中でも、米国が最大のならず者国家であることは明らかだ。

ウィキリークスに対する攻撃は西側の、あるいは、ジャーナリズムの現状を象徴するものだとピルジャーは言う。西側のジャーナリズムは公衆に代わって政府を監視するという役目を持っているが、それを放棄してしまったのだ。

われわれは全世界が基本的な民主主義を放棄することを手助けしてしまった。意見の相違を主張し、挑戦をすることによって、暴露することによって、説明責任を果たす権力を保持することによって、あるいは権力層に羞恥を感じさせることによってだ。些細な羞恥や奇妙なセレブの羞恥ではなく、これはまさに本物の羞恥だ。ウィキリークスはジャーナリズムが果たさなければならない公衆に対するサービスを提供したのだと彼は述べた


ピルジャーは次のように言った。アサンジは「政治の気まぐれ」によって逮捕され、彼は米国で起訴され、刑務所へぶち込まれる可能性がある。第二次世界大戦から生まれ、世界人権宣言の基礎となった根本原理そのものを衰退させる新たな章が始まっているのかも知れない。これはこれらの根本原理が如何に脆弱であるかを示すものだ。」  

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

「ウィキリークスはジャーナリズムが果たさなければならない公衆に対するサービスを提供したのだ」とピルジャーは指摘している。ジャーナリストとしてやるべきことをやって、アサンジは罪に問われているのである。これ以上の皮肉があるだろうか?

民主国家であると自他ともに認められている国の市民が「政治の気まぐれ」によって何年間も拘禁状態に置かれ、その挙句に逮捕されるとしたら、その国の市民にとってはこれ程大きな不幸はない。一国の政治において軍部が発言力を増すと、文民政治家を圧迫し始める。かっての日本はこのような事態を経験した。今の米国では、軍産複合体とそれを後押しする大手メデイアが国内政策や対外政策をブルドーザの如く押しまくっている。国際法なんて存在しないかのような振る舞いだ。法の支配はいったい何処へ行ってしまったのであろうか?言葉の定義からすれば、もはやそのような国は民主国家とは言えない。

テキサス州選出の共和党のロン・ポール元下院議員は、私の個人的な考えでは、米国の政治家の中ではもっともまともな政治家のひとりである。つまり、われわれ一般庶民の常識や倫理観、あるいは、伝統的な価値観にもっとも近い。彼はジュリアン・アサンジの逮捕について次のように述べている(注2)。

ウィキリークスの出版者であるジュリアン・アサンジが先週英国の官憲によって逮捕された。この英国の行動は米国からの強制送還の要請に基づくものだ。この一連の動きはわれわれすべてに対する攻撃であるとも言える。これは米国憲法に対する攻撃である。これは出版の自由に対する攻撃である。これは言論の自由に対する攻撃である。これはわれわれの政府がわれわれの名前を借りてわれわれが収めた税金を何のために使っているのかをわれわれが知ろうとする権利に対する攻撃でもある。ジュリアン・アサンジはハンガリーのミンドセンティ枢機卿または南アのネルソン・マンデラがそうであったようにあらゆる点で政治犯であると言える。

二人の著名な言論人や政治家の言を総合すると、アサンジはまさに「政治の気まぐれ」に翻弄されているということだ。われわれはこの点を明確に認識しておかなければならない。




参照:

1If we lose WikiLeaks, we lose a whole stratum of freedom – Pilger: By RT, Apr/13/2019, https://on.rt.com/9s60

2Julian Assange: Political Prisoner: By Ron Paul, Information Clearing House, Apr/16/2019








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