また、米国と中国との間の貿易戦争のさ中、対イラン経済制裁に違反したとの理由でフアウェイの財務担当重役がカナダで逮捕され、米国へ移送される気配だ。逮捕された重役はフアウェイの創業者の娘である。どう見ても、この財務担当重役の逮捕は政治的圧力をかけるためのものだ。
また、ロシア産の天然ガスをドイツに輸送するノルドストリーム2の建設についても米国は反対の意を表明し、米国産のLPGを輸入せよとドイツに迫り、この海底パイプラインの建設に協力している企業に対しては経済制裁を発動すると脅かしをかけている。しかしながら、ドイツにとっては安価なロシア産の天然ガスの選択は経済的なエネルギー源を確保するという国益の問題であって、この方針を覆すことはできない。ドイツ政府は米国に対してドイツの国内政策に口を挟むなと反論している。こうして、ドイツと米国の2国関係は急速に冷却した。このノルドストリーム2に関する圧力だけではなく、米国政府はドイツに軍事費をもっと多く拠出せよと迫っている。つまり、米国製の武器をもっと買えという意味だ。
ここに、「フアウェイやノルドストリーム2を攻撃するギャング経済」と題された記事がある(注2)。米国経済はいよいよ「ギャング経済」と称されるようになった。
本日はこの記事(注2)を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。
<引用開始>
Photo-1
多くの米国人は自分の世界観や米国の他の国家に対する関係についての理解は大学レベルの「Economics 101」の授業で学んだ内容に根ざしている。彼らは世界市場を自由競争の場として見る。そこでは違った国々やいくつもの国際企業が「競争」する。そして、消費者や一般社会ならびに各国は最高の製品やサービスに対して「ドルによる投票」をするのである。
ジョージ・ソロスやアンネ・マリー・スローターといった人物で代表されるこの妄想的な空想世界においては、米国や西側の国々は理想的な「開かれた国際市場」として独占的な地位を占る。単純に言って、彼らは最高であるからだ。西側の金融機関や国際企業によって提供される製品やサービスは他の国や他の企業によって提供されるものよりも優れている。この妄想は西側の金融機関のエリートたちに対して世界を指導し、助言するよう鼓舞する。彼らは世界中の国々の開発を支援し、多分、何時の日にか西側世界のような優れた社会が到来するだろうと言う。
「エネルギ-における優位性」の構図:
この西側の筋書きは間違いであると論じる者にとっては最近の米国の動きほど確信を与える物はない。ノルドストリーム2のパイプライン建設やフアウェイの革新技術に対する米国の対応振りは同国は国際企業間の自由競争にはこれっぽっちの関心も持ってはいないと映る。
ノルドストリーム2は現在建設が進められている天然ガスを輸送するパイプラインであって、今年の末には建設が完了する予定だ。このパイプラインはロシアの国営エネルギー企業がEU圏内の国々へ天然ガスを売ることを可能にする。EU各国の市民はノルドストリーム2の建設に賛成である。ロシア産の天然ガスを入手する上で多いに利便性を拡大し、追加してくれるからだ。
しかしながら、米国においては、トランプ政権は反対勢力である民主党の指導者らと共にドイツや他のヨーロッパ諸国の市民はロシアの天然ガスを調達するなと要求。愚かにも、米国産の天然ガスを大西洋を横断して輸入し、調達するよう求めている。
地球の反対側から遥々と天然ガスを輸入することは中央ヨーロッパの国々にとってはロシアから国境を越して輸入する場合よりも遥かに高くつくことは常識的にも明白である。しかしながら、ヒステリーに満ち満ちた政治環境においては、ロシア政府に対してはあらゆる種類の無関係な課題や言いがかりを持ち出して、米国の政治指導者は経済制裁をちらつかせ、米国産の天然ガスを購入するようヨーロッパの市民に強要している。
米指導者がロシア政府に対して人権問題をベースにした批判を持ち出す場合、その偽善性は明白である。サウジアラビア王国は残酷な専制国家であり、斬首をしたり、拷問をかける国ではあるが、エネルギーと武器の市場としては米国の最大級のビジネス・パートナーである。ジャーナリストのジャマル・カショーギの残酷な殺害が起こったが、これは二国間のビジネス関係には何の差異をももたらすことはなく、トランプ大統領は財政上の観点からサウジ政府を大っぴらに援護した。
米国のエネルギー企業のために金を儲け、競争相手であるロシアのエネルギー企業を弱体化するという目標は注意深く隠しておこうとする気配さえも見えない。ホワイトハウスは「エネルギー分野における優位性」はその政策の根幹であると大ぴらに喋り、米国の原油・天然ガス企業の利益を如何に保護するのかを開陳する。しかし、政府の試みは見え透いている。
中国に対するスマートフォン戦争:
ドイツ人やベルギー人、さらには、他のヨーロッパの人たちは「自分たちのドルを使って投票」し、原油や天然ガスを何処から調達するかを選択するという自由を持たないのだろうか?ウオール街に対抗する地政学的な競争相手が登場してくると、明らかに、「国際的に開かれたシステム」はもはやそれほどは開かれていないのである。
他国にちょっかいを出し、何かを強要するためにはこれとまったく同様の美辞麗句や手法が用いられる。たとえば、中国のフアウェイの携帯電話技術を買うなと彼らは要求する。フアウェイは世界で最大級の電話機製造企業である。同社は鄧小平によって開発され、今は習近平によって推進されている社会主義市場モデルの不可欠な構成要素である。
フアウェイの携帯電話は電池の寿命がより長く、優れたカメラを内蔵し、耐久性が高く、米国製の電話機よりも長持ちがする。世界中で、たとえば、インドや南米、アフリカ諸国では一般大衆はこれらの安価で高品質の電話機を選択して来た。フアウェイの製品が中国国内を含めて世界中で一般大衆の選択の対象となったことから、アップルの利益は最近低下している。
しかしながら、米指導者は世界中の一般大衆が「自分たちのドルでの投票」は行わず、高級な電話機を買えと要求している。もしも自由市場の論理を適用するならば、米指導者は米国の製造業各社にもっと競争力を付けろと要求することであろう。それに代わって、米指導者はポーランドやブルガリアといった国々に対してフアウェイとのビジネス関係を中断するよう要求している。
米国内においては、中国のメーカーが市場に投入した最新型の「P20」モデルについて「自分たちのドルで投票」することは絶たれてしまった。彼らはこのモデルを調達することはできない。国家的な安全保障上のリスクを理由に中国製の携帯電話はすべてが販売禁止となった。
米指導者は中国企業によって製造されたスマートフォンは米国の安全保障にとっては脅威になると主張する。何故ならば、これらの企業は中国の軍部や政府と協力関係にあるからだと言う。アップルやAT&T、ベライゾン、ならびに、電話通信分野における他の米企業は米国の諜報部門と分かち合っている関係は隠そうともしないことを考慮すると、彼らの主張は実に偽善的である。
米国製の電話機は中国製の電話機と比べ「軍部」または「諜報部門」にとっての脅威は少ないと言いたいようだ。本質的には、フアウェイを設立した中国共産党がこの電話通信分野の大企業との関係を維持しないよう要求すること自体が馬鹿げている。
紳士的なビジネスではなく、ギャングのようだ:
「自由競争」や「開かれた国際市場」を擁護する以上に、米指導者はマフィアのようなギャング組織の経済哲学を採用しているようである。あたかも保証金をゆすり取る犯罪行為のように、米指導者は幾つかの特定の国々は自分たちの「縄張り」であると主張する。彼らは自分たちの競争相手を締め出すよう要求し、自分たちを邪魔する相手には「その結果としての制裁」を急いで課そうとする。
米指導者は彼らが世界中で広げて来たイデオロギーそのものの信頼性を自分たちの手で傷つけようとしている。彼らは、「自由競争」は、事実、妄想であり、政府というものは金持ちの給与支払者のために物事を不正処理し、彼らの命令に従う傾向がある。「自由競争」という持説は開発途上国や潜在的な競争相手を抑制するために活用してきたものであるが、米指導者は今それを無視し、ウオール街やシリコンバレーの占有者らの縄張りを喜んで保護しようとしている。
真実を述べるとすれば、米国のもっとも富裕な連中は自分たちの個人的な犠牲や優秀さによって富を手にしたわけではない。また、西側世界は世界における自分たちの地位を紳士的なビジネス慣行を通じて築いたわけでもない。
21世紀においては、世界の国々はこれらの自由市場という妄想を拒み、政府を通じて国家がコントロールする経済を確立し、その結果貧困を一掃し、生活水準を高めるて来た。フアウェイは、ロシアのガズプロムやロスネフトと同じく、経済革新の申し子である。経済革新の中で、冷戦後の各国政府は国民に代わって経済をコントロールする行動をとって来た。
西側の国々の労働者階級の極めて多くの人々とは異なり、ロシアや中国の国民はこれらの超ド級の企業を築き上げる過程で後れを取ったわけではない。20世紀のユーラシアにふたつの大国が頭角を現すにつれて、自由市場のせいではなく、社会主義的な中央政府の計画によって何百万人もが貧困から解放されたのである。
著者のプロフィール: カレブ・モーピンは政治分析を専門とし、ニューヨークに本拠を置く活動家でもある。彼はボールドウィン・ウオレス大学で政治学を学び、ウオール街の占拠に触発され、それに関与した。オンラインマガジンである「ニューイースタンアウトルック」に特別寄稿をしている。
<引用終了>
これで全文の仮訳が終了した。
米国の他国とのビジネス慣行は、同盟国に対するそれも含めて、ギャングのようだとする著者の見方は多くの賛同を得ることであろう。近い内に「ギャング経済」という新語が定着するかも知れない。世間を見回すと、この主張を真っ向から否定できるような事例は簡単には見当たらず、むしろ肯定する材料ばかりが思い浮かぶ。今や、それが現実である。
4月6日の報道によると、フアウェイの第5世代の電話機をボイコットせよとの米国の要求については、ドイツばかりではなく英国も反対である。さらには、米国にはフアウェイの技術に対抗できるような第5世代の電話技術を提供するメーカーがないという(注3)。このことが米国をこれほどまでに無分別な振る舞いをさせたようだ。これらの事実を考えると、フアウェイ問題はひとつのエピソードでしかないが、米国全体を見回すと米国経済の凋落が現実のものとなって来ている兆候かも知れない。
参照:
注1: Samsung and Apple are losing ground to Huawei because their phones are
too expensive research shows: By Ryan Browne, CNBC, Feb/21/2019
注2: Gangster Economics Against Huawei and Nordstream 2: By Caleb
Maupin,
NEO, Apr/04/2019
注3: Is America losing its grip on world economy?
5 big defeats for US financial interests abroad: By RT, Apr/06/2019, https://on.rt.com/9rmz
0 件のコメント:
コメントを投稿