2019年4月29日月曜日

ロシアゲートには三つの目的がある

2016年の米大統領選ではヒラリー・クリントンを下して、ドナルド・トランプが勝利を収めた。しかしながら、民主党が推すヒラリー・クリントンの陣営は自分たちの大失敗を認めるには余りにも自尊心が高く、潔しとはしなかった。この傲慢な心情こそがトランプ大統領がロシアと結託してクリントンを排除したとか、米国の民主主義を破壊したという作り話に繋がって行った。この大騒ぎは米国の政治を2年間以上にわたって機能不全に陥れた。言うまでもなく、「ロシアゲート」以外にも真剣に検討しなければならない喫緊の政治課題は山積していた。

ミュラー特別検察官はトランプ大統領がロシアと結託したのかどうかについて2年も掛けて調査を行い、その調査結果が3月末に公表された。それによると、民主党や軍産複合体ならびに大手メディアの期待を裏切って、トランプ大統領がロシアと結託して2016年の大統領選に介入したという証拠は見い出すことができなかったと報告した。

この一連の動きにはいったい何の目的があったのだろうか?

ここに、「ロシアゲートには三つの目的がある」と題された最近の記事がある(注1)。著者は定評のあるポール・クレイグ・ロバーツだ。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。ややもすれば見落としかねないロシアゲートの隠された目的について少しでも多く学んでおこう。


<引用開始>

ロシアゲートには三つの目的がある。

そのひとつはトランプ大統領がロシアとの関係を正常化することによって巨額な軍事費の予算に影響を与えることがないようにすること、ならびに、軍・安全保障複合体の権力が低下しないようにすることにある。

ふたつ目は、ジェームズ・ハワード・カンストラーの言葉を借りて言えば、公的ならびに政治的関心を全面的にこの作り話に振り向けることによって、「2016年の選挙戦で米政府高官がヒラリー・クリントンと共謀して繰り広げた犯罪行為を隠蔽する」ことにある。

三つ目はトランプの選挙運動を妨害し、たとえ彼が勝利を収めたとしても選挙公約を果たせないようにすることにある。 

トランプあるいはトランプ陣営がロシアと結託して米国の大統領選をまんまと盗み取ったとする主張を支えるような証拠についてはミュラー特別検察官は何も見出すことができなかったにもかかわらず、さらには、トランプが司法を妨害したという証拠も見いだせなかったにもかかわらず、ロシアゲートは上記の三つの目的を果たしてしまった。

トランプはロシアとの敵対的な関係に陥って、今や身動きさえもままならない有様だ。ネオコンの連中はトランプを弄び、白日の下でベネズエラ政府を崩壊させるという見え透いた犯罪行為に踏み切らせることによって、敵対的な対ロ関係をさらに悪化させることに成功した。 

さまざまな種類の重犯罪(訳注:重犯罪とはアメリカでは通例、死刑または1年を超える懲役や禁錮刑を受ける重大犯罪を指す)をもたらしたヒラリーの犯罪行為、ならびに、CIAFBIおよびオバマ政権の司法部門の犯罪行為はロシアゲートという作り話によって見事に覆い隠されてしまった。これらの重犯罪には党利党略のためにでっち上げられた名目に基づいて外国情報活動監視裁判所から入手したスパイ行為の実施に関する認可も含まれている。

トランプを訴追する証拠は見い出すことができなかったにもかかわらず、ミュラー報告書は司法に対する妨害行為があったとする疑惑からトランプを解放することはせずに、その責任のすべてを司法長官に委ねてしまった。換言すると、ミュラーは何の証拠もない中で、バー司法長官に隠蔽の責任を取らせるよう設定することによってこの論争を継続させたのである。

彼自身が調査権を与えられた犯罪については証拠を見いだせなかったと報告書の中で報告しているにもかかわらず、トランプが司法を妨害することが可能であったのかどうかに関してはミュラーは何の説明も加えてはいない。これはとりもなおさずミュラー自身の政治的腐敗を証拠立てるものだ。実際には無かった犯罪に関する調査をいったい誰が妨害することができるというのであろうか?

カンストラーが述べているように、「特別検察官の最大の失敗は、もちろん、司法の妨害があったという主張について結論を下そうとはしなかったことにある。メディアが受け入れ、それを明らかにしようとはしないということは特別検察官が結論を導けなかったことは立件することができないということとまったく同義であり、これはミュラー特別検察官による職責の不履行である。彼は不正直にも報告書の中でその不履行を何か別物であるかのように説明している。ミュラー自身について言えば、多分、これは検察官としては不正な犯罪行為である。」 

ミュラー報告書に見られる不正直さはこれだけというわけではない。ミュラー報告書は軍・安全保障複合体や民主党員ならびにプレスティチュートらによって広められてきたロシアゲートという陰謀論を明確に排除したが、ミュラー報告書はトランプやトランプ政権の高官との共謀ではないものの、ロシアは米国の選挙に干渉したという主張を当り前のことのように見なしている。何の証拠も挙げずに、ミュラーはこの干渉は事実であったかのように報告している。事実、ロシアによる干渉があったのかどうかに関してはこの報告書では何の記述もされてはいないし、本報告書以外でも何処にも見当たらないのである。 

ロシアによる干渉については数多くのプレスティチュートらが際限もなく繰り返して報道したことから、あたかも本当に起こったことであるかのように錯覚させた。こうして、ミュラーは単純にそのように思い込んだ節がある。たとえば、ミュラー報告書はロシア人が民主党全国委員会(DNC)の電子メールに不正侵入をしたと述べている。しかしながら、この主張を支える証拠は何も提示されてはいない。さらには、これは既に知られている証拠とは矛盾する主張だ。ウィリアム・ビニーと彼の専門家グループはDNCの電子メールは、個々のメールが示すタイム・スタンプから判断すると、インターネット経由でダウンロードする場合よりも遥かに高速でダウンロードされていることを示した。しかし、この事実はミュラーや民主党員ならびにプレスティチュートらによって巧妙に無視されたままである。(注:ウィリアム・ビニーによる専門的な指摘に関しては、この「芳ちゃんのブログ」で2017729日に掲載した「元諜報専門家のグループがロシア人によるハッキングに関して疑問を表明」をご一覧ください。)

異論の余地がないこの事実を無視し続けるひとつの理由は彼らは誰もがジュリアン・アサンジを捕まえたいからだ。アサンジに関してはでっち上げが作文され、広く報道されている主張によれば、アサンジは不正侵入によって取得した電子メールを彼に与えたとされるロシア人と共謀したと言う。ロシアが電子メール・サーバーに不正侵入をした証拠はなく、アサンジはロシアは情報源ではなかったと言っていることから、ミュラーの証拠はいったい何であろうか?ミュラーの証拠は、明らかに、DNCのコンピュータに不正侵入したと彼自身が主張するロシア人を相手にミュラーは政治的な理由から彼らを起訴したことだ。あの起訴は何の証拠もないままに進められた。この間違いだらけの起訴はミュラーによって計画され、トランプとプーチンとの間でヘルシンキで行われる首脳会談の前夜に報じられた。明らかに、首脳会談の成功を邪魔するためであった。 

起訴には証拠を提示する必要はない。ミュラーは何の証拠も握ってはいなかった。さらには、ミュラーは、恐らく、コンピュータに不正侵入したとされているロシア諜報当局のエージェントらの個人情報については何も知らなかったに違いない。そもそも、これはミュラーにとっては関心事ではなかったのだ。彼には証拠を揃える必要がないことを彼自身が知っていた。何故ならば、裁判が実際に行われることはないからだ。これらの起訴は単なる政治的なプロパガンダであって、実質は伴わない。

ロシアによる干渉という神話は実に巧妙に構築されており、ロシアゲートの作り話についてはさもなければ非常に注意深くて正確であることが常のグレン・グリーンワルドさえもがロシアによる干渉を事実と見なしている程だ。トランプの支持者の全員とは言わないまでも、彼らの多くは自分たちの代表であるトランプを罠に陥れようとしてロシアを非難するのだが、これは必ずしも成功しない。 

ロシアゲートに関する嘘やでっち上げの政治的目的は完全に明白であるにもかかわらず、トランプの支持者たちさえもがロシアの干渉という嘘に対しては帽子をちょっと持ち上げて敬意を表す始末である。これは自分たちがトランプを過度に支持することに罪悪感を覚えないようにするための行動だ。言葉を換えて言えば、ロシアゲートはトランプの支持者が彼を防護するために何処まで積極的に支持するのか、特に、ロシアとの緊張を和らげる意図がトランプに残っているとすれば、何処まで彼を防護するのかに関して支持者が一線を画すように導き、これにまんまと成功したのだと言える。 

ロシアゲートはロシア人との接触が米国人の心に犯罪という意識を覚えさせることに成功した。こうして、軍・安全保障複合体は自分たちの予算と権力が核大国間の和平の動きによって脅威に曝されることがないようにしたのである。

民主党やプレスティチュートは事実によって悩まされることなんてない。彼らは事実とは関係なしにトランプをやり込めることに取り組んでいるからだ。そして、ミュラーもそうだし、ブレナンもコミーもその通りだ。また、他の数多くの腐敗し切った政治家たちも同様である。

ジャーナリストの不正行為の格好の事例はグレン・グリーンワルドのインターセプトで「ウィリアム・バーはミュラー報告書について皆を誤導した。今や、民主党は彼の辞職を求めている」と書いたジェームズ・ライゼンに見られる。「トランプを吊るし上げろ」と叫ぶ民主党のギャング共を引用して、間違いであることが分かっている彼らの嘘を疑おうともせずに、ライゼンは民主党にミュラー報告書はトランプの罪を証明するものであるとする陳述を展開させようとしている。そして、ライゼン自身は同報告書は民主党を支援するものだと事実を曲げて述べている始末だ。彼はバーのメモと報告書との間には大きな違いがあると言う。バーはこれから公開する報告書について嘘をついていると言わんばかりだ。 

メモと報告書の違いは長さだけの違いである。しかしながら、このことがライゼンが次のようなことを書くことを引き止めるには至らなかった。「結局のところ、司法を邪魔した廉でミュラーがトランプを訴追することには踏み切らなかった中心的な理由は現職の大統領は起訴することができないとする司法省の長年の意向に基づいているとミュラーは報告書で明確に述べている。」 これはトランプを起訴するだけの証拠は見つからなかったと述べた後でミュラーが挿入した文章である。これは起訴しないことのもうひとつの理由であって、必ずしも根本的な理由ではない。そして、ライゼンは、米法務省の政策を除けば、ミュラーはトランプを起訴することができたと主張する民主党のレナート・マリオッティの言葉を用いて自分自身の間違った報告を支えようとしている。ここでもまた、ミュラー自身が犯罪は存在しなかったと結論付けたトランプに関してミュラーがどうやって起訴するのかについてはライゼンからも、マリオッティからも、さらには、他の誰からも何の説明もない。 

ミュラーがロシア諜報機関のエージェントたちを証拠も無しに起訴したように、彼は証拠も無しにトランプを起訴することはできただろうが、証拠も無しに大統領を起訴するなんて明らかに国家に対する反乱を扇動するような行為であることから、検察官はそのような案件を取り上げたいとは決して思わないであろう。

存在しなかった犯罪に関して司法の邪魔をした廉でトランプを起訴したいとする民主党員やプレスティチュートらの主張はトランプに対する嫌悪感がもたらした狂気の程を示すものだ。民主党や米メディア界を動かしている原動力は狂気と嫌悪である。それ以外の何物でもない。

また、ライゼンは実証されてはいないロシア人ハッカーはバーの報告書メモでは見過ごされていると主張している。これは正確ではないばかりではなく、ライゼンはこの調査の目的はトランプが関わったとされるロシアとの共謀で何らかの違法行為があったかどうかを調べることにあり、同調査はそのような行為は無かったと断定した事実をすっかり忘れてしまっている。他のプレスティチュートだけではなくグリーンワルド自身も含めて、彼らと同様に、ライゼンは事実としては認められていないロシア人による不正侵入を真に受けている。ここでも、嘘は長い間繰り返せば、その嘘は真実味を帯びて来るという状況を目にすることができる。グリーンワルドさえもが自分が騙されていることを見抜くことができないでいるのだ。 

ジェームズ・ライゼンは一時は正直なリポーターであった。彼はピュリッツー賞を受賞している。彼はCIAの非合法的な行動について報じた際に司法省から刑務所へぶち込むぞと脅しをかけられたが、自分の情報源を明かすようなことはしなかった。しかし、ライゼンは最近のジャーナリズム界では真理を報告することは罰され、嘘をつくことによって報酬にありつけることを発見した。ライゼンは、他の連中のすべてがそうであるように、自分の収入は真理よりももっと重要であると断定したのだ。

支配者層のために嘘をつくジャーナリストには米憲法修正第1条の必要性はない。恐らく、これがワシントン政府がジュリアン・アサンジを攻撃することに関して彼らは何の関心さえをも示さない理由であって、これは遅かれ早かれ米憲法修正第1条を台無しにしてしまうであろう。彼らはワシントン政府がアサンジを破滅させることに加担している。そうすることによって、真のジャーナリズムを実践する人物がそこに居るという事実が自分たちの自尊心を脅かすことはなくなるのである。

さらには下記を読んで貰いたい: 


プレスティチュートたちは自分たちの嘘がミュラー報告書によって正当化されたと主張している。詳細はこちら:https://on.rt.com/9snj

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

著者はこう指摘した。

彼自身が調査権を与えられた犯罪については証拠を見いだせなかったと報告書の中で報告しているにもかかわらず、トランプが司法を妨害することが可能であったのかどうかに関してはミュラーは何の説明も加えてはいない。これはとりもなおさずミュラー自身の政治的腐敗を証拠立てるものだ。実際には無かった犯罪に関する調査をいったい誰が妨害することができるというのであろうか?

特に、実際には無かった犯罪に関する調査をいったい誰が妨害することができるというのであろうか?という指摘は実に秀逸である。ミュラー報告書の不完全さ、あるいは、矛盾をものの見事に突いている。

この記事を読むと、米国の国内政治やメディア界が曝されている混乱振りや節操の無さが手に取るように分かる。

最大の不幸を被るのは米国の一般庶民だ。民主主義国家を代表すると自他共に認めて来た米国がこのような政治的混乱を展開しており、終息する気配も見せない。まったく異常である。米国の良識はいったい何処へ行ってしまったのだろうか?

政治に対する不満は今世界中に広がっているようだ。日本でも同様だ。米国やヨーロッパで起こっている政治の不毛振りを第三者の立場から学び取り、われわれはその教訓を日本の政治に生かさなければならない。

結局、このような状況を解決するにはわれわれ一般庶民全員が選挙権を行使し、満足できない政党には投票をしないことしか選択肢は残されてはいない。もちろん、多くの投票者は投票したい政党があるのかという根本的な課題に直面する。その時は自分の不満の理由を分析し、政治との具体的な関りを考えるしかない。今回投票したい政党がないとしても、次回の選挙では投票したい政党を見つけ出しておきたい。たとえ今の政治が暗黒の暗闇であるとしても、それが永遠に続くことはない。永遠に続けさせてはならない。朝は必ずやって来る。願わくば、政治について十分に覚醒した朝にしたいものである。



参照:

1The Three Purposes of Russiagate: By Paul Craig Roberts, Apr/22/2019






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