2018年1月24日水曜日

弾道ミサイルがハワイに住むわれわれに向かって高速で飛来しつつあると認識することはいったいどんな感じであったのか

つい最近ハワイでは弾道ミサイル警報が出された。州民はパニックに陥った。しかし、その40分後には間違いであったとしてこの警報は解除された。

北朝鮮政府と米政府との間では武力衝突直前であるかのような強硬な発言が応酬されていた矢先であっただけに、州政府から間違って発信されたこの警報は現実味をもって州民に受け止められた模様である。

その辺の心理的な側面を記述しているブログがあり、その内容は非常に示唆に富んでいると感じられた [1]

著者はこの警報が間違いであったという事実を発見するまでの12分間を振り返って、自分たちがとった行動を詳しく記録している。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみよう。


<引用開始>

昨日の朝、私はコーヒーを飲みながら、読んでいた。妻は仕事に出かける準備をしていた。その時だった。電話機から緊急警報の着信音が聞こえてきた。私はこれは多分嵐がやってくるぞと言う警報だろうと思ったが、天候は上々であった。妻が電話機を見て、ミサイルが飛来して来ると言った。彼女は直ぐに行動を開始した。冷蔵庫からガロン入りの飲料水を取り出し、犬たちも連れて、バスルームへ入った。私自身は彼女の電話機に表示されているメッセージを眺めて、その内容を理解しようとした。警報は州政府からのものであった。
























Photo-1: 113日(土)、87分。緊急警報。弾道ミサイルがハワイへ向かっています。直ちにシェルターに避難してください。これは訓練ではありません。


「オー、ノー!」

この瞬間、弾道ミサイルが時速15,000マイルでハワイに向かって実際に飛行している。恐らくは、われわれが住んでいるホノルルに向かっている。実際に起こっているのだ。

私は「アメリカ研究」を専攻する大学院生として政治を追跡して来たし、核爆発によってどんなことが起こるのかに関しても研究をしていた。この一週間、南北朝鮮は和平交渉を開始し、オリンピックへの参加について交渉をしていることを知っていた。それに対して、トランプ政権は北朝鮮に対して非合法的な武力による威嚇を行い、あの地域の上空に核を搭載した爆撃機を飛行させていた。ニクソン自身が述べていた、例の「狂人」の伝統を踏襲し、北朝鮮を急襲したことから北朝鮮がそれに対して報復したのかも・・・、あるいは、北朝鮮が恐怖の余りに自滅的な先制攻撃を開始したのかも・・・といった筋書きを思い浮かべていた。どちらに転んでも、これは大戦争の始まりになると私は思った。

弾頭ミサイル攻撃が起こる可能性なんてすごく遠いものだと常日頃思っていたものだが、依然として起こり得るのである。しかも、その可能性は自分たちが好んで想定する可能性よりも遥かに高い。そして、ついに州政府からの警告が発せられた。これが実際に起こったのである。ミサイルが飛行中だ。すぐにでも着弾する。


こうして、われわれは浴室にうずくまって、極端な苦痛が伴う死やそれに近い状況について心の準備をしていた。死を待ちながら、私たちはオンラインで関連ニュースを漁った。この検索で分かったことはそれらのほとんどすべてが皆がこの警告に関してツイートし合い、思いもかけなない衝撃的な状況について言葉を交わし、「ミサイルがハワイに向かっている。もう直ぐに死ぬんだ」と言っていた。


私たちも親族に宛ててテキストを発信し、サヨナラと言った。われわれにとってはこれが最善の策であって、他には何も考えられなかった。このような状況の中では多くの人たちがそうするかのように・・・

私たちは12分間も待ち続け、熱波や第3度の火傷、焼け焦げる内臓、暴風のように飛び散るガラスや金属の破片、毎時600マイルにも達する爆風の猛威、今にも倒れそうなビルを想像していた。シェルターを見出すべく、ホノルルから離れているより高い台地に避難することを決心した。

犬を連れて、市外へと急いだ。誰かが外で叫んでいた。絶望的な表情であった。これですべてが終り、最悪の事態となることを物語っていた。私たちと一緒に来ないかと誘ってみたが、彼らはその申し入れには応じなかった。私たちは車に乗り込み、ホノルルから離れ、上り坂を走り、セーフウェイ食料品店の駐車場へ入った。何人かは飲料水のケースを抱えてセーフウェイの建物から小走りに出てきた。犬を連れて、私たちはセーフウェイの中を急いだ。人々は床に座り込んで、頭を抱えていた。皆が着弾するのを待っていた。この状況が10分ほど続いた。そして、こんなことが起こった。

私たちは建物の中で一番安全な場所にいるんだということが分かってからというもの、何秒後かには大惨事が起こるのだという認識を抱きながら、ふたたび電話機で一生懸命に情報をチェックをした。その時、ハワイ選出のタルシー・ガッバード議員のツイッターに気づいた。彼女は政府に連絡を取って、この警報は間違いであったことを確かめたと伝えていたのである。

この時点までの12分間、私たちは核ミサイルが今ハワイに向けて飛行しており、すべてが極端に恐ろしい状況に変わるものとばっかり考えていた。

自分の世界が直ぐにも終末を迎えるという考えから「オーっと、間違いだった!」への転換は表現のしようもない大転換であった。

私たちはガッバード議員から伝え聞いた「警報は間違いであった」ということを皆に伝えた。私たちは建物の外へ出て、皆にこのことを伝えた。ミサイルはやって来ないというニュースが広がっていった。人々は依然として警戒してはいたが、落ち着きを取り戻し始めた。私たちは自分の家族とも連絡を取った。

何がいったい起こったのかを細かく辿り、話し合った結果、この間違い警報(明らかに、とんでもない間違いではあるのだが)を誰が発信したのかという点は大した問題ではなく、核攻撃を受けることが何時でも起こり得るという状況の存在自体がより根本的な大問題であるとする見解を皆が共有した。

われわれの税金によって調達され、人種差別者や肘掛椅子に座った戦士らによって配備された今回のミサイルのような武器によって、交渉をすることもなく、侵略戦争の形で実際に殺害され、重症を負って身体の一部を失った何百万人もの人たちのことに思いを馳せた。「被疑者ら」はわれわれが住んでいる領域を支配する政府によって爆発物による超法規的な執行を受けるのである。このような状況下に住む人たちのことを考えると、彼らは遥かに厳しいストレスの下に置かれ、常に脅威に曝されている。われわれが強制的に支払わされている爆発物によって、あるいは、われわれの政府が支援する代理政府によって彼らは殺害されたり、身体の一部を失う。因みに、米国は世界でも最大級の武器の密輸者であり、2013年には世界規模の世論調査では世界平和に対する最大の脅威であると認識されている。(米国は世界中の専制国家の約75パーセントに対して支援を行っている。すべては米国の判断である。) われわれの観察によると、CBSのようなプロパガンダを行う企業メディアは、米国の一般庶民の間に「ならず者国家」の北朝鮮に対する敵意を高めさせる努力の一環として、ハワイにおける間違いの警報をすでに活用していた。北朝鮮は、かっては、米国の爆撃機による大量虐殺の経験をした。そして、それ以降、同国は包囲されたままである。

実質的に西側の企業メディアだけを視聴し、購読しているハワイ州の外に住んでいる私の友人は事実私にこう言ったものだ。「もしも、昨日、核攻撃に曝されていたとしたら、米国は北朝鮮を地図の上から抹消してしまうだろうから、少なくとも北朝鮮はもはや問題ではなくなっていただろう。」

自分たちも含めて、何百万もの市民が惨めな死を迎えることになったであろうが、米国による大量虐殺の犠牲となった一群の市民、大量虐殺を平気で行う米国によって恒常的な圧力や軍事的脅威に曝されてきた生命は永遠に葬り去られてしまったことだろう。(皮肉を込めて)素晴らしい。

こうして、今回の心をかき乱すような経験は、私たちにとっては、国家主義的な集団的視野狭窄に対抗することが非常に重要な課題であることを明らかにしてくれた。西側の主要な情報源に加えて、西欧だけには偏らず、国際的でグローバルな、企業メディアではない、資本家に拘束されてはいない情報源や見解を探し求めることが重要である。例えば、デモクラシー・ナウ、リアル・ニュース、アンタイウォー・ドット・コム、テレスール、プレスTV、アル・ジャジーラ、WSWS、コンソーシアム・ニュース、他多数。米国による侵略を支持し、資本家のためのメディアと化してしまったベソスが経営するポスト、ニューヨークタイムズ、NPR、フォックス、等を含めて、大手メディアのすべては情報を提供する。しかしながら、それだけではなく、上に挙げた情報源はお互いの相違点や洞察をも提供してくれるのだ。

Ordinary Men: Reserve Police Battalion 101 and the Final Solution in Poland」と題された書籍において、ロバート・ブラウニングは、殺人をものともしないナチ政府を支持することを拒否したナチ党員が反対意見を述べること(誰も深刻な罰を課せられることはなかった)をナチ政府が許していた理由のひとつは彼らは国際的なレベルでの公開を経験していたからであったと述べている。彼らはドイツの視野狭窄を打ち破ったのである。

ドイツの情報源に全面的に頼っていた人たちはドイツ政府からの指令に従い、それを支持し、あるいは、侵略や殺害を実行した。彼らの心の中に築き上げられたもっとも基本的なふたつの価値観はドイツ人は優秀であるという点、ならびに、その行動は、時には断固としたものではあったが、正当な理由のために実行されているという点であった。

集団的な視野狭窄の打破によって、党員の幾人かはこれらの主張は馬鹿げており、間違いであり、注意にはまったく値しなく、無意味であるという事実を見出したのである。

著者のプロフィール: ロバート・J・バーソッキーニは「アメリカ研究」を専攻する大学院生である。異文化間の仲介役として映画やテレビの分野で何年も過ごしたことが彼に西側の自己像と現実との間に驚くべき差異を時には感じさせ、興味を引き起こした。彼の著作は引用され、出版され、数多くの教授やエコノミスト、弁護士、軍や諜報関係者、ならびに、ジャーナリストによって追跡されている。

この記事は最初「アンタイウォー」に掲載された。

<引用終了>



これで全文の仮訳が終わった。

著者は短い文章の中に米国社会が持つ視野狭窄を見事に浮き彫りにしてくれた。

著者の言葉を抜粋すると、

ー 
こうして、今回の心をかき乱すような経験は、私たちにとっては、国家主義的な集団的視野狭窄に対抗することが非常に重要な課題であることを明らかにしてくれた。西側の主要な情報源に加えて、西欧だけには偏らず、国際的でグローバルな、企業メディアではない、資本家に拘束されてはいない情報源や見解を探し求めることが重要である。

この認識は、世界の平和、つまり、一般庶民の安心・安全を追求する上では必要不可欠であるとして小生が日頃感じていた方向性とまったく同じだ。

また、著者はこうも言っている。恐らく、この点は著者の見解の中でもっとも重要な点であると言えるのではないだろうか。

ー 何がいったい起こったのかを細かく辿り、話し合った結果、この間違い警報(明らかに、とんでもない間違いではあるのだが・・・)を誰が発信したのかという点は大した問題ではなく、核攻撃を受けることが何時でも起こり得るという状況の存在自体がより根本的な大問題であるとする見解を皆が共有した。

国家という集団が陥り易い視野狭窄は米国だけに当てはまる訳ではない。日本でも現実に起こっている。われわれ一般庶民も個人的なレベルにおいてさまざまな場面でそのような状況を感じている筈だ。日本の一般庶民もこの著者の言葉を具体的に追認識する要があろう。これは世界の平和を実現しようとする際の具体的な政策や政治哲学に関わるものだ。

たとえば、その典型的な事例は北朝鮮問題であろうか。かって日本が欧米からの経済制裁を受け、原油が禁輸とされたことが日本の太平戦争へ突入する引き金となった事を考えると、北朝鮮に対して圧力を強化しようとするだけの外交政策は最善の策とは言えない。結果として、武力による地域紛争を開始させてしまう。そうなれば、何百万人もの市民が無駄に殺害されることになろう。国際社会は交渉の場を設け、当事者間の対話を最優先させる努力を堅持しなければならない。





参照:

1What It Was Like Thinking a Ballistic Missile Was Speeding Toward Us in Hawaii: By Robert Barsocchini, Information Clearing House, Jan/15/2018







2018年1月16日火曜日

機密の裁判所文書においてモンサント社は安全性試験が未完了の「ラウンドアップ」除草剤に発癌性があることを認めている

米国のモンサント社はバイオ産業の中では傑出した技術力や製品開発力を有していると見なされていた。同社は遺伝子組み換え作物の分野で指導的な位置を占めて来た。素人のわれわれの目には、少なくとも、そのように映っていた。
しかしながら、最近公開された一連の情報を見ると、その実態は驚く程に劣悪なものであると言わざるを得ない。
大企業のビジネスでは良くある話であるが、信頼を裏切られた感じがする。株式市場で優良企業としてもてはやされて来たモンサント社の本当の姿は驚く程に低劣である。それが、今、公になろうとしている。ふんだんに資金を使える背景を利して、このバイオ産業の巨人は規制当局(たとえば、環境庁の安全性を審査する「独立」委員会)に対して影響力を行使し、市場では倫理観をかなぐり捨てた振舞いをして来た。自分たちの醜悪な行動に関して自制心が働かなかったことが実に不思議である。
「機密の裁判所文書においてモンサント社は安全性試験が未完了のラウンドアップ除草剤に発癌性があることを認めている」と題された89日の記事 [1] はその冒頭で次のように述べている(引用部分を斜体で示す)
「米国の法律事務所によって先週開示されたモンサントの機密社内文書によると、モンサントの科学者らは同社一番の製品であるグリフォサートを主成分とするラウンドアップ除草剤には、恐らく、発癌性や遺伝毒性があることに気付いていたことが判明した。
これは、言わば、「安全神話崩壊の米国版」である。
このラウンドアップ除草剤の場合は、その崩壊が一気に起こったものではなく、かなり長い時間をかけて表面化してきた。今までは平穏に隠して来た大嘘がばれて、モンサントは今や茫然自失の状態にあることだろう。
ここでちょっと寄り道をして、モンサントが自社の製品に不都合な科学的な情報を如何に排除しようとしたのかに関して、ひとつの事例を確認しておきたいと思う。
201781日にSustainable Pulse [訳注: この組織は市民や科学者の有志によって構成された団体であって、遺伝子組み換え作物および持続可能な食品や農業に関するニュースを提供している] によって出版された「Monsanto Secret Documents Show Massive Attack on Seralini Study」と題された記事によると、次のような具合だ(引用部分を斜体で示す)。セラリーニ教授の論文Food and Chemical Toxicology誌に掲載されたのは2012年の9月であった。この論文はラットにモンサントの遺伝子組み換えトウモロコシNK603を長期間にわたって給餌し、その栽培期間中に使用されたラウンドアップ除草剤をほんの微量投与すると肝臓や腎臓に毒性を示し、ホルモンに変調をもたらしたという事実を報告している。また、追加的な知見としては、試験区に属するほとんどのラットで腫瘍が増加した。しかし、この論文はモンサント社からの手酷い反撃を受けることになった。 201311月、Food and Chemical Toxicology誌の編集長(モンサントからの圧力を受け、元モンサントの研究員であった人物を編集者として雇い入れた)はセラリーニ教授の論文を撤回した。その後、この論文はEnvironmental Sciences Europe誌で再出版された(2014624)。しかし、この再出版はセラリーニ教授の研究がモンサントによる水面下の動きによって不当に評判を落とされた後のことであった。


さて、話を[1]の記事へ戻そう。

















Photo-1
20175月に報じられた驚くべき新事実は旧聞と同様であった。つまり、新事実によると、モンサント社のマネジャーを務めるジョージ・レヴィンスカス博士は1970年代にPCBの発癌性を隠蔽することに関与していたが、同博士は1980年代にグリフォサートの発癌性に関しても米環境庁(EPA) に対して影響力を振るっていたのである。
先週の火曜日(201781日)に公開された裁判所文書は驚くべき内容を含んでいる。それは次のような具合だ。つまり、モンサント社の製品保護・栄養学部門を率いるドンナ・ファーマー博士は2003年の社内メールで製剤製品のラウンドアップに潜在する悪影響を論じ、「ラウンドアップには発癌性がないとは言えない・・・ われわれはそのような主張をするのに必要な試験はまだ実施してはいないのだから」と指摘している。 
これらの新事実はそれだけには留まるものではない。モンサントのラウンドアップ除草剤によって引き起こされる悪影響は他にもある。それらに関する機密の電子メールを下記に纏めておこう: 
  • ファーマーは1999年に次のように書いている。「この状況に関して限定的な情報を得ているに過ぎない現時点で、私はグリフォサートやその製剤ならびに界面活性剤といった成分に関して何らかの調査研究を実施することについては支持する積りはない。」
  • 2010年の電子メールで、モンサントの化学品規制を専門とする部署の長であるスティーブン・アダムスは「われわれの製剤の発癌性に関しては、製剤について直接試験を行ったことはない・・・」と言っている。 
  • 2013年、モンサントで規制業務部門を率いるハビア―・ベルヴォ―は「われわれ(モンサント)はわれわれの製剤製品(ラウンドアップ)の亜慢性毒性、慢性毒性、あるいは、催奇形性毒性に関する調査は行わない」と確認した。 
  • EUの専門家による相談パネル」で行われたパワーポイントを用いたモンサントの発表において、その6頁目には驚くべき表題が付けられていた。「モンサントのラウンドアップ®は細胞分裂の主要な段階のひとつに作用し、これは長期的には癌をもたらす可能性を示す。」 この頁はラウンドアップによる副作用を試験管レベルで観察したフランスの研究者の報告を引用している。最終頁には、「除草剤散布者の尿中濃度から血清中濃度へ」を用いて、如何にして試験管レベルでの毒性に関して「製品の位置付け」を行うべきかという「質問」が記されている。ここでは、モンサントは「新たな試験の実施」によってもたらされるであろうリスクを検討しようとしているのだ。
  • モンサントの製品の安全性部門を率いるウィリアム・ヘイデンス博士が2014年に発信した電子メールは「グリフォサートに関するIARCの評価」(IARC2015年にグリフォサートには「恐らく発癌性がある」と発表した)と題されている。その電子メールにおいては、ヘイデンスは「疫学の分野ではわれわれは脆弱性を抱えており、他の分野においても脆弱性がある。たとえば、IARCは(われわれの製品への)暴露による悪影響や遺伝毒性ならびに作用機構についても考えを巡らすことだろう・・・」と述べ、事実を認めている。
  • 2015年、ヘイデンスはラウンドアップには「低レベルのホルムアルデヒド」(呼吸によって発癌性をもたらす)が含有されていることを認めている。さらには、ラウンドアップには「低レベルのNNG (N・ニトロソ・グリフォサート)が含まれていること、そして、多くのN・ニトロソ化合物には発癌性があること」を認めている。  
  • ヘイデンスとファーマーは製剤製品であるラウンドアップの悪影響を報告するさまざまな研究報告を次のように論じている。特に、ファーマー博士は「興味深いことにはグリフォサートそのものは基本的に悪影響を示さないが、製剤製品では悪影響が現れる。つまり、これは他の成分のせいだ。界面活性剤かも?」と認めている。モンサントのコンサルタントであるジョン・デセッソとの話の後、ヘイデンス博士も「われわれはグリフォサートそのものに関してはOKだが、界面活性剤には弱い・・・ あなたからお聞きした内容については今後ともこれらの研究報告において引き続き取り沙汰されることだろう。グリフォサートはOKだが、製剤製品が(つまり、界面活性剤が)悪影響を引き起こす」と認めている。
  • ファーマーはモンサントの専門家、ジェームズ・パリー博士の知見を次のように概略している。「4本の研究論文に関して、パリー博士はグリフォサートは生体内でも、試験管内でも、酸化毒性を呈することによって遺伝毒性をもたらすと結論した。」 
  • 2015 年、ヘイデンスは「製剤に使用されている界面活性剤は腫瘍促進の状態をチェックする皮膚試験で表面化する。これが一役買っているのだと思う」と述べている。 
電子メール全文と内部文書はこちら
これらの公開された裁判所文書は、国際がん研究機関(IARC)によって2015年にラウンドアップの有効成分であるグリフォサートには人に対して「恐らく発癌性がある」ことが公表された後にモンサント社が如何にIARCに対して反撃を行ったについても示している。
他にも機密文書があって、それらはモンサントが、かの有名なセラリーニ教授の論文を撤回させるために、「Food and Chemical Toxicology」誌のウレス・ヘイス編集長を如何にして上手く懐柔したかを示している。セラリーニの研究は遺伝子組み換えトウモロコシNK603や微量のラウンドアップ除草剤を投与されたラットに健康被害をもたらすことを見い出した。


これで、[1]の記事全文の仮訳が終了した。
ここに引用した記事は世界のバイオ産業では指導的な地位にあるモンサントが過去30年間にわたって自社の利益のために極めて近視眼的な行動をとって来たばっかりに、今となっては取り返しがつかない大問題を抱え込んでしまった様子を有り余る程伝えている。ビジネス倫理は近視眼的な利益の確保に完全に圧倒されている。まさに、驚くばかりである。
この記事で私が個人的にもっとも興味深く感じることは、モンサントは製剤製品のラウンドアップが悪影響を引き起こすことを十分に予想できるからこそ、慢性毒性や催奇形性毒性についての動物試験は新たに実施しないとの方針を採用している点だ。何と言う皮肉であろうか?モンサントが現在取り得る行動は過去の嘘によってがんじがらめにされているのである。今まで「安全だ、安全だ」と繰り返して喧伝し、ラウンドアップ除草剤に耐性を持つ遺伝子組み換え作物のビジネスを世界中に展開してきた同社の基盤はここで脆くも崩れようとしているのである。モンサントの経営陣は自分たちのビジネス倫理を試された訳ではあるが、身を正す行動はとらなかった。経営者失格である。これから、どう展開して行くのであろうか?
米国のビジネス環境では業界の大手が大問題を引き起こすこと自体はさほど珍しいことではない。モンサントが抱えるこの問題はエネルギー取引とITビジネスで全米でもトップクラスの企業であったエンロン社が倒産した時のことを彷彿とさせる。10年前、同社の粉飾決算がついにばれてしまった。
エンロンとモンサントのビジネス哲学を見ると共通項があると言えよう。それは拝金主義だ。金銭的な利益を目指す余りに、伝統的なビジネス倫理や道徳はどこかへ放り出してしまう。そうすることが、多くの場合、米国流の「スマートな」ビジネスマンの行動様式なのである。スマートであるが故に、彼らは近道を探そうとするのだ。


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上記の引用記事には5月に報じられた驚くべき新事実は旧聞と同様であった・・・」という記述があるので、その「5月に報じられた新事実」に関する記事 [2] を覗いてみよう。旧聞とはいったい何を指しているのであろうか?
20175月の記事 [2] の仮訳を下記に斜体で示す。
モンサントのマネジャー、ジョージ・レヴィンスカス博士は、1970年代、PCBの発癌性 を隠蔽することに関与した。この火曜日に公開されたカリフォルニア州の裁判所文書によると、まさにこの同一人物が、1980年代にも、世界でもっとも多く使用されている除草剤グリフォサートの発癌性に関しても米環境庁(EPA)に対して影響力を振るっていたことが判明した。

















Photo-2
20153月、Sustainable PulseはモンサントとEPAによる30年来の隠蔽を公開した。 これは世界でもっとも多く使用されている除草剤の主成分であるグリフォサートに関わるものだ。この隠蔽はサンフランシスコ連邦地方裁判所によって公開された裁判所文書によって明らかとなったのである。
U.S. Right to Know(USRTK)と称する団体が水曜日に次のような報告をした。 モンサント社に対して50件以上もの訴訟がサンフランシスコ連邦地方裁判所で係争中となっている。これらの訴訟はグリフォサートを主成分とするラウンドアップ除草剤に曝されたことから本人や家族に非ホジキンリンパ腫を引き起こすこと、また、それだけではなく、モンサント社はそのような危険性を今まで隠蔽して来た事実を訴えているのである。 
313日、連邦地方裁判所のヴィンス・チハブリア判事は、モンサントの反対を押し切って、原告が取得した文書は公開することが出来るとの裁定を下した。
これらの公開文書にはモンサントが如何にしてEPAに影響力を振るって来たかを示す情報が山のように含まれている。グリフォサートに関しては、EPA 198534日に判断した「発癌性がある」というクラスCの分類から1991年には「人に対しては発癌性を示さない」というクラスEの分類へと変更したのである。
グリフォサートの分類に関するこの変更はモンサント社がグリフォサートに耐性を示す最初の「ラウンドアップ・レディー」と称する遺伝子組み換え作物を開発していた時期に起こった。 
WHOの国際がん研究機関(IARC)グリフォサートに関する報告が、20153月、グリフォサートは「恐らくがんを引き起こす」との表明を行った直後、Sustainable Pulseモンサントがマウスを用いたグリフォサートの安全性試験に対してどのように資金援助を行ったのかを示すEPA1991年の文書を発見した。不思議なことには、EPAの専門家によると、この安全性試験では発癌性がまったくなくなるまで「再考察」が繰り返して行われていたのである。
EPAによる再考察が分類を変えることになった理由は今週になるまではまったく分からなかった。しかしながら、今や、すべてが明るみに曝されている。EPAはこの再評価の過程を通じてモンサントによってひどく影響を受けていたのである。
モンサントの「隠蔽マン」ジョージ・レヴィンスカス博士: 
ジョージ・レヴィンスカス博士は1971年にモンサントに加わり、環境評価と毒性を担当する役員となった。1970年代、彼は今では禁止物質となっているPCBの発癌性を隠蔽することに関与した指導的な人物であった。 
モンサントは、1970年代の始め、PCBの毒性に関して動物試験を開始した。その結果は好ましくはなかった。ある重役は「われわれの理解するところでは、PCBの毒性の程度は想像していた以上に大きかった」と記している。
1975年、ある研究所がラットを使った試験結果を提出した。初期の報告書は、幾つかの事例でPCBは腫瘍を引き起こしたと報告していた。レヴィンスカス博士はその研究所の役員に次のように書いた。『要求したいことがあるのだが、「発癌性はないようだ」とこの報告書を書き換えて貰えないだろうか』と。こうして、最終版の報告書からは腫瘍に関する文言は一掃されたのである。
故レヴィンスカス博士はグリフォサートの発癌性を隠蔽する上でも主要な役割を演じていたことが、今や、判明している。彼は1985年に社内用の手紙で次のように書いている。「EPAの上級職員が雄のマウスに観察された腎腺腫に基づいてグリフォサートをクラスCの「人に対して発癌性がある」へと分類しようとしている。このことに関しては、報告されている腫瘍はグリフォサートとは関係がないとしてEPAを説得する方向で、マーヴィン・カッシュナー博士が腎臓切片を再審査し、その評価結果をEPAに提示する積りだ。」
グリフォサートの発癌性に関するこの30年来の隠蔽は、米国政府やEPA ならびに世界各国の規制当局が企業の利益を保護し、拡大することに何らかの支援をする前に、先ずは一般大衆の健康を配慮しなければならないことを怠ってしまったという典型的な失敗例である。これは歴史に残るであろう。


これで2番目の引用記事の仮訳が終了した。
これらふたつの記事を眺めてみると、ひとつの企業集団としてモンサントが犯した悪事はとても許せるものではない。モンサント社内では進行しつつある嘘を指摘する上級職員が何人もいたことは明白である。しかしながら、モンサント社だけではなく、除草剤を使用する農家や除草剤に汚染された食品を消費せざるを得ない一般大衆にとって不幸なことには、この嘘を指摘する声はモンサント社の総意にはならなかったことである。


  ♞  ♞

ラウンドアップ除草剤の慢性毒性や催奇形性毒性ならびに遺伝毒性に関するモンサント社の対応には技術的な情報の歪曲やビジネス倫理の欠如が恒常的にあったという事実が明白となった今、この除草剤が市場で最終的にどのように受けとめられるのか、あるいは、市場から排除されるのかを注視して行きたいと思う。
端的に言って、これは企業利益を確保することを最優先に考える側と農家や消費者の健康を守ろうとする側との間の綱引きである。
環境や食品の汚染を通じて日本は数多くの苦い経験をして来た。そして、食糧の自給率が極端に低い日本では、今や、日本国内で自給できる食品の安全性を議論しているだけでは、われわれは将来生れて来る次世代の健康を確保することは出来ないというまったく新しい次元の脅威に曝されようとしているのである。




参照:
1Monsanto Admits Untested Roundup Herbicide Could Cause Cancer in Secret Court Documents: By Sustainable Pulse, Aug/09/2017
2US Court Documents Show Monsanto Manager Led Cancer Cover Up for Glyphosate and PCBs: By Sustainable Pulse, May/19/2017