2020年12月25日金曜日

私は医薬品の研究開発にはすっかり失望した。巨大な資金力を持つ薬品大手は科学的知見を歪曲することに多忙を極めている


新型コロナの大流行ではさまざまな出来事が起こった。そして、今も新しい議論が起こったり、今までは影に隠れていてはっきりとは見えなかった動きが思いがけずに表面化したりする。その中でわれわれ一般庶民の生活にもっとも大きな影響を与えている基本的な状況は多くの国において新型コロナの収束は今でも達成されてはいないという点だ。

今冬も新型コロナの流行は継続するのかも知れない。最悪の場合、何年にもわたって続くのかも。場合によっては、集団免疫が意外な程に速やかに確立されたという展開もあり得るだろう。また、何年か前に新型コロナウィルスの仲間によって引き起こされたSARSやMERSといった感染症のように、この新型コロナウィルスも古巣の大自然へおとなしく戻って行くのかも知れない。しかしながら、どのシナリオが起こるのかは誰にも分からない。新型コロナについては科学的に究明されてはいないことが依然として多過ぎるようだ。

新型コロナの大流行を通じてはっきりと示された事柄がひとつだけある。それはウィルスそのものに関することではなく、人間活動のことだ。皮肉なことには、一般庶民の健康を維持することやリスクの高い老人を救命することよりも、グローバルな金儲けを確保するための下地作りに奔走し、世界をそちらの方向へ密かに誘導するといったさまざまな動きが顕著になって来ている。たとえば、大手メディアの報道を吟味するとそのような趨勢が透けて見える。金儲けというひとつの目標のために多くの情報が都合よく歪曲され、西側世界の巨大なプロパガンダ・マシーンがそういった情報を次から次へと喧伝する。

新型コロナは通常の季節性のインフルエンザと大差がないという主張が科学者の間には根強くある。とは言え、プロパガンダマシーンによって喧伝されている見方は戯言だと言って、それを捨て去ることはわれわれ一般庶民の多くにとっては必ずしも容易いことではない。少なくとも、私にはそんなふうに感じられる。

ところで、「大嘘」に関してはウィキペディアは歴史的な経緯を次のように解説している。その要旨はこうだ:

「大嘘」はプロパガンダのテクニックである。この表現はアドルフ・ヒットラーが1925年に「我が闘争」を書いた時に作り出した言葉である。しかしながら、彼が信じるところによれば、このテクニックはユダヤ人が第一次大戦でドイツが惨敗したことについて著名な反シオニストであるドイツのルーデンドルフ将軍のせいであるとする非難を主張する際に用いられたものだそうだ。そして、このヒットラーの言葉はナチ宣伝相のゲッベルスに引き継がれ、彼は「大きな嘘をつき、それを繰り返せば、一般大衆はそれを信じ始める」と言った。

今回の新型コロナの大流行においてはウィキペディアに説明されている「大嘘」とまったく同じような状況が、この数か月間、醸成されて来た。科学は金儲け主義によってまさにハイジャックされてしまったかのようである。

そのような現状を分析し、具体的に解説しようとしている記事を最近見かけた。「私は医薬品の研究開発にはすっかり失望した。巨大な資金力を持つ薬品大手は科学的知見を歪曲することに多忙を極めている」と題されている(注1)。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

店頭でいつでも購入することが可能な抗マラリア剤(60錠入り)の価格は7ポンドだ [訳注:1ポンドを142円とすると、これは約千円に相当]。この薬剤は新型コロナウィルスの感染に対して治療薬として使用することが可能で、しかも安価である。ところが、この薬剤は今ゴミ箱へ捨てられようとしている。なぜだろうか?なぜかと言うと、それは大手薬品企業が皆さんに2000ポンド(28万4千円に相当)もする治療法を売り込みたいからだ。それだけだ。まさに犯罪的な行為である。

[訳注:別の記事(注2)によると、薬品大手の思惑はあの手この手を使って高価なワクチンを売り込むことであって、その準備をしていることが分かる。この記事によると、米国の小さな企業で、知名度がそれ程高くはない「サージスフェア」社が医学界において定評のある学術誌であるランセットやニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに論文を発表した。この論文の出現によって、各国政府はヒドロキシクロロキンを新型コロナの治療薬として使用することを禁止した。六つの大陸にまたがって671の病院で新型コロナの治療を受けた96,032人の患者のデータを分析したところ、ヒドロキシクロロキンによる治療を受けた患者の間では死亡率が増加することが分かったと同社は報告したのである。しかしながら、利害関係のない研究者による精査の結果、サージスフェアの社長であるサパン・デサイがこの研究報告の共同研究者として名を連ねていること、ならびに、著名な学術誌に出版されたこの論文には明らかに欠陥があることが判明したのである。論文の基礎になったとされるデータには追跡性が見い出せなかったのだ。さらには、ランセットはこの論文の査読を行った筈の学者の名前を公表しようとはしなかった。つまり、この専門誌には透明性がなかった。結局、この論文は撤回された。こうして、医学関連の学術誌として世界中でもっとも権威が高いとされてきたランセットとニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの信頼性は地に堕ちた。]

2~3年前、私は「Doctoring Data」と題して本を出した [訳注:Doctorとは「改ざんする」という意味で、この本の表題を仮訳すると、「データの改ざん」となる]。これはわれわれの周囲で毎日のように相互にぶつかり合っている医学情報の現状に関して読者の皆さんに少しでも理解を深めて貰いたいことに視点を置いて書いたものだ。個々の医学情報はお互いに完全に矛盾することが決して少なくはない。つまり、「コーヒーは体にいい」、「いや、体に悪い」、「いや、待ちたまえ。体にいいんだよ」といった具合だ。

また、ある治療法が実際よりも遥かに効き目があると思わせるようなトリックや駆け引き、操作が行われていることについても私は指摘した。われわれの世界はまさに気が滅入るような世界であると言わざるを得ない。このテーマに関して喋る際には私は常にある引用から始めることにしている。

たとえば、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌で20年以上にわたって編集長をしてきたマーシア・エンジェルは2009年に次のようなことを書いている:

「出版されている臨床研究の多くは、率直に言って、もはや信用することはできない。あるいは、信頼されている医師の判断や権威のある指針はもはや信用することができない。この結論はまったく不愉快なものではあるのだが、編集者としての20年間に不本意ながらも徐々に到達することになった結論である。」

事態は改善しているのだろうか?いや、事態は悪化するばかりだと思う。今年の5月のことであるが、私は発言者を特定することができるような情報は伏せることを要求しているチャタムハウス・ルールの要領にしたがって開催され、録音することが禁じられ、非公開で行われた筈のある会合に関して下記のような電子メールを受け取った:

「ランセットとニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの編集長の間で会合が持たれたが、その様子は秘密裏に記録された。ふたりは共に科学的な研究に対して大手製薬企業が犯罪的な影響力を行使している現実を嘆いている。フランスの前保健大臣で、2017年にはWHOの長官選挙の候補者でもあったフィリップ・ドースト・ブレイジーによると、この2020年のチャタムハウス形式の非公開会合の内容がリークされた。これはふたりの編集長の間の会合であった。両誌が出版した論文は間違いだらけのデータに基づいたものであったが、大手製薬企業にとっては極めて好都合な代物であったことから、これらの専門誌に発表されていたこの論文は、結局、撤回されることとなった。」

関連記事:Coronavirus 2.0 may be up to NINE TIMES more contagious … but that may be cause for celebration

さらに、この電子メールには次のような言及もある。「今やわれわれは臨床研究のデータをこれ以上出版することはできない。今日、製薬企業は資金的には非常に強力であって、彼らは投稿の手順としては見かけ上完璧な論文を寄稿し、われわれはそれを受理するというステップを踏むことが可能だ。こうして、彼らは実際には自分たちが結論付けたいと望んでいる結論を導いてしまう、とランセットの編集長であるリチャード・ホートンが言った。」

この問題が論じられているユーチューブ動画はこちら。この動画はフランス語で作成されているが、英語の字幕が付されている。

ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンとランセットは両誌共に世界でもっとも影響力があり、もっとも潤沢な資源に恵まれている医学専門誌である。もしもこれらの専門誌が捏造された論文を洗い出す能力を有してはいないとするならば、今後は・・・ 今後はいったいどうなるのであろうか?いったい、どうなってしまうのだろうか?

事実、新型コロナの大流行が始まってからというもの、一般的には事態は急速に悪化している。

新たな研究、新データ、新情報がすざましいスピードで公表される。それらの多くは有効な査読のプロセスを経てはいなかったり、不十分なままであったりする。いったい何を信じたらいいのか?いったい誰を信じたらいいのか?もはや、安全な行動なんてほとんどあり得ない。

過去の2~3カ月、あるひとつの筋書が徐々に醸成され、医学研究に関して私が抱いていた小さな信頼さえもが剥ぎ取られてしまった。それは抗マラリア治療薬のヒドロキシクロロキンのことだ。皆さんはドナルド・トランプ米大統領がこの治療薬を後押ししていたことをご記憶だろうと思う - ただ、そのこと自体が多くの人たちに一連の問題をもたらしたことは事実ではあるのだが・・・

しかしながら、大流行が起こる前から私は地元にある国民医療保険サービス(NHS)に対してヒドロキシクロロキンを買い溜めするように推奨していた。長年にわたる研究の結果、この薬剤はウィルスが細胞に侵入するのを阻止し、細胞内に入ったとしてもウィルスの増殖を妨げることが示唆されていたからである。

これは、マラリアの寄生虫は赤血球の細胞内へ入り込むが、この薬剤の作用メカニズムによってその増殖が阻止されることを説明するものでもある。科学は複雑ではあるが、多くの研究者は新型コロナの治療に当たってヒドロキシクロロキンが、たとえあっと驚くような華々しい効果を見せるわけではないにしても、何らかの実際的な恩恵を与えてくれるだろうと考えられる妥当な理由を抱いていた。

RT.COMからの関連情報:First Russian coronavirus vaccine volunteers report no adverse side-effects. Hopes now high for mass immunization in fall

この考えは次のような理解によってさらに強まった。つまり、この薬剤はいわゆる「サイトカイン・ストーム」現象を緩和させる効果も持っているのである。 サイトカイン・ストームは新型コロナ患者を致死的な状況に至らしめると考えられている。関節に対して免疫攻撃を引き超すリウマチ性関節炎に対してはこの薬剤が処方されているのである。

ヒドロキシクロロキンを推奨するもうひとつの理由はこの薬剤が安全性に優れている点にある。たとえば、これはインドで処方されいている薬剤の中ではもっとも頻繁に処方されているもののひとつだ。この薬剤はほとんどの国で薬局の店頭で入手可能である。この薬剤を試してみるようにと推奨することに関して私は何の躊躇いも感じなかった。最悪の場合を想定しても、何の悪影響さえをももたらさないからだ。

そうこうしているうちに、ヒドロキシクロロキンは世界規模の強烈な嵐のどまん中に置かれることになった。その一方で、白衣を身にまとい、当初この薬剤を処方した研究者らは少なからずいる。この薬剤は臨床現場において目覚ましい効果を示したのである。たとえば、フランスの地中海感染症大学研究病院のディディエ・ラウル教授はこう言っている:

「フランスの著名な研究者は当初新型コロナに対して行った新しい治療法によって好ましい成果を手にすることができたと報告している。この治療方法はたった6日間の治療でウィルスの感染性を阻止することができることを示した。」

そして、リール大学のモロッコ人科学者は次のような研究成果を発表した:

ジャワド・ゼマウリが信じるところによれば、「もしもヨーロッパがヒドロキシクロロキンを使用していたならば、ヨーロッパ全域において新型コロナによって死亡した人たちの78%は助かっていたかも知れない。人口が3千6百万人のモロッコ(米国の人口の約10分の1)では感染者数が10,079人で、死者数は214人だけであった。」

関連記事:France ordered to pay up after epilepsy drug manufactured by coronavirus vaccine firm Sanofi caused birth defects

ゼマウリ教授は、「病院に収容された患者で見ると、ヒドロキシクロロキンの使用によってモロッコにおける新型コロナからの回復率は82.5%に昇り、死亡率は2.1%に抑えられた」と報告している。

この報告に先だって、5月22日、ひとつの論文がランセット誌上で発表され、その論文はヒドロキシクロロキンは実際には死者数を増加させると主張した。その後、この論文のデータは実証することができないことが判明した。つまり、論文はでっち上げであったようだ。著者らはこの抗ウィルス剤(ヒドロキシクロロキン)を製造する薬品製造企業との間で深刻な利害関係を持っていた模様である。6月の始め、この論文はホートン編集長によって撤回された。

その後、英国の研究論文が現れ、ヒドロキシクロロキンはまったく効き目がないと報告した。研究結果を論じて、新型コロナの治療(回復)に関して無作為評価を行った研究の共著者であるオックスフォード大学のマーチン・ランドレイ教授はこう言った: 

「これは新型コロナの治療にはならない。まったく効かない。このような結果は世界中の治療法を変更させることであろう。役に立たない薬剤についてはその使用を中断するだけだ。」

この研究報告は、その後、他の研究者らからこっぴどく批判を受けることになった。ヒドロキシクロロキンの投与量は潜在的に毒性を示すほどの高水準であるとして、彼らは批判をしたのである。さらに、彼らは何らかの薬効を示すには薬剤を投与した時期があまりにも遅すぎたという事実についても指摘した。つまり、患者の多くはすでに人工呼吸器に繋がれていたのである。

今週、私は 「International Journal of Infectious Diseases」誌に掲載予定ではあるが、まだ査読が成されてはいないある論文のコピーを受け取った。この論文の著者はヒドロキシクロロキンはこの分析作業の対象となった患者の死亡率を「優位に」低下させるという事実を見い出していた。この研究は2020年3月10日から5月2日までに六カ所の病院に入院していた2,541人に関するものであって、ヒドロキシクロロキンの治療を受けた患者の13%が死亡し、ヒドロキシクロロキンが投与されなかった対照群では26%が死亡した。

このように議論が混乱している場合、私は周辺に潜在する利害の不一致に着目することにしている。つまり、ヒドロキシクロロキンの使用を厳しく非難することによっていったい誰が得をするのかという点だ。このヒドロキシクロロキンは1934年以降使用に供されており、特許とは無縁の薬剤であって、価格は60錠入りでたったの7ポンドである。

この場合、まず考えられるのはべらぼうに高価な抗ウィルス剤を製造している企業だ。たとえば、「ギリアドサイエンシズ」社の「レムデシビル」と称される薬剤であるが、米国でこれを使った典型的な5日間の治療を受けると、2,340ドルのコストとなる。二番目には、世界市場へワクチンを投入しようとしている企業である。何十憶ドルかの金が懸かっているのだ。

この世界では、ヒドロキシクロロキンのような安価な薬剤には勝ち目がない。同様に、ビタミンCやDといっ安価なビタミン剤にも勝ち目はない。これらのビタミン剤は新型コロナの患者に何らかの効き目があるのだろうか?もちろん、ある。それらの薬剤が効き目がないと言うためにあの手この手を使って狡猾に操作された論文においてはこれらの薬剤の効能には見向きもされていないのではないか?もちろん、その通りだ。次のような言葉をご記憶願いたい。「今日、製薬企業は資金的には非常に強力であって、彼らは投稿の手順としては見かけ上完璧な論文を寄稿し、われわれがそれを受理するというステップを踏むことが可能だ。こうして、実際には、彼らは自分たちが結論付けたいと望んでいる結論を導いてしまう。」

政府や医療機関が研究者と大手製薬企業との間にある資金的繋がりを断ち切ることがない限り、あるいは、そうするまでには、巨額の利益を狙った情報の歪曲や操作は継続されることであろう。あまり期待しない方がいい。

著者のプロフィール:マルコルム・ケンドリックは医者兼作家であって、英国の国民医療サービスにおいて総合診療医として働いている。彼のブログはこちらで読むことが可能。彼の著作「Doctoring Data – How to Sort Out Medical Advice from Medical Nonsense」はこちらから入手可。

注:この記事に表明されている主張や見解および意見は全面的に著者のものであって、RTの見解や意見を代表するものではありません。

これで全文の仮訳が終了した。

驚くべき事実が記述されている。

この引用記事に紹介されているニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌で20年以上にわたって編集長をしてきたマーシア・エンジェルの言葉は実に衝撃的である。彼女は11年前にこういった。「出版されている臨床研究の多くは端的に言ってもはや信用することはできない。あるいは、信頼されている医師の判断や権威のある指針はもはや信用することができない。この結論はまったく不愉快ではあるが、編集者としての20年間に不本意ながらも徐々に到達することになった結論である。」

医学関係の論文を専門誌に寄稿する際に論文の著者の脳裏に浮かぶであろう著名な雑誌名は何かと言えば、もちろん、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンやランセットである。しかしながら、今や、「・・・であった」と言う方が正確であると言えよう。

忘れてはならない点がある。この引用記事に紹介されているヒドロキシクロロキンの使用を阻止しようとした動きは大手製薬企業が引き起こしている数多くの破廉恥極まりないエピソードのほんの一例でしかない・・・

「もしもヨーロッパがヒドロキシクロロキンを使用していたならば、ヨーロッパ全域において新型コロナによって死亡した人たちの78%は助かったかも知れない」というある研究者の報告はわれわれ一般人の間ではいったい何人が知っていただろうか?大手メディアはこの専門家の見解を報じてくれたのだろうか?恐らく、握り潰されてしまったのではないか。要するに、科学は金儲け主義というグローバルな筋書きによって巧妙にハイジャックされてしまったのだ。

グローバル化が喧伝されてすでに久しい昨今ではあるが、日本から見ると、このエピソードは太平洋の彼方、あるいは、地球の反対側での出来事である。とは言え、日本列島だけは大手製薬企業の資金力に物を言わせた、舞台裏での狡猾な動きからは無縁であると言い切ることは決してできない。

この問題はすっかりグローバル化しているからだ。

真の意味で一般大衆の健康を維持したいとするならば、日本も含めて各国の政治家や大手メディアは客観的に物を言える環境を整え、お互いに異なる意見についても耳を傾ける寛容さを奨励し、法的な裏付けを確保し、勇気のある判断や行動をとれる場を作り出すことが急務だ。

もう一点付け加えておきたいことがある。新型コロナの大流行というストーリーそのものは今やその信憑性が疑われている。その対応策に関しても然りである。米国ではPCR検査のやり方が疑われている。PCR検査の検出感度が高すぎることから適切な感度で検査を行えば現行の陽性者の90%は陽性ではなくなるといった指摘さえもが出て来た(注3)。

一般大衆のひとりとしては専門家のそれぞれの見解や意見はいったい誰を、どの集団を代弁しようとしているのかを見極めなければならない。そのためには情報の収集を自ら行うことが必要だ。その上で状況を判断し、冷静に行動することが今まで以上に重要になって来ている。この状況は決して新しいものではない。日本で10年近く前に起こった福島原発の炉心溶融事故の際ならびに現在に至るまでの間に観察されてきた状況とよく似ている。専門家らは誰かの利益を代弁することが実に多かった。「原子力村」という言葉がそのことを雄弁に物語っていた。

そして、新型コロナの大流行に見舞われている2020年のキーワードは「大手製薬企業」である。


参照:

注1:I’ve lost all trust in medical research – the financial muscle of Big Pharma has been busy distorting science during the pandemic: By Malcolm Kendrick, RT, Jul/04/2020, https://on.rt.com/akys

注2:Hydroxychloroquine: How WHO and The Lancet Let a Little-Known Company Twist Them Around Its Finger: By Sputnik, Jun/05/2020

注3:Up to 90% of people who test positive for Covid barely carry any virus & are not contagious. Every stat about the disease is bogus: By RT, Sep/03/2020, https://on.rt.com/apns


初出: 長野高校生物班OB会誌「うばたまむし」13号(2020年12月発行)。当ブログへ掲載するために必要な最小限の訂正をした。









2020年12月18日金曜日

最新の研究によると、グリホサートを主成分とする除草剤は環境ホルモン様の挙動をする

 

モンサント社(2018年にドイツのバイエル社に買収された)が開発し、製造するグリホサートを主成分とする除草剤「ラウンドアップ」は環境ホルモンのような挙動を示すらしい。環境ホルモンの特徴は非常に微量であっても魚類や爬虫類、哺乳類の性ホルモンをかく乱し、次世代に対する影響が大きいという点で知られている。環境ホルモンは内分泌かく乱物質とも称される。今までに環境ホルモンとして知られている環境汚染物質にはDDTPCB、トリブチル錫、ダイオキシン、有機リン系やネオニコチノイドを中心とした農薬、等がある。

ここに「最新の研究によると、グリホサートを主成分とする除草剤は環境ホルモン様の挙動をする」と題された記事がある(注1)。グリホサートを主成分とする除草剤とは商品名では「ラウンドアップ」で代表される。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

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除草剤として広く使われているグリホサートは人のホルモンをかく乱するという悩ましい証拠が懸念を呼んでいるとする新たな研究結果が、先週、USRTK(訳注:US Right To Knowと名付けられている米国の非営利団体)によって報じられた。 情報源: USRTKCarey Gillamによる。

Chemosphere誌によって出版された最新の論文は「グリホサートとその内分泌かく乱作用を示す主要な特性 - 文献調査」と題されており、3人の著者によるものである。グリホサートは内分泌かく乱作用を示す10個の特性の内で8個に該当すると結論付けた。しかしながら、グリホサートが人の代謝システムに与える影響をより明確に理解するには有望な要因対照(コホート)研究をさらに行うことが必要であると著者らは付け加えてもいる。

著者のフアン・ムノス、タミー・ブリーク、グロリア・カラフはチリのタラパカ大学に所属し、彼らが著した論文はグリホサートに関する機械的な証拠を内分泌かく乱物質(EDC)であると集約したもので、最初の文献調査であると述べている。

研究者らによると、グリホサートを主成分とするモンサント社の有名な「ラウンドアップ」除草剤は性ホルモンの生合成を変化させ得ることを示す証拠があるとのことだ。

EDCは体内のホルモン様の挙動を示し、ホルモンを干渉し、身体の発達や生殖上の問題を引き起こすばかりではなく、脳や免疫の機能も損なう。

さまざまな動物に関する研究が今年の始めに出版され、それらの研究はグリホサートへの暴露は生殖器に影響を与え、生殖能力を阻害することを示した。

グリホサートは世界でもっとも広範に用いられている除草剤であって、140ヵ国で販売されている。1974年にモンサント社によって商業的に導入され、この化学品は世界中の消費者や地方自治体、エネルギー事業者、農家、ゴルフコース事業者、他が多用する「ラウンドアップ」やその他何百種もの除草剤の主要成分である。

イーモリ―大学ロリンズ公衆衛生大学院のダーナ・バー教授は「グリホサートが内分泌をかく乱する性質を有していることは証拠が歴然と示している」と言った。 

「グリホサートは他の数多くの内分泌かく乱性の農薬と構造的な相似性を持っていることから、このことがまったく想定外であったとは必ずしも言えない。しかしながら、グリホサートの使用は他の農薬を遥かに凌駕していることから、心配は遥かに大きい」とバー教授は言う。彼はアメリカ国立衛生研究所が資金を提供するイーモリ―大学内にある人に対する暴露を究明する研究センターでの研究プログラムを統括している。「グリホサートは非常に多くの作物に使用され、非常に多くの量が住宅地でも使用されており、複合的ならびに蓄積的な暴露は相当なレベルになっていることであろう。」 

フィル・ランドリガンは「グローバル汚染・健康観測所」の所長を務め、ボストン大学の教授も兼務する。彼はこの論文はグリホサートが内分泌かく乱物質であることを示す「強固な証拠」を纏めてくれたと述べている。

「この報告書はグリホサートは健康に対して幅広い悪影響を持っていることを示しており、実に多くの文献と整合性を持っている。これはグリホサートは人の健康には良性の化学物質であるとしてモンサントが長年主張し続けて来た説明を覆すものだ」とランドリガン教授は言う。 

殺虫剤や工業的溶剤、プラスチック、洗剤、その他の商品に一般的に使用されている化学品がホルモンとその受容体との関係性をかく乱する能力を持っていることを報告するさまざまな論文が出版されてからというもの、1990年代以降、EDCは心配の種となっていた。

科学者らはホルモンの作用を変えてしまう化学品について一般的に10個の機能特性を認識している。それらは内分泌かく乱物質の「主要な特性」と称されている。それらの10個の特性は下記の通りである: 

EDCの作用: 

 循環するホルモンの濃度分布を変える。

 ホルモンの代謝または排除に変更を引き起こす。

 ホルモン生成細胞またはホルモン応答細胞の最終的な結末を変える。

 ホルモン受容体の発現を変える。

 ホルモン受容体に拮抗する。

 ホルモン受容体と相互作用する。あるいは、ホルモン受容体を活性化する。

 ホルモン応答細胞における信号変換を変える。

 ホルモン生成細胞またはホルモン応答細胞における後成的修飾を変える。

 ホルモン合成を変える。

 細胞壁を介したホルモン輸送を変える。

機械的なデータの文献調査を行った結果、グリホサートは、2項目の例外を除いて、重要な特性の全てに合致するとこの新論文の著者らは報告している。「グリホサートに関しては、ホルモン受容体に拮抗する能力を示す証拠はない」と彼らは言う。同様に、著者らによると「ホルモンの代謝や排除に対する影響を示す証拠も見当たらない。」 

最近の2030年間はグリホサートと癌との関連性についての研究に多くの関心が寄せられてきた。特に、非ホジキンリンパ腫(NHL)に関して。2015年、世界保健機構の国際癌研究所はグリホサートには「おそらく発がん性がある」と分類した。

米国では10万人以上がモンサント社のグリホサートを主成分とする除草剤への暴露が彼らや家族の一員にNHLをもたらしたとして同社を告訴した。

また、この全米規模の訴訟で原告らはモンサントは同社の除草剤の危険性を隠蔽しようとしたとも主張した。モンサントは三つの訴訟でそれらのすべてにおいて敗訴し、最近、モンサントを吸収したドイツのバイエル社はこれらの訴訟を法廷外で決着をつけようとして1年半を費やした。

この新論文の著者らは「この化学物質は大量に使用されており、そのことが環境中で非常に広範にわたる汚染をもたらしいぇいる」と述べ、人々が食品を通じてこの除草剤にますます多く暴露されることを含めて、グリホサートがあらゆる場所で使用されている現状を特に重要視している。

研究者らはこう言った。「食品中に一般的に発見されるグリホサートの分解物の濃度は低く、安全であると規制当局が述べているにもかかわらず、この化学品によって汚染された食品を消費することの潜在的危険性は決して無視することはできない。特に、ミルクや肉類、魚類に比べてより多くの汚染を受けている穀類やその他の植物性食品についてはなおさらのことである。」

米国政府の文書によると、グリホサートの残留物質は広範な食品から検出されており、これらの食品には有機農法によるハチミツやグラノーラバー、クラッカー、等も含まれる。

また、カナダ政府の研究者も食品中のグリホサート残留物質に関して報告している。カナダのアルバータ州農林省に所属する農業食品研究所の学者らによって2019年に発刊された報告書によると、彼らが調査を行った200個のハチミツのサンプル中で197個のサンプルからグリホサートが検出された。

グリホサートが人の健康に与える影響に関しては、食品による暴露も含めて、その懸念は募る一方であるのだが、米国の規制当局は本化学物質の安全性については断固として防衛している。米環境保護庁は「グリホサートの暴露がもたらす健康に対する危険性は何も見つかってはいない」との姿勢を維持している。

***

これで全文の仮訳が終了した。

内分泌かく乱物質の厄介な点は非常に微量であっても内分泌の機構をかく乱することである。たとえば、ppmレベルの残留物質の濃度では危険性を示さなくても、その1000倍も希釈されたppbレベルの濃度で危険性が顕在化するといった具合だ。世界中の食品がグリホサートによって汚染されている昨今、しかも有機農法による食品であってさえもそれらの多くが汚染されている事実を見ると、次世代の健康については楽観的ではいられない。米や麦、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆といった植物性の食品に汚染が著しいと言う。大規模農業によって生産された北米産の農産物を大量に輸入し、毎日消費している日本の将来は大ピンチである。

ところで、「モンサント、グリホサート(あるいは、グリフォサート)、遺伝子組み換え食品、除草剤」といったキーワードを用いた過去の投稿を参考情報として下記に列記してみます。20196月までで21件あります。ご興味がありましたら検索してみてください。

(21) 2019/06/03、「グリフォサートはわれわれが想像する以上に悪い」

yocchan31.blogspot.com/2019/06/blog-post.html 

原典:Glyphosate Worse Than We Could Imagine: By F. William Engdahl, NEO, Apr/14/2019

(20) 2019/05/28、「遺伝子組み換えのジャガイモを作り出した科学者が危険な真実を暴露 - 独占インタビュー」
yocchan31.blogspot.com/2019/05/blog-post.html

原典:The Creator of GMO Potatoes Reveals The Dangerous Truth - Exclusive Interview: By Sustainable Pulse, Oct/09/2018

(19) 2019/04/02、「最近のグリフォサート由来の癌の訴訟に関して米陪審員はバイエルに対して8千百万ドルの損害賠償を裁定」
yocchan31.blogspot.com/2019/04/8.html

原典:US Jury Punishes Bayer with 81 Million Dollar Damages Ruling in Latest Glyphosate Cancer Trial: By Sustainable Puls, Mar/28/2019

(18) 2019/03/08、「このままでは欠かすことができない昆虫さえもが絶滅してしまう」
yocchan31.blogspot.com/2019/03/blog-post.html

原典:We’re Killing Off Our Vital Insects Too: By F. William Engdahl, NEO, Mar/02/2019

(17) 2019/02/17、「グリフォサートの致死性を明らかにしたことによりスリランカ人の専門家が著名な科学賞を受賞」
yocchan31.blogspot.com/2019/02/blog-post_40.html

原典:Sri Lankan Experts Receive Top Scientific Award for Revealing Lethal Truth about Glyphosate: By Sustainable Pulse, Feb/04/2019

(16) 2018/10/31、「人の遺伝子編集における地政学」
yocchan31.blogspot.com/2018/10/blog-post_31.html

原典:The Geopolitics of Human Gene Editing: By Ulson Gunner, NEO, Oct/19/2018

(15) 2018/10/22、「遺伝子操作によって再合成された「馬痘」が引き起こすかも知れない天然痘の大流行の可能性に科学者たちはびびっている」
yocchan31.blogspot.com/2018/10/blog-post_22.html

原典:Scientists Freak Out Over Pandemic Potential Of Genetically Engineered Smallpox: By Tyler Durden, ZEROHEDGE, Oct/14/2018

(14) 2018/08/29、「モンサントの有罪判決は始まったばかり」
yocchan31.blogspot.com/2018/08/blog-post_29.html

原典:Monsanto Guilty Verdict Is Only Beginning: By F. William Engdahl, NEO, Aug/15/2018

(13) 2018/01/16、「機密の裁判所文書においてモンサント社は安全性試験が未完了の「ラウンドアップ」除草剤に発癌性があることを認めている」
yocchan31.blogspot.com/2018/01/blog-post_16.html

原典:Monsanto Admits Untested Roundup Herbicide Could Cause Cancer in Secret Court Documents: By Sustainable Pulse, Aug/09/2017

(12) 2017/06/15、「遺伝子組み換え大豆に危険なレベルの除草剤グリフォサートを検出」
yocchan31.blogspot.jp/2017/06/blog-post_15.html

原典:Potentially dangerous levels of glyphosate found in GM soy: From THE DETOX PROJECT, detoxproject.org/glyphosate/potentially-dangerous-level..

(11) 2017/06/11、「グリフォサートの機密データの中に腫瘍を引き起こす証拠を発見」
yocchan31.blogspot.com/2017/06/blog-post_11.html

原典:New Tumor Evidence Found in Confidential Glyphosate Data: By Sustainable Pulse, May/31/2017

(10) 2017/01/10、「バイエル社の農薬がミツバチを不妊化している」
yocchan31.blogspot.com/2017/01/blog-post.html

原典: Bayer AG Makes Bee Contraceptives: F. William Engdahl, New Eastern Outlook, Aug/13/2016,  journal-neo.org/2016/08/.../bayer-ag-makes-bee-contraceptive...

(9) 2016/06/27、「除草剤グリホサートに対する反対が驚くほど拡大」 
yocchan31.blogspot.com/2016/06/blog-post_43.html

原典: The Amazing Glyphosate Revolt Grows: By F. William Engdahl, New Eastern Outlook, May/23/2016, journal-neo.org/2016/.../the-amazing-glyphosate-revolt-grows...

(8) 2015/12/24、「不信感が募るばかり - 「遺伝子組み換え作物のリスク評価は欠陥だらけ」と専門家が指摘」 yocchan31.blogspot.com/2015/12/blog-post_24.html

原典:Growing Doubt: a Scientist’s Experience of GMOs. Flawed Processes of GMO Risk Assessment: By Jonathan Latham PhD, Global Research, Sep/02/2015

(7) 2015/09/02、「アルゼンチン - モンサントによって汚染された国」
yocchan31.blogspot.com/2015/09/blog-post.html

原典: Argentina: The Country that Monsanto Poisoned? Photo Essay: By Syddue, Dec/29/2014, overgrowthesystem.com/argentina-the-country-that-monsanto-... 

(6) 2015/08/27、「遺伝子組み換え食品には安全性の証拠が出揃ってはいない
yocchan31.blogspot.com/2015/08/blog-post_27.html

原典: No scientific evidence of GM food safety: By Nafeez Ahmed, INSURGE Intelligence, Jul/13/2015

(5) 2015/06/22、「モンサント社の元社員であった一流専門誌の編集者、その地位から解任される」
yocchan31.blogspot.com/2015/06/blog-post.html

原典: Former Monsanto Employee Fired from Major Scientific Journal’s Editor Position: By Christina Sarich, Global Research, Mar/30/2015, www.globalresearch.ca/former-monsanto-employee-fired-fro...

(4) 2015/06/15、「モンサントの除草剤と発がん性との関連性 - WHOは公表した調査結果を撤回しそうもない」
yocchan31.blogspot.com/2015/06/who.html

原典:World Health Organization Won’t Back Down From Study Linking Monsanto to Cancer: By Derrick Broze, The Anti-Media, Mar/30/2015, theantimedia.org/world-health-organization-wont-back-down-... 

(3) 2014/06/13、「遺伝子組み換え食品による著しい炎症反応 - 豚を使った試験で」
yocchan31.blogspot.com/2014/06/blog-post_13.html

原典:Large Pig Study Reveals Significant Inflammatory Response to Genetically Engineered Foods By Dr. Mercola, May/18/2014, articles.mercola.com/sites/.../gmo-foods-inflammation.aspx

(2) 2014/06/07、「まさに信じがたい - 遺伝子組み換え作物に反対する人を黙らせようとしたシンジェンタ社の対応」
yocchan31.blogspot.com/2014/06/blog-post_7.html

原典: Syngenta methods of silencing GMO opposition are unbelievable: By William Engdahl, RT, May/15/2014, http://on.rt.com/yfwt3v 

(1) 2014/06/02、「モンサントの除草剤と腎疾患との関連性」
yocchan31.blogspot.com/2014/06/blog-post.html

原典: Monsanto's Roundup may be linked to fatal kidney disease, new study suggests: By RT, Feb/27/2014, http://on.rt.con/do84uy


参照:

1New Research Adds Evidence that Weed Killer Glyphosate Disrupts Hormones: By Sustainable Pulse, Nov/19/2020




2020年12月10日木曜日

新型コロナワクチンの開発レースで勝ったと英国政府が自慢するも、世界で最初という主張に一般大衆がうんざりするならば大流行に対する戦略は台無しとなりかねない

 

英製薬大手のアストラゼネカ社はオックフォード大学と協力して新型コロナワクチンの開発に成功し、政府認可の第1号となった。これはチンパンジーの風邪ウィルスであるアデノウィルスを用いている。一方、ロシアが開発したスプートニクVはヒトの風邪ウィルスであるアでにウィルスを使用しているので、これら2種のワクチンは開発の戦略が互いにかなり近縁であると言えそうだ。

この9月には臨床試験のボランティアの一人に重篤な副作用が確認されたが、同社はその後臨床試験を再開した。そして、アストラゼネカ社のワクチンは英国政府から承認を受けた。だが、この原稿の作成時点では、米FDAからの緊急使用許可待ちである。

ロンドンでは新型コロナの感染防止策としての都市閉鎖や新型コロナワクチンに対して反対するデモが起こった。このデモ騒ぎで1128日には150人以上が逮捕されたと報じられている。逮捕の理由は規制策(マスクの着用や周囲の人との距離を保つこと、等)を遵守しなかったことや警察の指示に従わなかったこと(要するに、デモを継続したこと)、等。思うに、このデモの根底には都市閉鎖が市民生活を破壊し、市民のやり切れない不満は募る一方であったと言えるのではないか。残念なことには、英国政府に対する信頼感は低下するばかりである。

さらには、英国ではワクチン接種についてオンライン上で反対を唱えることは違法にしようという動きさえもが出て来ているそうだ。これは労働党からの提案であるらしい。そこまで行くと、何が何でも力ずくでワクチン接種を実行しようと言わんばかりに見える。しかし、そんなことをすれば混乱は今以上に激化するに違いない。政府はさらに信頼感を失い、「以前の生活に戻る」という努力なとんでもない大失敗に終わりかねない。

ここに、「新型コロナワクチンの開発レースで勝ったと英国政府が自慢するも、世界で最初という主張に一般大衆がうんざりするならば大流行に対する戦略は台無しとなりかねない」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、世界的に極めて今日的なテーマを読者の皆さんと共有したいと思う。皆さんはどのようにお思いだろうか。

***

自分自身をコントロールすることができず、英国の政治家たちは歴史上かってなかったような迅速さで新型コロナ用のワクチンを開発し、それを承認することに成功したとして自画自賛している。しかしながら、専門家に言わせると、人口の85%がワクチンの接種を受けるよう説得することは想像以上に困難な仕事である。

ファイザーやビオンテック、アストラゼネカ、モデルナおよびオックスフォード大学の開発研究者たちにとってはワクチンの開発レースにおいて自分たちが何処に位置しているのかを正確に見定めることは極めて難しいことではあるが、全世界が新型コロナウィルスによってがっちりと捕らえられてからというもの、政治家たちにとってはこの点こそがわれわれに賛同して貰いたい最大の課題のようだ。

だが、何かが欠けている。それはワクチン戦争はふたつの戦線において進行しているということを理解することだ。一つ目は本来の仕事を立派に果たしてくれるワクチンを開発すること。そして、二つ目は国民にそのワクチンを接種する気にさせること。一つ目の問題を解決したとは言え、二番目の問題はこれから登らなければならない高山が目に前に突然現れ、その威容に圧倒されているかのような状況である。

RT.COMからの県連記事:World-beating jingoism’: Gavin Williamson sparks Twitter fury by calling UK ‘much better’ than US & EU due to Pfizer jab approval

著名な米国の免疫学の専門家であるアンソニー・ファウチ博士はEU勢に加わって、「ファイザー・ビオンテック連合のワクチンのためにわれわれが英製薬会社が英国の医薬品・医療製品規制庁から勝ち取ったスピードと同じような迅速さで登録を完了したとしたら、(米国の)一般消費者はワクチン接種を受けることを思いとどまろうとするかも知れない」と仄めかした。

「あまりにも急速に事を進め、余りにも表面的に実行するならば、人々はワクチン接種を受けたいとは思わないだろう」と彼は述べているのである。そのような状況は大失敗を招きかねない。

あらゆる点において、特効薬を開発する筋書きはそもそもが何らかのレースであった。その筋書きにおいては勝者や敗者はウィルスとかワクチンではなく、この競争で一位を勝ち取った国の政治家たちであって、彼らは得意げに吹聴する権利を勝ち取るのである。

これはある意味でウィルスに対するレースであり、国民の間に感染が広がることを食い止めるためのレースである。とは言え、解決策を求めて日夜仕事を続ける科学者らは世界でも僅かな人たちだけが理解することが可能な生物学やウィルス学上の専門知識を必要とし、彼らは国家間の競争に自分たちが参画しているなんて決して考えるべきではない。これはオリンピックではなく、科学なのだから。

しかしながら、このような思考は英国の政治家には通用しない。彼らはすっかり解き放たれて、テレビではワクチンを誇示し、ツイッターでも自慢し、英国は「レースで一着になった」と主張する始末である。

RT.COMからの関連記事:The day UK led humanity’s charge against Covid’: Tory MP Sharma mocked for over-the-top cheer as London approves foreign vaccine

ボリス・ジョンソン英首相はこのワクチンの「生物学的な柔術」が来春までにコロナウィルスを駆逐することを意味すると公言し、口火を切ったのである。

ガヴィン・ウィリアムソン教育相は次のように言った。「われわれは医療分野では明らかに最高レベルの当局を有している。フランスよりも、ベルギーよりも、米国よりも遥かに立派だ。我が国は何処と比べても遥かに立派なのだ。」 

古参の議員であるジェイコブ・リース・モッグは議会でこう言った。「われわれの当局が一番乗りを果たしたことについて英国は誇りに思うべきだ。EUの規制当局はいささか軽蔑した態度をとっており、彼らはわれわれが一番乗りをしないようにと望んでいたに違いない。ドイツやフランスならびに他のヨーロッパ諸国はこのような成功を達成することはできなかった。」

英国のビジネス・企業および規制改革を担当する大臣を務めるアロック・シャーマは涙で目をかすませながらこう主張した。「今後何年にもわたって、われわれは今日という日を当感染症に対する人類の取り組みにおいて英国が大きく貢献した日として記憶することであろう。」

ところが、好戦的な愛国主義を発揮してこれらの政治家のすべてを出し抜いたのは保健大臣のマット・ハンコックであった。彼はテレビでワクチン接種の様子を放映すると言った。 

駐英ドイツ大使は格別な好印象を抱いたというわけではない。彼はこうツイートした。「これは国際的な取り組みであって、その成功のためには非常に重要なステップであるということを理解することはそれほど難しいことなのであろうか?」 ことによったらそうかもね、大使閣下。でも、連中は我が国の指導者なんだ!

EUはお互いに歩調の合った展開を求めており、むしろ防御的な捉え方をしている。これはワクチンそのものについてではなく、ワクチンが英国で承認された際のあのせっかち振りについてのことだ。

恐らく、彼らは正しい。ひとつだけの国を取り上げ、そして、このウィルスはひとつの場所から始まった事実を考慮するならば、ファウチ博士が述べた接種に関する忠告は留意すべきであろう。大流行をストップさせるには、4人に3人の割合でワクチンを接種しなければならないと彼は考えている。接種率が85%にもなれば、彼は大喜びであろう。

先月米国で発表されたギャロップの世論調査によると、接種を受けたい人たちの割合はたった58%であった。

私としては、その機会がありさえすれば早々に接種を受けようと思うが、誰もがそう思っているわけではないことは十分に承知している。彼らの考えを変えることは難しい。もしもわれわれの指導者がこの難問をうまくさばくことができないならば、われわれは大問題を抱え込むことになろう。

恐らく、この点こそが指導者らが最近直面している最大の難題なのだ。これは都市閉鎖や交通標識システム、あるいは、財務省の金庫を空っぽにする創造的な手口のことではなく、単純であるかも知れないが、非常に曖昧模糊としたキャンペーンなのである。彼らは、一旦ワクチンの開発が終わった暁には市民がそのワクチンを接種するための登録を行い、誰もがそうすることが最良の選択肢であると思うように十分に説得しなければならない。そうしてこそ始めて国民の生命を救うことになるのだ。

RT.COMからの関連記事:UK wants to use literal army to fight ‘anti-vaccine propaganda’ online. Are we in a budding totalitarian state?

ところが、それに代わって、胸を叩いて自慢話をする政治家たちは多くの市民が彼らをどう見ているのかに関しては何も分ってはいないことにわれわれは驚かされている。その上、われわれはその事実に耐え忍ばなければならない。大規模なワクチン接種の実施について信頼感を醸成しなければならないことから、彼らは勝ち誇った態度を何とか売り込もうとしている。外国のトップの専門家の助言さえも借りて、そうしようとしている。ことによったら、うまく行くかも知れないと思って・・・。

彼らは何らかの形でこれに取り掛かるようだ。ところが、何と逆方向ではないか。われわれ一般市民が支払わなければならない最悪のツケは避けることができた筈の死者をたくさん出してしまうことだ。

この記事を気に入って貰えただろうか?友人たちとシェアーしていただきたい!

注:この記事に表明されている主張や見解、意見は全面的に著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見ではありません。

著者のプロフィール:ダミアン・ウィルソンは英国のジャーナリストで、ロンドンのフリート街(英国の新聞界)で編集者の仕事に従事して来た。また、金融業界のコンサルタントでもあり、英国およびEUの政治的コミュニケーションに関する特別顧問も務めている。

***

これで全文の仮訳が終了した。

英国人特有の皮肉めいた言い回しがあちこちに見られるが、著者が言わんとしている趣旨はもちろん明白である。

一般大衆の信頼感を勝ち取ることはワクチンを集団接種する上で基本的にもっとも重要なことであろう。これは確かだ。新型コロナにおいてはこのワクチン開発が大急ぎで行われた事実が誰の目にも明白であるだけに、今後安全性が十分に説明されない限りは4人中3人に接種を行うことは非常に困難なものとなろう。薬品大手が金儲けのためにゴリ押しをしているとの印象を一般大衆にすでに植え付けてしまった今、もしも期待されている透明性を十分に維持することができないならば、集団接種は大失敗に終わるかも知れない。そのような最悪の展開を回避するためにも、ワクチンを供給する側はその有効性と安全性に関する詳細なデータを十二分に開示し、根気よく説明を続けなければならない。そもそも、すでに1年間続いている新型コロナの大流行は今でさえも不透明な部分が少なからずあって、説明不足のままに放置されているのが現状である。

ワクチン開発とその集団接種に関して歴史的に見ると、負の遺産が生じた事例は決して稀ではない。たとえば、107日に掲載した「ビル・ゲイツのワクチンがアフリカでポリオを広げている」と題した投稿は貴重な事例を伝えている。アフリカでは自然ポリオの発症例に比して、ワクチンに誘発された人工的なポリオが数多く報告されている。また、米国はアフリカ諸国をモルモット代わりに使っていると指摘する深刻な非難もある。

戦前ならびに戦後、米国ではポリオが集団発生した。これには殺虫剤であるヒ酸鉛やDDTによる食品の汚染が絡んでいたと報じられている。ポリオウィルスと人為的な化学物質との共同作用が疑われているのである。(注: 「ポリオ騒動 アメリカ」と題されたpdfファイルには詳細な情報が満載されtいます。興味がありましたら、検索してみてください。)

農薬とウィルスとの共同作用によってポリオの集団発生が起こったとする報告は環境が人工的な化学物質で汚染され、汚染の程度が悪化するばかりの環境に住んでいる21世紀のわれわれにとっては決して無視できない。因みに、遺伝子組み換え作物用の除草剤として用いられているラウンドアップによる環境汚染は環境ホルモンとして人体に影響し、不妊化の原因物質として疑われている。

話を元へ戻そう。今回の新型コロナの大流行においては大手メディアはその恐ろしさを喧伝して来た。しかしながら、一部の専門家は実態以上に騒ぎ過ぎであると指摘している。この一年間続いた大騒ぎは実際には製薬大手がワクチンを開発し、そのワクチンを世界中で集団接種を行わせるための前奏曲であったに過ぎないとすれば、まさに何をかいわんやである。引用記事の著者が結言として「われわれ一般市民が支払わなければならない最後のツケは避けることができた筈の死者をたくさん出してしまうことだ」と述べているが、この指摘は極めて重い。

その一方で、引用記事で指摘されている主張が重要であることについてはまったく異論はないのだが、冷静に考えてみると、逆説的に聞こえるかも知れないが、総括的な結論を今導くことは控えなければならないのではないか。

ファイザー社のワクチンの場合、何と言っても、彼らが開発したワクチンはmRNAを使ったものであって、ワクチン開発では今まで使われたことがないまったく新種のワクチンである。つまり、現時点では長期的な影響は何も分かってはいないワクチンなのである。人類は自然をあなどって、自然に挑戦して来たが、多くの大失敗も仕出かして来た。そんな失敗を繰り返してはならない。そのことを考えると、風邪ウィルス由来のワクチンであろうと、mRNAを使ったワクチンであろうと、新ワクチンに対する懸念は高まりこそすれ、決して和らぐことはない。新型ワクチンの有効性と安全性について最終的な結論を出せるのは来年か、それとも再来年か?あるいは、もっと先のことになるのだろうか?


参照:

1UK boast of winning ‘race’ to greenlight Covid-19 vaccine jeopardises pandemic strategy if public is put off by world-first claims: By Damian Wilson, RT, Dec/03/2020, https://on.rt.com/awgc