2020年6月28日日曜日

戦争屋のジョン・ボルトンの新著はトランプ大統領が米国を大きな戦争に導こうとしなかったことに対する不満が呼び水

国家安全保障問題を担当した米大統領補佐官のジョン・ボルトンはトランプ大統領とは反りが合わなかった。2019910日に大統領補佐官を辞任するまでの1年半の間(ボルトンは自分から辞めたのだと言い、トランプはボルトンに辞任を勧めたのだと言うが)、ボルトンは北朝鮮やイラン、ベネズエラに対する外交あるいは軍事的戦略においては大統領と意見が合わなかったようだ。単純に言えば、ボルトンは北朝鮮やイラン、ベネズエラとの戦争を推進し、トランプ大統領は戦争を回避するというお互いにまったく相反する動きをとったと言われている。

トランプ政権の外交について中心的な役割を担ってきたボルトン前補佐官は米政権の要職を辞してからは回顧録を書いていると前々から報じられていた。トランプ大統領や現政権にとって機密事項が記載されており、これらの内容は米国の安全保障にとって有害であるとして米司法省は連邦裁判所に回顧録の発刊を差し止めるよう求めていた。しかしながら、620日、ワシントン連邦地裁のロイス・ランバース判事はボルトン前大統領補佐官の回顧録の差し止めに関する司法省からの訴えを棄却した。こうして、暴露本は発刊されることになった。

私が興味深く感じたのは、米政府のお膝元にあるワシントン連邦地裁が、何処かの国のように国家指導者の意向を忖度することはまったくなく、米政府の意向に反して暴露本の発刊の差し止めを棄却したことだ。

単にこれは連邦地裁の判事が野党の民主党贔屓であったということであろうか、それとも、まったく別の理由からであろうか。少なくとも、すでに報道されている内容によれば、ロイス・ランバース判事は、米政府が「出版差し止めによって、回復不可能な損害を防げるとは立証できなかった」と述べたという。一方でボルトンについては、米国の国家安全保障を「存亡にかけ」、すでに「国家を危険にさらしているとした。結局、同判事の裁定は告訴側に有利でもなく、被告側にも有利ではない。どちらかと言うと、非常に曖昧な印象が残る。

ここに、「戦争屋のジョン・ボルトンの新著はトランプ大統領が米国を大きな戦争に導こうとしなかったことに対する不満が呼び水」と題された記事がある(原題:Bloodthirsty John Bolton’s book on Trump is fueled by frustration that the president hasn’t led the US into a major war: By George Gallaway, RT, Jun/22/2020, https://on.rt.com/ak3q)。

著者のプロフィール:ジョージ・ギャラウェーは30年近く英国議会の議員を務めた(労働党、リスペクト党、インデペンデント党に所属)。彼はイラク戦争に反対したことで良く知られている。テレビやラジオでの司会者役を担い(RTを含む)、映画製作、著作に従事してきた。また雄弁家であることでも知られている。ツイッター:@georgegalloway

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。



Photo-1© AFP / Logan Cyrus; © REUTERS/Leah Millis

「それが起こった部屋」(原題:The Room Where It Happened)と題されたジョン・ボルトンの暴露本はドナルド・トランプのことは何ほども記述してはおらず、この本は米国がベネズエラやイラン、北朝鮮に戦争を仕掛けなかったことに対する怒りによって動機付けされたもののようだ。

セイウチのような髭をたくわえたジョン・ボルトンならびにドナルドトランプと大筋では同じ意見をもっていた政治生活を回想する彼の暴露本は熱気がこもった米大統領選前の雰囲気の中ですでにベストセラーだ、とタブロイド紙のナショナル・エンクワイアラーがハードカバー版で持ち上げている。

彼が直ちに米国の自由主義的なお喋り屋のひとりとして語られることは驚くほどのことではない。ジョージ・W・ブッシュや故ジョン・マケイン、コリン・パウェルのように、ボルトンは血に染まった最新の戦争犯罪者だ。ドナルド・トランプに対する抵抗勢力である進歩主義者らからは「プシーハット」が贈呈されよう。(訳注:「プシーハット」という新語は女性を蔑視するような発言を繰り返したトランプ大統領を批判する女性のデモ参加者らがピンク色のニット帽を被ったことに由来し、反トランプのシンボルと見做されるまでになった。帽子には猫の耳を思わせるような形がついていて、「プシーキャット」をもじっている。)

米国が累々たる犠牲者の屍で埋まることを回避することはトランプ大統領を愚かにも選出した米国においては唯一の人物を告発するという新しい役割りを引き受けることに比べたらその重要性は小さなものだ。今や、レイチェル・マドーは何時でもボルトンが自由主義者的な理由から示した自己犠牲を見て涙にむせぶことであろう。彼らにとっては何人かの命だけが重要であり、いくらかの時間だけが重要なのである。

私はリークされた部分をいくつか読んだだけであって、彼の新著を購入して著者の金庫を太らせる積りなんて毛頭ない。メディアは大騒ぎをしているが、あれは何の価値もない。


トランプが「米国産の農産物を買ってくれ」と中国の習近平主席に頼み込んだことは明らかである。ところで、これは世間では間違いなく彼を傷つけるであろう。世界中の指導者は誰もが自分の対話相手に「英国産」、あるいは、「米国産」のこれこれを買ってくれと頼み込むのが落ちだ。しかし、(不思議なことには)このような振る舞いは「選挙干渉」とは同一視されない。

トランプはどうもテレサ・メイ英首相に「英国は核大国か」と尋ねたようだ。彼女は、恐らく、その通りだと答えたに違いない。しかし、彼は核エネルギーのことを言おうとしていたのかも知れない(訳注:nuclear-powerという用語は、文脈次第で、核兵器とも核エネルギーとも受け取れる)。発電の話になると米国の炭鉱は水没に見舞われており、核エネルギーに反対するロビー活動は後退し、風力発電が今日では大量に活用されていることからも彼の質問は妥当なものであったとさえ思われる。

あるいは、彼は厳しい現実に関して非常に正確に喋っていたのかも知れない。英国は、われわれの核兵器に比べると、真に独立した形で核兵器の能力を米国から与えられたことは一度もない。新たに整備された英国のトライデント原潜攻撃部隊は星条旗のバッジをつけているかのようでさえある。


トランプは北朝鮮の指導者である金正恩との歴史的会談が一般大衆にはどう映るのか、そして、それがどのように大統領再選の助けになるのかに関してより多くの関心を抱いていたようだ。神が禁じたまわんことを!政治家というものは再選に全力を注ぐものではあるが、いったい誰がこのことを考えただろうか?

彼は北京政府の言い分には同意しているようだ。つまり、「米国では選挙が多すぎる」と。感覚的に言えば、これとは違った風に考える者がいるであろうか?米憲法は危機に見舞われ、何世紀も時代遅れで、永遠に選挙モードに浸りっきりだ。その選挙では有権者が大統領を指名するのではなく、選挙人団が指名する。この選挙ではワイオミングは州のひとつではあるが、ワシントンDCはそうではない。上院ではバーモント州はカリフォルニア州と同等の代表権を持っている。いったい誰が米国憲法を現代的な統治における極致であると考えるであろうか?

もしもトランプが三期目を夢見ているとしたらどうだろうか?それはないだろうし、二期目さえもが怪しい話だ。


「フィンランドはロシアの一部だ」と考えることはフィンランド人の多くがまさにそうだと考えいぇいるなんて私にはとてもじゃないが想像もできない。現時点ではロシアの隣国であることに甘んじなければならない。

疑いようもなく、都会育ちの田舎者であって、あざを隠すことさえも知らないドナルド・トランプに比べるとジョン・ボルトンは世界についてより多くのことを知っている。結局のところ、ボルトンは何十年にもわたって多くの国々を侵略する計画を練ってきたのだ。とどのつまりは、ベネズエラを侵略することは格好がいいと考えたのはトランプではない。ジョン・ボルトンからは「執拗に頼み込まれた」にもかかわらず、トランプは実際に侵略をすることが格好がいいなんて考えもしなかったのだ。

トランプはジョン・ボルトンを失望させた。なぜならば、トランプはベネズエラやイランに侵攻しようとはせず、北朝鮮にも侵攻しようとはしなかったからだ。新たに何処かの国を侵略しようとはしなかった。 こうして、ボルトンは不満たらたらだった。今から11月までの間に何も起こらないとすれば、トランプは任期中に新たな戦争を開始することは一度もなく、国外に駐留する米兵を撤退させ、ロケットを発射した数は前任者の誰よりも少ないことになる。その一方で、新たにプシーハットを被せられた(つまり、反トランプ色が鮮明になった)ボルトンは依然としてアルブカーキーで野犬捕獲者として選挙に勝つことなんてできそうにはないのである。

注:この記事に記載されている見解や意見は全面的に著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。


これで、全文の仮訳が終了した。

この記事には著者の英国人らしい皮肉を込めた表現が次々と現れてくる。

著者はボルトンは「ドナルドトランプと大筋では同じ意見をもっていた」と記述しているが、その主題が何であるかについては詳述がない。思うに、これは中国に対する貿易戦争のことであろうか。軍産複合体の意を汲んで戦争を始めようとしたボルトンにとっては中国との友好関係は破棄し、同国を仮想敵国として維持し、中国の近海では米海軍に航行の自由と称して示威行為をやらせて、新彊ウィグル自治区における反政府デモについては、香港でのデモと同様に、デモ参加者に友好的な論説を書いて、軍産複合体に巨大な予算を振り向ける理由をあからさまに見せつけることが非常に重要なのだ。

著者のジョージ・ギャラウェーはトランプが新たな戦争を行おうとはしなかったことを重要視している。そのことを考えると、トランプがいくら中国との経済戦争や情報戦争を進めようとも、結局、トランプは熱い戦争に踏み込もうとはしない。中国とはどこかの時点で和平に転じるしかない。一方、ボルトンを始めとする戦争屋はどのように考えているのだろうか。ある将軍は極めてタカ派的は発言をするが、他の将軍は米将兵にもたらされる損害を考えると通常兵器による対中戦争なんてあり得ないと言う。朝鮮戦争では米国は中国に勝つことができなかったという悪夢が今でも蘇って来るのかも知れない。それに加えて、ベトナム戦争も大きなトラウマとして残っている。そして、アフガニスタンでもイラクでも、さらには、シリアでも戦争に勝った言えるような状況ではない。

世界の覇権国である米国の政治家や軍のエリートがどんな世界観を抱いているのかについては常に観察し、分析し続けなければならない。

ところで、トランプ大統領の弾劾の動きが進行していた頃のことであるが、議会での証言を求められた際、ボルトンはその役目を受け入れなかった。トランプ大統領の行為が彼にとっては真の意味で許せるものではなかったとするならば、議会と言う大きな後ろ盾を活用することによって彼は自分の名を歴史に刻む大役を担うことができたのではないか。しかしながら、これは私的な見方ではあるが、彼は暴露本の発行を目の前にして、彼にとっては本の売れ行きを損なうかも知れない議会証言は二の次であったようだ。彼にとっては1冊でも多くの本を売ることが大事だった。そんな風に思える。

しかしながら、逆説的になるけれども、この暴露本はひとつのことに貢献しているとも言えよう。つまり、先代の大統領らとは違って、トランプは米国を新たな戦争に引っ張り込もうとはしなかったということを浮き彫りにしている。米ロ新冷戦、米中新冷戦が大っぴらに囁かれている今、そして、これらの核大国には地球上の生命を何回でも繰り返して殺戮することが可能な膨大な量の核兵器が蓄えられている今、人類の存続を考えると核戦争に転じるかも知れない通常兵器による戦争を回避することは基本的に極めて重要なことだと私は言いたい。他の政治課題に比べると、戦争の回避は圧倒的に重要である。願わくば、このトランプ大統領の政策が短命に終わらず、米国で今後も長く続いて欲しいものだ。世界の覇権国である米国がその気にならない限り、世界平和は絵に描いた餅に過ぎない。具体的に言うと、あなたや私の子孫は生きる場を完全に失うことになるのだ。

ところが、最近、世界にはまったく新しい局面が現れた。それは新型コロナウィルスの大流行だ。これによって、米国を中心として進められてきたグローバル経済体制は完全に逆方向へ歩き始めた。つまり、各国は自国民の健康と安全を期すために国境を閉鎖し、人や物の往来を停止させた。経済は沈滞した。米国もその例外ではない。むしろ、国内の治安状態の悪化や世論の分断を見ると、もっとも大きな損害を被ったのは米国ではないかとさえ思われる。もしもこの閉塞状態が今後2年も3年も続くとすれば、米経済が被る損害は甚大なものになり兼ねない。そして、他の国々も同じことだ。

将来の世界は何処へ向かおうとしているのであろうか?




2020年6月22日月曜日

キューバは病人を救っているのに、米国はそのキューバを叩く


ここに最近の記事がある。これは米国の対外政策がもたらす不条理に関してあらためて明確に思い知らせてくれる内容である。「キューバは病人を救っているのに、米国はそのキューバを叩く」と題されている(原題:Trump Hammers Cuba While Cuba Cures the Sick: By Medea Benjamin, Information Clearing House, June 16, 2020 )。
さまざまな事柄がわれわれの関心を他所の方向へ逸らせてしまう生活をわれわれは毎日のように送っていることは事実であるけれども、時にはこのような記事の表題を流し読みにせずに、その内容を丁寧に読み解き、少しでも多くの事実を理解して’おかなければならないと思う。そうすることによってより合理的な判断を導くことが可能となる。そんな思いをさせてくれる記事だ。そもそも、キューバは私にとっては前から関心を呼んでいた存在であった。世界の恵まれない地域へ医療団を派遣し、キューバは地域住民に感謝されていたからだ。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
85人の医師や看護師から成るキューバの医療チームが、63日、チリに到着した。新型コロナウィルスの大流行と闘うアンデスの国家を支援するためである。同日、マイク・ポンぺオ米国務長官はキューバに対する経済制裁をさらに強めると発表した。今回の制裁は七つのキューバの組織を対象にしており、他国への送金を取り扱う中核的な金融機関のひとつであるFincimex がその制裁に含まれている。また、マリオット・インターナショナルも対象のひとつだ。同社ならびに他の観光業分野の企業はキューバにおける営業を停止するよう命じられた。観光業はキューバのGDPの約10%をはじき出す重要な産業であるのだが、世界規模の感染症の大流行によって大打撃を受けていた矢先である。
キューバが世界中で多くの支援を達成すればするほど、キューバはトランプ政権によってさらに厳しく叩かれるようだ。キューバは60年近くも米国の禁輸政策に耐えて来たが、トランプは「最大級の圧力」を課す策によってハードルをさらにつり上げた。この政策には20191月以降に課された90項目以上に及ぶ経済政策も含まれる。カナダに駐在するジョセフィーナ・ヴィダルキューバ大使はこれらの政策を「その水準も適応範囲も前代未聞である」とし、「これは同国の経済発展に要する収入を無くそうとするものだ」と述べた。2018年の推計によると、この禁輸措置はそれが開始されてから累計で1300憶ドルもの損害をキューバにもたらした。2018-2019だけでも、経済的影響は40憶ドルに達した。しかし、この数値には観光業を痛めつけるために導入された20196月のトランプ政権による旅行禁止からの影響は含まれてはいない。
禁輸措置では人道的な物資は対象外となる筈ではあるが、公衆衛生の領域は対象外にはされなかった。キューバについては国民皆保険制度の存在が世界中で広く知られているが、禁輸措置によって医薬品や医療物資の欠如が顕著となった。特に、エイズや癌の患者についてはその影響が甚大となった。関連技術を所有する米企業はキューバへの販売を行うことができなかったことから、キューバの国立癌研究所の医師らは癌に冒された子供たちの脚を切断せざるを得なかった。新型コロナウィルスの大流行の最中に中国の億万長者であるジャック・マが寄贈しようとしたマスクや医療器材は米国によってブロックされた。
キューバ国内の医療分野を妨害することだけでは満足せず、トランプ政権はキューバが行っている国際医療サービスをも攻撃している。国内で現行の新型コロナウィルスの大流行と闘っている医療チームに対する攻撃から始まって、医療サービスが行き届かない164ヵ国での医療支援のために世界中を旅行する医療チームにまで至る。米国の目標はこの島国の収入を断ち切ることにある。これらの医療サービスの提供による収入はキューバの最大の収入源である観光業を追い越した。彼らの給与の一部はキューバの保健制度の費用を賄うことから彼らのことを人身売買の犠牲者」と称して、トランプ政権はエクアドルやボリビア、ブラジルを説得し、キューバの医師たちとの合意書を反故にさせた。ポンぺオはこれらの国々の指導者がキューバ政府が行っている搾取行為に対して目をつぶること」を止めてくれたとして彼らを賞賛した。しかし、この凱旋は長くは続かなかった。つまり、その1カ月後、ブラジルのボルソナーロ政権は新型コロナウィルスの大流行と対処するためにキューバの医師団を送り込んでくれとキューバに依頼することになったからだ。世界中の米国の同盟国は、カタール、クウェート、南ア、イタリア、ホンジュラス、ペルー、等を含めて、このキューバからの支援を有り難く受け入れたのである。キューバの医師団に対する賞賛はすこぶる大きく、彼らにノーベル平和賞を授与する動きさえもが沸き起こった程である。
トランプ政権はキューバの医療専門家を誹謗するだけではなく、国家をも誹謗した。この5月、米国務省は米国の反テロ活動に完全に協力してはいないい五カ国のひとつとしてキューバの名前を挙げた。そのもっともらしい口実はキューバがコロンビアの民族解放軍(ELN)のメンバーをもてなしたことにあった。しかしながら、米国務省のプレスリリースによると、ELNのメンバーをもてなしたのは「和平交渉議定書」の結果であると指摘している。キューバのブルーノ・ロドリゲス外相はこの言いがかりは不正直であり、「2019年にELNとの交渉を決裂せしめたコロンビア政府の不快な態度が発端であった」と述べた。エクアドルはELNとコロンビア政府との会談をとりなした最初の国ではあるが、モレノ政権が2018年にその責任を放棄した後にキューバが介入することを求められたという事実を指摘しておこう。
キューバが対テロ活動に完全な協力態勢を示さないという断定は米国が所有するテロ国家リストにキューバが記載されることを意味し、同国は厳しい罰を受けることになる。先月、この考えはトランプ政権の高官からロイター通信に流された。キューバは考え得るいかなる定義の下であってもテロ行為と言えるような暴力に積極的に従事したことはないと法的に裁定されているにもかかわらず、キューバは1982年から2015年までこのリストに記載されていた。
もちろん、米国は他の国々が対テロ活動に協力的ではないと主張するような立場にはない。何年にもわたって、米国はルイス・ポサダ・カリレスをかくまって来た。彼は73人もの犠牲者を出したキューバの民間航空機に爆弾を仕掛けた事件の黒幕であった。最近の出来事について言えば、米国はワシントンDCにあるキューバ大使館に向けて行われた430日の乱射事件に関して何らかのコメントをする要に迫られている。一人の男が自動小銃で建物に向かって銃撃をしたのである。
トランプ大統領の最高水準の圧力をかけるという政策を鼓舞するポンぺオ国務長官やルービオ上院議員といった右翼のイデオロギー信奉者が間違いなくいる一方で、トランプ自身にとってはキューバに関する政策はすべてが大統領選のためである。この小さな島国に対する彼の厳しい政策は中間選挙でフロリダの知事選を共和党の勝利に導くのに有利に働いたのかも知れないが、これが大統領選でも彼のために効を奏するのかどうかは必ずしも明らかではない。社会通念や世論調査によれば、若いキューバ系米国人は、他の若者たちのほとんどと同様に、中間選挙には投票せず、米国が課す禁輸措置に関しては今まで以上に懐疑的であり、総じて、キューバはもはやキューバ系米国人にとってもっとも重要な課題ではないトランプは2016年にはキューバ系米国人の票を勝ち取ったが、ヒラリー・クリントンは選挙人の4147%を獲得し、この得票率は何十年間にもわたる民主党候補の誰よりも高い水準であった。
キューバに対するトランプの厳しい姿勢は選挙戦略として効を奏さない兆候が見られる。もちろん、その戦略は得票がすべてであるとは言えず、キューバ系米国人の政治マシーンが堅実にトランプを後押しすることに資金を流し、成果を導くためのものでもある。
政治体制の変更という話になると、間違いなくこの戦略は見返りを得てはいない。60年以上にもなる米国の介入の歴史に比べてみると議論の余地が存在するかも知れないが、トランプ政権はキューバ政権の変更からは程遠い。トランプ政権になってから、キューバでは2019年にラウール・カストロからミゲル・ディアス・カネルへと政権が穏やかに移行され、キューバの選挙民は新憲法を圧倒的多数で批准したこれらは崩壊の途上にある国で観察されるような兆候ではない。
トランプが実行したことのすべてがこの島国に住む1千百万人の生活をより困難にした。世界中の人々と同じように、キューバの住人もコロナウィルスの大流行によって経済的な損害を被った。環境業は崩壊した。(米国の新たな規制、ならびに、キューバからの難民が手にする収入が激減したことによって)送金収入は減少した。かっては主要な後援者であったベネズエラは自国の危機に見舞われた。しかし、大流行に見舞われる前に3.7%の減速が予測されていたキューバ経済は最悪期をすでに通過していた。特に、1991年から2000年までの期間はソ連の崩壊後の「特殊な期間」として知られている。
ジョー・バイデンは曖昧な立ち位置を示しているが、ホワイトハウスの主の交代は一定の開放感をもたらすかも知れない。彼はオバマ大統領が行ったように両国の関係を修復すると言った。しかしながら、キューバがベネズエラ政府を支援していることに対しては罰として経済制裁を課すことについては自分は何時でも応じることができると付け加えた。
これから11月までの間、ならびに、今後の4年間、トランプ政権は明らかに隣国の島国を何度でも殴りつけるであろうと推測される。キューバ側は禁輸措置に対して世界規模の抗議行動を模索するであろう(2019年の国連での投票 187票が賛成、米国とブラジル、イスラエルの3票が反対であった)。そして、同国は善良なる隣人とはどういうものであるかを見せ続けるであろう。キューバはこれらの最近の挑発に対してキューバに特有な形態で応答をした。つまり、より多くの世界的な同志意識を獲得して、63日に経済制裁が放たれたが、その翌日には彼らは新型コロナウィルスによる感染症を治療するためにギニアやクウェートへ医療団を送り込んだ。現在、合計で26ヵ国が病人を救うためにキューバからの医療専門家の支援を享受している。
これは単に金では調達することが難しい善意の賜物であって、トランプ政権が今回の感染症の大流行の中でとった破廉恥な振る舞いとはまさに好対照である。この3月、キューバの医療団がイタリアに到着した際に元エクアドル大統領のラファエル・コレアがこうツイートした「何時の日にかわれわれは子供たちにこう言って聞かせることだろう。何十年にもわたる映画やプロパガンダを流した後で、真実を垣間見る時がやってきた。人間社会が大国からの支援を必要としていたまさにその時、その大国はどこかに隠れてしまい、キューバの医療団がやって来た。しかも何の見返りをも要求せずに。」 
著者のプロフィール:メディア・ベンジャミンは平和活動グループ「コードピンク」の共同設立者。彼女の最近の著書:Kingdom of the Unjust: Behind the U.S.-Saudi Connection (OR Books, September 2016)
これで全文の仮訳が終了した。
この引用記事は「そのもっともらしい口実はキューバがコロンビアの民族解放軍(ELN)のメンバーをもてなしたことにあった」と述べているが、この米国務省の口実に関してもう少し詳細を探ってみよう。
「米国の反テロ政策に完全には同調しない国家」と題された米国務省のプレスリリース(原題:Countries Certified as Not Cooperating Fully With U.S. Counterterrorism Efforts: By the Office of The Spokesperson, May/13/2020)によると、米国はイラン、北朝鮮、シリア、ベネズエラおよびキューバを米国に完全には同調しない国家としてリストアップした。キューバに関する記述を下記に示そう:
キューバ:2017年に政府側との和平交渉のためにハバナを訪れたELNのメンバーは2019年もキューバに留まっていた。和平交渉議定書を引用して、キューバ側はコロンビア政府が求めたELN指導者の引き渡しを拒んだのである。ELNのグループは2019年の1月にボゴタにあるポリースアカデミーを爆破し、22人を殺害し、60人以上を負傷させ、後に彼らは犯行責任を表明した。その後も指導者らはハバナに留まった。米国はコロンビア政府との間で永続的な安全保障協定を維持しており、ELNのような組織と闘うといった重要な対テロ政策をコロンビアと共有していることから、キューバがコロンビア政府との間で生産的な取り組みを拒否するということはコロンビア市民の正義や永続的平和、安全保障ならびに機会を確保しようとしているコロンビア政府の努力を支援している米国とは協力しないということを如実に示すものだ。政治的暴力の廉で指名手配され、米国の司法組織から逃れて来た米国人をキューバは何人もかくまっている。彼らの多くは何十年もキューバで暮らしている。たとえば、キューバ政府はジョアン・チェシマードの引き渡しを求められたが、それを拒否した。彼女は1973年にニュージャージー州兵のワーナー・ファースターを処刑したことで判決を受けている。キューバ政府はこういった人物らに住居を与え、食料切符を発行し、保健サービスを与えている。
これに対して、キューバ側が反論している。
その反論の内容は「米国のリストにキューバを含めるのは真実を歪曲するものだ - 外相の言」と題された記事で詳細に報じられている(原題:Cuba's inclusion in US list distort true, Foreign Minister says: By REPRESENTACIONES DIPLROMATICAS DE CUBA EN EL EXTERIOR, Jun/03/2020)。この記事の仮訳を下記に掲載する。
ブルーノ・ロドリゲス外相は、火曜日(62日)、米国の対テロ政策に同調しない国のリストにキューバを含めることは真実を歪曲しようとする恣意的な行為だと主張した。同外相は「このリストは大嘘だ」とツイッターに掲載した。そして、ロドリゲス外相はテロに対する闘いをしている米国との協力、ならびに、共同の取り組みや法的な対処に関しては具体的な証拠があると記述している。外相は月曜日(61日)に民族解放軍(ELN)のメンバーがハバナに滞在していることを理由にキューバがワシントン政府の対テロ政策に協力的ではない国家としてリストアップされたことを拒否する旨の声明を発表した。同外相はその声明文でELNのメンバーが当地に滞在しているという米国の非難は無力で、不正直であると述べた。「あれは無力で、コロンビア政府の不快な態度によってもたらされたものだ。」 キューバはいつもこの南米国家の平和を支援し、ELN、ならびに、その前身であるコロンビア人民軍(FARC-EP)の革命武装集団がコロンビア政府との和平交渉を行う際の保証人役を務め、交渉の会場を用意してきた、とその文書で強調している。米国務省が513日に発行した国家リストは一方的であり、恣意的であり、根拠や権威あるいは国際的な支持は皆無であると同声明文は指摘する。この議論に関して、同外務省はELNのメンバーとコロンビア政府の代表は、エクアドル政府が突然和平交渉のホスト役を放棄した後に、和平プロセスの一部として2018年の5月にキューバに到着したものであると付け加えた。
これで、米国の反テロ政策に協力的ではないとして5カ国をリストアップした米国務省とその一員にリストアップされたことに反論するキューバ外務省とのそれぞれの言い分をご紹介することができた。

米国とキューバ間の敵対関係は何十年もの長い歴史を持っているだけに両国間の関係を理解しようとしても、素人にとっては一筋縄では行かない。しかしながら、こうして両者の言い分を読み解くことによって、私自身も読者の皆さんも以前よりはキューバと米国の関係をより詳しく理解することができるようになったのではないかと思う。







2020年6月16日火曜日

新型コロナウィルス対策:スウェーデンとノルウェーの違い

(注:行間隔が不揃いで読みにくいかも知れません。この問題は今まで時々現れ、恥ずかしながら未だに解決してはいません。ご容赦願います。)


スカンジナビア諸国は何かにつけて相互に比較されたり、十把一絡げに扱われたりする。

新型コロナウィルスの大流行においても各国政府の政策の違いとその結果がさまざまな形で議論されている。私がもっとも興味深く感じるのは、スウェーデンとノルウェーの人口当たりの致死率に大きな開きがあることだ。人口100万人当たりのスウェーデンの致死率は612日現在で477人。一方、ノルウェーは45人。大流行が収束するまでは今後も数値が変わっていくであろうが、現時点で10倍もの違いがある。私ら日本人の目には両国はスカンジナビア諸国として十把一絡げに見なしてしまうことが多いけれども、社会的にも文化的にもかなり近いと推測される隣国間でこのように大きな違いが生じた理由は何だろうか。

この違いに目を向けるようになった理由は緩い都市閉鎖策を採用したスウェーデンと厳しい都市閉鎖策を採用した他のほとんどのヨーロッパ諸国との間に論争が起こったことからだ。

新型コロナウィルスの大流行はまだ収束してはいないことから、感染から死に至る期間は1カ月以上もあることから現時点で致死率に関して断定的な議論をすることは難しいとは思うが、大流行の峠をすでに越したと思われるので敢えてこの議論に首を突っ込んでみたい。

まず、問題のスウェーデンだ。ここに「コロナウィルス - スウェーデンのテグネルが余りにも数多くの死者が出たという事実を認める」と題された記事がある(原題:Coronavirus: Sweden's Tegnell admits too many died, by BBC, Jun/03/2020)。

この記事を仮訳し、読者の皆さんと共有してみたいと思う。



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新型コロナウィルスの大流行に対しては厳格な都市閉鎖は行わなかったスウェーデンでは数多くの死者が出て、その決断についての議論が多発しているが、この策を推進した中心人物であるアンデルス・テグネルはこの事実を認めた。
スウェーデンは隣国に比して遥かに高い死亡率を経験した。同国の市民が国境を超すことは禁じられている。
当のテグネル博士は当初からもっと多くの策を講じるべきだったとスウェーデンのラジオで述べている。
「われわれが行った策には明らかに改善の余地がある。」 
人口が1千万人のスウェーデンでは4,542人の死者が出て、40,803人が感染したが、都市閉鎖を実行したデンマークやノルウェー、フィンランドではこれらの数値はスウェーデンよりも遥かに低い。 
デンマークにおける死者数は580人で、ノルウェーは237人、フィンランドは321人。水曜日(63日)にはスウェーデンはさらに74人の死者を報告した。

テグネルの見解はどのように変わって来たのか:

テグネル博士は新型コロナウィルス対策に全責任を持っているスウェーデン政府の疫学者であるが、彼は4月にBBCにこう語った。「死亡率が高くなった理由は主として老人ホームが感染対策に失敗したからであるが、そのことはわれわれが採用した策全体を無効にするものではない。」
そして、今、彼はスウェーデンの公共ラジオ放送でこう述べている。「もしもわれわれがこの感染症にふたたび見舞われたならば、今日ではそれがどのような疾病であるのかが分かっているので、われわれはスウェーデンが採用した策とスウェーデン以外の国々が採用した策の中間を採用することになるだろうと思う。」 
余りにも多くの市民が死亡したことについて質問され、「確かに、その通りだ」とテグネル博士は答えた。

スウェーデンはデンマークとノルウェー間の自由に行き来できる地域の形成からは除外された。
スウェーデンはコロナウィルスに関する科学情報を正しく理解したのか?
ヨーロッパ全体の都市閉鎖の解除はどのように進めるのか?
スウェーデンの老人ホームではいったい何がうまく行かなかったのか?
しかしながら、スウェーデンはいったい何についてどのような策を採用するべきであったのかについては言明を避け、水曜日(63日)に後刻行われた記者会見では念を押して「われわれは基本的にはスウェーデンにとってあれは正しい戦略であったと今でも思っている」と述べた。
これらの対策はむしろオーシャンライナーを操縦するようなものであって、個々の策が意図した通りに奏功するには3週間も4週間もかかるのだと言いたかったようだ。
スウェーデンの進め方は一歩一歩対応策を積み重ねて行く方式であるが、他の国々は一気に都市閉鎖を行い徐々にそれを解除する方式であると彼は述べた。 
都市閉鎖が功を奏したのかどうかを評価するのはまだ時期尚早だと彼は警戒の念を示した。「最近の3カ月から4カ月の歴史からこの感染症は再度流行を引き起こす能力を持っているとわれわれは理解している。」
スウェーデンの対応は何だったのか? 
都市閉鎖は行わなかったが、スウェーデンは市民が自発的に社会的距離を維持することに依存し、50人以上人が集まることを禁じ、老人ホームを訪れることを禁じた。
政府の指針においては不急の旅行は取りやめるよう依然として推奨されているが、親族や友人と会うための2時間を超えない旅行は、地元の商店へ出入りすることや他の居住者と会うことを除いて、許されている。


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デンマークの都市閉鎖はヨーロッパ諸国の間では最初に解除された。

デンマークとノルウェーが都市閉鎖を解除し始めて、スウェーデンの策に関しては国内からも近隣諸国からも批判の声が広まった。
ノルウェーの公衆衛生当局の長官を務めるフレッド・フォーランドはスウェーデンはウィルスの歴史的なモデルに余りにも傾斜しすぎた。その一方で、周辺の国々はむしろ都市閉鎖の政策を好んだ。
スウェーデンで政府の疫学に関する顧問役を務めたことがあるアニッカ・リンデが信じるところによれば、スウェーデンの対策は間違っており、次の3項目に焦点を当てるべきであったと述べている:
●都市閉鎖の早期実施 
●老人ホーム入居者を手厚く防護する 
●流行が起こった地域では徹底した検査を実施し、接触者の追跡を徹底して行う。  
スウェーデンのメディアによると、テグネル博士と彼の家族は先月電子メールによる脅迫を受けたとのことだ。


これで全文の仮訳が終了した。

次は、お隣のノルウェーだ。

「あれは本当に必要だったのか? ー 厳しい都市閉鎖策を採用した首相が述懐」と題された二番目の記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う(原題:'Was it necessary?': The PM who regrets taking tough coronavirus lockdown measures: By Brooke Rolfe, Jun/03/2020)。


ヨーロッパの幾つかの国の指導者は新型コロナウィルスの流行の初期に採用した都市閉鎖策は必ずしも必要ではなかったのではないかとの見解を表明している。

ノルウェーのアーナ・ソールバルグ首相は国営放送のNRKが行った先週のテレビのインタビューであの政策は心配のし過ぎがもたらしたものであったと述べた。

「私は、多分、心配の余りに多くの策を採用したのだと思う。あの頃は最悪のシナリオが辺りを制していた」とソールバルグ首相が説明した。

当時、国際的な感染症の状況に鑑みて、厳しい政策を実行することを彼女はテレビの視聴者に告げたが、今振り返ってみると、それらの策は見当違いだったと述べた。


Photo-3:コロナウィルスに関わる規制が解除され、
ノルウェーでフェリーを待つ人たち。




「学校を閉鎖する必要はあったのだろうか?多分、その必要はなかった。しかし、それと同時に、あの時点ではあの策は妥当であったと思う。われわれが手にしていた情報に基づいて、われわれはより慎重な戦略を採用した。」 

これには学校を休校にすることや国境を閉鎖することが含まれ、これらはノルウェー保健研究所が政府側に推奨した内容とは異なっていた。

保健省はその後報告書を発行し、その中でこのウィルスは予期されたほど酷くは広がらず、都市閉鎖が実行された頃には勢いがすでに低下し始めていたことを認めている。

ノルウェーでは8,455人の感染者が確認され、237人が死亡した。もっと緩やかな対策をとったスウェーデンでは40,000人の感染者が確認され、4,500人以上が死亡した。

英国の癌の専門家であるカロル・シコラ教授によると、「こういった類の主張はもっとも楽天的な学者さえをも驚かせるのに十分であった。」

「都市閉鎖を4月の中頃に解除した国々ではどれだけの新規感染者が確認されているのかを確認することが有益である」と彼はツイッターした。

530日に報告された新規感染者数:オーストリアで30人、チェコ共和国で34人、デンマークで40人、ノルウェーで15人。これは楽観的な学者を驚かした。」 

 ●(ニュージーランドの)ジャシンダ・アーダーン首相はコロナウィルスの感染の危険性があることから何千人ものデモ参加者を叱る(原題: Jacinda Ardern scolds thousands of protesters over coronavirus risk
● もっとも若いコロナウィルスによる犠牲者として間違って報道された人物の父親が口を開く(原題:Devastated dad of man incorrectly called 'youngest coronavirus victim' speaks out
(オーストラリアの)ひとつの州がジムや地域社会でのスポーツに関する規制を解除(原題: Restrictions on gyms and community sport lifted in one state


イタリアではウィルスが衰えたとの見解を巡って議論: 

ヨーロッパにおける新型コロナウィルス感染の震源地となったイタリアでは、ロンバルディア地域にあるミラノのサン・ラファエレ病院の院長を務めるアルベルト・サングリロ博士はこのウィルスはすっかり衰えてしまったという。「臨床的に言うと、本ウィルスはもはや存在しない」と彼は言った。

「私にとってはその声明に署名をしてもいい程だ。われわれは通常の国家へ戻らなければならない。なぜならば統計によると、そうすることができるすべての可能性がすでに示されているからだ。」

イタリアは221日に始まった新型コロナウィルスの感染によって世界で3番目に高い死者数、33,415人を記録した。

しかしながら、新型コロナウィルスによる新規感染や死亡は5月には堅調に低下し、同国はヨーロッパ大陸では何処よりも厳しかった都市閉鎖の規制策の一部を解除しつつある。

北部イタリアでは二人目の医師となるが、彼もANSAニュース・エージェンシーにコロナウィルスは衰えていると言った。しかしながら、WHOの専門家は新型コロナウィルスが勢いを失いつつあるという見解を支えるような証拠は何もないと言っている。WHOの疫学の専門家であるマリア・ファン・カークホーヴと何人かのウィルスや感染症の専門家たちはサングリロ院長のコメントは科学的証拠に乏しいと言った。


これで、二番目の記事の全文の仮訳が終了した。

隣国に比して死者数が多かったスウェーデンはその独自の策が批判を浴びているが、スウェーデン政府によると、老人ホーム対策の失敗が最大の要因であったとのことだ。

「世界中の数値を見ると、老人ホームにおける死亡が圧倒的に多いことを示している」と題された516日付けのガーディアン紙の記事(原題:Across the world, figures reveal horrific toll of care home deaths)によると、老人ホームにおける死亡の実態は次のような具合だ。各国がそれぞれ違った展開を示している。

仮訳を下記に示す。


スウェーデン:

スウェーデンにおける死者数は隣国のデンマークやノルウェー、フィンランドのそれよりも高く、これは老人ホームでの高い致死率のせいであると同国の保健当局は言っている。スウェーデンの全国健康福祉委員会が4月末に行った調査によると、スウェーデンでコロナウィルスによって死亡した3,700人の約90%は70歳以上であって、その半数は老人ホームに居住していた。「われわれは老人を防護することに失敗してしまった。これは非常に深刻な事態であって、スウェーデン社会全体にとっては大失敗だ」とレーナ・ハッレングレン保健相がスウェーデンのテレビで述べた。

ベルギー:

コロナウィルスによる犠牲者の半数以上は老人ホームで死亡した。老人ホームの職員らはこれらの施設は当初見過ごされていたと言う。彼らはマスクの不足や手の消毒液の高騰に見舞われて、苦労した。「ベルギー社会はこれらの隔離状態にある老人の人口は働き盛りのそれよりも遥かに少ないと考えていた」のだと、先月、社会学の専門家であるジオフリー・プライアーが「ル・ソアール」紙に書いている。老人ホームでの死者の四分の三以上(77%)がこれに該当し、ベルギーはコロナウィルスによる死者数を数え過ぎているのではないかとの批判を浴びた。しかし、これらのデータを照合するベルギーの危機センターは同センターの取り組みは遥かに透明性が高いと反論している。

スペイン:

3月の終わりに防衛相が暴露したとんでもない状況にスペイン国民は衝撃を受けた。家屋を消毒するために兵士らが家に入ると、そこには何人かの老人が置き去りにされて、ベッドで死んでいた。中央政府は同国の17の地方政府に対して老人ホームでの死者数を報告するよう求めたが、これらの数値は目下公表待ちである。しかしながら、マドリッドとカタロニアの地方政府はウィルスのせいで老人ホームで亡くなった人たちや症状を示している人たちの数値を独自に発表した。マドリッドでは、38日以降に新型コロナウィルスによる、あるいは、そうと疑われる死者の数は木曜日(514日)に5,886人であった。カタロニアでは3,375人であった。これらのふたつの地域における老人ホームでの死者の数は同国のコロナウィルスによる総死者数の三分の一以上に達する。

イタリア:

イタリアにおける老人ホームでの死亡は4月の始めに新聞がこの事態を報じ始めたことから世間の関心を集めるようになった。その典型的な例はミラノの老人ホームであった。これらの老人ホームには1,000人以上が居住しており、3月に死者数の異常な増加が認められた。調査が開始されて、老人ホームの経営者らは1月から4月までの期間に300人が死亡したことを見い出した。900人の老人ホーム居住者のうちで34%が新型コロナウィルスに陽性を示した。イタリアの上級保健研究所は21日から417日までに老人ホームで6,773人が死亡したことを突き止めた。この総死者数の40%は新型コロナウィルスによるものであった。

米国:

コロナウィルスによる米国の最初の死者は1月の末にワシントン州の「疾病管理センター」によって確認された。3月の終わりまでは、米国における流行はキング郡カークランド市にある「ライフ・ケアー・センター」と呼ばれるひとつの老人ホーム施設を巡るものであった。そこでは居住者の四分の三以上が罹患し、40人が亡くなった。 この地域で複数の職場をかけ持ちして働いていた職員が知らないうちに他の老人ホームへウィルスを運んでいた。米国の民営化された医療システムから始まり、老人ホームでの感染コントロールを巡って前々から存在しているさまざまな課題、大流行に対する連邦政府の指導力の欠如、各州におけるウィルスの広がり方がランダムであることに至るまで多種多様な理由から、キング郡で得られた教訓を学ぶことはなかった。85,000人以上もの死者を出した米国における新型コロナウィルスによる死者の中で老人ホームの居住者の割合は非常に大きい。「カイザー・ファミリー基金」によって非公式に収集されたデータによると、14の州において老人ホームでの死亡が全死者数の半分以上を占めている。しかしながら、33の州が老人ホームでの死者数を報告しただけである。つまり、全米における本件の広がりの程度はまだ不明のままである。


これで、仮訳は終了した。

こうして見ると、スウェーデン方式の緩やかな都市閉鎖とスウェーデン以外の国々が採用した厳しい都市閉鎖とを比較すると、結局は、それぞれの方式には各国特有の至らぬ点が数多くあり、単純に比較することは難しそうだ。特に、米国では、今日現在(616日)、老人ホームでの死亡の実態について全州でのデータが出揃っているのだろうか?今後二回目の大流行が起こった場合、どのような対処をするべきかについて国際的に意見を集約することが出来るのであろうかと新たな疑問が沸いてくる。

もっとも、新型コロナウィルスが通常のインフルエンザと変わりがないのに、メディアによって大袈裟に喧伝され、世界中が踊らされただけだったという主張が正しいならば、こうして一喜一憂し、毎日のように情報を検索する要は薄れてくる。

WHOの指導力に期待したいところだが、もしも米国がWHOから脱退するならば、WHOの筆頭出資者は賛否の議論が飛び交っているビル&メリンダ・ゲイツ財団となってしまう。果たして、米国の製薬業界の目論見を世界は押し返すことができるのであろうか?
私は、スウェーデンとノルウェーのコロナ対策の違いとそれによってもたらされた結末の違いをご紹介しながら、どちらかと言うと、新型コロナウィルスは作られた危機であるとする見方に傾きつつある自分を感じながらこの投稿を書いてきた。

しかしながら、新型コロナウィルスの感染力や致死率はやっぱりインフルエンザよりも遥かに高く、世界中の市民に大きな脅威であると彼らは言い切るのであろうか?彼らはそのようなデータをでっち上げることができるのだろうか?私は出来ないだろうと思う。出来るとすれば、それは警察国家だけだ。

「新型コロナに関する3大リーク - 新型コロナの筋書を葬り去る」と題した67日の投稿ではロシアやデンマークおよびドイツの政府の高級職員や保健省の専門家らが新型コロナウィルスの脅威について公に疑義の念を表明していることをお伝えした。要するに、これらの国の出来事は科学が政治にハイジャックされてしまった事実をあからさまに伝えている。他の国では表面化しなかったものの、現行の大流行について異論を唱える声は巧妙に隠されてしまっているのではないかと思われる。