2021年12月25日土曜日

宇宙の神秘

 

われわれが住んでいる地球はまだまだ健康体であるのか、それとも、日頃の不摂生が重なってすでに重篤な生活習慣病に陥っているのかについては素人の私には正確な判断をすることは難しい。われわれ人間世界にとっては肉体的な健康だけではなく、精神的、社会的あるいは倫理的な健康も非常に重要である。たとえば、倫理的な健全さが崩れ、極端なイデオロギーに走ると、その社会は極度の疾病に見舞われる。

ところで、インターネット上でウクライナを巡る情報をあれこれと探ってみると、ロシアとNATOとの間には、最近の数週間、険悪な雰囲気が急速に高まっていることが感じられる。その背景には米国の軍産複合体を筆頭とする戦争屋たちが自分たちの利益を確保するためにロシアという仮想敵国をでっち上げ、あの手この手を駆使してプロパガンダを繰り返している状況が読み取れる。もしもロシアがそういった挑戦に応じてしまったら、最終的にはふたつの核大国が直接対峙することになりかねない。当面は米国の代理戦争の役を務めるウクライナやバルト海諸国、ポーランド、あるいは、NATOがロシアを仮想敵国とした舞台で主役を演じ、ロシアに対する敵視をあからさまに強めている。お互いが敵視し始めると、軍事的な綱引きは陰に陽にエスカレートする。最悪の場合、核戦争に発展しかねない。人間の存在そのものがこの地球上から消えてしまう時がやって来るのかも・・・ 不幸なことには、それは人間の意思が届き得ない外因的なものによってもたらされるのではなく、まさに人間社会の内側に起因する。

何とも言えない程に異常な臭気を発散し始めている今の世界から一時的に離れて、大昔からわれわれの祖先がそうしてきたように宇宙に思いを馳せて、日常性からの脱却を試みようと思う。もちろん、宇宙空間は分からないことだらけだ。しかしながら、少なくとも、戦争屋の思惑はまだそこまでは及んでいないことから純粋に科学の世界、あるいは、論理の世界にわれわれを没頭させることが可能であり、疲れ切った気分を癒してくれることだろう。

ハッブル望遠鏡が捉えた遥か彼方の宇宙に関する無数の写真からいくつかを集めてみた。本日はこれらを読者の皆さんと共有してみようと思う。

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Photo-1:カニ星雲


このハッブル望遠鏡の写真はカニ星雲を捉えた画像のなかではその詳細をもっとも明瞭に映し出している(訳注:おうし座のカニ星雲は地球から約7000光年。この星雲の元となった超新星爆発が1054に出現したことが、中国や日本の文献に残されている)。カニ星雲は天文学の領域では大変興味深い存在であって、もっとも深く研究されている天体のひとつである。

この画像はハッブル望遠鏡のWFPC2カメラが撮影したもので、もっとも広大な領域を捉えている。これはNASA/ESAハッブル望遠鏡が撮影した24枚の個別写真から構成され、カニ星雲全体を捉えたものとしてはもっとも高い解像度を誇っている。

出処:NASAESA and Allison Loll/Jeff Hester (Arizona State University).

謝意:Davide De Martin (ESA/Hubble)

 

Photo-2:広大なスパイラル銀河。地球から23千万光年

By ESA/HUBBLE 

20211114

Photo-3:ハッブル望遠鏡が銀河系の中心部に位置する星の集団を捉えた


性能的には絶対的な優位を誇っているハッブル宇宙望遠鏡が捉えた渦巻星雲「UGC 11537」の景観。出処:ESA/HubbleおよびNASAA. Seth

NASA/ESAの絶対的な優位性を誇るハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられたこの画像は巨大な「UGC 11537」渦巻銀河を示す。ハッブル望遠鏡の広視野カメラ3が赤外線および可視光線の波長でUGC 11537の中核の周りに渦を巻いている何本もの銀河の腕を捉えている。恒星が連なっている明るい帯状の部分と宇宙の塵が漂う暗い部分の両方が星雲全体にわたって伸びている。

UGC 11537はわし座に位置し、銀河系平面に近く、地球からの距離は23千万光年。銀河系の光り輝く帯に近いということはわれわれの銀河系の中にある恒星がこの画像の中に納まっていることを意味する。つまり、UGC 11537の手前に輝いているふたつの恒星は銀河系の恒星である。前景にあるこれらの非常に明るい星は「回折スパイク」を放射状に伸ばしているが、これらの恒星の光がハッブル望遠鏡の内部構造によって人工的な影響を受けた結果である。

この画像は遠方にある銀河系の巨大なブラックホールの質量を天文学者が計測するために計画された一連の観測から得られたものだ。ハッブル望遠鏡の解像度の高い観測と地上にいる天文学者とを組み合わせることによってこれらの銀河に存在する恒星の質量を天文学者が詳細にモデル化することを可能にし、これは超巨大なブラックホールの質量を律速するのに役立っている。


Photo-3:ハッブル望遠鏡が銀河系の中心部に位置する星の集団を捉えた

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ハッブル望遠鏡の広視野カメラ3ならびに観測用の最新のカメラは視野の中に無数の星が輝いている様子を捉え、この画像には(パロマ―6としても知られている)球状星団ESO 520-21 が含まれている。無数の星が周密にほぼ球状に集まっており、この星団は銀河系の中心部に近く、その星間物質は星が放つ光を吸収し、観測をより難しくしている。

星間物質による吸収効果は光の部分的な周波数に対して影響を与え、天体の色彩に変化をもたらし、恒星の実際の姿に比べより赤みを帯びたものにしている。天文学者らはこの影響を「赤化」と称し、銀河系の中心部に位置する球状星団(たとえば、ESO 520-21)の特性を決定する作業を特に困難なものにする。

ESO 520-21へびつかい座に位置し、天の赤道に近い。へびつかい座は2世紀のエジプトの天文学者が記した48個の星座のひとつである。これらの星座はすべてが今日では国際天文学連合が公式に認めている88個の星座に含まれている。

出処:European Space Agency (ESA)
画像の出処:ESA/HubbleおよびNASA, R. Cohen

 

Photo-4:ハッブル宇宙望遠鏡が宇宙でもっとも遠い領域を撮影

Clara Moskowitz 

2012925


超深宇宙またはXDFと称され、この写真はハッブル宇宙望遠鏡が10年間にわたって探査した超深宇宙のオリジナル写真の中央に位置する宇宙の一部分を取り出し、組み合わせたものである。この XDFは非常に狭い領域であって、満月の角直径のほんの一部にしか相当しない。この写真は2012925日に公開された。(写真の出処: NASA, ESA, G. Illingworth, D. Magee, and P. Oesch (カリフォルニア大学サンタ・クルス校), R. Bouwens (ライデン大学)、および、HUDF09チーム)

ハッブル宇宙望遠鏡は宇宙のもっとも遠い領域を視野に捉えた。これは何十億光年も離れている何千もの銀河系を捉えた写真である。

「超深宇宙」または「XDF」と称されるこの写真は宇宙の一角を10年間にもわたってハッブル望遠鏡が探査したものを組み合わせたものだ。何回もの観測を通じて光を集積することによってのみ、こういった遠方の天体を見い出すことが可能となる。いくつかの天体の光量は人間の目が捉えることができる光の量の百億分の一でしかない。

この写真はオリジナルの「ハッブル超深宇宙」の続編であって、ハッブル宇宙望遠鏡2003年から2004年にかけて探査したもので、今日では深度がもっとも深い宇宙に位置する何千個もの銀河系からやって来る光を何時間にもわたって集めたものである。XDFは遠い過去に遡り、132億年も昔の宇宙を映し出す。因みに、宇宙は約137億年前に誕生したと考えられている。

 

Photo-5NASAのハッブル宇宙望遠鏡が新しい星が生まれている驚異的な光景を捉えた


NASAによると、この星雲は地球から約2000光年の距離にあって、われわれの銀河系では比較的隔絶された場所に位置している。

TRENDING DESK

最新の更新:20211116日、18:07 IST

 

Photo-6:潜在的に生命を宿せると思われる惑星に水が発見された

111光年の距離にある「スーパー地球」は「現在われわれが知る限りでは居住可能な最高の候補地である」と天文学者らは言う。

BY MICHAEL GRESHKO

ナショナルジオグラフィック

2019911

太陽系外の世界の探査においては初めてのことであるが、ハッブル宇宙望遠鏡から得られたデータによって地球と同じような大きさの惑星の大気中に水蒸気が存在することが突き止められた。この太陽系外惑星はわれわれの太陽よりは小さい恒星を周回しているが、恒星の生命居住可能な領域にある。つまり、本惑星の軌道は液体の水が惑星の表面に存在することを可能とするだけの暖かさを有する距離の範囲内にある。

この発見は二つの独立した研究成果として今週発表され、これらの研究はわれわれの太陽系からは約111光年の距離に位置する「スーパー地球」、つまり、太陽系外惑星「K2-18b」の何年にもわたる観測の成果である。NASAのケプラー宇宙船によって2015年に発見されたもので、 K2-18bはわれわれの地球とは大きく異なる。すなわち、地球の質量の8倍以上も大きい。これは海王星のような氷の惑星であるか、水素が豊富な厚い大気に覆われた岩石質の世界であるかのどちらかであることを意味している。


 
3:38

太陽系外惑星101

太陽系外惑星の存在はわれわれは宇宙では独りぼっちであるという考えに真っ向から挑戦する。どのような形態の太陽系外惑星が存在するのか、それらを発見するために科学者が駆使する手法、銀河系にはいったい何個の世界が存在するのかについてここで学ぼうではないか。

製作者 / 語り手: ANGELI GABRIEL

編集者: DAN STEINMETZ

副編集者: MARIELENA PLANAS

調査研究マネジャー: MARK LEVENSTEIN

音声録音: JAY OLSZEWSKI

 

Photo-7:ハッブル望遠鏡が太陽系外惑星について初の紫外線画像を捉えた

2021430

by Natali Anderson


NASA/ESAハッブル宇宙望遠鏡を駆使して、天文学者らは木星サイズの橙色矮星「PDS 70」を周回し、今も形成の途上にある惑星を撮像した。これは太陽系外惑星を紫外線(UV)領域で直接捉えた初めての成果である。

ハッブル望遠鏡によるこの画像は若い太陽系外惑星「PDS 70b」を示す。画像の出処:Joseph DePasquale, STScI.

PDS 70はケンタウルス座に属し、地球から370光年の距離に位置するK7型の前主系列星である。

また、V* V1032 CenIRAS 14050-4109としても知られ、この恒星は生まれてから540万年しか経ってはいない。

この恒星はPDS 70bおよび PDS 70cと名付けられた二つの惑星を擁しており、これらの惑星は形成の途上にある。また、塵やガスで構成された巨大な星周円盤を持っており、中心より20から40天文単位(AU)に及ぶ広大な領域には塵が無い。

PDS 70bは恒星から約21AUの距離にあり、星周円盤のギャップ内に位置し、その軌道はわれわれの太陽系の天王星のそれに類似している。

PDS 70cは星周円盤のギャップの外側の端、つまり、恒星から34.5AUの距離に位置し、その軌道はわれわれの太陽系の海王星のそれと似ている。

PDS70は惑星の形成過程を観察することができるので極めて興味深い。この恒星はハッブル望遠鏡が直接撮像したもっとも若い正真正銘の惑星だ」とオースチンにあるテキサス大学の天文学者であるYifan Zhou 博士が述べている。

Zhou博士と彼の同僚はPDS70bを観測するためにハッブル望遠鏡に搭載された広視野カメラ3(WFC3)近紫外線/可視光(UVIS)周波数帯を用いた。 

「ハッブル望遠鏡の観測によって惑星がどれ程の速度でその質量を増しているのかを推算することができた」とZhou 博士は注釈した。

この研究チームによると、540万年の間にPDS 70bはすでに木星の質量の5倍にまで成長した。

現在観測されている質量増加の速度は低下し、この低下の割合が今後100万年間継続するとその間の本惑星の質量増加は木星の質量の約百分の一程度にしかならないであろう。

「これらの知見は時間軸上においては単に瞬間的なスナップショットに過ぎない。この惑星の質量増加が低下しているのか、それとも大きくなっているのかを特定するにはもっと多くのデータを集めることが必要だ」と天文学者らは述べている。

「われわれの測定データによると、この惑星の形成過程は終わりに近づいていることを示唆している。」

PDS 70bPDS70系が擁する広大に広がる星周円盤から一部の物質を吸い寄せてでき上がったそれ自身を取り巻く星周円盤によって取り囲まれている。

研究者たちは磁力線が恒星の星周円盤から太陽系外惑星の大気にまで伸びており、それが星間物質を惑星の表面に降着させているとの仮説を立てている。

「もしもこの物質が星周円盤から惑星に至る列(訳注:磁力線を指しているようです)に沿って移動するならば、これは局部的に熱い領域を形成することになる」とZhou博士は言う。

「これらの熱い領域は惑星の温度よりも少なくとも10倍は熱い。これらの熱い領域は紫外線の中で非常に光り輝やいて観測された。」

これらの知見は「Astronomical Journal」で発表される:

Yifan Zhou et al. 2021. Hubble Space Telescope UV and Hα Measurements of the Accretion Excess Emission from the Young Giant Planet PDS 70b. AJ 161, 244; doi: 10.3847/1538-3881/abeb7a

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これで仮訳が終了した。

たまたま私は1980年代のある週末に仕事仲間と一緒にカリフォルニアのサンディエゴ郊外にあるパロマー山天文台を訪れた。展示室には数々の天体の写真が飾られており、いくつもの渦巻星雲がさまざまな姿勢で一枚の写真に収まっている様子は実に圧巻であった。今でもあの時の驚きを思い起こすことができる。

そして、このハッブル宇宙望遠鏡による写真の中では冒頭の写真に示したカニ星雲は特に神秘的で、一言では言い表すことが難しい。それから、太陽系外惑星の存在が突き止められ、観測を継続することによって詳細なデータが蓄積されつつある。地道な研究が続いている。人類はこの広大な宇宙の中で決して独りぼっちではないのかも・・・

 



2021年12月17日金曜日

ヨーロッパにおける最近の専制主義的コロナ対策の波は危険な先例をもたらした

 新型コロナウィルスの大流行は収束するのではないかという観測が、最近、急速に広がっている。最新の変異株であるオミクロン株は感染性が高いけれども、毒性は前の変異株(デルタ株)よりも弱くなっており、一人の死亡例が1214日に英国で報じられたことを除くと現時点では死者が報告されてはいないこと、過去の体験、たとえば、1918年に全世界を襲ったスペイン風邪も1921年には収束したという事実、等がこの推測の背景にあるようだ。興味深いことには、大流行が収束するかも知れないという推測についてはワクチン推進者であるビル・ゲイツさえもが喋っている。

ところが、感染の波に対応する政府の策には感染の実態との間に質的な乖離が見られ、かなりの時間的遅れも存在する。また、ヨーロッパの一部の国ではワクチン接種を推進しようとして極めて差別的な策を導入しようとする動きが観察される。ワクチン非接種者に対する差別政策はあたかも80年余り前にヨーロッパを襲ったナチズムによる人種差別の再来を髣髴とさせる程である。

ここに、「ヨーロッパにおける最近の専制主義的コロナ対策の波は危険な先例をもたらした」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を翻訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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副題:一般市民のために良かれと思われる事柄を実行する際に倫理的な罪の意識が欠如している場合、それは専制主義を示唆する最初の兆候である

 

文明が進んでいる筈の社会における標準的基準であるかの如くヨーロッパにおいては各国がパニックに陥った。ワクチンの非接種者は非常に広い範囲にわたって権利の享受を剥奪される。オーストリアはワクチンの非接種者を犯罪者扱いすることにした。イタリアは非接種者らが職場へ通うことを停止させた。オランダの警察は都市閉鎖に反対するデモ参加者に向けて発砲し、何人もが重傷を負った。われわれが目にしているこれらの状況は恐怖に駆られた政治家が犯した極限的な愚行である。自然現象を目の前にして一般庶民が重要な存在であることを政治家らは受け入れることができないのだ。

もしも都市閉鎖や商売を強制的に閉じさせること、あるいは、他の凶悪な対策が功を奏すると言うのであるならば、どうしてこれらの国々は第5波に見舞われ、3回目あるいは4回目の都市閉鎖に翻弄されなければならないのか?これらの策は単に感染対策を止めた後にまでも感染を長引かせているだけであることにわれわれの誰もが気付く前にいったいどれだけ長い間これらの愚策の続行に付き合わなければならないのだろうか?

これらの策の継続を主張する論理は今やこれらの策を中止することはもはや出来ないという点にある。かってはワクチンが入手できるようになるまでの一時的な策であると言って正当化された策であったのだが、今や、人々の生活を永遠に変えてしまう危険性を見せている。多分、この危機的な状況の中でもっとも醜悪な側面は政治家が自分たちの政策を打ち出すことが出来なくなっているにもかかわらず、その責任を他者になすりつける習慣を持っていることだ。ワクチンに反対するのは馬鹿げている。ワクチンは病状が重篤化することや死亡を防止する上で功を奏している。しかし、感染に対する効果に関してはワクチンは当初期待されていた程には有効ではない。

オーストリア首相は「責任のなすり合いゲーム」の最前線に立って来た。他国の政治家も彼の後を追従しようとしている。二回の接種を終了した人々の割合はオーストリアでは64%で、ヨーロッパの平均値である57%を遥かに上回っているが、我が国(英国)の68%よりもかなり低いというわけではない。オランダやベルギーはワクチン接種率が74%とヨーロッパではもっとも高い国のひとつではあるのだが、もっとも急激な感染の拡大を経験している。そうこうしているうちに、倫理的な側面は忘れ去られてしまっている。基本的な問題は新型コロナの大流行に対して如何に対処するのかと言う点だ。対処の仕方は公衆衛生という純粋に技術的な課題ではあるのだが、経済や社会ならびに政治上の取り組みも絡んでくることから極めて複雑な課題でもある。

このことは恐怖感に駆られた多数派は自分たちへの感染を防止するには少数派に対してどんな策を課すべきかに関しては何の制約もないという極めて思慮に欠けた考えを持つに至った。公衆に良かれと思うことを追求するあまりに倫理的な罪の意識が欠如する時、それは専制主義の始まりに見られる最初の兆候である。政府の単なる政策によって人口減少の状況がその次に到来する。

他の人たちとの社会的な相互交流は余暇を楽しむ行動としての選択肢ではなく、人間の基本的な欲求である。もしもわれわれが何らかの調和を保ちながら他の人たちと共存しようとするならば、仲間の個人的自立性に対して最低限の敬意を払うことが重要となる。これらの事柄はわれわれをひとつの共同体に統合する。これらの事柄を無視する政府は非常に重要な倫理的境界を逸脱し、自国民の人間性に対して息の長い攻撃を仕掛けている自分自身の姿に否応もなく気付くことになるであろう。

ワクチンの接種を拒否する人たちは賢明ではない。恐らくは利己的でさえある。しかしながら、彼らが受けたい医療的な施術については自分で決めることが出来ず、自分の体に注入される薬物さえも選択することができないとするならば、人間としての自立性を維持する術は皆無となる。このような状況は圧政そのものであり、終わることのない社会的不和を招来する。

われわれは観察を続け、リベラル派政権が恐怖によって如何に急速に倒されてしまうのかに注目すべきである。


著者のプロフィール:サンプション卿は
2012年から2018年まで英国最高裁の判事を務めた。

TELEGRAPH.CO.UK

ジョナサン・サンプション

直近の新型コロナに対する専制政治の波は危険な先例を新たにもたらしている。一般市民のために良かれと思われる事柄を実行する際に倫理的な罪の意識が欠如している場合、それは専制主義を示唆する最初の兆候である。ジョナサン・サンプション。20211122日、午後7時。

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これで全文の仮訳が終了した。

新型コロナウィルスの大流行は政治の不毛を暴露した。

著者は「ヨーロッパにおいては文明が進んでいる筈の社会における標準的基準であるかのように各国がパニックに陥った」と指摘し、「多分、この危機的な状況の中でもっとも醜悪な側面は政治家が自分たちの政策を打ち出すことが出来なくなっているにもかかわらず、その責任を他者になすりつける習慣を持っていることだ」と述べ、批判の最高潮に達した。そして、「自分の体に注入される薬物さえも選択することができないとするならば、人間としての自立性を維持する術は皆無となる。このような状況は圧政そのもの・・・」と述べている。まさにその通りだ!

オーストリアの過酷な政策は来年の2月から実施される。この接種の義務化が実施されると、コロナ禍はすでに峠を越そうとしているにもかかわらず、ワクチンを接種してはいない成人は都市閉鎖の対象となり、現代版のゲットウに隔離されることになる。あるいは、罰金を支払わせられる(最高で7,200ユーロの罰金)。

ギリシャでは60歳以上は誰でもワクチン接種が義務付けられる。1月中旬までに接種を終わらない場合、月額100ユーロの罰金となる。こうして集められた罰金は人手やワクチンの購入に資金不足を来している病院へ充当される。こうして、ギリシャでは接種の予約が3倍に跳ね上がったという(2)

参照:

1Europe’s latest wave of Covid authoritarianism has set a dangerous new precedent: By Jonathan Sumption, The Telegraph, Nov/22/2021

2Greece and Austria are mandating COVID-19 vaccinations and fining people who refuse: By JOANNA KAKISSIS, NPR, Dec/04/2021

 

 



2021年12月11日土曜日

ウクライナでは誰が誰と戦っているのか?

 

2014年に起こったいわゆるマイダン革命をきっかけに始まったウクライナを巡る東西間の綱引きは今や爆発寸前にまでエスカレートしている。この現状をもっとも端的に示しているのは最近の米・ウクライナとロシアとの間、あるいは、NATOとロシアとの間に展開されている舌戦である。

123日、米国の主要メディアであるワシントンポスト紙が下記のような報道をした:

ウクライナへのロシア軍の侵攻の可能性を巡って米ロ間の緊張が高まる中、米高官の発言や諜報界からの報告書を入手したワシントンポスト紙によると、米諜報機関はクレムリン政府が来年早々にも175,000人の兵力を動員して、複数の前線においてウクライナへ侵攻する計画を立てていることを察知した(原典:Russia planning massive military offensive against Ukraine involving 175000 troops US intelligence warns, The Whashington Post, Dec/03/2021。ところで、本件を最初に報じたのはブルームバーグ紙で、他の大手が追いかけ記事を掲載した)。 

こうして、ウクライナは急速に国際的な関心を集めている。ヨーロッパが戦場と化すかも知れないとの危機感は高まるばかりである。私が住んでいるルーマニアには、ポーランドと並んで、ロシアに最も近接するイージスアショアミサイル発射施設が存在することから、もしもNATO軍とロシア軍とが戦闘を開始した場合はNATO本部が置かれているブリュッセルと並んで直接の戦禍に巻き込まれる可能性は実に高い。

一方、これはウクライナと米国によって作られた情報戦争の筋書きであるという専門家筋の指摘もある。たとえば、「ロシアがウクライナへ侵攻するという話は米国やNATOの高官らの想像の中に存在するだけだ」との皮肉たっぷりの表題を持った記事があるが、これは典型的な例だ(原典:Russia’s ‚plan to invade Ukraine’ exists only in the US and NATO imagination: By Scott Ritter, RT, Dec/05/2021)。

こうして、この危機を乗り切るために米ロ首脳は127日にビデオ電話会談を行うことになったと報じられている。

われわれ素人には何処に真実が隠されているのかはなかなか分かりにくいのが通例だ。多くの場合に当てはまるように、「来年早々ロシアがウクライナへ侵攻する」というこの筋書きに関してもいったい誰が得をするのかを考えてみる必要がある。

さまざまな解説の中でもっともそれらしい見方を取り上げると、少なくとも、ロシアにはウクライナへの武力侵攻で得るものは何もない。もしもロシアがウクライナへ侵攻したら、米国はさらに経済制裁を強めて、ロシアが海外への決済を行う際に必要なSWIFTを閉鎖すると予告している。一方、ウクライナは軍事的にはロシアに惨敗したとしても、「ロシアが国境を越して攻め込んできた」と一言でも言えば、米国の巨大なプロパガンダ・マシーンがその後を引き受けて世界中に喧伝してくれる。武力ではロシアがウクライナに勝ったとしても、国際政治におけるプロパガンダ合戦ではロシアがウクライナに勝つことは望み薄だ。こうして、ウクライナはNATOへ招じ入れられ、EUからは経済的な支援を取り付けることができるだろう。それにも増して、ロシアからドイツへウクライナを通過せずにバルト海を経てロシア産天然ガスを輸送する「ノルドストリーム2」は、すでに完工したにもかかわらず、その運用はほぼ永遠に葬り去られることさえあり得る。そうすると、ウクライナ経由の既存のパイプラインは当然フル稼働することになろう。ウクライナには莫大な額の通過料収入が従来と同様に入って来る。すっかり疲弊したウクライナ経済にとっては万々歳だ。

ウクライナはNATO軍が配備され、ロシア軍からの標的になる準備が進められており、誤算や自作自演を含めて、何かをきっかけにロシアとの銃撃戦に簡単に移行する可能性を秘めている。たとえ今は舌戦であるとは言え、ウクライナにおけるエスカレーションは嫌でも周囲の関心を呼ぶ。こうして、ウクライナは巧妙に新冷戦の国際舞台に登場した。そんな状況が今さらに醸成されようとしている。

結局のところ、127日の米ロ首脳会談がどんな会談になったかと言うと、バイデン大統領はプーチンはウクライナへの侵攻を決心してはいないことを確認したとのことだ。これはこのビデオ電話会談に同席した国家安全保障問題担当顧問のジェーク・サリバンが会談後に述べた言葉である。(出典:US comments on Russia’s ‚Ukraine invasion’: By RT, Dec/07/2021, https://on.rt.com/bmle

当面、少なくとも、ヨーロッパにとってこれは大きな収穫である。

今回の会談の内容はすべてが公開されたわけではないので、これ以上のことは言えそうにはないが、すべてが巧妙に仕組まれた米国国内向けの政治シヨウであったということが言えそうだ。ブルームバーグ紙やワシントンポスト紙には「ご苦労さん」と私は皮肉を込めて言いたい。また、米国では来年には中間選挙、2024年には大統領選挙を控えており、トランプ前大統領が多くの支持を集めているとの世論調査結果が報じられている。しばらくの間さまざまな意見が提出され、議論は続く。もっとも重要な点としてはウクライナやポーランドおよびバルト三国が今後どう動くのかという点については注視が必要だ。深層には大きな変化はないからだ。

前置きが長くなってしまった。なぜかと言うと、キエフ政府の動きは非常に急進的な右翼によって支配されており、それがもたらす状況は全世界にとって危険極まりないものになるかも知れないと思えるからだ。

だが、その議論は別の機会に譲るとして本題へ入ることにしよう。

ここに、「ウクライナでは誰が誰と戦っているのか?」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1: 手持ちの写真。ウクライナのドネツク郊外に展開する分離派の兵士。© Getty Images / Alexander Usenko

ここ数週間激しい戦いや政治的緊張がウクライナの東部を襲っている。しかしながら、時々、紛争を起こしているのはいったい誰なのかが分からなくなることがあり、そういった状況が悪化するばかりの情報戦の核心であったりする。

ウクライナは分断されたヨーロッパに存在する分断された国家であることから、明快さが欠如していることは容易に頷ける。これはキエフ政府と東部のドンバス地域との間の紛争なのか?それとも、ウクライナとロシア、ウクライナとNATO、あるいは、NATOとロシアとの間の紛争なのか?この紛争を解決するために国連はミンスク合意を承認したが、その合意には紛争の当事者はふたつの国内勢力であることが明示されている。つまり、キエフ政府とウクライナからの分離を標榜するドネツクとルガンスクのふたつの共和国だ。ロシアはこの合意は実施すべきものであると主張し、この紛争はウクライナの国内問題であるとの立場を表明した。その一方、NATOはこの紛争はウクライナとロシアとの間で起こった対立状態であるとし、ミンスク合意を台無しにしようとしている。

分断された大陸における分断された国家:

千年以上にもわたってロシアとウクライナは共通の歴史によってお互いの繋がりを持ってきたし、数世紀にわたって同一国家の一員でもあった。しかし、ロシアの近隣国家の歴史はふたつの相容れない国民性や国家建設の手法を育くむことになった。多元論者の見解によると、ウクライナはふたつの民族、ふたつの文化、二つの言語で成り立った国家であり、一元論者の見解は統合された国家主義を標榜し、その根底にはひとつの民族、一つの文化、ひとつの言語しか存在しないと言う。

Photo-2: 関連記事:NATOの拡大についてロシアがレッドラインを説明

一般的に言うと、西部地域に住むほとんどのウクライナ人はロシアとの歴史の共有は帝国主義の遺産であって、これは乗り越えて行かなければならないとし、東部地域のウクライナ人には深い不審の念を抱く。同様にして、東部のほとんどの住民はロシアとの関係は兄弟国家としての繋がりのようなものであるとし、西部の住民には信用を置かず、国家の建設に当たっては民族主義・国家主義的な取り組みをし、ファシストと連携した過去の歴史を持つ西部の住民に対して不信感を抱く。こうして、内部に抱えるこれらの矛盾を解決する策はたったひとつしかなく、現在に至っている。つまり、ロシアからは独立した主権国家を確立することが重要であるが、それは決して反ロ的なプラットフォーム上に築き上げるべきものではない。

ウクライナの未来は分断されたヨーロッパの国境に接していることからもさらに混乱の度を高めている。相互に受け入れることができる冷戦終結後の決着は、西側がロシアを新しい欧州から排除したことから実現には至らなかった。その結果、ゼロサムゲーム的で、かつ、オーウェル風の「ヨーロッパ統合」の概念はヨーロッパにおいては最大の国家であるロシアからすべてのヨーロッパ諸国を離反させ、その代わりにNATOEUを指導者として見る形で推進されて来た。単純に言って、西側と民族や文化について一元論を唱道するウクライナの国家主義者とは国家建設や地域復興における排他的な取り組みにおいてはお互いに旅仲間なのである。つまり、ウクライナ東部の住民を抑圧するウクライナはヨーロッパに組み込まれようとして、ロシアにまつわる歴史やロシアからの影響を徹底して洗浄し、排除しようとして来たのだ。

戦争は不可避的なものへと容易に変わっていく。国内レベルでは、2014年に西側によって支援されたマイダン革命の正当性に反論した東部のウクライナ人はキエフの新政権から攻撃を受けた。地域レベルにおいては、ドンバス地方がNATOの武力支援を受けるキエフ政府によって武力攻撃を受けても、ロシアはドンバスの味方をするために立ち上がろうとはしなかった。NATOの勢力圏がウクライナにまで拡張されることはロシアにとってはその存亡を左右することに繋がり、1962年にソ連がキューバにミサイルを持ち込もうとした際に米国がそれを決して受け入れなかったのとまったく同様に、ロシアにとっては受け入れることができない。ウクライナが自滅の道を進むように唱導したのは実際にはNATO自身であるにもかかわらず、NATOは、今、「ウクライナを支援する」と宣言している。

これは国内紛争か?

2015年のミンスク合意は国連によって承認され、この戦争は国内紛争であり、国内の当事者が解決策を見い出すべきものであるとの定義が成された。この合意はキエフ政府がドンバス地域と外交的に接触し、ドンバス地域に自治権を与えなければならないこと、そして、分離派の指導者らはその後キエフ政府にウクライナ国境の管理権を委ねること、等を規定した。国家建設に関して競合し合う見解に留意しつつ、連邦国家となったウクライナでは権力が分散され、ウクライナが西側ブロックあるいはロシア主導のブロックへ参画することは不可能となるであろうから、連邦化の解決策は地域振興の課題さえをも解決することに繋がる。

ミンスク合意は外国の参画については何らの言及もしてはいないことからも、ミンスク合意については妥当な批判を提起することが可能である。モスクワ政府が示したレッドラインはロシアはこの紛争の当事国のひとつであることを示唆しているが、そのことはNATOも当事者であると認知しなければならないことを意味している。西側は2014年のマイダン革命を後押しし、マイダン革命に反対したウクライナ東部の住民に対してキエフ政府が行った「反テロ作戦」を支持した。また、NATO各国はロシアに対して経済制裁を課し、ウクライナには武器を援助し、ミンスク合意における義務を尊重するようにキエフ政府に圧力を掛けることは拒むといった諸々の策を打ち出し、紛争の舞台を作り出した。

西側の政治家やメディアの連中は一般庶民に対してミンスク合意について詳細を伝えようとはしない姿勢を保ち、キエフ政府がミンスク合意に準拠することを大っぴらに拒んでいる姿が観察され、ミンスク合意に対する彼らの敵意は見え見えである。それどころか、西側の政治家やメディアは、ロシアがミンスク合意では言及されてはいないにもかかわらず、ロシアはこの合意に準拠してはいないと不正直極まりない発言をする始末だ。

これはウクライナ・ロシア間の紛争か?

この内戦をウクライナ・ロシア間の紛争として再定義しようとするキエフ政府とNATOとの集団的取り組みはミンスク合意を台無しにしかねず、相手を小馬鹿にした動きであり、ウクライナ東部の住民のすべてをロシアの単なる工作員として見ることによってすべての政府機関を撤廃し、この軍事ブロックは単に「ウクライナに寄り添っている」だけであるとうそぶくことさえも可能にしている。この姿勢は2014年の革命を「民主主義革命」として描写し、ウクライナ市民の意思を反映したものであるとした西側のプロパガンダに上手く整合するのである。その一方で、このクーデターに反対したウクライナ市民はロシアの「ハイブリッド戦争」の一員であるとして非正当化されたのである。

また、ドンバス地方の紛争をウクライナ・ロシア紛争と見なすことは東部ウクライナの住民を代弁する行為は徹底して抑圧することができるということを示唆している。米国はキエフ政府が反対意見を表明するメディアや抗議行動をする市民を摘発することを支持し、反政府指導者を刑務所に送り込み、抑圧的な言語法を施行し、国家建設に関しては多元論的な見解を持つ東部の市民をのけ者にするといった取り組みさえをも支持している。中でももっとも醜悪な点は米国がナチスの協力者を自由の戦士として祝う反ロ的な歴史の書き換えさえをも支持していることだ。ソ連に反対し、ヒトラーを支援したウクライナ西部のファシストらは英雄であったとする民族主義的、かつ、国家主義的な見解を援護するために、2013年以降毎年、米国は「ナチズムの栄光視と闘う」という国連の決議案に対して反対票を投じて来た。2021年の11月にも国連では米国とウクライナの二か国だけがこの決議案に反対した。

ウクライナにおける戦争を解決するより広範な取り組み:

永続する平和を達成するにはロシアやNATOといった国際的な当事者をウクライナ危機の解決に参画するよう要請しなければならないという主張は実に理に適っている。とは言え、ウクライナ危機を単にウクライナ・ロシア間の紛争として位置づけようとする不正直な試みはウクライナが東部ウクライナの影響を排除し、ヨーロッパからはロシアの影響を排除するためにミンスク合意を潰すことだけを目指すことになりかねない。ミンスク合意はウクライナ国内の当事者に限ってはいるものの、この点は冷戦後に西側によって拒絶されたこと、つまり、この地域に起こる戦闘はヨーロッパの安全保障に関して相互に受け入れることが可能な合意によって終止符を打たなければならないとする基本的な概念に繋がるものなのだ。

著者のプロフィール:グレン・ディーセンは南東ノルウェー大学の教授であって、「Russia in Global Affairs」誌の編集者を務めている。彼のツイッターは Twitter @glenn_diesen

注:この記事に表明されている声明や見解および意見は全面的に著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。

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これで全文の仮訳が終了した。

著者の論点は下記の部分で頂点に達した感がある:

中でももっとも醜悪な点は米国がナチスの協力者を自由の戦士として祝う反ロ的な歴史の書き換えさえをも支持していることだ。ソ連に反対し、ヒトラーを支援したウクライナ西部のファシストらは英雄であったとする民族主義的、かつ、国家主義的な見解を援護するために、2013年以降毎年、米国は「ナチズムの栄光視と闘う」という国連の決議案に対して反対票を投じて来た。2021年の11月にも国連では米国とウクライナの二か国だけがこの決議案に反対した。

この見解は政治の醜さ、あるいは、不条理さを明白に伝えていると言えよう。

結局のところ、ウクライナの内戦は複数の顔を持っていることは明らかである。それ故に、解決の目途がなかなかつかないという悪循環に陥っているようだ。

この状況は今後も続くことであろう。それは常識的な直観で物を言うしかない素人の目にも明らかだ。世界レベルでは単独覇権体制を維持しようとする勢力と、多極化を標榜する勢力とが綱引きを継続しているのであって、ウクライナ紛争という現状を解決するにはどちらかの勢力が他を圧倒しない限りは望めそうにはないのかも知れない。外交交渉によって解決することが如何に難しいかについては人間社会は今まで十分に思い知らされて来た。NATOや米国にとっては自分たちがすべてを決定するのだと当然思っている。そこにはロシア側の提案が額面通りに反映されることはない。逆説的に言えば、それは米国および西側は単独覇権体制が今も維持されていると判断しているからに他ならない。

人間が持つ最大の短所である金銭や権力に対する貪欲さは人間が人間である限り何らかの形で継続する。そのことを思うと、核戦争に発展する可能性を持っているウクライナ内戦の解決は近い将来に限って言えば悲観的にならざるを得ない。つい最近、米国の上院議員の一人がウクライナ紛争では米国は核兵器を先制使用するべきだと公言した。多数派の見解ではないにしても、これは非常に物騒な発言である。

参照:

1Who is fighting who in Ukraine?: By RT, Dec/05/2021, https://on.rt.com/bmb1