2018年9月24日月曜日

朝鮮半島における歴史的和平の動きは米国に紛争を止めるよう促している


韓国と北朝鮮の指導者は何回目かの会談を行い、両国は、920日、朝鮮半島の非核化に向けて新たな段階に到達した。米国の軍産複合体が邪魔をしない限り、東アジアの軍事的緊張を和らげるこの動きは具体化して行きそうだ。これは両当事国にとってだけではなく、周辺のロシアや中国、日本にとっても歓迎すべき動きだ。

少なくとも、韓国と北朝鮮の民意は両国の和平を求めている。

これは何十年も前からの願いであったが、今までは、不幸なことには、周囲の政治的環境がそれを許さなかった。しかしながら、今年の11日の金正恩の言葉が歴史の流れを変え、新しい潮流を見事に作り出した。今回は南北の民意として本気に動き出した。金正恩の指導者としての奔放さと独自性は後世の歴史書にも記されるのではないか。まさに、政治の妙である。

ここに、「朝鮮半島における歴史的和平の動きは米国に紛争を止めるよう促している」と題された最近の記事がある [1]

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>










Photo-1:  韓国の文在寅と北朝鮮の金正恩の両指導者、北朝鮮の白頭山の頂上にて。2018920日。© Pyeongyang Press Corps/Pool / Reuters

·       これ以上に象徴的な出来事はない。南北朝鮮の両指導者は朝鮮半島の最高峰の頂上に立って、お互いの手を握り締めた。平和裏に両国を統合することを固く約束したのである。今や、和平を実現するボールはワシントン側のコートにある。 

     南北朝鮮の和解に関しては、今年は重要な外交的成果がいくつもあった。しかし、今週三日間をかけて行われた両指導者間の会談は朝鮮半島の和平をさらに先へと進めた。

      韓国の文在寅は北朝鮮の首都で平和を願う数多くの市民の歓迎を受けた。北朝鮮の指導者である金正恩と共に、核兵器の廃絶と両国関係の正常化に向けて重要な約束をし、これに署名をした。

この歴史的な北朝鮮への訪問の二日目、文大統領は平壌のメーデー・スタジアムで15万人の市民に向けて演説を行った。その演説の最中、「朝鮮人であるわれわれの兄弟、姉妹」という言葉を何度も繰り返した。熱狂的な喝采に向かって、彼は「偉大な朝鮮人」の和平と統合を呼びかけた。















Photo-2:  金正恩は和平の記念として2トンものマツタケを韓国に贈呈した。

その翌日、文と金はそれぞれの婦人や代表団を伴って白頭山に登った。この山は朝鮮民族精神の誕生の地として5000年も前から南北朝鮮の人たちによって崇拝されている。文大統領が前夜スタジアムで行った演説で述べたように、朝鮮人は何千年にもわたって平和裏に暮らしてきた。冷戦と悲惨な内戦(195053年)によって過去70年間においてだけは分離されていたのである。

その分離は、今や、今週の友愛に満ちた指導者間の会談によって終わろうとしている。

決して無駄な話し合いではなかった。両者は両国を分断している国境を非軍事化し、紛争を回避する手順が履行されているかどうかを監視するための合同軍事委員会を設置することを約束した。ふたりの指導者は輸送システムや経済協力を介して両国を統合する行動計画を設定した。

悲痛な課題となっている戦争によって離散した家族の再会に関しては、国境を越えて接触を保つことを恒常化する計画である。

総括的和平の締結の可能性を高めている要素は何といってもトランプ政権の積極的な反応であろう。トランプ大統領は今週の南北朝鮮の会談を「素晴らしいことだ」と評し、平和の追求を支持した。

米国務長官のマイク・ポンペオは北朝鮮との交渉を「可及的速やかに」再開するよう部下に指示を与えた。

「この重要な(南北両国の)約束に基づいて、米国は直ぐにでも交渉に入る用意がある」とポンペオは述べている。

今のところは順調だ。今週、北朝鮮の金は核兵器の製造設備を撤去する約束を再確認した。しかし、彼は米国が「それに相当する」譲歩を見せることを望んでいる。















Photo-3:  金と文が非核化の道筋を採用した後、両国の国防大臣は「軍事協定」に署名。

これはワシントン政府からの実質的な見返りもなしに北朝鮮が核兵器を一方的に廃棄するというプロセスにはならない。米国からの見返りがどのようなものとなるのかに関しては、金は具体的には何も述べていない。しかし、それは朝鮮戦争に終止符を打つ平和条約の形で米国が安全保障を約束することだと推測される。

また、北朝鮮は米軍が韓国軍と共に毎年実施している合同軍事演習を永久に中止することを望んでいる。平壌にとっては、この軍事演習は自国の安全保障に対する挑発である。それに加えて、南北が両国の関係を正常化し、再統合のプロセスを開始するならば、現在28,000名を越す駐留米軍は韓国の領土内から撤退することを余儀なくされることであろう。

トランプとポンペオは先に示していた「完全で、検証可能な、非可逆的な非核化」といった高圧的な要求からは大きく離れたようだ。トランプ政権は、恐らく、われわれの多くにとっては驚くほど節度のある柔軟性を示し、信頼性を確立するために徐々に交渉を進めることに意欲的であるようだ。

最近の数ヶ月間に進行した関係改善は驚異的でさえある。昨年の今頃、トランプは国連総会で無鉄砲で好戦的な演説を行っていた。その演説で彼は金書記長を「ロケット・マン」と風刺して、攻撃した。さらには、もしも北朝鮮が大陸間弾道ミサイルを用いて米国を脅かすならば、北朝鮮を「徹底的に破壊する」と断言した。

金も同様に何度も攻撃的な姿勢を見せて、トランプは「もうろくしている」と激しく非難し、北朝鮮の常套句である「火の海」という文言を使って彼を脅かした。

世界中で多くの人々が核戦争が近づいているとして恐怖感を覚えた。しかしながら、今年の始めに金が韓国の文大統領に友情の手を差し伸べ、国家統一について喋った時、すべてが変わった。ふたつの国家間の緊張緩和に向けて長い間働き、政治的経験を豊富に持っている文は速やかにそれに報いた。彼は2017年の5月に北朝鮮との和平を約束して大統領に選出されていたのである。

今年の4月、ふたりの朝鮮の指導者は非武装地帯で歴史的な会談を行った。そこでは、国境の両側から取り寄せた土と水を用いて記念植樹が行われた。

その後トランプと金との間に突破口を開いたのは文であった。6月のシンガポールでの会談では米国の現職の大統領が北朝鮮の指導者と初めて会って、頂点に達した。
















Photo-4:  トランプ米大統領は近いうちに北朝鮮の指導者である金正恩と会うことになったと述べた。

来週、韓国大統領は国連総会の場でトランプと会合する予定だ。その場で、この非核化プロセスを推進するために北側はどのような譲歩を米国に求めているのかについての詳細を伝達するものと推測される。

ボールは米国側のコートにある。トランプは朝鮮に対する米国の政策を大幅に変更する必要がある。北朝鮮の安全保障を確実にし、朝鮮半島の和平を確立するには、朝鮮戦争の終結宣言が、遅きに失したとは言え、最初のステップとなる。

しかし、トランプはさらに先へ進む必要がある。平壌に対して強硬な姿勢をとっても功を奏しない。核兵器の製造施設を廃棄するという具体的なステップを評価し、北朝鮮に対する懲罰的な経済制裁を緩和することがさらに先へ進むための妥当な筋道であると思われる。

このプロセスはワシントンにおけるふたつの派閥によって空中分解を起こす危険性がある。そのひとつは朝鮮半島から米軍を引き上げることには反対する軍部と米帝国の政策立案者たちだ。何十年にもわたって継続されてきた米軍の駐留目的は韓国を「防護する」ことよりも、本質的には、むしろ、中国やロシアに対してアジア・太平洋地域で米軍の影響力を投射することにある。

和平を脱線しかねないもうひとつの派閥は「反トランプ」で結集し、民主党員やメディア界の支持者によって独占されている政治的権力層である。この派閥はトランプに関することであれば何でも嫌う。たとえば、彼が北朝鮮に対する外交で見せた、好ましい行為を行った場合であってさえもだ。しかし、本件はすべてをトランプの手に委ねようではないか。彼はどうにかこうにか金正恩との和平にひとつの機会を与えてくれたのだから。

依然として、反トランプ陣営は本件を喜んではいないようだ。ニューヨークタイムズは今週このサミットについてしぶしぶと次のような表題をつけた。つまり、「北朝鮮が新たに約束する核の放棄は米国の要求には程遠い」と。

もうひとつの反トランプ論者であるワシントンポストも「北朝鮮は今や非核化では最小限度の圧力しか受けてはいない」と言って不満を示し、トランプが公言した「最大級の圧力」をあざ笑っている。

米ロ間の正常化についてトランプ大統領が国内の反対派から妨害を受けているのとまったく同様に、トランプは北朝鮮との和平の試みについても邪魔されていることを悟るかも知れない。その場合、歴史的紛争の終結の機会が強引に浪費されてしまいかねない。

それでもなお、米国が邪魔をする戦術は脇に置くとして、南北朝鮮の人々は、今や、かっては見られなかったような断固とした決意と勇気を持って、自分たちの運命を形作ろうとしている。彼らは、たとえワシントン政府が何と言おうとも、戦争には終止符を打とうとするだろう。米国による弱い者いじめの時代は終わろうとしている。

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注: この記事で表明された見解や意見はあくまでも著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。 

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

世間にはさまざまな議論がある。しかしながら、誰にとっても明白なことは全世界の市民にとっては核戦争の脅威を取り除くことこそが最優先である。

これはそれ以外の政策とは比べることさえも無意味だ。この最優先項目と二番目に重要な項目との間には大きな隔たりが存在する。たとえば、米国の政策論者が頻繁に持ち出す中国やロシアの人権問題は、本質論として議論すれば、人類の存続そのものを脅かす核戦争の脅威には立ち向かうことはできない。ましてや、米民主党の活動家にお得意のアイデンティティー問題も然りだ。同性婚の議論は文明の壊滅を目の前にしてどんな意味があると言うのだろうか?

朝鮮半島の非核化がすんなりと進展するかどうかは分からない。しかしながら、たとえ紆余曲折があるとしても、これは時代の要請であることには間違いがない。



参照:

1:Korea’s historic peace move puts onus on Washington to end conflict: By Finian Cunnigham, RT, https://on.rt.com/9erd




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