2019年8月22日木曜日

タルシ・ギャバードの主張は正しい


米国の2020年大統領選挙を目指して、民主党や共和党の大統領候補としての指名を受けるために熾烈な競争がすでに始まっている。たとえば、民主党では、73031日、自動車産業の中心地であるデトロイトで20人の候補者が集まって、第2回目の討論会が開催された。二日間をかけて討論された論点には医療保険制度、刑事司法制度、トランプ政権の追加関税、TPPへの再加盟、等が含まれている。

20人の内で6人は女性である。これらの女性候補者は夫や父親の七光りではなく、自分の専門領域で頭角を現して来た者ばかりであって、その点が特筆に値する。2016年の大統領選では民主党指名のヒラリー・クリントン候補は、良いにつけ悪いにつけ、大統領を務めた夫の存在が見え隠れしていた。しかしながら、2020年の大統領選のために民主党から出馬したこれら6人の女性候補者は皆が、従来とは違って、自分自身の力で現在の地位を確立している。

6人の女性候補者の中にはハワイ州選出の下院議員、タルシ・ギャバードがいる。彼女は独自の政治的見解を持っていることから、今、さまざまな方面から注目を浴びている。

ここに「タルシ・ギャバードの主張は正しい」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。タルシ・ギャバードは上述の民主党候補者による第2回討論会では勝ち組の筆頭であると評されている。そこで、彼女の政治的見解を少しでも学んでおきたいと思う次第だ。


<引用開始>

731日に行われた大統領選の民主党予備選での候補者による討論会の後、ハワイ選出のタルシ・ギャバード下院議員は全候補者の中でもっとも多くのグーグル検索を受け、 彼女の討論会における目立った活躍(カリフォルニア選出のカマラ・ハリス上院議員を犯罪歴に関する討論で勝利したことを含む)が数多くの視聴者の関心を集めたことを示した。と同時に、この急激な関心の高まりは否定的な反応ももたらした。たとえば、ハリスは「アサドの擁護者」(シリアのアサド大統領を指している)と言って、ギャバード一言で片付けた 大手メディアからは、典型的にはCNNのクリス・クオモによって、ギャバードはハワイ出身の国家警備隊の少佐であって、中東で二回の従軍経験を有するが、シリア市民に対して化学兵器を用いたとして責任を問われているアサド大統領については米諜報関係者や国連調査官の見解よりもむしろアサド側についているとして報じられた。

「あなたの引用は私が表明したことについて懐疑的な見方をしており、皮肉そのものである。われわれに対して嘘をつき、米国市民に対して嘘をつき、下院や上院の議員がそれを信じて戦争に賛成票を投じることになった偽りの証拠を示した連中がもたらした戦争に私は従軍した。その戦争の結果、私の兄弟姉妹とも言うべき将兵がこの戦争で4,000人もが命を落とすことになった」と述べて、ギャバードはクオモに反論した。「我が国の軍隊は次の点が確実ではない限り、派兵をするべきではない。つまり、a)米国市民のために最善の策であり、b)その派兵行為が実際に好影響をもたらす。これらの事柄を確実にすることこそがわれわれ議員や指導者の責任である。私が投げかけた疑問点は自分自身が体験したことに基づいている。」 

2003年に遂行されたイラクへの侵攻と占領の前にイラクの大量破壊兵器に関する米政府の捉え方に関して挑戦した当事者として、アサド政権は2017年のカーン・シェイク―ンや2018年のドウマの町を攻撃するために化学兵器を用いたとする主張に関してギャバードが抱いた懐疑心は十分に信頼できるものであると私は考える。

自分のキャンペーン用ウェブサイトでシリアにおける化学兵器の使用に関する主張について、ギャバードは自分が抱く懸念を詳しく述べている。彼女の立ち位置、ならびに、マサチューセッツ工科大学の教授で、カーン・シェイク―ンやドウマでのふたつの出来事に関して批判的評価を出版したセオドーア・ポストルの論文への彼女の依存は、べリングキャットのウェブサイトを創設したエリオット・ヒギンス(彼はポストルの論文とそれに依存するギャバ―トについて反論を掲載)を含めて、大手メディアやその他の分野において多くの者に深い憤りを招いた。

本論考における私の目的はポストルの研究の正確さを精査することやヒギンスの主張に対して反論することではなく、ギャバードのウェブサイトについて事実関係を調べることでもない。むしろ、元海兵隊の諜報関係の将校で兵器調査官を務めた私がここでやりたいことはギャバ―ドが懐疑心を抱くことになった背景に注目することである。

2018年4月7日のドウマにおける化学兵器攻撃に関する主張のほとんどが誤りであったことはすでに暴かれている。つまり、当初は神経ガスのサリンが使用されたという主張が成されたが、これは誤りであったことが示され、シリア軍のヘリコプターから投下されたという2個の塩素ボンベは、実際には、反政府派武装組織によって人手で個々の現場へ持ち込まれたものであるという証拠が現れた。米政府がドウマに関する主張に応えてシリアに対する軍事攻撃を正当化するために行った当初の状況評価は基本的に間違っていたことには疑いの余地がない。また、民主党大統領候補の間ではたった一人ではあるが、ギャバードがその主張の正しさについて懐疑心を表明したことは全うであるという点についても疑いの余地はない。

201744日に起こったカーン・シェイク―ンの出来事はもっと複雑である。この出来事では、化学兵器禁止機関(OPCW)から派遣された調査専門家はカーン・シェイク―ンの市民がサリンに暴露されたことを示す証拠を発見したと報告している。カーン・シェイク―ンの出来事でもっとも中心的な疑問点はサリンが使用されたかどうかということではなく、いったい誰がサリンを用いたのかという点である。米政府およびOPCWは化学兵器攻撃を行ったのはシリア政府であると結論付けた。一方、ポストルやギャバ―ドならびに私はこの結論には懸念を抱いている。

シリア政府の責任を主張するOPCWの調査専門家を含めて、独立した調査専門家でカーン・シェイク―ンの現場を実際に訪れた者は誰一人いない。これは収集されたデータがどのように評価されるのかに対して根源的な影響を与える非常に重要な要素である。攻撃が行われた当時、カーン・シェイク―ンはアルカエダの一派であるヌスラ・フロントに忠誠を誓った反政府派武装勢力のコントロール下にあった。民間の自衛・救護組織であるホワイトヘルメットシリアン・アメリカン・メディカル・ソサイエティ―、つまり、SAMS(シリアの反政府派地域で医療サービスを行うボランティア組織)を含めて、いくつかの非政府系組織が活動していた。ホワイトヘルメットとSAMSの両者はカーン・シェイク―ン地域で仕事をする際にはヌスラ・フロントの庇護の下で活動した。OPCWはその調査活動を行うに当たってはホワイトヘルメットとSAMSの両者に全面的に依存した。化学兵器攻撃に関する情報から始まって、攻撃の被害者に対するインタビューや医学的な試験検査、攻撃現場から採取されたとする物理的なサンプル、等々。

OPCW発行の報告書の信憑性にとってこのような現実はまさに致命的である。私は旧ソ連邦およびイラクで兵器調査官として10年余りを過ごしたが、調査中に収集したサンプルに必要となる「分析過程の管理」を含めて、現場での調査に関する本の出版に協力したことがある。反論を受ける心配もなく、私は次の事柄を断言することができる。つまり、サンプルの収集から最後の分析に至る間に完璧な「分析過程の管理」に欠けている証拠から推論された特性や結論には何らの公正さや法的な拘束力はない。このことはイラクにおける国連大量破壊兵器破棄特別委員会(UNSCOM)、ならびに、シリアで使用されたとする化学兵器を調査した国連派遣団にも当てはまる。あの派遣団は2013819日から930日までシリアで活動した。「受け取った情報について独立して実証することは不可能だ」とか、「サンプルの取得に関して分析過程の管理を検証することができない」として数多くの証拠を拒絶したことが記録に残されている。 

しかしながら、OPCW自分たちの手順を変更し、ホワイトヘルメットとSAMSを証拠となる「分析過程の管理」に招じ入れることを許した。OPCWの調査官は証言者の選定や篩分けといった個々の過程を開始するプロセスには関与してはいないにもかかわらず、彼らを情報を検証する手段として活用したのである。基本的に要求される手法に執着することを怠ったOPCWの行動は彼らの報告内容の信憑性に疑問を抱かせるのに十分である。それ以外の理由がない限り、アルカエダと近しい組織(つまり、ヌスラ・フロント)に実質的に調査そのものを委ねたことになる。その結果、OPCWの結論は挑戦を招くことになったのである。

ポストルとヒギンスはサリンを巡る科学について非常に多くの時間を費やしている。私は、むしろ、カーン・シェイク―ンでの出来事についてはもっと基本的な捉え方を採用したいと思う。つまり、サリンはどのようにして現場へもたらされたのか?OPCW次のように結論付けた。 「中程度の高度あるいは高高度から、つまり、4,00010,000メートルの高度から」投下された「比較的大型の爆弾」がカーン・シェイク―ンで用いられた搬送手段であると考えられる。しかし、この判断は高度な技術的問題を提起する。特に、シリア空軍のSu-22はこの爆弾をOPCWが描写したようには投下することができなかった。もしもシリア政府側がカーン・シェイク―ンで化学兵器爆弾を投下することができなかったとするならば、ヌスラ・フロントやホワイトヘルメットおよびSAMSによって提供された証拠に基づいてOPCWが結論付けた筋書きのすべては作り話であると見なさざるを得ない。

PCWは米国とフランスによって提供されたレーダー地図を引用した。その地図はSu-22機が201744日の朝カーン・シェイク―ンの上空にいたとしている。「Su-22はカフル・ザイタおよび北東にあるカーン・シェイク―ンの近傍にてループ状に旋回飛行をしていた」とOPCW報告書は指摘した。「その地図は戦闘機がカーン・シェイク―ンにもっとも近づいた飛行経路は約5キロメートル程の距離であったことを示している。」  

この情報はシリア政府がOPCWに提出したシリア空軍の日誌の内容にも一致し、44日の朝Su-22機を操縦していたパイロットの証言とも符合する。つまり、通常爆弾を用いてカーン・シェイク―ンの南西約8キロに位置するカフル・ザイタの集落を攻撃していたが、カーン・シェイク―ンにもっとも近づいた距離は79キロであったとパイロットは主張している。

OPCWは氏名が不詳の「兵器専門家」に相談し、「カーン・シェイク―ンを空爆することが可能な二つの条件、つまり、距離と高度」を特定するよう依頼したと言った。その「専門家」は「高度や飛行速度、飛行経路といった変数にもよるが、上述の高度から(カーン・シェイク―ンの)町を空爆することは可能だ」と結論付けた。OPCWはその「専門家」がこの結論を導くのに用いた変数は提示しなかったし、それらの変数が彼らが主張するような結果をもたらし得る事例に関しても何ら言及しなかった。 

OPCWがどうしてそうしなかったのかについては単純な理由がひとつある。その「専門家」は間違っていたのだ。

ロシア空軍のオフィサーが提供した状況説明Su-22機が問題の日の朝カーン・シェイク―ンを空爆したとするOPCWの主張とは真っ向から対立する。Su-22がこの種の攻撃を実行するには攻撃目標を目視で捉え、飛行高度は4,000メートル以下、時速8001,000キロで直接攻撃目標に向かって飛行する必要があると彼は言った。これらの条件に基づいて、爆弾の投下は目標から1,0005,800メートルほど離れた距離で行うことになる。それでもなお、Su-22は爆弾を投下した後に引き返すのにはさらに39キロの距離を必要とする。OPCWが用いたレーダー記録はSu-22機はカーン・シェイク―ンの西側を飛行しており、カーン・シェイク―ンの町とは並行して飛行しいる。その飛行経路はカーン・シェイク―ンへの爆撃を行うのに必要な条件とは相反する。

西側の「専門家」はロシア側が提示した内容は茶番だと述べて、破棄した。私はロシア側の提示内容は信用に値すると考える。Su-22と同様な性能特性を持つ米海兵隊のOA-4スカイホーク軽攻撃機の元搭乗員の一人として言わせてもらうと、私はカーン・シェイク―ンに対する攻撃に匹敵するような空対地攻撃には何回も出撃した。米レーダーが追跡した飛行経路は必要とあらば100回でも飛行することは可能であるが、カーン・シェイク―ンに出来た問題のクレーターの近傍へ爆弾を投下することは不可能である。この論点は、クレーターの基本的な特徴を分析すると、その攻撃の方位角が町の西側を通過するSu22の飛行経路とはほとんど直角を成しており、この事実によっても裏付けされる。爆弾が投下されたとすれば、攻撃機はその飛行経路からは大きく外れた経路を飛行し、引き返してその経路に戻る前に目標地点を飛び越さなければならなかったであろう。しかし、レーダー記録はそのような飛行を示してはいない。(カーン・シェイク―ンの北に位置する攻撃機が飛行した「ループ」は問題のクレーターの位置に爆弾を投下するのに必要な攻撃方位角を可能にはしない。)これはOPCWが直面する問題点の核心である。なぜならばOPCWはカーン・シェイク―ンを攻撃するのにサリンが充填された爆弾が投下されたと主張しているからだ。しかしながら、この爆弾を運ぶ唯一の手段(つまり、シリア空軍のSu-22機)の存在に関してOPCWが提供した証拠は、皮肉にも、彼らの主張に反証している形となっている。

シリア空軍のSu-22機の動向はカーン・シェイク―ンでのサリンの使用にシリア政府が連座するという主張においてはもっとも根幹を成す部分だ。誰にとってもサリンの持続性や別の輸送手段、あるいは、他のほとんど関係のない事柄についてあれこれと議論することは可能だ。しかし、ヌスラ・フロントやホワイトヘルメットおよびSAMSの筋書きが生きながらえるにはカーン・シェイク―ンの中心部へ爆弾を投下するシリア空軍のSu-22がどうしても必要なのである。しかしながら、彼らによって提示された証拠はそのような状況は実際には起こり得なかったことを決定的に示している。この現実に基づいて言えば、この後に続く諸々の行為はすべてが「偽旗作戦」であったと見なさなければならない。ギャバードのウェブサイトが指摘しているように、「これらの攻撃は米国と西側をこの戦争にもっと深く引きずり込むために反政府派武装勢力が仕掛けたものであることを証拠が示している。」

「これらの攻撃はアルカエダあるいはシリア政府の仕業であると結論付ける以前にわれわれは皆が注意深く証拠を精査するべきであると私は考える」とギャバードは自分のウェブサイトで述べている。 彼女が批判的な態度で対処して来たことは立派な行動であるばかりではなく、米軍の最高軍司令官の地位を標榜する戦士には是が非でも期待したい特性でもある。

シリアや化学兵器攻撃についてギャバードが見せた立ち位置に関して大手メディアが彼女を攻撃し続けていることは今日の米国のジャーナリズムが持つハードルが非常に低いことを示している。トランプ大統領ならびに民主党の大統領候補の全員がドウマやカーン・シェイク―ンでいったい何が起こったのかに関して知的好奇心を少しも見せなかったという事実は戦争と平和に若干でも取り組もうとする如何なる米国人に対しても警鐘を鳴らすことであろう。

著者のプロフィール: スコット・リッターは諜報分野で10数年を過ごした。1985年から米海兵隊の地上諜報オフィサーとして働いた。

この記事は最初は「Truthdig」によって出版された。


<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

この記事の著者はためらうこともなく次のように述べた:
これらの攻撃はアルカエダあるいはシリア政府の仕業であると結論付ける以前にわれわれは皆が注意深く証拠を精査するべきであると私は考える」とギャバードは自分のウェブサイトで述べている。 彼女が批判的な態度で対処して来たことは立派な行動であるばかりではなく、米軍の最高軍司令官の地位を標榜する戦士には是が非でも期待したい特性でもある。

民主党の大統領候補者20人が集まって討論会が開催され、その一部始終を見た市民の多数がギャバードに新たに関心を寄せた。彼女に関するインターネットでの検索が急増した理由が良く分かる。

一方では、民主党の大統領候補としての指名を目指す20人もの政治家エリートが集う政治討論会の結果、知的好奇心を発揮してシリアにおける化学兵器攻撃の実態を理解しようとしたのはたった一人、タルシ・ギャバードだけだったという現実には寒気を覚える。逆説的に言えば、彼らは政治にどっぷりと浸かっている政治家集団であることから、政治的プロパガンダの中枢にいる彼ららしい側面を垣間見せたのだとも言える。

しかしながら、今回、われわれ一般庶民は米国における情報の歪曲、欠如、偽情報といった大手メディアによる洗脳プロセスの成果の一端を改めて具体的に見せつけられたことにもなる。これは米国にとって、さらには、全世界にとって大きな不幸である。

タルシ・ギャバードの見識は他の候補者を圧倒していることが明白だ。彼女の行動や言動には基本的な行動原理がはっきりと見て取れることから、安心感を覚える。来年の大統領選に向けて今後彼女はどう展開して行くのかが見物である。第三回目の討論会は91213日にヒューストンで開催される予定だ。

この「芳ちゃんのブログ」では機会がある毎に核兵器のない世界を作り出すことが次世代に対する究極の贈り物であると私は主張してきた。軍刀をガチャガチャ言わせて相手を威嚇し、言う事を聞かないと政府を転覆させるぞと脅迫し、相手国の資源を略奪する武力に依存した対外政策を米国はもう止めなければならない。言うまでもなく、今日の武力の最たるものは核兵器であり、核兵器の使用・不使用は政治的意思によって決定される。




参照:

1Tulsi Gabbard Gets Some Vindication: By Scott Ritter, Information Clearing House, Aug/16/2019









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