副題:シリアのカトリック系修道院に20年間在住しているマザー・アグネスが指摘
もうしばらく前の話になるが、9月6日のRTの記事[注1]によると、マザー・アグネスの言について下記のような報道があった。
シリアのカラ地区にある聖ジェームズ修道院にて女子修道院長を務めるマザー・アグネス・マリアム・エルサリブは「シリアで起こった化学兵器使用のビデオはでっち上げだ」とRTに対して述べた。彼女は自分が見い出した事実を国連へ報告する積もりだと言う。
マザー・アグネスはカトリック系修道院の修道女である。彼女は20年にもわたってシリアに住んでいるが、戦渦に巻き込まれた同国の様子に関してその様子を今まで積極的に報告してきた。彼女の言によると、8月にゴータ地区で起こった毒ガス攻撃による被害の様子を伝えたビデオを詳細に検証した。その結果、彼女はビデオ映像の信憑性に強い疑問を抱くようになった。
RTによるインタビューで、マザー・アグネスは、かなり多くのビデオが非常に短時間の内にYouTubeに掲載されたことに不自然さを感じたという。また、それだけではなく、亡くなった子供たちの親たちはいったい何処へいってしまったのか、と疑問を投げかけている。彼女は国連へ報告書を送ると約束した...
(Photo 1) マザー・アグネス
インターネットには無数の子供たちが白い布に包まれて安置されている様子が掲載されている。マザー・アグネスが指摘するまでもなく、私も第一印象として同様な感じを持っていた。化学兵器の攻撃が早朝に行われ、ほとんどの人たちは寝込みを襲われ、毒ガスによって殺害されたと報道されているにも拘らず、インターネットでの第一報の写真では大人たちの様子がまったく伝えられていないことに非常に不自然な印象を抱いた。多くの人たちがそういった第一印象を抱いたに違いない。
私は何らかの作為があるのではないかと感じていた。
そして、9月19日にはマザー・アグネスが国連の人権委員会宛に報告書を出したという事実が報道された[注2]。その記事の一部を仮訳して、下記に示したいと思う。
(Photo
2) シリアの反政府派のシャーム・ニュース・ネットワークが配布した資料。子供たちが白布に包まれ、臨時の死体置き場に横たわっている。シリアの反政府派の言によると、これらの子供たちは8月21日にダマスカス近郊のゴータ東部地区で政府派の毒ガス攻撃に遭って死亡したとされている。 (AFP/Shaam News Network)
米国の諜報機関はひとりのキリスト教系の修道女による献身的な作業によって、ならびに、彼女の固い決心によって恥を感じざるを得ない立場に立たされよう。彼女はシリアでの化学兵器攻撃のビデオを詳細に調査した。その結果、これらのビデオはいかさまで、死体を演出したものであることが判明したのだ。
マザー・アグネスと彼女を支援する国際団体(ISTEAMS)による報告書[注3]を読むために時間を割いた人たちは、これらのビデオは明らかに怪しげで、素人による注意深い調査にさえも耐えられそうもなく、これらのビデオ映像を支持したことによって米国の諜報機関は面目をすっかり失うことになると認識するだろう。
化学兵器が使用されたという事実を否定する人はいない。米国政府ならびに米国やその同盟国の主要なメデイアは、この悪意に満ちたゲームに没頭して、a)シリア政府が化学兵器を使用したことを拒否することは、b)化学兵器が用いられたという事実を否定することに等しいと述べるに至った。これは一般大衆を混乱させるためにふたつの事柄を故意に混ぜ合わせたものだ。要は、いったい誰が化学兵器を使ったのか、という点だ....
マザー・アグネスの指摘には鋭いものがある。インターネットへ掲載された映像を入念に調査し、これらの映像が作為的に演出されたものであることを指摘してくれたのだ。具体的な指摘内容を挙げると次のような具合である。
写真の拡大:写真の上を二回左クリックしてください。写真が拡大されます。
(Photo 3) ザマルカ(左側の写真)で撮影された赤いシャツを着た男の子がジョバール(右側)で撮影された写真でも観察される。これらの写真はマザー・アグネスの国連への報告書から抜粋。
(Photo 4) 同報告書によると、同一の映像がそれぞれ違ったシナリオに用いられている。これらの写真はマザー・アグネスの国連への報告書から抜粋。
....米国の諜報機関は13本のビデオを抽出し、オバマ政権はシリア政府に責任をとらせる根拠としてそれら13本のビデオを取り上げた。これらのビデオは注意深く精査する必要がある。
これらの映像に関して米国務長官のジョン・ケリーは、8月30日、報道関係者を前にして、前もって準備した原稿を読み上げてある点を強調したが、その内容は非常に巧妙なものとして受け止められた。
ケリー国務長官はとりわけシリアからの映像を参照しながら、「自分たちの目で」とか「目撃して」といった言葉を使った。これらのビデオは一般大衆も見るように、とまで彼は述べた。彼こそがこの仕事に取り組むべきだった。そして、マザー・アグネスが行った詳細な分析をやり遂げるべきだった。
子供たちの死骸の傍には大人の死骸が皆無であり、「これは自分の子供だ」と指摘する両親、特に、母親の姿がまったく見られないという事実をまったく問題にしない人たちもいるかも知れない。しかし、親たちはどこへ行ってしまったのか?文化的脈絡からは、これは驚くほど奇異なことだ。これらすべての子供たちの親たち、特に、母親たちが子供たちを置き去りにした、あるいは、子供たちが横たわっている場所へ急いで駆けつけてくることはなかった、といった状況はとても有り得ないことだ。
社会学的な観点から見たマザー・アグネスの疑問は見事に的を射ている。母親たちの行動は人種、文化、言語、宗教、教育、歴史、等の違いには関わりなく、全世界に共通したものだ。それとは対照的に、図らずもこれらの写真に表面化したわけではあるが、戦争屋、一部の政治家、あるいは、軍産共同体の連中が考えるシナリオは人々の常識に比べて何とお粗末なことだろうか、と今更ながら思い知らされる。
(Photo 5) アル・マルジ地区プレス・オフィスのビデオに撮影されている少なくとも9人の子供の死体(右側の写真)はカファルバトナ(左側)から移送されてきたもの。これらの写真はマザー・アグネスの国連への報告書から抜粋。
....同報告書は、公的な埋葬や亡くなった子供たちに関する報告は何もなかったという事実についても強調している。これは文化的ならびに宗教的なしきたりからは程遠いものだ。
....マザー・アグネスは、緊急時特有の雰囲気がまったく欠如しているとも指摘している。また、ある証言によると、使用された化学物質の匂いを感じたとも指摘している。しかしながら、サリンは無臭の筈であり、この証言は新たな重要な問題点を提起しているのかも知れない。
演出された映像:
マザー・アグネスの論点の一部を無視する人はいるかも知れないが、この報告書には否定のしようがない論点が幾つもある。これらの論点は、誰が見ても、米国の諜報機関が取り上げたビデオ映像のある場面は演出されたものであるという結論に導くものだ。
同一の死体がまったく違った現場やそれぞれ異なる場所にある仮の死体置き場に据えられていたのだ。同一の子供の死体が違った場所で指摘することができる。
....子供たちの死体があちらこちらへ移動されたことを示している。
シリア紛争については私も幾つかのブログを書いて、情報を掘り起こそうと努めてきた。ここに掲載したマザー・アグネスの国連への報告書は数多くの情報の中でも抜きん出ていると言えよう。人としての直感や人間としての常識から出発してここまで詳細に映像を分析し、重要な発見をした彼女の努力には敬意を表したいと思う。なかなか出来ないことだ。
8月30日のブログ、「<シリア> 毒ガス使用は反政府派の「自作自演」ではないか」では、8月21日の早朝に起こった毒ガス攻撃の被害の様子を伝えるビデオ映像が前日の8月20日に早々とインターネット上へ掲載されていた、という奇妙極まりない事実があることを紹介した。
今回のマザー・アグネスが指摘したビデオ映像の偽造疑惑と上記の一日前に発表してしまったヘマとを併せて考えてみると、米国をして「シリアを空爆する」との脅しに走らせることになった8月21日のシリアでの化学兵器攻撃は反政府派の自作自演であったことはほぼ間違いない。
参照:
注1:'Footage of chemical attack in Syria is fraud': Pubrished by RT,
Sep/06/2013, http://on.rt.com/n9vdh8
注2:One nun puts entire US intel community to shame over 'stage-managed' Syria
footage: By Mahdi Darius Nazemroaya, RT,
Sep/19/2013, http://on.rt.com/z6tmmo
注3:THE CHEMICAL ATTACKS ON
EAST GHOUTA TO JUSTIFY MILITARY RIGHT TO PROTECT INTERVENTION IN SYRIA: By
Mother Agnes Marian of the Cross, President of the ISTEAMS, Sep/11/2013
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