福島第一原発の炉心融解事故から4年半が経った。
安倍政権は東京へのオリンピックの招致にあたって、福島原発事故後の収束作業はすべてが「コントロール下にある」として、大見得を切った。そして、東京開催が決まった。しかしながら、あの時点以降も大量の汚染水の流出は続き、汚染土壌も流失、融解した炉心がいったいどこに位置しているのかは今もって正確には把握されてはいないのが現状だ。
1号機と2号機については、今年の3月、名古屋大学の研究者グループが宇宙線による透視を活用した原子炉の像を撮影することに成功した。炉心の融解が起こってはいない5号機との比較によって、1号機と2号機の炉心は融解して圧力容器内には残ってはいないと判断された
[注1]。しかしながら、融解した炉心が依然として格納容器内にとどまっているのか、それとも、格納容器の底も突き抜けてコンクリート基礎に到達しているのか、あるいは、さらにその先にまで到達しているのかに関しては確認されてはいない。現時点ではそこまでは確認できないとのことだ。
透視に使われる宇宙線(ミュー粒子)は1000メートルの厚さを持つ岩盤をも透過することができることから、ならびに、像を撮影するフィルム(原子核乾板)は小型の検出装置であることから、ボーリング穴の中へ挿入して、地下へ透過してくる宇宙線の様子を調査することも可能である。名古屋大学はこの種の調査についても検討を開始しているという。
要するに、炉心融解の大雑把な実態が少しずつ把握できるようになって来たところだ。
(1) 予断を許さない現状:
事故現場では瓦礫の撤去や廃炉のための準備作業が継続されている。瓦礫の撤去作業に従事する作業員は放射線に晒されながら作業を続けている。年間許容被ばく限度を越すような被ばくを受けた作業員の健康維持が喫緊の課題となっている。すでに十分に高い被ばくを受けている作業員は、さらなる被ばくを避けるためにも、事故現場での作業とはまったく別の仕事に配属されているという。そうせざるを得ないのだ。人的なやりくりの困難さが表面化しているということだ。今後の作業は次第に屋外から屋内へと移行していく。建屋内の高レベル汚染空間での作業は放射能の危険だけではなく、経験豊かな人的資源の確保の観点からもますます困難なものとなるだろう。
放射能レベルが高い屋内ではロボット作業に頼らなければならないことが多い。しかしながら、先端技術を駆使したロボットによる作業では、あまりにも過酷な放射能環境のせいで、これまでに投入されたロボットは早々にその機能を停止した。
事故現場では人的資源のやりくりや高レベル放射能環境での作業ロボットの開発において厳しい挑戦を受けているのが現状だ。これは、あたかも長いトンネルに入って、出口がまったく見えないという感じだ。「いったい勝ち目はあるのだろうか?」という疑問に襲われてしまう。
(2) 地域住民に広がる放射能の脅威
原発の事故現場からは離れて、福島県全域に目を向けてみよう。最悪の事態は小児甲状腺がんの多発が現実のものとなって来たという点だ。事故の直後、菅直人政権の枝野官房長官は放射能レベルに関しては「直ちに健康に影響をおよぼす数値ではない」と繰り返していた。あれが単なる気休めのための大嘘であったということは今や明白である。
福島県民にとっての最大の皮肉は、福島原発事故の直後、多くの専門家がこれから最悪の事態がやってくると警鐘を鳴らしていたにもかかわらず、結局、政府や県の重い腰を持ち上げさせるには至らず、子供を抱える母親たちの要望に応えるような対策を目にすることはできなかった。政府や県の対策は完全に後手に回ってしまったのだ。
科学的に信頼できる数値が全面的に支配して然るべき放射能強度や被ばくの実態に関する調査においてさえも、政治的な理由から情報の歪曲や過小評価あるいは情報操作が行われて来たことは素人目にとっても明らかである。これは非常に不幸なことだ。
事故から4年半が経過して、当時は得られなかったデータや情報が今になって発掘され、公開されるようになってきた。事故の直後には政治的な理由から隠ぺいされていた真実がその姿を現しつつあり、「やっぱりこういうことだったのか」といった新たな理解を可能にしている。
特に、「直ちに健康に影響をおよぼす数値ではない」という政府の解説や説明に基づいて行動をしてきた大多数の一般市民にとっては、事故から4年半が経過した今になって、多くの子供たちが甲状腺がんを発症し、治療のために手術を受けることになったという現実はまさに悪夢そのものであると思う。これらの子供たちは、甲状腺ホルモンの分泌が皆無になってしまった場合、生涯にわたって甲状腺ホルモンの服用を続けなければならない。事故の直後、政府が安定ヨウ素剤の投与を指示して、それを実施してさえいたならば、このような事態の多くは避けることが出来たに違いない。
チェルノブイリ原発事故の際、ポーランドでは千8百万人の市民に安定ヨウ素剤を配布した。その結果、チェルノブイリ事故の後でも甲状腺がんの増加は見られなかったという。ポーランド政府の判断は素晴らしい成果を挙げたのだ。その一方、ロシアやベラルーシならびにウクライナでは、原発に近接する地域を除いては安定ヨウ素剤の投与を実施しなかったことから、事故の20年後である2006年までに6,000件以上の小児甲状腺がんが発症した。[注2]
[注記: チェルノブイリ原発事故によるがんの発症数については参照する論文によってその数値は大きく異なります。念のため。]
「福島の子供の甲状腺がん発症率は20-50倍 - 津田敏秀氏ら論文で指摘」と題された本年10月8日の記事 [注3] によると、下記の内容が報じられている。
「2011年3月の東京電力福島第一原発事故による放射性物質の大量放出の影響で、福島県内ですでに甲状腺がんが多発しており、今後さらに多発することは避けられない――。こうした分析を、岡山大学大学院の津田敏秀教授(生命環境学・環境疫学)らの研究グループがまとめ、国際環境疫学会が発行する医学雑誌「Epidemiology」(インターネット版)で発表された。」
さらに、同教授は「事故当時18歳未満だった福島県民全員、約38万5000人を対象に、段階的に甲状腺がんの超音波スクリーニングが実施されている。このうち、2011~13年度に検査を受けた約30万人について、100万人あたり3人程度といわれる、ほぼ同年齢の日本全国での1年間あたりの発症率と比較した場合、福島市と郡山市の間で約50倍、福島原発周辺地域で約30倍、少ない地域でも20倍となった。2013年調査のいわき市で約40倍となるなど、潜伏期間を考慮すると発症率がより高いとみられるケースもあった。福島県内において甲状腺がんの著しい多発が起きていて、チェルノブイリで4年以内に観察された甲状腺がんの多発と一緒であり、チェルノブイリ同様、5~6年目以降の大きな多発は避けがたい状態だ」
はっきり言って、チェルノブイリ原発で学んだ事例を考慮すると、福島県での甲状腺がんはこれからさらに多く発症すると予測されているのである。
もうひとつの8月31日の報道によると、「福島県は31日、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて実施している福島県民健康調査の専門家会議を開催し、新たな甲状腺がんデータなどを公表。甲状腺がんと疑われる子どもは検査対象の38万人のうち、137人となった。すでに手術を終えたのは105人。病理診断により1人は良性結節、残りの104人が甲状腺がんと確定した。」
今思うに、政府や県が地域住民を説得しようとして住民に伝えてきた内容が政治的な思惑によっていかに歪曲されていたかということを思い知らされる。
ところが、政府は原発事故直後の初期動作では放射能の測定を怠った。つまり、甲状腺がんの発症の可能性を予測し、予防策を講じる際に必要な基礎データの取得を怠ったのである。この基礎データの欠如が大きな間違いを引き起こす決定的な要因になったと言えるのではないか。そして、データがないことをいいことにして、政府や県側は100例を越す甲状腺がんの発症となった時点でさえも、「スクリーニング効果によって発症数が多めになった」とか、「過剰診断のせいである」とかの詭弁を弄して、放射線被ばくとの関連性を断ち切ろうとしている。
疫学の専門家は、これほど多い発症数は「スクリーニング効果だけでは説明できない」と言っている。チェルノブイリ原発事故における甲状腺がんの発症の歴史からも分かるように、福島においても事故後4~5年を境にして甲状腺がんが急増し始めたということだ。ほとんど同じような挙動を示している。今後、事故から20年も経過すると数千人の発症レベルに達するのではないかと推察される。
(4)初期動作での大失策:
初期動作での大失策をもう一度確認しておきたいと思う。
2011年12月17日付けの「木村真三さんという放射線衛生学の研究者」と題したブログで、私は下記のような内容を報告した。
「…3月11日 の福島第一原発での事故直後、職場(労働安全衛生総合研究所)の幹部からは自主的な調査を控えるようにとの指示があったという。東海村での臨界事故やチェ
ノブイリ事故について自分が今まで研究してきた成果や知識を、この未曾有の危機に直面しながら事故現場の人たちに対してまったくフィードバックができない という「やり切れない思い」があった。
木村さんは辞表を出した。そして、原発事故の5日後には放射線の測定器を携えて福島へ向かっていた。
2ヶ月間で3000キロにもおよぶ調査の旅が始まった。それを支えるのは研究者仲間の皆さん。日本における放射線測定の草分け的な存在である岡野眞治さん(84歳)、京都大学の今中哲二さん、広島大学の静間清さんと遠藤暁さん、長崎大学の高辻俊弘さんたちだ。
研究者の方々の努力によって、福島原発周辺の放射能汚染地図が作成された…」
木村さんは辞表を出した。そして、原発事故の5日後には放射線の測定器を携えて福島へ向かっていた。
2ヶ月間で3000キロにもおよぶ調査の旅が始まった。それを支えるのは研究者仲間の皆さん。日本における放射線測定の草分け的な存在である岡野眞治さん(84歳)、京都大学の今中哲二さん、広島大学の静間清さんと遠藤暁さん、長崎大学の高辻俊弘さんたちだ。
研究者の方々の努力によって、福島原発周辺の放射能汚染地図が作成された…」
しかし、こういった地道な努力にもかかわらず、初期の段階でどれほどの放射線が放出されたのかについてその全貌が解明できたわけではない。日本政府は意図的に初期の放射線放出量のデータを採取しなかったのである。ここに「意図的に」と私は書いた。放射線測定ステーションが津波や地震で破壊されてしまったので測定が出来なかったのだという説明があるが、その種の説明はほんの一部を説明しているに過ぎない。ここに再度引用したように、労働安全衛生総合研究所の幹部からは「自主的な調査を控えるように」との指示が出ていたという事実が雄弁に当時の状況を語っている。その結果、小児甲状腺がんの予防には不可欠なヨウ素131のデータの欠如を引き起こしたのである。
これも、一般庶民に不要なパニックを生じさせまいとする政府の近視眼的な対応の結果として引き起こされたのではないだろうか。しかし、福島県民の健康被害を無視したのであるから、結果的には大失策であった。
(4) 福島県以外でも甲状腺がんが発症:
茨城県では、福島県に隣接する北茨木市からの報告がある [注4]。0歳から18歳(事故当時の年齢)の3,593人の2014年度の超音波検査の結果が報告され、3例の小児甲状腺がんが見つかった(今年の8月25日の報告)。
しかし、専門家や医師で構成されている北茨城市甲状腺超音波検査事業検討協議会は「この甲状腺がんの原因については、放射線の影響は考えにくい」とこの報告の中のコメントの一部として報告しているのである。
上記の「この甲状腺がんの原因については、放射線の影響は考えにくい」という北茨城市甲状腺超音波検査事業検討協議会のコメントは、どうして「考えにくい」のかを説明してはいないのが難点だ。非常に胡散くさい。多くの市民にとって一番重要な部分について十分な説明をしてはいないのだ。一庶民の立場としては、そのようなコメントの根拠は何なのかについても知りたい。北茨城市は福島県いわき市の南側に位置している。上述のように、いわき市での甲状腺がんの発症率は通常の40倍にもなったと報告されている。放射能の汚染が福島県と茨城県の県境の北側と南側で突然大きく変化した、あるいは、汚染が突然なくなったとは到底考えられない。
北茨木市での甲状腺がんの発症との関連では、2013年1月12日に放映された「NHKスペシャル 空白の初期被ばく ~消えたヨウ素131を追う~」は国が解明しなかった事故直後のヨウ素131による甲状腺の被ばくは原発の北西部に位置する地域においてだけではなく、南部においても被ばくが起こったことが容易に推測されると報告している。科学者たちが報告した中で特に重要な点は下記の事項だ。
◆ヨウ素被ばくは福島県だけには限らない。
◆ 成人のデータから推測すると、18歳未満の子供たちは50ミリシーベルト前後のヨウ素被ばくを受けた可能性がある。
◆ ヨウ素131の放出総量は20.6京ベクレルと推定される。
これらの知見が何を意味しているのかと言うと、日本政府は福島県だけではなく近隣の県においても小児甲状腺がんの検診を実施しなければならないということだ。これは素人の目にも明らかである。
ここに衝撃的な記事
[注5] がある。
福島県立医科大学では身内だけでヨウ素剤を服用していたことが分かっている。ヨウ素剤の配布をめぐって福島県立医大の倫理観を問うた週刊大衆誌「フライデー」の2014年3月7日号が事の発端だ。その一部を下記に転載してみよう。
『だが医大内部資料によると、医師たちは秘かにヨウ素剤を飲んでいた。医大は、県から4000錠のヨウ素剤を入手。ー号機が水素爆発した3月12日から配り始め、多いところでは1000錠単位で院内の各科に渡していた。しかも、医療行為を行わない職員の家族や学生にも配布。資料には「水に溶かしてすぐに飲むように」と、服用の仕方まで明記されているのである。
「事故が発生してから病院に来なくなった医師もいて、動揺が広がっていました。院内の混乱を鎮めるために、上層部がヨウ素剤の配布を決めたようです。しかも服用を県に進言していない手前、配布については箝口令が敷かれていました」(医大職員)
当時の国の基準によるとヨウ索剤の服用が助言されるのは、1歳児の甲状腺被曝線量が積算で100ミリシーベルトになると予想される場合だが、後に公表された試算値(3月12日~4月24日)では、原発から30km以上離れた伊達市でも、この水準を超えていたことが分かっている。県立医大の医師たちは、なぜ4000錠ものヨウ素剤を自分たちだけで飲んでしまったのか。医大は院内関係者のヨウ素剤服用は事実だとし、こう主張する。
「情報やデータがないなか、医療機関として最後まで現場に残らなくてはいけないという認識のもと、職員の動揺を抑える目的で医大教職員と家族への配布に踏み切りました。学生に配布したのは、不安が広がっていたためです。箝口令を敷いた理由は、国や県から服用指示の基準が住民に明確に示されないなか、医大が独自の基準を作ってしまうことになるからでした」(広報戦略室)
ヨウ素剤を管理する福島県地域医療課は、当初事実を確認できないとしていた。だが入手した資料を提示すると医大への配布を認め、あらためて当時の課長が次のように説明した。
「ヨウ素剤は、福島第一原発から50km圏内にある各自治体に配備しました。住民への配布を指示しなかったのは、判断するデータがなく踏み切れなかったからです。医大へ配ったのは、(多くの放射線を浴びる)被災地へ出向く医師などを対象としたもの。医大が家族や学生にまで配ったのであれば、疑問を感じます」』
上記の記事の中でもっとも重要な点は福島県の職員が「住民への配布を指示しなかったのは、判断するデータがなく踏み切れなかったからです」と言っている点ではないだろうか。労働安全衛生総合研究所の上層部は「自主的な調査を控えるように」との指示を流す代わりに、「総力を挙げて放射能データを採取しよう」と、職員全員に向けてハッパをかけるべきであったのだ。
日本にとって不幸なことには、一言で言えば、福島原発事故における小児甲状腺がんの多発は人災以外の何物でもないということだ。
(6) ヨウ素131の総放出量の推計:
事故後4年半が経った今、ヨウ素131の総放出量の推計が試みられている。
その報告書によると、著者らは東電や政府が発表したデータを外部の研究者から得られるデータを用いて補正を行い、ヨウ素131の総放出量を推計した。福島原発からのヨウ素131の放出量は2655ペタベクレル(上限値)であったと推定された。これは、日本政府推計160ペタベクレルの16.6倍である。
上記に引用したNHKスペシャルによって報じられたヨウ素131の放出量は20.6京ベクレルであった。20.6京ベクレルは206ペタベクレルに相当することから、この市民と科学者の内部被曝問題研究会による推計値はNHKスペシャルが報じた値の12.9倍となる。
この市民と科学者の内部被曝問題研究会の数字を、チェルノブイリ事故でのヨウ素131の放出量(国連科学委員会の推計)と比較してみよう。チェルノブイリでのヨウ素131の放出量は1760ペタベクレル(上限値)であった。従って、福島原発事故によるヨウ素131の大気中への放出量はチェルノブイリを上回り、その約1.5倍となる。福島原発事故は世界でも最悪の事故であったということである。
これらの数値を見ると、政府が当初公言していた「チェルノブイリ事故での放出量の約10分の1に過ぎない」という説明は完全に捨てざるを得ないことが分かる。したがって、福島県やその隣接地域では今後15-20年間に、チェルノブイリ周辺地域と同様に、多数の甲状腺がんが発症する可能性を否定することはできない。
(6) 事故当時の緊張感はどこへ行ってしまったのか?
原発事故が起こると、人の手ではまともに対応ができないのが現実の姿である。まともな判断をすることを不可能にする最大の要因は、何と言っても、政治的な思惑や判断が加わることである。一度政治的判断が絡むと、地域住民がもっとも必要とする健康被害対策さえもが歪曲され、疎かにされてしまう。そういう現実を福島原発事故を通じて皆が体験することになったのである。
チェルノブイリ事故の歴史を見ると、低線量地域でも数多くの甲状腺がんの発症が見られる。しかも、発症が止まったわけでもない。今後、福島県だけではなく関東一円でも甲状腺がんが急増する可能性は否定できない。このような状況は、元はと言えば、初期の段階における放射線被ばくに関する基礎データの欠如に由来している。その結果、適切な判断をより困難にし、政府や県の対応は常に後手にまわってしまっている。
原発事故から29年が経過したチェルノブイリでは短時間の現地訪問ツアーが行われているという。セシウム137の半減期は30.1年であるから、放射線強度が約半分になって、現地を短時間の訪問が出来るようになったわけである。年間のツーリストの数は1万人にもなるという [注7]。しかし、チェルノブイリ周辺に住民が戻り、毎日生活をすることができるようになるまでには100年も200年も必要とするのであろう。210は1024となる。つまり、セシウム137の場合、放射能汚染が千分の一のレベルに下がるには約300年を必要とする。
原発のメルトダウン事故の恐ろしさは計り知れないほどの長期の影響をもたらすことにある。核廃棄物の地層処分についてその方法論を確定できないでいる理由は、基本的には、放射線の何万年にも及ぶ半減期に由来する。メルトダウン事故の恐ろしさはこの核廃棄物の処分に見られる技術的な困難さと重なり合う。
つまり、人類は放射能そのものに対処する技術的な術を持ってはいないのである。
どう見ても福島原発事故の収束作業は「コントロール下にある」とは言えそうにはない。このまま現状の改善が進まないでいると、5年後と言えども依然として融解した炉心の位置がどこにあるのかさえも正確には分からないままであり、汚染水は太平洋へ垂れ流し、放射能による食品の汚染に懸念を抱きながら食事をし、2020年の東京オリンピックを開催しなければならない事態になるのではないだろうか。そのような中で、外国からやって来る選手や観光客をいったいどうやって「おもてなし」をするのだろうか?
最後に付け加えておきたい点がある。
YouTube動画サイトで、「ますますひどくなっていく、いまそこにある危機と欺瞞」(https://youtu.be/8Yd2v2yvtJM)にアクセスし、東京大学アイソトープ総合センター長の児玉龍彦教授の専門家の立場からの報告や意見を是非ともご覧願いたいと思う。子供や妊婦の健康を確保しなければならないとする児玉龍彦教授の進言には非常に説得力があり、我々素人にも分かり易い。健康被害を避けるための施策に関してはこれ以外にもたくさんの情報が入手可能である。私自身も、読者の皆さんと一緒に1件でも多くの有用な記事や情報に接して行きたいと思う。
参照:
注1: 福島第一原発、透視撮影もあるべき場所に燃料見当たらず - 1号機と2号機で炉心融解が決定的: 2015年03月21日、www.scienceplus2ch.com/archives/4989680.html
注2: Does Potassium
Iodide Protect People from Radiation Leaks? Mar/15/2011, www.scientificamerican.com
> ... > Ask the Experts
注4: 北茨城市で3人の子どもに甲状腺がんの診断、千人に1人の有病率! それでも子どもの健康調査を拒む安倍政権の棄民政策: 2015年8月27日、lite-ra.com > リテラ > 社会 > 社会問題
注5: ヨウ素剤を身内だけで内服していた福島医科大学: 院長の独り言、2014年5月1日
注7: Holiday in the
death zone: How nuclear disaster-hit Chernobyl now has TEN THOUSAND tourists a
year: By Katie Amey, MailOnline, Apr/21/2015
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