2014年6月7日土曜日

まさに信じがたい - 遺伝子組み換え作物に反対する人を黙らせようとしたシンジェンタ社の対応


種子や農薬を主製品とするアグリビジネスではモンサントやデユポンに次いで世界でも第三位にある企業、シンジェンタがこのようなことをしていたとは言語道断である。信じられないことが行われていた。これはドイツでの話だ。
最近の報道 [1] によると、シンジェンタ社の遺伝子組み換え(GMO)トウモロコシが2000年にドイツのある酪農家に深刻な問題を引き起こした。乳牛に不妊や病気が起こり、死亡する例さえもあった。また、子牛には先天異常が発生したという。
そして、もっとも衝撃的なことは、この酪農家にGMO作物による問題が生じた後にシンジェンタ社が見せた対応の仕方だ。
日本でも、分野がまるっきり違うけれども、福島原発事故では「安全神話」が脆くも崩れた。当事者である東京電力の事故後の対応には多くの国民に不満を感じさせ、将来に対する不安を抱かせている。今でも、その不安は払拭されてはいない。
企業倫理の崩壊という範疇で見ると、これらふたつの事例はまったく同類だ。洋の東西を問わず、企業倫理はいったい何処へ行ってしまったのだろうか?

それでは、この報道を仮訳し、下記に示したいと思う。 

<引用開始>
GMO種子の企業がドイツのある酪農家を黙らせようとして如何なる対応をしたのかが当事者の酪農家によって公表された。このインタビュー記事はRT紙の社説の対向ページに掲載された。
ドイツの酪農家、ゴットフリート・グレックナーは自分が受けた脅迫や中傷について聞き手のウィリアム・エングダールに語った。挙げ句の果てには、英国・スイスの多国籍企業であるシンジェンタ社が供給したトウモロコシのGMO種子が彼所有の受賞したことのある一群の乳牛や農地を台無しにしてしまったことに関する訴訟を彼が取り下げることを断ったことから、彼は不当な留置さえも喰らう始末だったという。
2年間の刑務所暮らしの後、彼は世界中で自分の体験談を語って、GMO種子が如何に危険であるかを一般の人たちに伝えようとしている。
ウィリアム・エングダール(WE): グレックナーさん、私たちふたりはあなたが刑務所へぶち込まれる前から知り合いとなっていますが、あなたが合法的に自分の話を公衆の前で話せるようになったのはつい最近のことでよね。それでは、まず背景について簡単に話していただけませんか? 
ゴットフリート・グレックナー(GG): 「実質的に同等」という原則の下でEUでは遺伝子組み換えの「ラウンドアップ・レデー」大豆の販売が開始されましたが、その1995年以降、私は作物に関するGMO技術に深い関心を抱いていました。1997年にシンジェンタのGMOトウモロコシ(Syngenta Bt176)の商業的な販売がEUで認可された時、新しい技術に興味を抱いていた酪農家の私はシンジェンタのBt176を自分の農地で栽培してみようと決心したのです。
WE: シンジェンタのGMOトウモロコシの種子はどのように作付けしたのですか?
GG: Bt176のトウモロコシの作付面積を毎年少しずつ増やして行きました。自分の農地から収穫したサイレージ用トウモロコシやトウモロコシ穀粒を乳牛用として100%供給するまでには数年かかりました。
WE: それでは、シンジェンタ社のBt176 GMOトウモロコシだけを乳牛に給餌し始めてからどんなことが起こったのかを話してください。
GG: 2000年に私は不妊の事例を始めて観察しました。死亡した乳牛も何頭かありましたし、深刻な先天異常の子牛もありました。 
WE: そうした状況にはどんな対処をしたんですか?
GG:  私は土壌やGMOトウモロコシのサンプルを持ち込んで、公的な検査を行って貰うように手配しました。何回も検査を行いました。検査結果は致死的な影響の原因はGMOトウモロコシにあるということを示していました。シンジェンタがノースカロライナの研究所で行った検査では「Bt毒性物質」を発見しませんでしたが、同一のサンプルに関して同一の検査手法を用いてドイツの研究所で行った検査ではBt毒性物質が8300 ng/㎎も検出されたのです。
WE: ドイツで行われた検査では他に何か見つかりましたか? 
GG: ドイツの研究所で行った検査によると、必須アミノ酸の量がトウモロコシ穀粒では重量比で24%も低く、サイレージ用トウモロコシでは8.8%も低下していました。この低下は乳牛用の餌としては致命的な問題です。これらの結果から、EU委員会による認可の基礎となっていた従来の作物と「実質的に同等」あるいは等しいというのは嘘であることが判明したのです。 
 

Photo-1: AFP Photo / Lionel Bonaventure
 

WE: メデアは著名なロバート・コッホ研究所もあなたのサンプルを試験したという事実を重く見ていましたよね。どうだったのでしょうか?
GG: あの当時のドイツの監視・認可当局であるロバート・コッホ研究所は私のシンジェンタGMOトウモロコシの試験については何らの要請もしては来ませんでしたが、その代わり、私が乳牛の血液中にBt毒性物質を発見した方法に関して、彼らに詳しく説明するようにと言われました。
WE: あなたの乳牛や農地がシンジェンタのGMOトウモロコシによって受けた損害については査定が行われました。で、その結果は?
GG: シンジェンタ・ドイツのCEOであるハンス・テオ・ヤックマンと一緒に、2002年の4月に損害に関する報告書を作成することになりました。この作業には乳牛の損失額、必要となった代替用穀物の費用、分析や獣医に対する支払い、ミルク生産の損害額、等が含められました。シンジェンタは50万ユーロの損害総額に対して43千ユーロを払ってくれただけです。残りは現時点になっても私への支払いを行ってはいません。
WE: この話に終止符を打つために彼らはあなたに「ピーナッツ」を支払った、とドイツの銀行家のヒルマー・コッペルは言いたかったようですが、あなたの側としてはそれで終わりになったんでしょうか?
GG:  シンジェンタは私のサイレージにしたGMOトウモロコシ(Bt176)の措置に関しては実際に推奨文書を作成しましたが、「未収穫のトウモロコシについては何もしてはくれませんでした。」 彼らは私の気を引こうとしてあの手この手の約束を持ちかけてきました。新品のハーベスター機械、新築の家、新しい職場、あるいは、旅行プラン… 私はそういった申し出でをすべて断りました。正当な対応ではないからです。 
WE: 大企業であるシンジェンタやGMOのロビー団体に対してあなたは何年にもわたって厳しい闘いを続けましたよね。何故ですか? 
GG: 彼らのGMO技術には純粋に技術的な問題があったということを彼ら自身が認め、その後のGMO製品からは毒性物質の問題を排除するという決意を私は最終的にシンジェンタから聞きたかったのです。実際には、その代わりに、私が政府の高官や地方政府ならびに民間のグループに招かれ、ヨーロッパ中でシンジェンタBt176についての自分の体験談の話をした後に、私は法的な攻撃を受けました。
WE: シンジェンタはどんな反応をしたんですか?
GG: 問題の解決に関するわれわれの最後の交渉が決裂した後、そして、シンジェンタの代表者が「損害の総額を半々で持ち合おう」と私に提案した後に、私がそれを断った時私を呼び止めてこう言ったのです。「あんたの結婚はうまく行っているのかい?」 そこで、言い返してやりました。「シンジェンタと結婚しているわけじゃないよ!」と。 
WE: これは異様ですね。何故シンジェンタはあなたの個人的な生活についてまで踏み込もうとしたんでしょうか?
GG: 離婚手続きの最中に、元の妻が家(17歳、15歳と13歳の3人の子供は私と一緒に生活していました)を出ていってから突然新しい弁護士が彼女の代理人となりました。この弁護士は業界のロビー活動家が推薦したのです。この弁護士を通じて、彼女は私が婚姻内での強姦を犯したとして新たな訴えを起こしたのです。この訴えについては医師の報告書もなく、心理的評価も行われず、他の人からの信ぴょう性のある発言は何もありませんでした。単に彼女の訴えだけでした。それでも、あの訴えのせいで私は「庶民の名において」直接刑務所へ送られました。その後、私の刑務所入りのいきさつが州の検察官の目に留まり、私は早目に刑務所から釈放されたのです。
WE: 彼らは他の反対派の農家の人たちに対する見せしめとしてあなたを利用したかったんでしょうか?それとも、他の理由からでしょうか? 
GG: 私は顧客である農家のひとりとして喋らなければなりませんし、私はノヴァルテス・シンジェンタの被害者でもあるのです。この会社が用いた手法は信じられないほどひどいものでした。私が刑務所に入っていた時、債務不履行の命令が二回も出されたのです。私は一度所定の金額を支払いました。その後、もう一度、その金額が土地登記簿に記入されました。私自身の弁護士を通じてすでに解決済みであったにもかかわらず、先方の弁護士は法的強制力のあるコピー文書を入手したのです。
法的な権利を失った私の農地で彼らは新会社を設立しました。私の事務所や家は何回も侵入され、書類や機械類ならびに電子機器類は盗まれました。
さらには、ドイツの関税当局とは5年間にもわたって闘わなければなりまんでした。
彼らは私の銀行口座を差し押さえ、私はもはや「証明書を所持するミルク生産者」ではないとの議論の下で4年も遡ってミルクの代金を払えと私に要求してきました。これは「ミルクの供給量を保証する支払いの規定」によるものです。これらはすべてが私が「GMOは含まれてはいません」という表示ラベルが付いた原料中にもGMOの存在が認められるいう証拠を公表した時期のことでした。  

Photo-2: Reuters / Arnd Wiegmann
 

WE: ドイツの関税当局との法的な争いはどんな結果となりましたか?
GG: 2011年の911日にカッセルの特別商事法廷で勝訴しました。私は自分で弁護をしました。その結果、私は625128ユーロを勝ち取りました。 
WE: とは言え、ドイツでは多くの政治家たちがGMOの作付を増やせと言っています。このような発言は責任のある発言でしょうか? 
GG: 2004年にシンジェンタが自分たちのGMOは失敗だったと宣言をした後のことでしたが、メルケル首相がドイツ国内にGMO作物を導入する強力な支援者であることを知って、私は大変驚きました!ところが、もっと驚かされたことがあります。それはミュンヘン工業大学が行ったGMOの研究が(非常に不正直な話ですが、結果を肯定的に示すために)改ざんが行われていたことが判明したのです。公に発覚した結果、2009年の4月にはGMOトウモロコシである「モンサント810」はドイツの消費者保護大臣、イルゼ・アイグナーによって禁止となりました。
WE: 結局、ドイツ政府はあなたに何と言いましたか?
GG: 前は存在してはいなかった法人組織が私の農地に設立されましたが、この事実はドイツ最高裁によっても認定されました。でも、政府は依然としてこう言いました。「グレックナーさん、あなたに起こってしまったことは非常に極端なことです。政府はこの新技術を支援します。」 
考え得るすべての事や手続きを総動員することによって連中をその気にさせ、連中は法律を破りました。これらすべては私が被った損害に関して法的な訴えを起こさせないためのものでした。
WE: これらの出来事はすべてがドイツの遺伝子組み換え技術の賠償責任に関する法律に抵触するのでは?
GG: その通りです。「GenTG」法第32条の賠償責任の条項はGMO種子の製造業者に対して明確に賠償責任を規定しています。それによると、「遺伝子組み換えが行われた生物によって人命が失われ、人体や健康に損傷が与えられ、なんらかの損害が生じた場合はその製造者はいかなる損害をも償う責任がある。」 国家の法的命令も然りです! 
WE: あなたはGMOの危険性やご自身の恐ろしい経験を伝えるために世界中を旅してきました。こういった行為は今や世間ではほとんど見ることができませんが、これは純粋な意味で「市民としての勇気」だと言えます。
GG: はい。私は国際会議で話をするために世界中を歩き回っています。目にすることができる成果を体験できて今はとても幸せです。2005年に、「遺伝子組み換え技術のないスイス」を目指して市民が企画した住民投票が実施されてから、ヨーロッパではGMOの作付はほとんど行われてはいません!ロシアはGMO作物の輸入をすべて禁止しました。中国は無許可のGMO製品を積み込んだ穀物輸送船を米国へ送り返し、あるいは、焼却するよう命令を下しました。
WE: シンジェンタに彼らの側の言い分を喋って貰うためにも公開の場での討論を実施してはどうでしょうか?
GG: 壇上で私とシンジェンタのCEOが討論し合うことができるようにシンジェンタのCEOをお招きしたいと思います。私自身も話をする予定であった201310月の国際会議ではシンジェンタは予定していた参加を取りやめにしました。その後でもあるだけに、二人が登場することができれば、それは確かに興味深い会議になるだろうと思います。 
WE: GMOの危険性に絡んで家畜やわれわれ自身の生か死かにかかわる情報に関して、読者の皆さんはどうしたら最新の情報を入手できるのでしょうか。
GG: わたしのウェブサイトでは常に情報を更新していますが、ほとんどがドイツ語です。
WE: グレックナーさん、どうも有難うございました!
注: このコラムに収録されている意見や見解は著者自身のものであって、必ずしもRTの意見や見解ではありません。
<引用終了> 

当事者のグレックナー氏の話を辿って行くと、企業側が多くの金を注ぎ込んで、あの手この手を使ってグレックナー氏に脅しをかけた様子が窺える。言語道断だ。それにしても、不幸にして理不尽な対応を受けることになった当事者であるグレックナー氏の不屈の闘志には脱帽だ。彼は「善良な市民」であるばかりではなく、「闘う市民」でもある。見上げたものだ。
彼の体験談が大きく世論を動かしたと言えるのかどうかはまったく分からないが、今や、ドイツ、フランス、イタリア、等ではGMO作物は禁止されている。
ひとつだけお断りをしておきたい。引用した記事の中には「庶民の名において」という表現がある。「庶民の名において」一人の市民を刑務所に送り込むとはどういうことだろうか?西部劇に出てくる「リンチ」を連想してしまった。現代の法制度の下ではこのようなことはもちろん存在しない。正直言って、この意味は私にとっては十分に理解ができなかった。専門家のご意見をお聞きしたいと思う。
 

     

ヨーロッパでのGMO作物の認可・非認化はさまざまな経緯を経て、現在は、EUとしては認可の手続きのみを行い、実際に作付けを許可するかどうかは各国が独自に決めることになっている。その結果、EU圏内ではGMO作物の作付を認める国と認めない国とがモザイク模様を織り成している。
また、この引用記事でもお分かりのように、ドイツではメルケル首相はGMO支持派でありながらも、消費者保護大臣はGMO反対派である。同一政権内でこのように意見が分かれている理由はドイツ政府が1党独裁ではなく、連立内閣であることから来ているようである。
ドイツとならぶ農業大国であるフランスでは、GMO作物は冷遇されている。モンサントの昆虫耐性を有する「MON810」というGMOトウモロコシ はEUのレベルでは認可されてはいるが、本年55日のフランス上院の反対にあって、フランス国内では作付が出来なくなった。フランスが作付けを禁止した理由は環境への悪影響である。左派系のフランス政府は懐疑的な意見に支配された世論と環境保護派の動きを反映して、GMOには反対の立場である。
米国に比べると、EU圏では、総じて、GMO作物に対しては批判的だ。そんな状況を反映して、モンサントは既にEU圏で認定されているGMOトウモロコシである「MON810」を除いては、新規の認定申請は行わないと決定した。ヨーロッパ市場からの撤退である。これは昨年の717日に報道された。
また、EU圏内の各国間の対応はそれぞれの国情を反映して長い間意見の相違が残されており、分裂した状態であったが、この2月にはそれが再度表面化した。「パイオニア1507」と称されるデユポンのGMOトウモロコシを認可するか、認可しないかに関して各国間で統一的な結論を得るには至らなかったのだ。
GMO作物が家畜や人間の健康に悪い影響を与えるのかどうかについては今後も論争が続きそうである。本当に安全であると言い切れるまでは、活発な論争が必要だと私は思う。  

 
参照:
1Syngenta methods of silencing GMO opposition are unbelievable: By William Engdahl, RT, May/15/2014, http://on.rt.com/yfwt3v

 

 

2014年6月2日月曜日

モンサントの除草剤と腎疾患との関連性


「モンサントのラウンドアップは致死的な腎疾患を引き起こしているのかも」との表題を持った記事 [1]2月末に現れた。
今までにも除草剤や遺伝子組み換え(GE)作物が新たな環境破壊物質となっているのではないかとする懸念はさまざまな形で報告されている。
しかしながら、たとえば、ある除草剤を使用したが故に健康を害したとしてその除草剤の製造者・販売者に対して製造物責任を法的に訴えようとしても、法廷闘争の場では原因物質と健康被害との直接的な因果関係を裁判所が満足する程度にまで特定できない場合、法的な訴えを起こすこと自体が難しい。通常の農業では何種類もの農薬が使用されていることから、特定の農薬に関して健康被害との因果関係を明確に示すことは農業の現場では至難の技となる。一方、この状況は製造者側にとっては非常に好都合だとも思われる。
私の印象では、今回の記事で報告されている「ラウンドアップ」という除草剤と腎疾患との関連性ほど健康被害を環境汚染の観点から報告した事例は今までにはなかったのではないかと思う。そういう意味で、本件は非常に重要な報告であると思う次第だ。
そこで、本件を今日のブログのテーマにしたいと思う。
ただし、ここに引用する報告が科学的に十分に信頼できるのか、製造元であるモンサントはこの報告に関してまともに反論をすることができるのか、あるいは、裁判所がこの報告書を科学的な証拠として取り上げてくれるのかどうか、等については関連分野の専門家のさらなる究明や環境改善努力に委ねるしかない。誰もが納得できる結論が出るまでには長い時間が必要となるかも知れない… 

      ♞       
それでは、当記事を仮訳して、下記に引用したいと思う。 

<引用開始> 


Photo-1: スリランカのコロンボ郊外で水田を耕す農夫
 (Reuters / Andrew Caballero-Reynolds)

今まで世界のさまざまな場所で、特に、貧しい農家が多い地域においては致死的な慢性腎疾患に襲われる農夫が後を絶たなかった。そして、その原因を説明することができないままであった。最新の研究によると、この種の慢性腎疾患はバイオ化学大手のモンサント社が製造し、販売している「ラウンドアップ」と呼ばれる除草剤とその地域で使用されている硬水との相乗作用が原因ではないかとのことだ。この新しい研究成果は専門誌、International Journal of Environmental Research and Public Healthに発表された。
ラウンドアップ、または、その成分であるグリホサートが硬水、あるいは、土壌中に天然の状態で含まれているヒ素やカドミウムといった金属、あるいは、肥料の一部として添加される金属と結合した場合、その毒性が非常に高くなるというメカニズムが提案された。硬水はカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、鉄、その他の金属を含むことが多い。グリホサートはそれ自体が毒性を持っているものの、それは腎臓細胞を死滅させるほど強力な毒性ではない。
グリホサートの分子構造は、1970年代初頭、モンサント社によって除草剤として特許化された。その後間もなく、同社はこれを「ラウンドアップ」という名称で市場へ送り出し、この除草剤は今や世界中でもっとも多く使用されている。
ここに提案された仮定は世界中で見られるようになった不思議な「原因不明の慢性腎疾患」(CKDu)を説明するのに非常に有効だ。たとえば、スリランカ北部の水田地帯ではこのCKDuの発症が数多く見つかっている。また、エル・サルバドルではCKDuは男性の死因の中では二番目に多いという。
本研究によると、この疾患と関連する数多くの観察内容が合理的に説明できるようになったとのことだ。たとえば、患者の96%は「地表に近い、浅い井戸から供給された硬水、または、非常に硬度の高い水を少なくとも5年以上にわたって使用していた」ことが判明している。
CKDuは約20年前にスリランカ北部の水田地帯で初めて発見された。それ以降、その状況は急速な広がりを見せ、今やその地域の労働人口の15%に相当する40万人に影響を与えている。CKDuで少なくとも2万人が死亡した。
2009年、スリランカの厚生省はCKDuの基準を導入した。基本的に、CKDuは慢性腎疾患によく見られるリスク要因である糖尿病や高血圧、糸状体腎炎、あるいは腎炎を伴わないという事実を同省が発見した。
CKDuは地理的および社会経済的な要因と関連しているという事実から、環境的ならびに職業的な要因がこの疾患を解明する糸口になるだろうと推測されていた。本件の場合、化学品が原因だった。
この新たな研究報告によれば、世界保健機構も、CKDuは硬水を消費することや飲み水の量が少ないこと、ならびに、高温への暴露と関係することに加えて、ヒ素やカドミウムおよび殺虫剤への暴露によって引き起こされるということを見い出していた。しかし、なぜスリランカの特定の地域で発症したのか、なぜ1990年代の中ごろ以前には発症しなかったのかについては明快に説明することができないでいた。
研究者たちは1970年代後半のスリランカにおける政治的な変革が農薬、特に、稲作用の農薬の導入に繋がった点を指摘した。12年間から15年間にわたって「低濃度の腎臓を損傷する化学物質」へ暴露され、やがては同化学物質は体内へ蓄積され、1990年代になってCKDuの発症を招いたのではないかと推測されるとしている。
研究者たちは、この原因物質あるいは化合物「X」はある特定の性質を持っている筈であると推測した。研究者たちが仮説をたてた化合物は、約20年から30年まえに初めて導入された物質であること、硬水と接触して安定した化合物を生成すること、腎毒性を持った金属を含んでおり、その物質は腎臓へ移送されること、幾通りかの暴露の形態、すなわち、皮膚または呼吸器からの吸収が可能であること、等が想定された。 
これらの要因はスリランカで頻繁に使用されていたグリホサートが原因物質であることを示唆した。それ以前のいくつかの研究によると、典型的なグリホサートの半減期は土壌中では47日とされているが、「金属イオンとの強固な化合物」が生成されると、生分解するのに最長で22年もの期間を要する、とこの研究は指摘している。
科学者たちはグリホサートと金属との化合物(GMCs)への暴露として三つのステップがあることを解明した。つまり、重金属で汚染された水や食品が摂取され、体内で循環している間に皮膚や呼吸器経由で体内に入ったグリホサートと接触し、GMCsが生成される。
たとえば、稲作に従事する農夫は皮膚への付着や吸入、あるいは、汚染された水の摂取、等によってGMCsへの暴露のリスクが高まる。GMCsは通常見られる肝臓の解毒作用のプロセスからは巧みに逃れているようで、その結果腎臓そのものが損傷を受けることになる、との知見を本研究が報告した。
さらには、エルサルバドルやニカラグア、コスタリカおよびインドにおいても頻発している原因不明の腎疾患とも関連があるとの指摘もしている。
Center for Public Integrity は、最近の5年間で見ると、エルサルバドルやニカラグアにおいてはCKDuによる死者数は糖尿病やエイズならびに白血病の三つの原因を合わせた死者数を上回る程になってい、と報告している。
[訳注:Center for Public Integrityは米国の非営利系ジャーナリストの団体。調査報道を維持することが非常に困難となった商業主義のジャーナリズムに対する不満が高まり、チャールズ・ルイスを中心としたジャーナリストらによって1989年にこの団体が設立された。この種の試みとしては世界でも初めてとも言われている。米国の大統領選挙では選挙運動への資金提供の上位50社(団体)を公表し、政府の政策と資金の出所との関連性を分析する等、公共のための調査報道に力を入れている。]
<引用終了> 

ラウンドアップという除草剤の成分であるグリホサートが水の中に含まれている金属と化合して腎臓に有害な化合物を生成していたこと、典型的なグリホサートの半減期は土壌中では47日とされているが、「金属イオンとの強固な化合物」が生成されると、生分解するのに最長で22年もの期間を要すること、等が解明されたことは素晴らしい。これで、他の有力な説明が出て来ない限りは、「原因不明の慢性腎疾患」(CKDu)とその原因物質であるグリホサートとの関係が解明されたということになる。
スリランカでの「ラウンドアップ」除草剤の健康被害については国家的な救済が必要であることは明白だ。健康被害と除草剤との因果関係がようやく明確になってきた今、行政側は被害者の救済のために次のステップへ踏み出すことが求められる。 

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フランスでは、2012年、モンサント社はある農夫に生じた発芽前除草剤「ラッソ」による中毒症状の件で敗訴した。
当時の記事 [2] によると、小麦の栽培農家であったポール・フランソワ(47歳)は2004年にモンサント社の「ラッソ」という除草剤を誤って吸引した後、記憶喪失や頭痛ならびに言語障害を含む神経障害に悩まされた。製造元のモンサントが適切な警告表示をしなかったが故に、彼は除草剤を吸引してしまい、さまざまな障害に悩まされることになったと主張した。この主張は特定の除草剤と健康被害との関係性を裁判所が認めた非常に稀な事例となった。
フランソワの件は他の訴訟案件とは違っていた。除草剤の噴霧装置のタンクを掃除している際にラッソを吸引してしまった、と彼は述べている。つまり、彼は具体的に健康被害の原因を特定することができたのだ。
除草剤によって神経系に障害が起こり得ることは公知の事実ではあっても、特定の除草剤との因果関係を確立できない限り、通常、訴訟には勝ち目がない。原因と結果との間に科学的な因果関係が確立されてはいないという論理が裁判所では支配的となるからだ。この状況は、国際原子力機関が放射能の被ばく量と特定の健康被害との間に数値的な因果関係が確立されない限りは放射能によるものであるとは認めたがらない構図とどこか非常によく似ている。 
好むと好まざるとにかかわらず、利害が相反する当事者間では事実認識に隔たりが生じるのが常だ。 

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除草剤や殺虫剤の機能が作物に組み込まれると、これらは遺伝子組み換え(GE)作物と称される。
GE作物を食品に使用するには消費者の安全性が最大の関心事となる。最近、家畜の飼料用として認可されていたGEトウモロコシである「スターリンク」が食品に混入していることが米国で判明した。
2012918日、市民団体「地球の友」が米国において市販のタコスからスターリンクを検出したと公表した(米国においては、食品にスターリンクの持つ殺虫性たんぱく質Cry9Cは含まれてはならないとされている)。これを受けて、企業による製品の自主回収、スターリンクの作付け中止、米国政府による2012年産スターリンクの買い上げ等の一連の措置がとられた。 

ここで、殺虫作用を持つ「Cry9C」というたんぱく質の機能を確認しておこう。Cry9C はトウモロコシの害虫である毛虫の腸内でさまざまな部位に結合し、その細胞を破壊する。こうして、殺虫効果を発揮する。しかしながら、このたんぱく質は他の動物には作用しないという。 

開発業者であるアベンティス社がスターリンクの栽培認可を自主的に辞退したため、1012日付けで米国環境保護庁(EPA)は栽培認可を取り消した。こうして、米国ではスターリンクの作付けが2013年以降は中止となった。 

GE 食品には殺虫作用や除草作用を呈する物質(タンパク質)が常に付きまとう。この物質が人間の体内に取り込まれた時アレルギー症状を起こすかどうかがもっとも重要な点である。また、アレルギー症状は個人の体質に依存すると見受けられ、因果関係が科学的に解明できるのかどうかは消費者側にとっても大きな関心事である。
ある研究者自身に言わせると、最大の難関はどうやってGE作物を生産している企業から独立して研究をすることができるのかという点だそうだ。素人のわれわれには理解しにくいことであるが、ある研究者の報告によると、下記のような状況だそうだ [3] 

<引用開始>
…バイオテク産業は、どちらかと言うと、外部に対して巧妙で非常に高度な制御機構を設けており、これによって彼らの製品が独立した研究にさらされることを防いでいる。
「その通りです。研究をしようとする人にとってはさまざまな困難がつきまといます」と彼女は言う。「通常は、研究を実施するための資金の確保に集中します。でも、試験の対象である材料を確保しなければなりません。この場合は、遺伝子組み換え種子となりますが、試験用のGE種子を入手すること自体が結構難しいのです。」 
農家の人たちが作付けのために必要な種子を購入したい場合、「技術使用者合意書」に署名しなければなりません。それらの種子に関して署名者が何らかの研究をすることは許されず、研究のために他人へ譲ることも許されないのです。 
基本的には、何か別の合法的な方法を模索する必要があります。私たちはそうしましたが、かなりの時間が必要となりました。他の手法としては、業界へ出向いて、「種子を少し分けていただけませんか?」と依頼する必要があります。私たちもそうしました。種子を入手するために私たちに提示された条件は、ほとんどの場合、企業から公正に種子を入手できるような条件ではありませんでした。』…
<引用終了> 

上記の引用例に見られるように、バイオテク産業は商業的に自衛するためにそうしているのだろうが、これがGE作物に関する第三者の独立した研究を妨げている大きな要因となっているという。このような状況を知ることによって、バイオテク産業を取り巻いているひとつの現状をよく理解することができる。企業側と農家との間で現在行われている商業的な手続きを続行することによって、企業側にとっては技術的な面で外部からとやかく言われないで済むという具合だ。企業側にとってはこの上なく好都合なことだろう。
しかし、この状況は食品の安全や安心を確保する上で不必要なハードルを設けてしまっている。このままでは、消費者には産業界の言うことしか伝わらず、第三者の独立した研究者からの科学的な研究活動が排除されたままとなってしまう。非常に理不尽だ!
個々の企業や業界の透明性を高め、消費者の健康を積極的に守るという毎日の生活の中でももっとも基本的な条件を整えるには上記のような状況が継続してはならないと。今後このような状況が起こらないようにするには、企業側の義務を明確に規定し、規定に違反した場合には罰則を科す法律を制定するしかないと思う。
ところで、2013年、モンサントはヨーロッパから撤退したとのことだ。これはヨーロッパの消費者が抱いている「GE作物は安心して食べることができるのか」という非常に基本的な疑念に応えるだけの情報を消費者や環境保護に熱心な勢力に対して提示することができなかったということを意味する。これがGE作物の現状ということのようだ。 
 

参照:
1 Monsanto's Roundup may be linked to fatal kidney disease, new study sugGEsts: By RT, Feb/27/2014, http://on.rt.con/do84uy
2: Monsanto guilty of chemical poisoning in France: By Catherine Lagrange and Marion Douet, Reuters, Feb/13/2012, www.reuters.com/.../us-france-pesticides-monsanto-...
3: Large Pig Study Reveals Significant Inflammatory Response to Genetically Engineered Foods: By Dr. Mercola, May/18/2014, articles.mercola.com/sites/.../gmo-foods-inflammation.aspx