あっという間に終わりを告げた早春の花、「ギオチェイ」(日本語では「待雪草」、英語では「スノードロップ」)に代わって登場したのは「ヒナギク」だった。ごくありふれた草花のひとつだ。とは言え、雪が消え去り、冬空に慣れてしまった目には春の陽光がひどく眩しく感じられるこの頃、ヒナギクはあちらこちらで咲き乱れる。場所を選ばないかのようだ。開花している期間もはるかに長い。
そんなヒナギクの写真を掲載してみたい。これはブカレスト市民の多くが足を運ぶヘラストロウ公園で最近撮影したもの(3月26日)。とりとめのないことを彷彿とさせてくれた。
この2~3年、続けて二回もアルフォンス・ミュシャの絵を鑑賞することができた。
一昨年ブカレストへ来る途上ウィーンで二泊した。目的はベルヴェデーレ美術館。そこでグスタフ・クリムトの作品を見たかったからだ。多くの人たちが語っている装飾的な金の輝きが独特な印象を与えてくれた。肖像画ばかりではなく、風景画も素晴らしいことが分かった。そして、会場の一角にはミュシャの作品が展示されているではないか。縦長の大きな4部作だった。今になってみると、この出会いは翌年に起こったより本格的な出会いの前奏曲だったような気がする。
昨年の夏、高崎市にアルフォンス・ミュシャ展がやってきた。
この画家が表現する女性像には独特な雰囲気がある。女性が持つ特有の優しさ、そこから生まれてくる美しさ、あるいは、女性美への飽くなき賛美・・・とでも言うべきか、表現するべき言葉がままならない。最も秀逸だと思えた作品は「夢想」と題する作品だ。何といっても、この作品が醸し出す透明感がすばらしいと思う。圧倒されるような印象だった。結局、この開催期間中に2回も足を運ぶことになった。
この会場で求めた書籍(「アルフォンス・ミュシャ作品集(新装版)」、創英社/三省堂書店、2004年)を紐解くと、たくさんの作品の中に画家自身の個展のために制作したポスターがある(その下絵を引用すると、下記に示すような感じだ)。白い花の冠が少女の髪を飾っている。ミュシャ自身の個展のためのポスターであることから、このポスターには個人的な感慨が色濃く反映されているようだ。この白い花はヒナギク。ヒナギクには作者の故郷、チェコのモラヴィア地方での青年期の思い出が込められているのだという。
出典:「アルフォンス・ミュシャ作品集(新装版)」
創英社/三省堂書店、2004年
「サロン・デ・サンでのミュシャ展のポスターの下絵」
1897年、水彩、70.0x49.0 cm
|
突然のようにやってきた早春の暖かさは気ままな空想を妨げる筈もなく、むしろ空想を際限なく膨らませてくれているようだった・・・
0 件のコメント:
コメントを投稿