2014年8月24日日曜日

ウクライナ紛争の本質は石油利権だ - ブレジンスキー戦略の背景

ウクライナ紛争の背景を論じる評論は多かれ少なかれズビグニューブレジンスキーが1997年に発刊した書籍(The Grand Chessboard)で提案した戦略を言及することが多い。

彼はこう書いている:「ウクライナはユーラシアを巡るチェス・ゲームにおいて新たに登場するが、非常に重要である。同国を独立した国として維持することがロシアの対応を変化させることになり、地政学的には状況を逆転させる機能を持つ。ウクライナを抜きにしては、ロシアのユーラシア帝国としての存在は終りを告げるしかない。」
ウクライナでは、この2月、選挙で選出された政権がクーデターによって倒され、それに代わって新政府が樹立された。この新政権では米国が指名した人物が首相の地位に就いた。米国が国益を追求する時手段を選ばない。今回のウクライナでの新政権の樹立には極右派あるいはネオナチの活動家を使った。2月の下旬、キエフの街頭では反政府デモの参加者ばかりではなく警察官が狙撃され、双方に多数の死者が出た。その時、発砲をしたのは政府側ではなくて、デモを組織し、その指揮をとっていた反政府側によるものであることが判明している。
シリアでは、アサド政権を倒そうとして米国やサウジアラビアならびに西欧はアラブ過激派に武器や資金を注ぎ込んだ。911同時多発テロ後に始まった対テロ戦争ではアルカイダの組織がであった。しかし、シリアのアサド政権を倒そうとする米国と西側諸国はアルカイダの一派を使った。
一方、ウクライナではアルカイダの代わりに極右派やネオナチの活動家を使った。そして、今も、彼らを使っている。
ウクライナ南東部の反政府派を鎮圧するためにウクライナ政府軍と並んで特殊部隊が投入されている。地元の人たちの報告によると、無線や地上で聞こえる言葉としてウクライナ語やロシア語ばかりではなく、英語が聞こえてくるそうだ。この英語を話す連中は何処からやって来たのだろうか?言うまでもなく、米国が背後から操っているのだと言えよう。
何故米国はウクライナへの執着を持ち続けるのか?
もっとも説得力のある説明は米国の覇権を維持するためである。経済的に、あるいは、国際政治の舞台で新たに台頭しつつあるロシアや中国は世界を相手に覇権を維持したい米国にとっては邪魔な存在であるのだ。
ウクライナ危機を巡っては様々な見方や分析あるいは解説が行われている。このブログではそれらをご紹介してきたが、それらの背景にある大きな構図としては、米国による一極支配、つまり、世界に対する揺るぎない覇権を維持するためにウクライナに親米傀儡政権を築き、それを足掛かりとして米国はロシアを弱体化させようとしていることが明確に読み取れる。
ひとつの記事がこの5月の始めに現れた [1]。今日はそれを引用したいと思う。同記事は「ウクライナ紛争の本質は石油利権に尽きる。それはブレジンスキーがかって述べた戦略を踏襲したものだ」と解説している。
それでは、同記事を仮訳して、その詳細を皆で共有したいと思う。 

<引用開始>
ステーブン・キンザー [訳注:米国の作家であり、ジャーナリストであり、また研究者としても知られている。新著に『政権転覆:ハワイからイラクまで「体制転換」のアメリカ百年史』がある(2006年)] の弁: 「米国はウクライナの崩壊において全面的なパートナーとしての役割を担った」 - ボストン・グローブ紙
1991年に旧ソ連邦が崩壊した時点から、米国はロシアの包囲を執拗に推進してきた。この動きは仮想敵国としての中国やイランに対する動きと同様である。かってはモスクワ政府の盟友であった中欧の12か国をNATOに加盟させた。米軍は今やロシアの国境線に直接接している… このウクライナ危機は部分的には冷戦以降米国がロシアに対して採用し、政策として採用してきたゼロ・サム・ゲームがもたらしたものだ。その根本思想は、ロシアの損失は何でも米国の勝利に繋がり、ロシアにとって有利なことは米国にとってはすべてが不利になるという考え方にある。これは対立を深めるばかりであって、決して鎮静化する動きにはならない。」 
ミュンヘン安全保障政策会議でのウラジミール・プーチン大統領の弁(20072月):
『われわれはロシアのヨーロッパ寄りの地域にあった重火器を撤去して、それらをウラル山脈の裏側に移設した。そして、30万人の武装兵力を削減した。われわれの側はヨーロッパにおける「適合通常兵力条約」(Adapted Conventional Armed Forces TreatyACAF)によって要求されている他の幾つかの段階もこなしてきた。しかし、それに対応するヨーロッパ側の施策としてわれわれが見たものは何だったのだろうか?東欧は新兵器を受け取り、新たにふたつの基地がルーマニアとブルガリアに設置された。また、ふたつのミサイル関連施設が建設されている。そのひとつはチェコ共和国のレーダー施設、もうひとつはポーランドのミサイル発射装置だ。われわれは「いったい何事が起こっているんだ?」と自問する。ロシアは軍備を一方的に削減している。われわれが自分たちの側から軍備を縮小した場合、われわれは、当然のことながら、われわれのパートナーの側もヨーロッパにおいて同じことを前向きに実施する様子を見たい。ところが、ヨーロッパには新たな兵器システムが投入されている。もちろん、われわれとしてはこのことを憂慮せざるを得ない。』
ファシストが主導するクーデターに対して支援をするというオバマ政権の論拠は水曜日にはもろくも崩れた。その日、EUの外相であるキャサリン・アシュトンとエストニアのウルマス・パエト外相との間の電話による会話が不正侵入され、その内容がリークされた。「キエフのマイダン広場で反政府デモの参加者に向けて発砲した狙撃者はヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領の側に属しているのではなくて、反政府デモの指導者の側に属している」ということが分かった。この新事実の発見が如何に重要であるかは論を待たない。何故かと言うと、オバマ政権は新たな替え玉の政府を支持する理由として反政府デモの参加者の殺戮を挙げているからだ。今や、新政府のメンバーは無実の市民を殺害する行為に関与していたのかも知れないということになった。この新たな情報はオバマ大統領はキエフでのクーデターを起こした連中に対する支援をやむを得ず撤回することに繋がるかも知れない。そうすると、ロシアをクリミアから撤退させるというオバマ政権の計画やNATOをウクライナにまで拡張するという計画は頓挫する。下記にRussia Today 紙の記事を簡単に記してみよう:
エストニアの外相は彼がEU外相と交わした電話の内容は正しいということを確認した。ウルマス・パエト外相はキエフでデモの参加者や警察官を殺害した狙撃者はマイダン広場のデモ指導者に雇われていたと述べている。 
その会話では、パエト外相は「背後から狙撃者を操っていたのはヤヌコヴィッチ大統領ではなく、新たに生まれた連合勢力の誰かであるという現状認識が強まるばかりだ」と強調した。
エストニア外務省はそのウェブサイトに声明を掲載し、パエト外相とアシュトンEU外相との間の電話内容がリークされたが、そこに記録された内容は「信頼の置けるものだ」と述べた。 (Russia Today紙のEstonian Foreign Ministry confirms authenticity of leaked call on Kiev snipersを参照)
本当であるという信念の下に、英国のガーデアン紙は基本的な事実関係を網羅する記事を報道したが、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストならびに主要なテレビ局はまったく何も報道しなかった。米国のエリート・メデアはオバマ政権ならびにその盟友である欧州諸国が民主的に選出された政権を転覆させるために市民の殺害に直接関与した極右勢力を支援していることを一般大衆の関心から隠そうとして連携し、ニュースを隠ぺいしたのである。同記事からさらに引用してみよう: 
「…背後から狙撃者を操っていたのはヤヌコヴィッチ大統領ではなく、新たに生まれた連合勢力の誰かであるという現状認識が強まるばかりだ」と、パエト外相は言う。「同一の筆跡や同種の弾丸。そして、実に厄介なことには、彼らは、つまり、新連合政権は何が実際に起こったのかを究明しようともしない点だ。」(ガーデアン紙のUkraine crisis: bugged call reveals conspiracy theory about Kiev snipersを参照)
調査は行われないだろう。何故かと言うと、調査を実施すると真実が暴露されて、キエフに傀儡政権を樹立しようとしているオバマ政権の計画を台無しにすることになりかねないからだ。キエフ新政権はすでにワシントンの意図に従うことを意思表示している。具体的に言うと、ウクライナの労働者たちには窮乏政策を課し、さらに強力な搾取者であるIMFを通じて公債の所有者であるベルリンやブリュッセルの大金持ちへ利益をもたらし、ベルリンの壁が崩壊した後に父ブッシュがロシア側と交わしていた合意に違反してロシアの国境にまでNATO組織を拡張し、「新世界秩序」を妄想するズビグニューブレジンスキーが書いた書籍「グランド・チェスボード」に記載された世界規模の覇権を追求することがその意図である。これらが今日の政策の主要目標であり、これらには不正行為や犯罪行為がついてまわることになる。
電話の盗聴という決定的な証拠が暴露されたが、あれはちょうど米国高官が東ヨーロッパでの軍事的影響力を拡大する積りであることを明らかにする数時間前のことだった。ワールド・ソーシャリストのウェブサイトによると、こうだ: 
「チャック・ヘーゲル国防長官は、ペンタゴンはポーランドでNATO軍の共同訓練を行い、バルト諸国ではNATO空軍によるパトロールを強化する。…米軍の高官は6機のF-15 戦闘機とKC-135 輸送機を配備したと述べた… 誘導ミサイル・フリゲート艦テイラーはソチ・オリンピックの期間中黒海の海域をパトロールしていたが、その後、今も、トルコの黒海の港に係留されている… 
トルコの高官は、トルコは米国海軍の軍艦がボスポラス海峡を通過し、ウクライナと接する黒海に入ることに対して許可を与えた事実を認めた。(ワールド・ソーシャリスト・ウェブサイトの(“Amid Ukraine crisis, US launches military escalation in Eastern Europe”から)
また、Russia Todayの報告によると、米海軍の誘導ミサイル駆逐艦トラクストンは黒海に向かっており、その目的は、ある高官によると、「日常的な」展開に過ぎないと言う… 同駆逐艦には約300名が配されており、2月中旬に米国を出航した空母を中心とした空爆グループのメンバーである。(RT紙の“US navy confirms missile destroyer USS Truxton approaching the Black Sea”から)
「日常的な展開」だって?ロシアとの戦争を誘発することが「日常的」な行動だとでも?この余りにも控えめな言い方については良く議論しようではないか。
核戦力を保有する二大強国の間で緊張が高まる中で軍事的激化が起こっており、これは相互不信を増大させている。ヘーゲルの展開はオバマ政権の思想的なボスであるズビグニューブレジンスキーが何日か前にワシントン・ポストの紙上で述べたモスクワを敵にまわす提案に符合している。「何をするべきか?ウクライナにおけるプーチンの侵略に対しては対応が必要だ」と題した記事でブレジンスキーが言いたかったことはこうだ: 
…西側は素早くウクライナの新政権を正当なものだと認めるべきだ。新政権の合法性がうやむやのままに放置されていると、プーチンにクリミアで見せたロシアのおかしな動きを繰り返させるようなものだ…
…西側は次のことを伝えるべきだ。つまり、自国の防衛能力を強化するためにウクライナは西側からの迅速、かつ、直接の支援を頼りにすることができるという点をだ。プーチンの念頭にはウクライナへの侵略は長期にわたって費用がかさむ状況になるということに関して疑念の余地があってはならない。また、ウクライナ人には自分たちが窮地のまま置き去りにされるという恐れを抱かせてはならない。
当面は、NATO軍は危機管理計画に沿って厳戒態勢を維持するべきである。米軍の空挺部隊を直ちにヨーロッパへ派遣するといった高度の即応態勢を見せることは政治的にも軍事的にも意義がある。西側が衝突を避けたいとするならば、中央ヨーロッパにおいてさらに冒険主義的な戦力を使用した場合には結果として何が起こるかに関してクレムリンには曖昧さを見せてはならない。(ワシントン・ポスト紙の“What is to be done? Putin’s aggression in Ukraine needs a response”から)
「冒険主義者」だって?ストレンジラブ博士 [訳注:この「ストレンジラブ博士」はNATO欧州連合軍の最高司令官である「ブリードラブ将軍」をもじったものと思われます] は自分の推奨内容が判断の間違いによって熱核戦争に帰結する可能性を増加させ、NATOや米国ならびにモスクワを一触即発の危険な状況に放り込む場合、彼はクレムリンを冒険主義者と名付ける。でも、これはまったくお互いさまではないだろうか?
ブレジンスキーの論説が示す論調を聞いてみよう。多くの人たちがこの著者を控えめで、明晰な戦略家と見なしているが、幾つかの短い文章の中で彼はプーチンを悪党、マフィアのボス、ムッソリーニ、あるいは、ヒットラーと呼んでいる。私の想像では、もしも彼が他にも文章を書く機会があったら、彼のリストには悪霊の「ベルゼブブ」も追加されるのではないだろうか。
これはもう政治ではない。ヒステリーだ。大衆を焚き付け、国家主義の火を煽ろうとする扇動的で対外強硬主義的なたわ言である。まさにこれはイラクへの軍事侵攻を導いたあの独善的な狂乱と同種のものである。
ブレジンスキーはいったい何を言おうとしているのか?
クリミアでの出来事は米国の安全保障に脅威を与えると言っているのだろうか?われわれの大きな鼻を大統領にとって都合のいい場所であるならばどこへでも突き付けて、地球上の如何なる場所においてでも米国は自由にモンロー主義を適用するべきだと彼は言っているのだろうか?
クリミアの問題は米国とは無関係だ。クリミアでの戦いにはわれわれは関心がない。ブレジンスキーが言いたいことはユーラシアへの軍事的侵攻であり、これはパイプライン回廊と油田地帯のことであり、これはロシア帝国を崩壊させ、新世紀のために多国籍企業やウオール街の投資銀行をアジアに配置しようとするものだ。そして、最終的には、これは大理石の棺に送り込まれる前に、精神病的ではあるが、新世界秩序における世界規模の覇権の姿を見たいと願うひとりの老人が演じる欲に駆られた聖戦である。これがすべてだ。栄光に満ちた新たな世界規模の混乱が起こり、シンクタンク貴族が抱く悲惨でうじうじした夢があちらこちらで語られる。彼らの生涯におけるたったひとつの目的は他人の子息が兵士として戦わなければならない戦争を開始することにある。
ウクライナを「西側連合」株式会社に加入させることはブレジンスキーのマスタープランの中ではもっとも重要な点である。基本的な戦略はベルリンの壁が崩壊した時点から進行していた。当時、米国からやって来たネオリベラル派の詐欺師たちは旧ソ連邦を奪略し、ロシアを政治的には崩壊させ、経済的には貧窮化させた。あれ以降、米国の対露政策はあからさまに敵対的となり、石油資源が豊富な同国を包囲するためにありとあらゆる手段を講じたのである。また、ロシアの周辺には核ミサイル施設を配備した。今、ワシントンはウクライナではファシストの支援によるクーデターを活用して、ロシアには自国の安全保障にとっては死活的な地域に対する影響力を放棄させようとしている。
ここにステーブン・コーヘン氏とのインタビューの抜粋がある。同氏はニューヨーク大学のロシアに関する研究や歴史を専門とする教授であって、月曜日にPBS [訳注:米国の公共ラジオ放送局] のニュース番組に出演した。コーヘン教授の解説は米国とロシアとが向かい合って実際には何をしようとしているのかを理解する上で役立つと思う: 
「今日われわれが目にすることは歴史上最悪である。新たな冷戦の突然の襲来によってヨーロッパは西側と東側に引き裂かれる。今回は遠く離れたベルリンにおいてではなく、ウクライナを真っ二つにし、ロシアとの国境のすぐ側での話だ。これは不安定さを招き、われわれの子供たちや孫たちにとっては何十年間にもわたって戦争の脅威におののく暮らしが続くことだろう。公式の筋書きではプーチンを悪者として扱い、「これは彼がやった」と言う。しかし、端的に言って、それは真実ではない。要は、これは20年前にクリントンがロシアに向かってNATOを拡大し始めた時から始まったもので、その動きが今も続いているのである。
今日もっとも基本的な課題はこういう点だ。数年前にプーチンが非常に明快に述べた点ではあるが、そのひとつは旧ソ連邦の一員であったグルジアにある(プーチンはNATOのグルジアへの拡大は許そうとはしない)。もうひとつはウクライナにある。われわれはこれらふたつとも侵犯した。グルジアでは2008年に戦争となった。そして、今はウクライナにおいてだ。これは米国とヨーロッパがプーチンが示した「超えてはならない一線」をわれわれが越してしまったからだ。」(PBSニュースから) 
コーヘン教授の考えでは誰を非難するべきかという点については何らの疑念もない。言うまでもなく、ワシントンだ。
こうして、われわれは板挟みの状態に陥っている:プーチンは自国の安全保障にとって死活的な課題を放棄することは出来ず、ワシントンは今まで以上にウクライナをヘンリー・キッシンジャーが言うところの「協力的で国際的な枠組み」(別名、世界的な資本主義のルール)へ招き入れようとしている。これでは、やがては戦争が起こることを意味する。
木曜日にはクリミア共和国の議員たちは同地域がロシアの一部になるかどうかに関して住民投票を行うとして全会一致で賛成票を投じた。住民投票は10日以内に実施される。しかしながら、オバマ大統領はすでに住民投票の結果は認められないと表明している。ここで明らかになったひとつの点は、他の国々にとっては、自分たちが投票を行う前に、まずは米国から青信号を貰う必要があるという点だ。何と馬鹿げた状況になったものか! 
2008年、中央アジアにおける米国の偽らざる動機についてブレジンスキーはある記事の中で自論を開陳した。その記事はハフィントン・ポスト上で公開され、内容はグルジアでのひと騒動についてである(グルジアではプーチンは南オセチアのロシア語を喋る住民の安全を確保するためにロシア軍を投入した)。ブレジンスキーが言いたかった内容を下記に示してみよう:
「国際社会が今向き合っている課題は、より大きな帝国主義的な意図をもってあからさまに武力を行使するロシアに対して如何に立ち向かうかということだ。つまり、ロシアはかって旧ソ連邦の影響下にあった地域をクレムリンのコントロール下に収めようとしており、グルジアを通過するアゼルバイジャンのバクーからトルコのジェイハンに至るパイプラインの管理権を取得することによってカスピ海や中央アジアへの西側のアクセスを遮断しようとしている。
大雑把に言って、利害関係は非常に深刻だ。資源は少なくなる一方であり、より高価になっていることからも、石油資源へのアクセスは重要である。また、大国が新たな独立した世界においてどのように振舞うかということも非常に大切であり、その振る舞いは武力によってではなく、順応と合意に基づくべきである。
もしもグルジアの政権が転覆されると、西側はカスピ海や中央アジアから遮断されるというだけではない。プーチンは、もしも何らの抵抗も受けないとするならば、ウクライナに対して同様の戦術を使うだろうとわれわれは論理的に推論することができる。プーチンはすでにウクライナに対して公然と脅威を与えている。」 (ハフィントン・ポスト紙上にブレジンスキーが投稿した“Russia’s invasion of Georgia is Reminiscent of Stalin’s attack on Finland”から)
何ということだ!ブレジンスキーは石油資源は彼自身のものであると考えているみたいだ。あるいは、石油は西側の大手原油開発企業に属しているとでも思っているのかも知れない。そんな風に読み取れないかい? 
つまり、われわれはここで一国の安全保障とか主権、あるいは、影響圏について論じているのではない。実際に論じている内容は「原油へのアクセス」である。そればかりではなく、ブレジンスキーは、「西側」は他国の国土にある資源についてさえも正当な要求をすることが出来ると単刀直入に表明している。いったい何処からそのような考えを持って来たのだろうか?
2008年のカフカセンター・ドット・コムにおける別のインタビューでは、ブレジンスキーは同じ警告を発したけれども、その時はいささか語調を変えていたようだ。「ロシアはグルジアを不安定化させようとしている」と題した記事の概略を下記に示す:
「米国はロシアによる脅威の可能性を目撃したとブレジンスキーは言った。それは領土的な野心によるものではなく、バクーからジェイハンまでのパイプラインについて管理権を取得するという意図によるものだ。」 
「もしもグルジア政権が不安定化したら、バクーやカスピ海ならびにその先へのアクセスは限定的なものになるだろう」とブレジンスキーは言う。「ロシアはこれらの市場での独占状態をさらに強化しようとするだろうし、ヨーロッパやバルト諸国へのエネルギーの供給を政治的な動機から停止するような場合も含めて、現存する政治的ならびに経済的なすべての手段を動員することだろう。」 
「ロシアは中央アジアの地域を世界経済、特に、エネルギー供給へのアクセスから意図的に孤立化させようとする」と、この政治学者は考えている。(kavkacenter.com掲載の“Zbigniew Brzezinski: ”Russia tends to destabilize Georgia”から) 
プーチンは誰かを孤立化しようとはしていないし、誰かのパイプラインを横取りしようともしてはいない。彼はロシアの大統領である。彼は石油を売って稼ごうとしているが、これがこの世の仕組みなのだ。これを資本主義と称する。しかし、問題の石油は彼ら自身のものだ。天然ガスも彼らのものだ。われわれのものではないのだ。諦めるしかない!
自分を偽らないで欲しい。要は、すべてが石油なのだ。石油と権力。米国の帝国主義的野心はすっかり石油にまみれ、石油のコントロールに集中している。石油なしでは、帝国は存在せず、ドルによる覇権もなく、弱小国を蹴散らしたり、貢物を強要するような高慢で無法者の軍部が存在することもない。石油は同帝国で標準言語として使われる新造語であり、世界規模の覇権に至る進路そのものなのである。
プーチンは大胆にもロシアの国土の下に存在する石油はロシアのものであると思っている。ワシントンはそのことに関するプーチンの考えを変えたいと思っている。この状況こそがウクライナ危機が如何に深刻であるかを物語るものだ。石油に対する飽くなき渇望がわれわれをもうひとつの戦争へと駆り立てている。 
著者のマイク・ウィトニーはワシントン州に居住。彼はHopeless: Barack Obama and the Politics of Illusion と題する書籍に寄稿している(AK Press)。このHopelessキンドル版でも入手可能。彼との連絡にはfergiewhitney@msn.comをご利用ください。

<引用終了> 

もっとも興味深い点は、この引用記事の冒頭にも記されているように、作家であり、ジャーナリストであり、研究者でもあるステーブン・キンザー「米国はウクライナの崩壊において全面的なパートナーとしての役割を担った」とはっきりと述べている点だ。これは選挙を通じて民主的に選出されたヤヌコヴィッチ大統領を追い出して、極右翼やネオナチが閣僚の一部となっている親米傀儡政権を登場させたのは米国であると言っているのだ。この認識と、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストならびにBBCといった欧米の大手メデアが口を揃えて喧伝して来た「ロシアが悪い、プーチンは悪党だ」という大合唱との間にはまさに巨大な隔たりがある。この隔たりの大きさには呆れるばかりである。また、大衆を操ろうとするこのメデアの大合唱はイラク戦争への突入の前夜を思い起こさせる。
正直言って、私はブレジンスキーの書籍「The Grand Chessboard」を読んではいない。しかし、ここに紹介されている彼の言動を見ると、米国の戦略的な政策立案者としはトップにあると見られている彼の考え方にはとてもついて行けそうにもない。
ロシアの国土にある石油に対して米国の石油資本がアクセスできないと言ってわわめき散らしている姿が明確に描き出されている。これこそがいわゆる新資本主義の実態であり、覇権国特有の傲慢な振る舞いであるとも言えよう。新資本主義と植民地主義との間にどれだけの違いがあると言うのだろうか。本質的には何らの違いも見い出せない。
ネオコン政治家に重用され、主要メデアに登場するズビグニューブレジンスキーはいわば最強の御用学者ということのようだ。 

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日本を取り巻く国際政治のことを考えると、沖縄や他の地域にある米軍基地を巡る米軍将兵の犯罪に対する治外法権、あるいは、環太平洋経済連携協定におけるISD条項、等には米国が覇権を維持するための仕組みが満載となっている事実についてもこの際しっかりと認識しておきたい。 

参照:
1Grand Puppetmaster Brzezinski: Directing War Strategies from the Shadows: By Mike Whitney, May/02/2014

 

 

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