11月8日、米大統領選挙の投票が行われた。数日後に判明した投票結果によると、ドナルド・トランプが勝利を手にし、ヒラリー・クリントンは敗退した。
米大統領選の場合、総数538人の代議員のうちで270人以上からの賛成票を獲得すれば勝ちだ。今回の大統領選ではトランプとクリントン候補との間では票が306対232と分れた。大差である。
メディアの間では、今回の大統領選におけるトランプの勝利は「ショッキングな勝利」と形容されている。
何故か?それは、選挙の前日までの熱狂的な報道によると、多くの専門家たちはクリントンが圧勝すると予測していたからだ。クリントン候補のために選挙運動を続けてきた人たちにとっては信じられないことが起こったのだ。CNNとかCBS、ワシントンポストやニューヨークタイムズ、等の大手メディアはショックを受けて茫然自失の体たらくだ。
もちろん、この逆転劇はクリントン支持者(大手メディアを含めて)には途方もない困惑を与え、怒りさえをも引き起こした。しかしながら、この結果は自業自得だとする見方もある。つまり、彼らの困惑と怒りは選挙運動中の過剰なまでの自信や傲慢さが最大の要因であると指摘されている。
本日はそういった見解を代表するひとつの記事
[注1] を読者の皆さんと共有しようと思う。
これはモスクワに住むロバート・ブリッジという米国のジャーナリストが書いたもので、「クリントンの敗北後、傷口を舐めているメディア」と題されている。
<引用開始>
Photo-1:
11月8日、ニューヨーク州のワシントン郡に住むマーヴィン・デレオン(左)はニューヨークのジェイコブ・K・ジャヴィッツ・コンベンション・センターにて民主党大統領候補のヒラリー・クリントンのために行われる投票日夜の大会会場には入り切れず、屋外で立ったまま泣いている。©
Mark Kauzlarich / Reuters
ヒラリー・クリントンが実際にホワイトハウスの座を勝ち取ることができるかどうかに関して視聴者に選挙の模様を報道するという役割においては、米国の主要メディアは大失態を仕出かした。その結果、反トランプの抗議デモに油を注ぎ、抗議行動は第2週に入った。
選挙はいったいどんな違いをもたらしたか。一週間前、米国の大手メディアは向こう見ずにもヒラリー・クリントンはホワイトハウス入りの競争で90パーセント以上の確率をもってドナルド・トランプを下すだろうと予測していた。
ロイターズ/イプソスが行ったえらく間違いだらけの世論調査を引用して、彼らは軽薄な口調で「トランプによる巻き返しは・・・6州か7州でどれだけ多くの白人や黒人、ヒスパニックが投票所へやってくるか、そして、その組み合わせがどうなるか次第だろう」と予測した。 全米で、各地の新聞はこの予測をオウム返しに繰り返して、選挙人団の投票ではトランプ候補は前国務長官には235対303の票差で敗退するだろうと報道した。
[訳注: この世論調査は選挙が行われる11月8日の早朝、ニューヨーク時間の午前3時に発表された。つまり、もっとも最新のデータだった。表題には「クリントンが90パーセントの確率で勝利する」とあった。この引用には「6州か7州でどれだけ・・・」という記述があるが、これらの州は選挙のたびに民主党が勝ったり、共和党が勝ったりするいわゆる「スウィング州」を指している。一方、11月4日のロサンジェルスタイムズはトランプがクリントンを5パーセントも引き離しているとの世論調査結果を報じていた。この調査はロサンジェルスタイムズと南カリフォルニア大学が共同で行ったもの。ロサンジェルスタイムズが伝統的に民主党が強いカリフォルニア州に本拠を置く新聞社であることを考えると、この報道内容は実に興味深い。]
現実からはかけ離れているこの報告は米国がふたつの「別世界」に二分されているという考えを強調し、たとえ真実の姿が何処かにあるとしても、それは中間のどこか望ましい場所に位置しているわけではなく、むしろ遥か彼方の宇宙のどこかにある超空間にでも紛れ込んでしまったかのようで、その実像はまったく分からなかった。
確かに、多くの人たちは「こんなことはいったい可能なんだろうか」と問うていた。つまり、クリントンが269日間も記者会見に応じなかったこと、さらには、(少なくとも、ウオールストリートの銀行家たちがやって来るようなことはない会場で)もっとも小さな会場であってさえもクリントン陣営は入場券を売り捌くことに結構苦労していた。それにもかかわらず、クリントン候補は演説会場である野球場を騒がしい支持者たちで一杯に埋め尽くしてしまう対抗馬を依然として凌いでいるという見方、等々。
このような非常に容易に観察することができる現実があったけれども、クリントンがたった232票を確保しただけの時点に、トランプはすでに290票もの選挙人を獲得したことを知った時、大部分の人たちは衝撃と畏怖の念を覚えた。このニュースを聞いて、世界中何処でも一様に衝撃状態に陥ったが、それはメディアが自分たちの責任を果たすことに失敗したというメディア自身の症状そのものを示すものでもあった。もしも米国の大手メディアが両候補者に関して詳しい報道をしていたならば、誰もトランプの勝利を番狂わせとして受け取ることはなかっただろうし、リベラル派の連中も今選挙に敗れたからと言って、カッとなって、全米で滑稽極まりない適合振りを言い争うような事態にはならなかったに違いない。
大手メディアではトランプは踏みつけにされた負け犬であり、民主党の対抗馬を打ち破る確率は完全にゼロだと見なされていただけではなく、彼は常に否定的な報道を受け取る側に回されていた。ここに事実関係を示すデータがある。トランプが共和党の指名を受けた7月以降、ヒラリー・クリントンに比べると彼は遥かに頻繁に報道されていた。しかし、ここに興味深い点がひとつある。「メディア研究センター」(MRC)の調査結果によると、彼に関する報道の殆んど(91パーセント)は敵対的な内容であった。
そして、両候補者は自分たちの物語のほとんどの部分についてはどちらも秘密にしていたが、大手メディアはトランプが秘密にしていたことを報道するためにテレビで440分もの時間を費やしていた。それに比べて、クリントンの物語を徹底的に報道するために費やされた時間は185分のみであって、トランプよりも多くはない。
たとえば、トランプの「女性の扱い」に関しては、夜のゴールデンアワー・ニュースで102分も費やし、これはクリントンの電子メールを巡るスキャンダルに関する報道(53分)やクリントン財団は政府に口出しをするには寄付金を支払わせる仕組であるとする批判(40分)の総計よりも多かった。確かに、セックス・スキャンダル関連のニュースは関心を呼ぶのは事実であるが、利害関係を考慮して両候補者の間でもっと均衡を図るべきであった。
これらの数字を踏まえて言うと、明らかに、米国のメディアは視聴者に対して両候補者について公正な、徹底した議論を提供するよりも、むしろ、ヒラリー・クリントンを押すことに注力していたと言える。事実、全米の地方紙の中でいったい何紙が米国の第45代大統領になるために行われたトランプの選挙運動は支援しなかったかを理解すれば、彼の勝利は惨敗の憂き目から奇跡的に救出されたのだとさえ言えよう。さて、この勝利は決して驚きではないけれども、いわゆる「驚異的」なトランプの勝利を受けて、リベラル派はメディアがもたらした混迷状態からようやく目を覚まし、今や反トランプを叫ぶ街頭デモに繰り出している。
Photo-2: バノンに関する反動。トランプが彼をブレーンのトップに据えたことには異論が殺到。
次の事を考えてみて欲しい。ヒラリー・クリントンは、ニューヨークタイムズ、ロサンジェルスタイムズ、シカゴサンタイムズ、ニューヨークデイリータイムズ等を含めて、米国の大手メディアによって公に支持されていた。創立以来30年以上にもわたって大統領選では特定の候補者を支持することはなかった「USAトウデイ」でさえもがクリントンに味方をして、トランプは「大統領職には適しない」と宣言していた。 1857年以来刊行を続けて来たアトランティック誌はクリントンに対して三回目となる支持表明を行った。一方、トランプはラスヴェガス・リビュー・ジャーナル(日刊で、発行部数は175,000部そこそこ)を大手メデイアの支持者として甘受しなければならなかった。
要するに、もしもゴライアス対デイヴィッドのようなスタイルでメディアの巨人に対して挑んで行ったこの選挙戦がソーシャル・メディアの活用に長けたトランプ向きではなかったとしたら、彼の選挙中のメッセージは支持者の大半に届くことはなかっただろう。
しかしながら、この並外れた能力を持ったトランプのことはさておき、全米のムードをしっかりと読み取っていたのは共和党員で下院議長を務めたニュート・ギングリッチだった。これは誰にでも見て貰いたいのだが、フォックス・ニュースの超苛立たしいメーガン・ケリーとのインタビューで、トランプは世論調査を叩きつぶそうとしても、結局は大敗に終わるだろうとする彼女の的外れの示唆をギングリッチは冷やかに退けている。
ケリーはインタビューの始めに誘導的な質問をした。「ホワイトハウスを目指す選挙戦でドナルド・トランプが負け、共和党が上院の過半数を割るとすれば、これは共和党が人選を誤ったということになりませんか?」
相手が年長者であるにもかかわらずやる気十分のケリーを避けて、ギングリッチはその攻撃を封じ込め、スリーポイントシュートを決めてしまった。「これからの二週間がふたつの別世界の間の競争となる。世論調査によると、あなた方はヒラリー・クリントンがアフリカ系の米国人の間でバラック・オバマが実現したような素晴らしい出足を今回も実現するだろうと期待している。けれども、そのようになるとは私は思ってはいない。ワシントンポストとABCニュースとの共同世論調査結果があるが、彼らはその結果が気に入らなくて、8パーセントもの票を削ってしまった。勝算はどちらか・・・ 私が思うには、彼女には勝ち目なんてない。」
ふたりの会話がトランプが10年ほど前に喋ったという例のセックスの話題で満載の「ロッカー・ルーム」談議に移ると、ニュース番組は、クリントンの電子メールスキャンダルに比べて、比較にならない程多くの時間をこの話題に費やしている、とギングリッチが言った。ケリ―は厚かましくも美辞麗句で飾った質問をして、ギングリッチを遮ったが、この時、彼女は反則を犯した。「もしもトランプが性犯罪者だとしたら・・・?」 彼女はこの質問を終わらせることもできず、その時点から彼の名人芸が始まった。ギングリッチは明らかに立腹していた。「ヒラリー・クリントンはブラジルのある銀行で非公開の講演を行い、22万5千ドルもの謝礼を受け取り、その講演では彼女の夢は国境を解放して、6億人が米国へやって来ることだと喋ったが、彼女の発言は報道には値しないかのようだった。ところが、3大テレビ網はトランプのスキャンダルに関してはどうして一晩に23分も費やしているのだろうか」と逆に質問して、それに応戦したのだった。
ギングリッチはケリーに講義を垂れることによって自分の言いたかったことには決着をつけた。これは大手メディアのすべてにも適用することが可能だ。彼はこう言った。「あんた方はセックスの話には夢中になるけれども、公共の政策に関してはどうでもいいんだね。」
トランプが大手メディアの世論調査結果や評論家に挑み、ホワイトハウス入りを確保した今になって、この選挙期間中にはメディアは無責任な報道をしていたばかりではなく、彼らの主たる責務はヒラリー・クリントンを支援することにあって、視聴者に公正な情報を提供することではなかったという事実が一般大衆にも良く分かっていたことをメディア自身が理解し始める時がようやくやって来たのだ。
「あのように異常で、予測が困難な選挙を終えて、今は次のような疑問が残されている。トランプの非伝統的な振舞いや人となりがわれわれや他の新聞社をして米国の選挙民の彼に対する支持を過小評価させてしまったのだろうか?米国の如何なる勢力あるいは歪が我が国を二分し、あのような選挙結果をもたらしたのだろうか?もっとも重要な事は、新大統領が執務を始める時、謎だらけのままである大統領はいったいどのようにしてこの国を統治していくのだろうか?」
この発言はまったく的外れだ。これはニューヨークタイムズが自社の公的機能を完全に見誤っているという事実を示すものだ。選挙民の間における特定の候補者に対する人気度をメディアが過小評価しているかどうかを判断するには、メディア自身がどんな衣装をまとっているかに関心を寄せるべきではない。彼らの仕事はグミベアのように一般大衆の好みに迎合することではない。彼らの仕事は投票する市民が投票所で正直な意思決定をすることができるように、各候補者に関して公正で均整がとれた情報を提供することである。それにもかかわらず、民主主義はジェスチャーゲームと化してしまい、メディアの報道内容は彼らがクリントンの「影の選挙運動チーム」の一部として機能していることを示したのである。今、彼らは大失態の現場を押さえられて、本当に赤面している。あるいは、実際に自分たちが行った報道を信じているのであろうか?
ニューヨークタイムズ紙のいわゆる謝罪記事を読んでも、米国の大手メディアに対する私の信頼感は回復しなかった。むしろ、昔の最悪の記憶をよみがえらせてくれた。同紙は、多分、他紙のどれよりも抜きんでて、イラクの大量破壊兵器の存在を伝える一連の記事を通じて、2003年のイラクへの侵攻を受け入れるようにと米国の一般大衆を騙したのである。同紙が後に自認した調査報道の役割は「当然あるべきレベルに比べても十分に厳密ではなく」、間違った情報に基づいていたのである。
そのような過失が百万人を超す市民に死をもたらした(あるいは、単に殺害を続行するような指導者をホワイトハウスに送り込もうとする)時、「過失」や「謝罪」という言葉が真の意味で適用できるのかどうかについて私には確信がない。そういった言葉に代わって、むしろ、小槌で「ばーん」と机を叩くように、断固として、判事が「有罪」という言葉を宣言している様子が見えてくる。でも、それは私だ。
同様に不注意極まりないスタイルで、ドナルド・トランプは説得力のないメディアにおいてはある種の怪物として面白おかしく祭り上げられた。米国市民はどんな対価を支払ってでも、この生身の大量破壊兵器を回避しなければならないとでも言うかのように・・・ しかしながら、今回は、米国の一般大衆は大手メディアの誘いには乗らなかった。これは2016年の大統領選挙における正真正銘の「番狂わせ」となった。
さらに観察を続けよう:
虚偽や嘘っぱちを見通すことには失敗し、何も気付かずにいた市民、あるいは、クリントンが大統領に選出されるのは確実だとする間違った筋書きを流布することにメディアが大きな役割を演じていたことには何の疑いも持たなかった人々のために・・・
われわれは何かを学び取るだろうか?
注: この記事に掲載された発言や物の見方および意見は純粋に著者のものであって、RTの物の見方や意見を代表するものではありません。
著者のプロフィール: ロバート・ブリッジは米国の作家であり、ジャーナリストでもある。ロシアのモスクワに在住。彼の記事は、Russia in Global Affairs誌、モスクワタイムズ、Lew Rockwell.comおよびGlobal
Researchを含めて、数多くの刊行物で発表されている。ブリッジは企業パワーに関して新著を発表している: 「Midnight
in the American Empire」との表題で、2013年に発刊。電子メール: robertvbridge@yahoo.com
<引用終了>
これで仮訳は終了した。
非常に興味深い内容だ。
この記事を始めて読み、しかも、他の同種の記事には接したことがない人にとっては米国の大手メディアはこんなにも腐敗しているのかと意外に思うかも知れない。しかしながら、これが現実の姿である。
大手メディアが庶民の生活の質を高めることに使命感を置いたジャーナリズムから企業の利益だけを追いかける報道機関に変わってしまったことを見抜きながら、一般庶民は今回の大統領選では自分たちの職場を確保したい一心でトランプ候補を選択した。海外での戦争に明け暮れ、税金を無駄遣いするクリントン候補を見捨てたのである。少なくとも、米国の一般大衆は目を覚ましたのだ。
トランプ大統領候補はこうした選挙運動中のメディアの姿勢には批判的であった。今後のトランプ政権下の4年間、大統領府は何らかの形でメディアに対する新政策を打ち出してくるかも知れない。両者間の攻防戦が見物である。
今回の米大統領選の推移は新しい現象として、今後、ヨーロッパにも飛び火するかも知れない。昨日(11月21日)の報道によると、すでに、フランスでの予備選では前大統領であったサルコジが敗退した。要は、従来型の政治家は票を集められなくなっているのだ。来年はフランスやドイツで大統領選が行われる予定だ。新たな政治の潮流が現れようとしている。どういう結末になるのだろうか?
参照:
注1: American
media licking its wounds in wake of Clinton loss, anti-Trump protests: By
Robert Bridge, RT, Nov/16/2016, www.rt.com/.../367022-us-media-clinton-trump-protest...
いつも,翻訳して頂き,ありがとうございます。大変参考になります。
返信削除P.C.ロバ-ツ氏がアメリカ国内のマスコミを「売女マスコミ」と呼んで憚らないように,彼らは腐っています。買収されたり,何らかの恩恵を受けてのことだと思います。
ただ一つ気になることがあるのです。それは今回に限っての話ですが,どうもアメリカのマスコミはヒラリ-の敗北を知っていたのではないのかということです。確信していたと言ってもいいかもしれません。
その理由は,ほとんどのメディア,マスコミが,本翻訳にもあるように,あることないことを盛んにかき立てるか,その映像を流していたからです。
もし90%以上の確率でヒラリ-が当選するのであれば,その選挙過程で,各地での支持者の反応がそれなりに高かったはずです。持病でヒラリ-が集会に出なかったという話もありますが,日本のマスコミと違って取材が沢山出来たはずですから,支持反応が高いか,低いか判断できたはずです。
支持が高ければ,あれほどネガティヴ宣伝はしなかったであろうにも関わらず,多くのメディアが数ヶ月にわたって,あるいは予備選からトランプ批判をくり返したのは,トランプが勝ちそうだったから,という推測が成り立つわけです。
GS,Citiバンクあるいは米国エスタブリッシュメントがヒラリ-を望まず,トランプ当選を願ったのが実情であれば,彼らの本心を知られたくないがタメに,メディアにそうさせたのではないのか,と推認しているところです。但し,G.ソロスはパ-プル革命を組織してヒラリー勝利を願っていたようで,彼女の敗戦後,25の都市でデモ,暴動を企てたと思います。デモ参加者の半数以上が投票に行っていないという報道もあります。つまりエスタブリッシュメントとソロの願望は,彼らの利益が一致したときもありますが,異なる人物にあったといえるのではないでしょうか。
ところで副大統領のことが全く問題になっていません。大統領-副大統領の組み合わせも考えておく必要があると思います。もしヒラリ-が新大統領になった場合,(2,3ヶ月で)持病が悪化して辞任して民主党の副大統領が新新大統領になる可能性があります。他方,トランプが暗殺された場合も同じです。その結果,副大統領の政策,考えが大きく米国を左右するでしょう。したがって,ほとんどのメディアが新副大統領のことを報道してこなかったことに疑問があるのです。例えば,前々回のマケイン・ペイリン-アラスカ知事との組み合わせはオバマを有利にした面があるからです。
ところで,日本のマスゴミは米マスコミ報道を信じてヒラリ-当選を確信していました。いわば寿司トモが安倍晋三首相に赤恥をかかせたのです。もちろん外務省,駐米日本大使らも罪は同じで,安倍首相が外務省を信じなくなったところですが,あれほど優遇して情報操作を頼んだマスコミ,メディアの寿司トモが首相を結果的に裏切ったことになるわけです。ゴミと称される日本のマスコミですが,全く役に立たないわけではないと,小生は考えるのです。
最後になりますがまとめると,米マスゴミがトランプ落選,ヒラリ-当選を本当に確信していたのか,甚だ疑わしい,ということになります。マスゴミ,○痴メディア全体が予想を外したという主張を聞くたびに,猜疑心深い小生は以上のような感想をいだくのです。
箒川兵庫助様
返信削除興味深いコメントを寄せていただき、有難うございます。
米副大統領の重要性は歴史上でも証明されていますよね。その端的な事例はルーズベルト大統領の死後、副大統領から大統領に格上げされたハリー・トルーマンだろうと思います。
第二次世界大戦が終結する直前、ルーズベルト大統領が死去。副大統領のトルーマンが大統領に昇格し、彼は広島・長崎への原爆投下に関して最終的な決断を下すことになった。
ここで、歴史の裏話が登場して来ます。(この裏話は「オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史(1)」から抜粋したものです。)
4期目の米大統領となったルーズベルトは選挙では苦労しなかった。むしろ、最大の焦点は副大統領の選出だった。圧倒的な人気を誇るウオレス副大統領候補は英領インド、マレーシア、ビルマ、フランス領インドシナ、および、オランダ領東インド、等の植民地人の開放を主張していた。これに憤ったのは英国のチャーチルや外交官、諜報関係者だった。しかし、ウオレスが訪問した南米諸国では歓待を受けた。これは彼個人の名声を高めただけではなく、彼が帰国してから米国政府は南米12カ国がナチドイツに宣戦布告し、20カ国がドイツとの外交関係を断ってくれたのである。ウオレスは米国内でも人気が高かった。しかし、民主党の幹部にとっては彼は余りにも進歩的で、人気があり過ぎた。
ルーズベルトの健康状態は決して良くなく、4期目の4年間をまっとうすることはできないと予測する民主党幹部はウオレスを副大統領候補から外し、党内の保守派の言いなりになる人物と入れ換えることにした。こうして、保守的な民主党幹部は代わりの副大統領候補を探し始めた。
候補者リストを検討した結果、民主党幹部はミズーリ州出身の凡庸なハリー・トルーマン上院議員を選んだ。彼を選んだ理由は彼がその職責に見合う資質を備えていると認めたからではなく、毒にも薬にもならない彼には敵らしい敵を作ることもなく、揉め事を起こす心配もないという確信があったからだった。
こうして、1944年にシカゴで行われた民主党大会は幹部たちの陰謀の最後の仕上げの場と化した。この大会は民主党幹部によって牛耳られた。しかし、下っ端の民主党員は従順に党幹部に従うわけではなく、会場で反乱を起こした。下院議員や他の党員の間ではウオレス支持の声が高まり、勝利まであと一歩にまで迫っていた。フロリダ州選出のクロード・ペッパー上院議員は今夜自分が党公認候補にウオレスの名を挙げれば、ウオレスが大会で勝利をすると確信していた。ペッパーが議員を掻き分けて、マイクに150センチほどまで近づいた時、取り乱した様子のケリー市長が火災の恐れがあると主張し、議長のサミュエル・ジャクソンに休会を宣言させた。
仮に、ペッパーが残りの150センチを進んでウオレスを推薦していたとしたら、ウオレスは1945年に大統領となり、歴史は劇的に変わっていただろう。原爆投下も、核武装競争も、冷戦もなかったかも知れない。一度目の投票ではウオレスが他をリードしていた。しかし、党幹部は裏取引を行った。三度目の投票でようやくトルーマンが勝利した。大使、郵便局長、その他の要職が約束された。現金も飛び交った。
(ここで上記の書籍からの抜粋は終わります。)
70年以上も前の米国では上記のような陰謀が渦巻く社会であった様ですが、その後の米国社会は変わっているのでしょうか?「イエス」とも「ノー」とも言えそうです。
モラル的な尺度で見ますと、すべては「金脈」で動いていると言ってもいいのではないでしょうか?「何処だって同じさ」と言う人もいることでしょうが、米国は並外れていると思わざるを得ません。今回のヒラリー・クリントンの敗因のひとつはクリントン財団だったとの指摘があります。政府に口出しをしたいならクリントン財団に寄付してくれと言われ、外国政府や大企業に寄付を促して来たことが非難されています。その結果、「もしヒラリーが大統領になったらクリントン財団への寄付は個人からのものだけに限りたい」とクリントン財団が宣言をするまでに追い込まれました。今回の大統領選では多くの選挙民によって「彼女の目には一般大衆よりもメガバンクや大企業が大事なんだ」と評価されたようです。
金脈に関して言えば、産軍複合体がもっとも具体的な例だと言えるかも。米国の産軍複合体は「ロシアの侵攻」と称して、有りもしない敵を作り出し、NATO加盟諸国に大量の軍需品を購入して貰いたいわけで、旧ソ連邦が崩壊し、ベルリンの壁が崩壊し、敵のワルシャワ条約機構軍が解体された後20数年も経っているにもかかわらず、NATOはその組織を何がなんでも維持しようとしている。そして、大手メデイアはそれを支持して世界規模の情報操作を行う。これは今や論理の問題ではなく、軍事関連の発注がなくなったら米国の経済(選挙区の地域経済)が回らないという現実から、米国議会の議員たちは次回の選挙を意識して、軍拡を支持しているわけです。彼らにとってはロシアよりも比較にまらない程に大きな敵は実際には「世界の平和」が到来することにあると言えましょう。世界が平和になると、ボーイングやロッキード、ハネウェル、レイセオンといった武器の製造企業は多くの従業員を解雇しなければなりません。各社の業績は急落することでしょう。
世界の魔物を退治してやると言って登場して来た本人が誰も手が付けられないような魔物に変身してしまったのです。
さまざまな情報があり、さまざまな解釈や見解が飛び交っていますが、ある程度の時間が経過しますと、真の姿が浮かび上がって来るのが常です。今回の米大統領選にまつわる数多くの疑問点も霧が晴れ上がるように解明されるのではないかと思っています。ここでは議論できない他の重要な課題も見逃さないよう、アンテナを高く張って注目して参りたいと思います。