2020年1月7日火曜日

新年早々のトランプによるソレイマニの殺害はついにロシアゲートという偽りの筋書きを木端微塵に

イラクの首都バグダットでは新年早々とんでもないことが起こった。

イラン革命防衛隊のコッズ精鋭部隊の司令官であるガセム・ソレイマニ将軍が米軍の手で暗殺された。同司令官は、3日、イラクのバグダッド国際空港から出る路上で乗っていた車ごとミサイルでピンポイント攻撃されたのだ。二台の車が空爆を受けて、10人が殺害され、その中にはイラクのイスラム教シーア派武装勢力の人民動員隊を指揮するアブ・マフディ・ムハンディス副司令官も含まれている。AFPの報道によれば、4日の二人の司令官の葬列には数多くの市民が参加し、イラクのアデル・アブドルマハディ現首相やヌーリ・マリキ元首相も姿を見せたという。この事件は単なる軍の首脳の暗殺ではなく、スレイマニ将軍はイランではNo.2と見られる程のカリスマ性を持っていたことからその反響は予想以上に大きい。イラン政府は国を上げて三日間の喪に服すると宣言した。

軍事的エスカレーションは避けられない模様である。軍事的には、この暗殺事件は米国がイランに対して宣戦布告を行ったに等しい。あるいは、これは米国に特有の戦争を挑発するための作戦であったのかも知れない。

今回のスレイマニ将軍の暗殺は数日前にイラク北部のキルクークの米軍基地がロケット弾攻撃を受けて、米国からの民間人一人が死亡し、数人が負傷するという事件が起こり、エスパー米国防長官は「情勢は一変した」と述べていた矢先であった。イランはすかさず報復を宣言。イランと緊密な協力関係にあるレバノンのイスラム教シーア派の武装組織「ヒズボラ」は、ソレイマニ司令官殺害の責任を負う者に対する処罰は「世界中のすべてのレジスタンス戦士の任務」となると表明した。報復に対する報復である。軍事行動は級数的に拡大する。

こうして、米・イラン間は一発触発の状況になった。米国と同盟関係にあるイスラエルは今回の暗殺事件を歓迎している。この暗殺劇の裏にはイスラエルの姿が見え隠れする。つまり、米・イラン・イスラエル戦争となりかねない。中東全体が戦場と化すであろう。

ここに「新年早々のトランプによるソレイマニの殺害はついにロシアゲートという偽りの筋書きを木端微塵に」と題された記事がある(注1)。その記事はもうひとつの重要な側面を指摘している。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

 
<引用開始>

 
Photo-1: ファイル・フォト: 202013日、ガセム・スレイマニ将軍の殺害に抗議してイランのテヘランで米英の国旗を燃やすデモ参加者たち。 © Reuters / WANA / Nazanin Tabatabaee

イラン革命防衛隊のコッズ精鋭部隊の司令官であるガセム・ソレイマニ将軍に対するトランプによる暗殺遂行命令はイランとの緊張を危険なレベルに高めるだけではなく、ロシアが彼をコントロールしているというフィクションに終わりを告げることにもなる。ちょっと想像して欲しい・・・ 仮にカナダで空港に向かって移動中の米統合参謀本部議長のマーク・ミレー将軍をドローンを使って暗殺することをイランのロウハニ大統領が命令したとしたらどうであろうか。
 
この攻撃は「自衛」のためのものであったと誰かが言い出すのだろうか?まさにそのような説明がガセム・ソレイマニの殺害について行われている。


否定のしようがない信実がある。死後、彼は地上最悪の人物だとネオコンに言わているが、この白髪のソレイマニは中東における野蛮極まりないISISやアルカイダを掃討する上で非常に重要な役割を演じてきた。彼は宗派には拘らず、キリスト教徒を守ろうとするシリア政府を世界最強国家による攻撃から守り抜くよう指導し、予想に反してそれに成功したのである。西側諸国はムスリム聖戦士の混成部隊や暗殺集団を繰り出して、暴力沙汰で「政権交代」を実現しようとした。9112015年にチュニジアで起こった英国からの旅行者に対する襲撃を含めて、世界中で西側の一般市民を攻撃目標としていたこれらの集団と戦ったソレイマニに対する褒美は2020年の始めに吹き飛ばされることになった。いったい誰がテロリストであるのかを改めて教えて貰いたいものだ。
テレビやラジオではイランとの戦争の話で持ちきりであるが、実際には敵意は以前からすでに見え見えであった。トランプは挑発的にもイラン核合意から脱退し、彼が発動した対イラン経済制裁は「一国に対して課した制裁ではもっとも厳しいものである」と誇らしげに言った。そして、イランでは、今や、もっとも大きな権力を握っていると多くの人たちによって見なされている人物を殺害するよう命じたのである。この暗殺を正当化するために、われわれはソレイマニはイラクに駐留する米軍に脅威を与えているとの説明を受けた。しかし、まず始めに明確にしておきたいことがある。米軍はイラクでいったい何をしているのか?米軍は2003年に非合法的にイラクへ侵攻し、在りもしないイラクの大量破壊兵器を処分するのだとわれわれは告げられた。しかしながら、そのことは今や忘れるようにと言われた。米国とその同盟国はどんな権利があって17年前にイラクへ侵攻したのだろうか?国際法上では如何なる根拠もない。しかし、イラクの大量破壊兵器は単なる虚偽であったというだけではなかった。それには程遠い。

われわれは過去の23年間こう聞かされてきた。まさに嫌になるほど・・・ 「ドナルト・トランプはプーチンのコントロール下にある」と。「彼は事実上ロシアのエージェントである」と。「モスクワ政府の操り人形である」と・・・
少なくとも今は、この地球上でもっとも騙されやすい人物であってもそんな言い分を信じるような人はいないだろう。ロシアにとってイランは中東における重要な盟友であり、戦略的にも重要なパートナーでさえある。ソレイマニを暗殺し、われわれをテヘランとの軍事的衝突のコースに置くことによって、トランプはイランに害を及ぼすだけではなく、彼はロシアの「熊」の胸や背中、顔を突こうとしている。依然として不審を抱いていた人たちに対しては、本日の出来事は米国の政治に最大級の影響力を持っているのはロシアではなく、本当はイスラエル(そして、それに続くのはサウジアラビア)であることを示している。


ソレイマニの殺害事件や米国の攻撃目標に対するイランによる報復攻撃の可能性の高まりは米国の観点からは必ずしも大きな意味を成さなくても、イスラエルの観点からは実に大きな意味を成すのである。このイラン人の将軍は長い間テルアビブ政府によってマークされていた。エルサレム・ポストはこう指摘している。 このコッズ精鋭部隊の司令官は「2006年の対イスラエル戦争におけるレバノンではヒズボラに対するイランからの支援で非常に重要な役割を演じた。」 また、彼はイランは継続してパレスチナ人を支援するとも強調していた。

もしもあなたが頑固なシオニストであるならば、世界広しと言えども、ソレイマニ程消してしまいたいと思う敵は存在しないのではないか。しかし、ここには米英の一般庶民の間で議論されることは極めて稀な真実が隠されている。つまり、それはイスラエルの優先事項(イラン・シリア・ヒズボラの枢軸を潰し、それらの国々の動きにおける指導的な人物を排除すること)は、実際には、急進化したテロリストのグループと戦う広域活動を弱体化してしまうであろうという点だ。もしも「対テロ戦争」が本来の意味で戦われていたならば、ISISやアルカイダを壊滅することでもっとも大きな貢献をした人物に対してドローン攻撃を仕掛けるようなことはあり得ない。ね、そうだろう? しかし、それこそがドナルド・トランプが仕出かしたことだ。リベラル派はいつも決まったように在りもしない「ロシアの干渉」の議論に磨きをかけ、イスラエルとそのロビー活動家らはISISやアルカイダにとってはその地域で最強の敵であるイランに対して厳しい姿勢を推進しようとする
2011年の11月、トランプはツイッター上でオバマ大統領は再選を勝ち取るためにイランとの戦争を開始するだろうという「予測」を流した。

しかし、オバマはそうしなかった。それだけではなく、オバマ政権はソレイマニの殺害を実行する機会があったイスラエルを二度にわたって制止した疑いもなく、トランプは親イスラエル派としては米国最強の大統領である。それは、中東における戦争を止めるという選挙前の美辞麗句で飾られた約束とは裏腹に、2020年には大規模な戦争が突発する可能性が増大することを意味している。

著者のプロフィール:ニール・クラークはジャーナリストであり、作家、アナウンサー、ブロガーでもある。受賞した彼のブログはwww.neilclark66.blogspot.comでご一覧願いたい。彼は政治や国際関係について@NeilClark66にてツイートしている。

注:この記事の内容や見解、意見はあくまでも著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。

<引用終了>

 

これで全文の仮訳が終了した。

2020年はついに激動の時を迎えたような気がする。

イランでは、昨日(6日)、ソレイマニ将軍の葬儀が行われ、イランの国営テレビは将軍の死を悼む黒服の市民で埋めつくされたテヘランの街の様子を伝えた。弔問者たちは「アメリカに死を!」と叫び、イランの最高指導者であるハメネイ師は弔文を読みながら涙を流した。この暗殺事件を受けて、米軍をテロリスト集団として認定する議案が全会一致でイラン議会で可決された。イランは厳しい報復を行うと宣言している。言うまでもなく、一般庶民のほとんどはこの暗殺事件はイランに対する米国の宣戦布告であると感じている。 

イラクではイラク軍の重要な一部として機能していた民兵組織が米軍とその同盟軍からの攻撃を受けて米軍とイラク軍との間には緊張が高まっていた折から、イラク議会は今回の暗殺事件はイラクの主権を踏みにじるものであるとして、5日、米軍の撤退を議決し、イラク政府に提言した。

6日には米統合参謀本部議長の言葉として「米軍はイラクから撤退する」との報道があった。しかしながら、翌朝の7日(ルーマニア時間)、統合参謀本部議長が自ら前言を否定した。ペンタゴンも米軍は撤退しないと追認。ペンタゴン内部はかなり混乱しているようである。何時ものことながら、米国内ではイランとの戦争を回避したいグループと戦争を推進するグループとが暗闘しているようだ。

今年の11月の大統領選では再選を確実にしたいトランプ大統領は軍部をさんざんにびびらせて、最後の土壇場には一般大衆受けのするイラクからの米軍の撤退へと大きく舵を切るのではないだろうか。

 

参照:
1Trump’s New Year killing of Soleimani finally blows up the fake Russiagate narrative: By Neil Clark, RT, Jan/03/2020, https://on.rt.com/a8d1

 

 

 

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