2014年3月7日金曜日

ロシアは本当にウクライナへ侵攻したのか


34日早朝のNHK解説委員室による時論公論 「ウクライナ危機の行方・ロシア軍クリミア掌握」www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/182261.html)は、「プーチン大統領はロシア系住民の保護のためとして、ウクライナ領クリミアでの軍事行動を命じ、事実上クリミアをロシア軍が掌握しました」と解説した。
同日、日本とは6時間の時差を持つモスクワではプーチン大統領がメデアを前にインタビューに答えていた。その際に、「ロシアはウクライナの国民と戦争を始めるようなことはしない。しかし、もしキエフの過激派勢力がウクライナの市民に対して、特に、少数派のロシア人に対して暴力を振るうようなことがあれば、市民を守るためにはロシア軍を派遣する」とメデアに向かって表明した。(注: 小生の36日のブログ『プーチンがインタビューで表明 「武力行使は最後の手段。その権利は保留」』を参照ください)
このプーチンの説明にはロシア軍を派兵したと読める文言はない。武力行使をする用意はあるが、武力行使はあくまでも将来そういった必要に迫られた時の話だとプーチンは言っている。
上記のふたつの情報の間には雲泥の差がある。不思議なことだ。
さらには、「現在ウクライナにいる制服を着て武装をしている連中はバッジを付けてはいないが、彼らはロシア兵ではないのか」との質問を受けたが、プーチン大統領はそれを否定した。彼らはクリミアの自警団のメンバーであると述べた。
この「彼らはクリミアの自警団のメンバーである」とするプーチンの説明は非常に重要だ。
クリミア半島には通常でもロシア兵が駐留している。これはウクライナとロシアとの間の協定に基づいた駐留であって何年も継続されている。ロシアは最大で25千の兵力を常時駐留させることができるとのことだ。
西側のプロパガンダ・マシーンによるセンセーショナルな言い回しを見ていると、この常時駐留するロシア兵力、ならびに、制服を着て武装した自警団のことをプーチンが今回新たにウクライナへロシア軍を投入したかのように報道している。これは小生の単なる思い違いだろうか。
34日夜のRTの記事(http://on.rt.com/kgpba3)によるとこんな具合だ。
国連でウクライナ代表がクリミア半島全域で16,000人の兵力が配置されていたと述べた。これを聞くや、携帯メール通信が一挙に膨らんだ。
そして、それは事実として何を意味しているのかには関係なく、この情報は一人歩きを開始したようである。英語国民がこのような誤解をするとは私には想像もできない。ウクライナ代表は文法的には過去完了の様式を用いており、「16,000人の兵力が配置されていた」 と言った。文脈からは、今回のウクライナ騒動よりも前から16,000人がすでに配置されていたと言っているのだ。最近、新たに配置されたという意味ではない。ところが、この過去完了の表現が現在完了様式の表現に読み間違われ、あるいは、意図的に歪めらて、「16,000人の兵力が配置された」と伝えられたらしい。前出のRTの記事はさらに次のように伝えている。
この所謂「ロシア軍の侵略部隊」がすでに15年間も駐留しているという事実は特に歓迎されるということはなかった模様だ…
と述べ、RTは皮肉たっぷりな文言を挿入することを忘れなかった。
多くの人たちが信頼している筈のメデアがクリミア自治共和国が大規模なロシア軍によって侵略されたとヒステリックな調子で状況を描写した。それらの見出しを例に挙げると、「ロシアが16,000人の兵力をクリミアに派兵」、「ロシアがクリミアへ兵力を増派、ウクライナの危機さらに深まる」、さらには「クリミアへのロシアの侵入に関してオバマは如何なる対抗措置をとれるのか」といった調子だ。
さまざまな事実ならびにロシア側の首席外交官による熱心な説明があったが、それらは西側の「戦争を挑発したいメデア」によってすっかり無視されてしまった。
ロシアのヴィタリ・チュルキン駐国連大使はずっと昔から継続されている協定によって兵力を25,000人まで増強できるという点を指摘した。また、ラブロフ外相は「ロシア軍はロシア海軍がウクライナに駐留することを規定している協定にしたがって厳密に行動していること、ならびに、ウクライナの合法的な政府からの立場や主張に従い、今回のケースではクリミア自治政府の立場や主張についても従っていること」を強調した。
同記事には歴史的な経緯を含めてさまざまな事実が説明されている。そして、兵力に関しては下記のように詳述している。
ロシア海軍はクリミア半島内で兵力を下記に示す上限まで増強することができる:
― 兵隊の数は25,000人まで
― 口径100ミリまでの火器システムは24基まで
― 装甲車両は132台まで
― 軍用機は22機まで。
最近の報道(31日、http://on.rt.com/0d4e3m)によると、ウクライナ海軍の旗艦はソマリア沖でのNATO軍との対海賊作戦を終えて、黒海のセヴァストーポリ港へ帰還したが、帰還後早々に「キエフ政府の命令は受けない」と宣言したとのことだ。つまり、親ロシア派のクリミア自治政府を支持すると宣言したのだ。クリミア半島内のウクライナ軍基地では辞任の手紙が数多く寄せられているとも報道されている。32日の報道(http://on.rt.com/bvb2ya)によると、クリミアに配置されているウクライナ軍の大多数がクリミア自治政府側へ投降した。この投降は平和裏に行われ、ロシア軍や自警団からは一発の弾丸も発射されることもなく実行された。ウクライナ軍内の将校にはロシア人が少なからずおり、今後も部隊丸ごとの投降が起きるかもしれないと報道されている。
このような状況を見ると、クリミアにおける自警団の規模は今急速に拡大しているのではないかと推測される。
また、上記に引用した小生のブログ『プーチンがインタビューで表明 「武力行使は最後の手段。その権利は保留」』でもご紹介したが、キエフの中央広部で反政府デモが最高潮に盛り上がっていた頃、狙撃者による銃撃によってデモの参加者だけではなく警察官側にも多数の死者がでた。この銃撃の背後で一体誰が指揮をとっていたのかというと、エストニアのウルマス・パエト外相によると、「背後から狙撃者を操っていたのは誰だったかと言うと、それはヤヌコヴィッチではなく、反政府派連合の誰かだったという疑いがより濃厚になってきた」と述べている。この情報はEU外務・安全保障政策上級代表のキャサリン・アシュトンとエストニアのウルマス・パエト外相との間で225日に電話で交わされた会話が暴露されたことから表面化したものだ。
ウクライナ西部やキエフで起こった暴力はかねてからネオナチや極右翼等による暴力沙汰として報道されている。そして、選挙で選ばれたヤヌコヴィッチ大統領がその座から追われ、ロシアへ亡命してからはヤヌコヴィッチ大統領に忠誠を誓っていた内務省特殊部隊「ベルクト」は解散された。ベルクトのメンバーは反政府デモの参加者からは敵視されていたことから、彼らはクリミア半島へ潜入したと報道されている。クリミア自治共和国とウクライナとの境にはバリケードが築かれ、武装した兵士によって警備されている。ウクライナ本土からのネオナチ等の過激派の侵入を食い止めるためだと言われている。
空港や幹線道路に配備されているこうした武装した兵士たちは何処の国に所属するのかを示すバッジは付けてはいないそうだ。プーチンの説明によると、彼らはクリミアの自警団のメンバーであって、ロシア兵ではない。
しかし、戦争が今にも起こりそうだとセンセーショナルな報道をし、売上部数や視聴者の数を伸ばしたいメデアにとっては真実は必ずしも歓迎されているわけではない。
この状況は、あたかも昨年8月のシリア情勢が再現されたかのような印象を受ける。化学兵器によって多数の市民が殺害された際に、米国を始めとする西側諸国はシリア政府軍側が化学兵器を使ったとしてシリアを非難し、米国は「シリアを空爆する」と脅迫した。シリア政府側は、あれは反政府ゲリラが行ったものであって自分たちは関与していないと宣言した。その後さまざまな情報が集まり、それらを総合してみると、あの化学兵器の使用は反政府ゲリラの仕業であると言えるようだ。つまり、反政府側の自作自演だった。
このような状況の誤認はどうして生じるのか。メデイアの責任を論じないままではこの疑問には答えられそうもない。
ここに、最近の記事の中にこの疑問に答えるものがある [1]。それを仮訳して、クリミア半島で起こっている状況について理解を深めたいと思う。

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<引用開始>
ジェラルド・セレンテは西側諸国の大手メデアを「プレステチュート」と名付けた。著者もこの言葉を頻繁に使わせてもらっている。プレステチュートは自分の身をワシントン政府に売り込み、政府やさまざまな情報源へのアクセスを確保し、自分たちの職場を維持している。腐敗しきったクリントン政権が米国のメデアが企業集中することを許可した時点以降、いくつかのインターネット・サイトを除いては、米国ではジャーナリズムの独立性は無くなってしまった。
グレン・グリーンワルドはロシアのメデア組織であるRTでアビー・マーテ [訳注:米国人のジャーナリストであって、RTアメリカ・ネットワークのワシントンDC支局に勤務] がロシアのウクライナへの侵攻を非難したが、RTはそうすることを許容したとしてRTの独立性を賞賛している。これはフィル・ドナヒュー(MSNBC)やピーター・アーネット(NBC)がたどった運命とは大違いである。これらふたりのジャーナリストはブッシュ政権による非合法なイラクへの侵攻に反対の意を唱え、その結果解雇された。ドナヒューはNBCのもっとも高い視聴率を誇る番組を持っていた。しかひ、そのような事実も彼にジャーナリズムの独立性を与えることにはならなかった。米国の新聞やテレビあるいはNPR [訳注:公共ラジオ放送] で真実を報道すると即刻首になるのが落ちだ。
ロシアのRTは米国人がそうしろと言いながらも、そのことを決して賞賛しようとはしない価値観を信じ、実際に順守しているようだ。
著者もグリーンワルドに賛成だ。お望みならば、彼の記事は下記のサイトで読むことが可能だ: http://www.informationclearinghouse.info/article37842.htm グリーンワルドは実に素晴らしい。彼には知性があり、高潔さを備えており、勇気もある。彼はもっとも勇敢なジャーナリストの一人であり、私の著書How America Was Lostは彼に捧げている。RTのアビー・マーテンについては彼女を賞賛している。何度か彼女の番組に招待されたことがある。
グリーンワルドやマーテンに関する私の批判は二人の高潔さや人柄とはまったく関係がない。アビー・マーテンはもっと高収入の「主流メデア」への移籍を可能にするために派手な行為をしたとの指摘については、私は多いに疑っている。私の視点はそれとはまったく異なるのだ。我々に光をもたらしてくれるアビー・マーテンやグレン・グリーンワルドであってさえも西側のプロパガンダから完全に独立し続けることが可能であるとは言えないのだ。
たとえば、マーテンがウクライナへのロシアの侵略について批判をしたが、彼女の批判はロシアがクリミアを占領するために16,000人の兵力を送り込んだとする西側のプロパガンダに基づいたものだった。しかし、事実はどうかというと、その16,000人の兵力は1990年代からずっとクリミアに駐留しているのである。ロシアとウクライナとの間で交わされた協定によると、ロシアはクリミアに駐留するロシア軍を25,000人にまで引き上げる権利を持っている。
知性が豊かで物事に詳しい二人ではあるが、アビー・マーテンやグレン・グリーンワルドはどちらもこの事実を知らなかったに違いない。これは明白だ。ワシントンのプロパガンダは至る所に蔓延しているので、われわれの世代ではもっとも有能なこれらのリポーターであってさえもその犠牲になってしまったと言える。
私が自分のコラムで何回かすでに書いているように、ウクライナを手中に収めNATOに参加させ、米国の覇権を推進させ、ロシアの核抑止力を台無しにするべくロシアとの国境に米国のミサイル基地を建設し、ワシントンの覇権をロシアに認めさせるためにワシントンがウクライナでのクーデターを組織したのだ。
ロシアはワシントンが画策したこの大規模で戦略的な脅威に対してはえらく控えめに対応をしただけだった。
ワシントンのプロパガンダの犠牲になったのはマーテンやグリーンワルドだけではない。パトリック・J・ブキャナンもそうだ。クリミアでの戦争を挑発する連中には抵抗するようにと読者に呼びかけたブキャナンのコラムはワシントンのプロパガンダめいた主張である「クリミアへのウラジーミル・プーチンの派兵について」(http://www.informationclearinghouse.info/article37847.htm)で始まった。しかし、そのような派兵は実際にはなかったのだ。プーチン大統領はロシア議会によってウクライナへ派兵する権限を与えられた。しかし、プーチンは公に宣言している。ロシア兵の派兵は、ワシントン主導のクーデターを乗っ取りキエフや西部ウクライナでその地位を築いた極端な国粋主義者であるネオナチによる侵攻からクリミアのロシア系住民を守る時に採用する最後の手段だと。
ここにはわれわれの世代ではもっとも有能であり、もっとも独立精神に富んだ3人のジャーナリストがいる。そして、3人が3人ともロシアがウクライナに侵攻したという西側のプロパガンダの犠牲となったのである。
ワシントンのプロパガンダ能力はあまりにも強大であるので、もっとも有能かつ独立心に旺盛なジャーナリストでさえもその影響を受けないままでいることは困難であると言えよう。
実際にはなかった軍事的侵攻に関してロシアを非難したことによってアビー・マーテンがグレン・グリーンワルドから賞賛される時、あるいは、独立心旺盛なパット・ブキャナンが武力侵攻があったと認めることからコラムを書き始め、ロシアの民衆を非難することとは違った意見を述べる時、物事の真実にはどのような可能性が残されているのだろうか。

例のプレステチュートがウクライナに関して述べたすべての筋書きはプロパガンダが作り出したものだ。プレステチュートは退陣させられたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領がデモの参加者に向けて狙撃するように命じたと報道していた。これらの間違った報道に基づいて、キエフの現政府を構成するワシントンのボケ役たちはヤヌコヴィッチに対して逮捕状を準備し、国際裁判所で彼を裁く積りでいる。EUの外務大臣であるキャサリン・アシュトンとエストニアの外務大臣ウルマス・パエトとの間の電話が盗聴された。ちょうどキエフへの旅行から帰ってきたばかりのパエトは「背後から狙撃者を操っていたのは誰だったかと言うと、それはヤヌコヴィッチではなく、反政府派連合の誰かだったという疑いがより濃厚になってきた」と報告した。パエトはさらに「すべての証拠を総合すると、狙撃者によって撃たれた人たちはデモ参加者だけではなく警察官の方にも見られる。同一の狙撃者らが両派に向かって狙撃したものだ。その上非常に悩ましいことには、反政府派連合は実際に何が起こったのかに関して調査は行いたくはないようだ」と、報告を続けた。ウクライナには改革を指導し、その経済政策についてのコントロール機能を得たいがためにIMFに向けた筋道を確立しようとするEU側の計画で頭がいっぱいになっていたアシュトンには、キエフの中央広場で起こった殺戮は筋書き通りの挑発行為だったとするパエトの詳しい報告を聞くのは特に嬉しいというものではなかった。もしお望みならば、パエトとアシュトンの電話の内容は次のサイトで確認が可能である:http://rt.com/news/ashton-maidan-snipers-estonia-946/
ウクライナで起こったことは合法的に選出された政府を崩壊させるためにワシントンが画策したものであったが、ネオナチにそのコントロールをすっかり横取りされてしまった。彼らはウクライナの東部や南部のかってはロシアの一部であった地域に住むロシア系住民を脅かそうとしている。脅威を受けたロシア系住民はロシアの助けを求めた。彼らはちょうど南オセチアのロシア系住民たちのようにロシアの助けを受けることになりそうだ。
オバマ政権とそれを取り囲むプレステチュートは何事についても嘘を言い続けることだろう。
ポール・クレイグ・ロバーツは米財務省の経済政策財政委員会の副議長やウオール・ストリート・ジャーナル紙の副編集者を務めた。ビジネス・ウィークやスクリップス・ハワード・ニュース・サービスならびにクリエーターズ・シンジケートのコラムニストであった。数多くの大学の職にも就いた。インターネットでの彼のコラムは世界中の読者の関心を呼んでいる。最近の著書としてはThe Failure of Laissez Faire CapitalismおよびHow America Was Lostがある。http://www.paulcraigroberts.org/

さらには、下記を参照されたい。
クリミアにいる連中はロシア兵ではない、とプーチンが言明: ロシア兵はクリミア半島で政府の建物を占拠したり、ウクライナの軍事基地を取り囲んだりといった行為はしていない、とモスクワの近郊で行われたニュース・コンファレンスでウラジミール・プーチンが主張した。その場で、彼は最近の出来事をリポーターたちに説明した。武装した男たちはロシア兵ではなく、その地域の「自警団」であると。
<引用終了> 

キエフの中央広場で起こった銃撃事件はデモ参加者ならびに警察官の両方に死者を出した。負傷者の治療に当たった大学教授の判断によると同一の狙撃者によるものだという。この状況は政府と反政府派との間の緊張をさらに拡大するために銃が使われたことを示唆している。
また、クリミア半島の空港では制服をまとい武装した男たちがパトロールし、幹線道路ではバリケードが築かれ武装した男たちが監視をしている。さらにはクリミアの地方議会もそういった男たちで占拠されていると伝えられている。これらの武装兵は所属を示すバッジをつけてはいないそうだ。彼らは西側が主張するようなロシア兵ではなく、クリミアの自警団である、とプーチンが言明している。この内容は西側のメデアが喧伝してきた筋書きとはまったく違うのだ。
総じて、ウクライナでの騒乱や暴力沙汰は西側が意図した全体的な筋書きとは大きくかけ離れた状況になっていると言えようか。いずれ、さらに多くの真相が時間と共に表面化してくることだろう。やがて、歴史が教えてくれることになる。
しかしながら、ここで最大の問題は、イランの核開発疑惑のように、明確な根拠もなしに、声の大きな側によって声の小さな側が30年もの間経済制裁をされたらたまったものではない。当事者の政治家は別にして、巻き込まれた一般市民は甚大な影響を受けることになってしまう。あまりにも理不尽だ。 

参照:
1Has Russia Invaded Ukraine?:  By Paul Craig Roberts, Information Clearing House, Mar/05/2014

 

2014年3月6日木曜日

プーチンがインタビューで表明 「武力行使は最後の手段。その権利は保留」


「ロシアはウクライナの国民と戦争を始めるようなことはしない。しかし、もしキエフの過激派勢力がウクライナの市民に対して、特に、少数派のロシア人に対して暴力を振るうようなことがあれば、市民を守るためにはロシア軍を派遣する」とメデアに向かって表明した。
これは昨日(34日)RTから配信された記事の冒頭の一節だ。これを読んだ時の印象は、軍隊と政治の関係は米国とロシアではこうも違うのかと思った程だ。
たとえば、米国のオバマ大統領は昨年の8月、シリアで化学兵器によって多数の市民が殺害された時、これはシリア政府軍が行ったものであるとして「シリアを空爆する」と公言し、シリア政府に脅しをかけた。米国はシリア政府軍が化学兵器を使用したと言いながらも、その証拠を示すことはできなかった。一連の状況から言えることは、あれは米国側の手先による自作自演だったことがほぼ判明している。空爆を開始する、アサド政権を倒すといった筋書きがまずあって、その筋書きに合うような状況を演出しようとしたが、その演出は見事に失敗したのだ。
そして、このような主客転倒した政治の状況は10年前に米国主導で進められたイラク戦争がその最たる事例であると言えるのではないか。イラクへの軍事的侵攻は、結果的には、喧伝されていた大量破壊兵器を見つけることができなかった。そして、もっとも不幸なことには、イラク国内は三分され、極端な政治的混迷に陥っている。今もなお毎日のように多くの市民がテロに巻き込まれて殺害されている。これがすでに10年も経過したイラクにおける現状である。
世界は米国の軍事的優位を背景にした国際政治におけるこうした不条理には飽き飽きしいている。そこへ、昨日、プーチン大統領とのインタビュー記事が配信された。この記事に関しては無数のコメントが寄せられた。4時間足らずのうちに、昨日この原稿を書き始めた時点(34日の1518分)ですでに192件ものコメント数となっていた。
その内容は大部分がプーチン大統領の健全な論理と政治家としての使命感に共感したというコメントだ。プーチン大統領こそが世界の指導者であると賞賛する声も多い。しかし、プーチンの考えがどうして健全な論理として受け止められたのだろうか。さまざまなコメントを読んでみた。プーチンの思考は多くの人たちによって「常識にかなっている」と評価されていることが分かった。私の個人的な印象では、このことが多くの人からの支持を得た理由ではないかと推測される。
次に私が感じたのは、ヨーロッパ諸国の多くの政治家が米国に追従していることに失望しているという現実だ。そして、もうひとつは、RTは実質的にはロシア国営のニュース報道局ではあるのだが、英国の公営放送であるBBCや米国のCNNといった大手のメデアとは一味違った報道姿勢を保っている。それが故に、RTを通じて西側のメデアからは得られないような情報に接することができるとして、一般視聴者は好感を抱いているようだ。ウィキペデアの情報によると、米国内について言えばRTは二番目に多い聴視者を確保しているという。
前置きが長くなってしまったが、プーチン大統領とのインタービュー記事 [1] を仮訳して、下記に示したいと思う。多くの市民がなぜプーチン大統領のインタビュー内容に好意を抱いたのか、どういう点が共感を呼んだのか、その理由を皆さんに感じ取っていただきたいと思う。 

<引用開始>
ロシアはウクライナの国民と戦争を始めるようなことはしない。しかし、もしキエフの過激派勢力がウクライナ市民に対して、特に、少数派のロシア人に対して暴力を振るうようなことがあれば、市民を守るためにはロシア軍を派遣する、とプーチン大統領はメデアに対して述べた。
プーチン大統領はロシア議会の上院によってウクライナの市民を守るために武力を行使する権限を委任されているが、同大統領は目下のところそのような行動をとる必要はない、と言明した。
プーチンは、ある州の知事が鎖に繋がれて公衆の面前で屈辱感を味わされたとか、反政府派が地域党の本部を占拠した際に技術者を殺害したといった事例を挙げて、ウクライナにおける過激派の行動を引き合いに出し、ロシアがなぜウクライナ東部や南部の市民の生命や福利に関して懸念を抱いているのかについて説明をした。
そういった事態こそがロシアにとっては軍隊を配備するという選択肢を用意しておく最大の理由なのだ。
「もしこういった無法状態が東部で始まったとしたら、公選された大統領からの懇請(すでに受け取ってはいるが)に加えて、もし地域住民がわれわれに助けを求めてきたら、われわれにはこれらの住民を守るためにわれわれが持っているあらゆる手段を活用する権利がある。こういった行為はまったく合法的なことだとわれわれは信じている」と言った。
あるジャーナリストが戦争になると思うかと質問をした際、「ロシアはウクライナの市民と戦争をする積りはない」と、プーチンは強調した。「しかし、ウクライナの市民に対する攻撃が起こりそうになったら、ロシア軍はそういった動きを阻止する。」
「われわれはウクライナ市民と交戦する積りはない」と彼は述べた。「私はあなた方がこの件を明確に理解して欲しい。意思決定をする必要がある場合というのはウクライナの市民を守る時だけだ。軍に属する人たちには誰もが敢然と立ち向かわせたい。われわれの面前に立ち上がる者に対しては、彼らは彼ら自身の国民に対してさえも発砲するかも知れない。婦人や子供たちに対しても。ウクライナでは誰かがそのような行動 [訳注:市民を守ること] をとり命令を下すのを見たいものだ。」
現在ウクライナに居る制服を着て武装している連中はバッジを付けてはいないが、彼らはロシア兵ではないのかとの指摘をプーチンは否定した。彼らはクリミアの自警団のメンバーであると述べた。ヤヌコヴィッチ大統領の追放に一役買った過激派よりも立派な装備をしているわけでもなければ、より多くの訓練を受けているわけでもないとも言及した。
プーチン大統領は、この火曜日(訳注:34日)に終了したロシア西部で実施された軍事演習はウクライナ国内の出来事とは何の関連もないと述べた。  

制裁措置をとるとの脅かしは非生産的だ:
ウクライナに対するロシアの姿勢に関して批判が起こっているが、それについてはどう思うかとの質問を受けて、プーチンはロシアが非合法的な行動を起こしているという批判を退けた。たとえロシアがウクライナにおいて武力行使をしたとしても、それは国際法を犯したことにはならない、と述べた。
それと同時に、彼は米国やその同盟国が自分たちの国益を追求するために武力を行使する際、合法性については何らの関心も払ってはいないではないかと述べて、米国やその同盟国を批判した。
『彼らに私が「あなたたちは何事も合法的に行わなければならないと思っているか」と聞くと、彼らは「イエス」と言う。私はアフガニスタンやイラクならびにリビアでとった米国の行動を彼らに思い起こさせなければならない。これらの国々では彼らは国連安保理の委任状もなしに行動した。あるいは、リビアでの事例が示すように委任状を悪用した』と、プーチンは述べた。
『われわれのパートナー、特に米国は常に自国のために地政学的な利害や国益を明確に描きあげ、それらを執拗に追及しようとする。そして、残りの全世界をその方向に引っ張り、「われわれに賛成か反対か、どちらなんだ」といった原則論を用いて詰め寄り、賛成しない国に対しては嫌がらせをする』と、付け加えた。
ウクライナとの関連でロシアが直面している制裁措置に言及して、ロシアを脅かそうとしている連中は制裁措置に向けて先へ進めば自分たちにもその影響が及んでくるということを考えるべきではないか、とプーチンは述べた。相互に連携している今の世界においては、一国が他の国を痛めつけようとすれば、その国自体も損害を被ることになる。
プーチンはこのような状況においては脅かしは非生産的だと警告した。もしG8のメンバー国がソチで予定されているG8サミットに出席したくないと言うならば、それはその国自体の問題だ。
 

プーチンはキエフの中央広場に集まったデモの参加者には同情の念を寄せるものの、クーデターは拒絶: 

ウクライナの市民は、ヤヌコヴィッチ大統領によるあまりにもひどい不正行為やその他の失敗を考慮すると、ヤヌコヴィッチ政権に反対を表明することには合法的な理由があったとプーチンは強調した。
しかしながら、ヤヌコヴィッチを追い出した非合法的なやり方については、ウクライナ国内を政治的に不安定にしたとして、プーチンはそれに異議を唱えた。
「ウクライナにおけるこのような形での政権の交代には徹底的に反対する。私の立場は旧ソ連邦の崩壊後のどの国においても同じことだ。このようなやり方では法を順守する文化を育てることはできない。もし誰かがこのようなやり方を踏襲することが許されるとするならば、誰でもそうすることが許されることになる。これは大混乱を意味する。経済が安定せず政治的なシステムが定着してはいない国にとっては最悪の事態だ」と、プーチンは説明した。
彼は個人的には政府に圧力を加えるために何ヶ月にもわたって継続された街頭でのデモは好きにはなれないが、ウクライナの現状について純粋に怒りを感じてキエフの中央広場に集まった市民たちには同情の念を禁じえないと語った。
しかし、それと同時に、怪しげな名声を持った金持ちのビジネスマンが新政府の中枢に任命されている事実を指して、今ウクライナで起こっている事はただ単に一団の悪党を他の一団に置き換えているだけかも知れないと警告した。
先月キエフで起こった暴力的な対立の際に狙撃者がいたことについて質問され、プーチンはヤヌコヴィッチ政府が反政府派のデモ参加者に対して火器を使用せよとの命令を下したとは認識していないと述べた。狙撃者は反政府勢力の工作員たちであろうと主張した。対立の最中に警察官が致死的な武器で狙撃されたという事実だけは確かだ、と彼は付け加えた。
ヤヌコヴィッチはウクライナではすっかり無力なってしまっているが、法的な観点から言えば、彼はあの国の正当な大統領である、とプーチンは語った。ヤヌコヴィッチに取って代わったキエフの新政権のやり方は政権の信頼性を強化することにはならなかった。
ヤヌコヴィッチに同情していますかとの質問には、「とんでもない。私はまったく違った気持ちを持っている」とプーチンは語った。しかし、それがどんな気持ちであるのかに関して公に言及することは避けた。また、ヤヌコヴィッチの行動にはどのような間違いがあったのかについてのコメントも避けた。彼がそこまで立ち入ることは不適切であると説明した。
と同時に、プーチンはヤヌコヴィッチにはもう政治的な将来はないとしている。このことは追い出されたウクライナ大統領自身にも伝えてあるとのことだ。もし彼がウクライナに留まっていれば即座に処刑されかねないという状況から、ロシアとしては人道的な立場から彼がロシア入りすることを認めたとも付け加えた。 

ウクライナの将来についてはウクライナ市民全員の平等な参加を:
 
ロシア政府は二国間の経済的連携を維持することに関して今自称ウクライナ政府と話を進めようとしている。しかしながら、正常な二国間関係はウクライナが完全に合法的な政府を樹立した後に初めて可能になるだろう、とプーチンは語った。目下キエフ政府には自分の相手となる人物がいない、つまり、彼にとっては話かけることができるパートナーがいないのだ。
ロシア大統領は、ウクライナ市民全員が自分たちの国の将来を定義するに当たって皆が平等に参加する様子を見たいものだと述べた。現在ウクライナの東部や南部ではキエフ政府に対する反抗が明らかに見られるが、これはキエフ政府がウクライナを統治する委任を全国レベルで付与されているわけではないことを示している。
「率直に言って、ウクライナの全市民がそのプロセスに関与しているという実感を与えるためにも彼らは国民投票を通じて新憲法を採択し、自分たちの国がどのように機能しなければならないかという新たな原理原則を形成できるようにインプットを与えるべきだ」とプーチンが提案。「確かに、それはわれわれのためのものではなく、ウクライナ人自身のためのものだ。そして、ウクライナ政府はなんらかのやり方で決心しなければならない。合法的な政府が樹立され、新たな議会が選出された後に彼らはここへ戻ってくる。」
ロシアとしてはウクライナで予定されている大統領選挙を見守って行きたい、とプーチンが述べた。仮に、選挙がテロ的な雰囲気の下で行われた場合は、ロシアはその選挙は不正に行われたものと見なし、そのような投票結果は認められない、と警告した。
プーチンはロシアがその保全に最大限の努力を投じようとしているウクライナ領土の完全性についてもプーチンはコメントした。西側諸国はロシア側がウクライナでの出来事をクーデターだとして評価したことを拒否しようとしている。あれは革命であると言っている。
ロシアの専門家たちは、もしウクライナが革命を成し遂げたというのであれば、革命の後に出現した新国家は、ロシアが1917年のボルシェビキ革命後に完全に様変わりしたように、前の国家とはまったく違ったものとなっている筈だ。
もしそうであるならば、モスクワ政府はウクライナと締結していた条約にはもはや拘束されることはないと見なすこともできる、とプーチンは警告した。
<引用終了>
 

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プーチン大統領が言及していた狙撃者の存在に関しては本日の最新の情報 [2] によると、EU外務・安全保障政策上級代表のキャサリン・アシュトンとエストニアのウルマス・パエト外相との間で電話で交わされた会話が暴露された。後者は「背後から狙撃者を操っていたのは誰だったかと言うと、それはヤヌコヴィッチではなく、反政府派連合の誰かだったという疑いがより濃厚になってきた」と述べている。この電話は反政府派と治安部隊との衝突がその頂点に達していた225日にエストニアの外相がキエフを訪れた後にアシュトンと交わしたものだという。
パエト外相はキエフで狙撃者に撃たれた負傷者たちの治療に当たっていた医師と交わした会話を思い起こして話をしている。彼女は反政府派のデモ参加者たちや警察官は両者とも同一の狙撃者によって撃たれたものだと言ったのだ。
「二番目に、非常に憂慮すべきことではあるが、同医師 [オルガ・ボゴモレッツ教授]は、すべての証拠を総合すると、狙撃者によって撃たれた人たちはデモ参加者だけではなく警察官の方にも見られる。同一の狙撃者らが両派に向かって狙撃したものだと言った」と、エストニアの外相は語っている。
プーチン大統領が前日記者団の質問に対して答えていた内容が今日はこの暴露記事によってその通りであったことが証明された。新政権は、多分、この件については詳細な調査を行う積りはないのではないか。90数人が死亡しているという事実は非常に重い。本格的な調査を開始すると、幾つかの政治グループの間で結ばれた連携にはヒビが入るかも知れない。また、本件についてさらなる真実が報道されると、反政府派を支持してきた米国やEUにとっても政治的にはかなり厄介な荷物になるかも知れない。
また、プーチン大統領はインタビューの場で「西側がロシアに対して経済制裁を実施すると、経済がお互いに密に連携されている現在、西側もその影響を受けることになるだろう」と述べている。これは具体的にはどういうことだろうか。
私の考えは次のような具合だ。ロシアから大量の石油や天然ガスの供給を受けている西側諸国は、何年か前にロシアがウクライナに対して天然ガスの供給を一時的に遮断したように、ロシアはEU圏に対していとも簡単に報復措置をとることが可能だ。プーチン大統領はその可能性をあからさまには述べてはいないけれども、これは誰にでも推測できる内容である。
対ロシアの話になると歴史的にも特殊な背景を持っているポーランドは米国内で地政学的戦略の立案では大御所とも言えるブレジンスキーの故国でもある。そのポーランドはウクライナ問題ではEU圏内のタカ派的な存在でもあるようだ。しかし、他の国々はNATOのメンバーでもないウクライナに対してそれほど首を突っ込みたくはないとも言われている。つまり、米国の対ロシア戦略には一定の距離を置きたいというのが本音のようだ。
今後、まだまだ紆余曲折があると思う。さて、どの辺りに落ち着くのだろうか。
 

参照:
1Putin: Deploying military force is last resort, but we reserve right: By RT, Mar/04/2014, http://on.rt.com/pmgkkh
2Kiev snipers hired by Maidan leaders - leaked EU's Ashton phone tape: By RT, Mar/05/2014, http://on.rt.com/dx2op3

 

 

2014年3月4日火曜日

ウクライナではプーチンがオバマを威圧


ウクライナでの政変が今後どのように展開するのか、あるいは、どのような決着を見るのかは私たち素人には予想がつかない。しかし、西側の一部の観測筋は、クリミア半島は大きな衝突を起こさず、一発の弾丸も発射されることもなく、静穏にロシア軍のコントロール下に収まったとの認識をしているようだ。 

ここに、現状を描くひとつの論評 [1] がある。それを仮訳して、下記に示したいと思う。何と言っても、ウクライナの現状については少しでも多く、少しでも深く理解したいからだ。さまざまな解説や論評が毎日のように飛び交う中、ウクライナ情勢についての理解を深める上でひとつの材料にでもなれば幸いである。少なくとも、英語圏の情報を見ると、日本の大手メデアが伝える情報以外にも膨大な量の情報が行き交っているのが観察できるからだ。 
 

<引用開始> 

オバマ米国大統領がロシアのプーチン大統領に向けて発した「ウクライナの主権を尊重し、同地域を不安定にしないように」との厳しい警告をもって、さすがのアメリカ例外主義も「やり過ぎ」の域に達してしまった感がある。

ここでは、「アメリカ例外主義」という言葉によりわれわれは例外的な傲慢さやダブル・スタンダードをゴリ押しするワシントン政府が有する無限の能力を形容する。 

オバマは危機的状況に陥ったウクライナに対する「軍事的侵略」に関してロシアをあからさまに非難したわけではなく、この非難は週末のプレス・コンファレンスからの推論でしかない。武力衝突の脅威を語りながらも、ヴェールに包まれたような文言で米国大統領はモスクワには大きな「代償」が待ち受けていると述べた。 

「ウクライナの主権や領土に対する如何なる侵害もウクライナを著しく不安定にすることだろう。 [このような侵害に対しては] 代償を支払うことになるだろうという点に関して米国は国際社会と共に確認する」と、金曜日に、ワシントンでそそくさと用意されたメデア向けの声明文で述べた。 

ホワイトハウスはウクライナ南部のクリミア半島へのロシア軍の動きの報に接して明らかに困惑した。モスクワが言うところによれば、ウクライナのクリミア自治共和国内でのロシア軍の存在は長期にわたる法的取り決めに完全に準拠したものであって、黒海のロシア海軍基地の一部として同自治共和国内に兵を駐屯させるのは当然なことだ。 

同取り決めは2010年に更新され、モスクワとキエフの両政府間でさらに20年の延長が合意された。これによって、クリミア半島でのロシア軍の駐留を可能とし、特にセヴァストーポリには海軍基地が置かれ、ここがロシアの黒海艦隊の司令部となっている。

駐国連ロシア大使のヴィタリ・チャーキンは、ロシアがウクライナの領土内に武力侵攻したとの見方を否定し、「われわれはこの [ウクライナとの] 取り決めに準拠して行動している」と述べた。
クリミア半島における出来事は、最近の数日間、無秩序な様相を呈していた。武装した何者かがクリミア地方議会を占拠し、その屋上にはロシア国旗が掲揚された。また、他の報道によれば、多数の軍隊が主要な民間空港や他の施設にも配備された。これらの兵士たちは国籍不明の服装で身を固めていたが、未確認の報道によると装甲車両にはロシア軍のバッジが付いていた。
クリミア半島のセヴァストーポリにおける海軍基地借用に関する現行の契約下では、ロシアは同半島に数千人の兵士を駐屯させることができる。モスクワ政府は過去においても同地域での作戦行動を定常的に行っている。
しかしながら、最近のロシア軍の展開は単に「日常的」なものであるとするモスクワ政府の説明を鵜呑みにするには、バカ正直な素人の域を超えたものだと言えるのではないか。クリミア半島における軍の行動は他の大規模なロシア軍の招集やウクライナ国境に接する地域への軍用機の動きと軌を一にしている。
しかし、オバマが発した抗議には吹き出したくなるような皮肉を覚える。最近のロシア軍の動きは、明らかに、米国が支援し、すでに何ヶ月にもわたってウクライナの不安定化の工作が行われた後に起こったものだ。この非合法的で極秘に進められてきた米国による干渉はウクライナの主権をそこいらじゅうで踏みにじった。ウクライナの主権について、オバマは、皮肉にも、自分の相手先であるロシアのウラジーミル・プーチンが侵害しているとばかりに非難したのだ。
昨年の11月、ウクライナがEUとの臨時通商協約を拒絶したことから、ウクライナの首都キエフでは街頭での抗議行動はその規模を急速に大きくしていった。ワシントン、ならびに、その同盟国であるヨーロッパ各国は、英国、フランス、ドイツを含めて、これらの街頭での抗議行動を拡大させようとして、政府高官たちによる声明から始まってCIAのさまざまな機関を通じての軍の極秘の侵入に至るまで、それこそあらゆる手段を講じた。キエフにおけるデモは短期間のうちに半ば軍事的な性格さえ帯び始め、行動を共にしていた極右翼の連中は政府の建物を占拠するために火器やその他の暴力的な手段を用いた。あの迅速さは「抗議行動」を行うに当たって前もって準備された外部からの支援を如実に示すものだ。
ウクライナ警察と抗議デモとの間の衝突によって何人もが死亡したが、信頼できる報告によると、死者の多くは実際には西側が支持した反政府派や何としてでもこの危機を拡大させてやろうと目論んでいた狙撃者たちによって殺害されたのだ。1990年代の始めから、ワシントン政府はCIAや数多くの所謂NGOと共に、前ソビエト連邦の一員であった当該共和国の政権を動揺させる目的を持って、ウクライナへ侵入していった。
米国の国務次官補であるヴィクトリア・ヌーランドは、ワシントン政府は過去20年間でウクライナ国内で「民主主義を働きかける」(つまり、政府の転覆や暴動を起こす)ために50億ドルも「投資した」と最近述べている。
正当な選挙で選出されたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領は追い詰められ、先週、官邸から突然姿をくらまし、ロシアへ亡命した時、ウクライナの危機はその極に達した。ウクライナ議会は、それ以降、西側によって支援を受けていた反政府派によって支配され、新政府が樹立された。ワシントンとブリュッセルは速やかにこのキエフの新政権を承認したが、ロシアは、全うな法的理由から、選挙で選ばれたヤヌコヴィッチならびにその閣僚を罷免することはクーデターに等しいとして非難をした。
ウクライナにおける混迷には、このように、ワシントン主導の政権転覆工作に伴うあらゆる特徴が観察される。言うまでもなく、国際法をおもちゃにする干渉行為は完全に犯罪的である。ウクライナに対するこのようなおせっかいの最終的な目的は、1990年代の当初からズビグニュウ・ブレジンスキーやその他の米国帝国主義を維持しようとする立案者たちによって厚かましくも公言されてきたように、ロシアを不安定にすることにある。
笑い出したくなるところではあるが、キエフにおけるワシントンの傀儡であるオレクサンドル・トルチノフ大統領は、今や、ロシア軍がウクライナ南部のクリミアで地方議会やその他の政府の建物を「取り押さえ、占拠した」として非難をしている有様だ。
この非難は、キエフで政府の建物を手中に収めようとして警察官の殺害を含むさまざまな暴力やその他の犯罪的な行為を駆使してきた政治的扇動者たちの口から発せられた。彼らの行動は選挙で選出された大統領を追い出す結果となった。
ロシアのプーチン大統領は意図的に静かにしていた。しかし、このロシアの指導者はアメリカの策略や偽善を熟知しており、ワシントンの極秘の意図であるウクライナ政権の転覆はロシアの盟友であるシリアに対して見せた意図と共通したものであることをよく認識している。
当面、モスクワは沈着に合法的な行動をとり、規則に従うように見える。彼らはクリミアのロシア軍はウクライナとの間で締結された相互軍事協定の一部に関係したものだとしている。
しかし、オフレコで有り体に言えば、プーチンは実際には「あんた達は国際法を破りたいと思っている。それも良かろう。われわれもそうすることができるんだ。さあ、引っ込んでいろ!」と言っているのだ。米国人はこのことをよくわきまえているのではないか。
主権に関する規則や国際法はもはや問題にはされず、ウクライナで執拗に非合法的な干渉を行い、ウクライナの主権や国際法を台無しにしたのはワシントンとその盟友であるヨーロッパ各国である。ウクライナの領土や何世紀にもわたって共有してきた歴史はロシアの根源的な関心事である。
プーチンがウクライナに関してワシントン政府に対して暗黙の軍事的標識を設定することは、2008年にNATOの手先としてグルジアを扇動し、米国が南オセチアで軍事的な一騒動を起こそうとした時にプーチンが採った行動と同じように、まったく正当だ。
傲慢さと非合法性に満ちたアメリカ例外主義は外交言語を理解しようとはしない。アメリカ例外主義が応答する唯一の言語は武力だ。武力に受け答えできるのは武力だけだ。

著者のフィニアン・カニンガム(1963年生まれ)は国際情勢に関して多くの記事を書いており、彼の記事はいくつかの言語で出版されている。農芸化学の修士号を持ち、英国のケンブリッジにて英国王立化学協会の科学編集者を務めた。その後、ジャーナリズムへ転向。彼は音楽家でもあり、作詞家でもある。20年近く、彼は、ミラー、アイリッシュ・タイムズ、インデペンデント紙を含む主要なメデアにおいて編集者ならびに著述業務についていた。
<引用終了> 

 
この著者はいみじくも言った。プーチンの行動は何を意味するかというと、それは実際には「米国は国際法を破りたいと思っている。それも良かろう。われわれもそうすることができるんだ。さあ、引っ込んでいろ!」と言っているのだ… 

米国やヨーロッパ各国がロシアに対してウクライナへの軍事的介入をしないようにと説得をしてみても、そこには説得力がまったくないのが現状である。それは米国やヨーロッパ各国が見せた国際政治での実態を観察すれば、なぜ説得力がないのかは一目瞭然である。上記の引用記事を読んでみるとその思いは強まるばかりだ。 

ただ、キエフの中央広場で犠牲になった人たちの家族は今どのような思いを持っているのだろうか。何時ものことながら、犠牲者は一般市民である。多分、今回のウクライナでの政変は、結果としてクリミア自治共和国が政治的にどのような決着を見たとしても、今後何年にもわたってウクライナ全土に暗い影を落とすことになるのではないかと懸念される。 

ウクライナから目を離せられない日々が続きそうだ。 
 

 

参照: 

1Putin Faces Down Obama Over Ukraine: By Finian Cunningham, Information Clearance House – “Press TV”, Mar/02/2014