日本人の多くにとっては中国に対する米国の姿勢が非常に気になる今日この頃である。
安部首相は、日本は米国と「価値観を共有している」と言い、日米間の「絆の回復」を求めたいと述べた。1月に米国を訪問したいとする阿部首相の希望は、オバマ大統領の年頭教書の発表の直前であったり、折からの米政府の財政危機への対応で多忙を極めていた頃でもあって、オバマ政権にあっさりと断られた。しかし、安部政権は2月のホワイトハウス訪問を何とか実現させた。
この時、世界はこの日米首脳会談をどう見ていたのだろうか。
日本側には外交問題が山積していた。阿部首相はそのひとつひとつの案件についてオバマ大統領から「米国は日本の言い分を支持する」といった何らかの言質を取り付けた上で帰京したかったことだろう。例えば、対中国では尖閣諸島、対韓国では慰安婦や歴史認識、対北朝鮮では核実験やミサイル発射、等々。また、日本の国内問題への対応としてはTPPへの参加に当たっての米国側の譲歩。
日米首脳会談に先立って、米国の主要なシンクタンクのひとつであるランド研究所の東アジアの政治や安全保障を専門とするスコット・ハロルド氏は当時(2月22日)この会談を次のように予測していた[注1]。
引用部分は何時ものように段下げして示す。
日本の阿部晋三首相がバラク・オバマ大統領との会談のためにこの金曜日ワシントン入りする。この会談は日米の二国間関係だけではなくアジア・太平洋のより広い地域を将来何年間にもわたって規定するものとなるだろう。
尖閣諸島の領有権を主張する日本政府を弱体化させるべく中国船は日本の領海へ侵入し、北朝鮮は長距離ミサイルの打ち上げ実験や核実験を実施、TPP参加交渉ついては最終結論を決断しなければならない期日が迫っていた。このような状況から両首脳にとってこれらは何れも急を告げる課題であり、戦略性に富んだ難題である。
オバマ大統領と安部首相は相手の個人的な姿勢を見極め、政治的な交渉の余地を見い出し、しっかりとした対応をとる意思を確認し、二国間関係やアジア・太平洋に関する長期的なビジョンをお互いに確かめたいところだろう。この会談を成功裏に終わらせるには、両国は三つの主要な分野に関して明確化する必要がある。つまり、それは「安全保障」、「通商」、および「共通の価値観」についてだ。
安全保障に関しては、両国は北朝鮮やイランにおける核兵器開発や核拡散を防止したい点で共通の認識に立っている。同様に、中国や北朝鮮によるサイバー攻撃やスパイ行為に対しては相互の連携を保つべきであろう。
両首脳は中国に対して東シナ海の尖閣諸島周辺で中国の公船が日本の漁船を追い掛け回すことを止めさせるにはどうしたらいいかを討議したいことだろう。オバマ大統領は尖閣諸島の日本政府による施政権は変わらないとする米国政府の認識を再度表明する必要があるだろう。北京政府は日本に対して交渉のテーブルにつくよう強制するようなことをしてはならない。
阿部首相は集団自衛権に関する日本としての限界を再解釈する用意があることを提示し、自国ならびに同盟国の防衛のためにより多く貢献したいところだろう。オバマ大統領としては、安全保障担当官の引継ぎが起ころうとも、あるいは、国防予算の自動削減が始まろうとも、アジア・太平洋地域に於ける米国の関与を再調整することについての米国の意思に変化はない、と阿部首相に向けて強調したいのではないか。オバマ大統領は、新国防長官のジョン・ケリーを出来るだけ早目に同地域へ送り込み、米国の対外政策を強調する意味合いからも、この戦略的な閣僚の交代を支えるオバマ政権の決断を再確認したいのではないか。
この著者の予測は次第に詳細な議論へと展開しているのだが、全体を引用することは割愛したい。私が個人的に興味深く思い、再認識させられたのは冒頭の「この会談は日米の二国間関係だけではなくアジア・太平洋のより広い地域を将来何年間にもわたって規定するものとなるだろう」というくだりである。米国側から見ると、二期目に入ったオバマ大統領は、少なくとも、向こう4年間の米国側の方針を安部首相とのサミットの場でお互いに再確認しておきたい立場にある。首脳会談という性格から、当然ながらその通りである。
東アジア圏の一員として日本が対中国で戦略的な政策を取ろうとするならば、オバマ政権の世界観や深層心理を十分に分析しておかなければならない。これは素人目にも明らかだ。
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日米首脳会談の後、中国側からは直ちに反応があったことは言うまでもない。
例えば、中国日報の2月25日の報道[注2]。その報道振りは冷静であり、分析的だ。主要な点をここに収録すると、下記の通りだ。
阿部首相が期待を込めていたワシントン詣での日程については、突っ込んだ交渉の結 果、最終的には2月末と決まった。
しかし、苦労して準備したこの訪米もこの日曜日に終了。あるアジアのメデイアの報道するところによると、日本をかくまってくれる米国への日本の首相による「巡礼」の旅は不満足な結果に終わった。
安部首相が金曜日にオーバル・オフィスにおいてオバマ大統領と会談した際、阿部首相に対しては通常ワシントンを訪問する一国の首相が受ける派手なレセプションは行われなかった。
安部首相が金曜日にオーバル・オフィスにおいてオバマ大統領と会談した際、阿部首相に対しては通常ワシントンを訪問する一国の首相が受ける派手なレセプションは行われなかった。
金曜日のオバマ大統領との会談後に設けられたプレス・コンフェレンスは大規模なものではなく、米国側が用意したものは短時間で小規模な記者会見だけだった。そして、この記者会見ではオバマ大統領は「中国」あるいは「釣魚島」(つまり、尖閣諸島)という言葉を一度も口に出すことはなかった。
北朝鮮の三回目の核実験の挑発に対しては強硬な対応を約束する一方、オバマ大統領は中国に対して間違ったメッセージを与えないようにと細心の注意を払っていた。
北朝鮮の三回目の核実験の挑発に対しては強硬な対応を約束する一方、オバマ大統領は中国に対して間違ったメッセージを与えないようにと細心の注意を払っていた。
日本の記者からの釣魚島問題に関する質問を安部首相が取り上げると、オバマ大統領はこの問題に触れることを拒み、そそくさと記者会見を終了させるべく指示を出した。
上記の内容が当を得た、客観的な分析であるかどうかは専門家の方々にお任せしたい。分析結果は分析者の軸足が何処に置かれているかによって様々な筋書きとなることだろう。とは言っても、上記の内容の半分でも本当であるとしたら、私たちが日本の主要メデイアから学んでいる内容は非常に貧弱なものだという可能性が残る。
上記のような内容が日本の国内でも日米首脳会談の様子として報道されていたかどうかは知る由もないが、日本の主要メデイアだけに頼っていると、特に、主要メデイアを何紙も購読するような贅沢な選択肢を持ち合わせない一般大衆の理解はかなり偏向したものに終わってしまうのではないか。
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日本国内ではどうだったのだろうか。私はブカレストに住んでおり、日本の新聞を隅から隅まで読むことはできない。
インターネットには各新聞社の記事や週刊誌の記事が掲載されている。テーマが決まったら、そのテーマでインターネット情報を検索する。この検索によって、新聞、雑誌、ブログ、メールマガジン、と広範な情報源を漁ることが可能だ。英語でも同じ作業を繰り返す。中国や韓国発の新聞記事は英語での検索によって見つかることが多い。
「天木直人のメールマガジン」2013年2月28日第147号[注3]によると、日本の主流メデイアの中では毎日新聞が他社とはまったく違った報道をしていたそうだ。この指摘は日本の主流メデイアの現状を学ぶ上で非常に重要だ。
「『日米の絆と信頼を取り戻し、緊密な日米同盟が完全に復活した』―オバマ大統領との会談を終えた安倍晋三首相はこう自賛した。ところが中国の新華社電は『日本は冷遇された』と報じた。まるで逆だ。東シナ海で日米同盟と対立する中国が会談の成功を喜ばないのはわかる。だが、『絆の回復』と『冷遇』とでは違いすぎる。どちらが事実により近いのか・・・」
こういう書き出しで始まる2月28日の毎日新聞「木語」という論評コラムは極めて重要な意味を持っている。
こういう書き出しで始まる2月28日の毎日新聞「木語」という論評コラムは極めて重要な意味を持っている。
なぜならば書き手の金子秀敏専門編集委員は新華社電の見方がより正しいと認めているからだ。
大手メディアの幹部がこのような認識を示すことは例外的だ。それほど安倍首相の自画自賛はうそ臭いということだ。
しかし私がこの論説で注目したのはその事ではない。
金子秀敏編集員がその根拠にあげた「オバマ大統領は中国に配慮していた事は事実だ」と書いている事だ。
そしてその根拠としてオバマ大統領は中国や尖閣問題を一言も口にしなかった事を挙げているくだりである。
金子氏は要旨次のように書いている。
同盟関係の復活を評価するには安保問題でどのような話し合いが行われたかをみなければならないが、日本の報道はTPPの事ばかりだ。唯一安保問題で報じられたのは普天間の辺野古移転を急ぐことと、Xバンドレーダーの京都・丹後半島への配備だけだ。
ところがこの丹後半島へのXバンドレーダー配備は北朝鮮の弾道ミサイル追迎撃を目的とするもので、これまで米国が発表していた中国に対するミサイル迎撃包囲網からの変更である。
なぜ変わったのか。オバマ政権が対中政策を修正して中国にサインを出したのだとしたら、『日米の絆』で尖閣問題が日本に有利になったと思うのは早い、と書いている。
このような分析はこれまでの日本の報道でははまったく報じられなかったことだ。
それにも関わらず金子委員が知っているということは日本の主要メディアは皆知っているということだ。
今度の日米首脳会談で何が話し合われたのか。
我々は正確なことは何も知らされていないのではないか。
メディアは安倍政権にとって都合の悪い事は一切書かないのではないか。
大手メディアの幹部がこのような認識を示すことは例外的だ。それほど安倍首相の自画自賛はうそ臭いということだ。
しかし私がこの論説で注目したのはその事ではない。
金子秀敏編集員がその根拠にあげた「オバマ大統領は中国に配慮していた事は事実だ」と書いている事だ。
そしてその根拠としてオバマ大統領は中国や尖閣問題を一言も口にしなかった事を挙げているくだりである。
金子氏は要旨次のように書いている。
同盟関係の復活を評価するには安保問題でどのような話し合いが行われたかをみなければならないが、日本の報道はTPPの事ばかりだ。唯一安保問題で報じられたのは普天間の辺野古移転を急ぐことと、Xバンドレーダーの京都・丹後半島への配備だけだ。
ところがこの丹後半島へのXバンドレーダー配備は北朝鮮の弾道ミサイル追迎撃を目的とするもので、これまで米国が発表していた中国に対するミサイル迎撃包囲網からの変更である。
なぜ変わったのか。オバマ政権が対中政策を修正して中国にサインを出したのだとしたら、『日米の絆』で尖閣問題が日本に有利になったと思うのは早い、と書いている。
このような分析はこれまでの日本の報道でははまったく報じられなかったことだ。
それにも関わらず金子委員が知っているということは日本の主要メディアは皆知っているということだ。
今度の日米首脳会談で何が話し合われたのか。
我々は正確なことは何も知らされていないのではないか。
メディアは安倍政権にとって都合の悪い事は一切書かないのではないか。
そしてこの金子委員のようにみずからの小さなコラムのなかでそれとなく書いてジャーナリストとしての後ろめたさを晴らしているのではないか。
日本は安全保障政策という日米同盟の根幹の部分で米国に振り回されているのに違いない。
私はそう思ってこのコラムを読んだ(了)。
日本は安全保障政策という日米同盟の根幹の部分で米国に振り回されているのに違いない。
私はそう思ってこのコラムを読んだ(了)。
天木直人氏が引用した毎日新聞の記事の中には、「オバマ大統領は中国や尖閣問題を一言も口にしなかった」というキーワードが見られる。これは新華社の報道に基づいたもののようである。一方、私が上記に引用した記事は中国日報の報道だ。中国のメデイアは揃って米国政府の中国に対する姿勢を中国にとっては好意的なものだったと分析している。
翻って、中国と対決するために米国の肩入れを必要としている阿部政権にとっては、これらの中国のメデイアが報道した米国政府の姿勢は決して好ましい状況ではない。
環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加が確実になるなど、日本では一定の評価を受けている日米首脳会談が、中国メディアでは冷ややかに報じられている。
尖閣諸島問題についてオバマ大統領から特に発言がなかったことを根拠に、「その『タカ派』的態度を抑えざるを得ない」と安倍晋三首相を揶揄してもいる。
中国国営の新華社通信は2013年2月23日、「安倍首相は米国で冷遇された」と題する国際論評記事を配信した。記事では、訪米は安倍首相の「念願が叶って実現した」が、米国の冷淡な態度で「(安倍首相の期待は)『取らぬ狸の皮算用』で、その『タカ派』的態度を抑えざるを得ない」と論じた。
記事では、会談や記者会見の時間が短かった上に、晩餐会がセットされずに昼食会にとどまったことなどを「冷遇」の根拠として挙げている。また、安倍首相は尖閣諸島問題でオバマ大統領の支援を取り付けることを希望していたが、空振りに終わったことも指摘。その背景を、「米中の経済、政治、軍事、文化交流は絶えず深くなっており、中国の米国に対する戦略的重要性は増している。オバマ政権で最も重要なのは経済政策で、戦略面で米中関係の発展を重視せざるを得ない。そのため、核心的な利益ではない尖閣諸島の問題で、軽々しく中国と事を構えることはできない」と独自な分析を披露、オバマ政権が中国を重視し、配慮したためだとした。
新華社以外にも広州日報や光明日報が同様の指摘をしている。不用意に日本に肩入れすることで米中関係の悪化を避ける狙いが米国側にある、という見方だ。
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毎日新聞が小さな記事ながらも日米首脳会談の様子を分析し報道してくれたことはありがたい。しかし、他の主流メデイアは関心を示さなかった。ジャーナリズム精神は何処へいってしまったのか。残念なことだ。日本の主流メデイアに対する最大の懸念あるいは不満は「透明性が保たれてはいない」という点に集約されるのではないか。
一方、メールマガジンやオンライン・メデイアは一味違う。そこには少しでも真理に近づこうとするジャーナリズム精神が伺える。
余談になるが、英国のガーデイアン紙は「オープン・ジャーナリズム」に徹することがメデイアが今のデジタル時代を生き抜く唯一の方法だと公言している[注5]。
余談になるが、英国のガーデイアン紙は「オープン・ジャーナリズム」に徹することがメデイアが今のデジタル時代を生き抜く唯一の方法だと公言している[注5]。
同紙は購読者が作る記事を掲載した最初の新聞のひとつであり、目的を達成するためにインターネットでさまざまな人の助けを得て報道内容を完成させるという手法を編み出した。ガーデイアンの編集長、アラン・ラスブリッジャー氏は「ジャーナリストだけがこの世の専門家という訳ではない」と言っている。つまり、社外のさまざまな人たちと一緒に新聞記事を作りたいと言っているのである。この編集長の言葉を聴いたら、NHKのアナウンサーを辞職することになった堀淳さんは小躍りするに違いない。
最も興味深い点は、ガーデイアン紙がオープン・ジャーナリズムを作り出そうとしているのではなく、今何かがジャーナリズムの世界に起こりつつあると述べていることだ。業界を取り巻く変化に対する適応力を自覚することによって同紙は今新分野を開拓しつつある....
日本のメデイアの透明性を論じるに当たっては、このオープン・ジャーナリズムという方向性は非常に示唆に富んでいると思う。遅かれ早かれ、日本のメデイアは生き残りのためにこの新しいパラダイムに挑戦せざるを得ないと思う。
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日本政府にとっては米国の本当の姿を認めることが不都合なのだろうか。あるいは、米国政府の深層心理を分析することはタブーだとでも言うのだろうか。現実の姿が目と鼻の先にありながらもそれを見つめようともせず、現実からは乖離した世界に身を置いていたいのだろうか。もしそうだとすると、日本の政治の世界は不健全極まりない。
「日本は安全保障政策という日米同盟の根幹の部分で米国に振り回されているのに違いない」という天木直人氏の指摘は鋭いと思う。さもありなんという感じだ。
4月14日の報道によると、米国のケリー国務長官は14日、日本と中国が対立している尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題について、「日本の施政下にあると認識しており、現状を変更しようとする一方的な行動に対して米国は反対する」と述べた[注6]。
この小さな報道記事は原題が「U.S. Opposes ‘Coercive’
Action on Dispute East China Sea Islands」という英文記事の抜粋である。そこで、原典を覗いてみると、上記の引用部分の直後にもうひとつの文章がある。そのくだりは「米国は日本では尖閣諸島、中国では釣魚島として知られている島に関する論争についてどちらか一方の肩を持つことはしない、とケリー国防長官が述べた」となっている。クリントン前国防長官以来の米国の決まり文句である。
米国政府は日本に対して中国包囲網という外交政策を押し付け、日本政府はすっかりその気になっている。その一方で、米国はその存在感が大きくなる一方の中国に対して経済、外交および軍事の面で細心の注意を払っているのが現状だ。そして、米国政府は中国に対して間違ったサインを送らないようにしていると公言してさえもいる。そこには米政府の最も得意とするダブルスタンダードを見る思いがする。米国の政府内あるいは議会には様々な意見や違った信条をもつ人たちがいる。まったく違った意見がひょいと顔を出すことがよく起こる。
したがって、「尖閣諸島有事の際米国はどうするのか」という命題に関しても様々な意見がある。
軍事専門家のひとつの意見としては米軍のデンプシー統合参謀本部議長に代表される意見。来日中のデンプシー統合参謀本部議長は4月25日に「日本との関係を犠牲にしてまで中国との関係強化を優先するかと聞かれたら、答えはノーだ」と述べている[注7]。また、「アメリカは日米安全保障条約に従って行動する」と述べ、尖閣諸島についても防衛義務を果たしていく考えを示した。現役の職業軍人の考えとしては当然の内容と言えようか。ただし、尖閣諸島の防衛のために中国を相手に戦争をするのかしないのかを決めるのは統合参謀本部ではなくて、あくまでも米国の議会だ。
その対極にあるのはワシントンの戦略研究シンクタンクの「海軍分析センター」の上級研究員のマイケル・マクデビット氏だ[注8]。その要旨は下記のごとくだ。
三十余年の現役軍人としてはほとんどの年月をアジア関連で過ごし、駆逐艦や航空母艦の艦長から太平洋統合軍の戦略部長、国防長官直属の東アジア政策部長などをも歴任している。米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は4月4日、「東シナ海と南シナ海での中国の海洋紛争」と題する公聴会を開いた。中国が東シナ海や南シナ海で領有権をいかに拡大し、主張の衝突する他国にいかに戦いを挑むか、というのが主題である。そこにこのマイケル・マクデビット氏も招かれ、その場でマクデビット氏が述べた提案の核心は「尖閣諸島の防衛に関して、米国がいかに日本の同盟相手であっても、あるいは、米軍がいかに中国の尖閣攻撃への反撃を望んでいたとしても、実際の中国軍との戦闘は日本の本土が攻撃された場合のみに留まるべきだ」というものである。
イラクおよびアフガニスタンへの派兵ですっかり消耗した米国としては中国と戦争を起こすという選択肢はあり得ないのではないか。国内の世論が許さないだろう。
今後、尖閣諸島有事の際に米国政府が取るべき姿勢は米軍の直接介入と非介入との間で揺れ動くことだろう。米政権の内部は一枚岩ではないと指摘されて久しい。しかしながら、結局、米国としては中国との軍事衝突はあくまでも回避したいというのが集約された本音なのではないか。日米安保条約の下で米軍がどうしても介入しなければならないのは日本の本土が中国軍の攻撃を受けたときだけだという論理は今の米国には非常に説得力をもって聞こえるのではないだろうか。
何れにしても、尖閣諸島問題では米政府の高官あるいは米軍トップの発言によって一喜一憂させられる状態はしばらく続きそうである。この問題は日本の国のあり方や憲法にまで遡って論議しなければならないテーマでもある。
参照:
注1: What to Expect from Obama and Abe’s U.S.-Japan Summit: By Scott Harold, Feb/22/2013, www.rand.org › The RAND
Blog
注2: Abe fails in US islands mission: By Chen Weihua, China Daily (中国日報), Feb/25/2013, www.chinadailyapac.com/article/abe-fails-us-islands-mission
注3:「日本は冷遇された」事を認めた毎日新聞編集委員:天木直人のメールマガジン2013年2月28日第147号
注4:中国メディア「オバマ大統領は安倍首相を冷遇」 米国が「対中配慮」、肩入れ避けると分析:J-CASTニュース>ニュース>社会、21013年2月25日
注5: Guardian
says open journalism is the only way forward: By Mathew Ingram, Mar/01/2012, newsle.com/article/0/12659687/
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