2014年6月21日土曜日

「米国の核戦力の優位性」は単なる誤謬に過ぎない


こんなことをあれこれと考えなければならいとは嫌な時勢になったものだが、米ロ間において核戦争が起こる可能性を考えてみよう。
多くの識者によって指摘されているように、ウクライナ紛争はウクライナの国内問題であると同時に米ロ間の地政学的な綱引きでもある。このテーマを少しでも冷静に考えてみたいと思う。
米国は先制攻撃によってロシアを叩きのめすことができると言っている。これは2006/2007年に遡る。
先制攻撃の有効性は、理論的には、ロシアの大陸間弾道ミサイルのサイロ(固定式)や移動式ミサイル発射装置のすべてを先制攻撃によって破壊することによって初めて100%成立する。たとえ1個か2個のロシアの大陸間弾道ミサイルのサイロ(固定式)あるいは移動式核ミサイル発射装置が無傷のままで残っていたら、米国は深刻な反撃を受けることになる。この場合、今や多弾頭核ミサイルの時代であることから、先制攻撃を開始した米国が無傷の勝者として残り得る可能性は極端に低下する。
勝者がいないこの状況は「相互確証破壊」と言われている。米ロ間ではすでに相互確証破壊が成立している。先制攻撃は自殺行為に等しいということだ。それが故に、冷戦時代には米ロ間では軍事的直接対決は起こらなかった。
一方、米中間では相互確証破壊が成立しているのだろうか?ウィキペデアによると、「中国は核戦力の近代化により相互確証破壊の成立を目指しており、2020年代には相互確証破壊が成立すると予測されている」 早ければ今後10年足らずの話だ。
日中の場合はどうか。かって、自衛隊は日本が核武装をするべきかどうかを詳細に分析したことがある。その結果はどうだったか?中国は広大な大陸国家であって、その懐は非常に深い。日本が先制攻撃を行うことによって中国のすべての核ミサイルを破壊することは困難。したがって、日本は報復攻撃を受ける。その結果、1発か2発の核ミサイル攻撃で日本は戦争遂行能力を失うとの結論であった。たとえ日本が核ミサイルを持ったとしても、日中間では相互確証破壊とはならず、国土が小さい日本は壊滅的な破壊を受ける。
今日、移動式核ミサイル発射装置や潜水艦はGPSによって自身の位置を正確に割り出すことが出来るようになった。標的を正確に狙い得るという意味では、GPSの重要さは今まで以上に増しているのではないだろうか。今や、固定式の大陸間弾道ミサイルに大きく依存していた冷戦時代とは様子がまったく違う。GPSが軍事的に重要な位置を占めているという事実は、ロシアが今年のウクライナ紛争によって米国・EUNATOからの攻勢に遭い、同国が最近衛星航法システムに関して中国と技術協力を結ぶことを決定したことに色濃く反映されている。米国が運営するGPSに頼っていてはロシアとしては自国の安全保障を維持できないと考えたからだ。 

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冷戦が終結してから20数年となる。2014年はウクライナ紛争で始まった。この紛争がウクライナ国内の単なる紛争ではなく、米ロ間の戦争に発展する危険性を孕んでいることが多くの識者によって指摘されている。
今、核戦争による相互確証破壊は米ロ間ではどのように認識されているのだろうか?
この問いに対する答えが2007年の記事 [1] に見つかった。これは「米国の核戦力の優位性」に対するロシア側の反論である。
この2014年の夏、米ロにおける政策決定者たちは何を考えているのかが非常に気になる。
それでは、この記事を仮訳して、皆さんと共に理解を深めたいと思う。 

<引用開始>
米国とロシアが核戦争に突入した場合両国はお互いに生き残ることはあり得ないことから、核戦争は断じて始めてはならないということを永久に肝に銘じておくことが大切である。
「フォーリン・アフェアーズ」誌の20063月・4月号はリーバーおよびプレスの共著による「米国による核戦力の優位性が始まった」と題するを記事を掲載した。それによると、「間もなく、米国はロシアや中国の長距離核ミサイルを先制攻撃によって破壊することができるようになる」と述べた。著者らは「相互確証破壊の時代は間もなく終わる」と結論付けた。
この記事が対外問題評議会によって発行されたことから、ブッシュ政権の公式見解であると見なされている。それ以降、ロシアでは鋭い批判が広く寄せられている。
こういった反応は米国とロシア両国間の関係の悪化に繋がるとわれわれは思う。特に、核兵器管理の分野ではことさらにそうだと言える。「核戦力の優位性」は誤謬に満ちた論理と問題視される手法との産物であることから、これは不幸でもあり、まったく不必要でもある。
ロシアに対する米国の「核戦力の優位性」に関するリーバーとプレスの結論ならびに表の中に示された計算結果には誤りがある。彼らが設定した初期値は豊富に採用され正確ではあるのだが、最終結果を評価するモデルと方法は正しくはない。ロシアに対する米国の「核戦力の優位性」といった現象に関してはわれわれは懸念を隠すことは出来ないが、そういった状況は存在してはおらず、将来もあり得ないとわれわれは信じている。
われわれの論点を下記に示そう。
大規模な核攻撃がもたらす戦略的戦果を評価するに当たっては、そのような攻撃が引き起こす生態学的な影響について初歩的な評価を行うべきである。何故ならば、核爆発による影響は攻撃者ばかりではなく世界全体にとっても受け入れることができないほどに深刻であるからだ。しかしながら、リーバーとプレスはこの点をまったく無視している。
生態学的な詳細調査にはこの種の攻撃がもたらすすべての面を網羅しなければならない。たとえば、ロシアの領土内で炸裂する何百個もの米国の核弾頭がもたらす影響、何千個ものロシアの核弾頭の破壊、ならびに、それによって起こる二次的な影響、ロシアの反撃に対する米国の弾道ミサイル防衛(BMD)システムによる迎撃、もしBMDが機能しなかった場合は米国領土内でのロシアの核ミサイルが爆発する、等。これらの予測結果を受け入れることができるかどうかを最終的に判断するのは一握りの軍の高官ではなく市民たちであることから、何れにしても、この種の予測結果は一般に公開しなければならない。
リーバーとプレスはたったひとつのシナリオを調査しただけだ。それは「平和時の奇襲攻撃」(SAPTA)というシナリオだ。彼らはこのシナリオは「あり得ない」としているものの、この特異なシナリオを自分たちが導いたこの上なく重大なすべての結論の基礎として用いている。われわれはモラルや倫理的な理由をここで論じようとする積りはなく、むしろ、この手法が機能不全を導く政治的ならびに軍事・技術的な諸問題点に焦点を当ててみたいと思う。 
第一に、SAPTAを実行するためには、国家指揮最高部(NCA)は本行動を起こすための特殊条件を明確にし、保持していなければならない。これらの条件は議会による承認が必要となる。しかし、そうした条件は存在してはいない。
第二に、NCAは第一撃を実行するに先立って、この深刻な意思決定を市民に伝える義務がある。時間的な余裕を与えることによって、攻撃がもたらすかも知れない悲劇的な影響から市民たちが逃れ、防護策を取れるようにしなければならない。
第三に、第一撃を加えるに当たっては、戦略的核戦力の枠内ではいくつかの組織的および技術的な手順を実行する必要がある。平和時には、人的な過ちや事故または妨害工作を避けるために設けらている数多くの手順や技術的な障害が存在するからである。最初の核攻撃を与える前の予備段階としてそういった障害を取り除くためには、それぞれ異なる組織の階層で仕事をしている非常に多くの人員が参画することを必要とするだろう。
「奇襲攻撃」のための準備として必要な上述のような状況を実施しようとすると、それを隠し続けることは技術的には不可能だ。したがって、相手側にはある程度の時間的余裕が与えられ、相手側は戦略的核戦力の戦闘即応性を高めることが可能となる。ロシアがそうしたならば、リーバーとプレスが自認しているように、ロシアからの核による反撃は不可避となる。
また、リーバーとプレスは、ロシアの早期警戒システム(EWS)はロシアのすべての核ミサイルを破壊するような米国からの大量攻撃を完璧に見い出すことはできないと想定している。「米国からの攻撃の結果起こるロシア側の深刻な問題はEWSを活用して反撃に出ることができるかどうかだ(と彼らは言う)。つまり、ロシアの核戦力が破壊される前に素早く反撃をすることができるかどうかだ。ロシアがこれを首尾よく実行できるとは思えない。」 
「…とは思えない」といった単なる表明ではなく、このような重大な結論を下す際はもっと真面目な計算を要するとわれわれは信じている。ロシアのEWSロシア側のすべての核ミサイルを破壊するような米国からの大量攻撃を完璧に見い出すことはできないということを証明することが必要であろう。
ご指摘の通り、ロシアのEWSは今日弱体化している。しかしながら、米国の攻撃のほんの小さな一部であってもそれを検知することが可能であれば、ロシア側が「警報による発射」(LoW)の方針を活用して反撃に転ずる可能性はもはや排除することはできない。すなわち、核爆発が起こってから米国からの攻撃を確認するのではなく、核爆発が起こる前に反撃のミサイルが発射されることになる。ロシア側がLoWによる反撃を行う場合、その核弾頭の数は、「攻撃を受けてからの発射」(LuA)の場合と比較すると、遥かに多くなる。
こうして、核攻撃の生態学的な許容性、奇襲攻撃の命令を下しそれを実行する際の手順上および技術面での複雑さ、ならびに、ロシアのEWSはまったく使い物にはならないという想定のすべてがひとつの行動を支えることとなり、そこでは余りにも多くの仮定を必要とする。もっともらしく定義された「核戦力の優位性」はそういった仮定の上に成り立っている。
「フォーリン・アフェアーズ」誌の記事の詳細は「International Security」誌の2006年春号に掲載されている(タイトル:“The End of MAD? The Nuclear Dimension of U.S. Nuclear Primacy”を参照)。しかし、彼らのこのもっと長文の記事においても、リーバーとプレスが採用した手法の特性がそのまま見られる。
たとえば、彼らはこう記述している。「ロシアの早期警報システムはロシアの指導部に反撃に必要となる十分な時間を与えることは多分ないだろう。事実、同システムが何らかの警報を与えてくれるかどうかは疑問だ。ステルス性の高いB-2爆撃機は発見されることもなくロシアの領空へ侵入することができるだろうと思われる。さらには、低空を飛行しステルス性の高いB-2爆撃機はロシアの領空の外側からステルス性の高い核クルーズミサイルを発射することができるだろう。これらのミサイルは小型で、レーダー電波を吸収し、低空を飛翔することから、爆発を起こす前に検知されることはないだろうと思われる。」 [訳注:原文では著者が強調したい言葉は大文字で記載されている。著者の意図を反映するために強調されている言葉の訳語には下線を施した。] これはもう真面目な証拠を論じる言語ではない。特に、非常に重要なテーマを扱う記事においてはなおさらのことだ。
リーバーとプレスは「われわれのモデルはロシアに対して彼らの核戦力を成功裏に無効にすることができることを証明するものではない。このモデルは米国が核による先制攻撃を仕掛けることを想定するものでもない。米国の指導者が成功に高い自信を持っているとしても、ロシアからの反撃は甚大なリスクとコストをもたらすことだろう」と述べている。われわれは次のような問い掛けをしなければならない。「もしそうならば、平和時の奇襲攻撃が妥当な確率で成功をもたらすという彼らの考えは一体どのように展開されたのだろうか?」 と。
International Security誌にはこのモデルの詳細が掲載されているが、それに関するわれわれ自身の評価を下記に示そう。
著者らは解析的な種類のモデルを使用した。そのモデルで検討されたプロセスは数式を用いて再現されている。しかしながら、解析モデルを通じて核戦争を多少なりとも正確に記述する作業は絶望的であることが専門家の間ではよく知られている。
非常に多くの要因を考慮に入れなければならない。たとえ誰かがこれらの要因のそれぞれに関して数式を提供することができたとしても、それらを統合して複雑なプロセスの枠内でひとつの作戦とすることは不可能だ。
如何なる場合においても、「ひとかたまりとなった解析」を正確に評価することは想像以上に困難である。われわれはそのような研究には解析的模倣モデル(SIM)が好ましいと考える。
リーバーとプレスはこの困難さを十分に認識していたという事実は彼らの計算にはたったふたつの簡単な数式が用いられているだけであることからも明らかだ。そのひとつはロシアの任意の標的に与えられる「致死距離」を算出する数式で、もうひとつは米国の選ばれた弾頭に関する「一発だけで破壊する確率」を計算する数式である。彼らはロシアの目標を即時に破壊するプロセスをモデル化しており、具体的に一対の「核弾頭目標」となるような種類に関してだけである。著者らは次のような人工的な図式を提案している。つまり、米国の弾頭はロシアの目標に近い位置に「存在」し、時刻「X」の時点にすべての弾頭が同時に爆発するとしている。個々の評価結果がどのようにしてロシアの全核戦力に関する結果を示す表に集約されるのかは彼らの説明からは明らかではない。
したがって、ひとつ言えることは著者らは核戦争という巨大な過程の中の最後の小さな部分について模擬試験をしようとしたに過ぎない。他の多くの非常に深刻な要素は彼らの研究の範囲外に残されたままだ。したがって、下記の事項が間違いなく遂行されるという可能性が100%もあるとは誰しも想定するべきではない。
a) 当直の米軍兵士全員が先制核攻撃の組織的構造(引用した文書にはこの組織構造は明らかにされてはいない)にしたがって発射命令を厳密に実施することは可能か。すなわち、米国の先制攻撃という現実の作戦では人的な要因が決定的に重要となる。当直の米軍兵士全員が一点の曇りもない平和な日に果たしてロシアに対して核ミサイルの発射ボタンを押すことができるのだろうか?
b) ロシア側はLoWまたはLuAの反撃の何れについても実行することができない。先制攻撃の変形は幾通りもあり得るが、それぞれに関してこのようなシナリオが妥当かどうかを考慮しなければならない。たとえば、米国のすべての核弾頭が同時に発射された場合は、それらが攻撃目標に到達する時間はまちまちだ。そうすると、ロシアは核爆発があったという情報を反撃のために用いることが可能となる。それどころか、もし先制攻撃の核弾頭がそれぞれの目標に到達する時刻が同一時刻であるとすると、米国の核弾頭に必要な全飛翔時間は十分に長くなり、これはロシア側が米国からの最初の発射を探知する上でより大きな可能性を与えてくれることになる。
c) ロシアの核戦力は皆が惰眠を貪っている。先にわれわれが述べたように、米国が先制核攻撃の準備をしていることがほんの少しでも検知されると、ロシアの戦略核戦力の一部は速やかに戦闘即応性を高める作業に入る。こうして、ロシア側の核戦力が無傷のまま残る可能性はリーバーとプレスが想定したレベルよりも遥かに高くなる。
d) ロシアの核戦力司令部(C3)の破壊。著者らは同司令部は完璧に破壊されるとしている。しかしながら、ロシアのC3のある部分は米国の先制攻撃の後でも無傷で残っている核ミサイルのすべてを用いて反撃することが可能だ。
リーバーとプレスが用いている先制攻撃の結果に関する「固定された」評価は根本的に不正確であることに留意することが非常に重要である。彼らの論拠には自分たちが言っていることとの矛盾がある。一方では、これらの試算は全てが95%の信頼区間に収まっていると彼らは言う。そして、他方では、残る5%の区間に残っている「非典型的な」結末に関しては彼らは何も論じてはいない。しかしながら、これらの「非典型的な」結末こそが、表4(モデルの評価結果)および図1-3に示された他の結末に比して、先制攻撃のリスクを評価する上ではより重要となる。
偶発的な性格を帯びる過程についての普通の研究では、通常、もっともあり得そうな結果を評価のために供することは正しい。また、非典型的な結果は無視する。リーバーとプレスはこれを核戦争のモデルに用いた。方法論上、これは深刻な間違いである。
核戦争がもたらす他には比べようもない結末はまったく反対の取り組みが必要となる。われわれは、たとえそれが非典型的なものであろうとも、もっとも在りそうもない結果を基にリスクの評価を行う義務がある。リーバーとプレスはまずはこの5%の部分を究明しなければならない。ところが、彼らはこの部分を無視してしまった!この計算には何百万人もの生命が含まれ、文明が滅びてしまう確率は非常に高い。このことを軽々しく扱うことはできない。
彼らはこう書いている。「核による反撃の可能性が100%を遥かに下回る場合、反撃が予測されるほとんどの国は反撃を思いとどまることだろう。しかしながら、批評家たちは第一撃には不確実性が付いてまわり、いかなる程度の不確実性であってもそれ自体が強力な抑止効果を持つと想定することによって、彼らは判断を誤る。敵国の地上核戦力を成功裏に破壊する可能性が95%もある国が成功率が10%しかない国と同じように用心深く行動するだろうと信じるに足る演繹的な根拠は存在しない。」
われわれの見解では、これはリーバーとプレスの見解の中では最大級の間違いである。決定的な要因は反撃によって引き起こされる受け入れることができない結果、すなわち、攻撃国自身が生存できるかどうかの問題である。これは確率や規模とは無縁だ。これは、モデル化で予想されるすべての結果の中で受け入れることが出来ない結末の確率は必ずしも決定的な役目を演じないからである。核戦争が実際に起こってしまうと、計算された結果のどれもが計算通りの結果を引き起こす。それは1回だけのことであって、複数回起こることはない。実際の核戦争が起こるのは一回だけであるからだ。
1987年に、米国の専門家がこう述べている。劇的に大きく異なるような結末は断じてあり得ないが、予測される結末以下の事象は起こり得る。予測される結末がもっとも起こり得ると考えられるだろうが、もっとも不吉なことにはそれらは起こらないかも知れない… しかし、ほとんど確実に起こり得そうなことは作戦企画担当者が気付いてはいないような「まったく未知の事象」が起こる。(出典:Managing Nuclear Operations, by A.Carter, J.Steinbruner and C.Zraket, 1987, p.612
最後に、リーバーとプレスは自分たちの結論が正しいことを確認するために頻繁過ぎるほどに歴史を引用している。彼らが提唱しているように、彼らは「冷戦」の経験から「米国の核攻撃の可能性は完全に捨てることはできない」と信じるようになった。しかしながら、歴史に類似点を見出そうとすることは常に危険を伴うとわれわれは思う。この議論においては、まったく許容できない。少なくとも、そのような結論は科学的な論拠を述べる基礎としては用いるべきではない。
われわれの結論:
数学的モデルやモデル評価の取り組みに見られる欠点から判断して、われわれはリーバーとプレスが導き出した主要な結論は正しくはないと思う。米国は、自国にとって受け入れることができないような損害をもたらすこともなしにロシアの核戦力だけを破壊することは不可能だ。われわれは自信をもって言いたい。米国もロシアも将来相手国に対して「核戦力の優位性」を確立することは決してない。
しかしながら、この究極の課題を適切に解決するためには、米国とロシアの専門家で構成された共同作業部会を設け、核戦争に関して現在および将来考え得るシナリオをモデル化する任に当たらせるべきである。こういった作業部会は、両国の安全保証に害を与えることもなく、既知のデータやさまざまな条件についてのデータの助けを借りて、運営することが可能である。そして、この共同作業の結果は一般に公開しなければならない。
米国とロシアが核戦争に突入した場合両国はお互いに生き残ることはあり得ないことから、核戦争は断じて始めてはならないということを永久に肝に銘じておくことが大切だ。
<引用終了> 

上記に引用したロシア側の反論を見ると、頷ける点がいくつもある。つまり、米国側の論理上の欠点が詳しく述べられており、両国が全面的な米ロ間の核戦争をそれぞれどのように捉えているかをかなり正確に理解することができる。特に、生態学的な考察ではロシアが示した論拠はわれわれ素人が知っている「核の冬」で表現されている相互確証破壊が明確に取り上げられている。
米国が言う「一方的に相手を叩く」というシナリオは一握りの軍人たち、あるいは、軍産複合体の夢想でしかないのではないか?特に、この論拠がブッシュ政権の頃に発表された事実を考えると、「米国の核戦力の優位性」の著者らは軍産複合体とブッシュ政権のために記述したものだと言えるような気がする。
2006/2007年のこれらのやり取りが米ロ間で行われた後さらなる論争の展開はあったのだろうか?
米ロ両国は相互確証破壊を正しく認識して欲しいものだ。政策立案者である議員や政治家は特にそうだ。また、われわれ一般庶民も本件を良く理解して、一部の政治家やメデアによる宣伝に惑わされることがないようにしなければならない。
「無知な政治家によって主導される無知な庶民」という構図はあってはならない! 

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617日、「米国のミサイル防衛システムは400億ドルもかけたというのに無用の長物だ」と題された記事が現れた。
要するに、これは今まで10年もかけて何回となく実射試験を行い、何回も失敗してきたが、またもや失敗したことについての報告である。通常、実射試験というものはうまく事が運ぶように準備される。それでも失敗が繰り返されているのだ。
この詳細については別途報告をしたいと思う。
 

参照:
1Nuclear “Primacy” is a Fallacy: By Valery Yarynich and Steven Starr, Global Research, Mar/04/2007

 

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