2015年3月26日木曜日

ミンスク和平をすかさず台無しにしようとするワシントン



ワシントン政府は「ミンスクー2」の和平努力を台無しにしようとしている。 

一方、米国の対ロ経済制裁に盲目的に追随して来たヨーロッパでは、ついに、現行の米国主導の対ロ経済制裁に関して「これでいいのか」、「自国の国益を優先するべきではないのか」という動きが出てきている。その背景は、何と言っても、この対ロ経済制裁はヨーロッパ各国に予期した以上に経済的打撃を与え、代償もなしに経済制裁を継続することは出来ないという現実が明確になって来たことだ。

ロシア議会の外務委員会でその議長を務めるアレクセイ・プシュコフは、西側は自分たちがロシアに課した経済制裁のせいで2014年に400憶ユーロ [訳注:1ユーロを130円とすると、約52千億円に相当] の損害を被ったと述べた [1]。ロシアが対抗して発動した農産物輸入禁止措置によってEUの農家が受けた損害は120億ユーロ [訳注:約156百億円に相当] となった。

そして、この対ロ経済制裁がロシアに対して効き目があったのかというと、それ程ではなかったようだ。アレクセイ・プシュコフによると、西側からの圧力があったにもかかわらず、ロシアは正の経済指標を維持し、貿易収支は80億ユーロ [訳注:約1400億円に相当] の黒字となった。もしもEUが対ロ経済制裁をさらに拡大するならば、ロシア側は農産物以外の分野で対抗措置を取る、と彼は言った。「EUが採用した政策についてはヨーロッパはその代価を自分で支払わなければならない」とプシュコフは言った。この場合、対ロ経済制裁は西側にとっては如何なる費用もかからず、損害もないという誤った幻想を抱くこと自体は非常に危険なこととなる。

加えるに、34日、プシュコフは非常に興味深い情報をツイッターで流している [2]米国務省はEU各国に対してロシアとの貿易を中止するように圧力をかけているが、ロシアの対米貿易は2014年に7パーセントも増加した、と。
対ロ経済制裁はこのような非常に基本的な点で米国とEUとの間に大きな矛盾を生じている。驚きである。
プシュコフのコメントは、ロシアとキプロスとの間で前週締結された合意を受けて、国務省の報道官であるマリー・ハーフが月曜日にヨーロッパ各国に対して対ロビジネスを行わない様にと改めてハッパをかけたことを引用したものであった。[訳注:226日のRTの報道によると、キプロスとロシアは既存の両国間の軍事協定を延長することに合意した。この合意によってロシア海軍の艦艇は補給や人道支援のためにキプロス港を引き続き使用することができることになった。ロシア海軍がキプロス港を使うことの見返りに、ロシア側は2011年にキプロスと締結した25億ユーロの緊急ローンを再編することに同意した。]

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ワシントン政府の動きについて考察してみたい。

目の前に展開されているウクライナでの戦闘や和平あるいはNATO高官または英国やポーランドの政治家がロシア・バッシングのために吐く言動の背景には米国の対ロ政策がでんと座っている。ウクライナ危機を理解しようとする際、この背景をどれだけ正確に理解することができるかが我々にとっては最大の課題である。1年前には霧に隠れていて見えてはいなかった山容が今や手に取るように見えるようになったという感じだ。山の頂に至るルートさえもがはっきりと確認できる程だ。

213日のある記事 [3] に注目してみたい。その記事の表題を仮訳すると、ずばり「ワシントンはすかさずミンスク和平を台無しに」だ。さっそく、この本文を仮訳し、詳しい内容を覗いてみよう。詳細を読んでいただくと一目瞭然だ。この記事の著者は今までにも私が何度か引用しているアイルランド人のブロガー、フィニアン・カニンガム氏だ。

<引用開始>

自尊心を傷つけられ、気分を悪くした米国とその従属国であるヨーロッパ各国は直ちにミンスク合意を台無しにする作業を開始した。和平合意の文言を歪曲し、この和平が直ぐにでも失敗に終わるようにロシアを罠にかけることを模索し始めたのである。

ワシントン・ポスト紙はベラルーシの首都ミンスクでの交渉が終了した数時間後には次のような見出しを掲載し、ペースメーカーとして走り始めた:「プーチン、ウクライナと停戦を発表」 
これはあたかもロシアこそが1年も続いている紛争の主役であり、そのロシアが今は和平を訴えているかのごとく描写しようとしている。

ジョン・ケリー米国務長官は、信頼できる英国やポーランドと共に、もしもミンスク和平が「全面的に実施されない」場合はロシアに対してさらなる経済制裁を課すと警告した。

「米国は20149月の停戦、ならびに、今回合意された停戦が全面的に実践された暁には対ロ経済制裁を徐々に縮小する用意がある」と、ケリーは声明文で述べている。

換言すると、次のようになる。ワシントンは依然として、ロシアは侵略者であり、ウクライナ紛争に責任があるという古臭い筋書きを広めようとしているのだ。「ミンスクの停戦合意が全面的に実践された暁には」と言うくだりは、米国は何時でも停戦を秘密裏に台無しにするライセンスを自分自身に与え、その不当な対ロ経済制裁をずっと維持し、キエフ政権に対しては約束した武器の供与を進めるという意味だ。 

ロシアのウラジミール・プーチン大統領が今週ミンスクでドイツのアンゲラ・メルケル首相とフランスのフランソア・オランド大統領と一緒に成功させた外交的クーデターに米国人が強いショックを受けたことは疑う余地もない。 

米国は先週ウクライナにはもっと強力な兵器を送り込むとの声明を発表したばかりであるが、そんな脅しにもかかわらず、プーチンとヨーロッパ側の二人の相手は17時間のマラソン交渉の末、何とか停戦に漕ぎつけた。この停戦はこの週末に実践に移されるが、はっきり言って、ウクライナ紛争を終結に導く可能性は決して大きくはない。この停戦は双方の軍隊の撤退や境界線、等、厄介な問題でいっぱいだ。分離派のドンバス地域の自治の在り方やキエフ政府が分離を求めるロシア人たちとの対話について準備ができているかどうかは明確だと断定するには程遠い。

そうとは言え、キエフ政府とウクライナ東部の分離派によるこの一片の合意書は5,500人もの犠牲者を出し、百万人以上もの難民を創出したこの暴力的な分離騒ぎにとっては、基本的には、歓迎すべきひとつの機会であるとも言える。プーチンがメルケルやオランドと一緒に、暫定的とは言え、この突破口を何とか実現したことは彼の外交上の功績あるいはやる気の賜であると言えよう。また、この展開は「ロシアは侵略者であり、ヨーロッパの平和にとっては脅威である」といった西側の公式見解を否定することにも繋がる。

ミンスク合意はこの紛争をキエフ政府とドンバスの分離派との間の内戦として組み立てている。ロシアは武力闘争を行っている両者の間に立って交渉の仲介役を果たすことによりこの紛争を和らげようとしている。

クレムリンの報道官、ドミトリー・ぺスコフは正に的を射ていた。ミンスクでの会談の後、彼はこう言った。「ロシアはこの和平合意の保証人であって、この合意内容を実践する側ではない。」彼は西側のメデアが言い張っている「モスクワ政府は紛争の当事者」を否定したのである。
「ロシアは紛争の当事者によって呼び出された国である」と、ぺスコフは言った。「我が国は紛争当事者に対してミンスク合意を全うするための一連の策について署名するように要求した国である。」 しかし、ロシアはこれらの策を実施する側の一員ではない。「我が国は保証人として位置し、これは使命として名乗り出たものであるが、明らかに、実施のために何らかの行動を起こす必要がある当事者とは異なる。単純に言って、我々には物理的にそうすることは不可能だ。何故かと言うと、ロシアはこの紛争の当事者ではないからだ」と、クレムリンの報道官は付け加えた。

この最近のミンスク合意を卑劣な批判で攻撃する役目は英国首相のデイビッド・キャメロンとポーランドの前大統領のドナルド・タスクの手に与えられ、二人はロシアについて中傷し、この紛争はウクライナに対する外部からの侵略であるとして再度でっち上げが行われた。 

キャメロンは、英国人特有の傲慢さをもって「プーチンは自分の行動を修正する必要がある」と言い、タスクはロシアの指導者を悪者扱いすることに加えて、彼は信用するには値しないとさえ仄めかした。

キャメロンは、木曜日、ブリュッセルでのEUサミットで話をした際にこう言った。「もしこれが本物の停戦であるならば、もちろん、それは大歓迎だ。しかし、何よりも重要なことは実際の行動であって、一枚の紙切れに記された文言ではない。プーチンが自分の行動を改めない限り、現行の経済制裁には何の変化も起こらないということをプーチンは知っておく必要があると私は思う。」 

現在欧州理事会の大統領の座にあるタスクはこう言った。「もしミンスク合意が実践されなかった場合には、我々は必要な策を取ることを厭わない。プーチン大統領の良識に対する我々の信頼には限度がある。これこそが経済制裁を維持している理由だ。」

西側が支持するキエフ政権は過去の停戦に何回も違反し、今日の暴力の拡大を招いてきた。この事実を前提にすると、今回の和平努力が長続きすると考えるのはいささかナイーブであろう。揺るぎのない政治的、経済的、ならびに軍事的な支援を米国から得て、キエフの暫定軍事政権はドンバス地域に対する犯罪的な戦争を行使することに勢いづけられてきた。キエフ政権による大規模で組織だって行われる戦争犯罪は嘘で固められ、何らの証拠もない「ロシアの侵略」という主張を続けることによって、ワシントン政府により上辺が飾られ、無実であるとされてきた。

何故かと言うと、これは米国が支援するウクライナでの政権転覆作戦によって、昨年の2月にはキエフに暫定政権が樹立されたからである。この動きは、ロシアを揺るがそうとするワシントンの長期的な目標から見ると基本的に予見されていたことである。今実行されつつある停戦の将来の見込みはどうかと言うと、矛盾語法めいたものとならざるを得ない。ウクライナでの和平の実現はワシントン政府にとってはロシアを覆すという地政学的な大目的には障害となるのである。

キエフの犯罪的な政権は自作自演のテロ活動を行う専門家になったかのような観があり、それと相俟って、同政権やそれを支援する西側は正式に、すべては「ロシアが支援する反政府派」のせいであるとしてきた。 121日のドネツクでの虐殺、124日のマリウポルでの虐殺、さらには今週クラマトルスクで起こった虐殺、これらすべては米国が支援し、訓練を施し、武器を与えて来たキエフ政権の武力勢力がしでかした自作自演であり、そのことを顕著に示す特徴を備えているのである。 

クラマトルスクでの虐殺については、ミンスク・サミットの前日、キエフ政権は「スメールチュ・ロケットが分離派によって支配されているゴルロフカ地域から発射された」と主張した。しかし、同地域は80キロも離れており、ロケットの射程距離外である。分離派はこの攻撃を否定し、しかも市民の居住地域は目標にはしないと言った。虐殺の数時間後、キエフのペトロ・ポロシェンコ大統領はクラマトルスクに到着し、病院のベッドで横たわっている犠牲者を見舞い、一緒に写真を撮る機会を逃さなかった。もしも反政府派のロケット攻撃が本当だったとしたら、攻撃に見舞われている町へポロシェンコが急いで出かけたということ自体が胡散くさい。また、彼は台本を読んでいるかのような調子で喋ったのである。「一般市民に向かってクラスター爆弾を使うとは残虐だ。一般市民が自宅でロシア人の武器によって殺されるなんて、人道に対する犯罪行為だ。」

その翌日、「激怒した」ポロシェンコはミンスクではプーチンと暖かい握手を交わしていた。ロシアの戦争犯罪ももはやこれまでという感じだった。 

過去のキエフ政権の行為から判断すると、「直近の停戦はたやすく台無しにされてしまうかも知れない」という言い方は控えめ過ぎる表現だ。キエフ政権がしなければならない事は戦闘を継続し、犯罪を犯すことである。これらすべてはロシアがミンスク合意を実施しなかった「証拠」として活用されるのだ。こうして、ワシントンとその忠実な同盟国である英国とポーランドは、西側のニュース・メデアの宣伝屋と一緒になって、ロシアは「全面的な実行はしなかった」として非難する。たくさんの米国製の殺傷兵器がウクライナへ運び込まれ、対ロ経済制裁はさらに強硬な段階へと引き上げられる。 

ロシアのウラジミール・プーチン大統領がウクライナ危機で優れた政治家としての指導力を発揮した事実は大きな信頼を受けるにふさわしい。問題は、米国人はまったく違った、汚らしいゲームに没頭しており、そのゲームには遵守しなければならない規則はないという点だ。  

© Strategic Culture Foundation

<引用終了>


この記事を読んでみて「面白いなあ」と感じたことがひとつある。

英語の記事を読む時、行間をどれだけ深く読めるかが英語はあくまでも外国語である我々にとっては最大の挑戦だ。それは英語国民と我々外国人との間に理解度を決定づける大きな分かれ道となる。しかしながら、この記事の著者は丁寧に解説をしてくれている。大助かりである。

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調査報道のベテラン、ロバート・パリーは、320日の記事 [4] で、最近のミンスク停戦に対するキエフ政権の対応を危険視していることを表明した。その一部を下記に示そう:

最近のミンスク合意を受けて、それを実施する法案に毒薬条項(つまり、政治的関係をわざと悪化させる条項)を盛り込むことによって、ウクライナ政府は内戦が再開されることを効果的に保証したと言えよう。米国の強硬派や主流メデアは、疑いもなく、少数派のロシア系住民やロシアのウラジミール・プーチン大統領を非難することだろう。

米国のメデアは所謂ミンスク―2合意の中の停戦条項に焦点を当てて来た。まず、彼らは停戦条項は反政府派やロシアによって台無しにされたと主張し、今は「停戦は不確かな状態にはあるものの、比較的成功している」と認めるようになった。しかし、ミンスクー2のもっと重要な点はキエフ政府とウクライナ東部の反政府派との間に対話の場を設けることによって内戦に政治的解決を促すことにある。こうして、2015年の末までには反政府派の地域に自治権を与えるとしている。

しかし、今週キエフのウクライナ議会で議決された停戦実施法は反政府派にはまずキエフ政府に対して降伏するよう求めており、その後で、連邦制の構造を決定する前にキエフ政府は選挙を行うとしている。

ミンスク―2の合意は選挙の実施やこれらの地域のための自治権の設立に向けて反政府派の代表者との対話を求めているが、キエフ政府の変化球は反政府派の指導者との対話を拒否し、このプロセスが前に向かって動き出す前にも、これらの地域に対する統制を樹立したいと主張している。事実、キエフ政府は反政府派の降伏を求めているのである。

ここには、著者が言っているように、ミンスク和平案を台無しにしようとするキエフ政府のはッきりとした意志が見られる。反政府派との対話ではなくて、降伏を求めている。

ところで、この1年間、ウクライナ紛争をさまざまな角度から観察してきて、我々庶民も多くの知識を得ている。キエフ政府の動きはワシントン政府の意向を100%反映したものであることを疑う人は、今や、いないのではないか。

著者はさらに下記の点にも触れている。

…「まずは降伏、それから交渉」を行うとするこの毒薬条項はメルケルとオバマが米国の強力なネオコン勢力を抑えることができる力量を果たして持っているのだろうかという懸念を起させる。何と言っても、ネオコンはロシアを孤立させ、オバマとプーチンの間に楔を打ち込もうとしてウクライナ危機を引き起こした勢力である。二人の指導者は2013年にシリアやイランとの緊張を和らげることに成功した。一方、当時、ネオコンはさらなる「政権の交替」を望んでいたのである。

NATOの欧州連合最高指揮官である米空軍のフィリップ・ブリードラブ将軍は、もっと多くの武器を送り込むことによって「プーチンの戦場での費用を引き上げる」ことができると述べたことが伝えられている。米国務省のヌーランド国務次官補は米国の政治家たちに言葉を挟んでこう言った。『あなた方には「自衛的システム」という言葉を使って欲しいと私は強調したい。プーチンの「攻撃的システム」に対して我々がキエフ政府に提供する武器は単に「自衛的」なものに過ぎないという点を強調するのだ。』 

当面は、ヌーランドや他の米国政府の高官たちの悪巧みや誘導によって、米国の主流メデイアは全体のストーリーからクーデターの部分を故意に除外してしまい、「クーデターは無かった」と言い張り、ウクライナ東部でロシア語を喋る少数派に対して戦闘を主導しているネオナチの武装集団の存在については、「そのようなものは私には何も見えないが…」との返事で受け流す始末である。

ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストおよび他の主要紙は、すべての出来事を「ロシアの侵略」であると説明し、プーチンは新たなヒットラーであり、ヨーロッパの全域を征服するためにすべての出来事を計画したと描写する。隣国のクーデターはプーチンには寝耳に水であったということは証拠を見ると明確であるにもかかわらず、米国のメデアはヌーランドが要請した宣伝路線を執拗に押し進めた。

こうして、もしも現行の停戦が破られ、虐殺が始まると、米国市民は誰もが『これはプーチンの仕業だ。彼が「侵略」と言う大きな計画の一部として停戦を破ったのだ』という説明を聞かされることになると推測しても間違いはない。そして、ヌーランドとヤツニュックによるミンスク―2の妨害交策はこの実に厄介なストーリーの次の章となるのだが、それは記憶の穴からするりと抜け落ちてしまうことだろう。

上述のふたつの記事の引用によって、ミンスク―2に対するワシントン政府の姿勢がヨーロッパならびに米国でどのように見られているかを垣間見ることができたと思う。しかし、周りに座る政治家たちに向かって「白」(例えば、攻撃的兵器)を「黒」(自衛的兵器)と言い含めるヴィクトリア・ヌーランドの姿は外交の世界に通じてはいない我々一般人にとっては想像に絶する風景である。

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米国のウクライナへの殺傷兵器の供与はまだ始まってはいないかのような印象を受けるが、現実にはすでに開始されているようだ。

ドネツクの反政府派の指導者であるアレクサンドル・ザハルチェンコは、324日、記者会見 [5] で、「米国はすでにウクライナへ武器を供給している。例えば、デバルツヴォでは我々は米国製の武器を目にしている。あれは殺傷兵器だ。NATOの飛行機は毎日のようにドニエプロペトロフスクやザポリズアあるいはハリコフの空港へ飛来している」と、述べた。

キエフ政府や米国の政治家の巧みな言い回しと西側の主流メデアとの協力関係によって、米国からのキエフ政権への殺傷兵器の供与という事実が見事にカムフラージュされていると言えよう。

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ミンスク合意を受けて、キエフ政権はすぐにでもドネツクとルガンスク両州の代表者との会話を始めるのかと思いきや、その気配はまったく見えない。要するに、この状況は米国がそのような意思を持ってはいないことを証明していると言えるのではないか。

ウクライナ国内では経済が疲弊する一方である。実質インフレ率は公式の数値よりは遥かに大きな値で、272%であるという。こうした経済環境の中にあって、現政権に対する一般市民の不満は高まるばかりである。彼らの気持ちとしては2回目のマイダン革命が新たに起こったとしても全然不思議ではないとの気分が醸成されつつあると伝えられている [6]

ミンスク―2の合意はその骨子が内戦の当事者間で対話を開始し、ウクライナからの分離を要求しているドネツクとルガンスク両州に自治権を与え、連邦制のウクライナを構築するという点にある。その趣旨でウクライナ、ロシア、フランス、ドイツの4カ国の首脳の間で合意に達した筈である。ところが、キエフ政権は対話を開始しようとはしない。ここには政治の貧困、あるいは、傲岸さを見る思いがする。

このような状況が続くようであれば、ウクライナの一般市民にとっては明らかに不幸なことである。それでもなお、状況に改善が見られないということは現キエフ政権を政治的、経済的、軍事的に後押ししている、つまりは、牛耳っている米国の、特に、ネオコン政治家の思惑こそが元凶であると言えよう。

米国は対外政策では何かにつけて「民主主義」や「言論の自由」あるいは「人権」を売り込もうとするが、そういった表向きのスローガンを主張すればするほど米国の本当の思惑はまったく別の所にあるのだと推測しても多くの場合間違いではない。

自分たちが持つこのような傲岸さに米国の政治家が気付き、自分たちの行動を変えるのはいったい何時になるのだろうか。永遠にないのだろうか。


参照:
1: West losing up to 40bn Euro from sanctions war - leading Russian MP: By RT, Mar/16/2015, http://on.rt.com/ivjktt

2:  Just Business: US Grows Russia Trade While Urging EU to Back Off: By Sputnik International, Mar/04/2015  

3: Washington Wastes No Time to Sabotage Minsk: By Finian Cunningham, Strategic Culture Foundation/Information Clearing House, Feb/13/2015

4: Ukraine’s Poison Pill for Peace Talks: By Robert Parry, Consortium News, Mar/20/2015

5: DPR Militia Leader: US Already Supplying Lethal Weapons to Ukraine: By TASS, Mar/24/2015 

6: Is There Another Maidan Brewing in Ukraine?: Josh Cohen, The Moscow Times, Mar/23/2015



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