2015年7月10日金曜日

対ロ戦において米海軍は何日持ちこたえられるか?



海軍の存在、特に空母の存在は米国の軍事力の中心的な存在であると信じられてきた。少なくとも我々素人にとっては、米海軍の華々しい存在感、特に、空母に搭載された航空機による制空権の確保を見ていると別様の考えは思いも寄らない程だ。

しかしながら、「対ロ戦において米海軍は何日持ちこたえられるか?」との表題を持つこの記事 [1] によると、まったく別の姿が現れて来る。

今何が起こっているのかと言うと、それは技術革新(特に、潜水艦)によって米空母の脆弱性が表面化してきたということだ。

列強が戦艦の建造を競争していた大鑑巨砲時代は、真珠湾の攻撃に見られるように、太平洋戦争の始めに日本人の手によって葬り去られた。日本の航空戦力は戦艦に対する航空機の威力を全世界に示したのである。そして、皮肉なことに、後に日本海軍を壊滅させたのは同じく航空戦力であった。不沈戦艦「大和」は航空機の攻撃を生き抜くことはできなかった。

今、現代の空母に関してもそれと同じような状況が起こっていると指摘されている。この記事を注意深く読むと、我々素人(少なくとも、私自身)はいとも簡単に主流メデアに洗脳されてしまい、疑問を持とうともしないでいたことに気づかされる。

この記事を仮訳して、その内容を皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>


Photo-1: 空母は、今日、空からでも、陸上からでも、あるいは海上からでも撃沈される可能性がある

米国は自らを世界の海洋に君臨する支配者であると見なしている。各国の軍事費ランキングを見ると、米国は後続の9カ国の合計金額よりも10倍も大きな軍事費を使い、米国はもっとも大きな海軍を擁している。ベトナム戦争後、米国は軍事的に弱い国だけを相手にしてきた。彼らは非常に自信が強く、どのような敵でも破壊することができると信じている。米国の若者が「米海軍 - 海は我々のもの」といったロゴ・マークを染め抜いたテイーシャツを身に付けていても、それは驚きではない。

多分、我々はこの誇りと傲慢さを米海軍の数量的な優位性によって満足しななければならない。米国は合計で10艘の空母(2艘は予備)を持っており、ロシアと中国はそれぞれ1艘だけである。

空母は米海軍の偉大な誇りであり、海の支配者であることを明確に示してくれることから視覚的にも完璧なツールである。したがって、大統領が国民に向かってこの偉大な帝国がまたもや英雄的な勝利を収めたという演説を行う時が到来すると、空母は決まったように演説の場となった。歴代の大統領は空母を好んで使った。

ジョージWブッシュ大統領が空母「エイブラハム・リンカーン」のジェット戦闘機に乗り込んで(いや、パイロットとしてではない)、「任務完了!」、「良くやった!」と述べて、国民に向かってイラク戦争が終わったことを宣言した時、彼の言葉は何と感動的だっただろうか。われわれ皆が良くわきまえているように、「イラクの自由作戦」という名の下に米国がイラクを破壊した。我々は今でもあの作戦が「自由」とどのように関わっていたのかと自問するが、それは別の問題だ。

演説家のためには格好の場であることに加えて、もちろん、空母は軍事目的を達成するためのものだ。空母は海上に浮かぶ空港であって、百機ものジェット戦闘機を戦闘の場所へ輸送する。これらの空母には最高の武器やレーダーおよび防衛システムが装備されており、今までのところ、脅威を経験したことはない。特に、今までは米海軍は自衛能力を持たない砂漠国家を相手にして、沖合に陣取っていたからだ。

しかし、米海軍がライバルの海軍と遭遇した場合はどうなるのだろうか?この寄稿の表題がすでに答を示唆している。つまり、それほど都合のよい状況になるとは限らない。愛国心が旺盛な米海軍のフンは自分のテイーシャツを急いでタンスの中に隠すことになるかも知れない。

70年代のこと、「核戦力化した海軍の父」と称されたリックオーバー提督は米上院での質問にこう答えた。「ロシア海軍との戦闘で我が国の空母は何日持ちこたえられるか?」との質問に彼は答えたのだが、彼の言葉は皆を幻想から目覚めさせるには十分であった。「空母が沈むまでに2-3日。軍港に係留されている場合は多分1週間。」 

ロシア海軍との戦闘の場合米空母がこのように非常に短時間のうちに破壊されるかも知れない理由は水面下での脅威、つまり、近代的な潜水艦による脅威によるものである。特に、ロシアの潜水艦は非常に強力であって、彼らの位置を特定することはそう容易くはないことから、彼らは巨大な戦艦や空母を一瞬のうちに撃沈することが可能だ。したがって、海面下で制海権を有する敵と渡り合う際には、米海軍の弱みがその脆弱性となる。もちろん、米国の軍事アナリストはこの弱みを理解してはいるが、米海軍は依然として空母や巨大な戦艦を有しており、「大きければ大きいほどいい」とのドクトリンをどうして維持し続けるのだろうかと誰もが不審に思うのではないか。

戦闘で勲章を授与されたベテランであり、何冊もの著書を書き、博士号を有し、軍事アナリストでもあるダグラス・マクレガー大佐はこう説明する。「戦略的にはまったくナンセンスだが、巨艦の建造は大量の雇用を産んでくれる。」 

ロシアの潜水艦や魚雷ならびに対艦ミサイルの脅威は米国人はよくわきまえている。これはロジャー・トンプソンの著書「Lessons Not Learned: The U.S. Navy’s Status Quo Culture」も指摘している事実である。その要約を下記に示してみよう。

ハワード・ブルームおよびダイアン・スター・ペトリク・ブルームが2003年に忠告しているように、ロシアと中国は今や両者とも破壊的なSS-N-22サンバーン・ミサイルを配備している。この強力な長距離ミサイルは核または通常の弾頭を搭載することが可能で、それを探査し、破壊することは非常に難しい。ジェーン年鑑の情報グループによると、同ミサイルはいかなる米国の空母を相手にしても、それを破壊するに十分な能力を有している。さらに詳しく言うと、テンプレーク(海軍アカデミー卒)およびトリプレットは、このサンバーン・ミサイルは単一目的のために設計されていると警告する。つまり、その目的は米国の空母やイージス巡洋艦を撃沈することにある。

SS-N-22ミサイルは海面すれすれに飛び、目標に達するまでは音速の2.5倍の速度で飛行し、 目標の近傍で高度を上げ、目標艦の甲板に向けて急降下する。米海軍はこのミサイル・システムに対抗する防衛手段を持ってはいない。退役したエリック・マクヴェイドン提督はこう言う。「米第7艦隊を2回も撃沈する能力をもっている。」

この基本的な理解と関連して、巨艦が持つほとんど不可避的な弱点に加えて、米海軍と陸軍には一般にもうひとつの脆弱性が存在する。それは彼らに特有な傲岸さであり、それが故に敵の能力を過小評価する傾向である。自分の敵を過小評価する者は誰もが軽率になりがちで、不意に襲撃を受けた場合は自分の手の内が決して良くないことに気づかされる。このような状況が実際に2000年に起った。米海軍のキテ・ホークは不都合にもロシア軍に捕捉された。

ジョン・ダガーテーの記事「ロシア海軍が突如上空を飛行」(World Net Daily)によると、下記のような具合だった。

2機のロシアの軍用機が10月に日本海上にあった米空母の上空を高速で少なくとも3回も飛行した。これはペンタゴンが自認する以上に深刻な脅威であった。もしも敵対行動を起こす意思があったとしたら、彼らはこの空母を破壊することができる状況にあった、と海軍の職員は言う。

報告によると、ロシア空軍のSu-24 「フェンサー」とSu-27 「フランカー」は、109日、給油中であった米空母「キテ―・ホーク」の上空を飛行した。

ロシアの戦闘機と偵察機が119日に2回目の空母への接近を試みた際には、ペンタゴンおよび船上の目撃者たちは米空母は十分に準備が出来ていたと説明した。しかし、これは10月に起こった最初の出来事がすでに警告を与えてくれていたからこそであったに過ぎない。 

ペンタゴンの報道官であるケネス・ベーコンは、1130日の定例記者会見で、高速で接近するロシアの戦闘機はレーダーで事前に捉えられていたと述べた。空母に乗艦していた海軍の将官は、名前を伏せることを条件に、その通りだったと述べている。

しかしながら、空母の戦闘情報センターが空母の司令官であるアレン・G・マイアー艦長にロシアの戦闘機がこちらへ向かっていることを警告した際、空母の戦闘機は一機も空中にはなかった。海軍のデータによると、同空母には85機の航空機があり、5,500名が乗艦していた。 
目撃者たちはマイアーが直ちに戦闘機の発進を命令したが、空母の当直戦闘部隊は「戦闘準備―30」の態勢にあった。この段階の準備態勢はパイロットらは準備室に待機してはいるものの、発進するのには最低でも30分を要する。パイロットがコックピットに座って発進を待っている状態ではなかった。

ベーコンは記者らに対して仰撃機を空中へ送り出すのに「やや遅れをとった」とだけ語ったが、キテ―・ホークは給油中であり、戦闘機を発進させるのに十分な速度で航行していたわけではなかった。

同空母に乗艦していたある将官は「司令官が警告を発した40分後、ロシア軍の航空機は500ノット(926キロ/時)の速度で空母の艦橋の上空200フィート(60メートル)を飛行した」と、述べた。

キテ―・ホークが最初の一機を空中に送り出すまでに、ロシアの戦闘機はさらに二回も上空飛行を繰り返した。さらに悪いことには、空母のデッキから発進した最初の航空機はEA-6Bプラウラーであった。これは敵のレーダーや対空防衛に電波障害を与える航空機であって、敵機を仰撃することができる戦闘機ではなかった。

EA-6Bは「空母の目の前でフランカーと11で渡り合うはめに陥った」と、目撃者は語る。「フランカーは米航空機の周囲を… F/A-18ホーネットが我々の姉妹部隊から発進し仰撃した時には、彼はすでに大声をあげて、助けを求めていた。余りにも遅かった。」 

「ロシア機に対する我々の貧弱な対応をロシア機が嘲っている中、空母の乗組員は全員が上空を眺めていた」と海軍の職員は言った。 

クリントン政権はこの出来事を実際よりも軽く取り扱った。しかしながら、ロシアのジェット機から撮影された写真を見ると、ロシア機が空母の上空を飛行した時艦内はパニック状態にあったことは明白である、とBBCは述べている。

米国の読者はここで、多分、このいかにも屈辱的な出来事は今から15年も前のことであり、今日、このような出来事は起こり得ない、と議論することであろう。しかし、「Russia Insider」の大部分の読者は2014年の4月に起こった別の出来事を思い出すのではないか。超近代的な米駆逐艦「ドナルド・クック」はたった1機のSU-24によって麻痺されてしまったのだ。

不幸にもその話を見逃してしまった読者には、ここで説明を加えておこう。昨年4月の始め、米国はトルコの許可を取り付けて、ロシアによるクリミアの併合に抗議して、さらには、自分たちの軍事力を誇示するために、駆逐艦「ドナルド・クック」を黒海へ送り込んだ。この駆逐艦はもっとも高度なイージス戦闘システムを装備していた。このシステムは複数の目標を同時に探査し、追跡し、破壊することができる海軍の武器システムである。加えるに、駆逐艦「ドナルド・クック」は四つの大型レーダーを搭載し、その威力は何基分ものレーダー基地に匹敵するものであった。防衛に関しては、何種類もの対空ミサイルを50個以上も装備している。 

「モントルー条約」によると、黒海の沿岸国以外の国の軍艦は21日間を越さない限り黒海に滞在することが許される。米国は、もちろん、この規則を無視した。ロシアはその規則違反に対して1機のSU-24を送り込んだ。このスホイ機には武器は何も搭載されてはおらず、「キビニー」と称される最新の電子戦装置を搭載していただけであった。

このSU-24が駆逐艦に近づいた時、 駆逐艦「ドナルド・クック」のすべてのレーダー、制御システム、情報伝達システム、等がこの「キビニー」によって突然麻痺状態にされてしまった。換言すると、より高度なシステムである筈のイージス・システムが完全にダウンしたのである。あたかもリモート・コントロールを使ってテレビのスイッチを切るみたいに… 

その後、実質的にめくらになり、つんぼになってしまった駆逐艦「ドナルド・クック」に対してスホイ機は12回ものミサイル攻撃のシミュレーションを行った。SU-24の二人のパイロットはさぞかし楽しい時を過ごしたのではないかと想像する。その時駆逐艦上には、残念なことに、ジョン・マケイン上院議員やNATO司令官のフィリップ・ブリードラブは乗艦してはいなかった。間違いなく、お二人はこの示威行為から得た長く記憶に残る印象について何らかの形で報告を受けているに違いない。

この出来事の後、駆逐艦「ドナルド・クック」は直ちに、そして、全速力でル-マニアの港に向かった。軍港へ到着すると、ショックを受けた27人の乗組員が退艦願いを提出した程だ。

この話は、我々米国人は依然として自分たちの武力を過信し、ロシアの軍事力はさまざまな分野で米国のそれを上回っていることを認めようともしないことを如実に示している。ロシアは短期間のうちに米側がそのギャップを埋めることはできないという大きな優位性を持っている。

ロシアの一機のジェット戦闘機が最新式の早期警戒システムおよび火器制御システムを搭載した米駆逐艦を一つのボタンを押すだけで麻痺させることができる限り、「対ロ戦で米海軍は何日間持ちこたえることができるか」という問いに対する答えは、今日でも、あの古い冷戦時代の答えとまったく同じである。

<引用終了>


米駆逐艦「ドナルド・クック」に関する詳細なストーリーについては、昨年1121日に掲載した小生のブログ、「手も足も出なかった! 黒海で米ミサイル駆逐艦ドナルド・クックを恐怖に陥れたのは何だったのか?」を参照されたい。

本日のブログで引用した記事は歴史的観点からの考察も行い、米海軍だけではなく米陸軍についても言及し、幅広い視点から論を進めている点が記事全体を分かり易いものにしている。特に、リックオーバー提督が米上院で質問に応えて述べたとされる「空母が沈むまでに2-3日。軍港に係留されている場合は多分1週間」という言葉には率直さが感じられ、この引用記事が伝える情報の質は完璧だとも言える。

また、米軍の傲岸さが弱点となっていると指摘し、ロシアを過小評価し過ぎるとして客観的に批判をしようとする著者の姿勢には好感が持てる。

日本の海上自衛隊にもイージス駆逐艦が配備されてはいるが、米駆逐艦「ドナルド・クック」と同様に、ロシアのSU-24に搭載された電子戦装置には対抗できないのではないか。テレビを消すように、ボタンひとつで、これらのイージス艦の制御システムや通信システムも麻痺状態に陥ってしまうのではないだろうか。

また、日本の防衛戦略は米軍の機動性や物量に依存しているが、その依存そのものが我々日本人の単なる幻想から始まっているのかも知れない。米第7艦隊は日米同盟を支える中心的な戦力あるいは抑止力であると見られるが、ここに引用した記事は同艦隊を全面的に頼ることが戦略としては如何にリスクが大きいかを物語ってもいるようだ。我々が持つ幻想を冷静に評価するべき時がやって来た。


参照:

1How Long Would the US Navy Survive in a Shooting War? : By Marc Hopf, RUSSIA INSIDER, Apr/01/2015, russia-insider.com > ... > Military


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