2016年4月9日土曜日

ロシア空軍はシリアで米空軍に貴重な教訓を示してくれた



シリアにおける5か月半に及ぶロシア空軍の介入はISISやアル・ヌスラ等の反政府過激派を蹴散らして、負け戦の雰囲気が強まる一方であったシリア政府軍を攻勢に転じるという成果をもたらした。これによって、近い将来、話し合いによる和平が実現するかも知れない。

このロシア空軍の成功を見て、西側はさまざまな反応を示している。何と言っても、最大の反応は米政府がロシア側の外交ペースにすっかり巻き込まれたことだ。その結果、227日、米ロ両国はシリアの停戦に合意した。アサド大統領の去就は表には出なくなった。これは米政府がシリア政府の政権交代という目標を公式に引っ込めたことを意味する。

そして、もうひとつの西側の典型的な反応を挙げると、大手メディアの負の反応だ。彼らはロシアの成功を出来る限り無視しようとする。古都パルミラでのシリア政府軍の成功がそのいい例だ。またもや、この一連の成功はプーチン大統領に対する中傷や嫌がらせという新たな情報戦争を招いている。

さまざまな反応の中で私が特に面白いなあと思ったのは「ロシアの空軍はシリアで米空軍に貴重な教訓を示してくれた」と題する328日の記事 [1] だ。そこにはベトナム戦争で海兵隊に所属し、実戦経験を持つ著者が米国防長官やペンタゴンの将軍たち、あるいは、主要メディアが語る内容とはまったく違った世界、はっきり言うと、米空軍が行って来たでたらめ振りを率直に描いてくれている。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたいと思う。


<引用開始>


Photo-1: 戦闘機のパイロット

ロシアのパイロットと航空機は、1942年にガダルカナル島のヘンダーソン基地から飛び立ったカクタス空軍以降においては如何なる作戦に比べても、より少ない機材でより多くの出撃を成し遂げている。私は決して米国を憎んでいるわけではない。世界でも最高峰にある米軍のパイロットたちには尊敬の念を抱いている。さらには、必ずしも世界で最高であるとは言えなくとも、汚職にまみれた米国のペンタゴンがそういったパイロットたちに飛行させることを許している米国の戦闘機についても私は尊敬の念をたっぷりと持っている。

もちろん、世界で最高峰にある米国のパイロットたちは15年間にもわたる間断のない戦争を通じて実戦の訓練を十分に受けており、給料を貰っている。ロシアのパイロットの平均月給である500ドルに比べると、米国のパイロットは平均で10,000ドルもの月給を貰って、2週間もの暇を持て余した挙げ句にはスピード(覚醒剤)に手を出すことになる。 

最初の爆撃は雑ではあったが、第2週目に入ると状況は好転した。ロシアはイラクやシリアと共により信頼のできる諜報を共有しており、人を介して地上から得られる諜報にはより大きな重点を置いている。そうすることによって、ロシア人は米国人がかって実現したこともないような遥かに価値のある目標物を爆撃しているのだ。

いいかい、ここでは「空を飛ぶ清掃トラック」とも言えそうなF35 について喋ろうとしてるわけではない。立派な航空機、むしろ、偉大とも言えるような航空機を所有していながら、汚職が横行する米国の軍産複合体は空軍を使って我が国を破産させようとしていることが分かるかい?予備役や州兵を含めて40万人を抱える米空軍は「臨戦態勢」にある航空機を3000機以上も所有している。ISISに対する1日当たりの出撃回数は平均でたったの8回だ。それでも、これを可能にするためには米国人は8000憶ドルも支払わなければならないのである。 

状況は悪化するばかりで、遥かに悪化している: 

米国の地上軍の兵士らは、イラクやシリアにおける多国籍軍のことを言っているわけではないが、空からの援護には頼らないという教訓を遥か以前に学んだ。1942年に遡るが、カクタス空軍は空からの援護に関して本を書いた。この本はベトナム戦争が始まる前に米国が見失ってしまったものである。

ベトナム戦争では私は海兵隊の特殊上陸作戦チームに所属し、空からの援護は現実の話ではなくて、夢でしかないということを学び取った。我々は航空機の姿を見ることもなく、彼らや米空軍と連絡を取る術もなく、地上で実際に進行している戦争は重爆撃機から行う「大きな箱による戦争」であって、目標物なんて何もない田園地帯や果てしなく広がる森林地帯へ毎日のように何千トンもの弾薬を落下させることだった。

1969年のある時点で私はダナンの郊外にある山の頂から米空軍が爆撃機に爆弾を装着し、燃料を補給し、次から次へと飛び立っていくのを眺めていた。爆撃機は滑走路の端から飛び立ったと思ったら、そこで爆弾を落下させていた。まさにこれはシャンプーのボトルのラベルに記載された「リンスして、もう一度繰り返す」という商品名そのものを表していた。弾薬を浪費し、嘘の出撃回数を増加させただけである。 

ベトナムにおいては食糧や弾薬といった補充物資は前線の兵士たちの元へ届けられることは決してなく、すべてはいわゆる「銃撃戦士村」に所在する空軍司令部のような栄光に満ちた部署へと回送された。その一方、海兵隊員たちは飢えに苦しむか、圧倒的多数の敵との闘いによって米国史上でも最高レベルの死者を出すかのどちらかだった。思い浮かべることと言ったら、それはエアコンの効いた部屋とか、温水と冷水とが供給されていること、いわゆる「女友達」のこと、清潔なシーツ、あるいは、空軍基地へ戻ることだけだった。

シリアで我々が目にしたのは、ロシアが小さな滑走路に数日の間に前線司令部を設置し、50機程の航空機を運び込み、報道陣を招いてすべての状況を観察させ、過去25年間以上も実戦に投入されたこともない空軍を使って戦闘作戦を開始したことだった。

我々は何のコストもかかってはいないような航空機が米国が爆撃に失敗したり、目標を見失ったりした目標、あるいは、米国パイロットの言によれば、爆撃することを許可されないような目標をロシア機が一掃している様子を眺めることとなった。米国のパイロットは爆撃をすることが出来る筈だし、経験も持っている。装備だって十分だ。しかし、何らかの理由から、彼らが信頼を置く連中は、少なくともお互いに、ISISには「手を出すな」と命じるのが常だった。

ロシアにとってはそうではない: 

来る日も来る日も、ロシアのパイロットたちは指揮所や訓練キャンプ、ならびに、アメリカ人たちが見たこともないと嘘ぶく輸送の車列や弾薬の貯蔵所を爆撃した。ついに彼らは米国のパイロットたちが爆撃することを何ヶ月にもわたって上層部に要請していた何千台もの原油を運ぶトラックを爆撃した。

間違いなく、国際的な基準から判断すると、米国のパイロットは甘やかされている。アフガニスタンやシリアの上空を飛び回る米軍のパイロットのために米国の納税者が朝食をおごるとしよう。彼らがとる朝食は平均で120ドルだ。しかし、その内容はミルクとシリアルおよび粗末なコーヒーだけ・・・

イラクでは米兵はハリバートン社がユーフラテス川から川の水をポンプで汲み上げ、フィルター処理を行ってはいないままで、コップ一杯の水に8ドルを払って飲んだ。つまり、これは生活排水がたっぷりと入っている水である。こういった状況を観察すると、「新冷戦」の中で暖かい戦争を遂行する準備はまったく整ってはいない米軍の姿を垣間見ることができる。

そして、まったく報道されてはいないことがある。それは何かと言うと、実戦に参加したことのある米国人たちは自分たちの相手であるロシア人が成し遂げたことを率直に賞賛しているという事実である。米国のパイロットたちは、2015年の11月にロシア軍の指揮官がいみじくも報告をしているように、ヨルダンとの国境の北側にあるすっかり放棄されている集落を爆撃するのではなく、実際はロシア空軍が爆撃したような飛びっきりの目標を与えて貰いたいもんだと思っている。

いったい何が米国のパイロットに怒りを感じさせているのかを考えてみると、私はサウスカロライナ選出のリンゼイ・グラハムのことを想い起こす。グラハムと彼の親友であるジョン・マケインは「シリアの穏健な反政府派」と親交を深めている。これは、偶然にも、ISISやアル・ヌスラを含んでいるようである。また、グラハムは米空軍の大佐でもある。

彼は戦闘機を操縦すことも出来なければ、人に話せるような実戦経験さえも持ってはいない。何が起こったのかと言うと、こうだ。彼には空軍での「勤め口」が与えられ、実戦経験を持っているパイロットを飛び越して、トントン拍子に出世した。グラハムに自分の職を奪われて、同僚の一人は中佐で退役を余儀なくされた。

グラハムが大っぴらにホモであるからということではなく、新たな政策が採用されているにもかかわらず、軍部には多くの人たちが不快に思う何かが存在する。ジョン・マケインがまったく尊敬されてはいないように、グラハムは軍人たちには憎まれてさえいる。マケインとグラハムは両者共米国を次から次へと敗戦に招こうとしていることに重大な責任を有する。個人的には二人とも汚職を通じて財を築き上げ、ある高官の情報によると麻薬の密売ともつながっている。

ロシア空軍が実証してくれたのは、たとえキエフ政府のために冒険主義者たちが、クリミア半島への攻撃も含めて、ロシアに対して挑戦してきたとしても、あるいは、トルコがシリアへ侵攻してきたとしても、ロシア軍は効果的にそのような通常戦を戦い抜くことができるだろうという予感である。

このことを実証し、ロシアは全世界を米ロ両国が実際には望んではいない戦争から回避させてくれるのかも知れない。シリアでの紛争の解決は両国の協力がもたらした途方もなく大きな成果であり、そのことを実証してくれたのである。

著者のゴードン・ダフのプロフィール: ベトナム戦争では海兵隊の戦闘員であった。その後何十年間も退役軍人や戦争捕虜の課題に取り組み、セキュリテイー関連では政府にコンサルタント・サービスを提供した。彼はVeterans Todayの上級編集者であり、その会長を務める。オンライン・マガジンである New Eastern Outlookについても同様。
http://journal-neo.org/2016/03/28/the-russian-air-force-teaches-its-american-counterparts-a-nasty-lesson-in-syria/

<引用終了>


これで引用記事の仮訳は完了した。

F-35の開発は膨大な開発費に膨らみ、しかも、当初の性能を達成しなかったと報道されている。開発費が膨らむ要因は数多くあることだろう。何と言っても、コンサルタント費用として退役軍人のポケットに入る金額は並大抵のものじゃないと言われている。

米空軍では我々部外者には想像もできないような汚職がまん延しているようだ。一方、そういった限られた高位高官らの退役後の生活とは全く違って、一般の退役した軍人たちは経済的にも健康面においても恵まれない人たちが決して少なくはない。この引用記事の著者は自分自身も身障者として退役し、数多くの恵まれない退役軍人や戦争捕虜のために半生を捧げてきた。

こうした背景を知ると、この著者が言わんとしている米空軍の現実の姿、つまり、その腐敗し切った姿は呆れる程の凄みを帯びて来る。それはアイゼンハワー大統領が半世紀以上も前に危惧していた手に負えない怪物と化した米空軍の姿でもある。



参照:

1The Russian Air Force Teaches Its American Counterparts a Nasty Lesson in Syria: By Gordon Duff, Mar/28/2016, journal-neo.org/.../the-russian-air-force-teaches-its-american-c...





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