2016年4月14日木曜日

ISISのテロリストに包囲され、自分自身に向けて空爆するように指示を出したロシアの偵察兵 - 彼こそが真の英雄だ!



ロシア空軍の助けを借りながら、シリア政府軍は最近古都パルミラをISISのテロリストから奪還した。この戦闘では一人の若いロシア兵が戦死した。彼の戦死の様子が故国のロシアだけではなく全世界で反響を呼んでいる。

今日のブログではひとつの記事 [1] に注目してみたい。それを仮訳して、読者の皆さんにお届けしたいと思う。

そうすることによって、日本人社会にもこの戦死したロシアの若者についての記録を残すことができれば幸いだ。兵士としての彼の生き様は国境や民族、イデオロギー、文化、歴史、等を超えて賞賛に値すると思うからだ。


<引用開始>


Photo-1: アレクサンドル・プロホレンコ © Facebook

アレクサンドル・プロホレンコのことは私は何も知らない。彼がどのような背景を持っていたのか、彼の夢や将来の希望はいったい何だったのかについては何も知らない。しかし、彼は決して忘れ去られることのない真の英雄であることが私には分かっている。彼が自分の命を捧げた理由は実に正しかったということも私には分かっている。

戦争や紛争の歴史を見ると、そこには戦争の結果に繋がるきわめて重要な利害関係を明確に示してくれるような英雄的な行為や個人的な勇気を物語る例が豊富にあって、そういった事例は歴史に影響を及ぼし、まだ生まれてはいない世代も含めて、何百万もの人たちに影響を与えることがある。

人間性のもっとも醜悪な部分、あるいは、もっとも崇高な部分が浮き彫りにされることが多いものだが、紛争の持つ本質が時にはこういった事態をもたらしてくれる。そして、もっとも輝いて見えるのが前者であるのか、それとも、後者であるのかはどちらかの紛争当事者の目標や目的によって決定される。たとえば、第二次世界大戦中にソ連を残虐に占領した際に戦死したナチの武装親衛隊の兵士とナチ勢力に対して世紀の闘いを挑んで命をなくして行った赤軍の兵士との間には何の違いもないという主張を信じる者が果たしているだろうか?あるいは、1960年代から1970年代にかけて米国の侵攻ならびに占領に対して故国のために戦った無数のベトナム人についてはどうか?

シリア紛争について言えば、アレクサンドル・プロホレンコは、ソ連で暴れ回り、自分たちのファシズムに反対する者は片端から殺害し、残虐の限りをつくしたナチの武装親衛隊以降では全世界がかって見たこともないようなもっとも野蛮で、もっとも非人間的なイデオロギーに立ち向かった勇者たちを永遠に象徴する存在となるであろう。

この25歳のロシア人はイスラム国のテロリストによって占領されていたパルミラを解放する特別作戦の最中に戦死した。シリア軍およびその同盟勢力がこの古都を解放する前、彼の任務はISISに対する爆撃地点の座標を確定し、その情報を発信することであった。したがって、彼の役割はこの上なく危険を伴う可能性があった。彼が潜む場所がISISのテロリストらに知られてしまい、連中の包囲網が狭まって来た時、その危険性は明らかとなった。今何が起こっているのかを彼は認識した。自分が捕まるよりも、むしろ、アレクサンドルは自分が居る地点を空爆するように発信することを選んだ。

この若者ならびに彼の勇気を記述することは不可能だ。彼のことを適切に記述することなんて到底出来そうもないという感慨に襲われる。彼の死や彼の死に様が何が起ころうともお構いなしに最終的な勝者になろうとすることにすべてを掛けた若者たちによって戦闘が行われ、その結果勝利を手にしたという事実を示しており、その事実に対して彼の死は余りにも冷酷な矛盾でもある。恐怖感や困難な状況にありながらもそうすることを可能とした彼らの能力は人間性のために戦っているんだという明確な認識によるものであろう。それこそがアレクサンドル・プロホレンコがシリアで作戦任務に当たっている同僚たちの一人一人と共有する動機であった。さらには、何千人ものシリア人やレバノン人、イラン人、クルド人、ならびに、ボランティアの兵士たちとも共有する動機であった。過去5年間、同士や友人あるいは家族の一員が殺害され殺戮されて来た中で、彼らは闘いを継続し、すべてを危険に晒して来た。

このとてつもないプロホレンコの勇気と組み合わせて考えてみると、元米海兵隊の戦闘員であったゴードン・ダフが最近の記事で伝えてくれた 意外な事実 は非常に興味深い。シリアでのロシア空軍が示した効率の高い爆撃を米空軍のそれと比較して、ダフは「シリアで我々が目にしたのは、ロシアが小さな滑走路に数日の間に前線司令部を設置し、50機程の航空機を運び込み、報道陣を招いてすべての状況を観察させ、過去25年以上もの間実戦に投入されたこともない空軍を使って戦闘作戦を開始したことだった」と述べている。

さらには、こうも述べている。『我々は何のコストもかかってはいないような航空機が米国が爆撃に失敗したり、見失ったりした目標物、あるいは、米国パイロットの言によれば爆撃することを許可されないような目標をロシア機が一掃している様子を眺めることとなった。米国のパイロットは爆撃をすることが出来る筈だし、経験も持っている。装備だって十分だ。しかし、何らかの理由から、彼らが信頼を置く連中は、少なくともお互いに、ISISには「手を出すな」と命じるのが常だった。』

ロシアにとってはそうではない: 

来る日も来る日も、ロシアのパイロットたちは指揮所や訓練キャンプ、ならびに、アメリカ人たちが見たこともないと嘘ぶく輸送の車列や弾薬の貯蔵所を爆撃した。ついに彼らは米国のパイロットたちが爆撃することを何ヶ月にもわたって上層部に要請していた何千台もの原油輸送トラックを爆撃した。」 

さらには、もっとも多くを語りたいこととしてダフは我々にこう伝えている。「そして、まったく報道されてはいないことがある。それは何かと言うと、実戦に参加したことのある米国人たちは自分たちの相手であるロシア人が成し遂げたことを率直に賞賛しているという事実である。米国のパイロットたちは、2015年の11月にロシア軍の指揮官がいみじくも報告をしているように、ヨルダンとの国境の北側にあるすっかり放棄されている集落を爆撃するのではなく、実際はロシア空軍が爆撃したような飛びっきりの目標を与えて貰いたいもんだと思っている。」 

いったい何が米国のパイロットに怒りを感じさせているのかを考えてみると、私はサウスカロライナ選出のリンゼイ・グラハムのことを想い起こす。グラハムと彼の親友であるジョン・マケインは「シリアの穏健な反政府派」と親交を深めている。これは、偶然にも、ISISやアル・ヌスラを含んでいるようである。』 

シリア紛争におけるほんの数か月間のロシアの介入は、これは忘れてはならないことであると言えるが、計り知れないほど大きなリスクの下で着手された。直接的あるいは間接的であることを問わず数多くの国が関与していたし、兵站や作戦計画を必要とした。全世界が西側や中東地域の同盟国の政府の偽善性や二重基準を目にすることとなった。

このことに関しては、アレクサンドル・プロホレンコはシリア紛争におけるロシアの参画は否定的だったとする神話とは矛盾する。それどころか、この若いロシア兵は不条理や専制に立ち向かおうとする人間の精神力を如実に示した偉大な人物たちの新たな仲間として加わることだろう。
我々は彼に敬意を表する。

ジョン・ワイトのプロフィール: 著者はインデペンデント紙やモーニング・スター、ハフィントン・ポスト、カウンター・パンチ、ロンドン・プログレッシヴ・ジャーナル、およびフォーリン・ポリシ―・ジャーナルを含め、世界中の新聞やウェブ・サイトに寄稿している。彼はRTおよびBBCラジオでは常連の解説者でもある。彼はハリウッドで5年間を過ごしたが、その回想録を著した。それは彼が9/11後の米国の反戦活動の活動家ならびにまとめ役として全面的に没頭する前のことであった。その著書は「Dreams That Die」と題されて、Zero Booksから出版された。ジョンは現在アラブ・スプリングにおける西側の役割に関して本を書いている。彼のツイッター・アカウントは @JohnWight1


免責事項: このコラムに記述されている見解や意見はすべてが著者のものであって、RTの見解や意見を代表するものではありません。


<引用終了>


これで仮訳の作業は終わった。

ここに記述されている戦死したロシア兵の生き様には脱帽だ。端的に言って、適切な言葉が見つからない。そういったもどかしさを強く感じさせられる。少なくとも、私も彼の勇気に敬意を表したいと思う。

また、もうひとつの重要な点はこのロシア兵の生き様と米空軍の現実との間に横たわるギャップの大きさには目を見張るばかりだ。しばしば目にしたり聞いたりすることではあるが、米軍の戦争の仕方は何と言っても「商売としての戦争」が先に立っていることがよく分かる。米国の軍需産業が如何に多く儲けることが出来るかが彼らの最優先事項となっている。

ゴードン・ダフの記事については、偶然にも、私は最近「芳ちゃんのブログ」に掲載したばかりだ。もっと詳細を知りたい方は49日に掲載した「ロシア空軍はシリアで米空軍に貴重な教訓を示してくれた」を覗いてみてください。

そのブログで書いたことではあるが、ゴードン・ダフが記述した彼自身の目撃談はまさに米国の軍産複合体の実態を余すところなく伝えている。たとえば、下記のような具合だ。

1969年 のある時点で私はダナンの郊外にある山の頂から米空軍が爆撃機に爆弾を装着し、燃料を補給し、次から次へと飛び立っていくのを眺めていた。爆撃機は滑走路 の端から飛び立ったと思ったら、そこで爆弾を落下させていた。まさにこれはシャンプーのボトルのラベルに記載された「リンスして、もう一度繰り返す」とい う商品名そのものを表していた。弾薬を浪費し、嘘の出撃回数を増加させただけである。


     

戦争のない日が一日でも早くやって来て欲しいと思う。しかしながら、人間が持つ業はそうさせてはくれない。残念ながら、それが人間社会の冷たい現実である。特に、米国の軍産複合体の存在は全世界の平和にとっては完全に逆行するものとなってすでに久しい。そして、平和憲法を持った日本さえもがその轍を踏もうとしており、大きな矛盾を曝け出しつつある。

高度文明を築いたと自負する21世紀の人類は、実際には、石器時代の精神構造から一歩も進化してはいないのかも知れない・・・


     

アレクサンドル・プロホレンコは世界中に強烈な印象を与えている。の記事 [2] を見ると、彼の兵士としての勇気はいたるところで讃えられている。その内容を確かめずに素通りすることはとてもできそうにない。その記事をちょっと覗いてみよう。

「プロホレンコ中尉は昨日あるいは明日我々の敵となっていたのかも知れないが、彼が兵士として戦場で示した勇敢な行動に敬意を表し、今宵は彼の名誉のために乾杯したい」とのメッセージが米軍のあるフェースブック・アカウントに掲載された。 

「アメリカ兵からロシア人の中尉へ。それぞれが着ている制服には関係なく、我々はあらゆる手をつくして自国を守り、さらには他の国とその国民の生活を守ることに宣誓をしている。我々は彼らのために誇りをもって自分自身の命を捧げる。私は君の勇気と名誉ならびに君の強さに敬意を表したい」とジョシュ・マーシュがコメントした。 

「これこそがロシアが侵攻されても一度も征服されたことがない理由だ。このような勇気のある連中を征服することなんて不可能だ。プロホレンコ中尉に祝福あれ!」とロバート・アレンは書いた。

23歳の米軍兵士として、この勇敢なロシアの若者に私は敬意を表したい。両国はさまざまな点で同意できないのかも知れないが、これは兵士と兵士との間のことだ。君は真の兵士だ」とクリス・クックがコメントした。 

「米国人、ロシア人、メキシコ人、日本人… あなたが何処で生まれようと、何処の国籍を持っていようとも、実際にはそれはたいして重要ではない。自分の国のより大きな善のために、あるいは、同胞のために究極の犠牲を払うことを可能にするのは究極の本物の勇気である。」とコルトン・ラヴェルが書きこんだ。 

「彼は本物の兵士だ。自分の国旗に最大の敬意を払った男だ。その国旗が意味するもの、彼の故国、そして、その故国が意味するものに敬意を払ったのだ。これは最後の最後まで敵を倒すことにすべてをかけた男の物語だ」と、プロホレンコに関してジェームズ・ウィーラーが書いている。
「私は米国人で、かっては兵士だった。この人物へ、君は真の兵士だ! 彼のご両親へ、あなた方はご子息を立派に育て上げた。彼のご冥福をお祈りします」とスティーブ・プライスがコメントした。


彼の私生活については多くは分からない。しかしながら、彼は近い将来父親になる予定だったと報道されている。彼の奥さんの心中を思うと、戦争の持つ無残さに改めて気づかされ、やり切れなさだけが残る。せめて、彼の冥福を祈ろうではないか!



参照:

1Russian soldier who called airstrike on himself while surrounded by ISIS is hero: By John Wight, RT, Mar/30/2016, http://on.rt.com/78mm

2Servicemen Around the World Praise Heroism of ‘Russian Rambo': By Sputnik, Apr/04/2016, sputniknews.com/art_living/.../russian-hero-palmyra.html







0 件のコメント:

コメントを投稿