2016年6月1日水曜日

ギリシャの降伏 - 新たな戦争の手段としての国際金融



米ミズーリ大学のマイケル・ハドソン教授はこのブログでもすでに何回か登場して貰っている。

同教授は国際金融に関して、たとえば、なかなか分かりにくいIMFに関しても門外漢である私のような素人にさえも分かるような解説をしてくれている。好感が持てる学者である。ここで念を押しておきたいことがある。投資家や多国籍企業の立場から見た経済ではなく、草の根的な一般大衆の視点から経済を分析し、解説をしてくれている点が非常に頼もしい。これは他の多くの専門家や評論家とは完全に違うということを確認しておきたい。

ギリシャ危機に関してはギリシャ、IMF、ユーログループとの間での交渉によって突破口が開かれたと報じられている。525日にロイターが報道 [1] した内容の一部を参照すると、下記のような具合だ(斜体で示す):

債務の減免に関してユーロ圏はギリシャに対して今までには見られなかったようなもっとも確固とした提案を行った。各国の蔵相らはこれを突破口と位置付け、IMFがアテネ政府の救済に再び参画するという約束をついに取り付けたのである。

水曜日の夜明け近くまで続いた話し合いの後、ユーロ圏の蔵相らは、たとえ何らかの技術的な微調整が必要となる点があるにしても、アレクシス・ツィプラス首相が率いる左翼系連立内閣によって推進される苦痛を伴う財政改革を評価して、ギリシャに対して103憶ユーロ(80憶ポンド)の新たな救済策を講じることに承認を与えた。 

しかし、話を先へ進めるさまざまなステップの中でもより大きなステップとなるのは次の策だ。つまり、合意された支払い基準を満たすために救済が必要となった場合には、ユーロ圏はギリシャ政府に対する債務の減免に関する提案を2018年に示すことに同意したのである。これがギリシャを救済する資金提供を行うにあたってはIMFが再び参画することに関する合意を取り付ける鍵となった。

「我々はギリシャに関する突破口を見い出した。これによって、我々はギリシャへの財政支援プログラムにおいて新たな段階に進むことが可能となる」と、オランダの財務大臣であり、ユーログループの議長を務めるイエルーン・ダイセルブルームが記者会見で述べた。「これはそれ程遠くはない過去において可能になるかも知れないと思っていたことが今になるまで引き延ばされていたものだ。」

「政治資金」に同意して、ヨーロッパの閣僚はこの取引を成立させるために投資したのである。これは債務の減免に対しては強い反対を示すドイツに賛意を示すことになる。イエルーン・ダイセルブルームはこの動きをギリシャの財政が安定化するまでに6年間も要した本ドラマにおける「新たな段階」と称した。このギリシャ危機は発足から16年を経過しているユーロ圏を崩壊の瀬戸際にまで追いやっていたのである。

ツイプラス首相が緊縮財政政策に反対してからというものほぼ1年にもなるが、ギリシャ政府はユーロ圏からの離脱にまで追い込まれていたが、話し合いの場にはついに相互信頼が戻って来た、と彼は言う。

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「楽観視することができる基盤が形成されたと思う。これによってギリシャは景気後退・緊縮政策・景気後退という悪循環から脱する機会が与えられ、投資家がギリシャへ投資するための助走路を提供することになるだろう」と、ツイプラス政権の蔵相を務めるユークリッド・ツアカロトスがブリュッセルでの会合を後にする際に記者団に述べた。 

IMFは、ギリシャの公共財政を持続可能とするためにはヨーロッパ各国が自ら打撃を受け止めて、アテネ政府の債務の一部を削減するべきだと長い間主張していた。ドイツや他の国々はこれに反対し、何ヶ月にもわたってIMFとの口論が続き、この交渉の間、ギリシャはあたかも観覧席に居るかのような有様であった。

ヨーロッパ各国は直ちに債務の減免に応じるとか、ギリシャの支払いを無条件に減額することは避けた。しかし、彼らは債務の減免に応じる際の基準を提示した。アテネ政府が必要とする資金の総額は中期的にはGDP15%以下、長期的には20%以下に維持しなければならないとしたのである。

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こうして、ギリシャ危機については当面の決着がついた模様である。

この話し合いの結果、ギリシャは当面103億ユーロの融資を受けることになった。

上記に引用した記事は大銀行や投資家の目から見たギリシャ危機について述べてはいるけれども、庶民の生活に与える影響については何も言及してはいない。今後、2018年にどのような判断が必要となるのかが関心の的となりそうだ。


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しかし、この決着によって非常に過酷な緊縮財政に見舞われる一般庶民の生活はさらに大きな痛みに直面することになる。年金の支払いが一部カットされることや新たな課税が導入されることがこの5月にギリシャ議会を僅差で通過したのだ。この新法案の詳細を見てみよう(注2)(斜体で示す):

この新法によると、2,000ユーロおよび3,000ユーロを超す年金はカットされ、企業年金基金は暫時排除するとしている。

免税となる所得限度額は9,100ユーロから8,600ユーロに引き下げる。加えて、71日から消費税率を13パーセントから14パーセントに引き上げる。これらの措置は諸々の製品やサービスのコストを増加させるものと見られる。61日から、タバコ、ガソリンやディーゼル燃料、ならびに、天然ガス、等の物品税や消費税も増税となる。

201711日には、コーヒー、電子タバコ、2個以上のスターにランクされるホテルでの旅行者の宿泊も初めて課税の対象となる。

インターネットでのブロードバンド接続には5パーセントの課税、有料テレビには10パーセントの課税が今年71日に開始される。

投資物件にも課税され、これには不動産会社や資産運用管理会社も含まれる。財産税(ENFIA)の徴収が新法によって拡張される。 

政府支出、特に国防費や公営企業に対する費用は今年の6月には減額される。

中小企業に対する課税は年間所得が50,000ユーロまでの場合は26パーセントから29パーセントに引き上げられる。50,000ユーロ以上の所得に対しては33パーセントが課税される。

ギリシャ政府による増税策は以上のような具合だ。2011年に強化された財産税(ENFIA)は今までのところ立派な成績をあげていると報じられている。この実績に基づいて、政府としては徴収の対象をさらに拡大したいようだ。

しかしながら、緊縮財政政策の影響を受けて経済が疲弊し、失業率が高まると、今後もこの成績が続くとは限らないとも指摘されている。ギリシャの返済能力は減少の一途を辿るのではないだろうか。


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ここで、ギリシャ危機を巡るIMFやユーログループの最近の動きについてマイケル・ハドソン教授の見解 [3] を確認してみたいと思う。仮訳を下記に示す。


<引用開始>

こちらはリアル・ニュース・ネットワークです。私はバルチモアからシャ―ミニ・ペリーズです。

ギリシャの経済危機は恐らくヨーロッパの難民問題やテロ攻撃、英国のEUからの離脱に関して近い内に実施される住民投票、等、によって影が薄くなっているかも知れません。しかし、これが解決されたわけではありません。ギリシャのシリザ連立内閣は、先週、街頭デモや3日間も続くゼネストに見舞われ、ギリシャの多くの地域は麻痺状態に陥りました。こうした抗議があったにもかかわらず、アレクシス・ツィプラス政府は議会で153人の議員の賛成を受けて、同国の税制や年金制度の改革に関する法律を改正しました。この動きは債務に関する交渉を継続するために融資団から求められていたものです。300議席を擁する議会で演説を行い、アレックス・ツィプラス首相は「我々はどのようなコストを支払ってでも自立しなければならない」と述べました。

これらの展開について議論をするために、私はマイケル・ハドソン教授をお招きしています。同教授はニューヨークからの参加です。マイケルはキャンサス・シティーのミズーリ大学で経済学を研究している著名な教授です。彼の最近の著書に「Killing the Host」があって、この本は金融における寄生者や国際金融が如何に世界経済を蝕んでいるのかを記述したものです。マイケル、本日はお越しいただいきどうも有難うございます。

マイケル・ハドソン: 再び参加できて嬉しいです。

ペリーズ: マイケル、IMFはギリシャの債務問題と取り組むための総合的施策をゴリ押ししています。彼らは融資団が債務の帳消しに関して工夫するように求めており、彼らが提案した策は融資団が喋っている内容に比べるとかなり前進しているようです。IMFの提案に関して、ならびに、融資団はどのようにしてその提案内容に漕ぎつけたのかに関してもっと話をしてくれませんか?

ハドソン: IMFはギリシャへの融資額は一銭も減額しないと言っています。融資額はそのままにしておこうということ。問題はユーロッパの中央銀行がバランスシートを何とか保とうとしている点です。もしもIMFへの支払い義務があるギリシャの債務に関して交渉が決裂したとすれば、その場合には救済すべき銀行を抱えているドイツやフランスならびに他の国々は損失を計上しなければなりません。彼らはたとえ一銭でも失いたくはないという立場です。IMFの提案には工夫の跡は特にありません。IMF1年前に言っていたことを一言も変えずに繰り返しています。こう言っているのです。「OK、融資額はそのままにしておきますが、我々はいまいましい数値をあなた方に贈呈することにします。金利だけを変更して、1.5%としましょう。さらに、25年間の据え置きとします。つまり、債務の一部減免は行いませんが、金利の支払いは25年間の猶予とします。こうして、我々は僅かな金利の支払いだけを要求することにします。」 

意外な結末がひとつあります。ギリシャは年金をキャンセル、あるいは、引き下げて、緊縮財政を適用し、政府の資産を私有化しなければなりません。こうして、経済は委縮することになります。経済は年率で1%、2%あるいは3%も委縮することでしょう。我々が課す1.5%の金利はギリシャが達成する所得の伸びをすべて吸い取ってしまうかも知れません。今後25年間の所得の伸びはたとえ1銭であってもドイツの銀行へ支払う返済に充当しなければならないでしょう。

ギリシャは今そんなことは実行できないことを承知しています。年金をキャンセルしたら、経済が委縮してしまうことは分かりきっています。労組はストライキをするでしょうし、多くの市民が他所へ移民することでしょう。

しかし、出口がひとつだけあります。ギリシャは港湾や土地、公共の上下水道施設、空港、等、所有している物は何でもドイツへ売却し、結局、最後には売却できる物はひとつもなくなってしまいます。最後に我々がギリシャに頼むことは、もうこの国のすべてを我々が所有しているのだから、皆この国から出て行ってくれということです。以上がIMFが言っていることのすべてです。何の工夫もありませんし、非常に残酷です。これこそがギリシャの市民が通りへ出て抗議行動を起こしている背景なんです。

ペリーズ: それでは、融資団はどうして今回のような行動をとったのでしょうか?

ハドソン: どうしてかと言うと、彼らは国際金融を新たな戦争の手段として用いているからです。ヨーロッパでは戦争が進行していますが、この戦争はもはや軍事的な戦争ではありません。軍事的な戦争に代わって、連中は金融を使っているのです。金融を使って、あんた方の国を乗っ取ることができるぞと脅かしているのです。我々はあんた方を失業に追い込み、あんた方をコントロール下に置くことだってできる。あんた方を殺す必要はない。年金を打ち切り、あんた方の金をすべて奪って、あんた方を何処かへ移民させるだけだ。土地の収奪もある。ギリシャの港湾や鉄道を収奪し、他にもあらゆる物を収奪しようとする侵略のようなものです。これはまさに戦争です。 

ペリーズ: さて、国際メディアは月曜日 [訳注:523] に行われた各国の財務大臣の間で行われた会合は成功裏に終わったかの如く報じています。アレクシス・ツィプラス首相と財務大臣は笑顔を見せながらこの会合から出て来ました。あれは何故でしょうか? 

ハドソン: 何故かと言いますと、彼らは売ってしまったからです。カメラの前では笑顔を見せることになっています。単純なことです。自分の選挙民を何とか防護したかの如く笑顔を見せるのです。オバマ大統領もウオールストリートに対してさらにもうひとつの贈呈品をあげた時には何時も笑顔を見せます。しかし、これはそのような笑顔が必ずしも国民のためにはいいことだということを示すものではありません。明らかに、国民にはそのことが分かっています。これは国民の政治的反応を見ると分かるのです。

ペリーズ: そして、これらの攻撃的な改革や年金改革は今やギリシャの国民が鵜呑みにしなければならないわけですが、これは市民にとってはいったい何を意味するのでしょうか?

ハドソン: 改革は今まで意味していたものとはまったく反対のことを意味します。過去の100年間、改革と言えばすべての動きが政府に対してより大きな権限を与えることにありました。経済成長にはより大きな重点が置かれました。改革は経済をより良好にすることを意味していたものです。ところが、今日では、ギリシャが第二次世界大戦後に行った改革を今実行するということは、逆に、改革を一掃することを意味するのです。我々はまさにオーウェルが描いた二重思考的な世界に住んでいるのです。年金改革を一掃し、税制制度改革を一掃してしまいます。これはネオ封建主義とでも呼べるような世の中へ逆戻りすることを意味します。改革の動きとは正反対です。ですから、メディアが改革という言葉を使っていても、実質はまったく逆方向です。 

ペリーズ: 分かりました。それでは、左翼やシリザ党についてですが、我々皆が聞いていることに関しては彼らはどう言ってるのでしょうか? 

ハドソン: 彼らは愕然としています。ご存知の通り、あなたのショウに登場したことがあるヤニス・ヴァロウファキスはギリシャに緊縮財政を課すことを避けようとして閣僚の座から辞任しました。単純に言って、彼らは愕然としており、最悪の事態であることを認識しています。彼らはフランスやスペインおよびポルトガルの左翼の動きによって支持を受けることを期待していたことでしょう。しかし、債権者に対する債務者の、あるいは、債務者に対する債権者の苦い階級闘争がヨーロッパで進行しており、今彼らが出来ることは何かと言えば、せいぜいIMFの偽善を暴くこと位しかありません。もしもギリシャのことを議論したいのでしたら、泥棒政治家たちによってまったく一文無しとなっているウクライナの経済を並列に置いて論じてみましょう。

IMFは「ロシア政府からの債務や米国が嫌いな国の政府からの債務は返済をしなくてもいいよ」と言って、ウクライナを救済しようとしています。ウクライナはジョージ・ソロスや米国好みの投資家に国土を売り出さなければなりません。IMFがギリシャに課した対決の基準をIMFがウクライナ政府に対して行っていることと対比してみてください。そこに見えてくるものはIMFは今や「新冷戦」のための道具になっているという現実です。シリザ政権の連中やギリシャの人々が出来ることはこのことが如何に不公平であるかを指摘することであり、実際に起こっているのは政治的志向からはまったく右翼的であることを世界中の人々に知って貰い、国際金融はまさに戦争を引き起こしていると言う事実を理解して貰うことです。

ペリーズ: マイケル、最終的には、ギリシャ政府にはどんな選択肢があるのでしょうか?いったい何が可能なのでしょうか? 

ハドソン: ツィプラス首相は選択肢はもう何もないと言っています。選択肢は降伏することだけだと言っています。事実、ギリシャとIMFとの間では議論はもう行われてはいません。ギリシャとドイツとの、あるいは、ギリシャとヨーロッパとの間での議論でもなく、今も続けられている議論はIMFとドイツとの間で行われています。その内容はIMFがその伝統的な規則を破るのかどうか、IMFのあらゆる基本原則に反してさらに融資を行うのかどうかという点です。IMFの合意書の条項によると、融資を返済出来ない政府に対してはIMFが融資に応じることは禁じられています。IMFの融資条件や基本条件がギリシャ経済を委縮させ、返済を不可能にしてしまうことから、ギリシャは返済することができないだろうという予測はIMF職員らの間では何の異論もなく、誰もがそのように理解しています。

そこで、IMFはこう言っているのです。我々はIMFの規定を破って、特に米国からの要請があることからも、融資を行うことにします。ギリシャは返済をしなければなりません。これは、スペインが立ち上がって、市民に対して年金を支払おうとした場合、フランスが自国の労働者に支払いをする場合、あるいは、イタリアが自国の労働者に支払いをする場合には、我々はそれらの国の経済を破壊し、彼らの労組を潰してしまうでしょう。これはちょうどギリシャに対して行っていることとまったく同じです。ギリシャは示威行動を示すためのいい見本の場となっています。ナチがスペインを爆撃した時と同様です。あの状況はかの有名なピカソの絵に描かれています。言わば、これはナチが行ったスペイン爆撃のIMF版に相当するものです。降伏をしない国ではこういった状況がヨーロッパ中で起こることでしょう。

ペリーズ: 何時ものことですが、マイケル、良く分かりました。あなたをこの番組にお招きできて本当に良かったと思います。これからもギリシャに関する番組でお会いしたいと思います。

ハドソン: こちらこそ。シャ―ミニ、どうも有難う。

ペリーズ: そして、リアル・ニュース・ネットワークの視聴者の皆さん、どうも有難うございました。

<引用終了>


これで、全文の仮訳が終了した。

マイケル・ハドソン教授の解説は明快で、分かり易い。

たとえば、「しかし、出口がひとつだけあります。ギリシャは港湾や土地、公共の上下水道施設、空港、等、所有している物は何でもドイツへ売却し、結局、最後には売却できる物はひとつもなくなってしまいます。最後に我々がギリシャに頼むことは、もうこの国のすべてを我々が所有しているのだから、皆この国から出て行ってくれということです。以上がIMFが言っていることのすべてです。何の工夫もありませんし、非常に残酷です。これこそがギリシャの市民が通りへ出て抗議行動を起こしている背景なんです。という解説はその典型的な例だ。


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日本に対する米国のネオリベラリズムやネオキャピタリズムを考えてみよう。私の個人的な理解に基づいて言うと、日本の富を収奪しようとする彼らの手口はTPPに集大成されている。そして、日米の指導者はこのTPPを早く成立させたいと言っている。

日本では多くの人たちはTPPを通じて彼らがやろうとしていることの本当の理由について、ならびに、結果として日本経済がどのような状況に追い込まれるのかについてはほとんど何も知らないまま、あるいは、知ろうともしないまま毎日を過ごしているように見えるが、どうだろうか?非常に残念なことである。しかし、もっとも重要な点としては、この状況は現在を生きる我々の世代が今享受している繁栄から一歩でも退きたくはないと思う利己心から、あるいは、米国のTPP交渉代理人からの脅し(米国市場への日本の自動車輸出を減らしたくないならば「ああしろ」、「こうしろ」といった類いの代案)を受け、甘い言葉に言いくるめられて、我々の子供や孫の世代の富の一部を先取りしていることに他ならない。

次世代にとっては非常に残酷な話である。我々の世代は次世代に対して本当に申し訳ないことをしていると私は思う。

あるひとつの選択肢を選ぶと、他の多くの選択肢を捨てることを意味する。

TPPの是非に関する議論が華やかだった2012年頃には、「日本では人口が減少していることから、日本は国内市場の縮小を補う意味でもTPP条約に参加することによって大きな市場を確保しなければならない」とする意見があった。たとえ日本の自動車産業や医薬品業界のために大きな市場を確保することには成功したとしても、国内の農業は壊滅し、一国の安全保障の根幹である食糧の自給率は10パーセント代にまで低下するという無残な結末が待っている。ある試算によると、14パーセントまで低下するという。(さらなる詳細については、2012112日に投稿した「TPPISD条項はどんな悪さをもたらすか?」を参照されたい。)

TPP条約への加盟は日本人自らが自分たちの主権を放棄したことに等しいのではないか。果たして、この選択が日本にとっては正解であったのかどうかについては、将来の歴史家が適切に指摘してくれることだろう。

本日のブログではギリシャがついに西側のネオキャピタリズムに降伏したという最近の状況をご紹介した。ギリシャの今日の姿は日本の明日の姿であるのかも知れない。



参照:

1Eurozone hails ‘breakthrough’ with Greece, IMF debt deal: By Jan Strupczewski, Francesco Guarascio & Alastair MacDonald, Reuters, May/25/2016, www.reuters.com/article/eurozone-greece-idUSL5N18M01I

2Greek Parliament Approves Pension, Tax Reforms Against Mass Protests: By Sputnik, May/09/2016, sputniknews.com/.../greek-parliament-approves-unpopular-ref...

3The Greek Surrender - Finance As A New Means Of War: By Sharmini Peries - Michael Hudson, By Real News Network / Information Clearing House, May/24/2016








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