2017年4月20日木曜日

アサド大統領とのインタビュー - AFP



シリアのアサド大統領の人となりに関しては、RTのソフィー・シュワルナゼ記者が行ったインタビューが詳細に報告している。私はそのインタビューの模様を「徹底的に悪者扱いされているアサド大統領 — RTによるインタビュー」と題して20121112日の投稿でご紹介をした。

彼女が得た印象は、たとえば、下記のような具合だ(斜体で示す)。

私にとって際立って印象深かった点は、メデアで人々が伝え、描いている内容よりも全てがずっと複雑であるということです。事実、あらゆるメデアの報告よりも遥かに複雑です。ですから、私は重ねて何度でも言っておきたいと思うのです ー 非常に複雑だってことを。アサド大統領に関しては、インタビューの前に15分間ほど彼とおしゃべりをする機会があったのですが、彼はメデアによって徹底的に悪者扱いされていると思います。実際は、彼は非常に高い教育を受けている人だし、非常に心地よい人物です。彼は吐き気がするような大統領でもないし、よく言われているような類の人物ではないんです。地に足をつけた立派な人物だという印象です。

一番印象深かった点は、シリア国内の状況は私たちがメデアを通じて知ることができる内容よりももっともっと複雑です。これは人々と話をしてみた結果から言っているんですが....国は二分されていますし、この紛争が始まる前からアサド大統領を好きではなかったという人たちでさえも今は原理主義者たちが入ってきて、権力の座につくのではないかという脅威におののいている状況です。原理主義者とは「自由シリア軍」として闘っている連中のことです。でも、シリアの人たちはそういう連中とは違います。たくさんの宗教グループがあって、他の宗教グループの人たちと一緒にスンニ派、シーア派、アラウィ派、キリスト教徒たちが平和裏に暮らしてきたのは非宗教的なアラブ国家だったからだと思います。もしもアサドが権力の座から去ったとしたら、シリア軍は崩壊し、これらの過激派のイスラム教徒が入ってきて、彼らと同じような過激な宗教を強制するのではないかと怖がっています。実際に、自由シリア軍のツイッターを覗いてみたのですが、彼らには標的があるのです。消してしまいたいと思う人物を標的に位置づけている....基本的には、原理主義者が権力の座に着くことを嫌っている有名人たちを彼らは狙っているのです。つまり、ただ単にアサド大統領だけが標的という訳ではないのです。アサドが去ろうと留まろうと状況は次第に悪くなって行くと皆が感じとっています。もしもアサドが去ってしまったら状況は一変して....テロリストたちの襲撃が続き、原理主義者が政治権力を奪うことになる。人々はこのような展開が実際に起こるのではないかと非常に怖れているのです。

あの時点からもう4年以上が経過した。シリアでの紛争は続いている。最近、シリアは領内のシュアイラート空軍基地に対して米国のクルーズミサイル攻撃を受けた(47日)。この新たな展開によって、アサド大統領は否応もなく今まで以上に世界中から注目されている。

米ミサイル攻撃に関するトランプ政権の理由付けが報じられた。シリア空軍が投下した化学兵器によって80人を超す市民が殺害され、米ミサイル攻撃はそれに対する報復であるという。しかしながら、ホワイトハウスが発表したその理由付けは今見事に崩壊しようとしている。

われわれにとってもっとも今日的な問題は、われわれ一般大衆が政治的な思惑に沿って編集されている大手メディアの報道だけを鵜呑みにしていると、世界の動きを理解することはほとんど不可能となるという現実だ。

このような背景の中、413日、AFP(フランス通信)のアサド大統領に対するインタビューの模様が報じられた [1]。今まで以上に厳しい状況に曝されて、アサド大統領は今どんな考えを抱いているのだろうか?

本日のブログではこの最近のインタビュー記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始> 

ダマスカス、SANA(シリアン・アラブ・ニュース・エージェンシー)バシャール・アル・アサド大統領はAFP のインタビューに応じて、ハーン・シャイフーンの町で起こった事は作り話だと述べた。シリアは化学兵器を所有してはいないし、たとえ所有していたとしてもシリアはそれを使う積りは毛頭ないと強調した。

ハーン・シャイフーンでの惨事に関する調査は、それが客観的でありさえすれば、どのような調査であってもシリアは調査を許可する用意があるとアサド大統領は言明した。

アサド大統領は米国は政治的解決の実現に真剣さを示してはいないと言う。

シリアの戦力、つまり、テロリストを攻撃するシリア政府の戦力はこのミサイル攻撃で何の影響も受けなかったとのことだ。 

このインタビューの全内容を下記に示す: 

質問1: 大統領閣下、まず、このインタビューのために私を受け入れてくださったことについて感謝致します。大統領閣下、先週の火曜日(44日)、ハーン・シャイフーンの町を化学兵器で攻撃するように命令を下されたのですか? 

アサド大統領: ハーン・シャイフーンで何が起こったのかに関しては、この時点まで、実際には、誰も調査をしてはいません。ご存知のように、ハーン・シャイフーンはアルカエダの一派であるアルヌスラ・フロントのコントロール下に置かれています。ですから、世界中がこの時点までに得ている情報はアルカエダの一派によって公表された情報だけです。それ以外の情報は誰も持ってはいません。われわれが今までに見た写真やビデオのすべてが真実であるのか、あるいは、作り話であるのかについては、われわれには分かりません。この現状こそがハーン・シャイフーンで起こったことを調査するようにとわれわれが国際社会に要請した最大の理由です。これが一番目。

二番目には、アルカエダの情報源は例の攻撃は朝の6時から6時半頃に起こったとしています。その一方、同地域をシリア軍が攻撃したのは昼前後、11時半から12時頃でした。つまり、彼らはふたつのストーリー、あるいは、ふたつの出来事をごちゃ混ぜにして喋っていることになります。化学兵器攻撃の命令はしませんでした。われわれは化学兵器はもう所有してはいませんし、化学兵器は数年も前に引き渡してしまいました。たとえ所有していたとしても、われわれはそれを使おうとはしないでしょう。化学兵器の使用は我が国の歴史では一度もないのです。

質問2: としますと、いったい何が起こったのでしょうか? 

アサド大統領: すでにお伝えしましたように、唯一の情報源はアルカエダです。しかし、われわれとしては彼らからの情報を真に受けることはできません。われわれの印象では、西側、特に米国はテロリストたちとぐるになっています。ミサイル攻撃を行う口実を作り出すためにすべてのストーリーを作り上げたのです。あのミサイル攻撃はハーン・シャイフーンで起こったことを理由に行われたのではないのです。ふたつの出来事ではなく、ひとつのストーリーです。その第1段階はソーシャルメディアやテレビで観ている内容、プロパガンダ、等の一連の動きであって、第2段階はミサイル攻撃です。この動きと軍事攻撃との間にはたった二日間、48時間しかないことから、これこそが実際に起こったこととしてわれわれは見ています。調査は何も行われず、具体的な証拠は何も提示されず、単なる主張とプロパガンダがあっただけ。それから、ミサイル攻撃。

質問3: この化学兵器攻撃は誰の仕業だと考えますか? 

アサド大統領: 化学兵器攻撃があったという主張はアルカエダ、アルヌスラ・フロントがしたものです。われわれは誰の仕業かを調査する必要もありません。彼らが公表したのです。この攻撃は彼らのコントロール下にありました。彼ら以外の誰かが行ったわけではないのです。この攻撃については、私がすでに言いましたように、攻撃が実際に行われたのかどうかさえも確定されてはいません。ビデオをどうやって検証しろと言うんでしょうか?今日、偽のビデオがたくさん出回っています。しかも、それらのビデオは偽物だという証拠もあります。たとえば、ホワイトヘルメットです。彼らはアルカエダです。彼らは髭をきれいに剃ってしまったアルヌスラ・フロントの活動家であって、白いヘルメットを被り、人道的な活動をする英雄のように見せています。しかし、あれは本物の姿ではありません。彼らはシリア軍兵士を殺害しました。インターネット上には証拠もあります。今回の化学兵器攻撃もまったく同じことです。殺害された子供たちが本当にハーン・シャイフーンで殺害されたのかどうかはわれわれには分かりません。本当に殺害されたのか?攻撃があったのだとしたら、いったい誰が攻撃をしたのか?化学物質は何か?これらの疑問については何の情報もありません。まったくゼロです。誰も調査を行ってはいません。

質問4: つまり、作り話だとお考えでしょうか? 

アサド大統領: われわれにとっては100パーセント、間違いなく作り話です。われわれは化学兵器は所有してはいませんし、使う意志もありません。証拠はないけれども、それらしき兆候はいくつかあります。この出来事に関する情報や証拠は誰も持ってはいませんが、兆候はあるのです。たとえば、2週間足らず前、あの攻撃の10日程前のことでしたが、テロリストらは、ダマスカスの郊外やハーン・シャイフーンから遠くはないハマを含めて、いくつもの前線で進撃をして来ました。われわれが化学兵器を持っており、それを使う意志があったと想定してみましょう。われわれが退却し、テロリストが進撃して来た時にどうしてそれを使わなかったのでしょうか?実際には、今回の化学兵器攻撃のタイミングはシリア軍が急速に進撃をしていた時のことであり、テロリスト側が崩れつつあった時でした。化学兵器を持っていて、それを使う意志があった場合、それはどのように使うのか?われわれが危機的で困難な状況に陥っていたわけではない時に、あのタイミングでどうして化学兵器を使わなければならないのか?これが第一。

第二に、化学兵器を使いたい場合、それを所有し、それを使う意志があるとしたならば、再度の想定ですが、われわれが闘っているテロリストに対してではなく、どうして市民に向けて使うのでしょうか?第三には、あの地域にはわれわれの軍隊は配備されてはいませんし、戦闘も行われてはいない。ハーン・シャイフーンには目標物は何もないのです。そのような場所をどうして攻撃するのか?いったい何が理由なのか?軍事的に、私は軍事的な観点から喋っているのです。もちろん、これは倫理的な範ちゅうともなるわけですが、化学兵器を所有していたとしても、われわれはそれを使う意志は持たないでしょう。なぜならば、倫理的には受け入れられないからです。あらゆる兆候が西側のストーリーを否定しています。この出来事のために彼らがでっち上げようとしたことは辻褄が合わないのです。どう見ても、彼らのストーリーには説得力がありません。

質問5: 米国が行った空爆に関してですが、トランプはあなたやシリアに対する姿勢を劇的に変化させたようです。あなたご自身が潜在的なパートナーとなるかも知れないと述べた相手を今失ってしまったという感じをお持ちでしょうか?

アサド大統領: 私は「もし・・・」と言っていました。すべてが条件付きです。もしも米国がテロとの闘いを真面目に推進するならば、われわれはパートナーとなることでしょう。これは米国だけに限ることではないと私は言いました。テロとの闘いを推進したい国はどこの国であってもお互いにパートナーとなります。われわれにとって、これは大前提だと言えます。実際問題としては、前にも言いましたが、最近証明されたことは彼らはテロリストとぐるになっており、米国や西側はテロとの闘いを真剣に行ってはいません。昨日、彼らの議員の一人がISIS をかばっていました。彼らはISIS は化学兵器を所有してはいないと言っていました。シリア政府やシリア軍と戦っているISIS を彼らは防護しようとしているのです。ですから、実際にテロリストと闘い、テロリズムと戦っているわれわれの側とテロリストをあからさまに支援する彼らの側との間でパートナーを組むことについて話しをすることは不可能です。

質問6: つまり、米国による攻撃によってトランプに関するあなたの受け止め方はすっかり変わってしまったと言えるのでしょうか? 

アサド大統領: とにかく、私は彼が大統領に選出される前、そして、その後も彼について何らかの意見を述べることについては慎重さを保って来ました。彼が何をするのかを見ようと私は何時も言って来ましたし、われわれは個々の文言に対してコメントをする気はありません。現実には、これは問題が米国の大統領個人にあるのではないことを示唆する最初の証拠です。問題は政権であり、ディープ・ステーツです。米政府は今も以前と同じであって、まったく変わってはいません。大統領は米国という舞台におけるさまざまな出し物の中のひとつにしか過ぎないのです。トランプは指導者になることを願望していましたが、米国ではどの大統領も真の指導者になろうとすると、いずれは自分の言葉を侵食し、自尊心を呑み込まざるを得なくなり、180度の方向転換を行うことになります。さもなければ、その大統領は政治的な代償を支払わなければならなくなるのです。

質問7: しかし、さらに別の攻撃があるとお考えでしょうか? 

アサド大統領: もちろん、これは米国が軍産複合体や金融会社、銀行、いわゆるデイープ・ステ―ツによって統治され、それらのグループの利益のために働いている限りは・・・の話です。そのような状況は何時でも、何処でも起こります。シリアだけに限られることではありません。 

質問8: それが再度起こった時には、あなたの軍隊やロシアは反撃をしますか? 

アサド大統領: 報復についてのお話でしたら、実際には何百キロも離れた場所からやって来るミサイルにはわれわれの手は及びません。シリアにおける現実の戦争はそういったミサイルではないのです。現実の戦争はテロリストが相手です。これがこの戦争におけるもっとも危険な相手であって、われわれの反撃は今も戦争の初日に行ったこととまったく同じままであって、シリア国内の何処においてでもテロリストを潰すことにあります。テロリストを排除した暁には、われわれは何も心配することはないでしょう。これがわれわれの反撃です。これは反撃であって、単なる反応ではありません。

質問9: あなたがおっしゃるところによると、シリア軍あるいはロシアにとっては報復をおこなうことは難しいと言えますが、これは軍艦の場所が非常に遠いことが理由ですね?

アサド大統領: はい、われわれのような小国にとっては、もちろんその通りです。それは誰もが理解していることです。手が届きません。つまり、彼らは別の大陸からミサイルを持ち込むことが可能です。われわれは皆がそのことをわきまえています。彼らは軍事大国ですが、われわれはそうではありません。ロシアに関しては、まったく別の議論です。

質問10: OPCWの調査の結果得られた結論は受け入れますか? [訳注: OPCWは「化学兵器禁止機関」の略]

アサド大統領: われわれは最初から、2013年にテロリストがシリア軍に対して化学兵器を使った最初の攻撃から、あの時点から調査を求めて来ました。化学兵器による攻撃があった時、ならびに、その種の主張があった時に調査を求めたのは何時もわれわれの側です。われわれの側が求めたのです。今回の件については、われわれは昨日ならびに攻撃後の数日間にわたって国際調査に関してロシア側と協議して来ました。しかし、国際調査は公平なものでなければなりません。その調査が公平なものでありさえすれば、われわれは如何なる調査も受け入れることができます。われわれは偏見のない国々がこの調査団に参加することを確かにしなければなりません。これは調査結果が政治的な目的のために利用されることがないようにするためです。

質問11: もしも彼らがシリア政府を非難したとしたら、あなたは退陣しますか? 

アサド大統領: 彼らが非難するとしたら?あるいは、証明するとしたら? これらふたつの間には大きな違いがありますよ。いや、彼らはすでにシリア政府を非難しています。「彼ら」という言葉が西側を指すとするならば・・・、いや、われわれは西側のことはまったく気にしてはいません。もしも化学兵器禁止機関を指していて、もしも彼らが攻撃があったことを証明することが出来たとするならば、われわれはあの攻撃を命令した人物が誰だったのかを究明しなければなりません。シリア軍としては、100パーセント化学兵器を所有してはいませんし、攻撃することなんて出来ません。たとえそうしたくても、われわれには出来ません。そのような攻撃を実施する手段は持っていないからです。われわれにはそうする意思もありません。 

質問12: 化学兵器は持っていないのですね。

アサド大統領: いいえ、持ってはいません。数年前、2013年にわれわれはすべての化学兵器を破棄し、化学兵器禁止機関がシリアは化学兵器が完全になくなったと宣言しました。

質問13: ペンタゴンはあの空軍基地には化学兵器があると言いましたが、それは否定しますか? 

アサド大統領: 彼らはあの空軍基地を攻撃し、さまざまな物資の貯蔵設備を破壊しましたが、サリンはありませんでした。どうしてでしょうか?彼らはあの空軍基地からサリン攻撃を行ったと言っていましたが、彼らが貯蔵庫を攻撃した際にサリンにはいったい何事が起こったのでしょうか?われわれはサリンに関して何か聞いていますか?何も聞いてはいません。われわれの参謀長が数時間後にはあの基地へ行きましたが、もしもサリンが貯蔵されていたとしたらどうして彼は基地内を歩き回ることができたのでしょうか? あの基地では何百人もの兵士や将校が勤務していましたが、殉職したのはたった6人だけです。どうしてこんなことが可能なんでしょうか?結局、サリンはなかったのです。ですから、彼らは死ぬことはなかったのです。ハーン・シャイフーンでも同様の作り話に接しています。救助隊員が犠牲者を、あるいは、死者とおぼしき人たちや負傷者を救助しようとした際、事実、彼らはマスクや手袋を付けてはいませんでした。どうして、こんなことが可能なんでしょうか?サリンはいったいどこへ行ってしまったのでしょうか?サリンが使われたのだとしたら、彼らは直ちに影響を受けた筈です。つまり、これは単なる主張でしかなく、この化学兵器攻撃やこれらの主張は作り話であり、サリンは何処にもなかったことの証拠です。

質問14: 閣下が何らの命令をも出してはいないとするならば、あの化学兵器攻撃はシリア軍内のならず者か非主流派によって実行されたのでしょうか? 

アサド大統領: たとえならず者の分派がいたとしても、シリア軍は化学兵器を持ってはいません。これが第一。二番目には、たとえその気があったとしても、ならず者部隊が勝手に航空機を差し向けることはできません。これは航空機ですよ。ちっぽけな車両をあちらこちらへ移動させたわけではありません。あるいは、小型の自動小銃を使ったのとはわけが違います。自分のピストルを勝手に振り回して、法を破った連中のことについては誰でも話をすることができますが、そういう事態は世界中の何処でも起こっています。しかし、航空機の場合はそう簡単には行きません。これが二番目。

三番目には、シリア軍は正規軍であって、民兵組織ではありません。これは正規軍ですから、階級組織がありますし、命令を与える場合は非常に明確な手順があります。「ならず者が軍の指導層の意思に反して何かを引き起こそうとした」という事態はシリアでは過去の6年間の戦争中に一度も起こってはいません。

質問15: 米国の攻撃の前にロシア側から警告を受け取りましたか?ロシア人は空軍基地にいましたか? 

アサド大統領: いいえ、ありませんでした。ロシア人は警告をする時間がなかったのです。米国側がロシア側に連絡をしたのは攻撃開始の数分前でした。また、ある者は基地へ到達するまでには時間がかかることから、警告は発射の後だったとも言っています。しかし、実際には、何かが起こることの兆候を察知していましたから、われわれはいくつもの対抗措置を取っていました。

質問16: 米国側が言うには、シリア空軍の20パーセントが破壊されたと言っていますが、これを確認していただけますか? 

アサド大統領: その20パーセントが何を言及しているのか、その判断基準がまったく分かりません。その100パーセントは何を言っているのか?航空機の数のことか?それとも、質的なことか?それは飛行可能な航空機だけのことか、それとも、待機していた航空機のことか?彼らが言わんとしていることは何なのか私には分かりません。いや、実際にはわれわれやロシア側は数機の航空機が破壊されたことを公表していますが、破壊された航空機のほとんどは古い航空機で、何機かはもう使用されてはいませんでした。これが実際に起こったことです。その証拠としては、攻撃を受けた後もわれわれはシリア全域でのテロリストに対する攻撃を中断しませんでした。つまり、われわれは実際に影響を受けたとは思いません。われわれの火力、すなわち、テロリストを攻撃するわれわれの能力はこの攻撃からは影響を受けてはいないのです。

質問17: シリア政府は当初化学兵器の貯蔵庫を爆撃したと言いましたが、あれは本当ですか?

アサド大統領: あれは可能性の話です。テロリストと関連のある目標物を爆撃する場合、中に何があるかは分からないからです。これが目標物だということは分かってはいても、その目標物は商店かも知れないし、倉庫かも知れません。あるいは、本部かも知れません。それはわれわれには分かりません。しかし、テロリストたちがその場所を使っていることは分かっており、他の場所と同様にその場所を攻撃します。これがこの戦争が始まった頃から毎日のように、時には毎時間ごとに実施して来たやり方です。しかしながら、その場所に何があるのかは分かりません。つまり、われわれの空爆で化学品の貯蔵庫を爆撃したというのは幾つかの可能性のひとつです。しかし、タイミングについては彼らの発表とは辻褄が合いません。テロリスト側は朝の内に発表しただけではなく、彼らのメディアやツイッター、ならびに、インターネット上の記載によると、攻撃があったと言われている時刻の23時間も前、午前4時には、攻撃があることを報じているのです。朝の4時です。化学兵器の攻撃があることを報じたのです。彼らはその攻撃をどうして知っていたのでしょうか?

質問18: ハーン・シャイフーンはあなたにとっては大きな後退となったとは思いませんか?米国はこの6年間で初めてシリア軍を攻撃しました。短いハネムーンが終わった後、昨日、ティラーソン国務長官はアサド家の治世は終わると言いましたが、ハーン・シャイフーンはあなたにとって大きな後退ではありませんか?

アサド大統領: シリアにはアサド家の治世なんてありません。彼は夢を見ているのか、あるいは、幻覚を見ているのでしょう。ですから、われわれは彼が喋った文言に無駄な時間を費やしたくはありません。現実には、後退であるとは思えません。これまでの6年間、米国はシリア中で、ISISやアルヌスラならびに同様の思想を持ったさまざまな派閥を含めて、テロリストらを支援して来ました。このことは明白であり、シリアで証明されています。直接攻撃に関して議論をしたいとお望みならば、23ヶ月前のことですが、最近の攻撃よりもさらに危険な攻撃がありました。あれはオバマが政権を離れる直前、数週間前のことだったと思いますが、シリアの東部にあるデール・エゾルで彼らが戦略的には非常に重要な山を攻撃した時のことです。あれはシリア軍の基地でした。シリア正規軍の基地です。ISISこの山を支配するのには大きな助けになりそうな目標でした。もしもシリア軍に粘りがなく、十分に強くはなかったとしたら、デール・エゾル市は今頃はISIS の手中に陥り、イラクのモスルと直接繋がっていたことでしょう。これはISIS にとっては戦略的に非常に大きな収穫となった筈です。実際には、米国政府は直接的に関与をしていました。しかし、今回、なぜ彼らは直接ミサイル攻撃をしたのでしょうか?それは、私がもうお伝えしましたように、あの地域のテロリストが崩壊しそうになっていたからです。つまり、彼らはあらゆる種類の武器を送り込んだものの、効果はなく、シリア軍を直接攻撃する以外に、米国にとっては自分たちの代理を務めるテロリストを支援する選択肢はなかったのです。

質問19: あなたにとっては、大きな後退ではなかったのですね?

アサド大統領: その通りです。あれは実際にはより大きな文脈、つまり、これまで6年間の文脈での一部です。今回は変わった形態をとりましたが、シリアで起こっている事柄に関する米国ならびに西側の政策の中核はまったく変わってはいません。個々の声明は忘れましょう。時にはより厳しい声明が発せられますが、別の機会にはより穏やかな声明を聞くことになります。でも、政策そのものはまったく同じままです。

質問20: あなたはテロリストを徐々にイドリブに追い込んでしまいましたが、次は彼らを攻撃する計画でしょうか? 

アサド大統領: われわれはシリア中の何処でも、それがイドリブあるいは他の町であったとしても、テロリストは攻撃します。タイミングとか優先順位そのものは軍事的課題ですから、軍事的観点から議論をすることになります。

質問21: ラッカはシリア政府にとっては優先順位が高いと以前おっしゃいましたよね。ラッカへ進軍している戦力はほとんどが米国が支援するクルド人です。ラッカの解放からシリア軍が仲間外れにされる恐れはありませんか?

アサド大統領: いいえ。われわれはテロリストの手から地方都市を解放してくれる勢力を支持しますが、テロリストから解放された地域がそのまま、たとえば、米軍あるいはその代理勢力や他のテロリストの占領下に入るという意味ではありません。誰の手によってラッカが解放されるのかはまだはっきりとは分かりません。あの地域をシリア軍に引き渡すのは間違いなくシリア勢力なのか?シリア軍と協調してくれるのか?これらの事柄はまだはっきりとは分かりません。しかしながら、われわれが耳にするのは単にラッカを解放するという声明だけです。そうした声明はもう1年、あるいは、1年近くにも渡って聞いてきましたが、現実には何も起こりませんでした。つまり、これは仮説でしかないのです。現実には、具体的なことは何もないのです。

質問22: 米国とロシアはジュネーブ和平プロセスの共同スポンサーです。両国間の緊張のせいで、このプロセスは頓挫するのでしょうか? 

アサド大統領: このプロセスが活動しており、何時でも活動が可能で、再活性が可能であることと、そのプロセスが効果的であることの間には大きな違いがあります。この瞬間までは、決して効果的ではありませんでした。何故でしょうか?それは米国が政治的解決を実現することに真剣ではないからです。彼らはこのプロセスをテロリストのための傘として用いたいのです。もしくは、彼らは戦場では勝ち取れなかったことをこのフォーラムを通じて入手したいのです。それこそが本プロセスがまったく効果を示し得なかった理由なのです。今も、まったく同じ状況です。われわれには米政権がこの件について真剣であるとはとても見えません。彼らは依然として前と同じテロリストを支持しているからです。「結構ですよ。このプロセスは再活性することが可能です」とわれわれが言うことは可能ですが、同プロセスが効果的、あるいは、生産的なものとなるだろうと期待することはできません。

質問23: 6年も経過しましたが、大統領閣下、お疲れではありませんか?

アサド大統領: 実際問題として私がプレッシャーを感じるのは政治的状況や軍事的状況ではなく、シリア国内の人道的状況です。日常的な流血沙汰や殺害、シリアの各家庭を襲っている心痛や苦難です。「疲れ」を正確に描写するとすれば、これこそが疲れを感じさせる最大の要因です。その一方、戦争や政治あるいは西側との関係を論じる場合には私は疲れを感じることはまったくありません。われわれは自分たちの国家を守ろうとしているのであって、その点に関しては疲れを感じることなんてまったくありません。

質問24: 夜眠れないことってあるのでしょうか?

アサド大統領: もう一度言いますが、問題はシリア国民の苦難です。私とシリア国民の家族との間の人道的な相互関係こそが、直接的であるにせよ間接的であるにせよ、時々夜眠れなくなる唯一の課題です。しかしながら、西側が発する声明、テロリストに対する支援、等による脅威ではありません。

質問25: 今や、フォウアとケフラヤの人たちは自分たちの集落を去って、ダマスカスやアレッポへ移動したいようです。これは住民の移動を意味しますが、戦後のシリアは戦前のシリアとは違ったものとなりそうです。心配することはありませんか? 

アサド大統領: このような文脈での移動は決まって起こることです。われわれがそうしようと思って選択したものではありません。われわれは誰もが自分の集落や自分の町に留まっていられることを望みますが、テロリストに囲まれ、攻撃を受け、日常的に殺害が横行するような地域では住民はそこから立ち退かざるを得ないのです。もちろん、解放された暁には彼らは自分の集落や町へ戻ることでしょう。そういう状況は他の場所でも方々で起こりました。つまり、これは一時的なものです。これが永久的なものであるならば、人口動態的な変化に関して言えば、それはシリア社会の利益にはなりません。一時的なものである限り、われわれが心配することは不要です。

ジャーナリスト: 大統領閣下、このインタビューに快く応じてくださって感謝したいと思います。

アサド大統領: どうも有難うございます。

ジャーナリスト: 非常に興味深いインタビューでした。どうも有難うございました。

アサド大統領: こちらこそ。

注: この記事に表明された見解は著者のものであって、必ずしもInformation Clearing Houseの意見を反映するものではありません。

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

4年前のインタビュー記事を読んだことがある皆さんは、今回のインタビューでもアサド大統領の知性や品格ならびに市民に対する関心の深さを改めて感じ取っていただけたのではないだろうか。少なくとも、私にはそう感じられる。質問23から質問25までの応答内容はそういった彼の人となりを率直に示しており、非常に興味深い。

2014年に行われたシリア大統領選を見ると、アサド大統領の人気振りが分かる。ウィキペディアの記述によると、この選挙では73パーセントの有権者が投票し、アサド大統領は88パーセントの得票率を得た。さらには、ロシア外務省のスポークスマン役を務めるアレクサンダー・ルカシェビッチはこの投票はシリア政府当局が継続的に機能して行く上では非常に重要であると言った。この大統領選はシリア国内の紛争のせいで「当然ながら、100パーセント民主的であるとは言えない」けれども、投票率や透明性、ならびに、外国人選挙モニタ-たちの観察結果を見ると、「この選挙の正当性を疑う理由は何もない」と述べている。

重ねて言うが、もっとも重要な点はこれらの記事から推察されるアサド大統領の姿は一部の西側のメディアが描くような独裁者の姿とはまったく違うという点だ。



参照:

1President al-Assad Interview With AFP: By Information Clearing House, Apr/13/2017, www.informationclearinghouse.info/46859.htm





4 件のコメント:

  1. 今回も興味深いインタビューのご紹介、和訳を有難うございます。

    バッシャール・アル=アサド大統領のインタビュー記事は 過去にも何度か目にし、医師でもあるアサド氏は 理路整然と穏やかに話をされる大統領で、「独裁者」というイメージは 欧米のメディアのプロパガンダが作り上げたものだと、私もかねてより、思っておりました。

    ロシアの援護を受けて以降、テロリストに対し、軍事的にかなり優勢な状況にいた政府軍が 化学兵器など使う理由もないですし、2013年に国連機関の査察の下で化学兵器は廃棄されています。

    劣勢な状況下で アルカイダ系武装組織やISが巻き返しを図るためのでっちあげの偽旗作戦である可能性が高いでしょう。

    アルカイダ系武装組織、アルヌスラの別同部隊、『ホワイトヘルメット』を「英雄」と持ち上げ、在英シリア人が一人で運営するプロパガンダNGO組織、『シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)』が流す真偽不明な情報を全く疑わずに報道する日本のマスコミのレベルの低さには呆れ返ります。

    トルコが 被害者の検死の結果、サリンが使われたと発表していますが、本当に化学兵器が使われたのか、使われたとしたら、いったい誰が使ったのか、誰よりも アサド大統領が「公正な第三者」による検証を望んでいるのであって、トルコのような紛争介入当事国のひとつではないところによる、公正・公平な第三者が真実を明らかにしてほしいと私も願っています。

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    1. Kumi様

      コメントを寄せていただき有難うございます。

      まったく同感です。

      アサド大統領のインタビュー記事を読みますとふたつの流れがあって、それぞれが白か黒で、中間の灰色はほとんどないですよね。何のことかと言いますと、RTのインタビューではアサド大統領の意見や将来展望を探ることに専念している姿勢が素直に感じられます。その一方、BBCのような西側の大手メディアの場合は、質問の仕方が何とか西側の筋書きに有利な答えを導き出そうとする魂胆が丸見えです、もちろん、アサド大統領はそれを察知して、詳しい現地の情報を駆使して説明し、罠に落ち込むことは決してありません。質問をする西側の質問者は可哀そうなくらいに理路整然と反撃されてしまいます。

      今の国際政治における最大の問題は国連が客観性のある活動をしてはいない点にあると思います。

      4月4日のシリア北部での化学兵器の使用に関しては、理論的にはOPCWが中心的な役割を演じて事実の究明に当たる筈でしたが、この機関は正当には動いてはいないようです。ロシアやイランが客観的な現地調査の実施を訴えていますが、現地で事実調査を行うチームのリーダーは英国人だそうです。マレーシア航空のNH-17便撃墜事件の国際調査団にはウクライナが参加していたことから、長い期間を掛けたにもかかわらず、発表された報告書は偏見に満ちたものとなり、事実を調査するという使命を果たしたとはとても言えない代物でした。

      今回の化学兵器の使用の件でも、あの事例と良く似た状況になるのかも知れません。自作自演作戦を公に知られることがないようにするためにも、西側はまさにそうしようとしているのだと感じられます。この件についてはロシアのラブロフ外相が異議を唱えています(4月18日の報道)。米国以外の世界にとっては非常に不幸な事ですが、米国に牛耳られている国連のことですから当面は改善することはないでしょうね。

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    2. 管理人さま、丁寧なご返信を有難うございます。

      OPCWの発表は 犠牲者の体からサリンかもしくはサリンに似た化学物質が検出された というだけのもので、肝心の「誰が」そのような化学物質を使ったのか という主語が抜けています。

      現地調査をしない限り、「誰が」化学物質をばら撒いたのか という事は分からないわけですから、シリア政府やロシア、イランが非難するのは当然ですね。

      おっしゃる通り、国連は機能しないし中立でもない機関になっていますが、その機能不全の国連でさえも無視するのが米国ですね。
      国連安保理の承認を得ずにイラク攻撃をしたりするのですから。

      そのイラクのフセイン政権をイラン・イラク戦争の時は軍事支援して、毒ガスの製造方法を教えたのは主に、米と独ですし、
      ベトナム戦争のときは米が枯葉剤を使っていたわけですから、
      「世界の警察」を気取って、化学兵器が使用されたから という人道上の理由で、国連決議を経ずにシリアを攻撃した というのならば、ダブルスタンダードも甚だしいでしょう。

      ウクライナ問題、マレーシア航空機撃墜事件については管理人様のブログの過去記事を 数ヶ月前、必死になって読みました。

      目から鱗が落ちる とはまさにこの事で、大変勉強になりました。
      今後もこの素晴らしいブログを長く続けていただきたいです。

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    3. Kumi様

      どうも有難うございます。

      結局、米国は4月4日の化学兵器使用事件に関してはOPCWに詳細な調査をして貰いたくはないというのが本音のようです。不都合な真実は世間に知られたくはないのでしょう。米国の駐国連大使がどんなに美辞麗句を並べてあれこれと説明してみても、下手人であることを白状したに等しいような状況ですよね。

      また、ウクライナ問題やマレーシア航空機の撃墜事件に関しても拙文を読んでいただいているとのこと、小生にとっては大きな励みとなります。有難い言葉を頂戴することができて、嬉しい限りです。

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