2017年5月4日木曜日

北朝鮮に関して大手メディアが決して伝えようとはしない事柄



幸か不幸か、米国における情報コントロールは意外なほどに徹底している。ディープ・ステ―ツの従者としての大手メディアが米国の世論作りに奔走しているからだ。

今全世界が注視する中で北朝鮮と米国との間では辛辣な舌戦が進行している。これらふたつの核保有国の間では「売り言葉に買い言葉」の連鎖が毎日のように見られる。この北朝鮮を巡って一般的な米国人が知っている、あるいは、知らされている現状はどのようなものであろうか。

一般論としては、「ロシアの脅威」論がさんざん喧伝された昨年秋の米国の大統領選を思い起こせば、おおよその見当はつく。大手メデイアが果たす役割は実に大きい。ここでは否定的な意味合いではあるけれども、実際問題として彼らは実に大きな影響力を持っている。また、外界には長い間ほとんど閉鎖されたままである北朝鮮の特殊な環境を考えると、北朝鮮に関して米国の一般大衆が理解している内容はかなり貧弱なものであろうと想像される。ほとんどゼロに近いのではないか。

そのような背景を念頭に置きつつ、最近目についた記事 [1] をご紹介しておきたい。その表題は「北朝鮮に関して大手メディアが決して伝えようとはしない事柄」。これは米国の現状を理解する上で非常に興味深い内容であると思う。米国の社会は自由だ、言論の自由が保証されていると喧伝されてはいるが、その現実は意外なほどにおそまつであると言わざるを得ない。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみようと思う。


<引用開始>

北朝鮮に関しては大量のプロパガンダが行われ、周到な情報操作が実施されている。一般大衆はこのことをよく理解しておかなければならない。ネオコンやそれを応援するメディアならびにディープ・ステーツが北朝鮮との戦争に跳び付こうとする中、情報は最終的な武器でもある。たとえば、北朝鮮と中国ならびにインドは「核を最初には使わない」という政策を採用している国であることをあなたはご存知だっただろうか?これらの国々は核兵器を決して「最初には」使わないことを約束している。しかしながら、核攻撃を受けた場合には、もちろん、核を使用する権利を有するとしている。

北朝鮮に対して米国は「核兵器を使用するぞ」と言って何回脅しをかけただろうか?高まるばかりの緊張を和らげるために、北朝鮮は米国が両国間の対話のテーブルにつくよう繰り返して求めて来たということをご存知だっただろうか?しかし、そうした提案はオバマならびにトランプにきっぱりと拒否された。対話もなしに、ご自分の家庭内の意見の相違を解決することは可能だろうか?対話のない所には平和はない。米国はどうして北朝鮮と話をしないのだろうか? ネオコンやディープ・ステ―ツならびにメディアは、金正恩は理性的ではないので彼と交渉をすることはできないと主張している。最近の歴史を振り返ってみると、米政府とその共謀者である大手メディアは米国が嫌いな相手は誰であっても悪魔視する。通常、これは戦争をもたらす。

パナマのマヌエル・ノリエガ、イラクのサダム・フセイン、リビアのカダフィ、そして、シリアのアサドらがその好例である。そして、金正恩を悪魔視することによってわれわれはもうひとつの戦争に向けて今進行中である。ここでも、一般大衆はこの神話を黙認しようとしている。北朝鮮では西側のリポーターは誰も受け入れられてはいない。北朝鮮は実際には鎖国状態にあることから、誰もが金正恩とはいったいどんな人物なんだろうと思っているのではないか?その一方で、我が国にも非常に非理性的な指導者がいると言う人もいる。このように悪魔視をする態度は何年も前にタリバンがオサマ・ビン・ラデンを引き渡すようにと要求してきた際に、ブッシュ政権の下で米国はそういう連中とは話をしたくはないと言い、タリバンの要請をきっぱりと断った状況とよく似ている。16年後、アフガニスタンではわれわれは今も戦争を続けている。戦争は外交の失敗、あるいは、外交の欠如の結果もたらされる。多分、われわれは外交を望んではいなかったのだ。多分、われわれは今も外交を望んではいないのだ。

米国が北朝鮮との国境の近くで毎年行う米韓軍事演習を中止することに同意しさえすれば、北朝鮮も核実験を止めることに同意すると言ったことがあることをご存知だろうか?米国は北朝鮮政権の転覆を目指した模擬作戦を中心とした軍事演習を実際に行っていることをご存知だろうか?今年の演習には約40万人の将兵が参加している。このことをご存じだっただろうか?今年の軍事演習には「斬首作戦」という名称が付けられ、この作戦は北朝鮮を相手とし、北朝鮮の政権を攻撃し、転覆させることを模擬し、立案されたものであることをご存知だっただろうか?

朝鮮戦争は、停戦が関係国の間で公式に署名されてはいないことから、今も公に終わってはいないことはご存知だっただろうか?これは北朝鮮側が要求する項目のひとつでもある。朝鮮戦争を終結させる条約は結ばれてはいない。その理由は、もしも平和条約が締結されていたら、韓国を占領し、いくつもの軍事基地を設置する理論的な根拠が成り立たなかったからである。1993年に米国は旧ソ連から北朝鮮に向けて水爆を打ち込むと言ったことがご記憶にあるだろうか?ジョージ・ブッシュは北朝鮮の指導者を「ピグミー」と呼んだことをご存じだろうか?さらには、「北朝鮮の政権を転覆する」とも言った。また、ブッシュが「先制攻撃」政策を打ち出したことや北朝鮮は「ならず者国家の枢軸の一員」であると言ったことをご存じだろうか?北朝鮮が核拡散防止条約から脱退したのはその直後のことであって、検査官全員を北朝鮮から追い出してしまった。

ネオコンやディープ・ステ―ツおよび大手メディアは北朝鮮は米国にとっては脅威であると主張し、数日前にトランプは彼らは全世界にとって脅威であると言った。あの発言は愚かである。トランプによる540憶ドルもの軍事費の増額は北朝鮮の全軍事予算の11倍にも匹敵するからだ。北朝鮮が「米国にとって脅威」であり、世界にとっても脅威であると提言することは馬鹿げているか大嘘であるかのどちらかであると言えようが、CNN の世論調査によると、米国の一般市民の37パーセントは北朝鮮は米国にとっては脅威であると思っている。プロパガンダなんて効果がないとはいったい誰が言うのだろうか?韓国の大統領が汚職のせいで最近弾劾され、新しい大統領を決める選挙が迫っていることはご存知だろうか?野党は米国が韓国から出て行くことを望んでおり、米国が設置したばかりのTHAADミサイル防衛システムを撤去したいとしている。

英国のテレサ・メイ首相は最近多くの人たちに衝撃を与えた。彼女が「第一撃」に核兵器を用いると言ったことをご存知だろうか?テレサ・メイがいささか「非理性的である」ことが明らかではあるが、どうしてわれわれは英国に対して宣戦布告をしなかったのだろうか?専門家らは北朝鮮は8発の核兵器を有してはいるが、有効な運搬手段を持ってはいないと言う。米国は7000発を所有し、その多くは北朝鮮の国境を狙っている。北朝鮮は朝鮮戦争後如何なる国に対しても侵略や攻撃を行ったことはない。その一方、米国は30カ国以上を爆撃している。現在米国はいったいいくつの国に対して爆撃を行っているのだろうか?答えることが出来ない?いったい誰が本当の侵略者なのであろうか?いったい誰が北朝鮮との「対話」を拒んだのだろうか?いったい誰が北朝鮮に対して核兵器を使うと言って脅かしたのだろうか?

どうして米国は話し合いの席について二国間協議を行う事に同意することができないのであろうか?どうして出来ないのかに関して論理的な理由はあるのだろうか?そのような協議を行うことによって失う物って何かあるのだろうか?協議を行わないで、敵対を続けるこの政策は実に狂気じみている!これは愚行であることをわれわれはわきまえている。しかしながら、それが意図的な外交拒否であるのかどうかはわれわれには分からない。


著者のプロフィール: ジョ―・クリフォードはロードアイランドに在住。

注: この記事に表明されている見解は全面的に著者のものであって、必ずしもInformation Clearing Houseの意見を代表するものではありません。

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

この引用記事の著者が「・・・はご存知だっただろうか」と問いかけている事柄は個々の読者の皆さんにとってもそのいくつかは初めて聞く内容であるかも知れない。私自身にとっては下記の事柄がこの記事で始めて学んだ内容だ:

- 北朝鮮と中国ならびにインドは「核を最初には使わない」という政策を採用している国であることをあなたはご存知だっただろうか?

- 今年の(韓国との合同)軍事演習には「斬首作戦」という名称が付けられ、この作戦は北朝鮮を相手とし、北朝鮮の政権を攻撃し、転覆させることを模擬し、立案されたものであることをご存知だっただろうか?

- 朝鮮戦争を終結させる条約は結ばれてはいない。その理由は、もしも平和条約が締結されていたら、韓国を占領し、いくつもの軍事基地を設置する理論的な根拠が成り立たなかったからである。

- 1993年に米国は旧ソ連から北朝鮮に向けて水爆を打ち込むと言ったことがご記憶にあるだろうか?

- トランプによる540憶ドルもの軍事費の増額は北朝鮮の全軍事予算の11倍にも匹敵する。

- 北朝鮮が「米国にとって脅威」であり、世界にとっても脅威であると提言することは馬鹿げているか大嘘であるかのどちらかであると言えようが、CNN の世論調査によると、米国の一般市民の37パーセントは北朝鮮は米国にとっては脅威であると思っている。

- 英国のテレサ・メイ首相は最近多くの人たちに衝撃を与えた。彼女が「第一撃」に核兵器を用いると言ったことをご存知だろうか?

・・・


ところで、資本主義を国是とする米国が朝鮮半島を南下する共産主義を阻止するためには韓国に軍事基地を設けて、南側に米国の意にかなう政権を樹立しなければならなかったのだが、朝鮮戦争を終結させる条約を結んでしまうと、それは反共政策の邪魔になる恐れがあるからだったという指摘は実に興味深い。

この文脈で日本の戦後史を考えると、日本とロシアとの間では平和条約が結ばれていないことや北方領土問題が未解決であることの理由がいとも簡単に見えて来る。ここでも、まったく同じ構造である。そのような歴史的な国際政治環境を生み出した「冷戦」が20数年も前に終わったというのに、つまり、当時の米国のダレス長官の日本に対する恫喝をもたらした反共の理由がすっかり消え去ったというのに、今でさえも平和条約は締結されてはいないのだ。

この状況は、今は当時の反共政策とはまったく別の理由があるということを示唆している。

それは、ロシアに産出する膨大な原油資源である。米国のディープ・ステ―ツはそれを格安のコストで、あわよくば只で手に入れたいという地政学的な願望を抱いているのだ。こうして、プーチン政権を転覆させるという目標を設け、「新冷戦」という新しいゲームが立案され、すでにそれは始まっている。ウクライナ紛争のせいで殺害された数多くの無辜の市民やウクライナを出国せざるを得なくなった百万人もの難民には大変気の毒なことではあるが、ウクライナは米国が推進するこのゲームのためのひとつの駒でしかないのだ。

このように地政学的に考えて見ると、北朝鮮に対する米国の軍事的威嚇は中国に打撃を与え、弱体化し、新たな強国が台頭してくることは何としてでも阻止するという遥かに大きな戦略の姿が見えて来る。北朝鮮はその戦略のためのひとつの地域的な戦場でしかないのだ。米国のネオコンやディープ・ステ―ツは中国を不安定化させるためならば何でも試してみるだろう。次の戦場は中国西部かも知れない。中国西部の砂漠地帯に住むイスラム系住民を扇動し、独立を標榜させるという戦術が今まで以上に表面化してくるのかも知れない。中国西部ではこのような動きがもう何年も前から燻り続けている。

こうして見ると、米国や湾岸諸国からふんだんな資金を動員し、武器を提供してイラクやシリアで育ててきたイスラム国の武装勢力は米国のネオコン政治家やディープ・ステ―ツにとっては米帝国を維持する世界戦略のためには実は貴重な資産であり、重宝な道具であるということが分かってくる。






参照:

1What Corporate Media Never Tells You About North Korea: By Joe Clifford, Information Clearing House, Apr/30/2017, www.informationclearinghouse.info/46960.htm





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