2017年8月24日木曜日

シリア - 戦争が続く限り、大量破壊兵器に関する大嘘は続くだろう



シリア紛争では化学兵器の使用が繰り返されている。今われわれ素人でさえもが知っている事実を整理すると、これらの化学兵器を使用したのは大手メディアが執拗に喧伝して来たアサド政権側ではなくて、実際には米国やその同盟国からの支援を受けている反政府武装勢力である。

戦争では本当のことが最初の犠牲者になると言われている。

この言葉を思い起こすまでもなく、われわれの目の前に展開するシリア紛争の現実を見ると、嘘の報道が実に多い。しかも、それらの報道は実に巧妙に行われており、素人であるわれわれ一般庶民が「これは嘘だ」と言い切ることはそう簡単ではない。

中国の古典のひとつである「孫氏の兵法」は「戦争とは敵をだます行為である」と戦争の一面を見事に描写している。戦争を遂行する指揮官は是非とも理解しておかなければならない基本的な概念のひとつだと言われている。いい悪いは別にして、戦争では「嘘は言い放題」、
「嘘は早く言った方が勝ち」といった解釈や態度が成り立つ。2400年前に指摘されたことが21世紀の今でも実によく当てはまる。

本物の戦争ではなく、国際政治や情報戦争、経済戦争の展開を思い起こしてみよう。大嘘は長い時間を経てからそれが嘘であったことが判明することがある。典型的な例は日本でその嘘が判明した原発の「安全神話」だ。しかし、そういった政治の状況は何千年も続いているのである。これは、毎日の生活のレベルにおいても、公の報道には目が眩むほど多くの嘘が織り込まれていることを承知の上で新聞を読み、テレビの報道を視聴することが必要であることを意味している。

シリア紛争やウクライナ紛争をこの経験則にしたがって改めて眺めてみると、さまざまな現実の断片が全体を示す構図の中に落ち着き、全体像をより具体的に理解することが可能となって来る。不思議な程である。

本日のブログでは「シリア - 戦争が続く限り、大量破壊兵器の嘘は続く」と題するトニー・カルタルッチの記事 [1] をおさらいしておきたいと思う。この著者は地政学的な分析を専門とする著名な研究者・ジャーナリストであって、本ブログでも何回も登場して貰っている。


<引用開始>



Photo-1: (化学兵器使用の)証拠を収集する特別調査チーム

2003年の始めにイラクへの米軍の侵攻および占領が遂行された後に発覚し、今や歴史に鮮明に刻み込まれている大嘘があったにもかかわらず、米国は、またもや、隣接するシリアに対する攻撃を含め、同様な戦争を遂行するための口実として大量破壊兵器(WMD)についての大嘘を推し進めている。

シリア政府は、米国からのさらなる避難や脅かし、あるいは、直接の軍事的侵攻を避けようとして、米国ならびに同国が資金を提供し、武器を与え、過去6年間にわたって化学兵器の使用を支援して来たテロ組織を非難し続けている。化学兵器がシリア政府によって使用されたという主張は、どう見ても、戦線を拡大するための口実でしかない。

シリアのファイサル・メクダド外務副大臣は記者会見で次のように述べている。 20174月のイドリブ県カーン・シャイクーンで起こった化学兵器攻撃は、「ホワイト・ヘルメット」のメンバーを含め、米国支援の武装勢力が演出したものである。この「ホワイト・ヘルメット」集団は米国およびヨーロッパ諸国によって資金が提供され、人道的支援を行うためのものであるとして外見を装ってはいるが、実際にはアルカイダやそのシリア国内の分派を含むさまざまなテロ集団を支援するためのものである。

シリア政府軍が海外から支援されている武装勢力の占領下にあった地域を奪回するにつれて、武装勢力が演出した攻撃のために用いられた化学兵器を製造したり、備蓄したりした拠点を含めて、武器弾薬の倉庫や貯蔵物資が組織的に解明されようとしている。それらの中には致死的ならびに非致死的な化学物質の両者が含まれ、米国や米国の同盟諸国によって提供されたものであることが判明している。[訳注: メーカー名が判明している。]

メクダドは外国からの支援を受ける武装勢力が化学兵器を使用することには戦術的な目的を達成する効能は何もなく、一種の脅かしのためのものであると指摘したいのであろう。

西側によって独占されている「国際」機関はシリア政府が提出する証拠は受け取ろうとはしないことが予測される一方、シリア政府の言い分は過去6年間も続いて来た紛争や化学兵器の使用に対する非難についてより論理的に説明をしてくれる。


化学兵器の使用は政治的なものであって、戦術用ではない:  

米国のWMDに関する大嘘を後押しする西側メディアの主張は数多く存在するにもかかわらず、化学兵器の効力は、特に、戦場ではそれほど高くはない。通常兵器の方が何倍も高い効力を発揮するのである。

この事実は米国自身が行った研究によっても明らかにされている。これは化学兵器が大規模に使用された19801988年のイラン・イラク戦争に関して米海兵隊が行なった研究の成果である。

 Photo-2: 言うまでもなく、1980年代中期のイラン・イラク戦争ではガスマスクの使用は必須であった。

付属書B: 化学兵器の中で「学び取った教訓: イラン・イラク戦争 と題された文書は8年にも及んだ紛争中に起こった化学兵器戦争について包括的な調査を行い、報告をしている。幾つかの事例が詳細に研究され、その結果、化学兵器の大量使用は主として領域拒否を実現するために配備されたものであることを明らかにしている。

化学兵器の効用と致死性は下記のように概略されている(強調は著者が加えた): 

化学兵器の効力を最適化するには特別な気候条件や地理的条件を必要とする。マスタードガスを含めて、この戦争で使用された化学兵器は相対的に持続性が不足することから、特定の化学兵器を使用するのに適した時間帯は、一日のレベルであっても、年間のレベルであっても、非常に限られるものであった。イラクはマスタードガスを雨季や沼地で使用しようとしたが、その効果はこれらの条件下では著しく低いものであった。イラク側にとっては残念なことではあったが、自分たちが山岳地帯にあり、敵軍が平野地帯に居る場合以外ではマスタードガスは山岳地帯での使用には適しないことを彼ら自身が学んだ。

戦争に使われたこれらの神経ガスがその持続性においてマスタードガスよりももともと遥かに劣っていたことから神経ガスの相対的な効力に関してはわれわれは確信がない。これらの神経ガスが致死性を示す濃度を確保するには、味方がいる場所が朝のそよ風の際に風上側に位置するような地点を選んで夜明け前に攻撃をかけるのがもっとも有効である。

化学兵器の殺傷率は低い。第一次大戦の当時と同様に、化学兵器の負傷者数に対する致死率は23パーセントである。負傷者の数を把握することは非常に困難であるが、この戦争においても致死率は恐らく同様であろう。神経ガスを導入してさえも致死率がこのように低いことは注目に値するとわれわれは思う。これらの数値が正しいならば、多分、正しいだろうと思うが、化学兵器は「貧者のための核兵器」であるとは考えるべきでない。これらの兵器は偉大な心理的潜在能力を有してはいるものの、核兵器や生物兵器が示すような大規模な殺傷能力はない。

米軍自身の結論によると、化学兵器の使用は通常兵器を補完するだけであって、敵の部隊を多数抹殺するには適さない。現代の戦争を遂行する上では通常兵器がより適切であると考えられる。

化学兵器の有効性に関してはシリア政府にとってはその使用を決して正当化することは出来ない程度のものでしかなかったが、その限られた恩典を自分たちの知見と平衡に保ちつつ、米国は、特に、シリアがこの化学兵器を使用した際には、その事実を取り上げて直接的な軍事介入を行う具体的な口実にしようとしたのである。

こうして、シリア政府軍側にとっても、外国から支援を受ける反政府武装勢力自身にとっても化学兵器の使用は個々の戦局を覆すほどの恩典はないのではあるが、米国がシリア側による化学兵器の使用を自分たちの軍事的展開の口実として使うと、それは一転して、米国がシリア政府に対して直接軍事介入を始めることが可能となり、外国が支援する反政府武装勢力に勝利をもたらすことになるのである。

要するに、シリアにおいては何れの側が化学兵器を用いたとしても、唯一の受益者はダマスカス政府を転覆させることに特別な関心を抱いている米国だけだ。

WMDに関する大嘘は米国が世界中で繰り返して乱用して来た戦術ではあるのだが、シリアでもこの戦術は何度となく観察されて来た。不明瞭で、実体がなく、見せかけだけの証拠を振りかざす米国の非難はより大規模で直接的な軍事介入を行うための口実でしかないが、そのような事例の数は米国が支援する武装勢力が戦場から駆逐されるにつれて増加している。


米国の挑発、大嘘、そして、化学兵器: 

世界を戦争に導くために米国は不審な状況や見慣れたプロパガンダならびに外交戦術を推進する。まず最初の事例は2013年、ダマスカスの近郊で化学兵器攻撃が行われた。この攻撃の前、2012年には何回かの警告があった。米国はシリア政府が化学兵器攻撃を準備しており、もしもシリア政府が化学兵器攻撃を行ったならば米国は直接軍事介入をすると警告していたのである。

これは2011年に米国がリビアで行ったのと同じような速やかな政権交代はシリアではもはや不可能であり、シリア政府を倒せるのは直接の軍事介入を通じてのみ可能であることが明らかとなっていたからであった。

それに応えて、ロシアの仲介の下でシリアは所有している化学兵器を破棄し、この作業は国連の検査官による確認の下で実施された。それにもかかわらず、化学兵器は戦場に現れ続けた。その度に、米国は執拗にシリア国内で直接的な軍事介入を拡大しようとした。

米国からは論理的な説明はついに提供されなかった。化学兵器よりも遥かに効果的な通常兵器を用いてすでに戦闘に勝利しつつある時、しかも、化学兵器を使用すれば米国の軍事介入をみすみす招き入れる危険性がある時、シリア政府が何故に戦場でそのような非効率的な兵器を繰り返して使おうとするのかに関しては米国の政治家や国会議員らは明確な説明を一切しなかった。

逆に、これらの化学兵器攻撃の多くの事例はテロ組織によって演出され、外国の支援国家と直接国境を接している地域で起こっている。最近になって、2017年の4月、NATOの一員であるトルコと接するイドリブ県のカーン・シャイクーンで化学兵器攻撃が発生した。トルコは2011年に紛争が始まった当時からアルカイダやその傘下にある組織に対して武器を提供し、物資を補給し、直接的な軍事支援を行って来た。


情報源を考えてみよう:



Photo-3: イスラム過激派によって占領されているイドリブ県の都市

イドリブ県は何年間もアルカイダのコントロール下に置かれている。ニューヨークタイムズやロサンジェルスタイムズさえもがついにそのことを認めようとしている。 

ニューヨークタイムズは「シリア国内の隠れ家で過激派はより強力なコントロールを敷いていると題した記事で下記の事を認めようとしている: 

「イドリブ県は、9/11以降ではアルカイダの最大級の隠れ場である」と、米国の対イスラム国共同戦線への特使を務めるブレット・H・マクガークが先月述べている。「イドリブ県は今や大問題だ。」 

ロサンゼルスタイムズは「武装勢力グループがシリアの県を力づくで横取りした後、人道支援グループは支援物資がテログループに流れてしまうことを懸念」と題した記事で米国やヨーロッパおよび中東地域の同盟国からの支援物資の流れがアルカイダによって事実上占領されている都市へ注入されていると述べ、次のように報じている(強調は著者が付け加えたもの): 

シリアのイドリブ県が最近過激派組織によって横取りされたことは市民に対しては人道支援物資を送り込み、シリア政府と戦うさまざまな武装勢力に対しては軍事支援を提供している米国や他の国々にとっては大きな難問である。

以前アルカイダの分派であったアル・ヌスラ・フロントを間違って支援してしまうこともなしに支援を継続することはこれで不可能となってしまった。アルカイダは米国政府によってテロリスト・グループと見なされている。

現実的に言えば、何百万ドルにも相当する支援物資や武器、車両、訓練、直接的な軍事支援、等を西側から提供されている反政府武装勢力の占領地域をアルカイダが支配するような事態はアルカイダ自身が国家レベルでのより大きな支援を受けている場合、あるいは、アルカイダが最初からずっとこの種の支援の受益者であった場合には起こり得ることである。 

ニューヨークタイムズやロサンゼルスタイムズは両紙とも、それらの記事においては、米国がシリアで何を行って来たのかの全貌については読者が完全に理解することができないような文言を使っている。たとえば、アル・ヌスラ・フロントは「以前アルカイダの分派であった」と報じることは読者にはアル・ヌスラ・フロントは今はもうアルカイダの一員ではない、あるいは、テロリストでもないといった間違った理解を導きかねない。現実には、彼らは今でもアルカイダの一員であり、テロリストでもあるのだ。

ロサンゼルスタイムズはさらにその先へ行こうとする。つまり、同紙が示唆するところによると、アルカイダのアル・ヌスラ・フロントは西側が支援している組織に「独立性と中立性」をもたらすとさえ言う。

また、ロサンゼルスタイムズは次のようにも述べている: 

しかし、支援物資が中断すれば、イドリブ県に居住する推定で2百万人の一般市民に人道的な危機を引き起こし、バシャール・アサド・シリア大統領を追い出す努力を台無しにしかねない。

ところで、「バシャール・アサド・シリア大統領を追い出す」努力は武装勢力によってのみ可能であり、ニューヨークタイムズとロサンゼルスタイムズの両紙はシリアに残されている武装組織はアルカイダだけになってしまったことを認めている。 

両紙が実際に報じている内容はアルカイダはイドリブ県に追い詰められてはいるが、その地域に対しては米国とその同盟国は依然として支援物資を送り込み、アルカイダのための支援は実質的にシリア政府を崩壊させるためにも継続されると言っているのである。

これは化学兵器攻撃を作り出す試みやそれを口実として、まさにアルカイダのために、直接軍事介入を行おうとする米国の試みが今後も継続されることを意味する。シリア政府を崩壊させるのか、あるいは、イドリブ県に米軍によって防護されたアルカイダの隠れ家を構築するのかのどちらかである。 

こうして、アルカイダがコントロール下に置くイドリブ県では「人道支援組織」がシリア政府軍によって手配された化学兵器の目標となっていると主張するのはまさにこの文脈においてである。

シリア政府とその同盟国はこの紛争でほとんど勝利を収めたも同然であり、彼らは通常兵器を用いて勝利したのである。米国が振りかざすWMDに関しては、国連の検査官を招待し、新たに解放されたシリア領土をくまなく検査し、2013年にシリア政府が約束した通りに化学兵器が破棄されている事実を確認することによって、彼らは、執拗に、繰り返して唱えられているこれらの大嘘をあらゆる方法で暴こうとしている。

著者のプロフィール: トニー・カルタルッチはバンコックに本拠を置く地政学の研究者、かつ、作家である。特に、オンライン・マガジンであるNew Eastern Outlook に寄稿している。
https://journal-neo.org/2017/08/18/syria-as-the-war-continues-wmd-lies-linger/

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

この記事の著者は化学兵器の使用は通常兵器に比べて殺傷力が劣る。しかしながら、それが持つ政治的な意味合いはまったく別ものだと総括している。大手メディアを総動員して進められている情報戦争、あるいは、洗脳プロセスがもたらす威力を考えると、政治的な意味合いにおける化学兵器の効力には計り知れないものがある。

著者はニューヨークタイムズやロサンゼルスタイムズは両紙とも、それらの記事においては、米国がシリアで何を行って来たのかの全貌については読者が完全に理解することができないような文言を使っている。たとえば、アル・ヌスラ・フロントは「以前アルカイダの分派であった」と報じることは読者にはアル・ヌスラ・フロントは今はもうアルカイダの一員ではない、あるいは、テロリストでもないといった間違った理解を導きかねない。現実には、彼らは今でもアルカイダの一員であり、テロリストでもあるのだ』と述べている。非常に分かり易い解説である。

著者の主張はさらに続く。

両紙が実際に報じている内容はアルカイダはイドリブ県に追い詰められてはいるが、その地域に対しては米国とその同盟国は依然として支援物資を送り込み、アルカイダのための支援は実質的にシリア政府を崩壊させるためにも継続されると言っているのである。

これは化学兵器攻撃を作り出す試みやそれを口実として、まさにアルカイダのために、直接軍事介入を行おうとする米国の試みが今後も継続されることを意味する。シリア政府を崩壊させるのか、あるいは、イドリブ県に米軍によって防護されたアルカイダの隠れ家を構築するのかのどちらかである。 

こうして、アルカイダがコントロール下に置くイドリブ県では「人道支援組織」がシリア政府軍によって手配された化学兵器の目標となっていると主張するのはまさにこの文脈においてである。

ひとつの事例を詳細に取り上げることによって、トニー・カルタルッチは情報戦争が持つ威力を具体的に説明してくれた。われわれ素人にも実に分かり易い。

米国や西側諸国の一般市民の多くは自分でものごとを考えることもなく、毎日のように扇動的な情報に取り巻かれており、情報を的確に選択すること自体は至難の業である。また、膨大な情報量である。新聞やテレビが報道を繰り返し、どの情報源を取ってみても同じような内容が繰り返されている社会においては、遅かれ早かれその社会の空気はプロパガンダの主が意図した方向へと収斂して行く。こうして、知らず知らずの内に、われわれは空気と化したプロパガンダを何の抵抗もなく受け入れてしまう。つまり、無かったことさえもが在ることになるのだ。

歴史を見ると、こういうプロセスが日本でも実際にあった。ナチドイツの社会でもあった。そして、21世紀の今でさえも、本日の投稿でご紹介する記事が示すように、米国だけではなく西側の各国でも同じ状況が起こっている。

シリア紛争がいったいどこに落ち着くのかを今推測することは時期尚早だと私は思う。しかしながら、武力衝突の大きな流れを眺めてみると、シリア紛争はこの夏峠を越したのかも知れない。激戦の地であった大都市のアレッポには何十万人もの元住民が帰ってきたと報じられている。まだ始まったばかりであるとは言え、これから自分が住んでいた住居を復旧し、インフラを再整備しなければならない。気の遠くなるような仕事が待っている。反政府武装勢力によって占領されていた地域はシリア政府軍によって次々と奪還され、政府軍がコントロール下に置く地域の面積は急速に拡大しているという。

反政府武装組織を支援してきた外国政府の中には今までの政策とはまったく異なる方向を打ち出した国がある。それはシリアに隣接するトルコと大金持ちの国カタールだ。これらの国々は、以前の政策とはまったく違って、シリアやイラン、ロシアとの協調路線を打ち出している。数年間続いていた反シリア同盟がほころびを見せ始めた。

シリアでの内戦が収束に向かおうとする中、米政府は、821日、今までの約束とはまったく異なって、アフガニスタンへ米軍を増派すると宣言した。これは軍産複合体からの米政府に対する圧力が如何に大きなものであるかを物語る具体的な事例であると思う。ある識者はこの動きはアフガニスタンそのものよりも米国の最大のライバルである中国に対する牽制でもあるという。北朝鮮とアフガニスタンというふたつの潜在的な戦場に挟まれて中国は揺さぶられつつある。中国はこれからどう対応していくのだろうか。

そして、国内政治の観点から見ると、米国は国内に抱えているさまざまな問題を国内政治の争点にすることは何としてでも避けたいのではないか。それは民主党であっても、共和党であってもまったく同じ立場だ。下手をすると、米国は国内が二分されて、内戦に見舞われかねないのだ。銃がふんだんにある米国社会でそんな事態が起こらない様にするには、米国の国家利益を損なおうとする敵国が存在することを喧伝して、国民の関心を国外へ向けておかなければならない。敵国が存在しければ、敵国を作り出さなければならない。こうして、海外での戦争は今まで以上に米国の国内政治のニーズを色濃く反映するようになって行くのではないか。

北朝鮮に対する威嚇は米国市民の関心を外へ向けておくには絶好の政治的シナリオなのではないかなと思わせる節がある。戦争をどんな理由で始めるのかについてはペンタゴンの戦争立案者に聞いてみるしかないのだろうが(聞いてみても、「無いものを在る」と主張されて、お終いになるのかもしれないが)、北朝鮮と米国との間で武力衝突が起こったとしたら、米国の軍事基地を何個所も持っている日本はとんでもない巻き添え被害に遭う可能性が高い。

このような筋書きは完全に外れることを私は願っているが、最悪の場合、米ロ間の核戦争に発展して行く。そうなれば、文明の終りだ。819日に掲載した投稿、「渚にて、2017年 - 核戦争を招きよせる」をご覧願いたい。





参照:

1Syria: As the War Continues, WMD Lies Linger: By Tony Cartalucci, NEO, Aug/18/2017





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