最近の米国の世相を見て、米国の現状を憂える人たちがたくさんいる。貧富の差の拡大、人種差別、失業者数の拡大、医療保険制度の不平等、奨学金の返済に苦しむ大卒、警察国家、等、国内問題が山積みになっているにも関わらず、政治家や軍産複合体が推進し、国家予算を浪費する対外政策については不満を抱く人たちが多い。
さまざまな見解がある中で、率直に意見を述べることでは定評のあるポール・クレイグ・ロバーツ氏の記事が非常に興味深い [注1]。
「警察国家」とか「情報統制」といった言葉で代表される社会が米国に到来したことを鋭く指摘する内容となっている。
この記事が公表されたのは4月16日だ。つまり、米英仏が14日にシリアに対してミサイル攻撃を行った日から2日後のことである。
本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。
<引用開始>
米国人だけではなく、他の国の人々の間ではいったいどれ程多くの人たちが米国は今や20世紀の反ユートピア社会を描いた小説の世界に変わった、あるいは、「マトリックス」や「Vフォー・ベンデッタ」といった映画よりも自由が遥かに制限され、現状には非常に疎い社会に変わってしまったと結論するのであろうか?(決して多くはないだろう。)反ユートピア社会の人たちは自分たちの本当の状態については何も知らない。それと同様に、米国人で自分たちの現状を理解している人はほとんどいない。
21世紀になってから米国は7ヵ国で何百万人もの住民を殺害し、不具者にし、孤児にし、故郷から追い出し、国家を破壊、あるいは、ほとんどそれに近い状態にしてしまった。米国が犯したこれらの戦争犯罪のことについてわれわれはいったいどのように判断しているのであろうか?例えば、ワシントン政府が最近犯した戦争犯罪、つまり、シリアに対する非合法的なミサイル攻撃のことを考えてみて欲しい。この非合法性に関して抗議するのではなく、米国のメディアは差し迫った死や破壊を応援し、この非合法的な行為を扇動したのである。
ワシントンの唯一の同盟国であるイスラエルは(ワシントンの帝国に従属するヨーロッパやカナダ、オーストラリア、および、日本とは対照的に)21世紀になってからと言うもの継続的にパレスチナ人大量虐殺政策に関してワシントン政府の支持を得、政策を防護して貰い、支援を受け続けて来た。本質的には、パレスチナ人に残されたものは「ガザ地区」として知られている強制収容所がすべてであって、この地域はイスラエルによって日常的に爆撃を受ける。この爆撃はワシントン政府から提供された武器と資金によって行われている。ガザ地区の爆撃が報じられると、「選良の民」たちは庭園用の椅子を持ち出して、ガザ地区を見下ろせる丘の上でピクニックを行い、イスラエル軍が女性や子供たちを殺害するのを見て拍手を送る。これが米国が持つ唯一の同盟国の姿である。
米国とイスラエルが犯している犯罪は重い。しかしながら、反論を受けることはない。ところが、それとは対照的に、70人のシリア人が殺害されたとして報じれられた化学兵器攻撃はシリアに対するミサイル攻撃の口実として用いられた。これはまったく言語道断である。イスラエルは日常的にシリアの目標を攻撃し、シリア人を殺害し、米国はアサドを政権の座から追い出すためにオバマ政権が送り込んだ「反政府派」を武装し、資金を提供する。その結果、数多くのシリア人が殺害されている。これらの70人のシリア人の死がワシントン政府にとっていったいどうしてこうも突然に重要になったのであろうか?
ワシントン政府の高官やプレスティチュートが流す彼らの声明に関する報道によると、2-3ヵ所の化学兵器の施設がワシントン政府のミサイル攻撃によって破壊された。この件についてちょっと考えてみよう。もしもワシントン政府が化学兵器施設に対してミサイル攻撃を仕掛けたとすれば、莫大な量の致死的なガスが放出されたことであろう。一般市民の殺害が何の証拠もなしにアサドが犯したものとして断定され、シリアへのミサイル攻撃の口実とされたが、これらの施設に実際に化学兵器が貯蔵されていたとすれば、被害者数は70人の死者数よりも何倍も多くなったことであろう。しかし、被害が出たという証拠は見られない。
もしも被害者が出たならば、ワシントン政府が自分たちの犯罪行為のための口実として使った化学兵器攻撃よりも遥かに深刻な戦争犯罪となっていたに違いない。しかしながら、米国のプレスティチュートは米国がシリアやロシアに教えてやった教訓に大喜びしている有様だ。明らかに、米国のメディアは倫理観には乏しく、金目当てで働く馬鹿な連中で構成されている。もしも実際にそのような施設が存在していたとすれば、シリアの化学兵器工場に対するミサイル攻撃は実質的にはシリアに対して化学兵器攻撃を行ったことと同等だということを彼らは理解できないでいるのだ。
昨日私が書いているように、かって私がウオールストリートジャーナルで編集者として働いていた頃は、例えば、ある国家が化学兵器を使ったことを罰するためにワシントン政府がその国の化学兵器工場を爆撃したと公表したならば、同ジャーナルの特派員は実に聡明であるから、ワシントン政府がその国に対して行った化学兵器攻撃によってどれだけの被害者が出ているのかと問い質していることであろう。「ワシントン政府の攻撃によって放出された毒ガスによって何千人もの死者が出ているのではないか?」と。「病院は被害者でごった返しているのではないか?」と。
もしも担当記者が何の記事も提出しないで、明らかに起こりそうにもないことを報じているワシントン政府の発表内容だけを伝えて来たとするならば、われわれはその記者に対して「現場へ戻って、明らかに重要な質問をして来い」と求めていることだろう。ところが、今日、ニューヨークタイムズやワシントンポストは第1面に何の裏付けもない報告を掲載しているのだ。
今日、記者たちはもはや情報源を確認しようとはしない。米国にはジャーナリズム精神はもう存在しないからだ。クリントン夫妻を超富豪にしてくれたディープステ―ツの意向にしたがって、クリントン政権は独立心が旺盛で、かつ、幅広い意見を持った米国のメディアの90パーセントを6社の政治的な企業系列に統合することを認めた。この時、米国のジャーナリズム精神は姿を消した。現在われわれに残されているのは生きるためには嘘をつく宣伝省だけである。米国のジャーナリズムにおいては真実を語ろうとする者は誰でも速やかに解雇される。フォックス・ニュースのタッカー・カールセンの場合、フォックス社は外部のプレスティチュートたちから彼を解雇するよう圧力を受けている。「私はタッカー・カールセンによって性的暴力を受けた」と主張する女性が現れるまでに如何ほどの時間もかからないのではないかと私は心配している。
私が理解している限りでは、米国は今や警察国家である。すべての情報がコントロール下に置かれ、国民はプロパガンダを信じるように訓練されている。さもなければ、愛国心が足りないとか、テロリストやロシア人の仲間ではないかとして批判される始末だ。
<引用終了>
これで、この記事の全文の仮訳が終了した。
著者は「私が理解している限りでは、米国は今や警察国家である。すべての情報がコントロール下に置かれ、国民はプロパガンダを信じるように訓練されている。さもなければ、愛国心が足りないとか、テロリストやロシア人の仲間ではないかとして批判される始末だ」と述べている部分は非常に正確な描写であると思う。
思うに、これは著者の個人的な体験を綴った言葉ではないのだろうか?時には大統領さえもが暗殺の対象となる国のことであるから、現状をあからさまに伝えようとするポール・クレイグ・ロバーツ氏にさまざまな形で圧力がかかって来ていても不思議ではない。
さらには、ジャーナリズム精神の欠如に関してこうも述べている。「もしも被害者が出たならば、ワシントン政府が自分たちの犯罪行為のための口実として使った化学兵器攻撃よりも遥かに深刻な戦争犯罪となっていたことであろう。しかしながら、米国のプレスティチュートは米国がシリアやロシアに教えてやった教訓に大喜びしている有様だ。明らかに、米国のメディアは倫理観に乏しく、金目当てで働く馬鹿な連中で構成されており、シリアの化学兵器工場に対する攻撃は、もしも実際にそのような施設があったとすれば、シリアに対して化学兵器攻撃を行ったことに匹敵するということを理解できないでいるのだ。」
最近の数年間、好むと好まざるとにかかわらず、私は「芳ちゃんのブログ」を通じて米国の対外政策や国内問題を扱った記事をいくつも仮訳して、読者の皆さんと共有して来た。さまざまな意見や解説、洞察に満ちた見解に出会うことができた。その結果、私なりに今日の米国社会を一言で描写するとすれば、それは「フェークニュースの蔓延」である。2016年秋の大統領選以降の最近の1年半はまさにこの一言に集約することが可能だ。そして、その功労者としてアカデミー賞を贈呈したい主演者はディープステ―ツの意向を忖度し、白を黒だと言って一般大衆の洗脳に従事してきたニューヨークタイムズやワシントンポスト、CNN、BBC、等で代表される企業メディアだ。
米国の現状は私たちが中学生から高校生の頃、つまり、ベトナム戦争前の古き良き時代に、米国映画やテレビ番組を見て、ナイーブにも勝手に理解をしていた頃の米国社会とは雲泥の差だ。歴史的に見ると、これは比較的短期間に起こった実に大きな変貌であると言えよう。
参照:
注1: Once Upon A Time Long Ago Truth Was Important: By Paul Craig Roberts, Apr/16/2018, www.paulcraigroberts.org/.../upon-time-long-ago-truth-...
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