2018年6月5日火曜日

現地のシリア人が化学兵器攻撃の大嘘を暴く

シリアの首都ダマスカスの近郊のドーマという町で、4月7日、化学兵器攻撃があった。70人もの住民が殺害され、それはアサド大統領が命じたからだと報じられた。

しかしながら、西側の大手メディアを除いては、国際世論はこの報道を信じなかった。偽情報であることが見え透いていたからだ。その論理としては、アサド大統領が自国民に向けて、しかも、政府軍側の勝利がほとんど確定的になっているこの時期になってから世界中の世論を敵に廻すような化学兵器攻撃を行う理由は見当たらないのだ。

当時を振り返ってみると、例えば、米国に追従するフランスのマクロン大統領は「われわれは化学兵器、少なくとも塩素が使われたことの証拠を握っている。これはバシャール・アル・アサド政権によるものだ」と臆面もなく述べていた。4月12日の報道だ。シリアに対する武力介入を喧伝し、シリア政府に対する圧力が急上昇している最中であった。

4月14日、米英仏はシリアに対してミサイル攻撃を行った。化学兵器を生産し、貯蔵していると言われていた施設が攻撃を受けた。これは民間の施設であって、抗がん剤の開発を行ったり、他の薬剤を生産していた。経済制裁を受け、輸入が思うようには出来ないシリアでは民生用の貴重な施設であった。ミサイル攻撃の翌日、攻撃を受けた場所を取材するために西側のメディアが招かれた。もしも西側が主張していたように、この施設で化学兵器が本当に製造されていたとしたら、この攻撃によって化学兵器が漏れ出して、何千人もの巻き添えの死者や負傷者が出ていたことであろう。西側の主張はすべてが見え透いた大嘘であった。

反政府勢力に武器を与え、資金を提供し、外国から多数の過激派武装集団を送り込み、アサド大統領を失脚させることによって地政学的な利益を手中に収めようと試みた西側は、結局、その戦略や戦術に稚拙さを露呈した。シリアでは7年間にもわたって内戦が進行しているとして見せかけて来たものは、実際には、西側の資金力にものを言わせた代理戦争である。

シリア政府側に濡れ衣を着せて、反政府武装勢力に騒乱を起こさせ、アサド政権を失脚させるという西側の戦略が失敗した理由のひとつには「現地の実情を知りたい、それを西側の一般市民に伝えたい」とするジャーナリストの疲れを知らない努力がある。西側の商業的な大手メディアがとっくに捨ててしまったジャーナリスト精神が、幸いにも、フリーランスのジャーナリストたちによって実践されたのだ。

大手メディアに完全に欠如するジャーナリスト精神がどうしてフリーランスのジャーナリストによってこうも見事に実現されるのかという点については多くの議論がある。それは別の機会にして、話を本題に戻すことにしよう。

ここに、「現地のシリア人が化学兵器攻撃の大嘘を暴く」と題された記事 [注1] がある。著者はシリアやガザの一般住民の窮状を現地から報告することで知られているエヴァ・バートレットというフリーランスのジャーナリストである。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

ところで、シリアの地名や人名をカタカナ表記することはアラビア語を知らない私にとってはとんでもなく大きな挑戦です。表記の仕方が間違いだらけであると思いますが、ご容赦願います。

<引用開始>




Photo-1:   ホワイトヘルメッツはドーマで起こった化学兵器攻撃の様子を伝えるビデオを作製した。そのビデオに撮影されていた少年が、2018年4月26日、オランダのハーグで行われた記者会見で当時の様子を喋った。© Michael Kooren / Reuters

西側のメディアはシリアのドーマで起こったとされる化学兵器攻撃をそのまま引用し続けているが、彼らとしては最近までジャイシュ・アル・イスラムによって支配されていた町でちっぽけな証拠を用意しなければならなかった。 

ところが、ホワイトヘルメッツと称される西側のプロパガンダの構図から発せられたこのビデオは実証されてはいない。証拠に基づいて作成されたものではなく、トルコで撮影されたものか、それとも、テロリスト集団によって支配されているシリアのイドリブで撮影されたものかはまったく分からない。

その一方、彼らの主張とは相反する主張が数多くある。例えば、ハーグの化学兵器禁止機関(OPCW)の本拠で4月26日に証言をすることになったドーマからやって来た17人だ。彼らは化学兵器攻撃はなかったと証言したのである。 



Photo-2:  ホワイトヘルメッツ: 世界中で一番写真うつりが良いこの救助隊にとって一般市民のことなどはどうでもいいのだろうか?  

米英仏の指導者と彼らの愛玩動物であるメディアは、当然ながら、シリア人の主張は「節度を欠いたもの」であり、「見せかけ」だとして一蹴した。ところが、その同じメディアが解放前のアレッポ市の東部に住む当時7歳の女の子のバナ・アル・アベドの言葉は信用できるとしていた。企業メディアや西側の指導者らはバナが信用できるかどうかについては何の疑義も挟まなかった。バナの住居の周辺だけであっても、当時、25か所ものテロリストの小集団によって囲まれていたにもかかわらずである。しかしながら、ドーマの住民の主張は「節度を欠いたもの」となるのだ。 

西側の非難とは矛盾する一般人の主張は他にもある。彼らの主張はドウーマへわざわざ出向いて住民の話を直接聞こうとしたロバート・フィスクやドイツの第二ドイツテレビ(ZDF)、ワン・アメリカ・ニュース、ヴァネッサ・ビーリー、等によって伝えられた。

事実、OPCW に調査を行うように呼びかけたのはシリアとロシアの政府である。その一方、非合法にもシリアに103発のミサイルを発射したのは米英仏であった。その内の76発はOPCW の検査官が調査を開始する直前にダマスカスに向けて発射された。

彼らの非難はどれも「検証」することが出来なかった。OPCW は遅かれ早かれ報告書を発行することになるが、OPCWの報告書に関しては思い起こしておきたいことがある。イドリブ県のカーン・シェイクーンにおける化学兵器攻撃に関する昨年の報告書には、控えめに言ってさえも、「不規則な点」が観察された。紛れもないもっとも大きな不規則性は57人の「犠牲者」の入院である。この入院はいわゆる化学兵器攻撃が実際に起こる前のことであったのだ。他には、ある被害者の尿検査でサリンの痕跡が見つかったが、同じ被害者からの血液サンプルからは検出されなかったという不規則性が観察されている。

ーマの住民が化学兵器攻撃に関する非難が嘘であることを暴露: 

4月の終わりごろ、私は一人の通訳と一緒にタクシーでドーマへ出向いた。そこで2-3時間を過ごして、ジャイシュ・アル・イスラムのテロリスト・グループの支配下で酷く苦しめられていた住民らと話をした。住民の多くは自分たちの生活が地獄のようであったという事実を訴えようとした。しかし、まず私は問題の病院へ出かけた。

化学兵器攻撃を受けたとされるが、今は歩行者や車両で混雑を極める「殉教者の広場」を通り過ぎて、地下病院は何百メートルか先にあった。私は中に入って、化学兵器攻撃があったとされる4月7日に病院にいた医学生とのインタビューを記録した。




Photo-3:  「攻撃は無く、犠牲者も出なかった。化学兵器の使用は無かった」: ハーグのOPCW で記者会見をするドーマからの証言者たち (VIDEO) 

マルワン・ジャベルによると、やって来た患者たちは通常の砲撃による傷の手当を受けた。あるいは、塵埃や安全のために長期間地下に潜んでいたことに起因する呼吸困難に対する治療を受けた。

ジャベルは私にこう言った。病院の職員が変わり映えのしない砲撃による傷の手当てや呼吸困難に対する治療を行っている間に、「部外者」が入って来て、化学兵器攻撃だと叫んで、皆に水をかけ始めた。病院の職員はこの混乱状態を鎮静化して、「変わり映えのしない」砲撃による傷の治療に戻ることにした。患者たちは化学兵器攻撃に晒された兆候をまったく示してはいなかったからだ。

患者の症状は「化学兵器攻撃に特有な症状とは一致しなかった。瞳孔の収縮もなければ、死を招く気管支収縮もなかった」と当時を思い出して、ジャベルが言った。「われわれが受け入れた患者の症状は皆窒息の症状であって、これは煙によるものだった。あるいは、普通に見られる戦場での負傷だった。患者たちはここへやって来て、われわれが治療を施し、彼らを帰宅させた」とジャベルが説明してくれた。そして、「誰も死ななかった」と付け足した。 

もしも化学兵器攻撃があったとしたら何らかの影響が起こったかも知れないと誰もが推測することだろうが、病院の職員の間でそのような影響は受けた者はいなかった。ホワイトヘルメッツが作ったビデオで観察されるように、病院の職員は有毒な化学兵器の汚染を取り扱う場合に必要な防護服は誰も付けてはいない。

マルワン・ジャベルの意見によれば、叫び声を上げながら病院へ押し入って来た連中は医学については何の訓練も受けてはいなかった。高校を終了しているかどうかさえも怪しいと彼は言う。

病院の下を通じるトンネル網は側壁が強化されており、その規模は大きく、車両が通れるほど幅が広い。ジャイシュ・アル・イスラムがドウーマの町を支配下に置いている間、彼らは自由に移動することが出来た。

2018年および2013年に起こったとされる化学兵器攻撃を受けたグータの住民: 

ーマの街を歩きながら、私は町の住民に生活の様子を訊ねた。特に、自分たちの町で化学兵器攻撃があったのかどうかについて聞いてみた。幾人かは化学兵器攻撃があったなんて気付かなかったと言った。しかし、大部分の住民は「何も無かった」ときっぱりと返事をした。




Photo-4:  「シリア政府が2013年以降化学兵器を所有していた」と主張するフランスの報告についてモスクワ政府は問題として取り上げる

野菜や果物を販売するスタンドでタウフィーク・ザーランはこう答えた。ジャイシュ・アル・イスラムは彼らに恐怖感を与え、シリア軍やシリア政府を恐れさせるために叫んだのだと思う・・・と。彼の周りにいる者たちも同感だと頷いていた。ジャイシュ・アル・イスラムの支配下では皆が飢えていたことやテロリストグループが日常的なやっていた刀を使った処刑についても喋ってくれた。

焼き菓子を売っている若者のグループが手を振って私を招き、菓子をくれた。彼らも化学兵器攻撃のことは何も知らないと答えた。彼らがもっとも心配していたことはジャイシュ・アル・イスラムの下では焼菓子に必要な小麦粉を十分に入手できないことであった。また、生活に必要な食物がひどく不足することだった。これは私が会った人たちの誰にも共通する話題であった。つまり、誰もがジャイシュ・アル・イスラムの支配下で飢えとテロに悩まされていたのである。

2013年、西側とそのメディアは東グータにおける化学兵器攻撃についてシリア政府を非難した(不思議なことには、それよりも前の事件を調査するためにOPCWの検査官がシリア国内に滞在している最中であった)。これらの非難は調査報道専門のジャーナリストたち、特に、セイモア・ハーシュの報告によって論破された。セイモア・ハーシュはテロリストがサリンやロケットを製造する作業所を所有していると結論した。確かに、東グータのサクバでは臼砲やロケットの作業所のひとつを見学した。作業所の内部にはさまざまなサイズの未使用のミサイルが大量に残されていた。

2018年の4月、化学兵器攻撃を2日間非難した後、米国駐在サウジアラビア大使のカリド・ビン・サルマンはツイッターでシリア政府の「野蛮な」行為を非難した。野蛮なジャイシュ・アル・イスラムをサウジが支援していることは別としても、ミントプレスニュースによると、サウジアラビアは2013年のグータでの攻撃のためにテロリストらに化学兵器を提供したという事実があり、これは実に皮肉である。 [訳注: ミントプレスニュースは2011年にムナール・ムハウェシュによって米国のミネソタ州に設立された。]

ミントプレスの記事は反政府勢力の言葉を引用していた。彼ら曰く、使い方がまったく分からない化学兵器を提供された。そして、供給源としてサウジのプリンス・バンダルの名前を挙げた。




Photo-5:  ドーマでの化学兵器攻撃の失敗を受けて、米国はホワイトヘルメッツに対する資金提供を中断 

ミントプレスの記事を書いた共同執筆者たちは同記事を撤回するよう執拗な圧力を受けた。ミントの最高責任者で編集者でもあるムナール・ムハウェシュの声明によると、著者らは圧力の源はサウジの諜報部門を率いるプリンス・バンダルではないかと疑っている。ひとりの著者は「サウジアラビア大使館が彼に接触し、化学兵器攻撃のことを調査し続けるならば彼を職場から追放してやると脅しをかけて来た」と述べている。

5月の始めに私はカフル・バトナへ出かけた。この町には結核専門病院があって、2013年の8月には何百人もの人たちがここで治療を受けた。

病院長のモハメド・アル・アガワニは私にこう喋ってくれた: 

「化学兵器攻撃なんて無かった。あの晩、私は病院には居なかったが、私の部下が何が起こったのかを報告してくれた。夜中の2時頃、突然、騒音が起こり、叫び声や病院に到着する車の音が聞こえて来た。市民を運んできたのだ。何人かの武装した男たちが化学兵器攻撃があったと言った。中には外国人特有の訛りがあった。運んで来た人たちの衣服を剥ぎ取り、彼らに水をかけ始めた。午前7時頃まで次々と人が運び込まれて来た。約千人となった。ほとんどが子供たちで、生きていた。近くのエイン・テルマやヘッゼ、ザマルカの集落からだった。多数の親たちが子供たちは帰って来なかったと後に報告している。」

詳しく分析をしてみると、あの夜の録画は犠牲者の中には喉を切られている者さえも含まれていた。もしも「神経剤」で殺害されたのだとするならば、実に奇怪なことである。

カフル・バトナの中央広場に面したアイスクリーム店で私は従業員のアブドラー・ダルボウに2013年に起こったとされる事件に関して何か知っていることはないかと訊ねてみた。

「確かに、われわれはそのことを聞いたことがある。でも、あれは何も起こらなかったんだ。シリア政府が我々に対して化学兵器攻撃をしたと彼らが主張した。しかし、攻撃は無かった。当時、僕は近くのジスリーンに住んでいたが、もう7年も生活をしているよ。政府軍はわれわれに対する攻撃なんてしなかった。」 




Photo-6:  シリアの化学兵器攻撃は米国による空爆を仕掛けるために行われ、ロンドン政府が犯人をそそのかした、とロシアの国防省は言う。

タクシーを拾って、ダマスカスの南東部に位置する避難民のためのホルジレー・センターに向かった。そこではカフル・バトナから来たマルワン・クレイシェーと出会った。2013年の事件について、彼はジャイシュ・アル・イスラムとファイラク・アル・ラーマンの間の戦いを思い起こしてくれた。「両者を合わせて500人もが殺害された。連中は地上に彼らを並べて、催涙ガスみたいなものを放出した。政府がこの地域に化学兵器を使ったと言って、撮影し始めた」と言った。

ホルジレー・センターではドーマからやって来たマモオウド・ソウリマン・カレドにも出会った。彼は自分の姪のことを喋ってくれた。「ベイト・サワに住んでいる私の妹は子供を連れてわれわれの家へやって来ることにした。彼らが街を歩いている際中に大きな爆発音がして、異常な匂いがした。彼女の娘が路上に倒れた。娘を近くの病院へ運び込んだが、娘は窒息し、死亡した。彼女の口は開いたままで、唇は青みを帯びており、窒息死したことが明白であった。」

カレドはその後の様子についても話してくれた。死んだ子供たちをテロリストがどのように活用したのかについてだ。「彼女の写真を撮り、彼らはその写真をソーシャルメディアやウェブサイトに掲載した。この女児は政府による化学兵器攻撃で殺害されたのだと彼らは言った。しかし、彼女はテロリストらが作った化学品で窒息死したんだ。連中こそが彼女を殺したんだ。」 

他の作り話: 

シリア政府が自国民に対して化学兵器あるいは神経剤を使用したのかどうかについてだけではなく、ジャイシュ・アル・イスラムの支配下では恐ろしい境遇の中で生活を強いられてきたことに関してもドーマやカフル・バトナ、ホルジレーの一般市民らとたくさん話をした。その結果、私が到達した個人的な見解はドウーマで化学兵器攻撃があったと主張するビデオは作り話であるという点だ。彼らが非難する内容とはまったく違った状況を伝える話や報告が十分にあり、彼らの主張はそれを支える証拠がまったく欠如している。シリアとロシアの両国を罪人扱いするために、テロリストや西側のプロパガンダ集団であるホワイトヘルメッツがビデオを作成し、いかさまの非難を行ったものだと推測される。 

シリアとロシアの両国にはシリアの一般市民を相手に化学兵器攻撃を行う利点はまったくゼロに等しい。それは道徳上の理由から言えることでもあり、化学兵器攻撃を行い、その結果予測される軍事的な袋叩きに遭いたくはないという合理的な理由からでもある。それとは対照的に、シリアに対する汚い戦争を長引かせるために、米英仏と湾岸諸国ならびにイスラエルはシリアにおける化学兵器攻撃のシナリオを望む理由を山ほど持っている。

メディアが「節度を欠いたもの」とか「見せかけ」といった言葉を使うこと自体は正当ではあるが、その正当性はドーマでの出来事に関する公式見解においてだけだ。企業メディアはホワイトヘルメッツの信用できそうもないもうひとつのビデオを楽しんでおり、彼らはドーマや東グータの一帯を支配していたテロリストらの残虐性や野蛮さは隠蔽したのである。 

著者のプロフィール: エヴァ・バートレットはフリーランスのジャーナリストで、ガザやシリアでは広範な経験を持った人権問題の活動家でもある。彼女の著作については彼女のブログ「In Gaza」にて探してみてください。


<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

シリアを巡る地政学的な争いはシリア政府軍の勝利であることが明らかになりつつある。

トランプ大統領が米軍の撤退を示唆したにもかかわらず、ペンタゴンは今もシリア東部に米軍を配置している。ペンタゴンがホワイトハウスになったかのようである。米国の政治の不可思議な点である。米政府は常に右へ行ったり、左へ行ったりを繰り返しているように見える。効率が悪いばかりではなく、偽善的だ。

総じて、引用記事からも明らかなように、シリアで推進されて来た代理戦争の本当の姿が一般大衆にも理解され始めたという事実は歓迎すべきであろう。

9/11同時多発テロ以降、米国は対テロ戦争を推進して来たが、10数年を経て、その結果を見ると、非常に困惑させられる。何故かと言うと、「対テロ戦争」という見出し語は現実を物語ってはおらず、米国の本当の目論見は中東の資源の確保であったことが明白だ。政治に特有な詭弁、嘘、情報操作、偽善、等のあらゆる悪徳振りが毎日のようにテレビで放映され、紙面を飾って来た。

しかし、われわれ一般大衆の好むところはそういうものではない。政治の世界にも如何ほどかの節度や真実、誠実さがあって然るべきだ。事実、米国の大衆は戦争を望んではいない。

今年の4月、米国のメディアに大異変が起こった。ある記事 [注2] が次のように伝えている:

タッカー・カールソンの昨夜の独白はケーブルニュースの歴史においてはもっとも画期的な出来事のひとつだ。カールソンとトーマス・マッシーの二人が唱えたシリア空爆に対する反論がどうしてそんなに重要であるかと言うと、彼らは戦争は米国の関心事ではないと指摘し、シリアで起こっていることに関する「公的な」筋書きを大っぴらに質したからである。彼がフォックスのチームに参加して以来軍事的な節度を求める代表的な声であったことを考慮すると、マックス・ブートのようなネオコンの連中にとっては大打撃となることは明らかで、カールソンの立場は驚くには値しないが、彼の行為は依然として勇気を必要とする。ロン・ポールや他の反戦の主唱者が知っているように、権力者の筋書きを質すことほど彼らを激怒させるものはない・・・

ここに引用したふたつの記事はそれぞれが米国の戦争を推進する勢力に何らかのブレーキをかけてくれたことと思う。このような動きが一般大衆の支持を得て、米国政府が9/11同時多発テロ以降シリア紛争に至るまで膨大な戦費をかけて、しゃにむに推進して来た不条理な戦争には一日でも早く終止符を打って欲しいものだ。なぜ何百万人もの無辜の市民を殺害しなければならなかったのか、なぜ何百万人もの市民を故郷から追い出し、難民を作り出さなければならなかったのかについて、米市民は真摯に再検討するべきであると思う。言うまでもなく、この米国の戦争に賛意を示した欧州や日本も例外ではない。



参照:

注1: Syrian civilians from ground zero expose chemical hoax: By Eva Bartlett, RT, Jun/01/2018,
https://on.rt.com/96n6

注2: Why Tucker Carlson’s Monologue About Syria is So Important: By Tho Bishop, Mises Institute, Apr/10/2018







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