2022年7月18日月曜日

ロシアに勝つために武器の供与を要求? いや、そうじゃない。転売するためさ!

 

ウクライナ政府は西側に重火器をもっと送ってくれと再三再四要請して来た。そして、今もそうしている。西側各国はこのゼレンスキー大統領の要求にはうんざりしているのが実情のようである。少なからずの国々が自国の武器の備蓄に懸念を感じ始めているのが実状のようだ。

ウクライナの戦場では西側から供給された武器がすべて最前線に配備されるのかと言うと、その保証は必ずしもない。一部は何処かで消えてしまう。つまり、闇市場で転売され、誰かのポケットを温める。米国やフランス、あるいは、ドイツが供与した重火器が魔法にかかったかのように消えてしまうのである。

幸か不幸か、この種の状況は何年も前から観察されて来たことであるらしい。

2か月程前の記事(“How Western arms find their way onto the black market through Ukraine — RT EN, May/17/2022)は現状を具体的に伝えている。次のような感じだ:

・・・キエフ・オボズレヴァテル(TV局)はウクライナの闇市場における武器の値段を公表した。たとえば、肩に掛けた発射装置から発射される軽量ミサイル「マンパッド・ストレラ2」は「お手頃な値段」、つまり、2,000ドルから3,000ドルで入手することができる・・・

マンパッドはゲリラ勢力が旅客機を狙い、撃墜することができる手ごろな武器であることから、一部の専門家は闇市場への流入について非常に懸念している。何時の日にか、一国の旅客機の発着のすべてを停止せざるを得なくなるような状況が現れるかも知れないと警告している。

さらに、同記事によると、

・・・比較的静穏な年であってさえも、ウクライナは世界の不安定な地域に武器を注ぎ込む「灰色の領域」としてもっぱらの評判であった。2013年、国連安全保障理事会の報告書はウクライナが(アラブ首長国連邦、アルバニア、アルメニアと共に)2年前にリビアのムアンマル・カダフィ政権に国連制裁に違反する小型兵器やその他諸々の武器を供給していた事実を明らかにした。2017年、国際的なNGOである「組織犯罪・汚職報告プロジェクト(OCCRP)」はウクライナがEU諸国からアフリカ諸国への武器販売網において「重要な役割」を担っていることを明らかにする報告書を発表した。RBK(モスクワ)(訳注:新聞、雑誌、テレビを用いた調査報道グループ)が報じたように、この報告書はポーランドのウクライナ企業が調達し、ウガンダに納入された装甲車について言及していた。同年、アムネスティ・インターナショナルはキエフ政府がアフリカ諸国に対するEUの武器禁輸措置に正式に加わっていたにもかかわらず、戦争で荒廃した南スーダンへの武器販売にウクライナが関与していると報告した・・・

前置きが長くなったが、ここに「ロシアに勝つために武器供与を要求? いや、そうじゃない。転売するためさ!」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。ウクライナの現実をより広く、かつ、より深く理解しておきたい。

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ヨーロッパ人や米国人はウクライナの政治家が発する新たな声明を耳にせずに一日を終えることはほとんどない。「我々は勝つ、プーチンを阻止する!」と彼らはまくしたて、より多くの武器の供給を求める。ウクライナは既に何千発もの携帯可能な対戦車・対空兵器、何百台もの装甲車や榴弾砲を受け取っているのであるが、彼らはそれ以上を求め続けている。ウクライナ軍はさまざまな武器を戦場で失い、いくつかの武器は最近ロシア軍の手に落ちた。ロシア側は捕獲した武器を最近解放したばかりのリシチャンスク市で公開展示したが、何トンもの軍用弾薬や何百個もの武器は最前線には届かず、多数の再販業者の手に渡り、それらは「闇のインターネット市場」で売り捌かれる。昨今、キエフではピストルから自走榴弾砲に至るまであらゆる種類の武器が極めて妥当な値段で入手することができる。

ドンバスで繰り広げられ、予想以上に長引いているこの武力紛争は、長い間、多くのヨーロッパの過激派やイスラム・テロリストにとっては主要な武器供給源のひとつであったが、今や、闇市場におけるこの武器販売は完全に制御不能な域にまで達している。ロシア侵略の当初、ウクライナ当局は機関銃やライフルをすでにほぼ全員に提供していた。これらの武器のいくつかはすぐにも闇市場に出回り始めた。防弾チョッキや暗視装置、手榴弾発射装置、マンパッドを販売したいとする呼びかけが直ちに現れたのである。ウクライナをEUに加盟させようとするあらゆる努力が成されて来たにもかかわらず、ヨーロッパが打ち負かすことができなかった完璧なまでの腐敗や汚職が横行する中、ウクライナ軍の補給将校はあらゆる物を売っている。ロシア軍は、最近、いくつかの新しいフランス製とドイツ製の自走榴弾砲をロシアの設計局による研究のために完璧な状態で引き渡した。これらの自走榴弾砲は実は戦闘の結果捕獲したのではなく、最前線において大割引で購入したのだとロシア軍は発表した。しかしながら、ドンバス分離主義者の志願部隊の一部は、今までも長い間前線の向こう側からさまざまな武器や装備を大量に積極的に購入してきた経緯があり、この種の行為は決して新しいことではない。その上、ヨーロッパ人はこれらの武器が戦場に留まっている限り、誰がジャベリンを発射し、それがゼレンスキーの兵士であろうがドネツク分離主義者であろうが、誰を撃つのかについてさえもあまり気にはしない。ヨーロッパと米国が供給した兵器は誰にでも入手可能となっている。「スティンガー」は数百ドルから数千ドルの範囲の価格で、暗号通貨で支払って、入手することが可能だ。ある程度の忍耐力がありさえすれば信頼できる供給業者に辿り着くことができる。

マンパッドはテロ攻撃には理想的な武器であり、離着陸する民間航空機は1機たりとも安全ではない。ウクライナに届けられた各発射装置には経験の浅い兵士のためにウクライナ語と英語の指示書が付いている・・・  そういった武器をウクライナから持ち出すことはそよ風のように極めて簡単だ。なぜならば、気前のいい手数料さえ支払えば、腐敗し切ったウクライナ国境警備隊員は特定の車両を検査しないで通過させるだけではなく、ポーランドやスロバキア側の同僚がその車両を妨げることなく無事に通過できるように彼らの合意を取り付けてさえくれる。おそらく、今この瞬間に、パリやベルリンの空港の周辺のどこかではISIS過激派や半ば忘れ去られている過激な無政府主義者の集団、あるいは、その両方が自分たちの陣を築いているかも知れない。ウクライナで闇販売されたマンパッドが何個あったらヨーロッパ中のすべての航空便を停止させることができるのであろうか?2個、3個、それとも、5個?

シリアやイラクのイスラム主義者たちはウクライナから一体どれだけの武器を手に入れることができるのだろうか?これはNATOの航空機や新生イラク軍の装甲車(米軍はテロリストの手に落ちるのを懸命に防ごうとしてきた)を撃破することができるような武器を含めての話だ。これらの状況はヨーロッパや米国にとっては非常に不快な事柄だ。欧米マスコミではウクライナ人は「光の戦士」として描写されており、米国やカナダ、ヨーロッパではウクライナで起きている汚職や窃盗に関して本当のことを知っている人はほとんどいない。

どうやら、潜在的に危険な兵器は可能な限り厳しい電子制御を個々に装着し、その使用状況を監督するためにEU代表をウクライナに派遣することは今や非常に理に適っている措置だと言える。しかし、この任務にボランティアとして名乗り出る人は何人いるのだろうか?ウクライナとヨーロッパ各国との国境の全長に沿ってヨーロッパ代表をウクライナの税関に張り付けるまでは、管理を強化することが何よりも現実的であろう。もっと確実な方法は貸与契約やその他の武器のウクライナへの供与を中断し、独立した地位を維持するために必要として来た武器を売り払ってしまうようなウクライナには自国産の武器で武装して貰うしかない。

武器引き渡しプログラム:

ロシアによる特別軍事作戦の開始とともに、ウクライナ軍は完全動員を開始した。しかし、ウクライナ東部のロシア語を話す住民はキエフのエリートのためになんて死にたくはない。彼らの多くは、自分たちが住んでいる地域を誰が支配しているのかを気にもしない。ロシアでは給料がウクライナよりもかなり高く、毎日喋っている言語に対する嫌がらせもない。誰のためにも戦いたくはない人々のために、ロシア人は非常に巧妙な抜け穴プログラムを編み出した。彼らがまだウクライナ語のインターネットサイトにバナーを掲げてはいないのが不思議な程だ ― 「欧米の自走砲と引き換えにロシアの市民権とモスクワ近辺のアパートを手に入れよう!」こういった呼びかけはどのように機能するであろうか?

ウクライナ軍用の電波を使ってロシア軍の交渉担当官は砲兵や戦車の乗員を説得する。所定の地点まで進ませ、そこですべての装備と共に降伏させる。降伏の見返りとしてロシアのパスポートと自由、そして、いくらかのお金を手にする。持ち込まれた「フランス製シーザー自走榴弾砲」や「米国製高機動ロケット砲システム、HIMARS」または「ドイツ製自走榴弾砲、PzH 2000」は、それらを持って降伏してきた部隊は誰もが予備審査を受けず、捕虜収容所送りを避けるといった報酬を手にするのに十分な忠誠心を示したと見なされる。新しい書類(訳注:パスポート)を手にして、彼らは最前線から遠く離れた居心地の良いウラル地方の街のどこかで新しい生活を始め、家族にはビットコインで送金し、自分の街へ呼び寄せることさえも可能となる。

価格はさまざまで、交渉次第だ。ウクライナ側の「パートナー」は必死に交渉し、200万ドルを要求したが、ロシア側は2基の「シーザー」に12万ドルを支払った。しかしながら、自由やロシアのパスポートも全費用の中の重要な部分だ。ところで、様々な情報源によれば、1基のPzH 2000自走砲はロシア側に10万ドル以上の費用がかかったという。このお金で(ドルはその価値が大幅に下がってはいるが)、モスクワ地域でワンルームのアパートを購入することができる。そうは言っても、重大な課題がまだ残っている。ロシア側は購入の際にこの最も興味深い商品サンプルの性能を実証することができるわけではない。このことはこの武器を引き渡した軍人の家族には脅威をもたらしかねない。

ウクライナを支える西側同盟諸国にはこのような実情はよく分かっている。キエフでは、彼らは分遣隊を組織し、いくつかの政治委員組織を形成することによって、離脱者をくい止め、見つけ出そうとしている。しかしながら、ロシア軍の砲撃下で数日を過ごすと地元の民族主義者やウクライナ軍の正規将校らの世界観はどちらも大きく変貌する可能性がある。その結果、逆説的な状況が現出するようになった。米国の貸与兵器の一部はロシア人によって安く買い占められている。キエフとその同盟国ははたして前線で欧米の兵器の再販を阻止する有効な策を見つけることができるのだろうか?これまでのところ、そのような策は見つかってはいない。

ウクライナ人は、ロシア人に対してだけではなく、中東の権益集団に対しても武器を売り捌いている。

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武器の密輸ルート:

ウクライナの民族主義者がオデッサをしっかりと確保し、その近くに軍の駐屯キャンプを設けているのはまさにこのためである。彼らはナチス大隊の戦闘員であって、武器を売る手っ取り早い方法を知っている外国人傭兵とも緊密な協力を保っている。

第二に、このルートはそのようなニュースに対しては最も静かに対応してくれる地域を通過する。武器を通過させるために地元の連中が気前のいい分け前を手にすることができる場合、これは極めて自然な振る舞いだ。

第三に、アルバニアは物流と組織犯罪の存在というふたつの観点からもっとも適切な出発点となっている。また、実際の運用データによれば、密輸業者たちはアルバニアの諜報機関から後方支援を受けている。

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これで全文の仮訳が終了した。

欧米マスコミではウクライナ人は「光の戦士」として描写されており、米国やカナダ、ヨーロッパではウクライナで起きている汚職や窃盗に関して本当のことを知っている人はほとんどいないと著者は述べている。これは現実の姿を率直に物語っていると言えよう。日本でもほとんど同様だ。

ウクライナへ大量の武器を貸与し、莫大な財政支援を行っている米国はこのような現状についていったいどのような理解をしているのであろうか?冒頭で引用した2か月前の記事は次のように報じている:

米軍側は米国がウクライナに残した兵器に何が起こるのかについてキエフ政府に厳しく管理を行うよう要求している。これは、木曜日(512日)に予算委員会の公聴会でペンタゴンのロイド・オースティン長官が述べたことだ。「私はウクライナ側のパートナーと話す度にこのことをチェックし、毎週そうしている」と述べて、米国防長官は議員らに保証した。彼は、水曜日、ウクライナの話相手であるアレクセイ・レスニコフとの会話の中で最後の警告を発した。「私たちはこの非常に重要な視点を強調し続ける」とペンタゴンのボスは述べた。

米国防長官がウクライナ側の高官に苦情を述べ、指示を与えたところで、ウクライナの戦場では何の変化も起こらないだろうと思う。最前線で連日のようにロシア軍による砲撃やミサイル攻撃に曝されているウクライナの戦車部隊にとってはロシア側からの攻撃の餌食となるか、それとも、何とか生き残るかの二つの選択肢しかない。部隊内に配備されたコチコチの民族主義者からの厳しい監視に曝され、前線から逃げようとすれば背後から撃たれるといった現状にある昨今、この思いは殊更に強くなっているのではないか?「戦場ではキエフ政府側からの支援が十分ではなく、前線の兵士らの不満は募る一方だ」との不運にも捕虜となったウクライナ兵の証言がある。

米国の戦争計画者はいったいどこまでこの戦争を続けようというのであろうか?米ロ間の代理戦争の戦場となったウクライナはある意味で極めて不運な犠牲者である。たまたまロシアと国境を接しているという理由からである。彼らの運命は8年前のマイダン革命によって決定付けられた。あるいは、その10年前に起こったオレンジ革命の頃から現行のシナリオはすでに決まっていたのであろう。ウクライナの一般庶民の生活は苦しくなる一方である。たとえ停戦が成立したとしても、ウクライナの苦境は今後何年も、何十年も続くことであろう。

もしも近い将来に米中戦争が起こった場合、好むと好まざるとにかかわらず日本や台湾、韓国はさまざまな形でそれに巻き決まれる。先日の参議院選挙の結果を受けて、日本政府は米国との軍事的連携をさらに強めようとしていることが明白だ。日本が米中戦争に巻き込まれる可能性は強まる一方である。もっとも基本的な要素に着目すると、今日のウクライナの惨状は明日の日本の姿そのものであると言える。

参照:

1Arms for victory over Russia? No, for their resale!: By Batko Milacic for the Saker Blog, Jul/13/2022 

 

 


8 件のコメント:

  1. 武器の転売よりも、ネオナチ・テロリストが武装してヨーロッパをはじめ全世界でおかしなことをし始めることの方が心配です。意図的に武器をばらまいているのかもしれません。航空機をはじめ列車、バス、ビル、何でも対象になります。世界の戦場化です。

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  2. 武器の転売よりも、ネオナチ・テロリストがおかしなことをし始めることの方が心配です。航空機、列車、バス、ビル、何でも対象になります。結果としてそうなったということかもしれませんが、意図的にばらまいているのかもしれません。世界の戦場化です。

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    1. 大いにあり得ることで、不幸なことには、世の中は危険と同居することが新しい規範とさえなって来ていますね。

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  3. なぜか、コメントをしようとするとブラウザがシャットダウンします。

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  4. クロームで確認したら、投稿できていることが確認できました。ブレイブだとなぜかシャットダウンします。

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  5. 確かに「危険と同居することが新しい規範」ですね。バイデンがコロナだそうで、どういう形で消えていくのか興味津々です。ノルドストリームは一応、再開のようですね。
    日本は、
    https://www.youtube.com/watch?v=AGhYClX-Czw

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    1. kiyoさま
      ご紹介いただいた動画を拝聴しました。この方の話は初めて聞きましたが、実にいい内容ですね。感謝です!

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  6. よかったです。動画はバンされますので、かなり抑えた表現をされています。アメブロもされていますので、よろしければそちらも覗いてみてください。

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