2018年9月8日土曜日

オリバー・ストーンとのインタビュー


副題: プーチンは、ロシアの国益を除けば、すべてに関して交渉をする用意がある

オリバー・ストーンは1986年に映画「プラトウーン」でベトナム戦争における異常な人間行動を描いて、一躍有名になった。オスカー賞も受賞した。

彼自身はベトナム戦争では偵察隊員を務めた。その戦争体験に基づいて米軍による無抵抗のベトナム民間人に対する虐待や虐殺、強姦、放火、さらには、仲間内での殺人や同士討ち、誤爆、等を描いている。「プラトウーン」はオリバー・ストーンの代表作である。

洋の東西を問わず頻繁に経験することではあるが、記録映画にはわれわれ素人が見過ごしてしまう重要な要素が丁寧に描かれており、参考になることが実に多い。また、政治家や大手メディアが主張する内容とは大きく異なることが多い。

ここに最近報じられたオリバー・ストーンとのインタビュー記事がある [1]。聞き手はRTの著名なソフィー・シュワルナゼ。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。この有名な映画製作者が日頃何を考えているのかについて少しでも多く理解しておきたい。


<引用開始>

オリバー・ストーンは米国の映画製作者であり、脚本家でもある。彼はオスカーやゴールデングローブ賞を受賞し、彼の映画は熱狂的な支持を得ており、米国の良識の一部を成しているとも言えよう。オリバー・ストーンの最新のプロジェクトはウラジミール・プーチンに対する一連のインタビューである。私たちはモスクワにおける彼の経験に関してこの著名な映画監督とお話をしすることができた。

ツイッターで@SophieCo_RTを追跡してください。


ソフィー・シュワルナゼ(SS): こんにちは、オリバー・ストーンさん。本日はあなたとお話をすることができて光栄です。モスクワへの旅行を十分に楽しんでいただきたいと思います。

オリバー・ストーン(OS): はい、楽しんでいます。到着したばかりですが。

SS: プーチンに対する微に入り細にわたったインタビューを記した書籍が「アルピナ」社から出版されています。書名は「プーチンとのインタビュー」で、あなたは「4日間にもわたり、米国の映画製作者としては、私自身の奇妙な生涯においてさえも、実に画期的なものであった」と仰っていますが、ご自身の職歴の中でもまさに頂点を極めたようですね。今までの生涯で最良の出来事だったのでしょうか?

OS: 当たり前のことですが、これが最後の映画だと考えなければなりません。断定はできないけれども、年齢を重ねると、時間がより貴重なものとなって来ます。映画製作者としては、この分野はまだ非常に若い職業です。特に、米国では・・・。物事がえらく急速に動いています。もう一回機会がやって来るなんて、そうざらにはないことです。私にとってはまさにクライマックスの感じでした。何かを特集した訳ではないが、歴史の流れの中でこの時点では米国のメディアではもっとも許されそうにもない類のインタビューだった。西ヨーロッパにおいても同じことです。別世界の許されることがない領域へ入って行くような感覚でした。こちらへ来たこと(つまり、プーチンとのインタビューが出来たこと)を嬉しく思います。私はカストロやチャベスともインタビューをし、アラファトともインタビューをしています。ネタニヤフとも。彼が下野していた頃のことですが、彼は私好みの人物でした。彼は、今や、永久的な権限を謳歌しているように見える。これらの人物が全員集まって、今回は私をプーチンと引き合わせてくれました。率直に言って、彼との会合を多いに楽しむことができました。私はスノーデンとのインタビューを何回もしていたので、プーチンと初めて会ったのは何回目かにロシアを訪問した時だった。われわれはエド[訳注:スノーデンのこと]と一緒に調査をしていた。映画「スノーデン」の多くの部分は彼の見解を反映しています。そういった関連情報を入手するのには結構時間がかかった。われわれはまたこちらへ戻って来て、正確を期すことに専念しました。あの映画の最後のシーンはモスクワで撮ったものです。モスクワのある劇場の奥まった部屋で私はプーチンとお会いしました。あれは演劇、1960年代の古い演劇だったが、彼は民話文化を推進しようとしていましたね。我々は奥の方にある部屋で彼にお会いし、スノーデンのことをお聞きしました。実際に何が起こったのかに関して、彼はロシア側から見た話をしてくれました。実に素晴らしかった。われわれが公に知っていることや新聞報道、等とは違うのです。でも、話が長くなってしまうので、「スノーデン」の映画の最後の部分に話を戻すと、週末にエドと一緒にモスクワで撮影をしていました。それから、23日して、また戻って来た。われわれはクレムリンへ出かけ、そこで3日間にわたってプーチンを撮ったのです。あの時点ではわれわれはこの撮影を首尾よく続けられるとは考えてはいなかった。単純に言うと、台本もなくて、すべてがぶっつけ本番でした。私からの質問に関しては簡単なメモを彼にお渡ししただけだった。でも、メモの内容だけに限る訳ではなく、撮影の領域は無制限に広がり、彼は編集をしようともしなかったのです。

SS: つまり、完全にぶっつけ本番だったのですね。 

OS: その通りです。

SS: あなたからの質問には制限はなかったのですか? 

OS: 最後の最後まで私は非常にいい感じでいました。あなたにもお分かりのように、私自身は毎日のように違って見えます。ところが、彼は何時も同じに見えるのです。彼は非常に落ち着いていました。私の方はどうかと言えば、時差ボケに見舞われており、髪の毛は風になびいているような有様。私は何度か外見を良くしようとしました。別の言い方をすれば、私は米国のキャスターとは正反対です。たとえば、とてもじゃないがメーガン・ケリーのようには見えない。あなたのようにも見えない。

SS: プーチンとの面会が如何に大変なものであるかは私も十分に知っています。決して簡単ではないです。多くのロシア人のジャーナリストは、トップレベルのジャーナリストであってさえも、あなたに与えられたようなアクセスを謳歌することは出来そうもありません。これを実現し、纏め上げるためにあなたが如何に多くの努力を払ったのか、私には良く分かります。そして、これが公開されるや否やロシアでは大評判になりました。誰もが話していました。当然ながら、米国ではメディア全体があなたに襲いかかって来ましたよね。あなたはプーチンに対して「お世辞」が過ぎるとか、「悪いインタビュアー」だとか言われました。これらの批判を気になさいましたか?気に障りましたか?と言いますのは、プーチンとのインタビューは実に大仕事であるからです。

OS: 大仕事でしたね。しかし、自分がジャーナリストであるとは私は一度も言ってません。ジャーナリストの真似事をしたこともない。私は映画製作者だ。あなたはいくつもの映画から私のことをすでにお分かりだろうと思う。また、公的な人物に対して行ったインタビューからも私のことを知ることが可能です。映画監督以外の何かの振りをしたことなんてないのです。

SS: あなたはご自分の仕事では何らかの見解を示したことは一度もないと返事をしています。中立であると言っています。と同時に、私は一連のプーチンとのインタビューを拝見しましたが、プーチンに関してお世辞めいたことをたくさん言っています。あなたは客観的で中立的に振る舞おうとしていたのですか?

OS: 私は自分が真実であると感じることにはこだわる方です。プーチン大統領に対して虚偽の言葉は一度も喋ってはいない。私が喋った内容はすべてが私が言いたかったことです。これは冒頭で喋ったことのひとつですが、私は「あなたがロシアの申し子であることに感動を覚えます。何故ならば、あなたが政界に現れた時はちょうど1999年から2000年の頃で、ロシアは最悪の時期にあった。ロシアは大混乱だった!本格的な経済問題。それらを乗り切ることにあなたはまんまと成功した。誰もあなたからこの事実を奪い去ることはできない」と言った。これこそが彼が依然として人気を博している理由のひとつだと思います。彼は住むべき場所や宿命、「われわれはロシア人だ。そのことを誇りに思う。豊富な歴史を持っている」といった感覚を呼び戻してくれたのです。彼は主権国家の概念を再認識したのです。これは非常に重要なことでした。ロシアは1991年から2000年にかけて主権国家ではなかったのだから。当時、ロシアは主権を完全に失っていた。米国や他の国々からの連中がいたる場所に出没し、ありとあらゆる事を監視をし、監督していた。連中は原子力産業が在るあらゆる場所で目を光らせていた。注目すべき点は、プーチンがこの世で実際に重要なことをロシアに呼び戻してくれたことだ。この点に戻ろう。何故ならば、これこそが最も肝心な点であるからです。世界のためには錨が必要だ。存在し続けるためには抵抗が必要だ。これは米国による統治に対する抵抗です。

SS: 政治についてはあなたは話をしたくはないことはよく分かっていますので、これは仮定上の質問となります。あなたは記録映画の製作の対象とした人たちの側に立って来ました。たとえば、チャベスやカストロ、プーチンです。これらの人物は皆強力な人たちですが、明らかにあなたは強い人物に魅力を感じていらっしゃる。これらの人物のような強力な指導者が政治の将来の姿を示していると感じていらっしゃるのでしょうか?彼らは非常に強力で、妥協もしない。幾つもの点で評価は分かれ勝ちです。それとも、政治は対話とか政治的な公正さを追求すべきなのでしょうか?

OS: ああ、政治とは対話そのものでもあります。これらの人物は皆が対話を進んで取り入れます。誰が何を誰と話をしたのかをあれこれと議論することが可能だ。しかし、要は、カストロは米国と長い間交渉しようと試みたけれども、彼は肘鉄を食らわされ、侮辱され続けた。連中はカストロを何度も暗殺しようとさえした。対話とは何だろうか?対話は非常に重要だ。チャベスは、間違いなく、このような見解を持っていました。こういう場面をご記憶だろうか?チャベスがオバマと握手をし、彼は米国からはまったく新しい対応がもたらされるだろうと本当に期待していた。しかし、何も起こらなかった。つまり、政治は対話そのものなのです。政治においては妥協することだ。結局、プーチン大統領に関して総括的な意見を述べるとすれば、彼は究極的な交渉者です。交渉を通じて彼は相手を擦り減らすかも知れない。何事についてでも彼は議論をし尽くそうとする。どの国にとっても特定の関心事が存在します。各国が特定の国益を持っており、彼は常にこのことに関して傾聴しようとする。ロシアも自国の国益を持っている。これらの国益を除けば、彼は何事に関してでも交渉することを受け入れます。あなたが一線を越せば、彼はあなたにそのことを知らせてくれる。ところで、私は彼を押しまくった。誰が何と言おうとも、私は彼を押しまくった。民主主義や彼の続投、来年は何が起こるかといった質問では彼を押しまくったので、彼がイライラしていることは確かに感じましたよ。何度か彼をイライラさせてしまった。一度だけじゃなかった。でも、私は心配しているのです。一連のインタビューを行った理由はロシアとの自分自身の関りにもう一度回帰することでした。つまり、2000年に存在していた米国人とロシア人との間の関係にはいったい何が起こったのか?

SS: この記録映画はプーチンに対する米国人の態度を変えることができるとお思いですか?  

OS: ある程度はね。数百万人を超す人たちが観ている。高級ケーブルテレビ番組である「ショータイム」で配信されており、ロシアにおける全国規模の配信とは違います。つまり、配信は登録された視聴者だけに限定されています。配信はすでに行われており、再配信も行われる。ヨーロッパでも配信され、多くの国々で視聴されている。フランスでは素晴らしい議論となっています。配信したのは公共テレビチャンネルの「フランス3」だった。ミッテラン政権で外相を務めたユベール・ヴェドリーヌや他にも何人かが反対意見に対してこの映画を弁護してくれました。あの議論は実にフランス的だった。しかし、換言すると、ヨーロッパでは、たとえば、ドイツやフランス、イタリアでは、これらの議論は重要なのです。非常に重要だ。結果として物事が変化するのかどうかを予測することは非常に難しい。まったくの驚きではあるが、最近、米議会はほとんど全会一致で対ロ経済制裁を拡張することにした。これはごく最近起こったことです。トランプに対する反応であるとも言えそうだ。

SS: トランプはプーチンのような指導者を見習いたいのでしょうか? 

OS: 恐らくはね。私にはそれほどの確信はないけれども・・・。ドナルド・トランプの頭の中に何があるのかは私には何も言えません。誰にも言えないでしょう。彼が愚か者であるとは思えません。むしろ、彼は非常に切れ者であると思います。彼は物事を尊重するだろうと私は見ています。でも、彼はプーチンのことを誤解するかも知れない。私には分かりません。しかしながら、彼が選挙中に多くの選挙民に示した考えに基づいて行動しているようには見えない。彼は外国への介入には反対だと言った。米国は外国における戦争のために自国の資源や資産を浪費していると言った。世の中を変えようとする考えがあったが、何も変わらなかった。彼自身の意思によってではなく、彼の政権は何も実現することが出来ないでいる。反対意見が余りにも強く、彼は最初からがんじがらめの状態だ。

SS: 多分、これもまたロシアのせいでしょうか? 

OS: いや、それは単なる言い訳に過ぎない。彼はロシアのせいでひどく攻撃されて来た。ロシアがトランプ大統領と共謀したという証拠については私は何も見てはいません。彼はスパイ映画の「影なき狙撃者」のような存在ではない。この考えは実にくだらないと思う。だが、米国では多くの関心を集めており、このことが私にはとても心配です。また、これは、率直に言って、米国の選挙民が如何に愚かであるかをも示しているのです。多くの選挙民の行動は私にはとても信じられない。私には分からないが、世論調査がうまく行かなかったのかも・・・。どうも、理に合わないのです。

SS: もしも選出された者がシステムの変更には誰も着手しなかったと言うならば、米国では誰に投票するのかは大して重要ではないとでも? 

OS: それはプーチン大統領がインタビューの最後に言っている言葉です。彼は米国の4人の大統領を相手にして来たと言う。そこで、私は彼に「何か変化がありましたか?」と尋ねた。彼は「基本的には、何も!」と言った。つまり、官僚主義が蔓延っている事実を彼は示唆しています。彼は現状を官僚主義と描写していますが、米国ではこれを「ディープステーツ」と言います。変化に抵抗してきた官僚主義のことです。確かに、ロシアに対する米国の政策は1917年の革命以降大部分の期間においてかなり否定的なものだった。革命があった頃、ウィルソン大統領は米兵をシベリアへ送り込み、英国からの派遣軍と合流させています。

SS: 二回目の「冷戦」は言葉の綾ですか、それとも、それ以上の意味を持っているんでしょうか? 

OS: これは言葉の綾ですよ。冷戦、これは非常に危険な戦争だ。オリジナルの冷戦は本当に「冷たい」戦争だったと言えるでしょうか?多くの場所で、たとえば、ベトナムや朝鮮半島では共産主義と戦うという名目の下で、数多くの代理戦争が行われた。あの冷戦という名目でいったいどれ程多くの人たちが殺害されたのだろうと考えると、第三世界では数百万の人たちが損害を被った。アフリカではそこいら中で戦闘が起こった。そして、今は、中東で夥しい被害を目にしている。スペクターとしての共産主義はもはや機能しない。米国はその言葉を用いることが出来なくなった。だが、実際には、今でも冷戦に固有な物が引き継がれている。このことが対ロ経済制裁を拡大することに賛成票を投じた議員の考えにあったのではないかと思います。彼らの心の中には何らかの古い形態のロシアが残っているのです。

SS: その種の考えは80年代、90年代に廃れてしまっています。どうして舞い戻って来たんでしょうか?米国人の心からこの考え方を駆逐するには何が必要ですか?何世代も必要ですか? 

OS: これには私も驚きました。事実、私は衝撃を感じています。ゴルバチョフ元第一書記との対話は私の生涯ではもっとも素晴らしい出来事のひとつでした。自分の生涯の中で1989年は春のようで、まさに希望に満ちた春のようでした。これから物事が変化するというまったく新しい予感がありました。ベルリンの壁が崩壊し、東欧各国は皆が無血革命を表明した。本当に無血革命だった。ロシアも同様。比較的にね・・・。米国ではゴルバチョフをライオンに見立てて、彼を英雄視した。ところが、この国では彼はこの帝国における指導力を失った、弱い人物であるとして受けとめられた。つまり、両者の見解は完全に異なっていた。あの頃からゴルバチョフ氏と面会して来ましたが、私はプーチンに関する彼の批判にも遭遇しました。最後に彼と面会した際に彼が言ったことを述べておきます。「皆が何と言おうとも、プーチンは今の時点のための人物である」と彼は言った。何故ならば、1989年に彼が締結した合意を米国が破ったからだった。あの合意は東西両ドイツが統合すれば、NATO1インチたりとも東側へ拡大することはないというものであった。その合意に基づいて、彼は東西ドイツの統合を許容した。しかし、そうはならなかった。NATOはクリントン、ブッシュ、および、オバマ政権の下で拡大を加速して行った。そして、これはプーチン大統領が言ったことでもあるが、ゴルバチョフ氏は「連中は2001年にブッシュがABM条約を破棄することに賛成した」と指摘している。あれは大きな間違いだった。ABM条約の破棄はふたつの大国間に存在する軍事バランスを台無しにし兼ねない。それにも増して、プーチンが言っているように、コーカサスでは米国はテロリストに支援をしている。ウクライナに関しては、明らかに反対意見もある。この本ではプーチンは自国の状況を明確に述べているが、米国人は耳を傾けようともしない。さらには、シリア問題もある。シリアでの戦争に関する報道が実際よりも如何に過小報道されているか、私にとってはこれは驚くばかりです。幸い、RTがそれを補ってくれました。

SS: イエメンはどうでしょうか?イエメンがひどく過小報道されていることには驚きませんか? 

OS: もちろんです。続けましょう。リストは作成してはいないが、言いたい点は明確です。

SS: 私はこの本を出版することになった背景に関してもお伺いしたいと思っていました。本物の冷戦が真最中であった頃、冷戦は非常に分かりやすいものでした。両陣営がお互いに対立していた。現在は私にとってはより恐ろしい感じがします。世界は多極化して、無秩序の状況がいたる所に見られ、誰もが世界を自分の方へ引き寄せようとする。あなたがちょうど今言及された紛争、ならびに、それ以外の数多くの紛争は、それが故に、すべてが継続して行く。もしも終らせるとするならば、彼らはいったいどのようにこれらの紛争を終らせるのでしょうか?私たちには見当もつきません。

OS: 常に非常に厄介です。あなたは若く、まだ30歳代でしょう。私にとっては最初の「冷戦」は非常に分かりにくく、「われわれ対彼ら」という構図はそれ程はっきりとはしていなかった。実際に共産主義と戦うのだと信じて、私は兵卒としてベトナムへ行きました。言い方を変えると、偽装がたくさんあった。われわれが「もうひとつのアメリカ史」で試みたように、あの期間の歴史全体を振り返ってみると、あれは実際には非常に明快だったと言わなければならない。はっきり言って、あれは茶番だった。世界中の目を欺き、ソ連をスケープゴートに仕立てたのは米国です。世界大戦が終了した後に、連中はロシア人を第二次世界大戦のスケープゴートにし、スターリンをヒトラーと同一視して、この種の考え方がずっと続いた。このことはあの冷戦がいったい何だったのかを誤解したところから始まっている。米国はこの冷戦と戦うために莫大な資産を浪費した。米国は自国の市民、つまり、われわれの手からより高度な教育やより良いシステム、より効果的な安全保障、健康、富、等を剥ぎとった。これらはすべてが今日の問題として表面化している。この国の社会的セーフティー・ネットは消えようとしており、冷戦のために浪費をしなかったならば、これらは皆実現できていた筈です。要するに、われわれは冷戦のために非常に大きな代償を払っているのです。そして、それが和らぐ気配もない。1989年には「平和の配当」が議論されていたことを覚ています。連中はそれについて議論をしていた。あの平和の配当はいったいどうなったのだろうか?ベルリンの壁の崩壊から23週間が経った頃、ブッシュ・シニアーは50万の兵士を中東へ送り込んで、イラクへの介入を始めた。大きな出来事だった。ベトナムへ50万人もの兵士を送り込んだことは、あれはリンドン・ジョンソン政権下であったが、実に大きな出来事だった。そして、報道機関はこれをネタにして売り上げを大きく伸ばした。第二次世界大戦以降だけという訳ではないが、これらの数値は大き過ぎるいうことは分かっていた。われわれは余りにも多くの男たちと共に戦った。それは余りにも膨大であって、機能しなかった。それ以降、いったい何が起こったのか?そのことについては忘れてしまった!リーガン大統領は選挙運動を通じてベトナム戦争を忘れるよう訴えた。そして、またもや、外国での戦争のために50万人もの兵士を中東へ送り込んだのです。われわれは二度と中東から去ることはない!このことについて私は「W」と題する映画を製作し、その映画ではディック・チェイニーによく似た人物が「われわれの出口戦略は何か?」と問われた時、彼は「出口なんて無い」と言った。そして、真実を言えば、われわれは退却をしなかった。イラク戦争には出口がないのだ。われわれはイラクに留まったままだ。50万人にも及ぶこれらの男たちはなんらかの理由で中東から撤退することなんてないのだ。もしも歴史感をお持ちならば、これは実に悲痛な事態だ。これが間違いであることは私には分かっていた。第1次イラク戦争は巨大な間違いだった。交渉を進めるために必要となる十分な余裕があった筈だと私は思う! 

SS: そのような映画(たとえば、「W」または「もうひとつのアメリカ史」)が上映されますと、米国の歴史における言葉の綾や事実の多くを非難しているあなたを見て、あなたは米国ではどのように受け止められていますか?

OS: 容易いことだとは言えないけれども、これらは私の生涯で実現することができたもっとも重要な作品であると思っています。これらのふたつの映画を私は誇りに思っています。私は代償を払っています。ある種の人たちは私を論争の相手として認めてはくれない。でも、連中はノーム・チョムスキーでさえも相手にはしない。米国の政治論争には中心がなく、誰もが中道右派だ。クリントンが政権を取ってから、政治の中心は右派となってしまった。我が国に存在すべき平和の党は見当たらない。グリーン・パーティーを除くと、何かが存在しているという証拠はまったくない。しかし、この党はこっぴどく批判されている。

SS: 人々はこの党を笑いものにしています。 

OS: その通りだが、何故だろうか?ところで、私が育ち盛りの頃、民主党は少なくとも平和を希求する党だという感触を持っていたものです。今や、そのような感覚はすっかり無くなってしまった。何らかの意見の一致さえもまったく感じられない。共感できたのは一人だけです。それはバーニー・サンダースだ。もしもあなたが正しく記憶しているとすれば、彼が外交政策について喋ることは非常に稀だった。彼は外交問題は「サードレール」と見られることを知っていたので、彼は外交政策については非常に稀にしか喋らなかった。[訳注: 「サードレール」とは一部の地下鉄で電力を供給するために設置されている三番目のレールを指す。米国の政治用語では、これに触れると感電することになぞらえ、非難を浴び政治的な地位を失いかけない政策をサードレールと呼ぶ。(ウィキペディアから引用)] 

SS: 実際に何らかの成果を挙げるには米国にとっては彼は余りにも社会主義的でした。 

OS: まあ、そのことについては私は知りません。何故かと言うと、米国は生き延びるためにはより社会主義的な方向へ移行しねければならないかも知れないのです。もしもすべてが崩壊し、次から次へと危機が続くならば、株式市場は爆発し、メルトダウンを起こしてしまう・・・。

SS: 現時点ではすべてがトランプに向かっており、何かを変えるよう迫っています。 

OS: はい。ですが、オバマ大統領が沈んだ時、あれは何だったかな。覚えていますか?そう、75百億ドルを経済に注入した話ですが、あれはまさに社会主義的な動きです。米国はいったい何処へ向かって行こうとしているのかは非常に興味深い。これは非常に重要な問い掛けであるので、私は辺りをブラブラしながら、何としてでも見届けたいと思う。サイドラインに立って、何が起きるかを見たいものです。とてつもなく醜い状況となるかも知れないし、被害者にとってはえらく不快なものとなるだろう。米国が自己管理能力を喪失するかも知れないという意味ではこれは実に恐ろしい話だ。危機意識や攻撃の恐怖にかられて、「何についてでもロシアに責任がある」とするこの概念は正気の沙汰ではない。ジョセフ・マッカーシーが行ったように、1950年代のある種の未開状態に頼ろうとすること自体は容易いことだ。私が少年だった頃、「ソビエト人がクラスの中にいる」とか、「われわれのカレッジにもいる」、「我々のシステムの中へ忍び込んでくる」、「ソビエト人は戦争もせずにわれわれを乗っ取ってしまう」とか聞かされたものだ。私はこれらを非常に勤勉な人たちから聞かされた。あなたはこの種の精神状態が存在することを認めなければならない。人々を絞首刑に処すような暴徒となった自警団を身近に見るのは実に恐ろしいことです。常識的な感覚は窓から逃げ失せてしまい、これは真っ先に起こるのです。そして、慎重さや人間性も窓から逃げ出して行ってしまう。あの心理状態は実に恐ろしい。しかも、恐ろしいほどに蔓延している。

SS: あなたは政治をよく理解していらっしゃるし、政治家もご存知です。さらには、あなたは脚本をお書きになる。これがどのようにしていい結果を出すのかについてのシナリオを見せてください。現実的な観点から。

OS: あなたは私に映画を所望している!米国側に立っている私の観点から言えば、別の形態では起こりようがなく、方向は決まっている。だからこそ、恐ろしいのです。この時点ではロシアは何のイニシアチブも取れないと私は思う。降伏をし、核兵器のすべてを揃え、政権を交代させ、プーチンは辞職する、それ以外はない・・・。この筋書きはまったく狂気の沙汰です。ロシアの市民は皆がプーチンを支持しているから、そんなことは起こらない。現時点ではどんな出口もあり得ない。今や、第3党も存在し、彼らがその存在を示すのも真近だ。ド・ゴールがやって来る。シャルル・ド・ゴール・・・。皆が彼にフランスの指導者あるいはヨーロッパの指導者を期待する。この全プロセスを通じて見えて来たメルケルには私はひどく失望しました。彼女は事情を誰よりも良く知っており、ウクライナの本当の話を知っていたからです。しかし、彼女は本当の話に首ったけという訳ではない。何故ならば、彼女の外相が関与していたからです。ふたりは何が起こっているのかを理解していた。ウクライナではクーデターが起こっていた。換言すると、ある種のヨーロッパ的な指導者がいなければならなかった・・・。 

SS: それは米国に対して「NO」と言わせるでしょうか? 

OS: はい。それはひとつの表現でもあります。ド・ゴール将軍が米国に向かって「NO」と言った時、私は彼の近辺をうろついていました。あれは実に良かった。ド・ゴールは非常に誇り高い人物で、フランスの誇りでした。人々はそのことに期待をかけた。しかし、政治ブロックが崩壊するという別の事態もあり得る。もちろん、中国がいる。中国は実に巨大な数値だ。だが、米国は中国には強硬政策を取っている。でも、そうは言わない。相手を好きになることこそがそのことをロシアに伝えることになるんだと思います。しかし、われわれや日本が反中国であるのと同程度にまで韓国を武装する理由は中国を封じ込めるためのものです。私は韓国を心配しています。何故かと言うと、ここでもまた、われわれは莫大な量の武器を日本や韓国へ注ぎ込んでいるからです。瞬時に爆発するかも知れない火薬庫みたいなものだ。とてもじゃないが、好ましい状況とは見えない。仮に私があなたの年齢であれば、私は自分に残された歳月を全うしたいと願うでしょう。あなたはどうしますか?あなたはこのことに一般大衆の関心を引き寄せようとしている。今出来ることの中ではその仕事は最高だと思う。

SS: 私の観点から言いますと、あなたはこのことについて是非とも映画を製作するべきです。間違いなく、この仕事は中断しないで欲しいと思います。 

OS: それこそが記録映画が存在する理由なんです。それこそがこの映画を製作した理由なんです。私には気になっていたんです。平和にはもう一度機会を与えたかったのです。今思うに、30時間にもわたるインタビューでプーチン大統領と話をする度に、プーチンは力の均衡、お互いの主権の尊重、そして、世界の平和を願っており、それ以外はまったく何も念頭にはないことに気付かされたのです。ところが、連中はプーチンからそのことを受け取ろうともしない。悪い奴だと思っている相手が実際には世界平和を求めているなんてとても信じられないようです。

SS: オリバー・ストーンさん、この素晴らしいインタビューに感謝致します。すべてがうまく行きますよう祈っています。

OS: どうも有難う、ソフィー。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

オリバー・ストーンはプーチンとのインタビューを通じて、プーチンが何を一番大事にしているかを読み取った。彼は今思うに、30時間にもわたるインタビューでプーチン大統領と話をする度に、プーチンは力の均衡、お互いの主権の尊重、そして、世界の平和を願っており、それ以外はまったく何も念頭にはないことに気付かされたのです」と述べている。

この政治的姿勢が如何に重要であるかは議論を待たない。世界が平和でなかったら、結局、核戦争によって人類はこの地上から消え去る運命にあるからだ。

人間社会はさまざまな問題を抱えており、個々の問題が何時になったら解決できるのかは分からない。人種差別、人権、性差別、余りにも大きくなった貧富の差、各国間の経済格差、他国に対する干渉、等、個々の課題はそれぞれが重要なテーマである。重要な課題が山積している。しかしながら、人類の生存を左右する「世界の平和」、「核兵器の撤廃」といった課題と比較すると、これらの政治課題はどう見ても二次的な存在だ。言うまでもなく、人っ子ひとりもいない世界がやって来たら、元も子もない。われわれ一般庶民はこの点を明確に意識して、政治を監視して行かなければならない。平和にもう一度機会を与えるために・・・。



参照:

1Oliver Stone: Putin is ready to negotiate on everything but Russia’s national interests: By RT, Aug/13/2018







2018年8月29日水曜日

モンサントの有罪判決は始まったばかり


モンサント社が販売する除草剤「ラウンドアップ」の主成分であるグリフォサートは健康に関する権威筋によって癌との関連性が指摘されている。最近発表された報告書によると、子供用として販売されて数多くの朝食用食品やシリアルにはグリフォサートが含有されている。非営利団体のEnvironmental Working Group (EWG)によって実施された調査によると、オーツやグラノーラバー、スナックバーにはもっとも広範に使用されている除草剤の残留物質が含まれている。分析に供された45種類の食品のうちで31種の食品が科学者らが子供たちのために推奨する安全基準を超していた[注1]。

米国の裁判所におけるこのモンサント社の除草剤を巡る損害賠償訴訟については、最近、サンフランシスコ高裁がモンサントに原告の被害者に対して巨額の損害賠償を支払うよう命じた。モンサントは、もちろん、最高裁へ上訴すると表明している。

8月11日の報道によると、モンサントは発癌性を争うサンフランシスコの法廷で破れ(これは画期的な出来事だ)、学校の校庭管理者であった原告のディウェイン・ジョンソンに対して2億8千9百万ドルを支払うよう言い渡された。原告はカリフォルニアに在住する父親で、非ホジキンリンパ腫を患っている。これはグリフォサートを主成分とする除草剤のラウンドアップによって引き起こされたものだ。ジョンソンは3児の父親で、校庭を管理する職についていた。医師の話によると彼の余命は数ヶ月と言われ、ラウンドアップという商標で販売されている除草剤の化学成分が癌を引き起こしたと主張し、モンサントを法廷の場に送り込む最初の原告となった。この訴訟以外にも約4,000人が同様の訴訟で列を成している [注2]。

子供用の朝食用シリアルとか世界規模で使用されている除草剤による影響を考えると、この除草剤が人々に与える衝撃には計り知れないものがある。ラウンドアップの訴訟では原告の数は8,000人に急増したという報告もある(8月23日のフランクフルトからの報道)。サンフランシスコの法廷で損害賠償を支払うよう命じられたことから、モンサントの株価は一気に値を崩して、総額で125億ドル(12パーセント)を失った。

さまざまな出来事が立て続けに起こっている中、今後モンサントはいったいどうするのか、損害賠償に対応できるのか、といった疑問が頭を掠める。それらの疑問の一部に答える記事がここにある [注3]。

本日はこの記事[注3]を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。表題は「モンサントの有罪判決は始まったばかり」となっている。


<引用開始>


 














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カリフォルニア州での陪審裁判は農薬や遺伝子組み換え作物の大手であるモンサント(バイエルに買収され、今は「バイエル/モンサント」と称する)に有罪の判決を下した。裁判官はモンサントに元校庭管理者で非ホジキンリンパ腫を患う原告のディウェイン・ジョンソンに対して2億8千9百万ドルを支払うよう命じた。彼の弁護士は彼の疾患はモンサントが販売しているグリフォサートを主成分とするラウンドアップによって引き起こされたものだと主張した。疑いもなく、モンサントはこの判決を不服として、上訴する考えだ。上訴の結果の如何を問わず、この判決の衝撃は世界中に影響をもたらし、遺伝子組み換え作物や農薬に関するビジネスモデルにとっては大問題となることであろう。

サンフランシスコのカリフォルニア高等裁判所におけるディウェイン・ジョンソン対モンサントの訴訟(CGC-16-550128)は この種の訴訟においては全米で5000件を超す中で初めての事例である。これらの訴訟はラウンドアップが癌を引き起こしたと主張している。

46歳のジョンソンはカリフォルニアのある郡の元校庭管理者であって、彼は郡内の学校の校庭でモンサント製のラウンドアップやレンジャープロを年間30回近く散布し、この仕事を2年半以上も続けていた。

「インシュアランス・ジャーナル」誌によると、陪審員による有罪の判決はモンサント製のグリフォサートを主成分とするラウンドアップに関する何千件もの同類の訴訟に大きな影響を与えることになる。カリフォルニア州に本拠を置く「Baum, Hedlund, Aristei & Goldman法律事務所」がこの訴訟を担当しているが、同法律事務所はこの訴訟以外にも数多くの訴訟に関して弁護団の一部として関与する予定である。


訴訟にさらされるモンサント:

モンサントを訴えたこの訴訟で共同弁護士を務めているロバート・ケネディ・ジュニアーは法廷での原告の弁護士ならびにモンサントの弁護士による反対尋問の要約を記している。それによると、モンサントは自社にとっては不都合となる発癌性試験の結果を抑圧し、嘘をつき、モンサントのラウンドアップ除草剤には発癌性がないとする安全性に関する自社の主張を支えて貰うために「専門家」の学者に巨額の支払いを行っていたことが暴露された。


のっぴきならない告白の事例を挙げると、モンサントの毒性学の専門家であるドンナ・ファーマーは追い詰められた挙句、社内の電子メールを証拠として提示され、自分自身の優先事項は公衆の安全ではなく、関連法規を遵守することにあったことを認めた。また、ファーマーはグリフォサートを防護することに同意してくれた社外の学者の名前を借り、論文を代筆するよう画策したことをしぶしぶと認めた。彼女は「そのことは全然悪いことではない・・・」とも答えている。

もう一人の巨額の支払いを受け、モンサントの証言者であるウオレン・フォスター博士はモンサントがWHOの下部機関である国際癌研究機関(IARC)の動物試験結果を否定する証言をするよう支払いを受ける以前はグリフォサートについて、あるいは、その発癌性に関して研究をしたことはなかったという事実をしぶしぶと認めた。2015年、IARCはグリフォサートには「恐らく発癌性がある」と断定した。このIARCの裁定はグリフォサートを31パーセントも含有するモンサントのラウンドアップが人畜に有害ではないとする同社の主張に甚大な衝撃を与えた。

もう一人の毒性学の専門家、マーク・マーテンス博士は「社外の毒性学の専門家であるジェームズ・パリー博士による研究結果をどうして棄却したのか?しかも、同博士をその分野ではトップクラスであるとして賞賛したばかりであったではないか?」との尋問を受けた。パリーの研究結果はこの化学物質ならびに機密にされたままのラウンドアップの製剤手法が遺伝子レベルでの変異を引き起こし、潜在的に癌の前駆体となり得ると結論付けていた。このことから、モンサントは彼の役割を反故にし、社外の学者がパリーの研究結果を吟味する機会さえをも奪ってしまった。また、そればかりではなく、モンサントはパリーの論文を環境庁(EPA)へ送付することさえもしなかった。モンサントのもう一人の「専門家としての証言者」であり、癌疫学を専門とし、ハーヴァード公衆衛生大学院(HSPH)で助教授を務めるローレライ・ムッチ博士はモンサントが彼女の証言を得るために10万ドルを支払ってくれた事実を認めている。

モンサントの弁護士らは、IARCの見解とは違って、EPAがグリフォサートは人に癌を引き起こすことは「ありそうにない」と結論付けたことを述べて、毒物学の専門家であるクリストファー・ポルティエ博士の信用を落とそうとした。この時、ポルティエは宣誓をした上でEPAならびにEUの欧州食品安全機関(EFSA)は、両者共、15もの論文に収められているグリフォサートに関してネズミ類を使った様々な動物試験で得られた腫瘍についてのデータを採用しなかったが、これは間違った手法を使ったことから生じたものであると力説した。また、彼はこうも述べている。「私は意思決定を行う際には科学的な証拠を用いることに私の職歴のすべてを捧げてきた。まず第一に、それは化学物質の発癌性に関するものであって、私は適切な研究を行うために何年も、何年も費やしてきた。彼らが用いた手法は驚異的とも言える程の間違いだ。」 

チャールズ・ベンブルック博士は、グリフォサートについてだけを論じようとして、EPAがグリフォサートに加えてラウンドアップを構成している補助剤または界面活性剤についてはそれを除外して論じることは詐欺行為であり、これは「ラウンドアップ製剤は単一物質ではなく、製剤としての毒性があり、発癌性を持っているのではないかというより差し迫った疑惑を覆い隠そうとするものだ」と証言した。 

要約すると、サンフランシスコでの裁判で明白になったことは文書化された嘘や隠蔽がひとつのパターンとなっていることである。また、社外の毒物学の専門家らによって報告された研究結果がラウンドアップの安全性に関してモンサントが主張してきた内容と矛盾する場合、モンサントは彼らの信用を落とそうと画策した。これももうひとつのパターンである。


セラリーニのラットによる研究:

2016年2月26日、論文審査が行われる「International Journal of Environmental Research and Public Health」誌にひとつの論文が掲載された。フランスのカーン大学生物学研究所のギレス・エリック・セラリーニ、ならびに、ハンガリーの国立農学研究イノベーション・センターの農学環境研究所のアンドラス・シェカチ所長によって率いられた毒物学の研究チームは、モンサント製のラウンドアップも含めて、もっとも広範に使用されているグリフォサートを主成分とする除草剤について実施された試験の結果を報告した。


彼らの試験によって、グリフォサートを主成分とする除草剤製剤には公表されてはいない成分、つまり、界面活性剤が配合されており、多くの場合、グリフォサートを単独で試験した場合よりも強い毒性を示し、細胞に対する毒性の度合いは2000倍近くも高まることが報告されている。機密にしている製剤成分については、法律で公開することが求められているにもかかわらず、モンサントは米政府に対しても、一般に対しても公開をしてはいない。

最近サンフランシスコ高裁が下したモンサントに不利となる裁定の内容は実に明白であり、毒性を持ち、発癌性を示す農薬に反対する世論が高まり始めることであろう。この農薬はほとんどがモンサントによって販売されているが、同社は買収され、今や、バイエルの傘下になっている。世界中の不安を抱く市民らは証拠を集め、全容を明らかにし、愚か者として扱われて来ただけではなく、結果的には死に至るような危険性さえをも演じていることに気付き始めたとも言えよう。

アルゼンチンでは、つい最近出版された研究報告によると、「妊娠中に環境に起因するグリフォサートを主成分とする除草剤に暴露されると、雌のラットの受胎率は低下し、胎児の成長が損なわれ、四肢の発達障害が起こり、二世代目の子孫を含めて、先天的な異常をもたらす」と学者らが報告した。この研究は遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシを生産する地域のど真ん中にあるアルゼンチンの町に住む人々を調査したものであって、この地域では大量の除草剤が散布され、先天的な異常は全国平均の2倍にも達していることが記録されている。

著者のプロフィール: F・ウィリアム・エングダールは戦略リスクに関するコンサルタントであって、講演を行う。彼はプリンストン大学で政治学の学位を取得し、原油や地政学に関する著書はベストセラーとなった。オンラインマガジンである「New Eastern Outlook」に独占的に寄稿をしている。https://journal-neo.org/2018/08/15/monsanto-guilty-verdict-is-only-beginning/

<引用終了>


これで、全文の仮訳が終了した。


企業利益を追うあまりに私企業が倫理観を見失ってしまう事例は、洋の東西を問わず、無数に存在する。そして、世界規模で商売を行う大企業の場合は、その影響たるや世界規模となる。

この引用記事の著者は倫理観を失った企業の行動パターンを描写している。「サンフランシスコでの裁判で明白になったことは文書化された嘘や隠蔽がひとつのパターンとなっていることである。また、社外の毒物学の専門家らによって報告された研究結果がラウンドアップの安全性に関してモンサントが主張してきた内容と矛盾する場合は、モンサントは彼らの信用を落とそうと画策した。これももうひとつのパターンである」と述べている。

さらにもうひとつのパターンを付け加えるとれば、それは官庁がこの種の不祥事に大きな役割を担っていたという事実だ。米国のEPAや欧州のEFSAはモンサントとグルになっていたことが判明している。10万ドルで一人の学者や官吏の行動を左右することができるとすれば、官庁の場合はいったい何人を買収したのであろうか?モンサントはいったいどれ程の金をつぎ込んだのだろうか?と勘ぐってしまう。しかしながら、潤沢な資金を動かすことが容易な大企業にとっては学者や官吏を買収する総額さえもが大した金額ではなかったのだと推測される。総じて、モンサントの企業行動ならびに官庁の倫理観や機能は完全に地に堕ちたという感じである。

このサンフランシスコ高裁が下したモンサントに不利となる裁定はすでに食品業界に余波を巻き起こしている。たとえば、8月27日のある記事では『食品大手のジェネラルミルズ社はグラノーラバーの表示から「100パーセントナチュラル」という文言を削除』との表題が見られる [注4]。明らかに、虚偽の表示は大きな損失につながり得ると企業の経営者が判断した結果であると言える。これは消費者にとっては歓迎すべき傾向だ。このような動きが世界中に、かつ、急速に広がって欲しいものである。


参照:

注1: Weed-killing chemical linked to cancer found in some children's breakfast foods: By CBS News, Aug/15/2018


注2: Monsanto Loses Landmark Roundup Cancer Trial, Set to Pay USD 289 Million in Damages: By Sustainable Pulse, Aug/11/2018

注3: Monsanto Guilty Verdict Is Only Beginning: By F. William Engdahl, NEO, Aug/15/2018

注4:General Mills Removes ‘100 percent Natural’ Label from Nature Valley Granola Bars after Glyphosate Lawsuit: By Sustainable Pulse, Aug/27/2018



 




2018年8月22日水曜日

米国が現実を受け入れないならば、それはわれわれのすべてにとって生存の脅威となる

米国の政治は「軍産・ウールストリート・大手メディア複合体」によってすっかりハイジャックされてしまった。少なくとも私にはそう思える。

そして、そのような現実を矯正し、在るべき姿へ戻そうとする議論の場さえもが無くなりつつある。大学の教授や研究者らは、将来の研究費の枯渇を恐れて、言いたいこともまともに言えないと言う。隠然たる圧力がかかっているのだ。こんな状況が、私らが子供の頃から聞かされて来た「民主主義」や「言論の自由」の国、自由世界のチャンピオンであるとされていた米国の現在の姿である。

もちろん、米国にはいい面もたくさんある。私は仕事のために17年間をカリフォルニアで過ごした。直接および間接的にさまざまな面でお世話になった。米国のことは日常の生活感覚としてある程度は理解している。今になってからはっきりと認識したことではあるが、その最たるものはポップカルチャーではないだろうか?当時のポップカルチャーと言えば、たとえば、マイケル・ジャクソンだ。あれから30年も経った今、ニューヨークのマジソン・スクエアーで「ビリー・ジーン」を歌うマイケル・ジャクソンの動画を観ていると、彼はひとつの新しい文化を作り上げたのだという圧倒的な実感に襲われる。歓声を上げ、リズムに乗って体を動かし続ける観衆の反応はまさに圧巻だ。

しかしながら、2016年の米大統領選挙を境にして、米国の国内政治は二極化し、対立をさらに激しくしている。最近は大手メディアの一部や民主党系の評論家の中には軌道修正をした者がいるとも伝えられてはいるが、このままで進むと米国では内戦が始まってしまうと懸念する声が聞こえ始めた。さらには、国内政治だけではなく、米国の対外政策も大きく変化しようとしている。

こうした現状を見て、多くの識者が意見を述べている。そして、その声は高まっている。それらの中に「米国が現実を受け入れないならば、それはわれわれのすべてにとって生存の脅威となる」と題された記事がある [1]。切羽詰った危機意識が感じられるのだ。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Photo-1

最近、ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相は米国がロシアに課した最近の経済制裁は「経済戦争」そのものだと述べた。さらには、「必要とあらば、経済的、政治的、あるいは、その他の如何なる手段を用いてでも」ロシアは報復すると述べた。しかしながら、どうしてこんなに長い時間がかかったのかと誰もが不振に思うのではないだろうか。
ロシアは何十年にもわたってアンドリュー・コリブコが言うところの「ハイブリッド戦争」に晒され続けてきた。第二次世界大戦後の期間で言えば、ロシアに対する攻撃が緩和したのは1990年代のイルツィン政権時代のみである。あの頃、ロシア経済は略奪され、それ以降にロシアに課された経済制裁や容赦のない否定的なプロパガンダに比べてさえも、ロシアにとっては最悪で破壊的なものであった。
経済制裁そのものはハイブリッド戦争の一部分でしかない。ハイブリッド戦争は実際に弾丸が飛び交う熱い戦争と取って代わるものである。実際の戦争は代々の米政権におけるネオコン分子によって政策の一部として温存されて来た。
「オペレーション・アンシンカブル」は1945年にロシアの侵攻によってドイツが敗退した後にも戦争を継続するために長期にわたって反ロ政策を唱導してきたウィンストン・チャーチルが抱いていた計画であった。この計画は敗退したドイツ軍さえをも含めるものとしていた。
現在チャーチルに匹敵するのはテレサ・メイである。彼女のロシアに対する反感振りはロシアのエージェントであったセルゲイ・スクリパルと彼の娘ユリアに対する化学兵器攻撃が起こった際に彼女がロシア政府に対して主張した異様な申し立てや要求の中にもっとも明確に見て取れる 
政府の説明は論理や科学的根拠においてひどく奇妙であるばかりではなく、さまざまな点でその義務をある特定の方向へ押しやろうとしている。たとえば、化学兵器条約や領事条約についてだ。また、「ルールに基づいた法秩序」の基本原則として、それぞれの主張には立証責任が伴う。さらには、ユリア・スクリパル自身が公喋っているロシアへの帰国の権利についてだ。
2016年の米大統領選に「干渉した」とするロシアに対する申し立て(非常に皮肉な主張)や「ウクライナへの侵攻」、あるいは、バルト諸国に対して「攻撃的である」といった主張、ならびに、証拠がまったく示されないその他の主張は何れにも一目瞭然の虚偽が含まれている。また、それだけではなく、共通の脈絡も感じ取れる。
これらはすべてがハイブリッド戦争の形を示唆しているのだ。何故かと言うと、(1)ロシア(や中国)との実際の戦争は、最近のランド研究所の報告によれば、もはや「考えられない」ことであるからだ。さらには、(2)以前は英国によって、その後は米国によって演じられて来た地政学的優位性は、今や、ロシアや中国を二つの中核的な要素とする多極的世界によって急速に取って代わられようとしているからだ。
直接行われる「熱い戦争」はどうして「考えられない」のかに関しては詳しく考察をしてみる価値がある。まず、中国の最先端ミサイル技術はそれ程報告されてはいないものの、実際には急速、かつ、広範に及ぶ進歩が観察される。この事実を巡る無知振りはオーストラリア国防省の高官によって体現されている。つまり、北オーストラリアのダーウィン基地の米軍による使用に関して米海軍のハリー・ハリス提督が高く評価した際、この高官は「ダーウィン基地は中国のミサイルの射程には入らないという利点がある」と言ったのだ。
現実には、彼の返事は実際の状況からは程遠い。中国のミサイルの中では二種類のミサイルが特に注意を要する。両者ともドング・フェング(東風)級のミサイルである。即ち、DF41DF21D だ。DF41 の射程距離は14,000キロ(北京からキャンベラまでの距離は9,000キロ)で、10個の核弾頭を搭載することが可能だ。そして、個々の核弾頭は個別の目標に向かう。核弾頭の最大速度はマッハ25にも達する。したがって、中国の何処からでもオーストラリアの全域に到達することが可能となる。
S500対空防衛システムを擁するロシアを除いては、如何なる国もこのミサイル攻撃を回避する術を持ってはいない。ひとつだけ残されている「防衛」は報復攻撃だけが残されるが、オーストラリアは、たとえば、その種の目標に関して言えば米国に依存するしかない。これは西側の防衛を支える妄想的な支柱のひとつに過ぎない。
この文脈で論じる価値が多いにあるドング・フェング級のもう一種のミサイルはDF21Dだ。これは対艦ミサイルであって、マッハ10の速度と1,500キロの射程距離を持っている。このミサイルの技術的な性能を見ると、相手がどのような対空防衛策を持っていようとも、それには関係なく攻撃を実行することが可能だ。これは「空母キラー」である。つまり、空母とそれに搭載された航空機に代表される米国の戦力展開は中国本土からの射程距離内では作戦を実行することが出来ない。
201831日、ロシアのプーチン大統領はロシア連邦議会で演説を行い、ロシアには何種類かの最新鋭ミサイルがあることを開示した。これらは上記に述べた中国のミサイルよりもさらに大きな破壊力を持っている。プーチンが公表したこれらのミサイルには原子力駆動のクルーズミサイルや大陸間の射程距離を持つ無人型潜水式ミサイル、2,000キロの射程距離を持つマッハ10の極超音速ミサイル(キンザールと称する)、マッハ20の戦略ミサイル(アヴァンギャルド)、等が含まれている。
これらの兵器(中国の兵器も含め)は東西間の軍事的態勢を一変させるものであり、それは明白そのものだ。米国が有する戦略的軍事態勢のすべてを古めかしいものに変えてしまったのだ。米戦略軍のジョン・ハイテン将軍は「われわれに向かってくるそのような兵器(キンザール)を迎撃することができる防衛力は米国は所有していない」ことを認めている。
研究部門を統括する米国防次官のマイク・グリフィンは上院の軍事委員会で同様な認識を述べている。彼の場合は中国の極超音速ミサイルに関する認識である。
プーチンの演説は米国のエリートの意識を新たな地政学的現実に向けようとするものであった。ところが、米国のエリートらの発言から判断すると、彼らは新たに現出しようとしている多極的な世界秩序における軍事的および地政学的な現実からは依然として遊離したままである。
これらの新たな現実の意味合いを正しく把握することに失敗したからこそ、彼らがこれらの潮流に逆らう政策に走ることを押し留めることはできなかったのである。間断なく発せられるロシアを悪魔視するプロパガンダ、ロシアやイランに対して最近課された経済制裁、第三者に対する経済制裁による同盟国に対する言語道断な脅し、拡大するばかりの対中関税戦争、等はロシアや中国の「自己主張」や「攻撃性」に関して彼らが表向き主張していることとは何の関連もない。
しかしながら、避けることができない中国の台頭に対して何らかの邪魔をすることには多いに関係があるのだ。米国の軍事的な弱点が暴露されてしまった今、これは同盟国に脅しを与え、敵国と同様に扱う形を取る。ウィリアム・エングダールが指摘しているように、もうひとつの目標は中国の「2025計画」を台無しにすることにある。この中国の計画が目指すひとつの側面は米国が技術面で優位性を保っている残りの部分について米国を凌駕することにある。
中国とロシアの指導者は両者とも自国の発展に対する脅威を認識しているが、そればかりではなく、世界平和に対する脅威さえをも認識している。この点こそが両国の関係を戦略的連携へと発展させた根本的な理由である。
アンドレイ・マルティヤノフが適切に述べている。つまり、「自分がやっていることさえも理解せず、世界の安定と平和を脅かす、うぬぼれた、自らを美化し、中身のない餓鬼大将なんて、世界はもはや許容しない。」 
ロシアや中国のこれらの新世代兵器技術は米国人の地政学的な心構えを変えさせる機会をもたらした。しかしながら、最近の経済制裁や脅し、継続して採用されているハイブリッド戦争を見る限りでは、米国は何らの教訓をも吸収してはいないことを示している。われわれ全員のために、取り返しがつかない結末をもたらす前にこの教訓を是非とも学び取ることを心から切望する次第だ。
注: ジェームズ・オニールはオーストラリアに本拠を置く法廷弁護士であって、New Eastern Outlookのオンラインマガジンのために独占的に執筆している。
https://journal-neo.org/2018/08/14/us-failure-to-accept-reality-an-existential-threat-to-us-all/

<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。
著者は米国の現状に悲鳴をあげている。核大国間同士が核戦争に入る前に米国は是非とも現実を理解して欲しいと言っている。
しかし、この悲鳴並びに切望は米国のエリートらに聞き入れられるのであろうか?私には分からない。
全世界にとって不幸なことには、米国のエリートは思考停止の状態にあるみたいだ。自国の専門家や識者が述べる意見を聞こうとさえもしない。ましてや、ロシアや中国の言うことなんて糞食らえだ。もしも国家にも人格みたいなものが僅かでもあるとするならば、国家はこのような態度を取ることを恥としなければならない。なぜならば、そのような倫理観こそが何万年、何十万年もかけて、人種、言語、宗教、文化、歴史には関係無く、人類が育んできた非常に根源的な価値観であるからに他ならない。
この引用記事の著者が言うように、米国のエリートが現実を理解することを私も切望するばかりだ。もしも今年11月の米中間選挙で与党が地滑り的勝利を収めるならば、米国以外に住むわれわれの命もさらに2年あるいは6年は生き長らえることができるだろう。

 
参照:

1US Failure to Accept Reality an Existential Threat to Us All: By James O’Neill, NEO, Aug/14/2018

 

 

2018年8月16日木曜日

ベネズエラが不安定化し、カリブ海には新手の海賊が出没


一国の行政が機能しなくなると、治安は乱れる。官憲の手が届かないと察するや、悪事を働く者が横行する。それは陸上でも、海上でもまったく同じことだ。

そのような典型的な状況を伝える記事に出遭った [注1]。カリブ海における「海賊」の出没を報じている。

海賊と言えば、アフリカのソマリア沖やフィリピンの南部での事例を近年よく耳にしてきたが、それ以外は映画の世界での話しであることから、「オヤ!」という感じがした。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>

【トリニダードトバゴ、セルドス発】 カリブ海のコバルトブルーの海面からチカチカと反射する太陽の光の中でその船は水平線を切り裂くようにして現れた。近くまでやって来た。しかし、「アシーナ」の乗組員でそれに関心を払う者は誰もなかった。

「俺たちは何時ものようにお目当ての赤い魚を漁っているところで、奴らも多分そうだろうと思っていた」と、乗組員の一人である36才のジミー・ラーラが言った。彼らは、4月の終わり頃、無法地帯と化したベネズエラの沖数マイルのトリニダードの海域で釣り糸を下ろしていた。

もう一方の船が近寄ってきた。「助けを求めているのかな」と、28フィートの丸木舟が舷側にやって来た時やや不審に思ったことをラーラは思い起こす。背は小さいが筋骨のたくましい男がピストルを振り回してスペイン語で叫んだ。

「これで合点がいった。奴らは海賊だ。」 

「黒髭」の大砲が鳴りを潜め、ジョリー・ロジャーがカリブ海のラム酒の輸出港でその地位を失ってからというもの、何世紀間もこの地域はロマンに欠ける新手の海賊に直面して来た。

ベネズエラからニカラグアやハイチにかけて政治的ならびに経済的な危機が急速に広がって、無政府状態や犯罪が起こっている。法秩序が崩壊し、カリブ海のある地域ではすでに何年間もそうであったよりもさらに酷い状況に陥っていると、専門家は伝えている。

腐敗した政治家の関与があるようだ。特に、汚職が著しいベネズエラの海域ではなおさらのことだ。

「ベネズエラ沿岸は犯罪が蔓延して、誰でもが自由に参加できる程の無法状態だ」と、南米やカリブ海における組織犯罪を調査している非営利団体の「インサイト・クライム」の共同ディレクターであるジェレミー・マクダーモットは言う。

南米やカリブ海地域では海賊行為に関する総括的なデータはほとんどない。しかし、非営利団体の「オーシャンズ・ビヨンド・パイラシー」によって実施された2年間の調査の結果、2017年については71件の大きな事件が記録されている。これらのデータには商船の略奪やヨットに対する襲撃が含まれている。前年に比較すると163パーセントの増加を示した。圧倒的に多くの事件がカリブ海の海域で起こっている。

これらの事件には栄光視されるような海上での強盗から17世紀の海賊に匹敵するような野蛮な襲撃までが含まれ、その範囲は実に広い。




Photo-1: 船に乗る漁師たち。何人かはベネズエラの海賊による略奪に遭ったり、殺害された。

たとえば、この4月、覆面をした男たちがガイアナ沖30マイルの海域に居た4艘のガイアナの漁船に乗り込んできた。生き残った乗組員によると、乗組員たちは熱い油をかけられ、ナタで切り付けられ、船外へ投げ出された。さらには、彼らの漁船が盗まれた。20人の犠牲者の中で生き残ったのは4人だけであった。残りは死亡したか、生死が不明のままである。

ガイアナのダビッド・グランジャー大統領はこの殺害を「大量虐殺」だとして非難した。ガイアナの官憲はこの事件は隣国スリナムのギャング暴力と何らかの関連があったのではないかと仄めかしている。

「奴らは船を取り上げると言い、皆海へ飛び込めと言った」と、生き残った47歳のデオナリン・ゴバードハンがロイターに向けて喋ってくれた。殴られ、海へ投げ込まれてからは、「俺は必死に頭を水面から突き出し、何とか息をしようとしていた。海水を大量に飲んでしまった。星や月を見ていた。希望をつなぎ、祈りをするだけだった。」 

ホンジュラスやニカラグア、ハイチ、セントルシアの近辺では過去18ヶ月間海賊行為が報告されている。しかしながら、何処でもベネズエラ沖よりも酷い状況は報じられてはいない、と調査専門家が述べている。

南米諸国の経済危機はインフレ率を100万パーセント近くに押し上げ、食物や医薬品の不足を招いている。栄養失調が蔓延し、疾病がはびこっている。訓練された職員や交換部品の不足から飲料水や電力の供給はしょっちゅう中断する。警察や軍隊は自分たちが受け取る給料が何の価値も無くなってしまったことから、職場を放り出した。ニコラス・マドウーロ大統領の社会主義政権の下で、経済停滞と政治の腐敗が進行している。

この状況はベネズエラ人にやけくそとも言えるような策に走らせている。

政府職員の腐敗振りに関してベネズエラのある港湾職員は、無名で取材を受けることを条件に、ベネズエラの海岸警備職員らは停泊している船舶へ乗り込んできて、金品を巻き上げたり、食料を要求していると話してくれた。この状況に対応する策として、商業船はずーと沖に停泊し、夜になるとその存在が確認できないようにエンジンを停止し、照明を切ってしまうとのことだ。

しかし、常に首尾よく行くとは限らない。




Photo-2: 最近密輸と海賊行為が広まって、極めて多くの暴力沙汰が起こっている、と地元民は言う。

この7月、近海のベネズエラの島々への物資の輸送を行っていた地元の企業であるコンフェリーの船がグアンタ港の近くでナイフや銃を振り回す3人組に襲われた。4人の乗組員は何時間にもわたって縛られたまま放置され、食料品やエレクトロ二クス製品を盗まれた。

この1月、これも北東部の海岸にあるのだが、プエルト・ラ・クルスにおいて、停泊中のタンカーに7人の武装した強盗が乗り込んできた。Advertisement

連中はその船の警備を担当する職員を縛り上げ、倉庫を物色した。ロンドンに本拠を置く国際商工会議所の商業犯罪サービス部門によると、これ以降何ヶ月にもわたって同様の事件が報告されている。

ベネズエラからは目視できる距離にあって、140万人の人口を擁するトリニダード・トバゴは隣国発の犯罪に長いこと悩まされ続けている。1990年代以降、麻薬の密売者がマリファナやコロンビアのコカインをベネズエラの港からトリニダードへ運び、そこからさらにカリブ海諸国へ、あるいは、その先へと密輸を行ってきた。

密輸と海賊行為は最近さらに広がって、暴力が酷くなってきている。南部のセルドス港に住む5人のトリニダード人漁師らは、匿名を条件に、自分たちが経験した身の危険を引用して、インタビューでこう言った。彼らの目撃談によると、ベネズエラ船籍の船が軍用の小銃や麻薬、女、珍獣、等を運び込むのが急増している。

「時には、これらのベネズエラ人は小銃や珍しい動物を好んで食料品と交換する」と41歳の漁師が言った。 

もう一人の漁師は、この1月、スペイン語を喋る海賊に何時間も拘束され、その間、彼の兄弟は500ドルの身代金を要求されたと言った。

何件もの強盗や海賊行為が報道された後、今年になってから、トリニダード沿岸警備隊はこの海域をパトロールするために警備艇を派遣した。しかし、これらの犯罪者たちはパトロールの警備艇をやり過ごしてから自分たちの行動を開始する、と地元の住民らは言う。

トリニダードの官憲にこのことに関するコメントを何回か求めたが、回答はなかった。

しかしながら、野党の政治家は海賊行為の急増に悲鳴を上げている。ベネズエラからの自動小銃の流れを見ると、その一部は軍事品の専門店から流されている模様で、トリニダードにおける殺人事件の急増に一役買っている。
















Photo-3: 漁船は陸に引き上げられ、レインコートを着た漁師がトリニダードの海岸で霧の中を歩いている。

数年前に無法状態と化したソマリアの沖で始まった船舶のハイジャック事件を引用しながら、「これを見ると、アフリカ東部の海岸地帯で始まった問題を思い起さざるを得ない」と、野党のユナイテッド・ナショナル・コングレス党の議員であるルーダル・ムーニラルは言う。「われわれが今目にしている海賊行為や密輸はベネズエラの政治や経済が崩壊したことによって引き起こされたんだ。」

カリブ海の暖かい海域で仕事に精を出して、生計を立てている者たちにとっては、海賊行為は新しい脅威だ。この頃は、襲撃を避けるために地元の漁師たちは近海で漁をし、時には夜中に漁をする。

アシーナ号が海賊に乗り込まれた4月のある日の午後、彼は恐怖を感じた、とラーラは言う。

「スペイン語を喋る男が俺にピストルを向けてきて、その次にピストルを海面に向けた。俺には直ぐに分かった。彼は俺に海へ飛び込めと言っているんだと。」 

彼は海へ飛び込んだ。彼の一番の仲良しで、22歳のナレンドラ・サンカーも彼の後を追って、海へ飛び込んだ。二人は沖合いの石油掘削リグに向かって泳いでいたが、サンカーがこむら返りを起こした。

「俺はもうリグに辿りついいていたんだが、彼を助けるためにもう一度海へ飛び込んだ」と彼は言う。「サンカーは溺れるところだった。」 

 


Photo-4: 58歳のデオラジ・バルシング。彼はベネズエラとトリニダードとの間の海域でベネズエラの海賊によって誘拐された漁船の船長の父親である。

彼らは海賊が自分たちの漁船を拿捕する様子を見ていた。この漁船には高価な船外機が2機も装備されていた。船長のアンドレル・プラマーは依然として船上にいた。二人は近くを通りかかった漁船に助け上げられた。この襲撃について官憲に報告したところ、彼らはこう言われた。「海賊の後を追いかける船がないんだ。何も出来ない。」 

あれ以降、プラマーについての情報は全然ない、と男たちは言う。トリニダードの国家安全保障省にこの件に関するコメントを求めたが、回答はなかった。

「奴らが俺の息子を拉致したんだ!」と、何艘もの船に囲まれた、濁った水をたたえているトリニダードのドックの傍に佇む船長の父親が言った。 

「俺たちには何も分からないんだ」と、バルシングは言う。「息子がまだ生きているのか、死んでしまったのか、全然分からない。」 

 (注; 表題を除き、この記事には何の編集も施してはいません。これは新聞雑誌連盟の配信です。) 

<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。


ベネズエラ経済は原油の輸出で成り立っている。輸出の95パーセントを原油が占めるという。その結果、政府の政策は原油輸出が稼ぎ出す利益が源泉となる。しかし、エネルギー市場は起伏が大きい。原油輸出に過剰に依存する経済は必然的に大きく翻弄される。ベネズエラを襲ったハイパーインフレはそのいい例だ。

これらのことを十分に知っている米国は、シャベス前政権を踏襲して米国の政策に異論を唱えるベネズエラのマドウーロ政権に対しては経済制裁を課し、国内の分裂を煽って、政権交代を引き起こそうとしている。インターネット上ではこのことを伝える情報が数多く入手できる。最近起こったドローンを用いたマドウーロ大統領の暗殺未遂事件も米国の息がかかっていると言われている。

ところで、政治や経済の混乱が起こった場合、最大の被害者は常に弱者である一般大衆であることを忘れてはならない。

この引用記事が伝えてくれているように、零細漁民である一般庶民が一番大きな影響を受けている。時に、一個人としては完全に過剰な影響となる。最悪の場合、殺害に見舞われる。

国家としての秩序が失われ、無法化に陥り、暴力が蔓延する状態はメディアは「リビア化」という言葉を用いている。リビアのかってのリーダーであったカダフィは「アラブの春」の運動をきっかけにして、国内政治の混乱を強いられ、米国が支持する反政府派によって殺害された。リビアの国家機構は麻痺状態となって、今も無政府状態が続いている。この一連の動きの背景には米国の思惑が流れている。米国がカダフィを嫌った最大の理由は原油輸出の清算には米ドルを止めて、金本位制のディナールにするというカダフィの構想であった。カダフィ政権の打倒には当時のヒラリー・クリントン国務長官の影が色濃く登場してくることは、今や、周知の事実だ。

トリニダード・トバゴの一般庶民にとっては非常にはた迷惑なことではあるが、隣国のベネズエラの不安定化が大きな黒い影を落としている。今後、恐らくは、さらに悪化することであろう。このベネズエラの不安定化のシナリオを書いたのはドル覇権を維持しようとする米国である。米国は世界中で紛争や戦争を引き起こし、今や、世界平和の敵として世界中から嫌われる身になってしまった。



参照:

注1:New Breed Of Pirates Sail In The Caribbean, As Venezuela Disintegrates: By Anthony Friola, The Washington Post, Aug/13/2018


2018年8月11日土曜日

イスラエルの米選挙に対する干渉はロシアのそれを遥かに圧倒する - チョムスキー

2016年の米大統領選では勝利を自他共に確実視していた民主党のヒラリー・クリントンが共和党のトランプに敗北した。その結果が判明してからというもの、ヒラリー・クリントンや民主党は自分たちの失敗を認めず、トランプがロシアと結託して選挙に干渉したからだとして大失敗の矛先を相手側の候補に向けた。こうして、ロシアが米国の大統領選を干渉したとする筋書きが過去2年近くにわたって米国の大手メディアを賑わし続けている。率直に言って、すべてが作り話だ。

この「でっち上げ」を証拠付ける最も有力な理由はCNNの或るディレクターが「これはでっち上げだよ。売れるようにするためさ!」と、録画されているとは知らずに喋ったことだ。少なくとも、大手メディア側の当事者の間には「でっち上げ」をしているという明確な自覚があったことを物語っている。これはもう何をかいわんやだ。

しかしながら、その後の大手メディアの筋書きはしたたかにも何も変わってはいない。「嘘でもいいから、言い続けてさえいれば、一般大衆はそう思い込むようになるさ」と言わんばかりの態度だ。

米国の最高の思索家と目され、言論界の超大物であるノーム・チョムスキーが自分の意見を述べている。「イスラエルの米国の選挙に対する干渉はロシアがやったことを遥かに圧倒する」と言っている [注1]。彼は失うものが何もないことから、彼の指摘は実に単刀直入である。

今の米国ではイスラエルの政策に関して率直に喋ることが非常に難しいと言われている。たとえば、書き物を残すことを生業とする大学教授や研究者らは将来の研究費の枯渇を懸念して、言いたいことさえも言えないのが現実であると伝えられている。米国社会はそれほど迄に歪んでしまった。

本日はこのチョムスキーの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。


<引用開始>

やれやれ、これは米国における週末の政治論議をさらに厄介なものにしそうだ。

大手メディア(や左翼の政治家たちさえも)が「共謀」の筋書きから退去し始めたことから、彼らは米選挙へ介入し、「われわれの民主主義に干渉」するといった「悪意に満ちた」ロシアの努力を喧伝するとか、そういった類の非常に感情的な文言に今まで以上に焦点を合わせようとしている。

それが故に、世界でも良く知られている反体制派で、リベラルな思考の持ち主である大物、ノーム・チョムスキーが「デモクラシー・ナウ」とのインタビューで喋った言葉はトランプを嫌う連中にとっては厄介なものになりそうだ。

・・・そー、それでは、われわれの選挙に対して行われたと言われている外部からの干渉を取り上げてみよう。ロシア人はわれわれの選挙を干渉したのだろうか?メディアは非常に大きな懸念を抱いている。でも、世界中の人たちはほとんどがこれは冗談だとして受け止めている。

まずは、われわれの選挙に対する外国からの干渉について興味があるならば、ロシアが行ったかも知れない行為はほとんど問題にはならない。他の国が大っぴらに、厚かましく、しかも、非常に大きな支援を受けながら行っている行為と比べてみることが重要だ。

米国の選挙に対するイスラエルの干渉の程度はロシア人がやったかも知れない行為を遥かに圧倒している・・・

私が言いたいのはイスラエル首相のネタニヤフが米大統領への連絡もせずに、直接米議会へ出向き、大統領の政策を駄目にするために議会で演説を行い、拍手喝采を受けていることだ。2015年にオバマとネタニヤフとの間で何が起こったかはご存知だと思うが。 

プーチンは米議会の両院合同の議場へやって来て、米国の政策を覆すよう議員たちに呼びかける演説を行っただろうか?しかも、米大統領には何の連絡もせずにだ。しかし、これはイスラエルが及ぼす圧倒的に大きな影響力の中ではほんの一部分でしかない。

もしもあなたが米選挙に対する外国からの干渉に興味をお持ちならば、検証すべき場所は他にある。しかしながら、それさえもが冗談みたいなものではあるが。

つまり、機能する民主主義のもっとも基本的な要素のひとつは選挙で選ばれた代議士たちは自分たちを選出してくれた有権者に対して責任を負うという点だ。それよりももっと基本的な事柄なんて何もない。しかし、米国では、単純に言って、実際にはそうではないことをわれわれは十分に知っている。

学術的な政治学の本流においては有権者の意向と選出された代議士が模索する政策との間の比較を行った論文が豊富にあり、それらが示すところによれば、有権者の大部分は基本的に選挙権を奪われたも同然だ。彼らが選出した代議士らは有権者の声には何の関心も示そうとはしない。彼らは有名な1パーセント、即ち、裕福で、強力な大企業の声に耳を傾けるだけだ。

トム・ファーガソンの非常に素晴らしい研究によると、何年も前に遡るが、米国の選挙は長い間多くが買収されて来た。単純に選挙運動の費用を見るだけで、大統領選や議会選挙の結果をかなりの精度で予測することが出来る。これは全体のほんの一部分だけだ。ロビー活動家たちは実際に議員会館で法案を起草する。強力なやり方で、個人資本家や大手企業、超裕福な連中が集まって、われわれの選挙にたっぷりと、圧倒的に介入し、それはもう民主主義のもっとも基本的な要素さえもが蹂躙される程のものだ。もちろん、これらはどれを取り上げてみても、純法律的には合法的ではあるのだが、社会がどのように機能しているのかを端的に示している。

もしもあなたが我が国の選挙を少しでも心配し、選挙がどのように運営され、その結果がこの民主主義社会に起こる事とどのように関わって来るのかについて心配するならば、ロシア人の不法侵入についてあれこれと詮索するなんてお門違いも甚だしい。メディアでは時にはこれらに対する関心も見られるが、その関心の程度はロシア人の不法侵入という取るに足りない問題と比べてさえも非常に小さい。

われわれはこれが次から次へと問題視されているのを目撃しており、トランプが言わんとすることについてさえも問題視されている。それがどんな理由からであろうとも、彼の言いたいことがまったく妥当性を欠いているという訳ではない。つまり、彼はロシアとの関係を改善するべきだと言っているが、これは完全に正しいことだ。 

そのことで泥の中を引きずり回されるなんてことは驚くほどに奇妙なことであり、ロシアは米国との交渉を拒否すべきではない。何故かと言えば、当の米国はイラクへの侵攻によって今世紀では最悪の犯罪を犯しているのだから。ロシアがかって犯した悪事と比較するとイラクへの侵攻は遥かに悪辣だ。

しかし、彼らはそのことを理由にしてわれわれとの合意を拒むべきではないし、何らかの法律違反が存在するかも知れないが、彼らがどのような法律違反を犯していようともわれわれも彼らとの合意を拒むべきではない。実にばかばかしいことだ。われわれは一緒になって、改善の方向へ向かわなければならない。ロシアとの国境では緊張が非常に高まっており、その緊張が何時爆発するか分かったものではない。そんなことが起こったら、最終核戦争を招き、地球上の生物や生命の終焉となりかねない。われわれは今そのような状況に非常に近くなっている。

今、われわれは「何故」と問い質すべきだ。まずは、状況を改善するために何かを実行しなければならない。二番目には、われわれは「何故」と問い質さなければならない。さてと、ことの発端はソ連邦の崩壊後にミカイル・ゴルバチョフとの口頭の約束を破って、NATOを拡大したことにある。ほとんどはクリントン政権下での出来事であった。最初は父ブッシュの下で、ほとんどはクリントン政権の下で行われ、NATO圏はロシアとの国境にまで拡大された。その後、オバマ政権下でもさらなる拡大が進められた。

米国はウクライナをNATOへ加入させようとした。ウクライナはロシアにとっては戦略地政学的にも中核的な地域である。

そー、確かに、ロシアの国境付近では緊張が高まっている。メキシコとの国境でこんなことが起こったとしたら米国はいったいどう反応するかを考えて貰いたい。これらの出来事こそすべてがもっとも重要な関心事であるべきだ。

組織化された人間社会の運命、さらには、生命体の存続自体がこの問題に大きく依存しているのだ。トランプが嘘をついたかどうかという問題に比べて、いったいどれだけの関心がこれらの課題に寄せられているというのであろうか?思うに、これらはメディアに対する非常に基本的な批判である。

要約すると、 トランプがロシアとの関係を改善すると言っていることは正しい。世界の運命がそれと大きく関わっており、ロシアは特に注目すべきことなんて何もしてはいない。ロシア人による不正侵入は非常に瑣末な事柄である。イスラエルこそが本物のお節介焼きだ。米国の民主主義はもはや存在しない。米国を支配し、動かしているのは億万長者である大企業だ。

ノーム・チョムスキーは「プーチンの手先」であろうか?反体制派のベテランの闘士は「役に立つ馬鹿」になってしまったのだろうか?いや、彼は反ユダヤ主義者であるに違いない。そうだろう? われわれは左派の「ロシア、ロシア、ロシア」という筋書きに対するこのチョムスキーからの破壊的な攻撃にアダム・シフ [訳注: カリフォルニア選出の民主党下院議員で、外交問題に明るい] がどのように反応するのかを見ることにしよう。楽しみである。

この記事は最初に「
ZeroHedge」によって出版された。

注: この記事に表明された見解は全面的に著者のものであって、必ずしもInformation Clearing Houseの意見を代表するものではありません。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

チョムスキーのもっとも中核的な論点は「われわれは一緒になって、改善の方向へ向かわなければならない。ロシアとの国境では緊張が非常に高まっており、その緊張が何時爆発するか分かったものではない。そんなことが起こったら、最終核戦争を招き、地球上の生物や生命の終焉となりかねない。われわれは今そのような状況に非常に近くなっている・・・」という点にあると私は思う。

また、米国が犯したイラクへの軍事的侵攻は米国が他国のことをあれこれと論じる際のモラルの基盤そのものを台無しにしてしまったというチョムスキーの指摘は決して忘れたくはない。

人類の存続を確実にすることは他のすべての課題よりも優先させなければならない。これは自明の理である。



参照: 

注1: Chomsky Admits “Israeli Intervention In US Elections Overwhelms Anything Russia Has Done": By Tyler Durden, ZeroHedge, Information Clearing House, Aug/05/2018