2018年8月22日水曜日

米国が現実を受け入れないならば、それはわれわれのすべてにとって生存の脅威となる

米国の政治は「軍産・ウールストリート・大手メディア複合体」によってすっかりハイジャックされてしまった。少なくとも私にはそう思える。

そして、そのような現実を矯正し、在るべき姿へ戻そうとする議論の場さえもが無くなりつつある。大学の教授や研究者らは、将来の研究費の枯渇を恐れて、言いたいこともまともに言えないと言う。隠然たる圧力がかかっているのだ。こんな状況が、私らが子供の頃から聞かされて来た「民主主義」や「言論の自由」の国、自由世界のチャンピオンであるとされていた米国の現在の姿である。

もちろん、米国にはいい面もたくさんある。私は仕事のために17年間をカリフォルニアで過ごした。直接および間接的にさまざまな面でお世話になった。米国のことは日常の生活感覚としてある程度は理解している。今になってからはっきりと認識したことではあるが、その最たるものはポップカルチャーではないだろうか?当時のポップカルチャーと言えば、たとえば、マイケル・ジャクソンだ。あれから30年も経った今、ニューヨークのマジソン・スクエアーで「ビリー・ジーン」を歌うマイケル・ジャクソンの動画を観ていると、彼はひとつの新しい文化を作り上げたのだという圧倒的な実感に襲われる。歓声を上げ、リズムに乗って体を動かし続ける観衆の反応はまさに圧巻だ。

しかしながら、2016年の米大統領選挙を境にして、米国の国内政治は二極化し、対立をさらに激しくしている。最近は大手メディアの一部や民主党系の評論家の中には軌道修正をした者がいるとも伝えられてはいるが、このままで進むと米国では内戦が始まってしまうと懸念する声が聞こえ始めた。さらには、国内政治だけではなく、米国の対外政策も大きく変化しようとしている。

こうした現状を見て、多くの識者が意見を述べている。そして、その声は高まっている。それらの中に「米国が現実を受け入れないならば、それはわれわれのすべてにとって生存の脅威となる」と題された記事がある [1]。切羽詰った危機意識が感じられるのだ。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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最近、ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相は米国がロシアに課した最近の経済制裁は「経済戦争」そのものだと述べた。さらには、「必要とあらば、経済的、政治的、あるいは、その他の如何なる手段を用いてでも」ロシアは報復すると述べた。しかしながら、どうしてこんなに長い時間がかかったのかと誰もが不振に思うのではないだろうか。
ロシアは何十年にもわたってアンドリュー・コリブコが言うところの「ハイブリッド戦争」に晒され続けてきた。第二次世界大戦後の期間で言えば、ロシアに対する攻撃が緩和したのは1990年代のイルツィン政権時代のみである。あの頃、ロシア経済は略奪され、それ以降にロシアに課された経済制裁や容赦のない否定的なプロパガンダに比べてさえも、ロシアにとっては最悪で破壊的なものであった。
経済制裁そのものはハイブリッド戦争の一部分でしかない。ハイブリッド戦争は実際に弾丸が飛び交う熱い戦争と取って代わるものである。実際の戦争は代々の米政権におけるネオコン分子によって政策の一部として温存されて来た。
「オペレーション・アンシンカブル」は1945年にロシアの侵攻によってドイツが敗退した後にも戦争を継続するために長期にわたって反ロ政策を唱導してきたウィンストン・チャーチルが抱いていた計画であった。この計画は敗退したドイツ軍さえをも含めるものとしていた。
現在チャーチルに匹敵するのはテレサ・メイである。彼女のロシアに対する反感振りはロシアのエージェントであったセルゲイ・スクリパルと彼の娘ユリアに対する化学兵器攻撃が起こった際に彼女がロシア政府に対して主張した異様な申し立てや要求の中にもっとも明確に見て取れる 
政府の説明は論理や科学的根拠においてひどく奇妙であるばかりではなく、さまざまな点でその義務をある特定の方向へ押しやろうとしている。たとえば、化学兵器条約や領事条約についてだ。また、「ルールに基づいた法秩序」の基本原則として、それぞれの主張には立証責任が伴う。さらには、ユリア・スクリパル自身が公喋っているロシアへの帰国の権利についてだ。
2016年の米大統領選に「干渉した」とするロシアに対する申し立て(非常に皮肉な主張)や「ウクライナへの侵攻」、あるいは、バルト諸国に対して「攻撃的である」といった主張、ならびに、証拠がまったく示されないその他の主張は何れにも一目瞭然の虚偽が含まれている。また、それだけではなく、共通の脈絡も感じ取れる。
これらはすべてがハイブリッド戦争の形を示唆しているのだ。何故かと言うと、(1)ロシア(や中国)との実際の戦争は、最近のランド研究所の報告によれば、もはや「考えられない」ことであるからだ。さらには、(2)以前は英国によって、その後は米国によって演じられて来た地政学的優位性は、今や、ロシアや中国を二つの中核的な要素とする多極的世界によって急速に取って代わられようとしているからだ。
直接行われる「熱い戦争」はどうして「考えられない」のかに関しては詳しく考察をしてみる価値がある。まず、中国の最先端ミサイル技術はそれ程報告されてはいないものの、実際には急速、かつ、広範に及ぶ進歩が観察される。この事実を巡る無知振りはオーストラリア国防省の高官によって体現されている。つまり、北オーストラリアのダーウィン基地の米軍による使用に関して米海軍のハリー・ハリス提督が高く評価した際、この高官は「ダーウィン基地は中国のミサイルの射程には入らないという利点がある」と言ったのだ。
現実には、彼の返事は実際の状況からは程遠い。中国のミサイルの中では二種類のミサイルが特に注意を要する。両者ともドング・フェング(東風)級のミサイルである。即ち、DF41DF21D だ。DF41 の射程距離は14,000キロ(北京からキャンベラまでの距離は9,000キロ)で、10個の核弾頭を搭載することが可能だ。そして、個々の核弾頭は個別の目標に向かう。核弾頭の最大速度はマッハ25にも達する。したがって、中国の何処からでもオーストラリアの全域に到達することが可能となる。
S500対空防衛システムを擁するロシアを除いては、如何なる国もこのミサイル攻撃を回避する術を持ってはいない。ひとつだけ残されている「防衛」は報復攻撃だけが残されるが、オーストラリアは、たとえば、その種の目標に関して言えば米国に依存するしかない。これは西側の防衛を支える妄想的な支柱のひとつに過ぎない。
この文脈で論じる価値が多いにあるドング・フェング級のもう一種のミサイルはDF21Dだ。これは対艦ミサイルであって、マッハ10の速度と1,500キロの射程距離を持っている。このミサイルの技術的な性能を見ると、相手がどのような対空防衛策を持っていようとも、それには関係なく攻撃を実行することが可能だ。これは「空母キラー」である。つまり、空母とそれに搭載された航空機に代表される米国の戦力展開は中国本土からの射程距離内では作戦を実行することが出来ない。
201831日、ロシアのプーチン大統領はロシア連邦議会で演説を行い、ロシアには何種類かの最新鋭ミサイルがあることを開示した。これらは上記に述べた中国のミサイルよりもさらに大きな破壊力を持っている。プーチンが公表したこれらのミサイルには原子力駆動のクルーズミサイルや大陸間の射程距離を持つ無人型潜水式ミサイル、2,000キロの射程距離を持つマッハ10の極超音速ミサイル(キンザールと称する)、マッハ20の戦略ミサイル(アヴァンギャルド)、等が含まれている。
これらの兵器(中国の兵器も含め)は東西間の軍事的態勢を一変させるものであり、それは明白そのものだ。米国が有する戦略的軍事態勢のすべてを古めかしいものに変えてしまったのだ。米戦略軍のジョン・ハイテン将軍は「われわれに向かってくるそのような兵器(キンザール)を迎撃することができる防衛力は米国は所有していない」ことを認めている。
研究部門を統括する米国防次官のマイク・グリフィンは上院の軍事委員会で同様な認識を述べている。彼の場合は中国の極超音速ミサイルに関する認識である。
プーチンの演説は米国のエリートの意識を新たな地政学的現実に向けようとするものであった。ところが、米国のエリートらの発言から判断すると、彼らは新たに現出しようとしている多極的な世界秩序における軍事的および地政学的な現実からは依然として遊離したままである。
これらの新たな現実の意味合いを正しく把握することに失敗したからこそ、彼らがこれらの潮流に逆らう政策に走ることを押し留めることはできなかったのである。間断なく発せられるロシアを悪魔視するプロパガンダ、ロシアやイランに対して最近課された経済制裁、第三者に対する経済制裁による同盟国に対する言語道断な脅し、拡大するばかりの対中関税戦争、等はロシアや中国の「自己主張」や「攻撃性」に関して彼らが表向き主張していることとは何の関連もない。
しかしながら、避けることができない中国の台頭に対して何らかの邪魔をすることには多いに関係があるのだ。米国の軍事的な弱点が暴露されてしまった今、これは同盟国に脅しを与え、敵国と同様に扱う形を取る。ウィリアム・エングダールが指摘しているように、もうひとつの目標は中国の「2025計画」を台無しにすることにある。この中国の計画が目指すひとつの側面は米国が技術面で優位性を保っている残りの部分について米国を凌駕することにある。
中国とロシアの指導者は両者とも自国の発展に対する脅威を認識しているが、そればかりではなく、世界平和に対する脅威さえをも認識している。この点こそが両国の関係を戦略的連携へと発展させた根本的な理由である。
アンドレイ・マルティヤノフが適切に述べている。つまり、「自分がやっていることさえも理解せず、世界の安定と平和を脅かす、うぬぼれた、自らを美化し、中身のない餓鬼大将なんて、世界はもはや許容しない。」 
ロシアや中国のこれらの新世代兵器技術は米国人の地政学的な心構えを変えさせる機会をもたらした。しかしながら、最近の経済制裁や脅し、継続して採用されているハイブリッド戦争を見る限りでは、米国は何らの教訓をも吸収してはいないことを示している。われわれ全員のために、取り返しがつかない結末をもたらす前にこの教訓を是非とも学び取ることを心から切望する次第だ。
注: ジェームズ・オニールはオーストラリアに本拠を置く法廷弁護士であって、New Eastern Outlookのオンラインマガジンのために独占的に執筆している。
https://journal-neo.org/2018/08/14/us-failure-to-accept-reality-an-existential-threat-to-us-all/

<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。
著者は米国の現状に悲鳴をあげている。核大国間同士が核戦争に入る前に米国は是非とも現実を理解して欲しいと言っている。
しかし、この悲鳴並びに切望は米国のエリートらに聞き入れられるのであろうか?私には分からない。
全世界にとって不幸なことには、米国のエリートは思考停止の状態にあるみたいだ。自国の専門家や識者が述べる意見を聞こうとさえもしない。ましてや、ロシアや中国の言うことなんて糞食らえだ。もしも国家にも人格みたいなものが僅かでもあるとするならば、国家はこのような態度を取ることを恥としなければならない。なぜならば、そのような倫理観こそが何万年、何十万年もかけて、人種、言語、宗教、文化、歴史には関係無く、人類が育んできた非常に根源的な価値観であるからに他ならない。
この引用記事の著者が言うように、米国のエリートが現実を理解することを私も切望するばかりだ。もしも今年11月の米中間選挙で与党が地滑り的勝利を収めるならば、米国以外に住むわれわれの命もさらに2年あるいは6年は生き長らえることができるだろう。

 
参照:

1US Failure to Accept Reality an Existential Threat to Us All: By James O’Neill, NEO, Aug/14/2018

 

 

1 件のコメント:

  1. 重要な記事の翻訳を有難うございます。オニール氏の意見にも、また貴殿の意見にも全く同感です。  今のシリアの一触即発の状況には身震いを覚えます。第三次世界大戦への導火線にならないことを願うしかありません。また、地球温暖化という作られた幻の脅威に代わって、ミニアイスエイジが到来しようとしています。ロシア等のごく限られた国を除いては、ミニアイスエイジへの備えは全くできていないようです。さらに、ドル高に端を発したトルコを初めとするエマージング諸国の通貨の破壊の連鎖にも注意が必要かと思います。エマージング国から、ユーロ圏、中国、日本そして最後には米国へと連鎖が広がらないことを願うばかりです。今後襲ってくるであろう飢饉、疫病、経済破綻、通貨システムの崩壊、内乱、移住、侵略戦争 等の大変困難な状況に対してできる限りの準備を急ぎ、大切な人々をまずは守っていかなくてはならないと思っています。すべてが連動し相互関係性をもって動いているこの世界にあって、語学が苦手な日本人にとって、外の世界で起こっている重要な出来事に対して目を開かせてくれる貴殿の仕事は大変重要です。健康に気を付けられて、さらなるご活躍を祈っております。

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