2013年2月17日日曜日

乗っ取られたシリア革命


反政府勢力の腐敗した指揮官たちがシリアの自由の夢を台なしにした


最新の報道[1]によると、シリア革命の内部矛盾が表面化してきている。

反政府勢力は果たして革命軍なのか、それとも私腹を肥やすための単なる略奪者なのか、混迷は深まるばかりだ。目下のところ、これがシリア革命の現状のようだ。反政府勢力の指揮官たちに今何が起こっているのか?

この報道記事の部分的な仮訳を下記に示してみたい。引用部分は段下げして示す。

反政府軍の指揮官の一人であるアブ・マフムードは部下の間ばかりではなく人々の間でで人望がある。しかしながら、彼の顔は暗い。多くの仲間の指揮官たちが悪辣な行為に走り、反政府活動をひどく傷つけているからだ。

「シリアの本来の意味での革命はもう終わった」と、アブ・マフムード指揮官は言う。

アブ・マフムードはシリアのアサド政権に対して革命を起こそうと挑んできたものの、反政府勢力側の最近の戦い方については苦々しい思いを抱いている。「俺たちが思い描いた美しい革命は今や盗賊や略奪者たちによってすっかり乗っ取られてしまった」と、自分の気持ちを隠そうと懸命に努力しながらも、彼は胸の内を明かしてくれた。

「反政府側の幾人もの指揮官たちは、恥ずべきことに、最前線で命を落とす真の意味での革命者たちを犠牲にして自分の私腹を肥やしている」と、彼は言う。

シリアの反政府派が支配する地域では中心的な反乱勢力によって行われた略奪や腐敗行為に関する報道が絶えない。その数は増える一方である。上記のアブ・マフムードの批判はその現状を裏書きするものと言えよう。

「反政府活動の初期の頃に銃を取り上げてアサド軍に立ち向かっていった連中の多くが今やその戦闘を放り出しつつある。指揮官たちの腐敗ぶりに失望したからだ」と、彼は説明する。

「何処へでかけても、そこで略奪を行い、持ち運ぶことが可能でトルコの闇市場で売れるような物は何でも盗む。その対象は自動車から始まって、エレクトロニクス製品、燃料、骨董品など。他にもいくらでも例を挙げることができる!」

アサド政権の軍隊と戦闘をしている反政府勢力では中核的な存在である自由シリア軍(FSA)に属する10人以上もの指揮官の名前を挙げて、彼らはイドリーブやアレッポの両県でこのような行為を繰り返していると彼は言う。

例えば、ある指揮官は100人もの戦闘員を擁し、アレッポ地域の空き家になったアパートを「家宅捜索」することで有名だ。彼は武器や自動車だけではなく国境沿いのバブハワの町にある自分の事務所さえも売却して、瀟洒な家を二軒も建てた。今は三番目の妻を迎えようとしている。

「問題はこれらの指揮官たちの多くが外国からの支援を受けていることだ。」

ここには、内側から見たシリアの反政府勢力の実態が生々しく報告されている。海外からの財政支援が続くかぎり、ここに報告されているような指揮官たちの腐敗振りは継続することだろう。彼らの最大の目標は国家の平和とか民主主義の確立といった政治目標ではなく、短期的な尺度での金銭的利益が優先されるからだ。これこそが「戦争屋」と呼ばれる所以だ。

30代のアブ・マフムードは政府軍の将校であったが、反政府軍側へ投降した。今は「309大隊」の指揮官を務めている。大隊とは言え戦闘員はたったの35名で、オリーブの林の中にテントを設営し、そこに宿営している。

彼はその正直さでよく知られており、部下の戦闘員たちは彼の勇気や彼のつつましいライフスタイルを賞賛している。それは彼のおんぼろの4輪駆動車を見れば一目瞭然だ。

彼の小さな部隊はその地域のいたる場所で戦闘をした。最近はアレッポだった。あの戦闘は昨年の7月以降でも最も激しいものとなった。

「俺たちは敵から奪った7丁のカラシニコフだけで闘ってきた」と、アブ・マフムードは誇らしげに語る。

「俺の戦闘員は7人づつ交替で前線で闘った」と彼は言う。でも、過去数ヶ月の間に3人も失ったとのことだ。

彼の部隊はFSAの前最高指揮官であったムスターファ・シェイクから幾らかの金を貰っていたものだが、この支援は今や途絶えている。

「前線では俺たちは将校たちからある程度の銃弾を譲ってもらったことはあるが、武器や金を受け取ったことはない。俺たちは畜殺場に送られる羊のように前線へ送り出されたものだ。前線では食べるものもなかった」と、幻滅を味わいながらアブ・マフムードはしゃべる。

「俺たちは一体誰のために戦っているのか?自分たちの国のため?それとも、シリア人からいろんな物を略奪し、ひそかに革命の梯子を登りつめようとしているあの連中のためにか?」

この司令官の悩みは深刻だ。周りにはあまりにもたくさんの略奪や不正義がはびこっている。それを助長するのが国外から流れ込んでくる潤沢な資金だ。そして、内外の戦争屋がその資金に群がり、集まってくる。そのような状況では、反政府革命という政治的目標は必然的に希薄になってしまう。

アブ・マフムード指揮官にとってはシリア革命は外からやってきた戦争屋やイスラム聖戦士団にハイジャックされてしまったという実感や現状に危機感を抱く彼の気持ち、あるいは、焦燥感がはっきりと伝わってくる。

アブ・マフムードは他の反政府派部隊からの合流の誘いには応じなかった。

「自分に合う正直な連中が見つからなかったからだ」と、彼は言う。政府軍に対して最も激しい攻撃を行った聖戦士団(ジハード)の連中の政治的な目標に関しても疑念を感じるようになった。

聖戦士団の独自性や政治的目標には懐疑的な姿勢を保ちながら、「こういった連中を連れてくるイスラム勢力も問題だ。彼らは俺たちが理解しているようなイスラム教徒ではない」と、彼の話は続く。

何人かの部下は彼のもとから離れたが、残った他の連中は「村で働いている」と、彼は言う。

「今日はこの村で静かに暮らしているが、俺たちの気持ちは前線にあるんだ」と、309大隊の指揮官は言う。

「俺たちは革命を放り出したが、革命は俺たちを手放しはしないだろう。闘う時が来れば、何時の日にか俺たちを必要とする日がやって来るかもしれない。」

正直者のアブ・マフムード指揮官よ、貴君の出る幕が必ずやって来ると思う。今は自分の命や部下の命を無駄にしないで欲しいと願うばかりだ。他国の政治的な思惑に振り回されずに、自分たちの国の再建の方向は自分たちで決めて、一日でも早く国家再建に邁進してくれ!
 

参照:

1Revolution Betrayed: Corrupt rebel leaders confiscate Syria dream of freedom: By Herve Bar - ATME (Syria), Information Clearing House, Feb/13/2013



 

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