米国では次期大統領を選出する選挙戦が終盤になってきている。ヒラリー・クリントンか、それとも、ドナルド・トランプか?
この悩みを解いてくれるかのように、皮肉屋の批評家はこう言った。「コカ・コーラにするか、それともペプシコーラにするかというのと同じだ。どちらを飲んでみても、長く飲んでいると生活習慣病になってしまう。」
要するに、単なるブランドの選択ではなくて、もっと本質的な議論があって然るべきだ、とその識者(これが誰だったのかは思い出せないが・・・)は訴えたいのだ。
「第二次世界大戦の前、米国は大恐慌の影響を当時もまだ感じており、日本やドイツとの二正面における戦争に直面していた。当時の展望がいかに荒涼としたものであったにしても、今日の展望と比べたらそれはゼロにも等しかった」と、代替メディア界における著名な論客のひとり、ポール・クレイグ・ロバーツ博士は言う [注1]。
今日はその記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。
この記事は、内容的に見ると、前回投稿した『ロシアに対する「からかい」が核戦争を誘発する危険性』(10月10日に掲載)の続編として見ることも可能だ。色々と考えさせられる点があって、非常に興味深いと思う。
前回の投稿では、下記のくだりが私の脳裏に焼き付いて離れない:
ロシアに対する新しいヒステリー状態に対して、つまり、以前のプロパガンダの焼き直しから始まって軍事的な激化に至るまでのすべてに対してわれわれは何としてでも取り組まなければならない2016年にあって、もっとも急を告げている問題は、物事が完全にコントロールを失ってしまう前にこの狂乱状態を律することができる大人を一人でもワシントン政府内に見出すことができるかどうかという点だ。
今日、米国が抱える問題は、多かれ少なかれ、全世界が抱える問題でもある。ましてや、米ロ間の核戦争につながるような出来事は、日本の片隅に住み、国際政治には発言力をまったく持ち得ない大衆の一人にとってさえも、一個人が想像する以上に非常に深刻な問題であることに変わりはない。
米国の大統領選は後1ヶ月程で投票となる。この大統領選によって現在の世界が直面している狂乱状態を律することができる人物がはたして選出されるのかどうか、興味津々である。
そういう意味合いを意識しながら、この記事を皆で共有したいと思う。
<引用開始>
第二次世界大戦の前、米国は大恐慌の影響を当時もまだ感じており、日本やドイツとの二正面における戦争に直面していた。当時の米国の展望がいかに荒涼としたものであったにしても、今日の展望と比べたらそれはゼロにも等しかった。
ワシントン政府、プレスティチュートに満ちた西側のメディア、EUまたはNATOの中ではいったい誰が今ではすっかり恒常化してしまったロシアに対する軍事的挑発やプロパガンダがもたらすであろう結末に考えを巡らしているのだろうか?
西側の世界で責任ある部署にある者の間では、「もしもロシア人がわれわれの言っていることを真に受けたとしたら?」とか「もしもロシアを攻撃するぞという脅かしをロシア人に納得させてしまったら?」といった問いかけをいったい誰がしているのだろうか。
中国に関しても同一の問い掛けをすることが可能だ。
ホワイトハウスの馬鹿者やメディアのプレスティチュートたちは単なる危険領域ではなく、それよりも遥かに先にまで行ってしまった。民主党が米国の次期大統領としてヒラリー・クリントンを選出しようとしていることをロシア人が見た時いったい彼らはどう考えるだろうか?ヒラリーはロシアの大統領を「ヒットラーの新版」と形容し、彼女の部下でありネオコン派のモンスターとも言えるヴィクトリア・ヌーランドを介してウクライナで選挙を通じて民主的に選出されていた政府を転覆させた。それ程の、まさに気が狂ったような人物である。こうして、ヌーランドは20年程前までは何百年にもわたってロシアの一地方に過ぎなかった国にワシントンの傀儡政権を樹立した。
これはロシア政府内のうぶで親西欧を標榜する一派や一般庶民にとってさえも米国はロシアに対して戦争を仕掛けていると思わせるには十分であろう。私はそう断言する。
シリアに関してロシアがオバマに対峙して以来、ロシア人は敵対的なプロパガンダやロシアとの国境地帯における軍事演習に見舞われて来た。これらの挑発行為はワシントン政府やNATOによって「ロシアの侵攻」に対する対応策であるとして正当化されてきた。しかし、この「ロシアの侵攻」には実体がない。ロシアはバルト諸国やポーランドおよびルーマニアへ侵攻し、今や、米帝国に属しているジョージアやウクライナも含めて、ソビエト帝国を再構築しようとしているのだとする「でっち上げ」であることは明らかである。
ロシア人たちは「ロシアの侵攻」についてのプロパガンダは嘘八百に過ぎないと承知している。西側諸国の市民を対ロ戦争のために準備しようとする意図を除けば、いったいどんな理由があり得るというのであろうか?
他の理由なんて何もない。
オバマやメルケル、オランド、キャメロンといった能なしであってさえも、最大の軍事強国のひとつに向かって自分たちが攻撃するということを納得させるなんて危険極まりないことだと容易に理解できる筈だ。と同時に、中国にも納得させてしまうとすれば、その危険は二倍となる。
明らかに、西側は地球上の生命を維持しようとする指導力の醸成はできていない。
西側全体が地球に対して自殺志願を強制しようとしている時、いったい何が出来るのであろうか?
クリントンやジョージ・W・ブッシュ、オバマの時代が到来する前には、ジョン・F・ケネディから始まって、米国の歴代大統領はソ連邦との緊張を軽減するために努力してきた。トルコに配備された米国のミサイルやキューバに配備されたロシアのミサイルによってもたらされた緊張を和らげるために、ケネディはフルシチョフと一緒に働いた。ニクソン大統領は戦略兵器制限条約(SALT-I)や弾道弾仰撃ミサイル制限条約について交渉を行った。カーター大統領はSALT-IIについて交渉を行ったが、これは上院の批准を取り付けることができなかったものの、行政府による遵守を確保した。リーガン大統領はソ連の指導者であるゴルバチョフとの交渉を行い、冷戦に終止符を打った。ゴルバチョフがドイツの再統一に合意してくれたことに対するお返しとして、ジョージ・H・W・ブッシュはNATO は東方へは1インチたりとも拡大することはないと約束した。
これらの達成事項のすべてはすっかりネオコン化してしまったクリントンやジョージ・W ・ブッシュ、および、オバマによって葬り去られてしまったのである。これらの政権はそれぞれがナチ・ドイツに匹敵する犯罪者的な政権だ。
地球上の生命は冷戦中のもっとも暗い日々においてさえも今日以上に不確かな状況にさらされたことはなかった。地球の温暖化がいかなる脅威をもたらそうとも、核の冬によってもたらされる脅威とは比べようがない。地球の温暖化はまったく些細なことだ。ワシントンに巣くう邪悪に満ちた連中や米国の従属国が核戦争を引き起こすならば、ゴキブリがこの地球を相続することになろう。
私はワシントン政府の傲慢さや思い上がり、無知、ならびに、邪悪さによって招来される核戦争の危険性が増大していることについて警告を発してきた。最近、4人のロシア系米国人が戦争を脅かすことによってロシアを従属させようとする試みがもたらす結果を推論した:
http://www.paulcraigroberts.org/2016/06/03/41522/
[訳注:この4人のロシア系米国人の発言は、このブログでも「ロシア人たちからの警告」と題して8月16日に全訳を掲載しています。人気が高い投稿のひとつです。]
すっかり洗脳されてしまっている米国の一般市民が道徳意識や不屈の精神を持っており、核戦争を回避するだろうなどとは期待しないで貰いたい。ましてや、諜報関係者は自分たちが蒸発してしまうような事態は避けてくれるに違いないなどとは決して期待しないで欲しい。ウオールストリートジャーナルの最近の記事で、スコット・セーガンとベンジャミン・ヴァレンティーノは、イランが米国の艦艇を沈没させた場合にはイランに対して核攻撃をすることに米国人の59パーセントが賛成していると報じた: http://www.wsj.com/articles/would-the-u-s-drop-the-bomb-again-1463682867
民主党員に比べ、共和党員はより多くがイランに対する核攻撃を承認した。民主党員の47パーセントに比較して、共和党員の間では81パーセントが賛成した。しかしながら、民主党員は核兵器を真っ先に使用するであろうクリントンを支持している。結局、ヒラリーは女っぽく振る舞う女性が実際には実に頑固であることを証明した。彼女は「鉄の女」と称されたマーガレット・サッチャーの如くに頑固である。
米国人ならびに全人類が遅きに失したという状況に陥る前に、横柄極まりない米国人たちは「剣によって生きる者は剣によって死ぬ」という真理を是非とも思い起こす必要がある。
経済情勢もまた悲惨な状況にある。まったく見込みがない。直近の就業者に関する報告によると、その実態は報道の内容よりもひどい状況にある。新しい職場の創造はなく、報告書には概して表れなかったひとつの現実は59,000人分もの常勤の仕事場が失われたという点である。
米国経済においては、ますます多くの仕事場がパートタイムの仕事で構成されるようになっており、これでは独立した生計を支えることはできない。こうして、19歳から34歳の年齢層にある米国人の多くが妻や夫あるいはパートナーと一緒に独立して住むことはできず、両親と一緒に住む者が増えている。25歳の米国人の半数は両親の家で自分が子供時代に過ごした部屋に住んでいる。
これが嘘つきのネオリベラル派の経済学者たちが約束した「新経済」の報酬である。米国の労働者たちは自分たちの製造業の職場をあきらめ、職業的な腕前を必要とする仕事場を海外の労働者たちに明け渡した。何という怪物めいた嘘であろうか。ネオリベラル派の経済学者らはすごい嘘をついて、企業の重役や株主たちが労働者の生活のための賃金を自分たちのポケットに収めてしまうことに加担したのである。米国の労働者が多くの借金を抱え、将来の見通しはまったく暗いということに関して、これらのネオリベラル派の経済学者や「自由市場」を標榜する自由主義者は何の説明責任も果たしてはいないのだ。
この現実を認識している米国人は非常に少ない。ワンパーセントの米国人や彼らに奉仕する西側の政府が封建時代を再建しようとしていることについて少数の人たちは気が付き始めている。マイケル・ハドソンという素晴らしい経済学者がいる。彼は我々が今住んでいるこの時代を「ネオ封建主義時代」と名付けた。
[訳注: マイケル・ハドソン教授が提唱した「ネオ封建主義時代」という言葉については、今年の3月11日と14日に掲載した「新たな世界規模の冷戦 - 金融戦争(その1)、(その2)」と題したブログにその詳細をご紹介しています。念のため。]
彼は正しい。若い米国人の大多数は大学を卒業した時点ですでに大きな借金を抱えている。借金を返済することができないが故に刑務所行きとなるかも知れない。25歳の青年の半分が結婚することも家庭を築くこともできない時に、奨学金さえも返済することができない若者たちがたくさんいるような消費者集団から家賃収入を得ている投機的な投資家らは銀行であれこれと操作し、その結果、住宅販売は増え、住宅価格が上昇するといった現状をいったい誰が真に受けることができるのだろうか。
米国は地球上で病状がもっとも深刻化した国である。重要な課題や米国が直面する数多くの危機的な状況、あるいは、米国が世界にもたらす危機に関して公開で討論をしたり、政治的な議論をすることはまったくない。
米国人は能なしだ。犯罪者であるばかりか好戦的でもあるヒラリーをよりによって大統領に選出してしまうかも知れないという点に関してはまったく無頓着でいる。しかも、そうすることに誇りさえも感じている。
ところが、これらの「タフな」な米国人たちは嘘で固められた脅威に対しては恐怖を感じている。たとえば、「イスラム系のテロリスト」や「ロシアの侵攻」、等である。彼らは底が浅くなってしまった財布をさらに消耗させ、米国の憲法を損ない(憲法の擁護を損なう事は米国人にとっては反逆罪にも相当する行為である)、自分たちに対してあらゆる面で権力を振るい、世界の警察官を演じる国家のために自分たちの自由さえをも枯渇させようとしている。
かっては誇りを持ち、偉大な存在であったヨーロッパ人たちがアメリカ合衆国の建国の父が自分たちに与えてくれた自由や治安ならびに繁栄をポイと捨ててしまった、能無しで、取るに足りない者たちが集まっている国家に対して指導力を求めるとは、どう見ても異常なことである。
仲間の米国人たちよ、もしも蒸発することは避けたいと思い、そんな事態は何としてでも避けるのだとするならば、農奴の身分以外の生活を求め、目を覚まし、自分たちのもっとも恐ろしい敵はワシントン政府であることを認識しなければならない。あなたの敵は作り話の「ロシアの侵攻」ではない。作り話の「イスラム系テロリスト」でもない。作り話の「国内の急進主義」でもない。作り話の「社会保障がアメリカを破産させる」ことでもない。作り話の「民主制度があなたの富を略奪する」ことでもない。あなたの富はウオールストリートと大企業によってすでに盗み取られ、彼らのポケットに収められてしまっているのだ。
もしもあなたが目を覚ますことができず、映画「マトリックス」の主人公のような錯覚から逃げきれないならば、あなた自身の運命がこの地球の運命さえをも最悪なものにしてしまうことだろう。
著者のプロフィール: ポール・クレイグ・ロバーツ博士は財務長官補佐を務め、経済政策を担当した。ウオールストリートジャーナルの共同編集者として従事。ビジネス・ウィークやスクリップス・ハワード・ニュース・サービスおよびクリエーターズ・シンジケートのコラムニストを務めた。数多くの大学からも招聘された。彼のインターネットでの寄稿は世界中で関心を呼んでいる。ロバーツ博士の最近の著書: The
Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、 How America Was Lost、およびThe Neoconservative Threat
to World Order。
<引用終了>
これで仮訳は終了した。
非常に辛辣な批判が次から次と続く。「そうだ」、「そうだ」と合点する思いで読み通した。米政府はもう見る影もないような感じがする。しかし、それはすべてが惰眠を貪る米国人たちを目覚めさせ、壊滅的な核戦争からこのかけがえのない世界を何とか救いたいとする著者の切羽詰まった気持ちがそうさせているのだと思う。
さまざまな論評を読んでみると、マスメディアが伝えようとはしない世界が少しずつ見えて来る。世界情勢の深層に関してロバーツ博士が言いたいことが明確に伝わって来た。究極の目標は人類を滅亡させない、次世代のために文明を何とか維持したいという願いにすべてが収斂する。非常に重要なことだと私は思う。
しかし、米国政府を牛耳っているネオコン派は米国の覇権、つまり、米国による単独支配にすっかり有頂天になっており、自分たちが今やツキジデスの罠に陥っていることについてさえも認識してはいないようだ。まさにモンスターそのものである。
あなたはどう考えますか?
参照:
注1: Where Do Matters
Stand?: By Paul Craig Roberts, Information Clearing House, Jun/09/2015
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